説明

ポジ型感光性樹脂組成物及びそれを用いた硬化膜形成方法

【課題】感度、残膜率、保存安定性に優れた、ポジ型感光性樹脂組成物及びそれを用いた硬化膜形成方法であって、硬化させることにより耐熱性、密着性、透過率などに優れる硬化膜が得られる、ポジ型感光性樹脂組成物及びそれを用いた硬化膜形成方法を提供すること。
【解決手段】解離性基が解離することで、カルボキシル基を生じる特定のスチレン系構成単位とカルボキシル基と反応して共有結合を形成し得る官能基を有する構成単位を含有し、アルカリ不溶性若しくはアルカリ難溶性であり、且つ、酸解離性基が解離したときにアルカリ可溶性となる樹脂、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物、及び、波長300nm以上の活性光線の照射により酸を発生する化合物を含有することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物、及び、それを用いた硬化膜形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物及びそれを用いた硬化膜形成方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、液晶表示素子、集積回路素子、固体撮像素子、有機ELなどの電子部品の平坦化膜、保護膜や層間絶縁膜の形成に好適な、ポジ型感光性樹脂組成物及びそれを用いた硬化膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示素子、集積回路素子、固体撮像素子、有機ELなどの電子部品においては、一般に、電子部品表面の平坦性を付与するための平坦化膜、電子部品の劣化や損傷を防ぐための保護膜や絶縁性を保つための層間絶縁膜を形成する際に感光性樹脂組成物が使用される。例えば、TFT型液晶表示素子は、ガラス基板上に偏光板を設け、ITO等の透明導電回路層及び薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、層間絶縁膜で被覆して背面板とする一方、ガラス基板上に偏光板を設け、必要に応じてブラックマトリックス層及びカラーフィルター層のパターンを形成し、さらに透明導電回路層、層間絶縁膜を順次形成して上面板とし、この背面板と上面板とをスペーサーを介して対向させて両板間に液晶を封入して製造されるが、この中で層間絶縁膜を形成する際に用いられる感光性樹脂組成物としては感度、残膜率、耐熱性、密着性、透明性に優れていることが求められる。また、更に当該感光性樹脂組成物は、保存時の経時安定性に優れることが求められる。
【0003】
感光性樹脂組成物として、例えば、特許文献1には、(A)(a)不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物、(b)エポキシ基を有するラジカル重合性化合物および(c)他のラジカル重合性化合物の重合体であるアルカリ水溶液に可溶な樹脂、(B)感放射線性酸生成化合物を含有する感光性樹脂組成物が、特許文献2には、アルカリ可溶性アクリル系高分子バインダー、キノンジアジド基含有化合物、架橋剤、および光酸発生剤を含有して成る感光性樹脂組成物が、それぞれ提案されている。しかし、これらは、何れも感度、未露光部残膜率、解像性、経時安定性が十分でなく高品質の液晶表示素子を製造するためには満足できるものではなかった。特許文献3には、架橋剤、酸発生剤、およびそれ自体はアルカリ水溶液に不溶又は難溶であるが、酸の作用により解裂しうる保護基を有し、該保護基が解裂した後はアルカリ水溶液に可溶性となる樹脂を含有することを特徴とするポジ型化学増幅レジスト組成物が提案されている。しかし、密着性や透過率が十分でなく高品質の液晶表示素子を製造するためには満足できるものではなかった。特許文献4には、アセタール構造および/またはケタール構造並びにエポキシ基を含有する樹脂、酸発生剤を含有することを特徴とする感放射線性樹脂組成物が提案されているが、感度と透過率が低く満足できるものではなかった。特許文献5には、アセタールまたはケタールで保護したヒドロキシスチレン樹脂と、波長300nm以上の活性光線の照射により酸を発生する化合物及び架橋剤を含有することを特徴とする感放射線性樹脂組成物が提案されているが、透過率が低く満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−165214号公報
【特許文献2】特開平10−153854号公報
【特許文献3】特開2004−4669号公報
【特許文献4】特開2004−264623号公報
【特許文献5】特開2008−304902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の課題は、感度、残膜率、保存安定性に優れた、ポジ型感光性樹脂組成物及びそれを用いた硬化膜形成方法であって、硬化させることにより耐熱性、密着性、透過率などに優れる硬化膜が得られる、ポジ型感光性樹脂組成物及びそれを用いた硬化膜形成方法を提供することである。
【0006】
更に、当該硬化膜形成方法を用いて得られる硬化膜、更に、この硬化膜を有する液晶表示素子、集積回路素子、固体撮像素子或いは有機EL素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決する鋭意検討した結果、本発明に到達した。
本発明は、下記の通りである。
【0008】
〔1〕 (A)下記一般式(1)で表される構成単位とカルボキシル基と反応して共有結合を形成し得る官能基を有する構成単位を含有し、アルカリ不溶性若しくはアルカリ難溶性であり、且つ、酸解離性基が解離したときにアルカリ可溶性となる樹脂、及び(B)活性光線の照射により酸を発生する化合物を含有することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】

【0009】
一般式(1)に於いて、
は、水素原子、メチル基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子、直鎖状又は分岐状アルキル基を表す。但し、R及びRが同時に水素原子の場合を除く。
は、置換されてもよい直鎖状、分岐状あるいは環状アルキル基、又はアラルキル基を表す。
またはRと、Rとが連結して環状エーテルを形成しても良い。
【0010】
〔2〕 (C)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物(但し、前記Aを除く)を更に含有することを特徴とする〔1〕に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【0011】
〔3〕 (B)成分が波長300nm以上の活性光線の照射により酸を発生する化合物を含有することを特徴とする〔1〕あるいは〔2〕に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【0012】
〔4〕 (B)成分が、下記一般式(2)で表されるオキシムスルホネート基を含む化合物を含有することを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化2】

【0013】
一般式(2)に於いて、
は、置換されてもよい直鎖状、分岐状、環状アルキル基、あるいは置換されてもよいアリール基を表す。
【0014】
〔5〕 一般式(2)で表されるオキシムスルホネート基を含む化合物が、下記一般式(2−1)で表される化合物であることを特徴とする〔4〕に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化3】

【0015】
一般式(2−1)に於いて、
は、式(2)におけるRと同じである。
Xは、直鎖状あるいは分岐状アルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。
mは、0〜3の整数を表す。mが2又は3であるとき、複数のXは同一でも異なっていてもよい。
【0016】
〔6〕 一般式(2)で表されるオキシムスルホネート基を含む化合物が、下記一般式(2−2)で表される化合物であることを特徴とする〔4〕に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化4】

【0017】
一般式(2−2)において、
は、一般式(2)におけるRと同じである。
は、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基又はニトロ基を表す。
【0018】
lは、0〜5の整数を表す。lが2以上であるとき、複数のRは同一でも異なっていてもよい。
【0019】
〔7〕 前記カルボキシル基と反応して共有結合を形成し得る官能基がエポキシ基であることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【0020】
〔8〕 前記カルボキシル基と反応して共有結合を形成し得る官能基を有する構成単位が、下記一般式(3)〜(5)のいずれかで表されるラジカル重合性単量体由来の構成単位であることを特徴とする〔7〕に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化5】

【0021】
一般式(3)〜(5)において、
は、水素原子、メチル基又はハロゲン原子を表す。
〜R15は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を表す。
Xは、2価の連結基を表す。
nは、1〜10の整数である。
【0022】
〔9〕 前記カルボキシル基と反応して共有結合を形成し得る官能基がオキセタニル基であることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
〔10〕 前記カルボキシル基と反応して共有結合を形成し得る官能基を有する構成単位が、下記一般式(6)で表されるラジカル重合性単量体由来の構成単位であることを特徴とする〔9〕に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化6】

【0023】
式中、
は、水素原子、メチル基又はハロゲン原子を表す。
〜R12は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を表す。
Xは、2価の連結基を表す。
nは、1〜10の整数である。
【0024】
〔11〕 (D)密着助剤を更に含有することを特徴とする〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【0025】
〔12〕 〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥し、塗膜を形成する工程、マスクを介して活性光線を用いて露光する工程、アルカリ現像液を用いて現像し、パターンを形成する工程、及び、得られたパターンを加熱処理する工程を含むことを特徴とする硬化膜形成方法。
【0026】
〔13〕 更に、アルカリ現像液を用いて現像し、パターンを形成する工程後、得られたパターンを加熱処理する工程前に、全面露光する工程を含むことを特徴とする〔12〕に記載の硬化膜形成方法。
【0027】
〔14〕 〔12〕あるいは〔13〕に記載の硬化膜形成方法を用いて形成された硬化膜。
〔15〕 〔14〕に記載の硬化膜を有する液晶表示素子。
〔16〕 〔14〕に記載の硬化膜を有する集積回路素子。
〔17〕 〔14〕に記載の硬化膜を有する固体撮像素子。
〔18〕 〔14〕に記載の硬化膜を有する有機EL素子。
【0028】
以下、更に、本発明の好ましい実施の態様を挙げる。
〔19〕 (A)成分の総量100質量部に対して、(B)成分を、0.1〜10質量部含有することを特徴とする上記〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【0029】
〔20〕 (A)成分の総量100質量部に対して、(C)成分を、1〜50質量部含有することを特徴とする上記(1)〜〔11〕及び〔19〕のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【0030】
〔21〕 (A)成分の総量100質量部に対して、(D)成分を、0.1〜20質量部含有することを特徴とする上記(1)〜〔11〕、〔19〕及び〔20〕のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、感度、残膜率、保存安定性に優れた、ポジ型感光性樹脂組成物及びそれを用いた硬化膜形成方法であって、硬化させることにより耐熱性、密着性、透過率などに優れる硬化膜が得られる、ポジ型感光性樹脂組成物及びそれを用いた硬化膜形成方法を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を詳細に説明する。
尚、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0033】
(A)樹脂成分
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、下記一般式(1)で表される構成単位とカルボキシル基と反応して共有結合を形成し得る官能基を有する構成単位を含有し、アルカリ不溶性若しくはアルカリ難溶性であり、且つ、酸解離性基が解離したときにアルカリ可溶性となる樹脂(「(A)成分」ともいう)を含有するが、更にそれ以外の樹脂を含有してもよい。ここで、酸解離性基とは酸の存在下で解離することが可能な官能基を表す。
【化7】

【0034】
一般式(1)に於いて、
は、水素原子、メチル基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子、直鎖状又は分岐状アルキル基を表す。但し、R及びRが同時に水素原子の場合を除く。
は、置換されてもよい直鎖状、分岐状あるいは環状アルキル基、又はアラルキル基を表す。
またはRと、Rとが連結して環状エーテルを形成しても良い。
【0035】
一般式(1)に於ける、Rは水素原子若しくはメチル基が好ましい。
及びRは、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基が好ましい。
は、置換されてもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状あるいは環状アルキル基が好ましい。ここで、置換基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基あるいはハロゲン原子が好ましい。
としてのアラルキル基は、炭素数7〜10のアラルキル基が好ましい。
またはRと、Rとが連結して環状エーテルを形成する際には、RまたはRと、Rとが連結して炭素数2〜5のアルキレン鎖を形成することが好ましい。
【0036】
一般式(1)で表される構成単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体としては、例えば、オルト−(1−アルコキシアルキルオキシカルボニル)スチレン、メタ−(1−アルコキシアルキルオキシカルボニル)スチレン、パラ−(1−アルコキシアルキルオキシカルボニル)スチレン、オルト−(1−アルキル−1−アルコキシアルキルオキシカルボニル)スチレン、メタ−(1−アルキル−1−アルコキシアルキルオキシカルボニル)スチレン、パラ−(1−アルキル−1−アルコキシアルキルオキシカルボニル)スチレン、オルト−(1−アルコキシアルキルオキシカルボニル)−α−メチルスチレン、メタ−(1−アルコキシアルキルオキシカルボニル)−α−メチルスチレン、パラ−(1−アルコキシアルキルオキシカルボニル)−α−メチルスチレン、オルト−[1−(アラルキルオキシ)アルキルオキシカルボニル]スチレン、メタ−[1−(アラルキルオキシ)アルキルオキシカルボニル]スチレン、パラ−[1−(アラルキルオキシ)アルキルオキシカルボニル]スチレン、オルト−(2−オキサシクロアルキルオキシカルボニル)スチレン、メタ−(2−オキサシクロアルキルオキシカルボニル)スチレン、パラ−(2−オキサシクロアルキルオキシカルボニル)スチレンなどが挙げられる。これらの中で、メタ−(1−アルコキシアルキルオキシカルボニル)スチレン、パラ−(1−アルコキシアルキルオキシカルボニル)スチレン、メタ−(2−オキサシクロアルキルオキシカルボニル)スチレン、パラ−(2−オキサシクロアルキルオキシカルボニル)スチレンが好ましく、パラ−(1−アルコキシアルキルオキシカルボニル)スチレンとパラ−(2−オキサシクロアルキルオキシカルボニル)スチレンが特に好ましい。
【0037】
一般式(1)で表される構成単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体の具体例としては、例えば、オルト−(1−メトキシエトキシカルボニル)スチレン、メタ−(1−メトキシエトキシカルボニル)スチレン、パラ−(1−メトキシエトキシカルボニル)スチレン、オルト−(1−エトキシエトキシカルボニル)スチレン、メタ−(1−エトキシエトキシカルボニル)スチレン、パラ−(1−エトキシエトキシカルボニル)スチレン、オルト−(1−n−プロポキシエトキシカルボニル)スチレン、メタ−(1−n−プロポキシエトキシカルボニル)スチレン、パラ−(1−n−プロポキシエトキシカルボニル)スチレン、パラ−(1−イソプロポキシエトキシカルボニル)スチレン、オルト−(1−n−ブトキシエトキシカルボニル)スチレン、メタ−(1−n−ブトキシエトキシカルボニル)スチレン、パラ−(1−n−ブトキシエトキシカルボニル)スチレン、パラ−(1−イソブトキシエトキシカルボニル)スチレン、オルト−(1−ベンジルエトキシカルボニル)スチレン、メタ−(1−ベンジルエトキシカルボニル)スチレン、パラ−(1−ベンジルエトキシカルボニル)スチレン、オルト−(2−オキサシクロヘキシルオキシカルボニル)スチレン、パラ−(2−オキサシクロペンチルオキシカルボニル)スチレン、メタ−(2−オキサシクロヘキシルオキシカルボニル)スチレン、パラ−(2−オキサシクロヘキシルオキシカルボニル)スチレン、メタ−(1−エトキシエトキシカルボニル)α−メチルスチレン、パラ−(1−エトキシエトキシカルボニル)α−メチルスチレン、メタ−(1−メチル−1−エトキシエトキシカルボニル)スチレン、パラ−(1−メチル−1−エトキシエトキシカルボニル)スチレンなどを挙げることができ、単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
一般式(1)で表される構成単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体は、市販のものを用いてもよいし、公知の方法で合成したものを用いることもできる。例えば、下記に示すようにビニル安息香酸を酸触媒の存在下でビニルエーテルと反応させることにより合成することができる。
【化8】

【0039】
ここで、R1、R3及びR4は、一般式(1)におけるR1、R3及びR4に対応し、R13及びR14は、−CH(R13)(R14)として、一般式(1)におけるR2に対応する。
本発明の感光性組成物は基板上に塗布、乾燥し塗膜を形成する工程、マスクを介して活性光線を用いて露光する工程、アルカリ現像液を用いて現像しパターンを形成する工程、必要に応じて全面露光する工程、及び得られたパターンを加熱処理する工程を含むプロセスを経て、硬化膜を形成するが、全面露光或いは加熱処理の工程で(A)成分における式(1)で表される構成単位から酸解離性基(−C(R)(R)OR)が解離し、(A)成分の側鎖にカルボキシル基が生成する。
【0040】
本発明の(A)成分中に含まれるカルボキシル基と反応して共有結合を形成し得る官能基を有する構造単位における、「カルボキシルと反応して共有結合を形成し得る官能基」とは、上記のように(A)成分の側鎖に生成するカルボキシル基と加熱処理により反応し、共有結合を形成する官能基を意味する。
【0041】
上記のように、(A)成分の側鎖に生成するカルボキシル基と(A)成分中の「カルボキシル基と反応して共有結合を形成し得る官能基」が加熱処理により共有結合を形成し、架橋することにより、良好な硬化膜を形成することになる。
このようなカルボキシル基と反応して共有結合を形成し得る官能基としては、例えば、エポキシ基、オキセタン基などが挙げられ、特にエポキシ基が好ましい。
【0042】
カルボキシル基と反応して共有結合を形成し得る官能基を有する構成単位としては、一態様において、下記一般式(3)〜(5)のいずれかで表されるラジカル重合性単量体からなる構成単位が好ましく、単独又は2種以上を組合せて使用することができる。一般式(3)〜(5)のいずれかで表されるラジカル重合性単量体の分子量は、好ましくは100〜500、より好ましくは120〜200である。
【化9】

【0043】
一般式(3)〜(5)中、Xは2価の連結基を表し、例えば、−O−、−S−、または、−COO−、−OCH2COO−などの有機基が挙げられる。Xは、好ましくは−COO−、である。
は、水素原子、メチル基又はハロゲン原子を表し、水素原子若しくはメチル基が好ましい。
〜R15は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基を表す。好ましくは水素原子又はメチル基を表す。
nは、1〜10の整数であり、好ましくは、1〜3の整数である。
【0044】
カルボキシル基と反応して共有結合を形成し得る官能基としてエポキシ基を含有する構成単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体を具体的に例示すると、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸3,4−エポキシブチル、メタクリル酸3,4−エポキシブチル、アクリル酸4,5−エポキシペンチル、メタクリル酸4,5−エポキシペンチル、アクリル酸6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸6,7−エポキシヘプチル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートなどの(メタ)アクリレート類;o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、α-メチル−o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、α-メチル−m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、α-メチル−p-ビニルベンジルグリシジルエーテルなどのビニルベンジルグリシジルエーテル類;o−ビニルフェニルグリシジルエーテル、m−ビニルフェニルグリシジルエーテル、p−ビニルフェニルグリシジルエーテルなどのビニルフェニルグリシジルエーテル類;が挙げられる。アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、p−ビニルフェニルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートが好ましく、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルが特に好ましい。
【0045】
カルボキシル基と反応して共有結合を形成し得る官能基を有する構成単位としては、他の態様において、下記一般式(6)又は(7)で表されるラジカル重合性単量体からなる構成単位が好ましく、単独又は2種以上を組合せて使用することができる。一般式(6)又は(7)で表されるラジカル重合性単量体の分子量は、好ましくは100〜500、より好ましくは150〜200である。
【化10】

【0046】
一般式(6)および’(7)中、Xは2価の連結基を表し、例えば、−O−、−S−、または、−COO−、−OCH2COO−などの有機基が挙げられる。Xは、好ましくは−COO−である。
は、水素原子、メチル基又はハロゲン原子を表し、水素原子若しくはメチル基が好ましい。
〜R15は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基を表す。好ましくは水素原子又はメチル基を表す。
nは、1〜10の整数であり、好ましくは、1〜3の整数である。
【0047】
このような、オキセタニル基を有する構成単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体の例としては、エポキシ基を含有するラジカル重合性単量体の上記具体例において、エポキシ基をオキセタニル基に置き換えた化合物や、例えば、特開2001−330953号公報の段落0011〜0016に記載のオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げることができる。
【0048】
カルボキシル基と反応して共有結合を形成し得る官能基を有する構成単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体は、市販のものを用いても、公知の方法で合成したものを用いてもよい。
【0049】
カルボキシル基と反応して共有結合を形成しうる官能基を有する構成単位の好ましい具体例としては、下記の構成単位が例示できる。
【化11】

【0050】
一般式(1)で表される構成単位の含有率は、(A)成分の樹脂を構成する全繰り返し単位中、10〜90モル%が好ましく、20〜60モル%がより好ましい。
カルボキシル基と反応して共有結合を形成し得る官能基を有する構成単位の含有率は、(A)成分の樹脂を構成する全繰り返し単位中、5〜50モル%が好ましく、10〜40モル%がより好ましい。
【0051】
(A)成分において、必要に応じて、一般式(1)で表される構成単位及びカルボキシル基と反応して共有結合を形成し得る官能基を有する構成単位以外の構成単位を共重合することができる。
【0052】
一般式(1)で表される構成単位及びカルボキシル基と反応して共有結合を形成し得る官能基を有する構成単位以外の構成単位としては、スチレン、tert−ブトキシスチレン、メチルスチレン、ヒドロキシスチレン、α−メチルスチレン、アセトキシスチレン、α−メチル−アセトキシスチレン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、クロルスチレン、ビニル安息香酸メチル、ビニル安息香酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリルなどによる構成単位を挙げることができ、単独又は2種類以上を組合わせて使用することができる。
【0053】
これら構成単位の含有率は、総量として、(A)成分の樹脂を構成する全繰り返し単位中、85モル%以下が好ましく、より好ましくは60モル%以下である。
(A)成分の分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で、好ましくは、1,000〜200,000、より好ましくは2,000〜50,000の範囲である。
(A)成分は、異なる構成単位を含む樹脂を2種以上混合して使用することもできるし、また、同一の構成単位からなり組成の異なる2種以上の樹脂を混合して使用することもできる。
【0054】
また、(A)成分の合成法についても、様々な方法が知られているが、一例を挙げると、少なくとも一般式(1)で表される構成単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体とカルボキシル基と反応して共有結合を形成し得る官能基を有する構成単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体を含むラジカル重合性単量体混合物を有機溶剤中、ラジカル重合開始剤を用いて重合することにより合成することができる。
【0055】
(B)活性光線または放射線の照射により酸を発生する化合物
本発明で使用される活性光線または放射線の照射により酸を発生する化合物(「(B)成分」又は「光酸発生剤」ともいう)としては、例えば、スルホニウム塩やヨードニウム塩、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、オキシムスルホネート化合物などを挙げることができ、単独又は2種類以上を組合わせて使用することができる。
光酸発生剤は、波長300nm以上の活性光線に感光し、酸を発生する化合物が好ましく、一般式(2)で表されるオキシムスルホネート基を含有する化合物が更に好ましい。
【化12】

【0056】
一般式(2)に於いて、
は、置換されてもよい直鎖状、分岐状、環状アルキル基、又は置換されてもよいアリール基を表す。
のアルキル基としては、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状アルキル基が好ましい。Rのアルキル基は、炭素数6〜11のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基あるいは脂環式基(7,7−ジメチル−2−オキソノルボルニル基などの有橋式脂環基を含む、好ましくはビシクロアルキル基等)で置換されてもよい。
【0057】
のアリール基としては、炭素数6〜11のアリール基が好ましく、フェニル基あるいはナフチル基が更に好ましい。Rのアリール基は、炭素数1〜5のアルキル基、アルコキシ基あるいはハロゲン原子で置換されてもよい。
一般式(2)で表されるオキシムスルホネート基を含有する光酸発生剤は、一態様において、下記一般式(2−1)で表される化合物であることが更に好ましい。
【化13】

【0058】
一般式(2−1)に於いて、
は、一般式(2)におけるRと同じである。
Xは、直鎖状あるいは分岐状アルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。
mは、0〜3の整数を表す。mが2又は3であるとき、複数のXは同一でも異なっていてもよい。
Xとしてのアルキル基は、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状アルキル基が好ましい。
【0059】
Xとしてのアルコキシ基は、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐状アルコキシ基が好ましい。
Xとしてのハロゲン原子は、塩素原子若しくはフッ素原子が好ましい。
mは、0又は1が好ましい。
特に、一般式(3)において、mが1、Xがメチル基であり、Xの置換位置がオルトである化合物が好ましく、更に、R5が炭素数1〜10の直鎖状アルキル基、7,7−ジメチル−2−オキソノルボルニルメチル基、又はp−トリル基である化合物が特に好ましい。
【0060】
オキシムスルホネート化合物の具体例としては、例えば、下記化合物(i)、化合物(ii)、化合物(iii)、化合物(iv)、化合物(v)等が挙げられ、単独又は2種類以上を組合わせて使用することができる。また、他の種類の(B)成分と組み合わせて使用することもできる。
【化14】

【0061】
化合物(i)〜(v)は、市販品として、入手することができる。
【0062】
一般式(2)で表されるオキシムスルホネート基を含有する光酸発生剤は、他の態様において、下記一般式(2−2)で表される化合物であることが更に好ましい。
【化15】

【0063】
一般式(2−2)中、
は、一般式(2)におけるRと同じである。
は、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基又はニトロ基を表す。
【0064】
lは、0〜5の整数を表す。lが2以上であるとき、複数のRは同一でも異なっていてもよい。
一般式(2−2)について更に詳細に説明する。
として、好ましくは、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜5のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1〜5のハロゲン化アルコキシ基、Wで置換されていてもよいフェニル基、Wで置換されていてもよいナフチル基又はWで置換されていてもよいアントラニル基等が挙げられる。ここで、Wは、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数1〜5のハロゲン化アルキル基又は炭素原子数1〜5のハロゲン化アルコキシ基を表すものである。
【0065】
一般式(2−2)におけるRとしては、メチル基 、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−オクチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロ−n−プロピル基、パーフルオロ−n−ブチル基、ベンジル基、p−トリル基、4−クロロフェニル基又はペンタフルオロフェニル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、ベンジル基、又はp−トリル基であることが特に好ましい。
【0066】
で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子が好ましい。
【0067】
で表されるアルキル基としては、炭素原子数1〜4のアルキル基が好ましく、特にメチル基又はエチル基が好ましい。
で表されるアルコキシ基としては、炭素原子数1〜4のアルコキシ基が好ましく、特にメトキシ基又はエトキシ基が好ましい。
lとしては、0〜2が好ましく、0又は1が特に好ましい。
【0068】
一般式(2−2)で表される光酸発生剤に包含される化合物の好ましい態様としては、Rが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基又は4−トリル基を表し、Rが水素原子またはメトキシ基を表し、lが0又は1の態様である。
【0069】
以下、一般式(2−2)で表される光酸発生剤に包含される化合物の特に好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0070】
α−(メチルスルホニルオキシイミノ)ベンジルシアニド(R3A=メチル基、R4A=水素原子)
α−(エチルスルホニルオキシイミノ)ベンジルシアニド(R3A=エチル基、R4A=水素原子)
α−(n−プロピルスルホニルオキシイミノ)ベンジルシアニド(R3A=n−プロピル基、R4A=水素原子)
α−(n−ブチルスルホニルオキシイミノ)ベンジルシアニド(R3A=n−ブチル基、R4A=水素原子)
α−(4−トルエンスルホニルオキシイミノ)ベンジルシアニド(R3A=4−トリル基、R4A=水素原子)
α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)ベンジルシアニド(R3A=フェニル基、R4A=水素原子)
α−〔(メチルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル〕アセトニトリル(R3A=メチル基、R4A=メトキシ基)
α−〔(エチルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル〕アセトニトリル(R3A=エチル基、R4A=メトキシ基)
α−〔(n−プロピルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル〕アセトニトリル(R3A=n−プロピル基、R4A=メトキシ基)
α−〔(n−ブチルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル〕アセトニトリル(R3A=n−ブチル基、R4A=メトキシ基)
α−〔(4−トルエンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル〕アセトニトリル(R3A=4−トリル基、R4A=メトキシ基)。
【0071】
α−〔(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル〕アセトニトリル(R3A=4−フェニル基、R4A=メトキシ基)。
本発明の感光性樹脂組成物において、光酸発生剤(B)は、共重合体(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部含有されることが好ましく、0.5〜10質量部含有されることがより好ましい。
【0072】
本発明の感光性樹脂組成物は、活性光線に感応する光酸発生剤として、必要に応じて、一般式(2)で表されるオキシムスルホネート基を含有する光酸発生剤以外の光酸発生剤を含有してもよい。
【0073】
(C)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物
分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物(「(C)成分」ともいう)の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0074】
これらは市販品として入手できる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、JER827、JER828、JER834、JER1001、JER1002、JER1003、JER1055、JER1007、JER1009、JER1010(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、EPICLON860、EPICLON1050、EPICLON1051、EPICLON1055(以上、大日本インキ化学工業(株)製)等を、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、JER806、JER807、JER4004、JER4005、JER4007、JER4010(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、EPICLON830、EPICLON835(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、LCE−21、RE−602S(以上、日本化薬(株)製)、等を、フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、JER152、JER154、JER157S70(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、EPICLON N−740、EPICLON N−740、EPICLON N−770、EPICLON N−775(以上、大日本インキ化学工業(株)製)等を、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、EPICLON N−660、EPICLON N−665、EPICLON N−670、EPICLON N−673、EPICLON N−680、EPICLON N−690、EPICLON N−695(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、EOCN−1020(以上、日本化薬(株)製)等を、脂肪族エポキシ樹脂としては、ADEKA RESIN EP−4080S、同 EP−4085S、同 EP−4088S(以上、ADEKA(株)製)、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、EHPE3150、EPOLEAD PB 3600、同 PB 4700(以上、ダイセル化学(株)製)等が挙げられる。その他にも、
ADEKA RESIN EP−4000S、同 EP−4003S、同 EP−4
010S、同 EP−4011S(以上、ADEKA(株)製)、NC−2000、NC−3000、NC−7300、XD−1000、EPPN−501、EPPN−502(以上、ADEKA(株)製)等が挙げられ、単独又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0075】
これらの中で好ましいものとしては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。特にビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
【0076】
(C)成分の含有率は、(A)成分の総量100質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、更に好ましくは5〜30質量部である。
【0077】
(C)成分はクロム、モリブデン、アルミ、タンタル、チタン、銅、コバルト、タングステン、ニッケルなどの金属層との密着性向上に有効である。これら金属層をスパッタリング法で作成した場合はその効果が顕著である。
【0078】
(D)密着助剤
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、更に、(D)密着助剤を含有し得る。
本発明に用い得る密着助剤(D)としては、基材となる無機物、たとえば、シリコン、酸化シリコン、窒化シリコン等のシリコン化合物、金、銅、アルミニウム等の金属と絶縁膜との密着性を向上させる化合物である。具体的には、シランカップリング剤、チオール系化合物等が挙げられる。
本発明で使用される密着助剤としてのシランカップリング剤は、界面の改質を目的とするものであり、特に限定することなく、公知のものを使用することができる。
【0079】
好ましいシランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、γ−クロロプロピルトリアルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシランが挙げられる。
【0080】
γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシランやγ−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランがより好ましく、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシランが更により好ましい。
これらは単独あるいは2種以上を組合わせて使用することができる。これらは基板との密着性向上に有効であるとともに、基板とのテーパー角の調整にも有効である。
【0081】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物における、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分の混合比は、(A)成分100質量部に対して、(B)成分は、0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。また、(C)成分は、1〜50質量部が好ましく、5〜30質量部がより好ましい。また、(D)成分は、0.1〜20質量部以下が好ましく、0.5〜10質量部以下がより好ましい。
【0082】
<その他の成分>
本発明のポジ型感光性樹脂組成物には、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分に加え、必要に応じて、塩基性化合物、界面活性剤、紫外線吸収剤、増感剤、可塑剤、増粘剤、有機溶剤、密着促進剤、有機あるいは無機の沈殿防止剤などを加えることができる。
【0083】
<塩基性化合物>
塩基性化合物としては、化学増幅レジストで用いられるものの中から任意に選択して使用することができる。例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミン、4級アンモニウムヒドロキシド、カルボン酸4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0084】
脂肪族アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミンなどが挙げられる。
【0085】
芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、ベンジルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ジフェニルアミンなどが挙げられる。
【0086】
複素環式アミンとしては、例えば、ピリジン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2−フェニルピリジン、4−フェニルピリジン、N−メチル−4−フェニルピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−フェニルベンズイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、ニコチン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、キノリン、8−オキシキノリン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、4−メチルモルホリン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5,3,0]−7ウンデセン
などが挙げられる。
【0087】
4級アンモニウムヒドロキシドとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ヘキシルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられる。
【0088】
カルボン酸4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラメチルアンモニウムベンゾエート、テトラ−n−ブチルアンモニウムアセテート、テトラ−n−ブチルアンモニウムベンゾエートなどが挙げられる。
【0089】
塩基性化合物の配合率は、(A)成分100質量部当たり、0.001〜1質量部とすることが好ましく、0.005〜0.2質量部とすることがより好ましい。
【0090】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系あるいは両性の何れでも使用することができるが、好ましい界面活性剤はノニオン系界面活性剤である。ノニオン系界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル類、ポリオキシエチレン高級アルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレングリコールの高級脂肪酸ジエステル類、シリコーン系、フッ素系界面活性剤を使用することができる。また、以下商品名で、KP(信越化学工業製)、ポリフロー(共栄社化学製)、エフトップ(JEMCO製)、メガファック(大日本インキ化学工業製)、フロラード(住友スリーエム製)、アサヒガード、サーフロン(旭硝子製)PolyFox(OMNOVA社製)、フタージェント(ネオス社製)等の各シリーズを挙げることができる。
【0091】
また、界面活性剤として、下記一般式(I)で表される構成単位A及び構成単位Bを含み、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とした場合のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が1,000以上10,000以下である共重合体を好ましい例として挙げることができる。
【化16】

【0092】
一般式(I)中、R1及びR3はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素数1以上4以下の直鎖アルキレン基を表し、R4は水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、Lは炭素数3以上6以下のアルキレン基を表し、p及びqは質量比を表す質量百分率であり、pは10質量%以上80質量%以下の数値を表し、qは20質量%以上90質量%以下の数値を表し、rは1以上18以下の整数を表し、nは1以上10以下の整数を表す。
【0093】
前記Lは、下記一般式(II)で表される分岐アルキレン基であることが好ましい。式(II)におけるR5は、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、相溶性と被塗布面に対する濡れ性の点で、炭素数1以上3以下のアルキル基が好ましく、炭素数2又は3のアルキル基がより好ましい。pとqとの和(p+q)は、p+q=100、すなわち、100質量%であることが好ましい。
【化17】

【0094】
該共重合体の重量平均分子量(Mw)は、THFを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定されるポリスチレン換算において1000以上10000以下が好ましく、1500以上5000以下がより好ましい。
【0095】
界面活性剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
界面活性剤の配合率は、(A)成分100質量部当たり、通常10質量部以下であり、好ましくは、0.01〜10質量部、より好ましくは、0.01〜1質量部である。
【0096】
<可塑剤>
可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジメチルグリセリンフタレート、酒石酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、トリアセチルグリセリンなどが挙げられる。
【0097】
可塑剤の配合率は、(A)成分100質量部当たり、20質量部以下とすることが好ましく、10質量部以下とすることがより好ましい。
【0098】
<増感剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、光酸発生剤(B)との組み合わせにおいて、その分解を促進させるために、増感剤を含有することが好ましい。
【0099】
増感剤は、活性光線又は放射線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感剤は、光酸発生剤と接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用が生じる。これにより光酸発生剤は化学変化を起こして分解し、酸を生成する。
【0100】
好ましい増感剤の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nm域のいずれかに吸収波長を有する化合物を挙げることができる。
【0101】
多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、アントラセン、9,10
−ジブトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン,3,7−ジメトキシアントラセン、9,10−ジプロピルオキシアントラセン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、キサントン類(例えば、キサントン、チオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、ローダシアニン類、オキソノール類、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アクリドン類(例えば、アクリドン、10−ブチル−2−クロロアクリドン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、スチリル類、ベーススチリル類(例えば、2−[2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル]ベンゾオキサゾール)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ4−メチルクマリン、7−ヒドロキシ4−メチルクマリン、2,3,6,7−テトラヒドロ−9−メチル−1H,5H,11H[l]ベンゾピラノ[6、7、8−ij ]キノリジン−11−ノン)。
【0102】
これら増感剤の中でも、多環芳香族類、アクリドン類、スチリル類、ベーススチリル類、クマリン類が好ましく、多環芳香族類がより好ましい。多核芳香族類の中でもアントラセン誘導体が最も好ましい。
【0103】
<溶剤>
本発明のポジ型感光性組成物は、上記成分を溶剤に溶解して溶液として使用される。本発明のポジ型感光性組成物に使用される溶剤としては、例えば、
(ア)エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;
(イ)エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル等のエチレングリコールジアルキルエーテル類;
(ウ)エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
(エ)プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;
(オ)プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;
(カ)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
(キ)ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテル類;
(ク)ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
(ケ)ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のジプロピレングリコールモノアルキルエーテル類; (コ)ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルメチルエーテル等のジプロピレングリコールジアルキルエーテル類;
(サ)ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
(シ)乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸イソプロピル、乳酸n−ブチル、乳酸イソブチル、乳酸n−アミル、乳酸イソアミル等の乳酸エステル類;
(ス)酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、酢酸イソアミル、酢酸n−ヘキシル、酢酸2−エチルヘキシル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n−ブチル、酪酸イソブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;
(セ)ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸エチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオンメチル、3−メトキシプロピオンエチル、3−エトキシプロピオンメチル、3−エトキシプロピオンエチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メチル−3−メトキシブチルブチレート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;
(ソ)メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;
(タ)N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;
(チ)γ−ブチロラクトン等のラクトン類等を挙げることができる。
【0104】
また、これらの溶剤に更に必要に応じて、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナール、ベンジルアルコール、アニソール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等の溶剤を添加することもできる。
【0105】
溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
溶剤の配合率は、(A)成分100質量部当たり、通常、50〜3,000質量部、好ましくは100〜2,000質量部、さらに好ましくは100〜1,000質量部である。
【0106】
(A)成分、(B)成分を含有するポジ型感光性樹脂組成物を用いることで、感度、残膜率、および経時安定性に優れたポジ型感光性樹脂組成物であって、硬化させることによって、耐熱性、密着性、透明性などに優れる硬化膜が得られるポジ型感光性樹脂組成物を提供することができる。
【0107】
<硬化膜の形成方法>
次に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を用いた硬化膜の形成方法を説明する。
本発明によるポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布し加熱することにより基板上に塗膜を形成させる。
【0108】
得られた塗膜に活性光線を照射することにより、(B)成分が分解し酸が発生する。発生した酸の触媒作用により、(A)成分中に含まれる一般式(1)で表される構成単位中の酸解離性基が、加水分解反応により解離し、カルボキシル基が生成する。次にアルカリ現像液を用いて現像することにより、アルカリ現像液に溶解しやすいカルボキシル基を有する樹脂を含む露光部を除去し、ポジ画像が形成する。
この加水分解反応の反応式を以下に示す。
【化18】

【0109】
本加水分解反応を加速させるために、必要に応じて、露光後加熱処理:Post Exposure Bake(以後PEBという)を行うことができる。その加熱温度が高温になると、発生したカ
ルボキシル基が、エポキシ基と架橋反応を起こすため、現像ができなくなる。
実際に、p-tert-ブトキシカルボニルスチレンを一般式(1)で表される繰り返し単位
の代わりに用いると酸解離反応の活性化エネルギーが高いため、酸解離性基を解離させるためには高温でPEBする必要があるが、同時に架橋反応が起こり画像が得られない。
【0110】
一方、本発明の一般式(1)で表される酸解離性基は、酸分解の活性化エネルギーが低く、露光による酸発生剤由来の酸により容易に分解し、カルボキシル基を生じるため、PEBを行う必要がなく、現像によりポジ画像を形成することができる。
なお、比較的低温でPEBを行うことにより、架橋反応を起こすことなく、酸解離性基の分解を促進してもよい。
PEB温度は130℃以下であることが好ましく、110℃以下が更に好ましく、80℃以下が特に好ましい。
【0111】
次に、得られたポジ画像を加熱することにより、一般式(1)中の酸解離性基を熱分解しカルボキシル基を生成させ、エポキシ基と架橋させることにより、硬化膜を形成することができる。この加熱は好ましくは150℃以上の高温で加熱され、より好ましくは180〜250℃、特に好ましくは200〜250℃で加熱される。
加熱時間は、加熱温度などにより適宜設定できるが、一般的には10〜90分である。
【0112】
加熱工程の前に活性光線を全面照射する工程を加えると、活性光線の照射により発生する酸により架橋反応を促進することができる。
次に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を用いた硬化膜の形成方法を具体的に説明する。
【0113】
組成物溶液の調製方法:(A)成分、(B)成分、(C)成分およびその他の配合剤を所定の割合で且つ任意の方法で混合し、攪拌溶解して組成物溶液を調製する。例えば、各々の成分を予め溶剤に溶解させ溶液とした後、これらを所定の割合で混合して組成物溶液を調製することもできる。以上のように調製した組成物溶液は、孔径0.2μmのフィルター等を用いてろ過した後に、使用に供することもできる。
【0114】
<塗膜の作成方法>
組成物溶液を、所定の基板に塗布し、加熱により溶媒を除去する(以後、プリベークという)ことにより所望の塗膜を形成することができる。前記基板としては、例えば液晶表示素子の製造においては、偏光板、さらに必要に応じてブラックマトリックス層、カラーフィルター層を設け、さらに透明導電回路層を設けたガラス板などが挙げられる。基板への塗布方法は特に限定されず、例えば、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法、スリット塗布法等の方法を用いることができる。
【0115】
また、プリベーク時の加熱条件は、未露光部における(A)成分中の式(1)で表される繰り返し単位などにおける酸解離性基が解離して、(A)成分をアルカリ現像液に可溶性としない範囲であり、各成分の種類や配合比によっても異なるが、好ましくは80〜130℃で30〜120秒間程度であることが好ましい。
【0116】
<パターン形成方法>
塗膜を設けた基板に所定のパターンのマスクを介し、活性光線を照射した後、必要に応じて加熱処理(PEB)を行った後、現像液を用いて露光部を除去して画像パターンを形成する。
【0117】
活性光線の放射には、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、エキシマレーザー発生装置などを用いることができるが、g線、i線、h線などの波長300nm以上の活性光線が好ましい。また、必要に応じて長波長カットフィルター、短波長カットフィルター、バンドパスフィルターのような分光フィルターを通して照射光を調整することもできる。
【0118】
現像液としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物類;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩類;重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムなどのアルカリ金属重炭酸塩類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリンヒドロキシド等のアンモニウムヒドロキシド類;ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの水溶液を使用することができる。また、上記アルカリ類の水溶液にメタノールやエタノールなどの水溶性有機溶剤や界面活性剤を適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。
【0119】
現像液のpHは、好ましくは10.0以上である。
現像時間は通常30〜180秒間であり、また、現像の手法は液盛り法、ディップ法等の何れでも良い。現像後は、流水洗浄を30〜90秒間行い、所望のパターンを形成させることができる。
【0120】
<架橋工程>
現像により得られた未露光部を有するパターンについて、ホットプレートやオーブン等の加熱装置を用いて、所定の温度、例えば180〜250℃で所定の時間、例えばホットプレート上なら5〜30分間、オーブンならば30〜90分間、加熱処理をすることにより、(A)成分における酸解離性基を脱離、カルボキシル基を発生させ、カルボキシル基と架橋する官能基と反応、架橋させ、耐熱性、硬度等に優れた保護膜や層間絶縁膜を形成することができる。また、加熱処理を行う際は窒素雰囲気下で行うことにより透明性を向上させることもできる。
なお、加熱処理に先立ち、パターン形成した基板に活性光線を照射することにより未露光部分に存在する(B)成分から酸を発生させることが好ましい。
【実施例】
【0121】
次に実施例により本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
〔合成例1:A−1の合成〕
パラ−(1−n-ブトキシエトキシカルボニル)スチレン89.4g(0.36モル)、メタクリル酸グリシジル34.1g(0.24モル)およびメチルイソブチルケトン300mlを500mlの3頚フラスコに仕込み、これにラジカル重合開始剤として、触媒量の2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオン酸メチル)を添加し、窒素気流下、80℃で6時間重合させた。反応液を冷却後、大量のヘプタンに注いでポリマーを析出させた。結晶を濾取した後、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルに溶解し、溶液中に含まれるヘプタンとメチルイソブチルケトンを減圧留去することにより、ポリマーA−1[パラ−(1−n-ブトキシエトキシカルボニル)スチレン/メタクリル酸グリシジル]を
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル溶液として得た。
【0122】
得られたポリマーの分子量と分子量分布は、ポリスチレンを標準としたGPC測定の結果、重量平均分子量は約8000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.8であった。
【0123】
〔合成例2:A−2の合成〕
パラ−(1−エトキシエトキシカルボニル)スチレン66.1g(0.3モル)、メタクリル酸グリシジル25.6g(0.18モル)、メタクリル酸ベンジル21.1g(0.12モル)およびメチルイソブチルケトン300mlを500mlの3頚フラスコに仕込み、これにラジカル重合開始剤として触媒量の2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオン酸メチル)を添加し、窒素気流下、80℃で6時間重合させた。反応液を冷却後、大量のヘプタンに注いでポリマーを析出させた。結晶を濾取した後、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルに溶解し、溶液中に含まれるヘプタンとメチルイソブチルケトンを減圧留去することにより、ポリマーA−2[パラ−(1−エトキシエトキシカルボニル)スチレン/メタクリル酸グリシジル/メタクリル酸ベンジル)]をジエチレングリコールエチルメチルエーテル溶液として得た。
【0124】
得られたポリマーの分子量と分子量分布は、ポリスチレンを標準としたGPC測定の結果、重量平均分子量は約8000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.8であった。
【0125】
〔合成例3:A−3の合成〕
パラ−(1−ベンジルオキシエトキシカルボニル)スチレン101.6g(0.36モル)、アクリル酸グリシジル23.1g(0.18モル)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル7.8g(0.06モル)およびメチルイソブチルケトン300mlを500mlの3頚フラスコに仕込み、これにラジカル重合開始剤として触媒量の2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオン酸メチル)を添加し、窒素気流下、80℃で6時間重合させた。反応液を冷却後、大量のヘプタンに注いでポリマーを析出させた。結晶を濾取した後、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルに溶解し、溶液中に含まれるヘプタンとメチルイソブチルケトンを減圧留去することにより、ポリマーA−3[パラ−(1−ベンジルオキシエトキシカルボニル)スチレン/アクリル酸グリシジル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)]をジエチレングリコールエチルメチルエーテル溶液として得た。
【0126】
得られたポリマーの分子量と分子量分布は、ポリスチレンを標準としたGPC測定の結果、重量平均分子量は約7000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.8であった。
【0127】
〔合成例4:A−4の合成〕
メタ−(1−エトキシエトキシカルボニル)スチレン66.1g(0.3モル)、メタクリル酸グリシジル25.6g(0.18モル)、メタクリル酸ベンジル21.1g(0.12モル)およびメチルイソブチルケトン300mlを500mlの3頚フラスコに仕込み、これにラジカル重合開始剤として触媒量の2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオン酸メチル)を添加し、窒素気流下、80℃で6時間重合させた。反応液を冷却後、大量のヘプタンに注いでポリマーを析出させた。結晶を濾取した後、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルに溶解し、溶液中に含まれるヘプタンとメチルイソブチルケトンを減圧留去することにより、ポリマーA−4[メタ−(1−エトキシエトキシカルボニル)スチレン/メタクリル酸グリシジル/メタクリル酸ベンジル]をジエチレングリコールエチルメチルエーテル溶液として得た。
【0128】
得られたポリマーの分子量と分子量分布は、ポリスチレンを標準としたGPC測定の結果、重量平均分子量は約5000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.6であった。
【0129】
〔合成例5:A−5の合成〕
パラ−(1−エトキシエトキシカルボニル)スチレン79.3g(0.36モル)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(ダイセル化学社製サイクロマーM100)35.3g(0.18モル)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル7.8g(0.06モル)およびメチルイソブチルケトン300mlを500mlの3頚フラスコに仕込み、これにラジカル重合開始剤として触媒量の2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオン酸メチル)を添加し、窒素気流下、80℃で6時間重合させた。反応液を冷却後、大量のヘプタンに注いでポリマーを析出させた。結晶を濾取した後、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルに溶解し、溶液中に含まれるヘプタンとメチルイソブチルケトンを減圧留去することにより、ポリマーA−5[パラ−(1−エトキシエトキシカルボニル)スチレン/3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル]をジエチレングリコールエチルメチルエーテル溶液として得た。
【0130】
得られたポリマーの分子量と分子量分布は、ポリスチレンを標準としたGPC測定の結果、重量平均分子量は約9000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.8であった。
【0131】
〔合成例6:A−6の合成〕
パラ−(1−エトキシエトキシカルボニル)−α−メチルスチレン84.3g(0.36モル)、p−ビニルフェニルグリシジルエーテル31.7g(0.18モル)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル7.8g(0.06モル)およびメチルイソブチルケトン300mlを500mlの3頚フラスコに仕込み、これにラジカル重合開始剤として触媒量の2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオン酸メチル)を添加し、窒素気流下、80℃で6時間重合させた。反応液を冷却後、大量のヘプタンに注いでポリマーを析出させた。結晶を濾取した後、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルに溶解し、溶液中に含まれるヘプタンとメチルイソブチルケトンを減圧留去することにより、ポリマーA−6[パラ−(1−エトキシエトキシカルボニル)−α−メチルスチレン/p−ビニルフェニルグリシジルエーテル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル]をジエチレングリコールエチルメチルエーテル溶液として得た。
【0132】
得られたポリマーの分子量と分子量分布は、ポリスチレンを標準としたGPC測定の結果、重量平均分子量は約5000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.7であった。
【0133】
〔合成例7:A−7の合成〕
パラ−(2−オキサシクロヘキシル)オキシカルボニルスチレン69.7g(0.3モル)、メタクリル酸グリシジル21.3g(0.15モル)、メタクリル酸ベンジル15.9g(0.09モル)、メタクリル酸5.2g(0.06モル)およびメチルイソブチルケトン300mlを500mlの3頚フラスコに仕込み、これにラジカル重合開始剤として触媒量の2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオン酸メチル)を添加し、窒素気流下、80℃で6時間重合させた。反応液を冷却後、大量のヘプタンに注いでポリマーを析出させた。結晶を濾取した後、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルに溶解し、溶液中に含まれるヘプタンとメチルイソブチルケトンを減圧留去することにより、ポリマーA−7[パラ−(2−オキサシクロヘキシル)オキシカルボニルスチレン/メタクリル酸グリシジル/メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸]をジエチレングリコールエチルメチルエーテル溶液として得た。
【0134】
得られたポリマーの分子量と分子量分布は、ポリスチレンを標準としたGPC測定の結果、重量平均分子量は約7000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.8であった。
【0135】
〔合成例8:A−8の合成〕
パラ−(1−エトキシエトキシカルボニル)スチレン66.1g(0.3モル)、メタクリル酸(1−エチル−3−オキサシクロブチル)メチル33.2g(0.18モル)、メタクリル酸ベンジル21.1g(0.12モル)およびメチルイソブチルケトン300mlを500mlの3頚フラスコに仕込み、これにラジカル重合開始剤として触媒量の2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオン酸メチル)を添加し、窒素気流下、80℃で6時間重合させた。反応液を冷却後、大量のヘプタンに注いでポリマーを析出させた。結晶を濾取した後、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルに溶解し、溶液中に含まれるヘプタンとメチルイソブチルケトンを減圧留去することにより、ポリマーA−8[パラ−(1−エトキシエトキシカルボニル)スチレン/メタクリル酸(1−エチル−3−オキサシクロブチル)メチル/メタクリル酸ベンジル]をジエチレングリコールエチルメチルエーテル溶液として得た。
【0136】
得られたポリマーの分子量と分子量分布は、ポリスチレンを標準としたGPC測定の結果、重量平均分子量は約8000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.7であった。
【0137】
〔ポリマーA−9〜A−15の合成〕
上述した製造方法と同様の方法により後掲に示すポリマーA−9〜A−15を得た。 〔合成比較例1:A’−16の合成〕
パラ-tert-ブトキシカルボニルスチレン61.3g(0.3モル)、メタクリル酸グリシジル21.3g(0.15モル)、メタクリル酸ベンジル26.4g(0.15モル)およびメチルイソブチルケトン300mlを500mlの3頚フラスコに仕込み、これにラジカル重合開始剤として触媒量の2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオン酸メチル)を添加し、窒素気流下、80℃で6時間重合させた。反応液を冷却後、大量のヘプタンに注いでポリマーを析出させた。結晶を濾取した後、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルに溶解し、溶液中に含まれるヘプタンとメチルイソブチルケトンを減圧留去することにより、ポリマーA’−9[パラ-tert-ブトキシカルボニルスチレン/メタクリル酸グリシジル/メタクリル酸ベンジル]をジエチレングリコールエチルメチルエーテル溶液として得た。
【0138】
得られたポリマーの分子量と分子量分布は、ポリスチレンを標準としたGPC測定の結果、重量平均分子量は約8000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.8であった。
【0139】
〔合成比較例2:A’−17の合成〕
ポリ4−ヒドロキシスチレン(日本曹達株式会社製VP−8000) 72.1gとエチルビニルエーテル16.4gおよび酢酸エチル300mlを500mlの3頚フラスコに仕込み、これに触媒量のパラトルエンスルホン酸を添加し、窒素気流下、室温下で3時間反応させた。少量のトリエチルアミンを添加した後、純水で水洗する。酢酸エチル層にジエチレングリコールエチルメチルエーテルを添加し、酢酸エチルを減圧留去することにより、ポリマーA‘−11(p−1−エトキシエトキシスチレン/p−ヒドロキシスチレン)をジエチレングリコールエチルメチルエーテル溶液として得た。
【0140】
得られたポリマーのp−1−エトキシエトキシスチレン単位とp−ヒドロキシスチレン単位の構成比率はNMR測定から約35:65であった。また、ポリスチレンを標準としたGPC測定の結果、重量平均分子量は約9000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.2であった。
【0141】
[合成比較例3:A’−18の合成]
特開2004−264623号公報の合成例1に従って、A‘−12の合成を行なった。
3頚フラスコに2,2‘−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)7重量部、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル200重量部を仕込み、引き続き1−(シクロヘキシルオキシ)エチルメタクリレート40重量部、スチレン5重量部、メタクリル酸グリシジル45重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10重量部およびα−メチルスチレンダイマー3重量部を仕込み窒素置換した後、ゆるやかに攪拌を始めた。溶液の温度を70℃に上昇させ、この温度を5時間保持し共重合体(A’−12)を含む重合体溶液を得た。得られたポリマーの分子量はポリスチレンを標準としたGPC測定の結果、重量平均分子量は約11000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.9であった。
【0142】
〔実施例1〜19および比較例1〜4〕
(1)ポジ型感光性樹脂組成物溶液の調製
下記表1に示す各成分を混合して均一な溶液とした後、ポアサイズが0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターを用いてろ過して、ポジ型感光性樹脂組成物溶液を調製した。
【0143】
(2)保存安定性の評価
ポジ型感光性樹脂組成物溶液の23℃における粘度を、東機産業株式会社製E型粘度計を使用して測定した。該組成物を23℃の恒温層に1ヶ月間保存した後の粘度を測定した。調製後の粘度に対して、室温1ヶ月間保存後の粘度上昇が5%未満の場合を○、5%以上の場合を×とした。その結果を下記表2に示した。
【0144】
(3)感度及び現像時の残膜率の評価
シリコン酸化膜を有するシリコンウエハー上にポジ型感光性樹脂組成物溶液を回転塗布した後、100℃で60秒間ホットプレート上でプリベークして膜厚3μmの塗膜を形成した。
次に、i−線ステッパー(キャノン社製 FPA−3000i5+)を用いて、所定の
マスクを介して露光した。そして、50℃で60秒間ベークした後、表2に記載のアルカリ現像液(2.38質量%あるいは0.4%質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)で23℃で60秒間現像した後、超純水で1分間リンスした。これらの操作により5μmのラインアンドスペースを1:1で解像する時の最適露光量(Eopt)を感度とした。
【0145】
現像後の未露光部の膜厚を測定し、塗布後の膜厚に対する比率(現像後の未露光部膜厚÷塗布後の膜厚×100(%))を求めることにより、現像時の残膜率を評価した。
【0146】
感度及び現像時の残膜率の評価結果を表2に示した。
【0147】
(4)耐熱性
上記(3)において、シリコン酸化膜を有するシリコンウエハーの代わりに透明基板(コーニング社製コーニング1737)を用いた以外は上記(3)と同様に塗膜を形成し、プロキシミティー露光装置(ウシオ電気社製 UX−1000SM)を用いて、所定のマスクを密着させて、365nmでの光強度が18mW/cmである紫外線を用いて露光した。次に、表2に記載のアルカリ現像液(2.38質量%あるいは0.4質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)を用いて23℃で60秒間現像した後、超純水で10秒間リンスした。これらの操作により10μmのラインアンドスペースが1:1となるパターンを作成した。得られたパターンを、さらに100秒間全面露光し、オーブン中で220℃で1時間加熱し、加熱硬化膜をガラス基板上に形成した。
【0148】
加熱硬化前後のボトム寸法の変化率(1−加熱硬化膜のボトム寸法÷現像後のボトム寸法)×100(%)を測定することにより耐熱性の評価を行なった。
耐熱性の評価結果を表2に示した。
【0149】
(5)透過率及び密着性
上記(4)と同様に塗膜を形成し、露光することなく、表2に記載のアルカリ現像液(2.38質量%、あるいは0.4質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)を用いて23℃で60秒間現像した後、超純粋で10秒間リンスした。次にプロキシミティ露光装置(ウシオ電気社製 UX−1000SM)を用いて、365nmでの光強度が18mW/cmである紫外線を用いて100秒間全面露光した。次いで、オーブン中で240℃で1時間加熱することにより、加熱硬化膜をガラス基板上に形成した。
【0150】
得られた加熱硬化膜の透過率を、分光光度計(U−3000:日立製作所製)を用いて、波長400〜800nmで測定した。
【0151】
加熱硬化膜にカッターを用いて、縦横に1mmの間隔で切り込みを入れ、スコッチテープを用いてテープ剥離試験を行なった。テープ裏面に転写された硬化膜の面積から硬化膜と基板間の密着性を評価した。その面積が1%未満の場合を○、1〜5%未満の場合を△、5%以上の場合を×とした。
透過率及び密着性の評価結果を表2に示した。
[実施例20]
実施例18の組成物を用いて以下のようにしてパターンを形成した。
2,160×2,460mmのガラス基板上に感光性樹脂組成物をスリット塗布した後、90℃で90秒間ホットプレート上においてプリベークして溶剤を除去して膜厚3μmの塗膜を形成した。次に、FX−85S((株)ニコン製)を用いて、直径15μmのコンタクトホールパターンのマスクを介して最適露光量露光した。露光後、0.4質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により23℃で60秒間シャワー現像した後、超純水で1分間リンスした。これらの操作により、パターンを得た。さらに得られたパターンを、全面露光し、オーブン中で220℃で1時間加熱し、加熱硬化膜をガラス基板上に形成した。電子顕微鏡で観察したところ、ボトム直径15μmのテーパー形状のきれいなコンタクトホールパターンであった。
【0152】
[実施例21]
露光を波長355nmのレーザに変更したこと以外は実施例20と同様にコンタクトホールパターンを作成した。実施例20と同様にきれいなコンタクトホールパターンが得られた。尚、レーザ装置は、株式会社ブイテクノロジー社製の「AEGIS」を使用した

【表1】

【0153】
表1中に記載されている(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、塩基性化合物、溶剤及び界面活性剤は、下記の通りである。
【0154】
(A)成分
構成単位の右側の数値は、構成単位のモル比を表す。
【化19】

【0155】
【化20】

【0156】
【化21】

【0157】
【化22】

【0158】
【化23】

【0159】
(B)成分
【化24】

【0160】
【化25】

【0161】
(C)成分
C1:JER1001(ジャパンエポキシレジン(株)製)
C2:JER834(ジャパンエポキシレジン(株)製)
C3:JER157S70(ジャパンエポキシレジン(株)製)
C4:JER154(ジャパンエポキシレジン(株)製)。
【0162】
(D)成分
D1:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
D2:β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
D3:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン。
【0163】
〔塩基性化合物〕
E1:4−ジメチルアミノピリジン
E2:1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン。
【0164】
〔界面活性剤〕
F1:フロラード F−430(スリーエム社製)
F2:メガファック R−08(大日本インキ化学工業製)
F3:PolyFox PF−6320(OMNOVA社製)
W−3:
【化26】

【0165】
〔増感剤〕
DBA:9,10−ジブトキシアントラセン
【表2】

【0166】
表2から、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、感度、残膜率、保存安定性に優れ、且つ、硬化させることにより耐熱性、密着性、透過率などに優れる硬化膜を形成し得ることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される構成単位とカルボキシル基と反応して共有結合を形成し得る官能基を有する構成単位を含有し、アルカリ不溶性若しくはアルカリ難溶性であり、且つ、酸解離性基が解離したときにアルカリ可溶性となる樹脂、及び(B)活性光線の照射により酸を発生する化合物を含有することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】

一般式(1)に於いて、
は、水素原子、メチル基、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子、直鎖状又は分岐状アルキル基を表す。但し、R及びRが同時に水素原子の場合を除く。
は、置換されてもよい直鎖状、分岐状あるいは環状アルキル基、又はアラルキル基を表す。
またはRと、Rとが連結して環状エーテルを形成しても良い。
【請求項2】
(C)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物(但し、前記Aを除く)を更に含有することを特徴とする請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(B)成分が波長300nm以上の活性光線の照射により酸を発生する化合物を含有することを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
(B)成分が、下記一般式(2)で表されるオキシムスルホネート基を含む化合物を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化2】

一般式(2)に於いて、
は、置換されてもよい直鎖状、分岐状、環状アルキル基、あるいは置換されてもよいアリール基を表す。
【請求項5】
一般式(2)で表されるオキシムスルホネート基を含む化合物が、下記一般式(2−1)で表される化合物であることを特徴とする請求項4に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化3】

一般式(2−1)に於いて、
は、式(2)におけるRと同じである。
Xは、直鎖状あるいは分岐状アルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。
mは、0〜3の整数を表す。mが2又は3であるとき、複数のXは同一でも異なっていてもよい。
【請求項6】
一般式(2)で表されるオキシムスルホネート基を含む化合物が、下記一般式(2−2)で表される化合物であることを特徴とする請求項4に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化4】

一般式(2−2)において、
は、一般式(2)におけるRと同じである。
は、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基又はニトロ基を表す。
lは、0〜5の整数を表す。lが2以上であるとき、複数のRは同一でも異なっていてもよい。
【請求項7】
前記カルボキシル基と反応して共有結合を形成し得る官能基がエポキシ基であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記カルボキシル基と反応して共有結合を形成し得る官能基を有する構成単位が、下記一般式(3)〜(5)のいずれかで表されるラジカル重合性単量体由来の構成単位であることを特徴とする請求項7に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化5】

一般式(3)〜(5)において、
は、水素原子、メチル基又はハロゲン原子を表す。
〜R15は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を表す。
Xは、2価の連結基を表す。
nは、1〜10の整数である。
【請求項9】
前記カルボキシル基と反応して共有結合を形成し得る官能基がオキセタニル基であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物
【請求項10】
前記カルボキシル基と反応して共有結合を形成し得る官能基を有する構成単位が、下記一般式(6)で表されるラジカル重合性単量体由来の構成単位であることを特徴とする請求項9に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化6】

式中、
は、水素原子、メチル基又はハロゲン原子を表す。
〜R12は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を表す。
Xは、2価の連結基を表す。
nは、1〜10の整数である。
【請求項11】
(D)密着助剤を更に含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥し、塗膜を形成する工程、マスクを介して活性光線を用いて露光する工程、アルカリ現像液を用いて現像し、パターンを形成する工程、及び、得られたパターンを加熱処理する工程を含むことを特徴とする硬化膜形成方法。
【請求項13】
更に、アルカリ現像液を用いて現像し、パターンを形成する工程後、得られたパターンを加熱処理する工程前に、全面露光する工程を含むことを特徴とする請求項12に記載の硬化膜形成方法。
【請求項14】
請求項12あるいは請求項13に記載の硬化膜形成方法を用いて形成された硬化膜。
【請求項15】
請求項14に記載の硬化膜を有する液晶表示素子。
【請求項16】
請求項14に記載の硬化膜を有する集積回路素子。
【請求項17】
請求項14に記載の硬化膜を有する固体撮像素子。
【請求項18】
請求項14に記載の硬化膜を有する有機EL素子。

【公開番号】特開2010−282177(P2010−282177A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90259(P2010−90259)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】