説明

ポリアニリン組成物、ポリアミック酸組成物、ポリイミド成型物及びその製造方法、無端状ベルト、ベルト張架装置並びに画像形成装置

【課題】良好な貯蔵安定性と効率的な導電性の付与とを両立したポリアニリン組成物、良好な貯蔵安定性と優れた導電性とを両立したポリアミック酸組成物、電気抵抗値および膜厚のバラツキを良好に抑制し品質に優れたポリイミド成型物、電気抵抗値および膜厚のバラツキを良好に抑制し品質に優れた無端状ベルト、及び品質に優れた画像を形成することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】少なくともポリアニリンと熱潜在性化合物とを含有するポリアニリン組成物、少なくとも前記ポリアニリン組成物とポリアミック酸とを含有するポリアミック酸組成物、前記ポリアミック酸組成物を脱水イミド化して作製されるポリイミド成型物、前記ポリアミック酸組成物を脱水イミド化し環の形状に成形してなる無端状ベルト、及び前記ポリイミド成型物を具備する画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアニリン組成物、ポリアミック酸組成物、ポリイミド成型物及びその製造方法、無端状ベルト、ベルト張架装置並びに画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアニリンは、空気中での安定性、製造コストの低減、導電性の制御の容易性等の特徴から、プラスチック電池の電極材料、帯電防止材、表示素子、電子デバイス、コンデンサー、電磁シールド材、静電吸着用フィルム、導電ペースト材などに広く用いられている。さらにポリアニリンは、導電性や可撓性を付与するための添加剤として、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、ゴム系のポリマー、熱可塑性樹脂等の高分子材料に混合して用いられている。
【0003】
また、ポリイミド樹脂は、その耐熱性、耐放射線性、耐薬品性、機械的強度、寸法安定性等の特徴から、電気電子部品の分野から航空機の分野まで幅広く使用されている。例えば、電気電子部品の分野では、フレキシブルプリント基板、液晶表示素子の液晶配向膜、半導体装置の絶縁膜又は保護膜、伝導体被覆膜などに広く用いられている。
また近年では、ポリイミド樹脂は画像形成装置の部品、例えば、用紙の分離爪、ベアリングや、定着ベルト、転写ベルト、用紙搬送ベルト等のベルト部材等に使用されている。
【0004】
ここで上記画像形成装置とは、光導電性材料からなる感光体上に電荷を形成(帯電)し、変調した画像信号に基づきレーザーなどの露光により静電潜像を形成した後、帯電したトナーにより静電潜像を現像してトナー像とする。次いで、このトナー像を直接又は中間転写体を介して、紙、厚紙、OHPシート等の記録媒体に転写し、熱と圧力による定着方式(熱定着方式)等の手段によって定着させ画像を得るものである。
【0005】
これまで、上記熱定着方式としては、2本のロールによって形成される間隙に記録媒体を通して、圧力と熱とを与える2ロール定着方式が提供されてきた。しかし、近年、機械の高速化や、環境に配慮するための省エネルギー化に対応するために、熱を与える可動のロールとベルトとを定着体として用いた方式(いわゆるフリーベルトニップ定着方式)が提供されている(例えば、特許文献1及び2参照)。この方式は、記録媒体と定着体の接触面積が大きいことと、ロールが薄肉なことから、従来の2ロール定着方式に比べ、高速定着及び省エネルギー(定着体の昇温時間の短縮等)での稼動が可能であるとの利点を有する。
【0006】
前記転写ベルト、用紙搬送ベルト、定着ベルト等の材料としては、前述の通りポリイミド樹脂が、その耐熱性、寸法安定性、機械的強度から適している。前記転写ベルトや用紙搬送ベルト等として用いる場合、ベルトは半導電性(上記「半導電性」とは体積抵抗率が10Ω・cm以上1013Ω・cm以下であることを意味し、本明細書において共通とする)であることが必要であり、また前記定着ベルトとして用いる場合にも、半導電性であることを求められる場合があるが、ポリイミド樹脂自体は一般に絶縁性(上記「絶縁性」とは体積抵抗率が1013Ω・cmを超えることを意味し、本明細書において共通とする)であるため、ポリイミド樹脂に対して各種の導電性物質(ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリチオール、ポリピロール、ポリ−p−フェニレン、カーボンブラック、グラファイト、金属粒子、酸化インジウム等)を混合させることにより電気抵抗値を制御している。これらの中でも、可撓性の面から、ポリアニリンなどの導電性高分子を混合したポリイミド樹脂が良好に用いられている(例えば、特許文献3及び4参照)。
【0007】
尚、ポリイミド樹脂を用いたベルトなどのポリイミド成型物を作製するための塗料、その他の接着剤等としてはポリアミック酸組成物が利用されており、一般に、ポリイミド樹脂は溶剤に不溶なため、その前駆体であるポリアミック酸の溶液を成型し、溶媒の乾燥後に加熱してアミック酸基の脱水イミド化反応を行うことによって、ポリイミド成型物が得られる。上記脱水イミド化反応を好適に進行させる観点から、ポリアミック酸組成物には一般に触媒を添加して用いる(例えば、特許文献5及び6参照)。
【0008】
前記ポリアミック酸組成物に導電剤として前記ポリアニリンを混合する場合、ポリアニリンと共に、ポリアニリンに導電性を付与するドーパントを分散混合し、ポリアミック酸組成物からポリイミド成型物を得る。その際、上記ドーパントとしては一般にスルホン酸類などの酸性化合物が用いられるため、該酸性化合物(ドーパント)には脱水イミド化反応を好適に進行させるための触媒としての機能も併せ持たせることができる。
【0009】
また、ポリアニリンを、前述のプラスチック電池の電極材料や帯電防止材等として単独で用いる場合においても、ドーパントとしてスルホン酸類等が添加され、溶剤中などに混合分散した後成型し加熱乾燥することによって用いられる(例えば、特許文献7及び8)。
【特許文献1】特開2005−37678号公報
【特許文献2】特開2003−107936号公報
【特許文献3】特開2001−109277号公報
【特許文献4】特表平2−500288号公報
【特許文献5】特開2002−283366号公報
【特許文献6】特開2004−287005号公報
【特許文献7】特開平8−41321号公報
【特許文献8】特開2005−100956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、従来のポリアニリン組成物やポリアミック酸組成物においては、良好な貯蔵安定性を得ることが難しく、品質に優れたポリイミド成型物を提供する観点からも良好な貯蔵安定性と優れた導電性とを両立することが望まれていた。
【0011】
即ち本発明の目的は、良好な貯蔵安定性と効率的な導電性の付与とを両立したポリアニリン組成物、良好な貯蔵安定性と優れた導電性とを両立したポリアミック酸組成物、電気抵抗値および膜厚のバラツキを良好に抑制し品質に優れたポリイミド成型物及び該ポリイミド成型物を容易に製造することができるポリイミド成型物の製造方法、電気抵抗値および膜厚のバラツキを良好に抑制し品質に優れた無端状ベルト、電気抵抗値および膜厚のバラツキを良好に抑制し、周回駆動に対しても優れた品質を示すベルト張架装置、並びに品質に優れた画像を形成することができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、熱潜在性化合物を含むポリアニリン組成物を用いることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち請求項1に係る発明は、少なくとも、ポリアニリンと、熱潜在性化合物と、を含有するポリアニリン組成物である。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の熱潜在性化合物の解離生成物である塩基性化合物が、前記熱潜在性化合物の解離温度以下の沸点を有するポリアニリン組成物である。
【0015】
請求項3に係る発明は、少なくとも、請求項1又は請求項2に記載のポリアニリン組成物と、ポリアミック酸と、を含有するポリアミック酸組成物である。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載のポリアミック酸組成物を脱水イミド化して作製されるポリイミド成型物である。
【0017】
請求項5に係る発明は、請求項3に記載のポリアミック酸組成物を用い、成型器にて成型し乾燥させる乾燥成型工程と、成型後のポリアミック酸組成物を脱水イミド化するイミド化工程と、を有するポリイミド成型物の製造方法である。
【0018】
請求項6に係る発明は、請求項3に記載のポリアミック酸組成物を脱水イミド化し、環の形状に成形してなる無端状ベルトである。
【0019】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の無端状ベルトと、前記無端状ベルトを内周面側から回転可能に張架する複数の張架部材と、を備えるベルト張架装置である。
【0020】
請求項8に係る発明は、像保持体と、該像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成手段と、該潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、該トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写されたトナー像を定着する定着手段と、を有してなり、請求項4に記載のポリイミド成型物を具備する画像形成装置である。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明によれば、熱潜在性化合物を含有しない場合に比べて、良好な貯蔵安定性と効率的な導電性の付与とを両立することができる。
【0022】
請求項2に係る発明によれば、熱潜在性化合物の解離生成物である塩基性化合物の沸点を考慮しない場合に比べて、より効率的な導電性の付与を実現することができる。
【0023】
請求項3に係る発明によれば、熱潜在性化合物を有するポリアニリン組成物を含有しない場合に比べて、良好な貯蔵安定性と優れた導電性とを両立することができる。
【0024】
請求項4に係る発明によれば、熱潜在性化合物を有するポリアニリン組成物を用いない場合に比べて、電気抵抗値および膜厚のバラツキを良好に抑制し品質を向上させることができる。
【0025】
請求項5に係る発明によれば、熱潜在性化合物を有するポリアニリン組成物を用いない場合に比べて、電気抵抗値および膜厚のバラツキを良好に抑制し品質を向上させたポリイミド成型物を容易に製造することができる。
【0026】
請求項6に係る発明によれば、熱潜在性化合物を有するポリアニリン組成物を用いない場合に比べて、電気抵抗値および膜厚のバラツキを良好に抑制し品質を向上させることができる。
【0027】
請求項7に係る発明によれば、熱潜在性化合物を有するポリアニリン組成物を用いた無端状ベルトを具備しない場合に比べて、電気抵抗値および膜厚のバラツキを良好に抑制し、周回駆動に対しても品質を向上させることができる。
【0028】
請求項8に係る発明によれば、熱潜在性化合物を有するポリアニリン組成物を用いた無端状ベルトを具備しない場合に比べて、品質に優れた画像を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
<ポリアニリン組成物>
まず、好ましい態様である第1の実施形態に係るポリアニリン組成物について詳細に説明する。
第1の実施形態に係るポリアニリン組成物は、少なくともポリアニリンと、熱潜在性化合物とを含有することを特徴とする。
【0030】
また、第1の実施形態に係るポリアニリン組成物は、ポリアニリン及び熱潜在性化合物に加えて更に溶剤、添加剤等を含有させることができる。用いられるポリアニリン、熱潜在性化合物の詳細を以下に示す。
【0031】
−ポリアニリン−
一般にポリアニリンは、アニリン類のモノマーを重合させることにより得ることができる。上記第1の実施形態に係るポリアニリン組成物に用いるポリアニリンとしては、下記一般式(I)で表されるキノンジイミン構造単位及びフェニレンジアミン構造単位を主たる繰り返し単位として有するポリアニリンが好ましく用いられる。
【0032】
【化1】

【0033】
(上記一般式(I)中、m及びnはそれぞれ繰り返し単位中のキノンジイミン構造単位及びフェニレンジアミン構造単位のモル分率を示し、0<m<1、0<n<1、m+n=1である。)
【0034】
ポリアニリンを重合する原料(モノマー)となるアニリン類としては、アニリン、トルイジン、キシリジン、アニシジン、フェネチジン、クレシジン、プソイドクミジン、メシジン、クミジン、プレーニジン、ジュリジン、イソジュリジン、セミジン、ベンジジン、トリジン、ジアニシジン等が挙げられる。
【0035】
ポリアニリンの数平均分子量としては4,000以上、400,000以下が好ましい。尚、本明細書において数平均分子量は、以下の条件で測定することができる。
測定機:HLC−8120GPC(TOSOH社製)
検出器:UV8020(TOSOH社製)、波長254nm
カラム:TSK guard column Super H−L、TSK SuperH3000、TSK Super H2500、TSK Super H2000(以上、TOSOH社製)をこの順に直列に連結
流速:0.4ml/min
溶剤:THF(テトラヒドロフラン)
カラム温度:40℃
分子量基準物質:標準ポリスチレン(TOSOH社製)
【0036】
−熱潜在性化合物−
前記第1の実施形態に係るポリアニリン組成物に用いられる熱潜在性化合物とは、常温(0℃以上30℃以下程度)の条件では活性を示さず、外部刺激としての加熱により活性を示す化合物のことをさし、本明細書においては「解離温度が50℃以上の化合物」を熱潜在性化合物と定義する。
【0037】
尚ここで、上記解離温度の測定方法について説明する。
本明細書における「解離温度」とは、化合物が温度変化により、高分子中に包含されている分子の高分子外放出、空孔化合物に分配・吸着している分子の脱着、塩の解離、活性を示す反応基の生成、錯体の解離などの分子構造変化を起こし、これによって初めて活性を示す温度をさす。
【0038】
該解離温度は、適当な反応系、例えば前記熱潜在性化合物を含有したポリアミック酸組成物を試料とした反応により、示差走査熱量測定法を用いてDSC発熱曲線を作製することにより求めることができる。具体的には、感度が温度に依存しない入力補償示差走査熱量測定装置(Diamond DSC、株式会社パーキンエルマージャパン製)を用いることができ、試料10mgを該装置により、一定の測定条件(昇温速度:40℃/min、基準物質:α−アルミナ)の下で測定を行い、横軸が温度(℃)、縦軸が熱流量(J/s)のチャートから吸熱ピーク時の温度を読みとり、「解離温度」を求めることができる。
尚、本明細書においては、市販品の熱潜在性化合物に解離温度またはそれに対応する値についての記載があるものに関してはその値を優先して用い、その他の熱潜在性化合物の解離温度については、上記方法によって測定した値を用いた。
【0039】
例えば、前記第1の実施形態に係るポリアニリン組成物を後述のポリイミド成型物に用いる場合、熱潜在性化合物の解離温度は、ポリイミド成型物の製造方法における乾燥工程において、有機溶剤の沸点以上で、且つポリアミック酸組成物のイミド化反応が起こらない乾燥温度を指定することが品質の点で好ましいことから、90℃以上であることが好ましく、120℃以上であることが特に好ましい。また、解離温度の上限値は、イミド化行程での速やかな反応を行うことが、品質及び生産コストの点で好ましいことから、180℃以下であることが好ましく、150℃以下であることが特に好ましい。
【0040】
また、上記熱潜在性化合物が解離生成物として塩基性化合物を生成する場合、該塩基性化合物は上記熱潜在性化合物の解離温度以下の沸点を有することが好ましい。更には、熱潜在性化合物の解離温度より5℃以上低いことがより好ましく、10℃以上低いことが特に好ましい。また、上記沸点の下限値としては40℃以上であることが好ましい。
尚、上記塩基性化合物の沸点が、上記熱潜在化合物の解離温度以下であることは、微分熱重量分析(Derivative Thermogravimetry)による重量減少測定により確認することができる。具体的には、DTG測定器(Thermal Analyzer DT−40、島津製作所)を用いることができ、試料10mgを該装置により、一定の測定条件(昇温速度:40℃/min、基準物質:α―アルミナ)の下で測定を行い、横軸が温度(℃)、縦軸が試料重量(mg)のチャートから上記塩基性化合物の気化による重量減少ピーク時の温度を読み取り、「沸点」とすることができる。
【0041】
熱潜在性化合物としては、例えば以下のものが挙げられる。
(a)プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体をポリマーで粒子状に包んだマイクロカプセル
(b)ゼオライトなどの空孔化合物にプロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を吸着させたもの
(c)プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を塩基でブロックしたもの(熱潜在性プロトン酸化合物)
(d)プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を一級もしくは二級のアルコールでエステル化したもの
(e)プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体をビニルエーテル類及び/又はビニルチオエーテル類でブロックしたもの
(f)三フッ化ホウ素のモノエチルアミン錯体
(g)三フッ化ホウ素のピリジン錯体
尚、これら中でも、活性、貯蔵安定性、入手性、コストの面から(c)プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を塩基でブロックしたもの(熱潜在性プロトン酸化合物)が特に好ましい。
【0042】
(a)プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体をポリマーで粒子状に包んだマイクロカプセル
プロトン酸としては、硫酸、塩酸、酪酸、ギ酸、硝酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、リンフッ化水素酸、過塩素酸、モノカルボン酸、ポリカルボン酸類、プロピオン酸、シュウ酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フタル酸、マレイン酸、ペンタデカフルオロオクタン酸、酢酸、ペンタフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、モノフルオロ酢酸、モノブロモ酢酸、モノクロロ酢酸、シアノ酢酸、アセチル酢酸、ニトロ酢酸、トリフェニル酢酸、安息香酸、o、m、p−ブロモ安息香酸、o、m、p−クロロ安息香酸、o、m、p−ニトロ安息香酸、ジニトロ安息香酸、ピクリン酸、トリメチル安息香酸、o、m、p−シアノ安息香酸、チモールブルー、サリチル酸、5−アミノサリチル酸、o−メトキシ安息香酸、1,6−ジニトロ−4−クロロフェノール、2,6−ジニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、p−オキシ安息香酸、ブロモフェノールブルー、マンデル酸、フタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、α−アラニン、β−アラニン、グリシン、グリコール酸、チオグリコール酸、エチレンジアミン−N,N’−二酢酸、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸、スルホン酸、アミノナフトールスルホン酸、メタニル酸、スルファニル酸、アリルスルホン酸、ラウリル硫酸、キシレンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、スチレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキシルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸、ジエチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、ジブチルベンゼンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、エチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、ヘプチルナフタレンスルホン酸、オクチルナフタレンスルホン酸、ノニルナフタレンスルホン酸、デシルナフタレンスルホン酸、ウンデシルナフタレンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、ペンタデシルナフタレンスルホン酸、オクタデシルナフタレンスルホン酸、ジメチルナフタレンスルホン酸、ジエチルナフタレンスルホン酸、ジプロピルナフタレンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、ジペンチルナフタレンスルホン酸、ジヘキシルナフタレンスルホン酸、ジヘプチルナフタレンスルホン酸、ジオクチルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、トリメチルナフタレンスルホン酸、トリエチルナフタレンスルホン酸、トリプロピルナフタレンスルホン酸、トリブチルナフタレンスルホン酸、カンファースルホン酸、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸、エタンジスルホン酸、プロパンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、ヘキサンジスルホン酸、ヘプタンジスルホン酸、オクタンジスルホン酸、ノナンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、エチルベンゼンジスルホン酸、プロピルベンゼンジスルホン酸、ブチルベンゼンジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、ジプロピルベンゼンジスルホン酸、ジブチルベンゼンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸、プロピルナフタレンジスルホン酸、ブチルナフタレンジスルホン酸、ペンチルナフタレンジスルホン酸、ヘキシルナフタレンジスルホン酸、ヘプチルナフタレンジスルホン酸、オクチルナフタレンジスルホン酸、ノニルナフタレンジスルホン酸、ジメチルナフタレンジスルホン酸、ジエチルナフタレンジスルホン酸、ジプロピルナフタレンジスルホン酸、ジブチルナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ナフタレンテトラスルホン酸、アントラセンジスルホン酸、アントラキノンジスルホン酸、フェナントレンジスルホン酸、フルオレノンジスルホン酸、カルバゾールジスルホン酸、ジフェニルメタンジスルホン酸、ビフェニルジスルホン酸、ターフェニルジスルホン酸、ターフェニルトリスルホン酸、ナフタレンスルホン酸−ホルマリン縮合物、フェナントレンスルホン酸−ホルマリン縮合物、アントラセンスルホン酸−ホルマリン縮合物、フルオレンスルホン酸−ホルマリン縮合物、カルバゾールスルホン酸−ホルマリン縮合物、ポリビニルスルホン酸、ポリビニル硫酸、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアリルスルホン酸、ポリメタリルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリハロゲン化アクリル酸、ポリイソプレンスルホン酸、N−スルホアルキル化ポリアニリン、核スルホン化ポリアニリン等が挙げられる。
【0043】
また、プロトン酸誘導体としては、スルホン酸、リン酸等のプロトン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩などの中和物等が挙げられる。
【0044】
また、上記プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を包むポリマーの単量体として、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、イタコン酸エステル、クロトン酸エステル等のメタアクリル系化合物、スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル等の単官能性単量体、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能性単量体等が挙げられる。
【0045】
上記プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体とポリマーとをマイクロカプセル化する方法として、一例を挙げると、上記プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体と上記ポリマーの単量体(モノマー)を分散したカプセル材料に、更に添加剤として分散剤、重合促進剤を加え、分散混合し、加熱重合反応することにより上記ポリマー中に上記プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を内包したマイクロカプセルを得ることができる。この方法は、一般的な懸濁重合法又は乳化重合法に準じている。
【0046】
(b)ゼオライトなどの多孔性物質にプロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を吸着させたもの
多孔性物質としては、ゼオライト類、メソ多孔体類、粘土、活性炭等が挙げられる。
【0047】
また、吸着させるプロトン酸としては、硫酸、塩酸、酪酸、ギ酸、硝酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、リンフッ化水素酸、過塩素酸、モノカルボン酸、ポリカルボン酸類、プロピオン酸、シュウ酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フタル酸、マレイン酸、ペンタデカフルオロオクタン酸、酢酸、ペンタフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、モノフルオロ酢酸、モノブロモ酢酸、モノクロロ酢酸、シアノ酢酸、アセチル酢酸、ニトロ酢酸、トリフェニル酢酸、安息香酸、o、m、p−ブロモ安息香酸、o、m、p−クロロ安息香酸、o、m、p−ニトロ安息香酸、ジニトロ安息香酸、ピクリン酸、トリメチル安息香酸、o、m、p−シアノ安息香酸、チモールブルー、サリチル酸、5−アミノサリチル酸、o−メトキシ安息香酸、1,6−ジニトロ−4−クロロフェノール、2,6−ジニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、p−オキシ安息香酸、ブロモフェノールブルー、マンデル酸、フタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、α−アラニン、β−アラニン、グリシン、グリコール酸、チオグリコール酸、エチレンジアミン−N,N’−二酢酸、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸、スルホン酸、アミノナフトールスルホン酸、メタニル酸、スルファニル酸、アリルスルホン酸、ラウリル硫酸、キシレンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、スチレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキシルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸、ジエチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、ジブチルベンゼンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、エチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、ヘプチルナフタレンスルホン酸、オクチルナフタレンスルホン酸、ノニルナフタレンスルホン酸、デシルナフタレンスルホン酸、ウンデシルナフタレンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、ペンタデシルナフタレンスルホン酸、オクタデシルナフタレンスルホン酸、ジメチルナフタレンスルホン酸、ジエチルナフタレンスルホン酸、ジプロピルナフタレンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、ジペンチルナフタレンスルホン酸、ジヘキシルナフタレンスルホン酸、ジヘプチルナフタレンスルホン酸、ジオクチルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、トリメチルナフタレンスルホン酸、トリエチルナフタレンスルホン酸、トリプロピルナフタレンスルホン酸、トリブチルナフタレンスルホン酸、カンファースルホン酸、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸、エタンジスルホン酸、プロパンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、ヘキサンジスルホン酸、ヘプタンジスルホン酸、オクタンジスルホン酸、ノナンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、エチルベンゼンジスルホン酸、プロピルベンゼンジスルホン酸、ブチルベンゼンジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、ジプロピルベンゼンジスルホン酸、ジブチルベンゼンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸、プロピルナフタレンジスルホン酸、ブチルナフタレンジスルホン酸、ペンチルナフタレンジスルホン酸、ヘキシルナフタレンジスルホン酸、ヘプチルナフタレンジスルホン酸、オクチルナフタレンジスルホン酸、ノニルナフタレンジスルホン酸、ジメチルナフタレンジスルホン酸、ジエチルナフタレンジスルホン酸、ジプロピルナフタレンジスルホン酸、ジブチルナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ナフタレンテトラスルホン酸、アントラセンジスルホン酸、アントラキノンジスルホン酸、フェナントレンジスルホン酸、フルオレノンジスルホン酸、カルバゾールジスルホン酸、ジフェニルメタンジスルホン酸、ビフェニルジスルホン酸、ターフェニルジスルホン酸、ターフェニルトリスルホン酸、ナフタレンスルホン酸−ホルマリン縮合物、フェナントレンスルホン酸−ホルマリン縮合物、アントラセンスルホン酸−ホルマリン縮合物、フルオレンスルホン酸−ホルマリン縮合物、カルバゾールスルホン酸−ホルマリン縮合物、ポリビニルスルホン酸、ポリビニル硫酸、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアリルスルホン酸、ポリメタリルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリハロゲン化アクリル酸、ポリイソプレンスルホン酸、N−スルホアルキル化ポリアニリン、核スルホン化ポリアニリン等が挙げられる。
【0048】
また、プロトン酸誘導体としては、スルホン酸、リン酸等のプロトン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩などの中和物等が挙げられる。
【0049】
(c)プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を塩基でブロックしたもの(熱潜在性プロトン酸化合物)
熱潜在性プロトン酸化合物におけるプロトン酸としては、硫酸、塩酸、酪酸、ギ酸、硝酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、リンフッ化水素酸、過塩素酸、モノカルボン酸、ポリカルボン酸類、プロピオン酸、シュウ酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フタル酸、マレイン酸、ペンタデカフルオロオクタン酸、酢酸、ペンタフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、モノフルオロ酢酸、モノブロモ酢酸、モノクロロ酢酸、シアノ酢酸、アセチル酢酸、ニトロ酢酸、トリフェニル酢酸、安息香酸、o、m、p−ブロモ安息香酸、o、m、p−クロロ安息香酸、o、m、p−ニトロ安息香酸、ジニトロ安息香酸、ピクリン酸、トリメチル安息香酸、o、m、p−シアノ安息香酸、チモールブルー、サリチル酸、5−アミノサリチル酸、o−メトキシ安息香酸、1,6−ジニトロ−4−クロロフェノール、2,6−ジニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、p−オキシ安息香酸、ブロモフェノールブルー、マンデル酸、フタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、α−アラニン、β−アラニン、グリシン、グリコール酸、チオグリコール酸、エチレンジアミン−N,N’−二酢酸、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸、スルホン酸、アミノナフトールスルホン酸、メタニル酸、スルファニル酸、アリルスルホン酸、ラウリル硫酸、キシレンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、スチレンスルホン酸、o、m、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキシルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸、ジエチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、ジブチルベンゼンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、エチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、ヘプチルナフタレンスルホン酸、オクチルナフタレンスルホン酸、ノニルナフタレンスルホン酸、デシルナフタレンスルホン酸、ウンデシルナフタレンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、ペンタデシルナフタレンスルホン酸、オクタデシルナフタレンスルホン酸、ジメチルナフタレンスルホン酸、ジエチルナフタレンスルホン酸、ジプロピルナフタレンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、ジペンチルナフタレンスルホン酸、ジヘキシルナフタレンスルホン酸、ジヘプチルナフタレンスルホン酸、ジオクチルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、トリメチルナフタレンスルホン酸、トリエチルナフタレンスルホン酸、トリプロピルナフタレンスルホン酸、トリブチルナフタレンスルホン酸、カンファースルホン酸、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸、エタンジスルホン酸、プロパンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、ヘキサンジスルホン酸、ヘプタンジスルホン酸、オクタンジスルホン酸、ノナンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、エチルベンゼンジスルホン酸、プロピルベンゼンジスルホン酸、ブチルベンゼンジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、ジプロピルベンゼンジスルホン酸、ジブチルベンゼンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸、プロピルナフタレンジスルホン酸、ブチルナフタレンジスルホン酸、ペンチルナフタレンジスルホン酸、ヘキシルナフタレンジスルホン酸、ヘプチルナフタレンジスルホン酸、オクチルナフタレンジスルホン酸、ノニルナフタレンジスルホン酸、ジメチルナフタレンジスルホン酸、ジエチルナフタレンジスルホン酸、ジプロピルナフタレンジスルホン酸、ジブチルナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ナフタレンテトラスルホン酸、アントラセンジスルホン酸、アントラキノンジスルホン酸、フェナントレンジスルホン酸、フルオレノンジスルホン酸、カルバゾールジスルホン酸、ジフェニルメタンジスルホン酸、ビフェニルジスルホン酸、ターフェニルジスルホン酸、ターフェニルトリスルホン酸、ナフタレンスルホン酸−ホルマリン縮合物、フェナントレンスルホン酸−ホルマリン縮合物、アントラセンスルホン酸−ホルマリン縮合物、フルオレンスルホン酸−ホルマリン縮合物、カルバゾールスルホン酸−ホルマリン縮合物、ポリビニルスルホン酸、ポリビニル硫酸、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアリルスルホン酸、ポリメタリルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリハロゲン化アクリル酸、ポリイソプレンスルホン酸、N−スルホアルキル化ポリアニリン、核スルホン化ポリアニリン等が挙げられる。
【0050】
また、プロトン酸誘導体としては、スルホン酸、リン酸等のプロトン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩などの中和物等が挙げられる。
【0051】
これらプロトン酸及びプロトン酸誘導体の中でも、スルホン酸類、リン酸類が好ましく、特に、ベンゼンスルホン酸、o、m、p−トルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のベンゼンスルホン酸類が適している。
【0052】
また、プロトン酸をブロックする塩基性化合物としてはアミン類が挙げられる。アミン類は1級、2級又は3級アミンに分類され、前記第1の実施形態に係るポリアニリン組成物においては、特に制限はなくいずれも使用できる。
【0053】
1級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、セカンダリーブチルアミン、アリルアミン、メチルヘキシルアミン等が挙げられる。
【0054】
2級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、N−イソプロピル−N−イソブチルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジセカンダリーブチルアミン、ジアリルアミン、N−メチルヘキシルアミン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、モルホリン、N−メチルベンジルアミン等が挙げられる。
【0055】
3級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−t−ブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリ(2−エチルヘキシル)アミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアリルアミン、N−メチルジアリルアミン、トリアリルアミン、N,N−ジメチルアリルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−ジアミノエタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラアリル−1,4−ジアミノブタン、N−メチルピペリジン、ピリジン、4−エチルピリジン、N−ピロピルジアリルアミン、3−ジメチルアミノプロパノール、2−エチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2,4−ルチジン、2,5−ルチジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、2,4,6−コリジン、2−メチル−4−エチルピリジン、2−メチル−5−エチルピリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N−エチル−3−ヒドロキシピペリジン、3−メチル−4−エチルピリジン、3−エチル−4−メチルピリジン、4−(5−ノニル)ピリジン、イミダゾール、N−メチルピペラジン等が挙げられる。
これらアミン類の中でも、前述のように、熱潜在性化合物とした時の解離温度以下の沸点を有するもの、更には該解離温度以下の沸点を有する3級アミンがより好ましく、具体的には、トリエチルアミン、2,5−ルチジン、イミダゾール、N,N−ジメチルアリルアミンが特に好ましい。
【0056】
上記(c)熱潜在性プロトン酸化合物の市販品としては、キングインダストリーズ社製の「NACURE2501」(トルエンスルホン酸解離、メタノール/イソプロパノール溶媒、pH6.0〜7.2、解離温度80℃)、「NACURE2107」(p−トルエンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH8.0〜9.0、解離温度90℃)、「NACURE2500」(p−トルエンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH6.0〜7.0、解離温度65℃)、「NACURE2530」(p−トルエンスルホン酸解離、メタノール/イソプロパノール溶媒、pH5.7〜6.5、解離温度65℃)、「NACURE2547」(p−トルエンスルホン酸解離、水溶液、pH8.0〜9.0、解離温度107℃)、「NACURE2558」(p−トルエンスルホン酸解離、エチレン/グリコール溶媒、pH3.5〜4.5、解離温度80℃)、「NACUREXP−357」(p−トルエンスルホン酸解離、メタノール溶媒、pH2.0〜4.0、解離温度65℃)、「NACUREXP−386」(p−トルエンスルホン酸解離、水溶液、pH6.1〜6.4、解離温度80℃)、「NACUREXC−2211」(p−トルエンスルホン酸解離、pH7.2〜8.5、解離温度80℃)、「NACURE5225」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH6.0〜7.0、解離温度120℃)、「NACURE5414」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、キシレン溶媒、解離温度120℃)、「NACURE5528」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH7.0〜8.0、解離温度120℃)、「NACURE5925」(ドデシルベンゼンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH7.0〜7.5、解離温度130℃)、「NACURE1323」(ジノニルナフタレンスルホン酸解離、キシレン溶媒、pH6.8〜7.5、解離温度150℃)、「NACURE1419」(ジノニルナフタレンスルホン酸解離、キシレン/メチルイソブチルケトン溶媒、解離温度150℃)、「NACURE1557」(ジノニルナフタレンスルホン酸解離、ブタノール/2−ブトキシエタノール溶媒、pH6.5〜7.5、解離温度150℃)、「NACUREX49−110」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、イソブタノール/イソプロパノール溶媒、pH6.5〜7.5、解離温度90℃)、「NACURE3525」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、イソブタノール/イソプロパノール溶媒、pH7.0〜8.5、解離温度120℃)、「NACUREXP−383」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、キシレン溶媒、解離温度120℃)、「NACURE3327」(ジノニルナフタレンジスルホン酸解離、イソブタノール/イソプロパノール溶媒、pH6.5〜7.5、解離温度150℃)、「NACURE4167」(リン酸解離、イソプロパノール/イソブタノール溶媒、pH6.8〜7.3、解離温度80℃)、「NACUREXP−297」(リン酸解離、水/イソプロパノール溶媒、pH6.5〜7.5、解離温度90℃)、「NACURE4575」(リン酸解離、メタノール/ブタノール溶媒、pH7.0〜8.0、解離温度110℃)等が挙げられる。
【0057】
(d)プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を一級もしくは二級のアルコールでエステル化したもの
上記プロトン酸及びプロトン酸誘導体の具体例及び好ましい例としては、前記(c)において列挙したものを好適に用いることができる。
【0058】
一級もしくは二級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0059】
(e)プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体をビニルエーテル類及び/又はビニルチオエーテル類でブロックしたもの
上記プロトン酸及びプロトン酸誘導体の具体例及び好ましい例としては、前記(c)において列挙したものを好適に用いることができる。
【0060】
ビニルエーテル類としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等の脂肪族ビニルエーテル、2,3−ジヒドロフラン、3,4−ジヒドロフラン、2,3−ジヒドロ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−4,4−ジメチル−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−4,4−ジメチル−2H−ピラン−2−オン、3,4−ジヒドロ−2−エトキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2−ピラン−2−カルボン酸ナトリウム等の環状ビニルエーテル類等が挙げられる。
【0061】
ビニルチオエーテル類としては、上記ビニルエーテルに対応するビニルチオエーテル化合物が挙げられる。
【0062】
これらの熱潜在性化合物は単独又は二種類以上組み合わせて使用することができる。
前記第1の実施形態に係るポリアニリン組成物中の熱潜在性化合物の配合量は、ポリアニリンの配合量に対して、100質量%以上300質量%以下であることが好ましく、特に150質量%以上200質量%以下が適している。
【0063】
−溶媒−
上記材料を用いて第1の実施形態に係るポリアニリン組成物を得る際は、無溶剤で調製することもできるが、以下に挙げられる有機極性溶媒中で調製することが好ましい。
有機極性溶媒としては、スルホキシド系溶媒のジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等、ホルムアミド系溶媒のN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド等、アセトアミド系溶媒のN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等、ピロリドン系溶媒のN−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン等、フェノール系溶媒のピロリドンフェノール、o−、m−又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコール等、エーテル系溶媒のテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0064】
これらの有機極性溶媒は単独又は二種類以上組み合わせても使用することができ、更には他の溶剤と混合して用いこともできる。混合して用いる場合にはキシレン、トルエンなどの芳香族炭化水素も使用することができる。
【0065】
上記溶媒中で第1の実施形態に係るポリアニリン組成物を調製した場合の、ポリアニリン溶液の固形分濃度は特に限定されるものではないが、5質量%以上50質量%以下が好ましく、特に10質量%以上30質量%以下が好適である。
【0066】
また、ポリアニリン組成物の加熱乾燥温度は、熱潜在性化合物の解離温度以上で行うことが好ましい。
【0067】
前記第1の実施形態に係るポリアニリン組成物は、プラスチック電池の電極材料、帯電防止材、表示素子、電子デバイス、コンデンサー、電磁シールド材、静電吸着用フィルム、導電ペースト材などに用いることができ、また、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、ゴム系のポリマー、熱可塑性樹脂等の高分子材料に混合する、導電性や可撓性を付与するための添加剤として用いることができる。
【0068】
<ポリアミック酸組成物>
次いで、第2の実施形態に係るポリアミック酸組成物について詳細に説明する。
第2の実施形態に係るポリアミック酸組成物は、前述のとおり、ポリアニリンおよび熱潜在性化合物を含有してなるポリアニリン組成物と、ポリアミック酸と、を含有してなり、更に添加剤等を含有させることができる。ポリアミック酸組成物は種々の方法により作製することができる。
【0069】
一般的にポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることにより得られる。また、前記第2の実施形態に係るポリアミック酸組成物中へのポリアニリン組成物の分散は、(i)テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、有機極性溶媒中で溶解させてポリアミック酸を重合したポリアミック酸溶液に、ポリアニリンおよび熱潜在性化合物を含有してなるポリアニリン組成物を分散させてポリアミック酸組成物を得る方法、(ii)有機極性溶媒にポリアニリンおよび熱潜在性化合物を含有してなるポリアニリン組成物を分散させた後、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを溶解させてポリアミック酸を重合してポリアミック酸組成物を得る方法等を用いることが可能である。
【0070】
−ポリアミック酸−
前述のように、一般的にポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることにより得られる。尚、ポリアミック酸は、その一部にポリイミド構造を含んだポリイミド−ポリアミック酸共重合体であってもよい。
【0071】
用いるテトラカルボン酸二無水物としては、以下のものが挙げられ、所望の特性を得る観点から用いることができる。
【0072】
上記テトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物と、脂肪族テトラカルボン酸二無水物と、脂環式テトラカルボン酸二無水物と、の三つに大きく分類される。
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等が挙げられる。
【0073】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0074】
脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等が挙げられる。
【0075】
これらのテトラカルボン酸二無水物は単独又は二種類以上組み合わせても使用することができる。
【0076】
尚、第2の実施形態に係るポリアミック酸組成物により、画像形成装置内のベルト(中間転写ベルト、搬送ベルト、定着ベルト等)として用いられるポリイミド製の無端状ベルトを製造する場合には、上記テトラカルボン酸二無水物としては、強度の観点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましく、特に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が適している。
【0077】
また、用いるジアミンとしては以下のものが挙げられ、所望の特性を得る観点から用いることができる。
【0078】
上記ジアミンは、芳香族ジアミンと、脂肪族ジアミンと、脂環式ジアミンと、の三つに大きく分類される。
芳香族ジアミンとしては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等が挙げられ、また、当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミンとして、ジアミノテトラフェニルチオフェン等が挙げられる。
【0079】
脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミンとしては、1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエチレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等が挙げられる。
これらのジアミンは単独又は二種類以上組み合わせても使用することができる。
【0080】
尚、前記第2の実施形態に係るポリアミック酸組成物により、画像形成装置内のベルト(中間転写ベルト、搬送ベルト、定着ベルト等)として用いられるポリイミド製の無端状ベルトを製造する場合には、ポリイミド成型物の強度の観点から、芳香族ジアミンが好ましく、特に4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが適している。
【0081】
−ポリアニリン組成物−
前記第2の実施形態に係るポリアミック酸組成物中に添加する、ポリアニリンおよび熱潜在性化合物を含有してなるポリアニリン組成物の添加量は、3質量%以上45質量%以下が好ましく、特に20質量%以上35質量%以下が適している。
【0082】
−溶媒−
上記材料を用いて第2の実施形態に係るポリアミック酸組成物を得る際は、無溶剤で調製することもできるが、以下に挙げられる有機極性溶媒中で調製することが好ましい。
尚、有機極性溶媒はポリアミック酸及びポリアミック酸−ポリイミド共重合体を溶解するものであれば、特に制限はない。
【0083】
有機極性溶媒としては、スルホキシド系溶媒のジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等、ホルムアミド系溶媒のN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド等、アセトアミド系溶媒のN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等、ピロリドン系溶媒のN−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン等、フェノール系溶媒のピロリドンフェノール、o−、m−又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコール等、エーテル系溶媒のテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0084】
これらの有機極性溶媒は単独又は二種類以上組み合わせても使用することができ、更には他の溶剤と混合して用いこともできる。混合して用いる場合にはキシレン、トルエンなどの芳香族炭化水素も使用することができる。
【0085】
上記溶媒中で第2の実施形態に係るポリアミック酸組成物を調製した場合の、ポリアミック酸溶液の固形分濃度は特に限定されるものではないが、5質量%以上50質量%以下が好ましく、特に10質量%以上30質量%以下が好適である。
【0086】
−添加剤−
また、第2の実施形態に係るポリアミック酸組成物を用いてポリイミド成型物を製造する場合には、機械的強度を持たせる観点から、他の導電性物質を添加剤として混合しても良い。
前記第2の実施形態に係るポリアミック酸組成物に使用される添加剤としては、電気抵抗値の調整が容易なことから、導電性をもつカーボンブラックが好ましく、特に、分散安定性と電気抵抗の安定性より、酸化処理を施したpH5.0以下の酸化処理カーボンブラックが適している。
【0087】
酸化処理カーボンブラックとは、酸化処理により、カーボンブラックの表面にカルボキシル基、キノン基、ラクトン基、水酸基等を付与したものである。上記酸化処理としては、高温(270℃以上400℃以下程度)雰囲気下で空気と接触させ反応させる空気酸化法、常温(20℃程度)下で温度酸化する方法、コンタクト法、ファーネスブラック法等がある。
【0088】
カーボンブラックの種類としては、ケッチエンブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。また、所定の電気抵抗を得ることができれば、半導電性のカーボンブラックや、他の導電性もしくは半導電性粒子も使用することができる。他の導電性もしくは半導電性粒子としては、アルミニウム、ニッケル等の金属、酸化イットリウム、酸化錫等の酸化金属化合物、チタン酸カリウム等が挙げられる。また、LiCl等のイオン導電性物質、ポリアニリン、ポリピロール、ポリサルフォン、ポリアセチレン等の導電性高分子材料の添加も可能である。
これらを単独又は二種類以上組み合わせて使用することができる。
【0089】
上記第2の実施形態に係るポリアミック酸組成物の重合温度は、0℃以上80℃以下の範囲で行うことが好ましい。
【0090】
<ポリイミド成型物及びその製造方法>
次いで、第3の実施形態に係るポリイミド成型物について詳細に説明する。
第3の実施形態に係るポリイミド成型物は、ポリアニリンおよび熱潜在性化合物を含有するポリアニリン組成物と、ポリアミック酸と、を含有するポリアミック酸組成物を脱水イミド化して作製される。より具体的には、(1)前記ポリアミック酸組成物を用い、成型器にて成型し乾燥を行う乾燥成型工程と、(2)成型後のポリアミック酸組成物を脱水イミド化するイミド化工程と、を有する製造方法によって製造される。
【0091】
前記第3の実施形態に係るポリイミド成型物は、例えば、画像形成装置の部品である、定着ベルト、転写ベルト、用紙搬送ベルト等のベルト部材等に好適に使用される。またその他、電気電子部品の分野では、フレキシブルプリント基板、液晶表示素子の液晶配向膜、半導体装置の絶縁膜又は保護膜、伝導体被覆膜などに用いることができる。
【0092】
上記ポリイミド成型物の製造方法において、成型される形状や成型の方法は特に制限されず、適用される部材ごとに適した形状、成型方法をとることができる。例えば、上記のように画像形成装置のベルト部材として用いられる場合は、継ぎ目のない無端状ベルトであることが好ましく、以下においては、無端状ベルトの製造方法の一例について説明する。
【0093】
無端状ベルトは、以下に示す、(0)原料配合(ポリアミック酸組成物の調製)及び外型(金型)準備工程、(1)乾燥成型工程、(2)イミド化工程、(3)カット検査工程等を経て製造される。
【0094】
(0)原料配合及び外型準備工程
原料配合工程におけるポリアミック酸組成物の調製は、前述の第2の実施形態に係るポリアミック酸組成物における各材料をそれぞれ好ましい量混合することにより行われる。
外型準備工程では、SUS、鉄、アルミ、フッ素樹脂などの寸法形状の安定した耐熱性のある材料によって製造された、内壁面及び外壁面がいずれも同心円状に形成された円筒状の外型が用意される。尚、外型の内壁には離型剤層を形成する処理が施されることが好ましい。
【0095】
(1)乾燥成型工程
乾燥成型工程では、図1(A)及び(B)に示すように、前記原料配合工程にて調製したポリアミック酸組成物11Aを、前記外型準備工程で準備した外型12の内部にそのまま注入し、密封する。次いで、図2(A)及び(B)に示すように、外型12をロールミル装置などに見られる同一方向に回転した2つの軸13上に載せて回転させながら、風乾、或いはヒーター等による加熱(好ましくは50℃以上200℃以下)によって乾燥し、ポリアミック酸組成物11Aの含有溶媒を、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上揮発させ、ポリアミック酸組成物11Aを遠心成型する。
【0096】
尚、ポリアミック酸組成物11Aは、特に上記のようにヒーター等の加熱によって乾燥する場合には、加熱条件を調整してイミド化反応させないように成型され、図3に示すように、円筒状の外型12の内壁面から抜き取られる。また、上記無端状ベルトの製造方法においては、熱潜在性化合物の解離温度未満で乾燥を行うことにより脱水イミド化反応の生起を抑制することが好ましい。
【0097】
(2)イミド化工程
外型12から抜き取られた成形後のポリアミック酸組成物11Aに、図4に示すように、円柱状の内型14を挿入する。その後、ポリアミック酸組成物11Aを内型14ごとオーブン炉等の高温の加熱装置に入れ、加熱焼成し脱水イミド化させる。尚、上記無端状ベルトの製造方法におけるポリアミック酸組成物の脱水イミド化反応の温度(焼成温度)は、好ましくは150℃以上450℃以下の範囲であり、また用いる熱潜在性化合物の解離温度以上に設定することが好ましい。このイミド化工程により、ポリアミック酸組成物11Aは縮んで内型14の外壁にフィットし、イミド転化して無端状ベルト11Bとなる。
【0098】
(3)カット検査工程
図5に示すように、脱水イミド化された無端状ベルト11Bを内型14から取り外し、その後所望の長さに切断され、検査工程を経て、無端状のポリイミド成型物(無端状ベルト)が得られる。
【0099】
<画像形成装置>
次いで、第4の実施形態に係る画像形成装置について詳細に説明する。
第4の実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、該像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成手段と、該潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、該トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写されたトナー像を定着する定着手段と、を有し、且つポリアニリンおよび熱潜在性化合物を含有するポリアニリン組成物と、ポリアミック酸と、を含有するポリアミック酸組成物を脱水イミド化して作製されるポリイミド成型物を具備してなる。
【0100】
上記ポリイミド成型物が上記第4の実施形態に係る画像形成装置に適用される態様としては、画像形成装置における、中間転写体の中間転写ベルト、定着装置の定着ベルト、中間転写体を有しない一括転写方式における用紙搬送ベルト等のベルト部材等が挙げられ、特に中間転写ベルトや用紙搬送ベルトとして好適に用いることができる。
【0101】
以下、第4の実施形態に係る画像形成装置の例について説明する。
図6は、中間転写装置及び定着装置を有する画像形成装置の概略構成図である。該画像形成装置は、中間転写ベルト2及び定着ベルト52を備えており、何れも前記ポリイミド成型物が適用されている。
【0102】
上記画像形成装置は、トナー像の保持体である像保持体(感光体)1、像保持体1にトナーを供給する現像装置6、循環して像保持体1上のトナーを一次転写位置から二次転写位置へ搬送する中間転写ベルト2、像保持体1上のトナーを一次転写位置で中間転写ベルト2に転写する転写電極である導電性ロール25、二次転写位置で中間転写ベルト2のトナー像が保持された表面側に設置された転写電極であるバイアスロール3、バイアスロール3を中間転写ベルト2を挟んで対向するように配置されたバックアップロール22、バックアップロール22に圧接して回転する電極ロール26、中間転写ベルト2を支持して中間転写ベルト2の循環をガイドする支持ロール21、23、24、記録媒体41、記録媒体41を供給する記録媒体貯蔵部4、記録媒体貯蔵部4から記録媒体41をフィードするフィードロール42、トナー像が転写された記録媒体41が搬送される通路である搬送路43、及び定着ベルト52を備えた定着装置5を有する。また、中間転写ベルト2は、バックアップロール22および支持ロール21、23、24によって張架され、ベルト張架装置28を形成している。
【0103】
この画像形成装置の動作について以下に説明する。
像保持体1は、矢印A方向に回転し、図示しない帯電装置によって表面が帯電される。その帯電された像保持体1には、図示しない画像書き込み装置によってレーザが照射されて静電潜像が形成される。
【0104】
この静電潜像が現像装置6によって供給されたトナーにより可視化されて、トナー像Tが形成される。トナー像Tは、像保持体1の回転によって導電性ロール25が配置された一次転写位置に到り、導電性ロール25からトナー像Tのトナーが帯びている電荷とは逆極性の電圧が印加されて、静電的に中間転写ベルト2に吸着される。中間転写ベルト2は、一次転写位置で像保持体1表面と接しながら矢印B方向へ移動するので、像保持体1上のトナー像Tは、その移動とともに中間転写ベルト2上に順次吸着されて一次転写される。中間転写ベルト2上に転写されたトナー像は、中間転写ベルト2の循環によってバイアスロール3が設置された二次転写位置に搬送される。
【0105】
記録媒体41が、記録媒体貯蔵部4からフィードロール42によって所定のタイミングで二次転写位置の中間転写ベルト2とバイアスロール3とで形成される領域に給送される。トナー像をのせた中間転写ベルト2が、その二次転写位置で、バイアスロール3及びバックアップロール22により記録媒体41に圧接されつつ、電極ロール26からバックアップロール22を通してそのトナー像の極性と同極性の電圧が印加されることにより、そのトナー像は記録媒体41に吸着される。中間転写ベルト2は二次転写位置で記録媒体41とともに矢印Bの方向に循環するように移動するため、中間転写ベルト2上のトナー像は、その移動とともに記録媒体41に順次吸着されて二次転写される。
【0106】
トナー像が転写された記録媒体41は、搬送路43を通り定着装置5に搬送される。記録媒体41上のトナー像は、以下に図7とともに詳細に示すように、定着装置5によって加圧/加熱処理されて記録媒体41上に定着される。
【0107】
図7は、図6に示す画像形成装置の定着装置を拡大して示す概略構成図である。
定着装置5は、内部に加熱源を有する中空ロール(例えば、内部にハロゲンランプからなる加熱源を有するアルミニウム製中空ロール)51a、弾性体層(例えば、中空ロール51aの表面上に積層された液状シリコンゴム(Liquid silicone Rubber)製の弾性体層)51b、及び耐熱離型耐油層(例えば、弾性体層51bの表面にフッ素ゴムを塗布した耐熱離型耐油層)51cとで構成された、矢印C方向に回転するように駆動される定着ロール51、定着ロール51の駆動にともない矢印Dの方向に循環するように従動する定着ベルト52、定着ベルト52を定着ロール51に圧接して広い接触幅の接触領域Nを形成する加圧パッド(例えば、金属製台座上にシリコンゴムを一体成型してなる加圧パッド)56、定着ベルト52を支える第1の支持ロール54、接触領域Nから定着ベルト52の循環の上流側に位置して定着ベルト52を支えるとともに加熱部を有して定着ベルト52を予備加熱する第2の支持ロール55、接触領域Nから定着ベルト52の循環の下流側に位置して定着ベルト52を支える圧力ロール53、接触領域Nを通過した記録媒体41を定着ロール52から分離する用紙分離爪59を備える。定着ベルト52の接触領域Nと接する部分は、第2の支持ロール55と圧力ロール53に張架されており、圧力ロール53は図示しないコイルスプリングにより定着ロール51中心にむけて加圧されている。
【0108】
また、定着装置5は、定着ロール51に接触して定着ロール51表面の残留トナーを拭き取るクリーニング手段57、及び定着接触上流で定着ロール51に接触して離型剤を塗布する離型剤塗布手段58を備える。
【0109】
定着装置5の動作を以下に説明する。
未定着トナーを表面に載せた記録媒体41は、図6の搬送路43を経由して定着ベルト52の第2の支持ロール55上に搬送される。記録媒体41は未定着トナーとともに第2の支持ロール55により予備加熱される。第2の支持ロール55から接触領域Nまで定着ベルト2は水平にのびる部分を有し、その水平にのびる部分によって記録媒体41が矢印Eの方向に接触領域Nまで搬送される。接触領域Nを未定着トナー像の付着した記録媒体41が通過する際、定着ロール51がその未定着トナー像を加熱及び加圧することによりその未定着トナー像を記録媒体41上に定着させる。定着ロール51には離型剤塗布手段58によって離型剤が塗布されているため、未定着トナー像は記録媒体41に効率良く定着されるが、記録媒体41に定着されずに定着ロール51の表面に付着したトナーが存在すれば、そのトナーはクリーニング手段57によって拭き取られる。トナーが定着された記録媒体41は、接触領域Nを通過した後用紙分離爪59位置まで搬送され、用紙分離爪59によって定着ベルト52から分離され、定着装置5の下流に存在する図示しない排紙部に排出される。
【0110】
次に、図8は、中間転写定着装置を有する画像形成装置の概略構成図である。該画像形成装置は、中間転写ベルトと定着ベルトの両方の機能を兼ねる中間転写定着ベルト61を備えており、該中間転写定着ベルト61として前記ポリイミド成型物が適用されている。
【0111】
上記画像形成装置では、中間転写定着ベルト61は駆動ロール62、ガイドロール63、64、テンションロール65、及び加熱ローラ66に懸架され、ベルト張架装置70を形成している。駆動ロール62と加熱ローラ66とで形成される領域においては、それぞれ異色トナー画像が形成された四個の感光体ドラム67A、67B、67C、67Dが接し、それに対向して転写器68A、68B、68C、68Dが配置され、加熱ローラ66には加圧ローラ69が圧接されている。
【0112】
上記構成において、中間転写定着ベルト61には四個の感光体ドラム67A、67B、67C、67Dから各色のトナー画像が一次転写され、加熱ローラ66と加圧ローラ69間には記録媒体Pが送り込まれ、中間転写定着ベルト61上の多色トナー画像は記録媒体P上に二次転写されると共に加熱定着される。
【実施例】
【0113】
以下、実施例を示してさらに具体的に説明する。但し、これらの実施例に制限されるものではない。
【0114】
−ポリアミック酸溶液(1)の調製−
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたナスフラスコ(5000ml)中に、5酸化リンによって乾燥した窒素ガスを通じながら、N−メチル−2−ピロリドン2966.4gを注入した。溶液温度を60℃まで加熱した後、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル300.3g(1.5mol)を添加して溶解させた。溶液温度を60℃に保ちながら、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物441.3g(1.5mol)を添加し、攪拌して溶解した。さらに、溶液温度を60℃に保ちながら攪拌を続け、ポリアミック酸への重合反応を24時間行い、固形分濃度20質量%のポリアミック酸溶液(1)3708.0gを得た。
【0115】
[実施例1]
−ポリアニリン組成物(1−1)の調製−
ポリアニリン(パニポール社製、商品名:PanipolPA、数平均分子量:100,000)21.8gに、解離生成物がスルホン酸及び/又はその誘導体とアミンである熱潜在性化合物(NACURE5225、キングインダストリーズ社製、ドデシルベンゼンスルホン酸解離、イソプロパノール溶媒、pH6.0〜7.0、解離温度120℃、塩基性化合物(アミン:オキサゾリジン)の沸点110℃)32.7gを添加し、N−メチル−2−ピロリドン218.2gに溶解させポリアニリン組成物(1−1)を得た。
【0116】
−ポリアミック酸組成物(1−1)の調製−
ポリアミック酸溶液(1)618.0gに、ポリアニリン組成物(1−1)272.7gを添加し、溶解させポリアミック酸組成物(1−1)を得た。
【0117】
−無端状ベルトの製造−
得られたポリアミック酸組成物(1−1)を、円筒状SUS製金型(外型)の内部に注入して密封した。なお、この円筒状金型には、表面にフッ素系の離型剤を予め塗布することで、ベルト成型後の剥離性を向上させた。
円筒状金型を回転させながら、温度100℃の条件で、30分間乾燥成型工程を行い、ポリアミック酸組成物の含有溶媒の60質量%以上を揮発させ、遠心成型した。遠心成型後のポリアミック酸組成物を外型から抜き取り、その後抜き取ったポリアミック酸組成物に円柱状金型(内型)を挿入して、クリーンオーブン炉に入れ、200℃30分間脱水イミド化反応を行った。反応後のポリアミック酸組成物(即ちポリイミド成型物)を円柱状金型(内型)に嵌めたまま室温(20℃程度)で放冷し、その後円柱状金型(内型)から取り外して、カット工程を経て、内径68mm幅340mmの無端状ベルト(1−1)を得た。
【0118】
尚、この無端状ベルトの製造は、全ベルト面上でバラツキのない膜厚が得られれば、その膜厚が75μmとなるように調製された条件で製造した。
【0119】
(無端状ベルトの評価)
(I)ベルト膜厚測定(膜厚のバラツキ性)
得られた無端状ベルト(1−1)から、それぞれ長さ10cm、幅10cmの試験片をランダムに10箇所切りだした。フィルム厚み計(TECLOCK CORPORATION社製、定圧厚さ測定器PG−02)を用いて、1つの試験片に関し中心と四隅の5点の厚みを測定し、5点の平均値を1つの試験片の厚みとした。上記無端状ベルトは75μmの膜厚を基準値としており、10個の試験片のうち、基準値から一番大きい誤差を測定することにより、ベルト膜厚のバラツキ性を評価した。
【0120】
(II)イミド化率の測定
得られた無端状ベルト(1−1)から試験片を切り出し、FT−IR(堀場製作所製、顕微FT−IR分光器FT−530)によりIRスペクトルの測定を行った。IRスペクトルに現れる1500cm−1の芳香環の振動ピークを基準として、1776cm−1のイミド基に由来するカルボニル基の伸縮ピークの割合を求め、その割合の内400℃焼成ポリイミド膜のピーク割合をイミド化率100%として、ポリイミドのイミド化率を求めた。
【0121】
(III)表面抵抗率の測定
得られた無端状ベルト(1−1)を、円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極の外径Φ16mm、リング状電極部の内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、22℃/55%RH環境下、電圧100Vを印加して、印加後30ミリ秒及び10秒の抵抗値を測定した。測定値から印加後30ミリ秒の表面抵抗率の常用対数値(ρs(30msec))及び10秒の表面抵抗率の常用対数値(ρs(10sec))を算出し、式Δ=|ρs(30msec)−ρs(10sec)|から算出した。
【0122】
−画像形成装置の製造−
得られた無端状ベルト(1−1)を中間転写ベルトとして適用し、図6に記載の画像形成装置を製造した。
【0123】
(画像形成装置の評価)
(IV)印字ズレ及び濃度ムラ
上記画像形成装置にトナー(富士ゼロックス社製、商品名:DocuCentreColor 400CP用トナーカートリッジ(黒))をセットし、普通紙(富士ゼロックス社製、C2紙)を短手方向に搬送するモードにて、紙上に5000枚画像(黒の50%ハーフトーン画像)を形成し、5000枚目の50%ハーフトーン画像により、濃度ムラを下記評価基準により評価した。さらに5001枚目として用紙に対して特定の位置になるように四角い黒画像を形成し、用紙と黒画像の位置関係から印字ズレを下記評価基準により評価した。
・印字ズレ
○:印字ズレが確認されない。
△:印字ズレが若干確認できたが、問題のないレベルである。
×:印字ズレが明確に確認できる。
【0124】
・濃度ムラ
○:濃度ムラが確認されない。
△:濃度ムラが若干確認できたが、問題のないレベルである。
×:濃度ムラが明確に確認できる。
【0125】
[実施例2]
−ポリアニリン組成物(1−2)及びポリアミック酸組成物(1−2)の調製−
実施例1で得たポリアニリン組成物(1−1)及びポリアミック酸組成物(1−1)をそれぞれ25℃で14日間放置し、ポリアニリン組成物(1−2)及びポリアミック酸組成物(1−2)を得た。
【0126】
(V)粘度変化率の測定
上記ポリアニリン組成物(1−2)及びポリアミック酸組成物(1−2)について、14日間放置前の粘度(V’(Pa・s))と放置後の粘度(V(Pa・s))をそれぞれ測定した。測定は、50gをサンプルビンに密栓し、定速粘度測定装置(HAKKE社製、E型PK100)を用いて行った。定速粘度測定装置のアプリケータの形状は2°コーン型、φ30mm径のものとした。測定された放置前後の粘度から、下記式によって粘度変化率(γ)を算出した。
(式) γ=V/V’
【0127】
−ポリイミド成型物及び画像形成装置の製造−
実施例1において用いたポリアミック酸組成物(1−1)を上記ポリアミック酸組成物(1−2)に変更した以外は、実施例1に記載の方法によりポリイミド成型物及び画像形成装置を製造し、評価を行った。
【0128】
[実施例3]
−ポリアニリン組成物(1−3)及びポリアミック酸組成物(1−3)の調製−
実施例1で得たポリアニリン組成物(1−1)及びポリアミック酸組成物(1−1)をそれぞれ40℃で14日間放置し、ポリアニリン組成物(1−3)及びポリアミック酸組成物(1−3)を得た。
また、得られたポリアニリン組成物(1−3)及びポリアミック酸組成物(1−3)の放置前後の粘度を実施例2に記載の方法により測定し、粘度変化率(γ)を算出した。
【0129】
−ポリイミド成型物及び画像形成装置の製造−
実施例1において用いたポリアミック酸組成物(1−1)を上記ポリアミック酸組成物(1−3)に変更した以外は、実施例1に記載の方法によりポリイミド成型物及び画像形成装置を製造し、評価を行った。
【0130】
[実施例4]
−ポリアニリン組成物(2−1)の調製−
ポリアニリン(パニポール社製、商品名:PanipolPA、数平均分子量:100,000)21.8gに、解離生成物がリン酸及び/又はその誘導体とアミン(メラミン化合物の重合体)である熱潜在性化合物(NACURE4167、キングインダストリーズ社製、イソプロパノール/イソブタノール溶媒、pH6.8〜7.3、解離温度80℃、塩基性化合物(アミン:メラミン化合物の重合体)の沸点75℃)32.7gを添加し、N−メチル−2−ピロリドン218.2gに溶解させポリアニリン組成物(2−1)を得た。
【0131】
−ポリアミック酸組成物(2−1)の調製−
ポリアミック酸溶液(1)618.0gに、ポリアニリン組成物(2−1)272.7gを添加し、溶解させポリアミック酸組成物(2−1)を得た。
【0132】
−ポリイミド成型物及び画像形成装置の製造−
実施例1において用いたポリアミック酸組成物(1−1)を上記ポリアミック酸組成物(2−1)に変更した以外は、実施例1に記載の方法によりポリイミド成型物及び画像形成装置を製造し、評価を行った。
【0133】
[実施例5]
−ポリアニリン組成物(2−2)及びポリアミック酸組成物(2−2)の調製−
実施例4で得たポリアニリン組成物(2−1)及びポリアミック酸組成物(2−1)をそれぞれ25℃で14日間放置し、ポリアニリン組成物(2−2)及びポリアミック酸組成物(2−2)を得た。
また、得られたポリアニリン組成物(2−2)及びポリアミック酸組成物(2−2)の放置前後の粘度を実施例2に記載の方法により測定し、粘度変化率(γ)を算出した。
【0134】
−ポリイミド成型物及び画像形成装置の製造−
実施例1において用いたポリアミック酸組成物(1−1)を上記ポリアミック酸組成物(2−2)に変更した以外は、実施例1に記載の方法によりポリイミド成型物及び画像形成装置を製造し、評価を行った。
【0135】
[実施例6]
−ポリアニリン組成物(2−3)及びポリアミック酸組成物(2−3)の調製−
実施例4で得たポリアニリン組成物(2−1)及びポリアミック酸組成物(2−1)をそれぞれ40℃で14日間放置し、ポリアニリン組成物(2−3)及びポリアミック酸組成物(2−3)を得た。
また、得られたポリアニリン組成物(2−3)及びポリアミック酸組成物(2−3)の放置前後の粘度を実施例2に記載の方法により測定し、粘度変化率(γ)を算出した。
【0136】
−ポリイミド成型物及び画像形成装置の製造−
実施例1において用いたポリアミック酸組成物(1−1)を上記ポリアミック酸組成物(2−3)に変更した以外は、実施例1に記載の方法によりポリイミド成型物及び画像形成装置を製造し、評価を行った。
【0137】
[実施例7]
−ポリアニリン組成物(3−1)の調製−
ポリアニリン(パニポール社製、商品名:PanipolPA、数平均分子量:100,000)21.8gに、解離生成物が安息香酸及び/又はその誘導体とメチルアルコールであるメチルベンゾエート(熱潜在性化合物、和光純薬社製、商品名:安息香酸メチル、解離温度60℃)32.7gを添加し、N−メチル−2−ピロリドン218.2gに溶解させポリアニリン組成物(3−1)を得た。
【0138】
−ポリアミック酸組成物(3−1)の調製−
ポリアミック酸溶液(1)618.0gに、ポリアニリン組成物(3−1)272.7gを添加し、溶解させポリアミック酸組成物(3−1)を得た。
【0139】
−ポリイミド成型物及び画像形成装置の製造−
実施例1において用いたポリアミック酸組成物(1−1)を上記ポリアミック酸組成物(3−1)に変更した以外は、実施例1に記載の方法によりポリイミド成型物及び画像形成装置を製造し、評価を行った。
【0140】
[実施例8]
−ポリアニリン組成物(3−2)及びポリアミック酸組成物(3−2)の調製−
実施例7で得たポリアニリン組成物(3−1)及びポリアミック酸組成物(3−1)をそれぞれ25℃で14日間放置し、ポリアニリン組成物(3−2)及びポリアミック酸組成物(3−2)を得た。
また、得られたポリアニリン組成物(3−2)及びポリアミック酸組成物(3−2)の放置前後の粘度を実施例2に記載の方法により測定し、粘度変化率(γ)を算出した。
【0141】
−ポリイミド成型物及び画像形成装置の製造−
実施例1において用いたポリアミック酸組成物(1−1)を上記ポリアミック酸組成物(3−2)に変更した以外は、実施例1に記載の方法によりポリイミド成型物及び画像形成装置を製造し、評価を行った。
【0142】
[実施例9]
−ポリアニリン組成物(3−3)及びポリアミック酸組成物(3−3)の調製−
実施例7で得たポリアニリン組成物(3−1)及びポリアミック酸組成物(3−1)をそれぞれ40℃で14日間放置し、ポリアニリン組成物(3−3)及びポリアミック酸組成物(3−3)を得た。
また、得られたポリアニリン組成物(3−3)及びポリアミック酸組成物(3−3)の放置前後の粘度を実施例2に記載の方法により測定し、粘度変化率(γ)を算出した。
【0143】
−ポリイミド成型物及び画像形成装置の製造−
実施例1において用いたポリアミック酸組成物(1−1)を上記ポリアミック酸組成物(3−3)に変更した以外は、実施例1に記載の方法によりポリイミド成型物及び画像形成装置を製造し、評価を行った。
【0144】
[実施例10]
−ポリアニリン組成物(4−1)の調製−
ポリアニリン(パニポール社製、商品名:PanipolPA、数平均分子量:100,000)21.8gに、解離生成物がトリクロロ酢酸及び/又はその誘導体とイソブチルビニルエーテルである1−イソブトキシエチル−トリクロロアセテート(熱潜在性化合物、解離温度70℃)32.7gを添加し、N−メチル−2−ピロリドン218.2gに溶解させポリアニリン組成物(4−1)を得た。
【0145】
−ポリアミック酸組成物(4−1)の調製−
ポリアミック酸溶液(1)618.0gに、ポリアニリン組成物(4−1)272.7gを添加し、溶解させポリアミック酸組成物(4−1)を得た。
【0146】
−ポリイミド成型物及び画像形成装置の製造−
実施例1において用いたポリアミック酸組成物(1−1)を上記ポリアミック酸組成物(4−1)に変更した以外は、実施例1に記載の方法によりポリイミド成型物及び画像形成装置を製造し、評価を行った。
【0147】
[実施例11]
−ポリアニリン組成物(4−2)及びポリアミック酸組成物(4−2)の調製−
実施例10で得たポリアニリン組成物(4−1)及びポリアミック酸組成物(4−1)をそれぞれ25℃で14日間放置し、ポリアニリン組成物(4−2)及びポリアミック酸組成物(4−2)を得た。
また、得られたポリアニリン組成物(4−2)及びポリアミック酸組成物(4−2)の放置前後の粘度を実施例2に記載の方法により測定し、粘度変化率(γ)を算出した。
【0148】
−ポリイミド成型物及び画像形成装置の製造−
実施例1において用いたポリアミック酸組成物(1−1)を上記ポリアミック酸組成物(4−2)に変更した以外は、実施例1に記載の方法によりポリイミド成型物及び画像形成装置を製造し、評価を行った。
【0149】
[実施例12]
−ポリアニリン組成物(4−3)及びポリアミック酸組成物(4−3)の調製−
実施例10で得たポリアニリン組成物(4−1)及びポリアミック酸組成物(4−1)をそれぞれ40℃で14日間放置し、ポリアニリン組成物(4−3)及びポリアミック酸組成物(4−3)を得た。
また、得られたポリアニリン組成物(4−3)及びポリアミック酸組成物(4−3)の放置前後の粘度を実施例2に記載の方法により測定し、粘度変化率(γ)を算出した。
【0150】
−ポリイミド成型物及び画像形成装置の製造−
実施例1において用いたポリアミック酸組成物(1−1)を上記ポリアミック酸組成物(4−3)に変更した以外は、実施例1に記載の方法によりポリイミド成型物及び画像形成装置を製造し、評価を行った。
【0151】
[比較例1]
−ポリアニリン組成物(5−1)の調製−
ポリアニリン(パニポール社製、商品名:PanipolPA、数平均分子量:100,000)21.8gに、ドデシルベンゼンスルホン酸32.7gを添加し、N−メチル−2−ピロリドン218.2gに溶解させポリアニリン組成物(5−1)を得た。
【0152】
−ポリアミック酸組成物(5−1)の調製−
ポリアミック酸溶液(1)618.0gに、ポリアニリン組成物(5−1)272.7gを添加し、溶解させポリアミック酸組成物(5−1)を得た。
【0153】
−ポリイミド成型物及び画像形成装置の製造−
実施例1において用いたポリアミック酸組成物(1−1)を上記ポリアミック酸組成物(5−1)に変更した以外は、実施例1に記載の方法によりポリイミド成型物及び画像形成装置を製造し、評価を行った。
【0154】
[比較例2]
−ポリアニリン組成物(5−2)及びポリアミック酸組成物(5−2)の調製−
比較例1で得たポリアニリン組成物(5−1)及びポリアミック酸組成物(5−1)をそれぞれ25℃で14日間放置し、ポリアニリン組成物(5−2)及びポリアミック酸組成物(5−2)を得た。
また、得られたポリアニリン組成物(5−2)及びポリアミック酸組成物(5−2)の放置前後の粘度を実施例2に記載の方法により測定し、粘度変化率(γ)を算出した。
【0155】
−ポリイミド成型物及び画像形成装置の製造−
実施例1において用いたポリアミック酸組成物(1−1)を上記ポリアミック酸組成物(5−2)に変更した以外は、実施例1に記載の方法によりポリイミド成型物及び画像形成装置を製造し、評価を行った。
【0156】
[比較例3]
−ポリアニリン組成物(5−3)及びポリアミック酸組成物(5−3)の調製−
比較例1で得たポリアニリン組成物(5−1)及びポリアミック酸組成物(5−1)をそれぞれ40℃で14日間放置し、ポリアニリン組成物(5−3)及びポリアミック酸組成物(5−3)を得た。
また、得られたポリアニリン組成物(5−3)及びポリアミック酸組成物(5−3)の放置前後の粘度を実施例2に記載の方法により測定し、粘度変化率(γ)を算出した。
【0157】
−ポリイミド成型物及び画像形成装置の製造−
実施例1において用いたポリアミック酸組成物(1−1)を上記ポリアミック酸組成物(5−3)に変更した以外は、実施例1に記載の方法によりポリイミド成型物及び画像形成装置を製造し、評価を行った。
【0158】
[比較例4]
−ポリアニリン組成物(6−1)の調製−
ポリアニリン(パニポール社製、商品名:PanipolPA、数平均分子量:100,000)21.8gに、p−トルエンスルホン酸32.7gを添加し、N−メチル−2−ピロリドン218.2gに溶解させポリアニリン組成物(6−1)を得た。
【0159】
−ポリアミック酸組成物(6−1)の調製−
ポリアミック酸溶液(1)618.0gに、ポリアニリン組成物(6−1)272.7gを添加し、溶解させポリアミック酸組成物(6−1)を得た。
【0160】
−ポリイミド成型物及び画像形成装置の製造−
実施例1において用いたポリアミック酸組成物(1−1)を上記ポリアミック酸組成物(6−1)に変更した以外は、実施例1に記載の方法によりポリイミド成型物及び画像形成装置を製造し、評価を行った。
【0161】
[比較例5]
−ポリアニリン組成物(6−2)及びポリアミック酸組成物(6−2)の調製−
比較例4で得たポリアニリン組成物(6−1)及びポリアミック酸組成物(6−1)をそれぞれ25℃で14日間放置し、ポリアニリン組成物(6−2)及びポリアミック酸組成物(6−2)を得た。
また、得られたポリアニリン組成物(6−2)及びポリアミック酸組成物(6−2)の放置前後の粘度を実施例2に記載の方法により測定し、粘度変化率(γ)を算出した。
【0162】
−ポリイミド成型物及び画像形成装置の製造−
実施例1において用いたポリアミック酸組成物(1−1)を上記ポリアミック酸組成物(6−2)に変更した以外は、実施例1に記載の方法によりポリイミド成型物及び画像形成装置を製造し、評価を行った。
【0163】
[比較例6]
−ポリアニリン組成物(6−3)及びポリアミック酸組成物(6−3)の調製−
比較例4で得たポリアニリン組成物(6−1)及びポリアミック酸組成物(6−1)をそれぞれ40℃で14日間放置し、ポリアニリン組成物(6−3)及びポリアミック酸組成物(6−3)を得た。
また、得られたポリアニリン組成物(6−3)及びポリアミック酸組成物(6−3)の放置前後の粘度を実施例2に記載の方法により測定し、粘度変化率(γ)を算出した。
【0164】
−ポリイミド成型物及び画像形成装置の製造−
実施例1において用いたポリアミック酸組成物(1−1)を上記ポリアミック酸組成物(6−3)に変更した以外は、実施例1に記載の方法によりポリイミド成型物及び画像形成装置を製造し、評価を行った。
【0165】
これら実施例及び比較例の評価結果等を、下記の表に記載する。
【0166】
【表1】

【0167】
【表2】

【0168】
【表3】

【0169】
以下に、本発明の好ましい態様を示す。まず、本発明のポリアニリン組成物は、
<1> 少なくとも、ポリアニリンと、熱潜在性化合物と、を含有するポリアニリン組成物である。該構成とすることにより、熱潜在性化合物を含有しない場合に比べて、良好な貯蔵安定性と効率的な導電性の付与とを両立することができる。
<2> 前記熱潜在性化合物の解離生成物である塩基性化合物が、前記熱潜在性化合物の解離温度以下の沸点を有する前記<1>に記載のポリアニリン組成物である。該構成とすることにより、熱潜在性化合物の解離生成物である塩基性化合物の沸点を考慮しない場合に比べて、より効率的な導電性の付与を実現することができる。
【0170】
また、本発明のポリアミック酸組成物は、
<3> 少なくとも、前記<1>又は<2>に記載のポリアニリン組成物と、ポリアミック酸と、を含有するポリアミック酸組成物である。該構成とすることにより、熱潜在性化合物を有するポリアニリン組成物を含有しない場合に比べて、良好な貯蔵安定性と優れた導電性とを両立することができる。
【0171】
また、本発明のポリイミド成型物は、
<4> 前記<3>に記載のポリアミック酸組成物を脱水イミド化して作製されるポリイミド成型物である。該構成とすることにより、熱潜在性化合物を有するポリアニリン組成物を用いない場合に比べて、電気抵抗値および膜厚のバラツキを良好に抑制し品質を向上させることができる。
【0172】
また、本発明のポリイミド成型物の製造方法は、
<5> 前記<3>に記載のポリアミック酸組成物を用い、成型器にて成型し乾燥させる乾燥成型工程と、成型後のポリアミック酸組成物を脱水イミド化するイミド化工程と、を有するポリイミド成型物の製造方法である。該構成とすることにより、熱潜在性化合物を有するポリアニリン組成物を用いない場合に比べて、電気抵抗値および膜厚のバラツキを良好に抑制し品質を向上させたポリイミド成型物を容易に製造することができる。
【0173】
また、本発明の無端状ベルトは、
<6> 前記<3>に記載のポリアミック酸組成物を脱水イミド化し、環の形状に成形してなる無端状ベルトである。該構成とすることにより、熱潜在性化合物を有するポリアニリン組成物を用いない場合に比べて、電気抵抗値および膜厚のバラツキを良好に抑制し品質を向上させることができる。
【0174】
また、本発明のベルト張架装置は、
<7> 前記<6>に記載の無端状ベルトと、前記無端状ベルトを内周面側から回転可能に張架する複数の張架部材と、を備えるベルト張架装置である。該構成とすることにより、熱潜在性化合物を有するポリアニリン組成物を用いた無端状ベルトを具備しない場合に比べて、電気抵抗値および膜厚のバラツキを良好に抑制し、周回駆動に対しても品質を向上させることができる。
【0175】
更に、本発明の画像形成装置は、
<8> 像保持体と、該像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成手段と、該潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、該トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写されたトナー像を定着する定着手段と、を有してなり、前記<4>に記載のポリイミド成型物を具備する画像形成装置である。該構成とすることにより、熱潜在性化合物を有するポリアニリン組成物を用いた無端状ベルトを具備しない場合に比べて、品質に優れた画像を形成することができる。
<9> 前記転写手段に用いられる中間転写ベルト又は用紙搬送ベルトと、前記定着手段に用いられる定着ベルトと、から選ばれる少なくとも1種に前記<6>に記載の無端状ベルトを用いる前記<8>に記載の画像形成装置である。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明のポリアニリン組成物及びポリアミック酸組成物は、良好な貯蔵安定性と、成型時における優良な導電性と、を有していることから、導電性物質として幅広く利用可能である。また、前記ポリアミック酸組成物をポリイミド成型物とした際には、電気抵抗値のバラツキ、および製膜時の膜厚のバラツキを良好に抑制できることから、高い品質を要求される電気電子部品の分野において利用できる。特に、近年の画像形成装置の中間転写ベルトや用紙搬送ベルトなどには好適である。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】(A)は第3の実施形態に係るポリイミド成型物を製造する方法において、ポリアミック酸組成物が注入された外型を示す側面図であり、(B)はその斜視図である。
【図2】(A)は第3の実施形態に係るポリイミド成型物を製造する方法において、乾燥成型工程を示す側面図であり、(B)はその斜視図である。
【図3】第3の実施形態に係るポリイミド成型物を製造する方法において、乾燥成型したポリアミック酸組成物を外型から抜き取る様子を示す斜視図である。
【図4】第3の実施形態に係るポリイミド成型物を製造する方法において、乾燥成型したポリアミック酸組成物に内型を挿入する様子を示す斜視図である。
【図5】第3の実施形態に係るポリイミド成型物を製造する方法において、無端状ベルトを内型から取り外す様子を示す斜視図である。
【図6】中間転写ベルト、定着ベルトとしてポリイミド成型物を適用した、第4の実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図7】図6に記載の第4の実施形態に係る画像形成装置の定着装置を拡大して示す概略構成図である。
【図8】中間転写定着ベルトとしてポリイミド成型物を適用した、第4の実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0178】
1 像保持体
2 中間転写ベルト
3 バイアスロール
4 記録媒体貯蔵部
5 定着装置
6 現像装置
11A ポリアミック酸組成物
11B 無端状ベルト
12 外型
13 軸
14 内型
21、23、24 支持ロール
22 バックアップロール
25 導電性ロール
26 電極ロール
28、70 ベルト張架装置
41、P 記録媒体
42 フィードロール
43 搬送路
51 定着ロール
51a 中空ロール
51b 弾性体層
51c 耐熱離型耐油層
53 圧力ロール
54 第1の支持ロール
55 第2の支持ロール
56 加圧パット
57 クリーニング手段
58 離型剤塗布手段
59 用紙分離爪
61 中間転写定着ベルト
62 駆動ロール
63、64 ガイドロール
65 テンションロール
66 加熱ローラ
67A、B、C、D 感光体ドラム
68A、B、C、D 転写器
69 加圧ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、ポリアニリンと、熱潜在性化合物と、を含有するポリアニリン組成物。
【請求項2】
前記熱潜在性化合物の解離生成物である塩基性化合物が、前記熱潜在性化合物の解離温度以下の沸点を有する請求項1に記載のポリアニリン組成物。
【請求項3】
少なくとも、請求項1又は請求項2に記載のポリアニリン組成物と、ポリアミック酸と、を含有するポリアミック酸組成物。
【請求項4】
請求項3に記載のポリアミック酸組成物を脱水イミド化して作製されるポリイミド成型物。
【請求項5】
請求項3に記載のポリアミック酸組成物を用い、成型器にて成型し乾燥させる乾燥成型工程と、成型後のポリアミック酸組成物を脱水イミド化するイミド化工程と、を有するポリイミド成型物の製造方法。
【請求項6】
請求項3に記載のポリアミック酸組成物を脱水イミド化し、環の形状に成形してなる無端状ベルト。
【請求項7】
請求項6に記載の無端状ベルトと、前記無端状ベルトを内周面側から回転可能に張架する複数の張架部材と、を備えるベルト張架装置。
【請求項8】
像保持体と、該像保持体上に静電潜像を形成する潜像形成手段と、該潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、該トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写されたトナー像を定着する定着手段と、を有してなり、請求項4に記載のポリイミド成型物を具備する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−1616(P2009−1616A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161548(P2007−161548)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】