説明

ポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法

【課題】ホルムアルデヒド放出量が著しく低減し、更には衝撃性、熱変色性に優れたポリオキシメチレン樹脂組成物が提供すること。
【解決手段】(A)ポリオキシメチレン樹脂、(B)ヒドラジド化合物、(C)充填材よりなるポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法において、ニーディング・ディスクで構成された溶融ゾーンと混練ゾーンを有するスクリューで(A)ポリオキシメチレン樹脂を、押出機のメインフィード口からバレル内に供給し、溶融ゾーンで溶融させた後、(B)ヒドラジド化合物、(C)充填材をサイドフィード口から供給し、混練ゾーンにて混練し、更にベント口から脱気しながら押出機のダイより連続的に押出すことを特徴とするポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルムアルデヒド放出量が著しく低減し、更には、衝撃性に優れ、成形滞留時の耐変色性に優れたポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリオキシメチレン樹脂は、機械的強度、耐薬品性及び摺動性のバランスに優れ、且つその加工性が容易であることから、電気機器やその機構部品、自動車部品及びその他機構部品など広範囲に亘って用いられている。
近年、ポリオキシメチレン樹脂の分野では成形品の小型化、薄肉化、精密化などの要求が高まってきており、ピンゲート金型による成形やハイサイクル成形、あるいは高粘度ポリオキシメチレン樹脂を用いた小型、薄肉、精密部品の成形等が行われている。これらの成形においては、剪断速度を上昇させたり、可塑化時間を短縮するため、スクリュー回転数や成形温度を上げることが多く、ポリオキシメチレン樹脂は従来の成形よりも高い熱履歴を受けることになる。更に一般的な成形であっても、成形不良、例えばフローマーク、ウェルドライン、ジェッティング等が発生した場合は樹脂温度を上げる事で対応することが多く、これも熱履歴がかかる要因となる。また、金型にホットランナーを使用する場合は、樹脂の部分的な滞留が発生することによって樹脂温度が上がり、樹脂の分解が起きる一因となっている。
【0003】
ポリオキシメチレン樹脂は、熱履歴を受けると、熱分解、自己酸化分解、酸・アルカリによる分解、残存活性触媒による主鎖分解等が起こりやすくなり、ホルムアルデヒドの放出量が多くなるという問題を抱えている。成形時滞留時間によっては、熱安定性の低下、それによる変色、強度低下、衝撃性低下も問題となる。
近年、自動車の内装部品の分野においては、ホルムアルデヒドを含む揮発性有機化合物(V O C )の放出量を低減させる要求が高まっている。しかしながら、上記のような熱履歴を受けたポリオキシメチレン樹脂は、主鎖の分解によりホルムアルデヒドを放出しやすいため、放出量低減の要求を十分に満足させることは困難であった。
【0004】
ポリオキシメチレン樹脂からのホルムアルデヒド放出量を低減させる手段として様々な方法が提案されている。例えば、ポリアミド及びヒドラジン誘導体の添加(特許文献1)、ヒドラジド化合物の添加(特許文献2)、メラミン及びメラミン誘導体及びジカルボン酸ヒドラジドから選ばれた窒素化合物の添加(特許文献3) 、ベンゾグアナミンの添加(特許文献4)、ペレット表面に多価アルコール化合物の脂肪酸部分エステルを付着させる方法(特許文献5)、モノN − 置換尿素の添加(特許文献6)、酸解離指数が3 . 6 以上のカルボキシル基含有化合物の添加(特許文献7)、フェノール類と塩基性窒素含有化合物とアルデヒド類との縮合物の添加(特許文献8)、ヒダントイン又はイミダゾールの添加(特許文献9)、塩基解離指数が2 〜 8の低分子量アミノ化合物の添加(特許文献10)、およびトリアジン環を有するスピロ化合物の添加(特許文献11)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭51−111857号公報
【特許文献2】特開平4−345648号公報
【特許文献3】特開平7−173369号公報
【特許文献4】特開昭62−190248号公報
【特許文献5】特開平6−107900号公報
【特許文献6】特開平11−335519号公報
【特許文献7】特開2000−239484号公報
【特許文献8】特開2002−212384号公報
【特許文献9】特開平8−41288号公報
【特許文献10】国際公開第00/59993号パンフレット
【特許文献11】米国特許第6673405号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方で、剛性の向上を目的にポリオキシメチレン樹脂に無機フィラー等の充填材を添加することが行われている。その場合、充填材を添加したことにより樹脂温度の上昇が起こるだけでなく、充填材の表面処理剤等の影響により酸・アルカリによるポリオキシメチレン樹脂の分解が起こりやすくなる。その結果、充填材無添加時に比べてポリオキシメチレン樹脂からのホルムアルデヒド放出量が多くなるという問題があった。
上記特許文献1〜11に開示されている製造方法は、何れも各成分を混合した後に一軸又は二軸押出機により一段で溶融混練する方法が採用されており、充填材を含有するポリオキシメチレン樹脂組成物のホルムアルデヒド放出量の低減においては、満足できるものではなかった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、無機フィラー等の充填材を含有するポリオキシメチレン樹脂組成物のホルムアルデヒド放出量を著しく低減させるだけでなく、衝撃性、熱変色性に優れたポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ポリオキシメチレン樹脂を予め溶融混練して溶融状態とした後に、ヒドラジド化合物と充填材をサイドフィード口から供給し溶融混練を行うことにより、ポリオキシメチレン樹脂、ヒドラジド化合物、充填材を一括フィードし溶融混練する従来の方法に比べて、ホルムアルデヒド放出量が著しく低減し、更にシャルピー衝撃強度、繰り返し衝撃強度といった衝撃性や熱変色性が優れた樹脂組成物を得られる事を見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0008】
[1](A)ポリオキシメチレン樹脂と(B)ヒドラジド化合物と(C)充填材を含有するポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法であって、ニーディング・ディスクを必須成分として溶融ゾーンと混練ゾーンを有するスクリュー構成を備えた押出機を用いて、(A)ポリオキシメチレン樹脂を押出機のメインフィード口からバレル内に供給し、溶融ゾーンで溶融させた後、(B)ヒドラジド化合物と(C)充填材をサイドフィード口から供給し、混練ゾーンにて混練し、更にベント口から脱気しながら押出機のダイより連続的に押出すことを特徴とするポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法。
[2](B)ヒドラジド化合物が下記一般式(1)である上記1に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法。
【0009】
NNHCO−R−CONHNH (1)
(式中、Rは炭素数1〜20の炭化水素を表す)
【0010】
[3](C)充填材が、繊維状、粒子状、板状の充填材から選ばれる少なくとも一種の充填材である上記1又は2に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法。
[4](A)ポリオキシメチレン樹脂、(B)ヒドラジド化合物及び(C)充填材の配合割合が、(A)ポリオキシメチレン樹脂50〜99質量部、(C)充填材1〜50質量部であり、(A)ポリオキシメチレン樹脂と(C)充填材の合計量100質量部に対して、(B)ヒドラジド化合物0.01〜5質量部である上記1〜3いずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法。
[5](A)ポリオキシメチレン樹脂をスクリューの溶融ゾーンで溶融後に、(B)ヒドラジド化合物及び(C)充填材をサイドフィード口の同位置から供給し溶融混練する上記1〜4いずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、ホルムアルデヒド放出量が著しく低減し、更には衝撃性、熱変色性に優れたポリオキシメチレン樹脂組成物が提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例で採用した製造方法Aで採用した押出機の模式図
【図2】実施例で採用した製造方法Bで採用した押出機の模式図
【図3】実施例で採用した製造方法Cで採用した押出機の模式図
【図4】実施例で採用した製造方法Dで採用した押出機の模式図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について具体的に説明する。
(A)ポリオキシメチレン樹脂としては、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られる実質上オキシメチレン単位のみから成るポリオキシメチレンホモポリマーや、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーとエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソランや1,4−ブタンジオールホルマールなどのグリコールやジグリコールの環状ホルマール等の環状エーテル、環状ホルマールとを共重合させて得られたポリオキシメチレンコポリマーを代表例としてあげることができる。また、単官能グリシジルエーテルを共重合させて得られる分岐を有するポリオキシメチレンコポリマーや、多官能グリシジルエーテルを共重合させて得られる架橋構造を有するポリオキシメチレンコポリマーも用いることができる。
【0014】
さらに、両末端または片末端に水酸基などの官能基を有する化合物、例えばポリアルキレングリコールの存在下、ホルムアルデヒド単量体又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーを重合して得られるブロック成分を有するポリオキシメチレンホモポリマーや、同じく両末端または片末端に水酸基などの官能基を有する化合物、例えば水素添加ポリブタジエングリコールの存在下、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと環状エーテルや環状ホルマールとを共重合させて得られるブロック成分を有するポリオキシメチレンコポリマーも用いることができる。以上のように、本発明においては、ポリオキシメチレンホモポリマー、コポリマーいずれも用いることが可能である。好ましいのはポリオキシメチレンコポリマーである。
1,3−ジオキソラン等のコモノマー量は、一般的にはトリオキサン1molに対して0.1〜60mol%が好ましく、より好ましくは0.1〜20mol%、更に好ましくは 0.13〜10mol%用いられる。
【0015】
ポリオキシメチレンコポリマーの重合における重合触媒としては、ルイス酸、プロトン酸及びそのエステル又は無水物等のカチオン活性触媒が好ましい。ルイス酸としては、例えば、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物が挙げられ、具体的には三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモン及びその錯化合物又は塩が挙げられる。また、プロトン酸、そのエステルまたは無水物の具体例としては、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸−3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。中でも、三フッ化ホウ素;三フッ化ホウ素水和物;及び酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましく、具体的には、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルを好適例として挙げることができる。
【0016】
ポリオキシメチレンコポリマーの重合方法としては、一般には塊状重合で行われ、バッチ式、連続式いずれも可能である。用いられる重合装置としては、コニーダー、2軸スクリュー式連続押出混錬機、2軸パドル型連続混合機等のセルフクリーニング型押出混錬機が使用され、溶融状態のモノマーが重合機に供給され、重合の進行とともに固体塊状のポリオキシメチレンコポリマーが得られる。
上記記載の重合方法で得られたポリオキシメチレンコポリマーには、熱的に不安定な末端部〔−(OCH−OH基〕が存在するため、そのままでは実用に供することはできない。そこで、不安定な末端部の分解除去処理を実施することが必要であり、次に示す特定の不安定末端部の分解除去処理を行なうことが好適である。
特定の不安定末端部の分解除去処理とは、下記一般式(2)で表わされる少なくとも1種の第4級アンモニウム化合物の存在下に、ポリオキシメチレンコポリマーの融点以上260℃以下の温度で、ポリオキシメチレンコポリマーを溶融させた状態で熱処理するものである。
【0017】
[R−n 式(2)
(式中、R、R、R、Rは、各々独立して、炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基が少なくとも1個の炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;又は炭素数6〜20のアリール基が少なくとも1個の炭素数1〜30の非置換アルキル基または置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を表わし、非置換アルキル基または置換アルキル基は直鎖状、分岐状、または環状である。上記置換アルキル基の置換基はハロゲン、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基である。また、上記非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基は水素原子がハロゲンで置換されていてもよい。nは1〜3の整数を表わす。Xは水酸基、又は炭素数1〜20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸もしくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を表わす。)
【0018】
第4級アンモニウム化合物は、上記一般式(2)で表わされるものであれば特に制限はないが、一般式(2)におけるR、R、R、及びRが、各々独立して、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であることが好ましく、この内更に、R、R、R、及びRの少なくとも1つが、ヒドロキシエチル基であるものが特に好ましい。具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクダデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウム等の水酸化物;塩酸、臭酸、フッ酸などの水素酸塩;硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、よう素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸等のオキソ酸塩;チオ硫酸などのチオ酸塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸などのカルボン酸塩等が挙げられる。
【0019】
中でも、水酸化物(OH)、硫酸(HSO、SO 2−)、炭酸(HCO、CO2−)、ホウ酸(B(OH))、カルボン酸の塩が好ましい。カルボン酸の内、蟻酸、酢酸、プロピオン酸が特に好ましい。これら第4級アンモニウム化合物は、単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記第4級アンモニウム化合物に加えて、公知の不安定末端部の分解促進剤であるアンモニアやトリエチルアミン等のアミン類等を併用しても何ら差し支えない。
第4級アンモニウム化合物の量は、0.05質量ppm〜50質量ppmの範囲である。
第4級アンモニウム化合物の添加量が0.05質量ppm未満であると不安定末端部の分解除去速度が低下し、50質量ppmを超えると不安定末端部分解除去後のポリオキシメチレンコポリマーの色調が悪化する。
【0020】
ポリオキシメチレン樹脂の不安定末端部の分解除去処理は、 融点以上260℃以下の温度でポリオキシメチレンコポリマーを溶融させた状態で熱処理することにより達成される。用いる装置には特に制限はないが、押出機、ニーダー等を用いて熱処理することが好適である。また、分解で発生したホルムアルデヒドは減圧下で除去される。第4級アンモニウム化合物の添加方法には特に制約はなく、重合触媒を失活する工程にて水溶液として加える方法、重合で生成したポリオキシメチレンコポリマーパウダーに吹きかける方法などがある。いずれの添加方法を用いても、ポリオキシメチレンコポリマーを熱処理する工程で添加されて居れば良く、押出機の中に注入したり、押出機等を用いてフィラーやピグメントの配合を行なう品種であれば,樹脂ペレットに該化合物を添着し、その後の配合工程で不安定末端除去操作を実施してもよい。
【0021】
不安定末端除去操作は、重合で得られたポリオキシメチレンコポリマー中の重合触媒の失活させた後に行なうことも可能であるし、また重合触媒を失活させずに行なうことも可能である。重合触媒の失活操作としては、アミン類等の塩基性の水溶液中で重合触媒を中和失活する方法を代表例として挙げることができる。また、重合触媒の失活を行なわずに、融点以下の温度で不活性ガス雰囲気下にて加熱し、重合触媒を揮発低減した後、本不安定末端除去操作を行なうことも有効な方法である。
以上の特定の不安定末端部分解除去処理により、不安定末端部が殆ど存在しない非常に熱安定性に優れたポリオキシメチレンコポリマーを得ることができる。
【0022】
次に(B) ヒドラジド化合物について説明する。
ヒドラジド化合物としては、モノカルボン酸モノヒドラジド、ジカルボン酸ジヒドラジドが挙げられるが、下記一般式(1) で表されるジカルボン酸ジヒドラジドが好ましい。
【0023】
NNHCO−R−CONHNH (1)
( 式中、R は炭素数1 〜 2 0 の炭化水素を表す)
【0024】
これらの中でも、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、2、6− ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド等が更に好ましく、更により好ましくはセバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2, 6 − ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジドであり、最も好ましくはセバチン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジドである。ヒドラジド化合物の配合割合は、ポリオキシメチレン樹脂100質量部に対して0.01〜 5 質量部であることが好ましく、より好ましくは0.03 〜 3質量部、特に好ましくは0 .0 5 〜 1 質量部である。0.01〜5質量部の範囲であることにより、ホルムアルデヒド放出量の低減と衝撃性、変色性のバランスがとれたポリオキシメチレン樹脂組成物ができる。これらのヒドラジド化合物は1種類で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0025】
次に(C) 充填材について説明する。
(C)充填材としては、繊維状、粒子状、板状、針状の充填材が用いられる。
繊維状充填材としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、シリコン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、さらにステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属繊維等の無機質繊維があげられる。また、繊維長の短いチタン酸カリウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー等のウイスカー類も含まれる。なお、芳香族ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の高融点有機繊維状物質も使用する事が出来る。
【0026】
粉子状充填材としては、カーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ウォラストナイトの如き珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、アルミナ等の金属酸化物、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属硫酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩、その他炭化珪素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末等があげられる。
板状充填材としてはマイカ、ガラスフレーク、各種金属箔等があげられる。これらの充填材は1種又は2種以上を併用して使用することが可能である。
これらの充填材は表面処理されたもの、未表面処理のもの、何れも使用可能であり、表面処理剤としては従来公知のものが使用可能である。例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等の各種カップリング処理剤が使用できる。具体的にはN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリスステアロイルチタネート、ジイソプロポキシアンモニウムエチルアセテート、n−ブチルジルコネート等が挙げられる。
【0027】
(C)充填材の粒子径は特に規定されないが、体積平均粒子径で0.1〜100μmのものが好ましく、0.3〜50μmの範囲のものがより好ましい。体積平均粒子径が0.1〜100μmの範囲のものを用いることにより、表面外観や摺動性に優れる成形体を得ることができる。0.1μm未満では樹脂の加工工程での溶融粘度が大幅に上昇する傾向がある。
(C)充填材の配合割合は、ポリオキシメチレン樹脂と充填材との合計量100質量部に対して、1〜50質量部の範囲が好ましく、2〜40質量部の範囲がより好ましい。充填材が1〜50質量部では、補強効果や容易な成形加工性が可能となり2〜40質量部では、補強効果と衝撃性のバランスが取れ、表面外観の良好な成形品を得ることが可能となる。
【0028】
これら(C)充填材の中でもウォラストナイトが好ましく用いられる。ウォラストナイトは通常天然に存在する天然珪灰石や合成珪灰石を微粉化したもので、この微粉化の過程で細長い針状のものや粒子状(短い棒状〜粒子状)のものが得られる。これらのウォラストナイトは針状でも、粒子状でも、さらにはこれらの併用でも良く、その粒子径は体積平均粒子径で0.5〜40μmが好ましく、さらに好ましくは1〜30μmの範囲である。体積平均粒子径で0.5〜40μmでは、表面外観性や剛性改良が可能となり、1〜30μmでは摺動性と剛性のバランスに優れ、成形加工が良好となる。
ウォラストナイトの粒子状のものは、アスペクト比が2〜7が好ましく、3〜5がさらに好ましい。アスペクト比が2未満では剛性の改良効果が減り、7を越えるとソリが大きくなる傾向にある。針状のものはアスペクト比が10〜30が好ましく、10〜25がさらに好ましい。アスペクト比が10未満では剛性改良効果が減り、30を越えるとソリが大きくなる傾向にある。
【0029】
本発明の製造方法により得られるポリオキシメチレン樹脂組成物は、熱安定性を向上させるために更に適当な添加剤を配合することができる。好適な添加剤としては、酸化防止剤、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体又は化合物、ギ酸捕捉剤、耐候(光)安定剤、離型(潤滑)剤が挙げられ、これらはポリオキシメチレン樹脂100質量部に対して0.01〜10質量部配合することが好ましい。
【0030】
酸化防止剤としてはヒンダートフェノール系酸化防止剤が好ましい。具体的には、例えばn−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4 −ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4− ブタンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル −5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。好ましくは、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]及びペンタエリスリトールテトラキス[メチレン‐3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンである。これらの酸化防止剤は1種類で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0031】
ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体又は化合物の例としては、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12等のポリアミド樹脂、及びこれらの重合体、例えば、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等を挙げることができる。また他に、アクリルアミド及びその誘導体、アクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体が挙げられ、例えばアクリルアミド及びその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られたポリ−β−アラニン共重合体を挙げることができる。その他にアミド化合物、アミノ置換トリアジン化合物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドの付加物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドの縮合物、尿素、尿素誘導体、ヒドラジン誘導体、イミダゾール化合物、イミド化合物を挙げることができる。
【0032】
アミド化合物の具体例としては、イソフタル酸ジアミドなどの多価カルボン酸アミド、アントラニルアミドが挙げられる。アミノ置換トリアジン化合物の具体例としては、2,4 −ジアミノ−sym−トリアジン、2,4,6−トリアミノ−sym−トリアジン、N−ブチルメラミン、N− フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)、アセトグアナミン(2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン)、2,4−ジアミノ−6− ブチル−sym−トリアジン等である。アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの付加物の具体例としては、N−メチロールメラミン、N,N’−ジメチロールメラミン、N,N’,N”−トリメチロールメラミンを挙げることができる。
【0033】
アミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物の具体例としては、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物を挙げることができる。尿素誘導体の例としては、N−置換尿素、尿素縮合体、エチレン尿素、ヒダントイン化合物、ウレイド化合物を挙げることができる。N−置換尿素の具体例としては、アルキル基等の置換基が置換したメチル尿素、アルキレンビス尿素、アーリル置換尿素を挙げることができる。尿素縮合体の具体例としては、尿素とホルムアルデヒドの縮合体等が挙げられる。ヒダントイン化合物の具体例としては、ヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、5,5−ジフェニルヒダントイン等が挙げられる。ウレイド化合物の具体例としては、アラントイン等が挙げられる。イミド化合物の具体例としてはスクシンイミド、グルタルイミド、フタルイミドを挙げることができる。これらのホルムアルデヒド反応性窒素原子を含む重合体又化合物は、1種類で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0034】
ギ酸捕捉剤としては、上記のアミノ置換トリアジン化合物やアミノ置換トリアジン類化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、例えばメラミン・ホルムアルデヒド縮合物等を挙げることができる。他のギ酸捕捉剤としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩又はアルコキシドが挙げられる。例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムもしくはバリウムなどの水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、ホウ酸塩、カルボン酸塩、さらには層状複水酸化物を挙げることができる。
上記カルボン酸塩のカルボン酸としては、10〜36個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸が好ましく、これらのカルボン酸は水酸基で置換されていてもよい。飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸塩の具体的な例としては、ジミリスチン酸カルシウム、ジパルミチン酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウム、(ミリスチン酸−パルミチン酸)カルシウム、(ミリスチン酸−ステアリン酸)カルシウム、(パルミチン酸−ステアリン酸)カルシウムが挙げられ、中でも好ましくは、ジパルミチン酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウムである。
【0035】
層状複水酸化物としては例えば下記一般式(3)で表されるハイドロタルサイト類をあげることができる。
〔(M2+1−X(M3+(OH)〔(An−x/n・mHO〕(3)
〔式中、M2+は2価金属、M3+は3価金属、Anはn価(nは1以上の整数)のアニオン表わし、Xは、0<X≦0.33の範囲にあり、mは正の数である。〕
【0036】
一般式(1)において、M2+の例としてはMg2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+等、M3+の例としては、Al3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、In3+等、An−の例としては、OH、F、Cl、Br、NO、CO2−、SO2−、Fe(CN)3−、CHCOO、シュウ酸イオン、サリチル酸イオン等をあげることができる。特に好ましい例としてはCO2−、OHをあげることができる。具体例としては、Mg0.75Al0.25(OH)(CO0.125・0.5HOで示される天然ハイドロタルサイト、Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO、Mg4.3Al(OH)12.6CO等で示される合成ハイドロタルサイトを挙げることができる。
これらのギ酸捕捉剤は、1種類で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0037】
耐候(光)安定剤としては、ベンゾトリアゾール系及び蓚酸アニリド系紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤の中から選ばれる1種若しくは2種以上が好ましい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ− 3’、5’−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス (α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ− 3’、5’−ビス−(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。蓚酸アリニド系紫外線吸収剤の例としては、2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル− 2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2− エトキシ−3’−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリド等が挙げられる。好ましくは2−[2’−ヒドロキシ− 3’、5’−ビス−(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ− 3’、5’−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾールである。これらのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0038】
ヒンダードアミン系光安定剤の例としては、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6,テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6,テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3―テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6,テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6,テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの縮合物、デカン2酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステルと1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物などが挙げられる。好ましくはビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6 −テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9− [2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物である。これらヒンダードアミン系光安定剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0039】
離型(潤滑)剤としては、アルコール、脂肪酸及びそれらのエステル、ポリオキシアルキレングリコール、平均重合度が10〜500であるオレフィン化合物、シリコーン等が挙げられる。中でも、炭素数12〜22の脂肪酸由来のエチレングリコールジパルミテート、エチレングリコールジヘプタデシレートが好ましい。
本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲で、更に適当な公知の添加剤を必要に応じて配合することができる。具体的には、ポリオレフィン樹脂、摺動剤、顔料などを挙げることができる。
ポリオレフィン樹脂としては、一般式(4)で示されるオレフィン系不飽和化合物のホモ重合体、または共重合体、あるいはその変性体である。
【0040】
C=C−R (4)

7
〔式中、R6は水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、カルボキシル基、2〜5個の炭素原子を含むアルキル化カルボキシ基、2〜5個の炭素原子を有するアシルオキシ基、またはビニル基を表わす。〕
【0041】
具体的には、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、ポリプロピレン−ブテン共重合体、ポリブテン、ポリブタジエンの水添物、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタアクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、などが挙げられる。
【0042】
それらの変性体としては、他のビニル化合物の一種以上をグラフトさせたグラフト共重合体が挙げられる。これらの中で、ポリエチレン(高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体が好ましい。これらのポリオレフィン系樹脂の分子量は特に規定されないが、好ましくは重量平均分子量で10,000〜300,000の範囲であり、より好ましくは10,000〜100,000であり、さらに好ましくは15,000〜80,000である。分子量が10,000未満では、自材どうしの摩擦摩耗性が悪くなり、重量平均分子量300,000を超えるとポリオキシメチレン樹脂との摩擦摩耗性が悪くなるため好ましくない。ポリオレフィン重合体の配合割合は(A)ポリオキシメチレン樹脂と(B)充填材よりなる樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、より好ましくは0.2〜5質量部である。ポリオレフィン樹脂0.1〜10質量部では、摺動性、衝撃性、剛性のバランスが取れ、表面外観性の良好な成形加工が可能となる。
【0043】
摺動剤としては、アルコールと脂肪酸のエステル、アルコールとジカルボン酸とのエステル、およびポリオキシアルキレングリコール化合物が挙げられる。
アルコールと脂肪酸のエステルとしては、下記に示すアルコールと脂肪酸とのエステルである。アルコールは、1価アルコール、および多価アルコールであり、例えば1価アルコールの例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、ベヘニルアルコール、メリシルアルコール、ヘキシルデシルアルコール、オクチルドデシルアルコール、デシルミリスチルアルコール、デシルステアリルアルコール、などの飽和または不飽和アルコールが挙げられる。
多価アルコールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルバイト、ソルビタン、ソルビトール、マンニトール、などが挙げられる。
【0044】
脂肪酸としては、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ナノデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸、などが挙げられ、およびかかる成分を含有する天然に存在する脂肪酸またはこれらの混合物などが挙げられる。これらの脂肪酸はヒドロキシ基で置換されていてもよい。これら、アルコールと脂肪酸のエステルの中では、摩擦・摩耗性能の改良の観点から、それぞれ炭素数10以上の脂肪酸とアルコールとのエステルが好ましく、炭素数12以上の脂肪酸と炭素数10以上のアルコールとのエステルがより好ましく、炭素数12〜30の脂肪酸と炭素数10〜20のアルコールとのエステルがさらに好ましい。
【0045】
アルコールとジカルボン酸のエステルとしては、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、ベヘニルアルコール、メリシルアルコール、ヘキシルデシルアルコール、オクチルドデシルアルコール、デシルミリスチルアルコール、デシルステアリルアルコール、などの飽和、または不飽和の一級アルコールとシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマール酸、などのジカルボン酸とのモノエステル、ジエステル、およびこれらの混合物が挙げられる。これらのアルコールとジカルボン酸のエステルの中では、炭素数10以上のアルコール、とジカルボン酸とのエステルが好ましい。
【0046】
ポリオキシアルキレングリコール化合物としては、3種類の化合物が挙げられる。第1のグループの化合物としては、アルキレングリコールをモノマーとする重縮合物が挙げられる。例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールのブロックポリマー、などが挙げられる。これらの重合度の好ましい範囲は5〜1,000、より好ましい範囲は10〜500である。第2のグループは、第1のグループの化合物と脂肪族アルコールとのエーテル化物である。例えば、ポリエチレングリコールオレイルエーテル(エチレンオキサイド重合度5〜50)、ポリエチレングリコールセチルエーテル(エチレンオキサイド重合度5〜50)、ポリエチレングリコールステアリルエーテル(エチレンオキサイド重合度5〜30)、ポリエチレングリコールラウリルエーテル(エチレンオキサイド重合度5〜30)、ポリエチレングリコールトリデシルエーテル(エチレンオキサイド重合度5〜30)、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル(エチレンオキサイド重合度2〜100)、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル(エチレンオキサイド重合度4〜50)、などが挙げられる。第3のグループの化合物は、第1のグループの化合物と高級脂肪酸とのエステル化物である。例えば、ポリエチレングリコールモノラウレート(エチレンオキサイド重合度2〜30)、ポリエチレングリコールモノステアレート(エチレンオキサイド重合度2〜50)、ポリエチレングリコールモノオレート(エチレンオキサイド重合度2〜50)、などが挙げられる。
【0047】
顔料としては、無機系顔料及び有機系顔料、メタリック系顔料、蛍光顔料等が挙げられる。無機系顔料とは樹脂の着色用として一般的に使用されているものを言い、例えば、硫化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、チタンイエロー、コバルトブルー、燃成顔料、炭酸塩、りん酸塩、酢酸塩やカーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等を言う。有機系顔料とは縮合ウゾ系、イノン系、フロタシアニン系、モノアゾ系、ジアゾ系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、複素環系、ペンノン系、キナクリドン系、チオインジコ系、ベリレン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系等の顔料である等の顔料である。顔料の添加割合は色調により大幅に変わるため明確にする事は難しいが一般的には、ポリオキシメチレン樹脂と100質量部に対して、0.05〜5質量部の範囲で用いられる。
【0048】
次に、ポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、ニーディング・ディスクを含む溶融ゾーンと混練ゾーンを有するスクリュー構成を備えた押出機を用いて、(A)ポリオキシメチレン樹脂を押出機のメインフィード口からバレル内に供給し、溶融ゾーンで溶融させた後、(B)ヒドラジド化合物と(C)充填材をサイドフィード口から供給し、混練ゾーンにて混練し、更にベント口から脱気しながら押出機のダイより連続的に押出すことが必要である。
押出機としては、一般的に使用されている押出機を用いる事が出来、具体的にはニーダー、ロールミル、単軸押出機、2軸押出機、多軸押出機等が挙げられる。
【0049】
押出機のスクリュー構成としては、メインフィード口から供給される(A)ポリオキシメチレン樹脂等を、ニーディング・ディスクのブロックで構成したゾーンで溶融させる溶融ゾーンと、その後サイドフィード口から供給された(B)ヒドラジド化合物及び(C)充填材を溶融状態のポリオキシメチレン樹脂と溶融混練りする為の、ニーディング・ディスクのブロックで構成したゾーンで混練する混練ゾーンを有することが必要である。すなわち、(A)ポリオキシメチレン樹脂を溶融ゾーンで溶融した後に、(B)ヒドラジド化合物及び(C)充填材を供給し、混練ゾーンで溶融混練することが必要である。溶融状態の(A)ポリオキシメチレン樹脂に(B)ヒドラジド化合物や(C)充填材を供給することにより、分散性が向上しホルムアルデヒド放出量の低減と衝撃性、変色性が良好となる。
【0050】
溶融ゾーン及び混練ゾーンともにニーディング・ディスクを含むことが必要である。ニーディング・ディスクを含むことで、(A)ポリオキシメチレン樹脂の溶融化や、(B)ヒドラジド化合物、(C)充填材の微分散が可能となる。ここでニーディング・ディスクとは互いのディスクが交互に交わることで高い混練能力を有する。ニーディング・ディスクには順送り型、送りなし型、逆送り型があり、順送り型ニーディング・ディスクは、羽根が2枚〜10枚で、且つ羽根と羽根の捻れ角度が10〜60度、長さはスクリュー長径の0.3〜2.0の範囲である。送りなし型ニーディング・ディスクは、羽根が2枚〜10枚で、且つ羽根の捻れ角度が70〜110度、長さはスクリュー長径の0.3〜2.0の範囲である。逆送り型ニーディング・ディスクは、羽根が2枚〜10枚で、且つ羽根と羽根のねじれ角度が10〜60度、長さはスクリュー長径の0.3〜2.0の範囲であるディスクの事いう。
【0051】
ニーディング・ディスクの数、種類、ニーディング・ディスクで構成されるブロックの数、位置は本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて決めることができる。スクリューは、ニーディング・ディスクの順送り、送りなし、逆送りで構成されたブロックと順送り、逆送り等のフライト・ディスクで構成されるが、フライト・ディスクの数、種類を必要に応じて決めることができる。
更に、押出機はベント口を有している必要がある。熱履歴等により発生したホルムアルデヒドをベントから脱気させることにより、ポリオキシメチレン樹脂組成物のホルムアルデヒド放出量を低減させることが可能となる。ベント口の位置は、ニーディング・ディスクによる溶融ゾーンと混練ゾーンの混練後に位置する事が好ましく、−0.06〜−0.1MPaで減圧脱気する事が好ましい。また、バレルの長さによっては溶融ゾーンと混練ゾーンの間にも脱気用ベント、オープンベントを設ける事ができる。溶融ゾーンと混練ゾーンの間に位置するベント口は、充填材等サイドフィードする際に生じるエアーの咬み込みを脱気する為、又は溶融状態を確認する為にオープンベントで用いてもかまわない。
溶融混錬の加工温度は180〜240℃であることが好ましく、品質や作業環境の保持のためには不活性ガスによる置換をすることも好ましい。
【0052】
本発明において、メインフィード口とは押出機トップのフィード口であり、サイドフィード口とは押出機のトップのフィード口とダイの間に位置するフィード口である。
(B)ヒドラジド化合物及び(C)充填材のサイドフィード口への供給方法は、同位置に供給しても、別々の位置に供給してもかまわないが、ホルムアルデヒド放出量低減の点から、同位置に供給することが好ましい。同位置に供給する場合、各成分を別々に供給してもかまわないし、予めヘンシェルミキサーなどでブレンドして供給することも出来る。
また、(B)ヒドラジド化合物は、(A)ポリオキシメチレン樹脂の一部と予め混合物またはマスターバッチとして、供給することが出来る。例えば、(A)ポリオキシメチレン樹脂のペレット又は粉砕パウダーと(B)ヒドラジド化合物をヘンシェルミキサーでブレンドして混合物とする方法や、(A)ポリオキシメチレン樹脂ペレット又は粉砕パウダーと(B)ヒドラジド化合物をヘンシェルミキサーなどでブレンド後、溶融混練りしペレット化してマスターバッチとする方法などが挙げられる。
【0053】
製造例の具体例としては下記が挙げられる。
1、(A)ポリオキシメチレン樹脂を押出機メインフィード口から供給し、溶融した状態のところに、(B)ヒドラジド化合物、(C)充填材を同位置のサイドフィード口から供給し、さらに溶融混練する方法。
2、(A)ポリオキシメチレン樹脂を押出機メインフィード口から供給し、溶融した状態のところに、(B)ヒドラジド化合物、(C)充填材を別々の位置のサイドフィード口から供給し、さらに溶融混練する方法。
3、(A)ポリオキシメチレン樹脂を押出機メインフィード口から供給し、溶融した状態のところに、(B)ヒドラジド化合物、(C)充填材を予めブレンドした後、サイドフィード口から供給し、さらに溶融混練する方法。
【0054】
4、(A)ポリオキシメチレン樹脂(ペレットまたは粉砕パウダー)の一部と(B)ヒドラジド化合物を予めブレンドして混合物とした後、(A)ポリオキシメチレン樹脂の残部を押出機メインフィード口から供給し、溶融した状態のところに、混合物と(C)充填材を同位置、又は別々の位置のサイドフィード口から供給し、さらに溶融混練する方法。
5、(A)ポリオキシメチレン樹脂(ペレットまたは粉砕パウダー)と(B)ヒドラジド化合物を予めブレンドし、押出機を用いて溶融混練を行いペレット化したマスターバッチとした後、(A)ポリオキシメチレン樹脂の残部を押出機メインフィード口から供給し、溶融した状態のところに、、マスターバッチと(C)充填材を同位置、又は別々の位置のサイドフィード口から供給し、さらに溶融混練する方法。
【0055】
これらの製造例のうち、ホルムアルデヒド放出量低減、衝撃性、変色性、及びコスト面の点から1の例が好ましい。
本発明の製造方法により得られるポリオキシメチレン樹脂組成物を成形する方法については特に制限するものではなく、公知の成形方法、例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発砲射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法の何れかによって成形することができる。
【0056】
本発明の製造方法により得られるポリオキシメチレン樹脂組成物の成形品は、ホルムアルデヒドの放出量が低減していると共に、衝撃性、熱変色性にも優れるため、様々な用途の成形品に使用することが可能である。例えば、ギア、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、フェルトクラッチ、アイドラギアー、プーリー、ローラー、コロ、キーステム、キートップ、シャッター、リール、シャフト、関節、軸、軸受け及び、ガイド等に代表される機構部品、アウトサート成形の樹脂部品、インサート成形の樹脂部品、シャーシ、トレー、側板、プリンター及び複写機に代表されるオフィスオートメーション機器用部品、VTR(Video Tape Recorder)、ビデオムービー、デジタルビデオカメラ、カメラ及び、デジタルカメラに代表されるカメラ、またはビデオ機器用部品、カセットプレイヤー、DAT、LD(Laser Disk)、MD(Mini Disk)、CD(Compact Disk)〔CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R(Recordable)、CD−RW(Rewritable)を含む〕、DVD(Digital Video Disk)〔DVD−ROM、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−R DL、DVD+R DL、DVD−RAM(Random Access Memory)、DVD−Audioを含む〕、Blu−ray Disc、HD−DVD、その他光デイスクドライブ、MFD、MO、ナビゲーションシステム及びモバイルパーソナルコンピュータに代表される音楽、映像または情報機器、携帯電話およびファクシミリに代表される通信機器用部品、電気機器用部品、電子機器用部品、自動車用の部品として、ガソリンタンク、フュエルポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタンクフランジ等に代表される燃料廻り部品、ドアロック、ドアハンドル、ウインドウレギュレータ、スピーカーグリル等に代表されるドア廻り部品、シートベルト用スリップリング、プレスボタン等に代表されるシートベルト周辺部品、コンビスイッチ部品、スイッチ類及び、クリップ類の部品、さらにシャープペンシルのペン先及び、シャープペンシルの芯を出し入れする機構部品、洗面台及び、排水口及び、排水栓開閉機構部品、自動販売機の開閉部ロック機構及び、商品排出機構部品、衣料用のコードストッパー、アジャスター、及びボタン、散水用のノズル、及び散水ホース接続ジョイント、階段手すり部及び、床材の支持具である建築用品、使い捨てカメラ、玩具、ファスナー、チェーン、コンベア、バックル、スポーツ用品、自動販売機、家具、楽器及び、住宅設備機器に代表される工業部品として好適に使用できる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。尚、実施例および比較例で使用する成分の内容と評価方法を以下に示す。
【0058】
[使用成分の内容]
<(A)ポリオキシメチレン樹脂>
A:メルトインデックス30g/10分(ASTM D−1238−57T)のコモノマーとしてエチレンオキサイドを4モル%含有するポリオキシメチレンコポリマー(安定剤として、ポリアミド66:0.05質量部、ステアリン酸カルシウム:0.1質量部、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート):0.4質量部、を含有)
<(B)ヒドラジド化合物>
B−1:セバチン酸ジヒドラジド(日本ファインケム工業株式会社製)
B−2:アジピン酸ジヒドラジド(日本ファインケム工業株式会社製)
<(C)充填剤>
C−1:レーザー式粒径測定装置で測定した体積平均粒子径が3μmで、アスペクト比が3の粒子状の表面未処理ウォラストナイト。
C−2:レーザー式粒径測定装置で測定した体積平均粒子径が6μmで、アスペクト比が5の粒子状の表面未処理タルク。
C−3:走査型電子顕微鏡で測定した短径が0.15μmで長径が20μmの粒子状の表面未処理チタン酸カリウムウィスカー。
【0059】
[評価方法]
(1)成形品から放出されるホルムアルデヒド量
東芝機械(株)製IS−100GN 射出成形機を用いて、シリンダー温度:200℃ ,射出圧力: (1次圧力/2次圧力=63.7MPa/50.0MPa) 射出時間:15秒、冷却時間:20秒、金型温度;77℃ で試験片を作成し、VDA275法により測定し、成形品から放出されるホルムアルデヒド量を求めた。
<VDA275 法>
1Lのポリエチレン容器に蒸留水50mLと規定されたサイズの試験片(縦10 0 mm×横40mm×厚み3mm)を入れ密閉し、60℃ で3時間加熱後、蒸留水中のホルムアルデヒドをアンモニウムイオン存在下においてアセチルアセトンと反応させ、その反応物をUV分光計にて412nmの吸収ピークを測定し、ホルムアルデヒド放出量( mg/kg) を求めた。
【0060】
(2)色調(b)
ポリオキシメチレン樹脂組成物ペレットを80℃×3時間乾燥した後、ARBURG社製射出成形機を用いて、シリンダー温度200℃で、成形機内に溶融させたポリオキシメチレン樹脂組成物を所定時間滞留させた後、射出成形を行い、その射出成形された成形品の色調をミノルタ製色彩色差計CR−200を用いて測定した。
(3)シャルピー衝撃強度
東芝機械(株)製 IS−100GN 射出成形機を用いて、シリンダー温度:205℃ ,射出圧力: (1次圧力=65 MPa) 射出時間:35秒、冷却時間:15秒、金型温度;90℃の設定でISO引張試験片を作成した。このISO引張試験片を、(株)東洋精機製 NOTCHING TOOL A−4を用いてシャルピー衝撃試験片を作成し、JIS K7111(ISO 179/1eA)に基づいて測定し衝撃強度を求めた。
(4)繰返し衝撃強度
住友金属工業(株)製 SH−75射出成形機を用いて、シリンダー温度:200℃ ,射出圧力: (1次圧力=54 MPa) 射出時間:25秒、冷却時間:15秒、金型温度;70℃の設定でASTM試験片を作成した。このASTM試験片を、テスター産業(株)製 ノッチングマシーンを用いてアイゾット衝撃強度用の試験片(ASTM D256に基づいて作成)を作成し、東洋精機(株)製 繰り返し衝撃試験機にて、荷重160g、落下高さ20mm、落下速度35回/分の条件で繰り返し衝撃を与え破断するまでの回数を求めた。
【0061】
〔実施例1〕
製造方法:A
200℃に設定されたL/D=53.8の二軸押出機(東芝機械(株)製 機種名:TEM−58SS)に、ニーディングディスク順送り、送りなし、逆送りで構成されたブロックを、シリンダーブロックNO.6付近(溶融ゾーン)、シリンダーブロックNO.11付近(混練ゾーン)2ヶ所に位置するように構成したスクリューを用いて、A成分:ポリオキシメチレンコポリマー80質量部を、メインフィーダー(S.F−3)からメインフィード口(NO.1)に供給し、B成分:B−1ヒドラジド化合物0.1質量部と、C成分:C−1充填材20質量部を各サイドフィーダー(S.F−1、S.F−2)から同位置(NO.10)に供給し、スクリュー回転数150rpmで混練を行った。メインフィードとサイドフィードの割合は各々の質量比となる様に調整し、最終の吐出量は150kg/hrとなるように調整した。尚、オープンベント口(V−1)からポリオキシメチレン樹脂は溶融している事を確認した。脱気ベント口(V−2)は−0.1MPaで吸引した。押出された樹脂はストランドカッターでペレットとし、得られたペレットを用いて評価を行った。その結果を表1に示す。
【0062】
〔実施例2〜8、比較例1〕
製造方法:A
A成分、B成分、C成分を表1に示した割合で添加した以外は 実施例1と同様に操作し得られたペレットを用いて評価を行った。その結果を表1に示す。
【0063】
〔実施例9〕
製造方法:B
200℃に設定されたL/D=53.8の二軸押出機(東芝機械(株)製 機種名:TEM−58SS)に、ニーディングディスク順送り、送りなし、逆送りで構成されたブロックを、シリンダーブロックNO.6付近(溶融ゾーン)、シリンダーブロックNO.11付近(混練ゾーン)2ヶ所に位置するように構成したスクリューを用いて、A成分:ポリオキシメチレンコポリマー80質量部を、メインフィーダー(S.F−3)からメインフィード口(NO.1)に供給し、B成分:B−1ヒドラジド化合物0.1質量部と、C成分:C−1充填材20質量部を各サイドフィーダー(S.F−1、S.F−2)から別々(NO.8、NO.10)に供給し、スクリュー回転数150rpmで混練を行った。メインフィードとサイドフィードの割合は各々の質量比となる様に調整し、最終の吐出量は150kg/hrとなるように調整した。尚、オープンベント口(V−1)からポリオキシメチレン樹脂は溶融している事を確認した。脱気ベント口(V−2)は−0.1MPaで吸引した。押出された樹脂はストランドカッターでペレットとし、得られたペレットを用いて評価を行った。その結果を表2に示す。
【0064】
〔実施例10〜16〕
製造方法:B
A成分、B成分、C成分を表2に示した割合で添加した以外は 実施例9と同様に操作し押出され得られたペレットを用いて評価を行った。その結果を表2に示す。
【0065】
〔実施例17〕
製造方法:C
200℃に設定されたL/D=53.8の二軸押出機(東芝機械(株)製 機種名:TEM−58SS)に、ニーディングディスク順送り、送りなし、逆送りで構成されたブロックを、シリンダーブロックNO.6付近(溶融ゾーン)、シリンダーブロックNO.11付近(混練ゾーン)2ヶ所に位置するように構成したスクリューを用いて、A成分:ポリオキシメチレンコポリマー80質量部を、メインフィーダー(S.F−3)からメインフィード口(NO.1)に供給し、B成分:B−1ヒドラジド化合物0.1質量部と、C成分:C−1充填材20質量部を各サイドフィーダー(S.F−2、S.F−1)(製造方法BのB成分、C成分のフィード位置を逆にする)から別々(NO.8、NO.10)に供給し、スクリュー回転数150rpmで混練を行った。メインフィードとサイドフィードの割合は各々の質量比となる様に調整し、最終の吐出量は150kg/hrとなるように調整した。尚、オープンベント口(V−1)からポリオキシメチレン樹脂は溶融している事を確認した。脱気ベント口(V−2)は−0.1MPaで吸引した。押出された樹脂はストランドカッターでペレットとし、得られたペレットを用いて評価を行った。その結果を表3に示す。
【0066】
〔実施例18〜24〕
製造方法:C
A成分、B成分、C成分を表3に示した割合で添加した以外は 実施例17と同様に操作し押出され得られたペレットを用いて評価を行った。その結果を表3に示す。
【0067】
〔比較例2〕
製造方法:D
200℃に設定されたL/D=53.8の二軸押出機(東芝機械(株)製 機種名:TEM−58SS)に、ニーディングディスク順送り、送りなし、逆送りで構成されたブロックを、シリンダーブロックNO.6付近(溶融ゾーン)、シリンダーブロックNO.11付近(混練ゾーン)2ヶ所に位置するように構成したスクリューを用いて、A成分:ポリオキシメチレンコポリマー80質量部、C成分:C−1充填材20質量部をヘンシェルミキサーでブレンドし、メインフィーダー(S.F−3)からメインフィード口(NO.1)にフィードし、スクリュー回転数150rpmで混練を行った。最終の吐出量は150kg/hrとなるように調整した尚、オープンベント口(V−1)からポリオキシメチレン樹脂は溶融している事を確認した。脱気ベント口(V−2)は−0.1MPaで吸引した。
押出された樹脂はストランドカッターでペレットとし、得られたペレットを用いて評価を行った。その結果を表4に示す。
【0068】
〔比較例3〜10〕
製造方法:D
A成分、B成分、C成分を表4に示した割合で添加した以外は 比較例2と同様に操作し押出され得られたペレットを用いて評価を行った。その結果を表4に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
【表3】

【0072】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の製造方法により得られるポリオキシメチレン樹脂組成物は、従来の組成物に比較して、ホルムアルデヒド放出量が著しく低減し、更には衝撃性、熱変色性に優れた成形品を提供することが可能となる為、例えば、プリンター、及び複写機に代表されるOA機器に使用される部品、ビデオムービーに代表されるビデオ機器に使用される部品、ナビゲーションシステム、及びモバイルパーソナルコンピューターに代表される音楽、映像、または情報機器に使用される部品、携帯電話、及びファクシミリに代表される通信機器に使用される部品、自動車用内外装機構部品に使用される部品、及び使い捨てカメラ、玩具、ファスナー、コンベア、バックル、住設機器に代表される工業雑貨に使用される部品、などの用途に利用できる。
上述の各種機器に使用された部品としては、具体的には、ギヤ、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、関節、軸、軸受け、キーステム、キートップなどの機構部品、アウトサートシャーシの樹脂部品、シャーシ、トレー、及び側板、などが挙げられる。
【符号の説明】
【0074】
1−12:押出機 シリンダーブロック
M:押出機モータ
D:ダイス
V−1:オープンベント
V−2:脱気ベント
S.F−1:定量サイドフィーダー−1
S.F−2:定量サイドフィーダー−2
S.F−3:定量フィーダー−3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリオキシメチレン樹脂と(B)ヒドラジド化合物と(C)充填材を含有するポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法であって、ニーディング・ディスクを必須成分として溶融ゾーンと混練ゾーンを有するスクリュー構成を備えた押出機を用いて、(A)ポリオキシメチレン樹脂を押出機のメインフィード口からバレル内に供給し、溶融ゾーンで溶融させた後、(B)ヒドラジド化合物と(C)充填材をサイドフィード口から供給し、混練ゾーンにて混練し、更にベント口から脱気しながら押出機のダイより連続的に押出すことを特徴とするポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
(B)ヒドラジド化合物が下記一般式(1)である請求項1に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法。 HNNHCO−R−CONHNH (1)
(式中、Rは炭素数1〜20の炭化水素を表す)
【請求項3】
(C)充填材が、繊維状、粒子状、板状の充填材から選ばれる少なくとも一種の充填材である請求項1又は2に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
(A)ポリオキシメチレン樹脂、(B)ヒドラジド化合物及び(C)充填材の配合割合が、(A)ポリオキシメチレン樹脂50〜99質量部、(C)充填材1〜50質量部であり、(A)ポリオキシメチレン樹脂と(C)充填材の合計量100質量部に対して、(B)ヒドラジド化合物0.01〜5質量部である請求項1〜3いずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
(A)ポリオキシメチレン樹脂をスクリューの溶融ゾーンで溶融後に、(B)ヒドラジド化合物及び(C)充填材をサイドフィード口の同位置から供給し溶融混練する請求項1〜4いずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−20307(P2011−20307A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166007(P2009−166007)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】