説明

マイクロチップの製造方法

【課題】流路の内面に機能性膜を形成するとともに、樹脂製のマイクロチップ基板同士を接合することが可能なマイクロチップの製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂製のマイクロチップ基板1の表面には、表面に沿って延びる流路用溝2が形成されている。マイクロチップ基板4は平板状の基板である。マイクロチップ基板1の流路用溝2の内面以外の表面における表面粗さRaは、表面に形成されるSiO膜3の膜厚T1以上となっている。流路用溝2が形成されている面を内側にしてマイクロチップ基板1、4を重ね、超音波を印加することで両基板を接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内面に機能性膜が形成された流路を有するマイクロチップを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細加工技術を利用してシリコンやガラス基板上に微細な流路や回路を形成し、微小空間上で核酸、タンパク質、血液などの液体試料の化学反応や、分離、分析などを行うマイクロ分析チップ、あるいはμTAS(Micro Total Analysis Systems)と称される装置が実用化されている。このようなマイクロチップの利点としては、サンプルや試薬の使用量又は廃液の排出量が軽減され、省スペースで持ち運び可能な安価なシステムの実現が考えられる。
【0003】
マイクロチップは、少なくとも一方の部材に微細加工が施された部材2つをはり合わせることにより製造される。従来においては、マイクロチップにはガラス基板が用いられ、様々な微細加工方法が提案されている。しかしながら、ガラス基板は大量生産には向かず、非常に高コストであるため、廉価で使い捨て可能な樹脂製マイクロチップの開発が望まれている。
【0004】
微細流路が形成されたマイクロチップは、表面に流路用溝が形成された樹脂製のマイクロチップ基板と、流路用溝のカバーとして機能する樹脂製のマイクロチップ基板とを、流路用溝が形成された面を内側にして接合することによって作製される。
【0005】
マイクロチップ基板を接合する方法として、接着剤を用いて接合する方法、有機溶剤で樹脂基板の表面を溶かして接合する方法(例えば特許文献1)、超音波溶着を利用して接合する方法(例えば特許文献2)、熱圧着を利用して接合する方法(例えば特許文献3)、レーザ溶着を利用する方法などがある(例えば特許文献4)。
【0006】
また、マイクロチップのように微細流路中に通液して検査を行うような素子においては、流路に対して機能性処理が施されている。機能性処理として、例えば、流路にタンパク質などの液体試料が付着しないように、流路表面に親水性の性質を付与する処理が行われている。例えば、SiO膜のコーティングは親水性も十分にあり、無機物であるため材料として安定、高透明度を有するなどの特徴がある。また、液体試料に対する撥水性、選択的に分子に対する吸着機能を持たせるためのフッ素系樹脂を用いた膜も、ここでいう機能性膜の1例である。
【0007】
流路表面に親水性の性質などの機能性を付与する処理としては、有機物/無機物のコーティング、流路内に溶液を流すことによるディッピングなどの手法がある。なかでも、CVDやスパッタリングなどによる機能性膜の形成では、膜の種類によって、機能性効果も十分であり、流路表面に対する密着性や膜の均一性においても良好となる。
【0008】
ところで、微細流路の幅が数μmであるため、流路用溝の内面が機能性膜で成膜されるようにマスキングを行ってマイクロチップ基板に機能性膜を形成することは困難である。特に、表面に形成された流路用溝のパターンが複雑の場合、そのパターンの位置に合わせてパターニングによって機能性膜を形成することは困難である。そこで、従来においては、表面に流路用溝が形成された樹脂製のマイクロチップ基板に対して、流路用溝を含む面全体に機能性膜を形成し、その後、流路用溝が形成された面を内側にして、接合の相手方となる樹脂製のマイクロチップ基板と接合することによって樹脂製のマイクロチップを製造していた。
【0009】
しかしながら、流路用溝を含む面全体に機能性膜を形成した場合、接合の相手方となるマイクロチップ基板との接合面にも機能性膜が形成され、接合面において樹脂同士の接触とならないため、マイクロチップ基板同士の接合が非常に困難になる。すなわち、熱圧着などの方法では、基板の樹脂表面を溶かして再度固化させることで樹脂製のマイクロチップ基板同士を接合するため、接合面に機能性膜が形成されている場合は、マイクロチップ基板同士を接合することが困難になる。
【0010】
流路用溝以外の表面に形成された機能性膜を剥離する方法も考えられるが、剥離するための工程が増えてしまう問題がある。また、剥離することによってほこり等が発生し、マイクロチップ基板の接合面にほこり等が残存すると、接合のムラを引き起こす原因にもなり、外観品質にも影響を及ぼしてしまう。
【0011】
そのため、流路用溝を含む面に機能性膜を形成した場合は、接着剤を用いてマイクロチップ基板同士を接合していた。
【0012】
しかしながら、接着剤を用いてマイクロチップ基板同士を接合する場合、微細流路内に接着剤が染み出して微細流路を塞いでしまうおそれがある。また、接着剤によって機能性膜の機能が妨げられるおそれがある。
【0013】
従って、微細流路の内面に機能性膜を形成し、さらに、接着剤を用いずにマイクロチップ基板を接合することが可能な方法が望まれていた。
【0014】
また、特許文献2に記載の超音波による溶着方法においては、超音波の印加による微細流路へのダメージを避けるために、微細流路のパターンを避けた形状の超音波ホーンを作製し、その超音波ホーンを用いて超音波溶着を行っている。しかしながら、微細流路のパターンは複雑であるため、そのパターンを避けた形状の超音波ホーンを作製することは困難である。そのため、超音波の印加による微細流路へのダメージを避けることは困難であった。
【0015】
【特許文献1】特開2005−80569号公報
【特許文献2】特開2005−77239号公報
【特許文献3】特開2005−77218号公報
【特許文献4】特開2005−74796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
この発明は上記の問題を解決するものであり、流路の内面に機能性膜を形成するとともに、樹脂製のマイクロチップ基板同士を接合することが可能なマイクロチップの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明の第1の形態は、2つの樹脂製基板を有し、前記2つの樹脂製基板のうち少なくとも一方の樹脂製基板の表面に流路用溝が形成され、前記流路用溝が形成された面を内側にして接合されたマイクロチップの製造方法であって、前記流路用溝の内面以外の表面における表面粗さRa以下の厚さを有する機能性膜を、前記流路用溝が形成された面及び前記流路用溝の内面に形成する第1工程と、前記流路用溝が形成された面を内側にして前記2つの樹脂製基板を重ね、その状態で前記2つの樹脂製基板に対して超音波を印加することで前記接合する面を溶融させ、前記2つの樹脂製基板を加圧することで、前記2つの樹脂製基板を接合する第2工程と、を含むことを特徴とするマイクロチップの製造方法である。
また、この発明の第2の形態は、第1の形態に係るマイクロチップの製造方法であって、前記流路用溝の内面以外の表面における表面粗さRaは、前記流路用溝の深さ以下であることを特徴とする。
また、この発明の第3の形態は、第1の形態又は第2の形態のいずれかに係るマイクロチップの製造方法であって、前記2つの樹脂製基板のうち一方の樹脂製基板の表面に流路用溝が形成され、前記第1工程では、前記一方の樹脂製基板に対しては、前記流路用溝の内面以外の表面における表面粗さRa以下の厚さを有する機能性膜を、前記流路用溝が形成された面及び前記流路用溝の内面に形成し、他方の樹脂製基板に対しては、前記一方の樹脂製基板と接合する面に、表面粗さRa以下の厚さを有する機能成膜を形成し、前記第2工程では、前記一方の樹脂製基板については前記流路用溝が形成された面を内側にし、前記他方の樹脂製基板については前記機能性膜が形成された面を内側にして前記2つの樹脂製基板を重ねることを特徴とする。
また、この発明の第4の形態は、第1の形態又は第2の形態のいずれかに係るマイクロチップの製造方法であって、前記流路用溝は前記2つの樹脂製基板の両方の表面にそれぞれ形成されており、前記第1工程では、前記流路用溝の内面以外の表面における表面粗さRa以下の厚さを有する機能性膜を、前記2つの樹脂製基板の前記流路用溝が形成された面及び前記流路用溝の内面に形成し、前記第2工程では、前記2つの樹脂製基板に形成された流路用溝をそれぞれ内側にし、互いに流路用溝の位置合わせを行って前記2つの樹脂製基板を重ねることを特徴とする。
また、この発明の第5の形態は、第1の形態から第4の形態のいずれかに係るマイクロチップの製造方法であって、前記機能性膜はSiO膜であることを特徴とする。
また、この発明の第6の形態は、第1の形態から第5の形態のいずれかに係るマイクロチップの製造方法であって、前記第1工程では、前記流路用溝が形成された面に前記機能性膜の塗布溶液を塗布し、硬化させることで前記機能性膜を形成することを特徴とする。
また、この発明の第7の形態は、第1の形態から第5の形態のいずれかに係るマイクロチップの製造方法であって、前記第1工程では、スパッタリングによって前記機能性膜を形成することを特徴とする。
また、この発明の第8の形態は、第1の形態から第5の形態のいずれかに係るマイクロチップの製造方法であって、前記第1工程では、CVDによって前記機能性膜を形成することを特徴とする。
また、この発明の第9の形態は、第1の形態から第8の形態のいずれかに係るマイクロチップの製造方法であって、前記表面粗さRaは、5μm〜25μmであることを特徴とする。
また、この発明の第10の形態は、第9の形態に係るマイクロチップの製造方法であって、前記機能成膜の厚さは、1μm〜3μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
この発明によると、流路用溝が形成された面に、膜厚が流路用溝の内面以外の表面における表面粗さRa以下の厚さを有する機能性膜を形成することで、超音波の印加によって樹脂製基板の接合面に形成された機能性膜を剥離することができ、樹脂同士の接合が可能となる。これにより、流路用溝の内面に機能性膜を形成することができ、さらに、樹脂基板同士を強固に接合することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[第1の実施形態]
この発明の第1実施形態に係るマイクロチップの製造方法について図1を参照して説明する。図1は、この発明の第1実施形態に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【0020】
図1(a)に示すように、樹脂製のマイクロチップ基板1の表面には、表面に沿って延びる流路用溝2が形成されている。マイクロチップ基板1の接合の相手方となるマイクロチップ基板4は、平板状の基板である。そして、流路用溝2が形成されている面を内側にして、マイクロチップ基板1とマイクロチップ基板4を接合することで、微細流路が形成されたマイクロチップを製造する。これにより、マイクロチップ基板4が流路用溝2の蓋(カバー)として機能する。なお、マイクロチップ基板1、4が、この発明の「樹脂製基板」の1例に相当する。
【0021】
また、マイクロチップ基板1には、基板を貫通して形成された貫通孔が形成されている。この貫通孔は流路用溝2に接して形成されており、マイクロチップ基板1とマイクロチップ基板4を接合することで、外部と流路用溝2を繋げる開口部となる。この開口部は、ゲル、試料、緩衝液の導入、保存、排出を行うための孔である。開口部の形状は、円形状や矩形状の他、様々な形状であっても良い。この開口部に、分析装置に設けられたチューブやノズルを接続し、そのチューブやノズルを介して、ゲル、試料、又は緩衝液などを流路用溝2に導入し、又は、流路用溝2から排出する。なお、貫通孔をマイクロチップ基板4に形成して開口部を形成しても良い。
【0022】
マイクロチップ基板1、4には樹脂が用いられる。その樹脂としては、成形性(転写性、離型性)が良いこと、透明性が高いこと、紫外線や可視光に対する自己蛍光性が低いことなどが条件として挙げられるが、特に限定されるものではない。例えば、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリエチレン、ポリジメチルシロキサン、環状ポリオレフィンなどが好ましい。特に、ポリメタクリル酸メチル、環状ポリオレフィンなどが好ましい。マイクロチップ基板1とマイクロチップ基板4とで、同じ材料を用いてもよく、異なる材料を用いてもよい。
【0023】
マイクロチップ基板1、4の形状は、ハンドリング、分析しやすい形状であればどのような形状であってもよい。例えば、10mm角〜200mm角程度の大きさが好ましく、10mm角〜100mm角がより好ましい。マイクロチップ基板1、4の形状は、分析手法、分析装置に合わせれば良く、正方形、長方形、円形などの形状が好ましい。
【0024】
流路用溝2の形状は、分析試料、試薬の使用量を少なくできること、成形金型の作製精度、転写性、離型性などを考慮して、幅は10μm〜200μm、深さは30μm〜200μmの範囲内の値であることが好ましいが、特に限定されるものではない。また、アスペクト比(溝の深さ/溝の幅)は、0.1〜3程度が好ましく、0.2〜2程度がより好ましい。また、流路用溝2の幅と深さは、マイクロチップの用途によって決めればよい。なお、説明を簡便にするために、図1(a)に示す流路用溝2の断面の形状は矩形状となっており、流路用溝2の幅は深さ方向に一定となっている。なお、この形状は流路用溝2の1例であり、断面形状が曲面状となっていても良い。
【0025】
また、マイクロチップ基板1、4の板厚は、0.2mm〜5mm程度の範囲であり、成形性を考慮すると0.5mm〜2mmが好ましい。また、蓋(カバー)として機能するマイクロチップ基板4に流路用溝を形成しない場合、板状の部材ではなく、フィルム(シート状の部材)を用いてもよい。この場合、フィルムの厚さは、30μm〜300μmであることが好ましく、50μm〜150μmであることがより好ましい。
【0026】
そして、図1(a)に示すように、マイクロチップ基板1に対して、流路用溝2が形成されている面に機能性膜の1例としてのSiO膜3を形成し、マイクロチップ基板4の表面に機能性膜の1例としてのSiO膜5を形成する。マイクロチップ基板1に対しては、流路用溝2の内面にもSiO膜3を形成する。SiO膜3は、SiOを主成分とする膜である。機能性膜は、無機材料又は有機材料を用いることができる。ここでは、機能性膜の1例として親水性機能を有するSiO膜を形成する場合について説明する。
【0027】
ここで、マイクロチップ基板1の流路用溝2の内面以外の表面における表面粗さRa、流路用溝2の深さD1、及びSiO膜3の膜厚T1の関係について説明する。マイクロチップ基板1の流路用溝2の内面以外の表面における表面粗さRaは、表面に形成されるSiO膜3の膜厚T1以上となっている。換言すると、膜厚が表面粗さRa以下のSiO膜3をマイクロチップ基板1の表面に形成する。
【0028】
例えば、流路用溝2の内面以外の表面における表面粗さRaを5μm〜25μmとする。また、SiO膜3の膜厚T1を1μm〜3μmとする。なお、この実施形態においては、流路用溝2の底面に形成されたSiO膜3(機能性膜)の膜厚を、SiO膜3(機能性膜)の膜厚T1とする。
【0029】
以上のように表面粗さRaをSiO膜3の膜厚T1以上とすることで、マイクロチップ基板1の表面の表面粗さRaがSiO膜3の表面に反映され、SiO膜3の表面に微小な凹凸が形成されることになる。
【0030】
また、流路用溝2の形状を維持するために、マイクロチップ基板1の表面粗さRaは、流路用溝2の深さD以下となっている。
【0031】
同様に、マイクロチップ基板4の表面粗さRaは、表面に形成されるSiO膜5の膜厚T2以上となっている。換言すると、膜厚が表面粗さRa以下のSiO膜5をマイクロチップ基板4の表面に形成する。このように表面粗さRaをSiO膜5の膜厚T2以上とすることで、マイクロチップ基板4の表面の表面粗さRaがSiO膜5の表面に反映され、SiO膜5の表面に微小な凹凸が形成されることになる。
【0032】
研削、切削、ブラスト法、化学処理、又は放電加工などの方法によってマイクロチップ基板1、4の表面粗さRaを大きくすることができる。例えば、ブラスト法によってマイクロチップ基板1の表面粗さRaを大きくする場合、流路用溝2が形成された面に対して微小粒子を吹き付けることで表面粗さRaを大きくする。マイクロチップ基板4についても、接合面に対して微小粒子を吹き付けることで表面粗さRaを大きくする。
【0033】
また、金型又はマイクロチップ基板に対して化学処理を施すことで、マイクロチップ基板の表面粗さRaを大きくすることができる。例えば、金型に対して化学処理を行い、化学処理が施された金型を用いて表面粗さRaが大きいマイクロチップ基板1、4を作製する。鉄系材料の金型に対しては、38−42Be塩化第2鉄液によるエッチング処理を施すことで金型の表面粗さRaを大きくする。また、ステンレス系材料の金型に対しては、塩化第2鉄液と硝酸によるエッチング処理を施すことで金型の表面粗さRaを大きくすることができ、また、塩酸などを用いても表面粗さRaを大きくすることができる。表面粗さRaが大きくなった金型を用いることで、表面粗さRaが大きいマイクロチップ基板1、4を作製することができる。また、ポリイミドなどの樹脂材料からなるマイクロチップ基板に対しては、100℃〜110℃程度に加熱した50%苛性ソーダを用いることで、エッチング処理が可能となり、マイクロチップ基板の表面粗さRaを大きくすることができる。
【0034】
また、金型に対して放電加工を施すことで、マイクロチップ基板の表面粗さRaを大きくすることができる。例えば、鉄系やステンレス系の材料からなる金型に対しては、シリコン電極、銅電極、黒鉛電極、又はアルミニウム圧粉体電極を用いて放電加工することができ、金型の表面粗さRaを大きくすることができる。表面粗さRaが大きくなった金型を用いることで、表面粗さRaが大きいマイクロチップ基板を作製することができる。
【0035】
また、マイクロチップ基板を成形するための金型の表面粗さを大きくすることで、その金型で作製されるマイクロチップ基板の表面粗さRaを大きくしても良い。例えば、金型を作製する工程において金型の表面を粗し、その金型を用いることで表面粗さRaが大きいマイクロチップ基板を成形する。そして、マイクロチップ基板の表面を加工することで表面に流路用溝を形成する。これにより、流路用溝の内面の表面粗さRaが小さく、かつ、接合面の表面粗さRaが大きいマイクロチップ基板を作製することができる。
【0036】
(SiO膜の形成方法)
SiO膜3、5は、例えば、蒸着、スパッタリング、CVD、又は塗布によって形成することができ、その成膜方法は特に限定されない。塗布、スパッタリング、又はCVDによる成膜方法が、流路用溝2の内面、特に流路用溝2の垂直壁面に密着性の良好なSiO膜を形成できるため、より好ましい方法である。
【0037】
(塗布によるSiO膜の形成例)
例えば、塗布によってSiO膜3、5を形成する場合、硬化後にSiOの膜となる塗布溶液をマイクロチップ基板1、4の表面に塗布し、その後、塗布溶液を硬化させることで、マイクロチップ基板1、4の表面にSiO膜3、5を形成することができる。
【0038】
塗布溶液としては、例えば、アルコキシシランを加水分解、縮重合して得られるポリシロキサンオリゴマーをアルコール溶媒に溶かしたものを用いる。この場合、塗布溶液を加熱してアルコール溶媒を揮発させ、SiO膜を形成する。具体的には、JSR社製のグラスカ7003や、コルコート社製のメチルシリケート51などが挙げられる。
【0039】
また、パーヒドロポリシラザンをキシレン、ジブチルエーテル溶媒に溶かしたものを塗布溶液に用いる。この場合、塗布溶液を加熱して溶媒を揮発させると同時に水と反応させて、SiO膜を形成する。具体的には、AZエレクトロニックマテリアルズ社製のアクアミカなどが挙げられる。
【0040】
また、アルコキシシリル基含有ポリマーとアルコキシシランを加水分解・共縮合して得られる無機−有機ハイブリッドポリマーをアルコール溶媒に溶かしたものを塗布溶液に用いる。この場合、加熱してアルコール溶媒を揮発させ、SiOが主成分となるハイブリッド膜を形成する。具体的には、JSR社製のグラスカ7506などが挙げられる。
【0041】
(塗布溶液の塗布方法)
塗布溶液をマイクロチップ基板1、4に均一に塗布することが重要である。塗布溶液の物性(粘度、揮発性)を考慮し、塗布方法を適宜選択する。例えば、ディッピング、スプレーコーティング、スピンコーティング、スリットコーティング、スクリーン印刷、パッド印刷、インクジェット印刷などが挙げられる。
【0042】
そして、塗布溶液を硬化させることで、SiO膜3、5を形成する。例えば、熱硬化性の塗布溶液を用いた場合は、熱処理を施すことにより塗布溶液を硬化させて、SiO膜3、5を形成する。
【0043】
(塗布溶液の硬化方法)
塗布溶液を硬化させてSiO膜を形成する際には、塗布溶液の溶媒を十分に揮発させ、SiOの強固なネットワークを形成できることが望ましい。塗布溶液の物性(粘度、揮発性、触媒)を考慮し、硬化方法を適宜選択する。例えば、常温で塗布溶液を放置して硬化させたり、塗布溶液を60℃〜100℃の温度で加熱することで硬化させたり、塗布溶液を高温高湿下(温度60℃で湿度90%、温度80℃で湿度90%など)で硬化させたりする。また、紫外線硬化や、可視光硬化などを利用して塗布溶液を硬化させても良い。
【0044】
(スパッタリングによるSiO膜の形成例)
また、スパッタリングによってSiO膜3、5を形成する場合、例えば、シンクロン製スパッタリング装置(装置名:RAS−1100C)を使用してSiO膜3、5を形成した。シリコンのメタル成膜室と酸化室に分かれており、基材を貼り付けたドラムを回転させてSiO膜3、5を形成する。例えば、アルゴンガス流量が250sccm、酸素ガス流量が120sccm、RF出力が4.5kW、成膜レートが4Å/secの条件で、SiO膜3、5を200nm成膜した。
【0045】
(CVDによるSiO膜の形成例)
また、CVDによってSiO膜3、5を形成する場合、例えば、サムコ社製CVD装置(装置名:PD−270ST)を使用してSiO膜3、5を形成した。TEOS(Tetra Ethoxy Silane)、TMOS(Tetra Mthoxy Silane)など、シリコンを含む液体ソースを気化させ、プラズマ空間中で分解、酸化させることでSiO膜3、5を形成する。例えば、TEOS流量が12sccm、酸素ガス流量が400sccm、RF出力が300W、圧力が50Pa、成膜レートが30Å/secの条件で、SiO膜3、5を200nm成膜した。
【0046】
そして、図1(b)に示すように、マイクロチップ基板1については流路用溝2が形成された面を内側にし、マイクロチップ基板4についてはSiO膜5が形成された面を内側にし、マイクロチップ基板1とマイクロチップ基板4を重ねる。その状態で、マイクロチップ基板1とマイクロチップ基板4に対して超音波を印加することで接合面を溶融させ、さらに、マイクロチップ基板1とマイクロチップ基板4を加圧することで接合する。例えば、10kHz〜50kHzの超音波を印加しながらマイクロチップ基板を加圧することで、基板同士を接合する。
【0047】
マイクロチップ基板1とマイクロチップ基板4の接合面には、各基板の表面粗さRaに起因する微小な凹凸が存在し、その微小な凹凸によって多数の微小な点接触が形成されている。その点接触の部分に超音波の振動が集中し、接合面に形成されたSiO膜3、5が剥離する。これにより、接合面においては樹脂同士の接合となる。さらに、接合面の微小な凹凸に超音波による発熱が集中し、マイクロチップ基板1、4の溶着がスムーズに進行する。
【0048】
これにより、図1(b)に示すように、内部に流路用溝2による微細流路6が形成されたマイクロチップが製造される。微細流路6の内面には、SiO膜3、5が形成されて、全面がSiO膜で覆われている。
【0049】
以上のように、第1実施形態に係るマイクロチップの製造方法によると、微細流路6の内面にSiO膜を形成するとともに、接合面のSiO膜を剥離して、マイクロチップ基板1、4を樹脂同士の接合とすることが可能となる。そのことにより、マイクロチップ基板1、4を強固に接合することが可能となる。
【0050】
また、超音波溶着によって接合することができるため、接着剤などの物質を介さずにマイクロチップ基板1、4を接合することができる。そのことにより、微細流路6の内部に接着剤などの物質が染み出すおそれがない。
【0051】
さらに、接合面の微小な凹凸に超音波のエネルギーが集中するため、マイクロチップ基板1、4に超音波を印加しても、微細流路6へのダメージを避けることが可能となる。
【0052】
[変形例]
次に、上記第1実施形態に係るマイクロチップの製造方法の変形例について説明する。
【0053】
(変形例1)
まず、変形例1に係るマイクロチップの製造方法について図2を参照して説明する。図2は、変形例1に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【0054】
変形例1では、図2(a)に示すように、表面に流路用溝2が形成されたマイクロチップ基板1と、平板状のマイクロチップ基板7とを接合する。このマイクロチップ基板7は、流路用溝2の蓋(カバー)として機能する。上述した第1実施形態とは異なり、マイクロチップ基板7の表面には、SiO膜などの機能性膜は形成されていない。
【0055】
また、マイクロチップ基板7の板厚は、0.2mm〜5mm程度の範囲であり、成形性を考慮すると0.5mm〜2mmが好ましい。また、蓋(カバー)として機能するマイクロチップ基板7に流路用溝を形成しない場合、板状の部材ではなく、フィルム(シート状の部材)を用いてもよい。この場合、フィルムの厚さは、30μm〜300μmであることが好ましく、50μm〜150μmであることがより好ましい。
【0056】
そして、図2(b)に示すように、マイクロチップ基板1については流路用溝2が形成された面を内側にし、マイクロチップ基板1とマイクロチップ基板7を重ね、超音波溶着によって両基板を接合する。
【0057】
マイクロチップ基板1とマイクロチップ基板7の接合面には、マイクロチップ基板1の表面粗さRaに起因する微小な凹凸が存在し、その微小な凹凸によって多数の微小な点接触が形成されている。その点接触の部分に超音波の振動が集中し、接合面に形成されたSiO膜3が剥離する。これにより、接合面においては樹脂同士の接合となる。さらに、接合面の微小な凹凸に超音波による発熱が集中し、マイクロチップ基板1、7の溶着がスムーズに進行する。
【0058】
これにより、図2(b)に示すように、内部に微細流路6が形成されたマイクロチップが製造される。微細流路6の内面には、SiO膜3が形成されている。
【0059】
以上のように、変形例1に係るマイクロチップの製造方法によると、上述した第1実施形態と同様に、微細流路6の内面にSiO膜を形成するとともに、マイクロチップ基板1、7を強固に接合することが可能となる。
【0060】
(変形例2)
次に、変形例2に係るマイクロチップの製造方法について図3を参照して説明する。図3は、変形例2に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【0061】
変形例2では、図3(a)に示すように、表面に流路用溝2が形成されたマイクロチップ基板1と、表面に流路用溝9が形成されたマイクロチップ基板8とを接合する。上述した第1実施形態とは異なり、変形例2では、流路用溝が形成された基板同士を接合する。
【0062】
例えば図3(a)に示すように、樹脂製のマイクロチップ基板1の表面には、表面に沿って延びる流路用溝2が形成されている。また、樹脂製のマイクロチップ基板8の表面には、表面に沿って延びる流路用溝9が形成されている。流路用溝2と流路用溝9は同じパターンを有している。流路用溝2、9は、表面に沿った溝状のものである。そして、流路用溝2、9が形成されている面を内側にして、マイクロチップ基板1とマイクロチップ基板8を接合することで、微細流路が形成されたマイクロチップが製造される。図3(a)に示す流路用溝2、9の断面は矩形状となっており、流路用溝2、9の幅は深さ方向に一定となっている。なお、この形状は流路用溝2、9の1例であり、断面形状が曲面状となっていても良い。
【0063】
流路用溝9の幅は、流路用溝2の幅と等しくし、10μm〜200μmの範囲内の値であることが好ましい。流路用溝2と流路用溝9の幅を同じにすることで、流路用溝2と流路用溝9の位置合わせを行ってマイクロチップ基板1、8を接合することで、幅が一定の微細流路を形成することができる。また、流路用溝9の深さD2は、30μm〜200μmの範囲内の値であることが好ましい。流路用溝9の深さD2は、流路用溝2の深さD1と同じであっても良く、異なる深さであっても良い。
【0064】
また、マイクロチップ基板8の板厚は、0.2mm〜5mm程度の範囲であり、成形性を考慮すると0.5mm〜2mmが好ましい。
【0065】
そして、図3(a)に示すように、マイクロチップ基板1に対して、流路用溝2が形成されている面に機能性膜の1例としてのSiO膜3を形成し、マイクロチップ基板8に対して、流路用溝9が形成されている面に機能性膜の1例としてのSiO膜10を形成する。マイクロチップ基板1、8ともに、流路用溝2、9の内面にもSiO2膜3、10を形成する。
【0066】
マイクロチップ基板8の流路用溝9の内面以外の表面における表面粗さRaは、表面に形成されるSiO膜10の膜厚T3以上となっている。換言すると、膜厚が表面粗さRa以下のSiO膜10をマイクロチップ基板8の表面に形成する。このように表面粗さRaをSiO膜10の膜厚T3以上とすることで、マイクロチップ基板8の表面の表面粗さRaがSiO膜10の表面に反映され、SiO膜10の表面に微小な凹凸が形成される。また、流路用溝9の形状を維持するために、マイクロチップ基板8の表面粗さRaは、流路用溝9の深さ以下となっている。
【0067】
そして、図3(b)に示すように、マイクロチップ基板1については流路用溝2が形成された面を内側にし、マイクロチップ基板8については流路用溝9が形成された面を内側にし、流路用溝2と流路用溝9の位置を合わせて、マイクロチップ基板1、8を重ねる。その状態で、マイクロチップ基板1とマイクロチップ基板8に対して超音波を印加することで接合面を溶融させ、さらに、マイクロチップ基板1とマイクロチップ基板8を加圧することで接合する。
【0068】
マイクロチップ基板1とマイクロチップ基板8の接合面には、両基板の表面粗さRaに起因する微小な凹凸が存在し、その微小な凹凸によって多数の微小な点接触が形成されている。その点接触の部分に超音波の振動が集中し、接合面に形成されたSiO膜3、10が剥離する。これにより、接合面においては樹脂同士の接合となる。さらに、接合面の微小な凹凸に超音波による発熱が集中し、マイクロチップ基板1、8の溶着がスムーズに進行する。
【0069】
流路用溝2と流路用溝9は同じパターンを有しているため、流路用溝2と流路用溝9の位置合わせを行ってマイクロチップ基板1、8を接合することで、流路用溝2と流路用溝9によって微細流路が形成される。これにより、図3(b)に示すように、内部に微細流路11が形成されたマイクロチップが製造される。微細流路31の内面にはSiO膜3、10が形成されて、全面がSiO膜で覆われている。
【0070】
以上のように、変形例2に係るマイクロチップの製造方法によると、上述した第1実施形態と同様に、微細流路11の内面にSiO膜を形成するとともに、マイクロチップ基板1、8を強固に接合することが可能となる。
【0071】
なお、マイクロチップ基板1を金型で作製する際に、流路用溝2と位置決め部(マーク)とを同時に加工して作製し、マイクロチップ基板8を金型で作製する際に、流路用溝9と位置決め部(マーク)とを同時に加工して作製することで、接合時における位置合わせが簡便になる。
【0072】
(変形例3)
次に、変形例3について図4から図6を参照して説明する。図4から図6は、変形例3に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。変形例3では、変形例2の別の例について説明する。
【0073】
例えば図4(a)に示すように、一方のマイクロチップ基板20の表面には流路用溝21が形成されている。また、マイクロチップ基板20の接合の相手方となるマイクロチップ基板23の表面にも流路用溝24が形成されている。流路用溝21、24は、表面に沿った溝状のものであり、流路用溝21、24は同じパターンを有している。
【0074】
マイクロチップ基板20に形成された流路用溝21は、断面形状が矩形状となっており、流路用溝21の幅は深さ方向において一定となっている。また、マイクロチップ基板23に形成された流路用溝24は、側面が曲面状となっており、流路用溝24の幅は深さ方向に向けて徐々に狭くなっている。マイクロチップ基板20の最表面における流路用溝21の幅は、マイクロチップ基板23の最表面における流路用溝24の幅と等しくなっている。
【0075】
そして、マイクロチップ基板20に対して、流路用溝21が形成されている面に機能性膜の1例としてのSiO膜22を形成し、マイクロチップ基板23に対して、流路用溝24が形成されている面に機能性膜の1例としてのSiO膜25を形成する。SiO膜22、25は、SiOを主成分とする膜である。機能性膜は、無機材料又は有機材料を用いることができる。ここでは、機能性膜の1例として親水性機能を有するSiO膜を形成する場合について説明する。
【0076】
マイクロチップ基板20の流路用溝21の内面以外の表面における表面粗さRaは、表面に形成されるSiO膜22の膜厚以下となっている。換言すると、膜厚が表面粗さRa以下のSiO膜22をマイクロチップ基板20の表面に形成する。このように表面粗さRaをSiO膜22の膜厚以上とすることで、マイクロチップ基板20の表面の表面粗さRaがSiO膜22の表面に反映され、SiO膜22の表面に微小な凹凸が形成される。また、流路用溝21の形状を維持するために、マイクロチップ基板20の表面粗さRaは、流路用溝21の深さ以下となっている。
【0077】
同様に、マイクロチップ基板23の流路用溝24の内面以外の表面における表面粗さRaは、表面に形成されるSiO膜25の膜厚以上となっている。換言すると、膜厚が表面粗さRa以下のSiO膜25をマイクロチップ基板23の表面に形成する。このように表面粗さRaをSiO膜25の膜厚以上とすることで、マイクロチップ基板23の表面の表面粗さRaがSiO膜25の表面に反映され、SiO膜25の表面に微小な凹凸が形成される。また、流路用溝24の形状を維持するために、マイクロチップ基板23の表面粗さRaは、流路用溝24の深さ以下となっている。
【0078】
そして、図4(b)に示すように、マイクロチップ基板20については流路用溝21が形成された面を内側にし、マイクロチップ基板23については流路用溝24が形成された面を内側にし、流路用溝21と流路用溝24の位置を合わせて、マイクロチップ基板20、23を重ねる。その状態で、マイクロチップ基板20とマイクロチップ基板23に対して超音波を印加することで接合面を溶融させ、さらに、マイクロチップ基板20とマイクロチップ基板23を加圧することで接合する。
【0079】
マイクロチップ基板20とマイクロチップ基板23の接合面には、両基板の表面粗さRaに起因する微小な凹凸が存在し、その微小な凹凸によって多数の微小な点接触が形成されている。その点接触の部分に超音波の振動が集中し、接合面に形成されたSiO膜22、25が剥離する。これにより、接合面においては樹脂同士の接合となる。さらに、接合面の微小な凹凸に超音波による発熱が集中し、マイクロチップ基板20、23の溶着がスムーズに進行する。
【0080】
流路用溝21と流路用溝24は同じパターンを有しているため、流路用溝21と流路用溝24の位置合わせを行ってマイクロチップ基板20、23を接合することで、流路用溝21と流路用溝24によって微細流路が形成される。これにより、図4(b)に示すように、内部に微細流路26が形成されたマイクロチップが製造される。微細流路の内面にはSiO膜27が形成されて、全面がSiO膜で覆われている。
【0081】
変形例3によると、上述した第1実施形態における効果に加えて、以下の効果を奏することが可能となる。すなわち、2つのマイクロチップ基板に流路用溝を形成することで、側面の一部分が曲面となっている微細流路26を形成することが可能となる。1つのマイクロチップ基板に流路用溝を形成して、このような形状の微細流路26を形成しようとすると、金型上、アンダーカットができてしまうため、作製が非常に困難である。これに対して、変形例3によると、例えば、射出成形によって曲面状の流路用溝24を形成することが可能であるため、側面の一部分が曲面状の微細流路26を容易に形成することが可能となる。
【0082】
以上のように、2つのマイクロチップ基板に流路用溝を形成することで、微細流路の断面形状の自由度を大きくすることが可能となる。
【0083】
他の例について図5を参照して説明する。例えば図5(a)に示すように、一方のマイクロチップ基板20の表面には流路用溝21が形成されている。また、マイクロチップ基板20の接合の相手方となるマイクロチップ基板28にも流路用溝29が形成されている。流路用溝21、29は、表面に沿った溝状のものであり、流路用溝21、29は同じパターンを有している。
【0084】
マイクロチップ基板28に形成された流路用溝29は、側面がテーパ状になっている。これにより、流路用溝29の幅は、マイクロチップ基板28の最表面において最大の幅となり、深さ方向に向かって徐々に狭くなり、底面が平面状となっている。マイクロチップ基板20の最表面における流路用溝21の幅は、マイクロチップ基板28の最表面における流路用溝29の幅と等しくなっている。
【0085】
そして、マイクロチップ基板20に対して、流路用溝21が形成されている面に機能性膜の1例としてのSiO膜22を形成し、マイクロチップ基板28に対して、流路用溝29が形成されている面に機能性膜の1例としてのSiO膜30を形成する。SiO膜22、30は、SiOを主成分とする膜である。機能性膜は、無機材料又は有機材料を用いることができる。ここでは、機能性膜の1例として親水性機能を有するSiO膜を形成する場合について説明する。
【0086】
マイクロチップ基板28の流路用溝29の内面以外の表面における表面粗さRaは、表面に形成されるSiO膜30の膜厚以上となっている。換言すると、膜厚が表面粗さRa以下のSiO膜30をマイクロチップ基板28の表面に形成する。このように表面粗さRaをSiO膜30の膜厚以上とすることで、マイクロチップ基板28の表面粗さRaがSiO膜30の表面に反映され、SiO膜30の表面に微小な凹凸が形成される。また、流路用溝29の形状を維持するために、マイクロチップ基板28の表面粗さRaは、流路用溝29の深さ以下となっている。
【0087】
そして、図5(b)に示すように、マイクロチップ基板20については流路用溝21が形成された面を内側にし、マイクロチップ基板28については流路用溝29が形成された面を内側にし、流路用溝21と流路用溝29の位置を合わせて、マイクロチップ基板20、28を重ねる。その状態で、マイクロチップ基板20とマイクロチップ基板28に対して超音波を印加することで接合面を溶融させ、さらに、マイクロチップ基板20とマイクロチップ基板28を加圧することで接合する。
【0088】
マイクロチップ基板20とマイクロチップ基板28の接合面には、両基板の表面粗さRaに起因する微小な凹凸が存在し、その微小な凹凸によって多数の微小な点接触が形成されている。その点接触の部分に超音波の振動が集中し、接合面に形成されたSiO2膜22、30が剥離する。これにより、接合面においては樹脂同士の接合となる。さらに、接合面の微小な凹凸に超音波による発熱が集中し、マイクロチップ基板20、28の溶着がスムーズに進行する。
【0089】
流路用溝21と流路用溝29は同じパターンを有しているため、流路用溝21と流路用溝29の位置合わせを行ってマイクロチップ基板20、28を接合することで、流路用溝21と流路用溝29によって微細流路が形成される。これにより、図5(b)に示すように、内部に微細流路31が形成されたマイクロチップが製造される。微細流路の内面にはSiO膜32が形成されて、全面がSiO膜で覆われている。
【0090】
以上のように、2つのマイクロチップ基板に流路用溝を形成することで、側面の一部分が傾斜した微細流路31を形成することが可能となる。1つのマイクロチップ基板に流路用溝を形成して、このような形状の微細流路31を形成しようとすると、金型上、アンダーカットができてしまうため、作製が非常に困難である。これに対して、変形例4によると、例えば、射出成形によってテーパ状の流路用溝29を形成することが可能であるため、側面の一部分が傾斜した微細流路31を容易に形成することが可能となる。
【0091】
他の例について図6を参照して説明する。例えば図6(a)に示すように、一方のマイクロチップ基板20の表面には流路用溝21が形成されている。また、マイクロチップ基板20の接合の相手方となるマイクロチップ基板33には、断面形状がV字状の流路用溝34が形成されている。流路用溝21、34は、表面に沿った溝状のものであり、流路用溝21、34は同じパターンを有している。
【0092】
マイクロチップ基板33に形成されたV字の流路用溝34の幅は、マイクロチップ基板33の最表面において最大の幅となり、深さ方向に向かって徐々に狭くなっている。マイクロチップ基板20の最表面における流路用溝21の幅は、マイクロチップ基板33の最表面における流路用溝34の幅と等しくなっている。
【0093】
そして、マイクロチップ基板20に対して、流路用溝21が形成されている面に機能性膜の1例としてのSiO膜22を形成し、マイクロチップ基板33に対して、流路用溝34が形成されている面に機能性膜の1例としてのSiO膜35を形成する。SiO膜22、35は、SiOを主成分とする膜である。機能性膜は、無機材料又は有機材料を用いることができる。ここでは、機能性膜の1例として親水性機能を有するSiO膜を形成する場合について説明する。
【0094】
マイクロチップ基板33の流路用溝34の内面以外の表面における表面粗さRaは、表面に形成されるSiO膜35の膜厚以上となっている。換言すると、膜厚が表面粗さRa以下のSiO膜35をマイクロチップ基板33の表面に形成する。このように表面粗さRaをSiO膜35の膜厚以上とすることで、マイクロチップ基板33の表面の表面粗さRaがSiO膜35の表面に反映され、SiO膜35の表面に微小な凹凸が形成される。また、流路用溝34の形状を維持するために、マイクロチップ基板33の表面粗さRaは、流路用溝34の深さ以下となっている。
【0095】
そして、図6(b)に示すように、マイクロチップ基板20については流路用溝21が形成された面を内側にし、マイクロチップ基板33については流路用溝34が形成された面を内側にし、流路用溝21と流路用溝34の位置を合わせて、マイクロチップ基板20、33を重ねる。その状態で、マイクロチップ基板20とマイクロチップ基板33に対して超音波を印加することで接合面を溶融させ、さらに、マイクロチップ基板20とマイクロチップ基板33を加圧することで接合する。
【0096】
マイクロチップ基板20とマイクロチップ基板33の接合面には、両基板の表面粗さRaに起因する微小な凹凸が存在し、その微小な凹凸によって多数の微小な点接触が形成されている。その点接触の部分に超音波の振動が集中し、接合面に形成されたSiO膜22、35が剥離する。これにより、接合面においては樹脂同士の接合となる。さらに、接合面の微小な凹凸に超音波による発熱が集中し、マイクロチップ基板20、33の溶着がスムーズに進行する。
【0097】
流路用溝21と流路用溝34は同じパターンを有しているため、流路用溝21と流路用溝34の位置合わせを行ってマイクロチップ基板20、33を接合することで、流路用溝21と流路用溝34によって微細流路が形成される。これにより、図6(b)に示すように、内部に微細流路36が形成されたマイクロチップが製造される。微細流路の内面にはSiO膜37が形成されて、全面がSiO膜で覆われている。
【0098】
以上のように、2つのマイクロチップ基板に流路用溝を形成することで、側面の一部分が傾斜した微細流路36を形成することが可能となる。1つのマイクロチップ基板に流路用溝を形成して、このような形状の微細流路36を形成しようとすると、金型上、アンダーカットができてしまうため、作製が非常に困難である。これに対して、変形例5によると、例えば、射出成形によってV字状の流路用溝34を射出成形によって形成することが可能であるため、側面の一部分が傾斜した微細流路36を容易に形成することが可能となる。
【0099】
[第2の実施の形態]
次に、この発明の第2実施形態に係るマイクロチップの製造方法について、図7及び図8を参照して説明する。図7及び図8は、この発明の第2実施形態に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【0100】
微細流路が形成されたマイクロチップにおいては、微細流路の外部に流体が染み出してはならず、微細流路のシール性確保が重要な接合の要件となる。また、微細な流路用溝をマイクロチップ基板に高精度に転写する必要があるため、マイクロチップ基板の平面性を同時に確保することは困難である。平面性が劣るマイクロチップ基板同士を接合する場合、接合面における密着性の確保が困難となり、接合におけるシール性や密着強度も十分ではない。
【0101】
そこで、この第2実施形態においては、マイクロチップ基板を意図的に所定方向に反らすことで、マイクロチップ基板同士の接合時における基板の加圧位置を限定し、そのことにより、マイクロチップ基板同士の密着性を向上させる。
【0102】
例えば図7(a)に示すように、表面に流路用溝41が形成されたマイクロチップ基板40と、平板状のマイクロチップ基板50を接合させる。流路用溝41は基板表面に沿って延びる溝状のものである。また、第1実施形態に係る製造方法と同様に、マイクロチップ基板40に対しては、流路用溝41が形成された表面にSiO膜などの機能性膜を形成する。マイクロチップ基板40の流路用溝41の内面以外の表面における表面粗さRaは、第1実施形態と同様に、SiO膜の膜厚以上となっている。換言すると、マイクロチップ基板40の表面に、膜厚が表面粗さRa以下のSiO膜を形成する。さらに、マイクロチップ基板50に対しても、表面にSiO膜などの機能性膜を形成する。マイクロチップ基板50の表面における表面粗さRaは、第1実施形態と同様に、SiO膜の膜厚以上となっている。換言すると、マイクロチップ基板50の表面に、膜厚が表面粗さRa以下のSiO膜を形成する。
【0103】
さらに、マイクロチップ基板40は、流路用溝41が形成された面が凸面となるように基板全体が反っている。同様に、マイクロチップ基板50は、マイクロチップ基板40と接合する面が凸面となるように基板全体が反っている。このように、接合面が凸面となるように意図的に基板全体を反らしたマイクロチップ基板40、50を作製する。マイクロチップ基板40、50の反りは、例えば1〜2μmとなっていれば良い。すなわち、基板中心と基板端部との高さの差が1〜2μmとなっていれば良い。
【0104】
そして、図7(a)に示すように、マイクロチップ基板40については流路用溝41が形成された面を内側にし、マイクロチップ基板40、50を重ねて、超音波溶着によって接合する。このとき、図7(a)に示すように、マイクロチップ基板40を平面状の台60の上に設置し、マイクロチップ基板40、50の周辺部を加圧することで、マイクロチップ基板40、50を接合する。これにより、図7(b)に示すように、流路用溝41による微細流路が形成されたマイクロチップを作製することが可能となる。
【0105】
超音波溶着の場合、超音波を発するホーンによってマイクロチップ基板を押さ付け、そのホーンによってマイクロチップ基板を加圧しながら、超音波をマイクロチップ基板に照射することで、マイクロチップ基板同士を接合する。例えば、図7に示すように、接合面が凸面のマイクロチップ基板同士を接合する場合、超音波を発するホーンによってマイクロチップ基板50の全面を押さえ付け、そのホーンによってマイクロチップ基板50の周辺部を加圧しながら超音波をマイクロチップ基板40、50に照射することで、マイクロチップ基板40、50を接合する。
【0106】
以上のように接合することで、上述した第1実施形態による効果に加えて、以下の効果を奏することが可能となる。すなわち、第2実施形態によると、両マイクロチップ基板がなじむことになり、マイクロチップ基板の全接合面に亘って密着性を確保することが可能となる。すなわち、マイクロチップ基板40、50を、接合面が凸面となるように意図的に基板を反らすことで、マイクロチップ基板40、50同士の接合時における基板の加圧位置を限定し、その位置を加圧することで、マイクロチップ基板同士の密着性を向上させることができ、基板同士を容易に接合することができる。その結果、流路のシール性を向上させることが可能となる。
【0107】
他の例について図8を参照して説明する。例えば図8(a)に示すように、表面に流路用溝71が形成されたマイクロチップ基板70と、平板状のマイクロチップ基板80を接合させる。流路用溝71は基板表面に沿って延びる溝状のものである。第1実施形態に係る製造方法と同様に、マイクロチップ基板70に対しては、流路用溝71が形成された表面にSiO膜などの機能性膜を形成する。マイクロチップ基板70の流路用溝71の内面以外の表面における表面粗さRaは、第1実施形態と同様に、SiO膜の膜厚以上となっている。換言すると、マイクロチップ基板70の表面に、膜厚が表面粗さRa以下のSiO膜を形成する。さらに、マイクロチップ基板80に対しても、表面にSiO膜などの機能性膜を形成する。マイクロチップ基板80の表面における表面粗さRaは、第1実施形態と同様に、SiO膜の膜厚以上となっている。換言すると、マイクロチップ基板80の表面に、膜厚が表面粗さRa以下のSiO膜を形成する。
【0108】
さらに、マイクロチップ基板70は、流路用溝71が形成された面が凹面となるように基板全体が反っている。同様に、マイクロチップ基板80は、マイクロチップ基板70と接合する面が凹面となるように基板全体が反っている。このように、接合面が凹面となるように意図的に基板全体を反らしたマイクロチップ基板70、80を作製する。
【0109】
そして、図8(a)に示すように、マイクロチップ基板70については流路用溝71が形成された面を内側にし、マイクロチップ基板70、80を重ねて、超音波溶着によって接合する。このとき、図8(a)に示すように、マイクロチップ基板70を台60の上に設置し、マイクロチップ基板70、80の中央部を加圧することで、マイクロチップ基板70、80を接合する。これにより、図8(b)に示すように、流路用溝71による微細流路が形成されたマイクロチップを作製することが可能となる。
【0110】
また、図8に示すように、接合面が凹面のマイクロチップ基板同士を接合する場合、超音波を発するホーンによってマイクロチップ基板80の全面を押さえ付け、そのホーンによってマイクロチップ基板80の中央部を加圧しながら超音波をマイクロチップ基板70、80に照射することで、マイクロチップ基板70、80を接合する。
【0111】
以上のように接合することで、上述した第1実施形態による効果に加えて、以下の効果を奏することが可能となる。すなわち、第2実施形態によると、両マイクロチップ基板がなじむことにより、マイクロチップ基板の全接合面に亘って密着性を確保することが可能となる。すなわち、マイクロチップ基板70、80を、接合面が凹面となるように意図的に基板を反らすことで、マイクロチップ基板70、80同士の接合時における基板の加圧位置を限定し、その位置を加圧することで、マイクロチップ基板同士の密着性を向上させることができ、基板同士を容易に接合することができる。その結果、流路のシール性を向上させることが可能となる。
【0112】
なお、上述した第2実施形態では、一方のマイクロチップ基板の表面に流路用溝を形成したが、両方のマイクロチップ基板の表面に流路用溝を形成しても良い。
【0113】
また、上述した第1実施形態と第2実施形態では、機能性膜の1例としてSiO膜を用いた例について説明した。機能性膜の他の例として、例えば、フッ素系樹脂の膜を用いても良い。
【0114】
(実施例)
実施例では、第1実施形態に係るマイクロチップの製造方法の具体例について説明する。
【0115】
(マイクロチップ基板)
射出成形機で透明樹脂材料の環状ポリオレフィン樹脂(日本ゼオン社製、ゼオノア)を成形し、外形寸法が50mm×50mm×1mmの板状部材に幅50μm、深さ50μmの複数の流路用溝と、内径2mmの複数の貫通孔で構成される流路側マイクロチップ基板を作製した。
【0116】
イエプコ処理(表面クリーニングと本処理の2工程ピーニング処理)により、流路用マイクロチップ基板に対して面荒し加工を実施した。流路側マイクロチップ基板の流路用溝の内面以外の表面における表面粗さRaは1μm程度となり、最大高さRyは10μm程度となった。
この流路側マイクロチップ基板が、上記第1実施形態における流路用溝2が形成されたマイクロチップ基板1に相当する。
【0117】
また、同様に外形寸法が50mm×50mm×1mmの板状部材に幅50μm、深さ30μmの複数の流路用溝が形成されたカバー側マイクロチップ基板を作製した。
【0118】
イエプコ処理(表面クリーニングと本処理の2工程ピーニング処理)により、カバー側マイクロチップ基板に対して面荒し加工を実施した。カバー側マイクロチップ基板の流路用溝の内面以外の表面における表面粗さRaは1μm程度となり、最大高さRyは10μm程度となった。
このカバー側マイクロチップ基板が、上記第1実施形態におけるマイクロチップ基板4に相当する。
【0119】
(SiO膜の形成)
そして、流路側マイクロチップ基板に対しては流路用溝が形成された面にSiO膜を形成し、さらに、カバー側マイクロチップ基板の表面にSiO膜を形成した。この実施例では、CVD装置(サムコ社製、PD−270ST)を使用してSiO膜を形成した。CVDの原料は、TEOS(Tetra Ethoxy Silane)を使用した。流量を12sccm、酸素ガス流量を400sccm、RF出力を300W、圧力を50Pa、成膜レートを30Å/secにて、SiO膜を200nm形成した。CVD装置を使用することで、幅50μm、深さ50μmの流路用溝、幅50μm、深さ30μmの流路用溝の内部にもSiO膜を均一に形成することができた。流路用溝内部のSiO膜の厚さは130nmであった。
【0120】
(接合)
そして、流路側マイクロチップ基板については流路用溝が形成された面を内側にし、カバー側マイクロチップ基板についてはSiO膜が形成された面を内側にし、両基板を重ねた。そして、超音波溶着機によって両基板に超音波を印加し、基板を加圧することで接合した。超音波溶着の条件を以下に示す。
超音波の周波数:15kHz、加圧力:0.5N、印加時間:1秒
【0121】
(評価)
以上の工程を経ることで、内面がSiO膜で覆われた微細流路が形成されたマイクロチップを製造することができた。また、接合面に形成されたSiO膜は、超音波を印加することによって剥離したため、樹脂同士の接合となり、超音波溶着によってマイクロチップ基板同士を強固に接合することができた。
【0122】
なお、上記実施例では、機能成膜の1例としてSiO膜を用いたが、その他、フッ素系樹脂の膜を用いても同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】この発明の第1実施形態に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【図2】変形例1に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【図3】変形例2に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【図4】変形例3に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【図5】変形例3に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【図6】変形例3に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【図7】この発明の第2実施形態に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【図8】この発明の第2実施形態に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【符号の説明】
【0124】
1、4、7、8、20、23、28、33、40、50、70、80 マイクロチップ基板
2、9、21、24、29、34、41、71 流路用溝
3、5、10、22、25、27、30、32、35、37 SiO2膜
6、11、26、31、36 微細流路
60 台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの樹脂製基板を有し、前記2つの樹脂製基板のうち少なくとも一方の樹脂製基板の表面に流路用溝が形成され、前記流路用溝が形成された面を内側にして接合されたマイクロチップの製造方法であって、
前記流路用溝の内面以外の表面における表面粗さRa以下の厚さを有する機能性膜を、前記流路用溝が形成された面及び前記流路用溝の内面に形成する第1工程と、
前記流路用溝が形成された面を内側にして前記2つの樹脂製基板を重ね、その状態で前記2つの樹脂製基板に対して超音波を印加することで前記接合する面を溶融させ、前記2つの樹脂製基板を加圧することで、前記2つの樹脂製基板を接合する第2工程と、
を含むことを特徴とするマイクロチップの製造方法。
【請求項2】
前記流路用溝の内面以外の表面における表面粗さRaは、前記流路用溝の深さ以下であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロチップの製造方法。
【請求項3】
前記2つの樹脂製基板のうち一方の樹脂製基板の表面に流路用溝が形成され、
前記第1工程では、前記一方の樹脂製基板に対しては、前記流路用溝の内面以外の表面における表面粗さRa以下の厚さを有する機能性膜を、前記流路用溝が形成された面及び前記流路用溝の内面に形成し、他方の樹脂製基板に対しては、前記一方の樹脂製基板と接合する面に、表面粗さRa以下の厚さを有する機能成膜を形成し、
前記第2工程では、前記一方の樹脂製基板については前記流路用溝が形成された面を内側にし、前記他方の樹脂製基板については前記機能性膜が形成された面を内側にして前記2つの樹脂製基板を重ねることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のマイクロチップの製造方法。
【請求項4】
前記流路用溝は前記2つの樹脂製基板の両方の表面にそれぞれ形成されており、前記第1工程では、前記流路用溝の内面以外の表面における表面粗さRa以下の厚さを有する機能性膜を、前記2つの樹脂製基板の前記流路用溝が形成された面及び前記流路用溝の内面に形成し、
前記第2工程では、前記2つの樹脂製基板に形成された流路用溝をそれぞれ内側にし、互いに流路用溝の位置合わせを行って前記2つの樹脂製基板を重ねることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のマイクロチップの製造方法。
【請求項5】
前記機能性膜はSiO膜であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のマイクロチップの製造方法。
【請求項6】
前記第1工程では、前記流路用溝が形成された面に前記機能性膜の塗布溶液を塗布し、硬化させることで前記機能性膜を形成することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のマイクロチップの製造方法。
【請求項7】
前記第1工程では、スパッタリングによって前記機能性膜を形成することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のマイクロチップの製造方法。
【請求項8】
前記第1工程では、CVDによって前記機能性膜を形成することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のマイクロチップの製造方法。
【請求項9】
前記表面粗さRaは、5μm〜25μmであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載のマイクロチップの製造方法。
【請求項10】
前記機能成膜の厚さは、1μm〜3μmであることを特徴とする請求項9に記載のマイクロチップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−232885(P2008−232885A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74043(P2007−74043)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】