マイクロ波生成方法およびスピントルク発振器
【課題】低電流密度下においてマイクロ波を生成可能なスピントルク発振器を提供する。
【解決手段】スピントルク発振器は、第1および第2の外表面を有する非磁性スペーサ層16と、上記第1の外表面と接触する磁界生成層33と、非磁性スペーサ層16の表面に対して垂直な永久磁化を有し上記第2の外表面と完全接触するスピン注入層12とを備える。磁界生成層33は、垂直磁気異方性を示すと共に第1の外表面と完全接触する第1のFGLサブ層331と、面内異方性を示すと共に第1のFGLサブ層331と完全接触する第2のFGLサブ層332とからなる二層構造を有する。従来の磁界生成層に代えて、一方の層が垂直磁気異方性を示し他方の層が面内異方性を示す二重層を設け、垂直異方性を示す層を非磁性スペーサ層16に最も近接させるようにしたので、1×108 A/cm2 という低電流密度下においてマイクロ波が生成可能となる。
【解決手段】スピントルク発振器は、第1および第2の外表面を有する非磁性スペーサ層16と、上記第1の外表面と接触する磁界生成層33と、非磁性スペーサ層16の表面に対して垂直な永久磁化を有し上記第2の外表面と完全接触するスピン注入層12とを備える。磁界生成層33は、垂直磁気異方性を示すと共に第1の外表面と完全接触する第1のFGLサブ層331と、面内異方性を示すと共に第1のFGLサブ層331と完全接触する第2のFGLサブ層332とからなる二層構造を有する。従来の磁界生成層に代えて、一方の層が垂直磁気異方性を示し他方の層が面内異方性を示す二重層を設け、垂直異方性を示す層を非磁性スペーサ層16に最も近接させるようにしたので、1×108 A/cm2 という低電流密度下においてマイクロ波が生成可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波アシスト磁気記録(MAMR : microwave assisted magnetic recording)技術の分野、特に、そのようなMAMRにおいて用いられるマイクロ波生成方法およびスピントルク発振器に係わり、より具体的には、そのようなスピントルク発振器における磁界生成部分の設計に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波アシスト磁気記録は、1平方インチあたり1テラビットを超える垂直磁気記録を可能にすると期待されている、いくつかの次世代技術のうちの1つである。この方式では、磁界生成器は記録デバイスにごく近接して配置され、媒体膜面において高周波数の発振磁界を生成する。発振磁界の周波数の範囲は、5GHz〜50GHzであると考えられる。強磁性共鳴(FMR:ferromagnetic resonance )によって、通常の保磁力を下回る磁界下において、すなわち、より低い記録磁界を用いて、媒体粒子をスイッチすることが可能となる。但し、これはマイクロ波アシスト記録デバイスのごく近くでのみ可能である。
【0003】
マイクロ波磁界生成器とは、基本的に、スピントルク発振器(STP:spin torque oscillator)である。これは、電流が、膜に対して垂直に流れ、スペーサ層を通ってリファレンス層へと至る点で、CPP(current-perpendicular-to-plane)−GMR(giant magneto-resistive )構造、またはCPP−TMR(tunneling magneto-resistive )構造と類似している。しかしながら、積層内の磁化方向は、CPP−GMR/TMRセンサとは異なっている。
【0004】
図1の上側の枠部に模式的に示すように、STOの最も単純な構成は、スピン注入層 (SIL:spin injection layer)12、非磁性スペーサ16(金属、または絶縁体)、および磁界生成層(FGL:field generating layer)13からなる三層積層構成である。SIL12の磁化は、外部磁界、またはSIL自体の垂直磁気異方性(PMA:perpendicular magnetic anisotropy )によって、膜面に対して垂直に維持される必要がある。発振積層体14内の電子がSIL12に移動すると、それらの電子のスピンはSIL12に存在する磁化によって偏極される。そのスピン偏極度は、リファレンス層17と同じ方向の磁化を有する電子がスペーサ16へ移動し得る確率が大きいほど増大する。そして、FGL13においてスピントルク発振が生じ、その結果、マイクロ波が生成される。
【0005】
図1の下側の部分は、MAMRにおいてSTOを使用する際に、垂直磁気記録ヘッドの一部として、STOをどのように配置するかを示している。STO(図1上側の枠部に示すSTOの向きを90°回転させたもの)は、上部電極11が主磁極22に近く、下部電極18がトレーリングシールド21に近くなるように配置される。データ記録の際は、STOから生じるマイクロ波が、主磁極22のすぐ前にある記録媒体層20(軟磁性下地層19の上方に示す)に対して照射される。
【0006】
スピントランスファートルク(STT:spin-transfer torque)磁化スイッチングに関するC.Slonczewski の論文(非特許文献1)は、STT‐MRAMのようなギガビット規模のスピントロニクスデバイスにSTT磁化スイッチングを応用できる可能性があるとして、多大な関心を集めた。近年、J‐G.Zhu等による非特許文献2では、スピントランスファー発振器という別のスピントロニクスデバイスが示された。スピントランスファー発振器では、スピントランスファー運動量効果によって、垂直記録構造において、媒体の保磁力を大幅に下回るヘッド磁界での記録が可能となっている。図1参照。
【0007】
Headway のK.Zhang 等による最近の2つの特許出願(特許文献1,2)では、Ta/Ru/Cuからなるシード層の合計膜厚を比較的薄くすることにより、[Co/Ni]× nおよび[CoFe/Ni]×n といういずれの多層システムにおいても、大きな垂直磁気異方性(PMA)を確立できることが示されている。よって、これらの[Co/Ni]×n または[CoFe/Ni]×n 、またはその双方からなる多層PMAシステムを用いて、効果的なMAMRデバイスを製造することができる。
【0008】
さらに、PMAを有する[Co/Ni]×n 多層構造または[CoFe/Ni]×n 多層構造などの磁性層を挿入することによって、FeCoやFeCoAl等のFGLの性能を向上し得ることが示されている。しかしながら、これらの特許出願は、トップ型STOの場合に採り得るすべてのスキームを網羅していない。本発明は、FeCo等の高飽和磁化(Ms)材料と[Co(Fe)/Ni]多層構造PMAとの組み合わせによってFGLを形成するようにした特定のSTO構造を開示するものである。
【0009】
通常通り、従来技術に関する調査を行い、下記のような興味深い参照文献を発見した。
【0010】
Zhu 等による特許文献3には、垂直成分および面内成分の双方を有し、マイクロ波アシスト磁気記録に用いられるリファレンス積層体が開示されている。また、Shimazaki 等による特許文献4には、垂直異方性を有する第1の磁性膜と、垂直異方性または面内異方性のいずれかを有する第2の磁性膜とが示されている。
【0011】
Zhu 等による特許文献3は、より弱いPMAの層を有するリファレンス層システムをカバーすることを提案している。このシステムでは、例えば、面内異方性と面外異方性の双方を備える一方、面内異方性よりも面外異方性を大きくすることによって、磁化を部分的に面外へ傾斜させるようにしている。このシステムは、下記で明らかにするように、面内異方性と面外異方性とを異なる層に備えた本発明とは異なるものである。Zhu 等は、異方性が面内で部分的に傾斜していても、異方性の面内成分は存在していることから、センサなしでも十分な信号読み出しを行うことができると推測している。このことは、もし傾斜がなければ、発振層とリファレンス層とは互いに平行であるため(CPPGMR=0)、読み出しはゼロになることを示唆している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願第12/456,621号
【特許文献2】米国特許出願第12/800,196号
【特許文献3】米国特許第7,616,412号
【特許文献4】米国特許第7,352,658号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】「Current driven excitation of magnetic multilayers 」、J. Magn. Mater. 、V159、L1-L7 、1996年
【非特許文献2】「Microwave Assisted Magnetic Recording 」、IEEE. Trans. Magn. 44 、125 、2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の少なくとも1つの実施の形態の目的は、低電流密度下においてマイクロ波を生成するスピントルク発振器(spin torque oscillator)を提供することにある。
【0015】
本発明の少なくとも1つの実施の形態の他の目的は、低電流密度下においてスピントルク発振器によりマイクロ波を生成する方法を提供することにある。
【0016】
本発明の少なくとも1つの実施の形態のさらに他の目的は、マイクロ波アシスト磁気記録における使用に適したスピントルク発振器を得ることにある。
【0017】
本発明の少なくとも1つの実施の形態のさらに他の目的は、現在の製造方法に対して高い互換性を有する、スピントルク発振器の製造方法を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的は、従来の磁界生成層(FGL:Field Generation Layer)を、FGL1およびFGL2からなる二重層によって置き換えることで達成される。FGL1の特徴は、容易軸がスペーサに対して垂直である(すなわち、PMAを示す)一方、FGL2の容易軸がスペーサ層に対して平行である(すなわち、従来の面内異方性を示す)点にある。
【0019】
FGL1とFGL2とは、互いに強く交換結合しているため、同時に励起されてまるで単層であるかのように発振する。
【0020】
本発明において重要なことは、デバイスのスピン注入層(SIL:spin injection layer)がスペーサ層の上方または下方のいずれにあるかによらず、(PMAを有する)FGL1が(面内異方性を有する)FGL2よりもスペーサ層の近くに配置されることである。
【0021】
より具体的には、本発明の目的は以下の構成によって実現される。
【0022】
本発明のマイクロ波生成方法は、スピントルク発振器によってマイクロ波を生成させる方法であって、平行に対向する第1および第2の外表面を有する非磁性スペーサ層を設け、第1の外表面と垂直な容易軸を有すると共に第1の外表面と完全接触する第1のFGLサブ層と、第2の外表面と平行な容易軸を有すると共に第1のFGLサブ層と完全接触する第2のFGLサブ層とからなる二層構造の磁界生成層を、第1の外表面と接触するように設け、第1および第2の外表面に対して垂直な永久磁化を有するスピン注入層を、第2の外表面に対して完全接触するように設け、これにより、低電流密度下において垂直記録磁極の近傍にマイクロ波を生成させるようにしたものである。
【0023】
本発明のスピントルク発振器は、平行に対向する第1および第2の外表面を有する非磁性スペーサ層と、第1の外表面と垂直な容易軸を有すると共に第1の外表面と完全接触する第1のFGLサブ層と、第2の外表面と平行な容易軸を有すると共に第1のFGLサブ層と完全接触する第2のFGLサブ層とからなる二層構造を有し、第1の外表面と接触する磁界生成層と、第1および第2の外表面に対して垂直な永久磁化を有し、第2の外表面 と完全接触するスピン注入層とを備え、低電流密度下において垂直記録磁極の近傍にマイクロ波を生成するものである。
【0024】
本発明のスピントルク発振器およびマイクロ波生成方法では、例えば5×107 A/cm2 〜5×108 A/cm2 という低電流密度下において、例えば30GHzよりも高い周波数の強磁性共鳴が生じるようにすることができる。このようなスピントルク発振器は、SILと記録磁極との間にFGLが位置するトップSIL型のデバイスとして構成可能であるし、あるいは、FGLと記録磁極との間にSILが位置するボトムSIL型のデバイスとしても構成可能である。なお、非磁性スペーサは、Cu層,MgO層,AlOx層,TiOx層,ZnO層,および狭窄電流路(CCP:current confining paths )構造よりなる群から選択可能である。但し、狭窄電流路構造は、Cu層/CCP層/Cu層、またはCu層/ZnO層/Cu層なる構造を含み、CCPは、AlCu層/PIT(プラズマイオン処理)/IAO(イオンアシスト酸化)により形成可能である。
【0025】
本発明のボトムSIL型のスピントルク発振器は、Ta/Ru/Cuなる積層構造を有するシード層と、シード層の上に設けられ、厚さt2のCo100-x Fex の上に厚さt1のNiを積層した[Co100-x Fex /Ni]構造をn回繰り返してなる積層体を含む第1の多層構造と、第1の多層構造の上に形成された非磁性スペーサ層と、非磁性スペーサ層の上に設けられ、厚さt4のCo100-y Fey の上に厚さt3のNiを積層した[Co100-y Fey /Ni]構造をm回繰り返してなる積層体を含む第2の多層構造と、第2の多層構造の上に形成されたFeCo層と、FeCo層の上に設けられた、Ru/Ta/Ruなる積層構造を有するキャップ層とを備えたものである。
【0026】
本発明のボトムSIL型のスピントルク発振器では、シード層Ta/Ru/Cuにおいて、Ta層の厚さは0.5nm以上5nm以下、Ru層の厚さは0.5nm以上10nm以下、Cu層の厚さは0以上10nm以下とすることが好ましい。また、第1および第2の多層構造において、Co100-x Fex 層の厚さt2およびCo100-y Fey 層の厚さt4は0.05nm以上0.5nm以下、より好ましくは0.15nm以上0.3nm以下とし、Niの厚さt1およびt3は0.2nm以上1nm以下、より好ましくは0.35nm以上0.8nm以下とし、Co100-x Fex 層におけるxおよびCo100-y Fey 層におけるyは0以上90%以下とすることが好ましい。繰り返し数nおよびmは5以上50以下であり、10以上30以下とすることがより好ましい。また、[Co100-x Fex /Ni]構造および[Co100-y Fey /Ni]構造におけるNiは、Pt,Pd,Ir,CoPt,FePt,CoPd,FePd,TbFe,およびTbCoからなる群より選択される材料によって置換可能である。
【0027】
本発明のトップSIL型のスピントルク発振器は、Ta/Ru/Cuなる積層構造を有するシード層と、シード層の上に形成されたFeCo層と、FeCo層の上に設けられ、厚さt2のCo100-x Fex の上に厚さt1のNiを積層した[Co100-x Fex /Ni]構造をn回繰り返してなる積層体を含む第1の多層構造と、第1の多層構造の上に形成された非磁性スペーサ層と、非磁性スペーサ層の上に設けられ、厚さt4のCo100-y Fey の上に厚さt3のNiを積層した[Co100-y Fey /Ni]構造をm回繰り返してなる積層体を含む第2の多層構造と、第2の多層構造の上に形成された、Ru/Ta/Ruなる積層構造を有する三重層とを備えたものである。
【0028】
なお、低電流密度下において垂直記録磁極の近傍にマイクロ波を生成させることが可能な本発明のスピントルク発振器は、平行に対向する第1および第2の外表面を有する非磁性スペーサ層を設ける工程と、第1の外表面と垂直な容易軸を有すると共に第1の外表面と完全接触する第1のFGLサブ層と、第2の外表面と平行な容易軸を有すると共に第1のFGLサブ層と完全接触する第2のFGLサブ層とからなる二層構造の磁界生成層を、第1の外表面と接触するように設ける工程と、第1および第2の外表面に対して垂直な永久磁化を有するスピン注入層を、第2の外表面に対して完全接触するように設ける工程とを含む製造方法によって製造可能である。
【発明の効果】
【0029】
本発明のスピントルク発振器およびマイクロ波生成方法によれば、従来の磁界生成層に代えて、容易軸がスペーサに対して垂直な(PMAを示す)FGL1と、容易軸がスペーサ層に対して平行なFGL2とからなる二重層を採用すると共に、FGL1をFGL2よりもスぺーサ層の近くに配置するようにしたので、低電流密度下においてマイクロ波を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】従来のMAMRデバイスを表す図である。
【図2A】下側にSILを備えた従来のMAMR構造の要部を表す図である。
【図2B】上側にSILを備えた従来のMAMR構造の要部を表す図である。
【図3A】図2Aに示した従来デバイスに対応する本発明のデバイス構造を表す図である。
【図3B】図2Bに示した従来デバイスに対応する本発明のデバイス構造を表す図である。
【図4A】部分異方性を有するFGLにおけるSTO試験チップ(TC:testchip)ウェハに関する実験結果を示すグラフである。
【図4B】部分異方性を有するFGLにおけるSTOTCウェハに関する他の実験結果を示すグラフである。
【図4C】部分異方性を有するFGLにおけるSTOTCウェハに関する他の実験結果を示すグラフである。
【図4D】部分異方性を有するFGLにおけるSTOTCウェハに関する他の実験結果を示すグラフである。
【図5A】部分異方性を有するFGLを不適切な位置に挿入した場合のSTOTCに関する実験結果である。
【図5B】部分異方性を有するFGLを不適切な位置に挿入した場合のSTOTCに関する他の実験結果である。
【図5C】部分異方性を有するFGLを不適切な位置に挿入した場合のSTOTCに関する他の実験結果である。
【図5D】部分異方性を有するFGLを不適切な位置に挿入した場合のSTOTCに関する他の実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0032】
MAMRデバイスを機能させるべく、FGLは、通常、FGL材料の最も高い飽和磁化(Bs)と連携して、大きな高周波磁界(Hac)を生成することが求められる。しかしながら、Bsが大きすぎると臨界電流密度もまた非常に大きくなり、その結果、信頼性に深刻な懸念が生じる。
【0033】
前述のSlonczewski モデルは、FGLがPMAまたは部分的PMAを有する場合に、スピントランスファーの臨界電流密度を大幅に低減させ得ることを示唆している。本発明は、FeCo等の高飽和磁化を有するFGL材料に、交換結合による部分的PMAを生じさせるには、[CoFe/Ni]多層構造のPMAをどのように利用すればよいかを開示するものである。そうすること、すなわち、部分的PMAを有する高モーメントFGL材料を用いることによって、FGL発振が大幅に始まり易くなるのである。
【0034】
図2Aおよび図2Bは、比較例に係るスピントルク発振器の構造を表し、図3Aおよび図3Bは、本発明の実施の形態に係るスピントルク発振器の構造を表すものである。図2AではSIL12が下側に位置し、図2BではSIL12が上側に位置している。これらの図ではまた、スペーサ16およびFGL13も示している。
【0035】
図3Aは、FGL33の下方にSIL12を有するボトムスピン注入型のスピントルク発振器を示し、図3Bは、FGL33の上方にSIL12を有するトップスピン注入型のスピントルク発振器を示す。いずれの場合も、FGL33が均一な単層ではなく、ここでは2つのサブ層、すなわち、第1のFGLサブ層(FGL1)331および第2のFGLサブ層(FGL2)332によって構成されている。
【0036】
図3Aおよび図3Bの双方において、第1のFGLサブ層331は、スペーサ16に最も近い位置に設けられ、スペーサ16の2つの対向面に対して垂直な容易軸を有する(すなわち、従来のPMAを示す)。他方、第2のFGLサブ層332の容易軸はスペーサ16に対して平行となっている(すなわち、面内異方性を示す)。
【0037】
第1のFGLサブ層331は、例えば[Co100-x Fex /Ni]×nなる積層構造を有し、第2のFGLサブ層332には、例えばFeCo層が用いられる。また、SIL12は、例えば[Co100-y Fey /Ni]×mなる積層構造を有する。ここで、繰り返し数n,mは、5〜50、より好ましくは10〜30である。xおよびyは0〜90%である。なお、Niは、Pt,Pd,Ir,CoPt,FePt,CoPd,FePd,TbFe,およびTbCoからなる群より選択される材料によって置換可能である.Co100-x Fex 層の厚さt2およびCo100-y Fey 層の厚さt4はいずれも、0.05nm〜0.5nmが好ましく、0.15nm〜0.3nmがより好ましい。Niの厚さt1およびt3は、0.2nm〜1nmが好ましく、0.35nm〜0.8nmがより好ましい。
SIL12は、例えばTa/Ru/Cuなる積層構造を有するシード層の上に形成される。ここで、Ta層の厚さは0.5nm〜5nm、Ru層の厚さは0.5nm〜10nm、Cu層の厚さは0〜10nmが好ましい。
スペーサ16は、例えばCu層,MgO層,AlOx層,TiOx層,ZnO層から選択される非磁性層である。CCP‐CPP(current-perpendicular-to-plane)型デバイスの場合、スペーサ16は、狭窄電流路(CCP:current confining paths )構造を有する。この狭窄電流路構造は、Cu層/CCP層/Cu層、またはCu層/ZnO層/Cu層なる構造を含む。CCPは、例えば、AlCu層を形成した後、PIT(プラズマイオン処理)とIAO(イオンアシスト酸化)とを順次行うことにより形成される。
なお、第2のFGLサブ層332(例えばFeCo層)の上には、例えばRu/Ta/Ruなる積層構造を有するキャップ層が設けられる。
【0038】
図3Aに示したボトムスピン注入型のスピントルク発振器の例では、スペーサ16の上に、第1のFGLサブ層331と第2のFGLサブ層332とがこの順に積層され、スペーサ16の下面に接するようにSIL12が設けられている。一方、図3Bに示したトップスピン注入型のスピントルク発振器の例では、第2のFGLサブ層332と第1のFGLサブ層331とがこの順に積層され、その上にスペーサ16が設けられている。スペーサ16の上にはSIL12が設けられている。いずれの例においても、第1のFGLサブ層331および第2のFGLサブ層332は互いに強く交換結合しているので同時に励起され、その結果、複合層であるFGL33は単層として発振する。
【0039】
次に、FGL33が、高Bs材料(FeCoまたはFeCoAl等)からなる第2のFGL332と、この第2のFGL332に直接接触し高PMAを有する第1のFGLサブ層331([Co(Fe)/Ni]×n、または[Co(Fe)/Pt]×n等)とを備えることの利点を述べる。
【0040】
例えば図3Aを例に説明する。
このSTO構造が機能するためには、SIL12によって反射されたスピン偏極電子によってもたらされるスピントルクによりFGL33が励起される必要がある。第1のFGLサブ層331が高PMAを有する場合には、SIL12と第1のFGLサブ層331とが同じ磁化方向を有し両者間のエネルギーバリアが大幅に減少していることから、SIL12によって反射された偏極電子は、容易に第1のFGLサブ層331を励起することができる。
【0041】
第1のFGLサブ層331が励起されると、それに作用しているスピントルクは直ちに第2のFGLサブ層332へと伝播し、この第2のFGLサブ層332を発振させる。すなわち、第1のFGLサブ層331は、スピントルク点火層(spin torque ignition layer)として機能すると考えられる。SIL12および第1のFGL331におけるスピントルクは同じ方向を向いていることから互いに足し合わされ、その結果、第2のFGLサブ層332の発振が強められる。さらに、第2のFGLサブ層332からの電子はまた、第1のFGLサブ層331の面内発振を促し、それによって、第1のFGLサブ層331の発振をより一層活発にする。
【0042】
図3Bにおけるトップスピン注入型のスピントルク発振器のメカニズムも同様である。この例では、上記したように、SIL12がFGL33よりも上方に位置し、スペーサ層16の上面に接している。スペーサ層16の下面には、高いPMAを有する第1のFGLサブ層331が接している。この第1のFGLサブ層331は、面内磁気異方性を有する第2のFGLサブ層332の上に配置されている。
【0043】
注意する必要があるのは、FGLサブ層の積層順番が上記の逆になった場合(具体的には、図3Aにおいて第1のFGLサブ層331が第2のFGLサブ層332の上側に挿入されたり、あるいは、図3Bにおいて第1のFGLサブ層331が第2のFGLサブ層332の下に挿入された場合)には、STOは効果的に動作しないということである。なぜなら、この場合、SIL12によって反射された電子のスピントルクと第1のFGLサブ層331内の電子のスピントルクとは互いに反対方向に作用し、結果として相殺されるからである。部分異方性FGLの誤った挿入例は、図1に示した従来技術においても見られる。
【0044】
要するに、ボトムSIL型およびトップSIL型のいずれの場合においても、PMA構造を有するFGLサブ層がスペーサ層と直接接触している必要がある。その場合、5x107 A/cm2 〜5x108 A/cm2 、より具体的には、例えば1x108 A/cm2 という低電流密度下においてSTO発振を生じさせることができる。
【実験例】
【0045】
好適な実施の形態を評価するために、以下の構成でボトムSIL構造を作製した。なお、個々の層名に隣接する値はそれぞれの膜厚(単位ナノメートル)を示す。以下の各実験例において同様である。
【0046】
[実験例1]
この実験では、[CoFe/Ni]×mなる積層体( 第1のFGLサブ層) とFeCo( 第2のFGLサブ層) とが結合してなるFGLを上側に配置すると共に、[CoFe/Ni]×nなる積層体(SIL)を下側に配置し、ボトムSIL型のスピントルク発振器を作製した。その具体的な積層構造は以下の通りである。
【0047】
Ta1/Ru2/Cu2/[CoFe(x%)0.2/Ni0.6]×n/スペーサ/ [CoFe(x%)0.2/Ni0.6]×m/FeCo10/Ru1/Ta4/Ru3
【0048】
上記の構造において、Ta1/Ru2/Cu2は、複合シード層として用いた。[CoFe(x%)0.2/Ni0.5]×nなる多層構造は、リファレンス層として用いた。複合組成物CoFe(x%)において、x%はFeの含有率であり、0%(純Co/Niの場合)〜90%である。nは積層数であり、5〜50、好ましくは10〜30である。スペーサの材料は、CPP‐GMRの場合は例えばCuであり、TMRの場合は例えばMgO,AlOx,TiOx,ZnOである。5nm〜30nmのFeCo層はFGLとして機能する。最後に、Ru1/Ta4/Ru3なる積層体はキャップ層として用いた。
【0049】
このようなデバイスにおいて、アニーリングの温度は150°C〜300°C、より好ましくは180°C〜250°Cである。アニーリング時間は0.5時間〜5時間とした。[CoFe(x%)0.2/Ni0.5]×mなる積層体(mは5〜30、より好ましくは5〜20)をFeCo10層の下に挿入した。[CoFe/Ni]×mなる積層体はFeCo層と強く磁気結合しているので、この[CoFe(x%)0.2/Ni0.5]×mなる積層体の強力なPMAによってFeCoの異方性が垂直方向に向かって部分的に傾斜し、これにより、FGL全体が1×108 A/cm2 という低電流密度下において発振することが可能となる。
【0050】
なお、Zhu 等による特許文献3において、PMAを有する層は反対方向のPMAを有している。これは、本実施の形態との根本的な違いである。特許文献3におけるスピントルクの作用は本実施の形態とは完全に異なるものであり、本実施の形態における上記のメカニズムとの関係においては(たとえ作製可能であっても)意味をもたないからである。
【0051】
図4A〜図4Dは、下記の具体的な数値を持つように作製されたデバイスにおける実験結果を表すものである。
【0052】
Ta1/Ru2/Cu2/[Co(50%)Fe0.2/Ni0.5]×15/Cu2/[Co(50%)Fe0.2/Ni0.5]×10/Fe(70%)Co10/Ru1/Ta4/Ru3
【0053】
図4Aは、大きなdR立ち上がり部分を含む、望ましい強い発振特性を表すものである。ここでは、30mvという低い電圧から始まる様々なバイアス電圧における発振特性を示している。図4Bおよび図4Cは、35GHzという高い周波数において高いQ値をもつ強磁性共鳴(FMR)が達成されたことを裏付けるものである。図4Dは、さまざまなバイアス電圧における、ピークFMR周波数対印加磁界の特性を示す。[Fe(50%)Co0.2/Ni0.6]×nなる積層構造をもつFGL1からのPMA補助的作用により、FGL全体として高品質な発振が得られたことがわかる。なお、この図および以下の図において、磁界の単位1[Oe]は106 /4π[A/m]に等しい。
【0054】
比較のために、FeCo10なる構成のFGL2の上に[Co(50%)Fe0.2/Ni0.6]×10なる積層構造をもつFGL1を配置して、従来構造を有するSTOデバイスを作製した。その構造は下記の通りである。
【0055】
Ta1/Ru2/Cu2/[Co(50%)Fe0.2/Ni0.5]×15/Cu2/Fe(70%)Co10/[Co(50%)Fe0.2/Ni0.5]×10/Ru1/Ta4/Ru3
【0056】
この場合、上述のように、[Co(50%)Fe0.2/Ni0.5]×15なる積層構造をもつSILからのスピントルクの大部分は、[Co(50%)Fe0.2/Ni0.5]×10なる積層構造をもつFGL1によって相殺されることから、Fe(70%)Co10/[Co(50%)Fe0.2/Ni0.5]×10なる積層構造をもつFGLに作用する総スピントルクは非常に小さくなる。その結果、図5A〜図5Dに示すように、発振特性は非常に劣ったものとなる。
【0057】
[実験例2]
この実験では、[CoFe/Ni]×nなる積層体(SIL)を上側に配置すると共に、[CoFe/Ni]×mなる積層体( 第1のFGLサブ層) とFeCo( 第2のFGLサブ層) とが結合してなるFGLを下側に配置し、トップSIL型のスピントルク発振器を作製した。その具体的な積層構造は以下の通りである。
【0058】
Ta1/Ru2/Cu2/FeCo10/[CoFe(x%)0.2/Ni0.5]×m/スペーサ/[CoFe(x%)0.2/Ni0.5]×n/Ru1/Ta4/Ru3
【0059】
上記の構造では、[CoFe(x%)0.2/Ni0.5]×mなる積層構造(mは例えば5〜30であり、より好ましくは5〜20である)をFeCo10なる層の上側に挿入した。[CoFe/Ni]×mなる積層構造がFeCo層と強く磁気結合しているので、[CoFe(x%)0.2/Ni0.5]×mなる積層構造の強いPMAによって、FeCo層の異方性は垂直方向に向かって部分的に傾斜する。その結果、FGL全体が1×108 A/cm2 という低電流密度下において発振することが可能となる。
【0060】
このようなボトムSIL型スピントルク発振器の場合においても、トップSIL型スピントルク発振器の場合と同様のデータが得られた。つまり、スペーサに隣接するFGLが高いPMAを有する場合には、低電流密度下においてFGLが発振しやすくなるため、デバイスの性能が向上するという結果が得られた。
[寸法および材料置換可能性等についての包括的コメント]
【0061】
上記したように、シード層としては、例えばTa/Ru/Cuなる3層構造が用いられるが、ここでTa層の厚さは0.5nm〜5nm、Ru層の厚さは0.5nm〜10nm、Cu層の厚さは0nm〜10nmとされる。但し、Cuを省いてTa/Ruなる2層構造にしてもよい。
【0062】
また、上記したように、SILとしては、例えば[CoFe(x%)(t2)/Ni(t1)]×nなる多層構造が用いられるが、ここで、CoFe層の厚さt2は、0.05nm〜0.5nm、より好ましくは0.15nm〜0.3nmとされ、Ni層の厚さt1は、0.2nm〜1nm、より好ましくは0.35nm〜0.8nmとされる。CoFe(x%)におけるFe含有率xは0(純Coの場合)〜90である。[CoFe(x)(t2)/Ni(t1)]×nにおけるnは5〜50、より好ましくは10〜30である。第1のFGLサブ層(FGL1)としての[CoFe/Ni]×mなる積層構造についても、上記のSILの例と同様である。
スペーサ材料は、CPP‐GMRの場合はCuであり、TMRの場合はMgO、AlOx、TiOx、またはZnOである。FGL2としては、5nm〜30nmの厚さを有するFeCo層が適当である。キャップ層としてはRu1/Ta4/Ru3を用いる。
このようなデバイスにおいて、アニーリングの温度は150°C〜300°C、より好ましくは180°C〜250°Cである。アニーリングの時間は0.5時間〜5時間とするのが好ましい。
【0063】
複合シード層Ta/Ru/Cuにおいて、Cuを厚さが0.1nm〜10nmのTi,Pd,W,Rh,Au,Ag等によって置き換えてもよい。Ta/Ru/Cuなる複合シード層はまた、Ta/Ruなる積層構造によって置き換えてもよく、この場合、Ta層の厚さは0.5nm〜5nmとし、Ru層の厚さは2nm〜10nmとする。Ta/Ru/Cuなる積層構造は、Ta/Cuなる積層構造、またはTa/NiCrなる積層構造によって置き換えてもよく、この場合、Ta層の厚さは0.5nm〜5nmであり、Cu層の厚さは2nm〜5nmであり、NiCr層の厚さは4nm〜10nmである。
【0064】
SILとしての[CoFe(x%)(t2)/Ni(t1)]×nなる積層構造はまた、[CoFe(x%)(t2)/Pt(t1)]×nなる積層構造、[CoFe(x%)(t2)/Pd(t1)]×nなる積層構造、[CoFe(x%)(t2)/Ir(t1)]×nなる積層構造、またはCoPt、FePt、CoPd、FePd、TbFe(Co)等の他のPMAシステムによって置き換えてもよい。第1のFGLサブ層(FGL1)としての[Co100-y Fey /Ni]×mなる積層構造についても同様である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波アシスト磁気記録(MAMR : microwave assisted magnetic recording)技術の分野、特に、そのようなMAMRにおいて用いられるマイクロ波生成方法およびスピントルク発振器に係わり、より具体的には、そのようなスピントルク発振器における磁界生成部分の設計に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波アシスト磁気記録は、1平方インチあたり1テラビットを超える垂直磁気記録を可能にすると期待されている、いくつかの次世代技術のうちの1つである。この方式では、磁界生成器は記録デバイスにごく近接して配置され、媒体膜面において高周波数の発振磁界を生成する。発振磁界の周波数の範囲は、5GHz〜50GHzであると考えられる。強磁性共鳴(FMR:ferromagnetic resonance )によって、通常の保磁力を下回る磁界下において、すなわち、より低い記録磁界を用いて、媒体粒子をスイッチすることが可能となる。但し、これはマイクロ波アシスト記録デバイスのごく近くでのみ可能である。
【0003】
マイクロ波磁界生成器とは、基本的に、スピントルク発振器(STP:spin torque oscillator)である。これは、電流が、膜に対して垂直に流れ、スペーサ層を通ってリファレンス層へと至る点で、CPP(current-perpendicular-to-plane)−GMR(giant magneto-resistive )構造、またはCPP−TMR(tunneling magneto-resistive )構造と類似している。しかしながら、積層内の磁化方向は、CPP−GMR/TMRセンサとは異なっている。
【0004】
図1の上側の枠部に模式的に示すように、STOの最も単純な構成は、スピン注入層 (SIL:spin injection layer)12、非磁性スペーサ16(金属、または絶縁体)、および磁界生成層(FGL:field generating layer)13からなる三層積層構成である。SIL12の磁化は、外部磁界、またはSIL自体の垂直磁気異方性(PMA:perpendicular magnetic anisotropy )によって、膜面に対して垂直に維持される必要がある。発振積層体14内の電子がSIL12に移動すると、それらの電子のスピンはSIL12に存在する磁化によって偏極される。そのスピン偏極度は、リファレンス層17と同じ方向の磁化を有する電子がスペーサ16へ移動し得る確率が大きいほど増大する。そして、FGL13においてスピントルク発振が生じ、その結果、マイクロ波が生成される。
【0005】
図1の下側の部分は、MAMRにおいてSTOを使用する際に、垂直磁気記録ヘッドの一部として、STOをどのように配置するかを示している。STO(図1上側の枠部に示すSTOの向きを90°回転させたもの)は、上部電極11が主磁極22に近く、下部電極18がトレーリングシールド21に近くなるように配置される。データ記録の際は、STOから生じるマイクロ波が、主磁極22のすぐ前にある記録媒体層20(軟磁性下地層19の上方に示す)に対して照射される。
【0006】
スピントランスファートルク(STT:spin-transfer torque)磁化スイッチングに関するC.Slonczewski の論文(非特許文献1)は、STT‐MRAMのようなギガビット規模のスピントロニクスデバイスにSTT磁化スイッチングを応用できる可能性があるとして、多大な関心を集めた。近年、J‐G.Zhu等による非特許文献2では、スピントランスファー発振器という別のスピントロニクスデバイスが示された。スピントランスファー発振器では、スピントランスファー運動量効果によって、垂直記録構造において、媒体の保磁力を大幅に下回るヘッド磁界での記録が可能となっている。図1参照。
【0007】
Headway のK.Zhang 等による最近の2つの特許出願(特許文献1,2)では、Ta/Ru/Cuからなるシード層の合計膜厚を比較的薄くすることにより、[Co/Ni]× nおよび[CoFe/Ni]×n といういずれの多層システムにおいても、大きな垂直磁気異方性(PMA)を確立できることが示されている。よって、これらの[Co/Ni]×n または[CoFe/Ni]×n 、またはその双方からなる多層PMAシステムを用いて、効果的なMAMRデバイスを製造することができる。
【0008】
さらに、PMAを有する[Co/Ni]×n 多層構造または[CoFe/Ni]×n 多層構造などの磁性層を挿入することによって、FeCoやFeCoAl等のFGLの性能を向上し得ることが示されている。しかしながら、これらの特許出願は、トップ型STOの場合に採り得るすべてのスキームを網羅していない。本発明は、FeCo等の高飽和磁化(Ms)材料と[Co(Fe)/Ni]多層構造PMAとの組み合わせによってFGLを形成するようにした特定のSTO構造を開示するものである。
【0009】
通常通り、従来技術に関する調査を行い、下記のような興味深い参照文献を発見した。
【0010】
Zhu 等による特許文献3には、垂直成分および面内成分の双方を有し、マイクロ波アシスト磁気記録に用いられるリファレンス積層体が開示されている。また、Shimazaki 等による特許文献4には、垂直異方性を有する第1の磁性膜と、垂直異方性または面内異方性のいずれかを有する第2の磁性膜とが示されている。
【0011】
Zhu 等による特許文献3は、より弱いPMAの層を有するリファレンス層システムをカバーすることを提案している。このシステムでは、例えば、面内異方性と面外異方性の双方を備える一方、面内異方性よりも面外異方性を大きくすることによって、磁化を部分的に面外へ傾斜させるようにしている。このシステムは、下記で明らかにするように、面内異方性と面外異方性とを異なる層に備えた本発明とは異なるものである。Zhu 等は、異方性が面内で部分的に傾斜していても、異方性の面内成分は存在していることから、センサなしでも十分な信号読み出しを行うことができると推測している。このことは、もし傾斜がなければ、発振層とリファレンス層とは互いに平行であるため(CPPGMR=0)、読み出しはゼロになることを示唆している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願第12/456,621号
【特許文献2】米国特許出願第12/800,196号
【特許文献3】米国特許第7,616,412号
【特許文献4】米国特許第7,352,658号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】「Current driven excitation of magnetic multilayers 」、J. Magn. Mater. 、V159、L1-L7 、1996年
【非特許文献2】「Microwave Assisted Magnetic Recording 」、IEEE. Trans. Magn. 44 、125 、2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の少なくとも1つの実施の形態の目的は、低電流密度下においてマイクロ波を生成するスピントルク発振器(spin torque oscillator)を提供することにある。
【0015】
本発明の少なくとも1つの実施の形態の他の目的は、低電流密度下においてスピントルク発振器によりマイクロ波を生成する方法を提供することにある。
【0016】
本発明の少なくとも1つの実施の形態のさらに他の目的は、マイクロ波アシスト磁気記録における使用に適したスピントルク発振器を得ることにある。
【0017】
本発明の少なくとも1つの実施の形態のさらに他の目的は、現在の製造方法に対して高い互換性を有する、スピントルク発振器の製造方法を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的は、従来の磁界生成層(FGL:Field Generation Layer)を、FGL1およびFGL2からなる二重層によって置き換えることで達成される。FGL1の特徴は、容易軸がスペーサに対して垂直である(すなわち、PMAを示す)一方、FGL2の容易軸がスペーサ層に対して平行である(すなわち、従来の面内異方性を示す)点にある。
【0019】
FGL1とFGL2とは、互いに強く交換結合しているため、同時に励起されてまるで単層であるかのように発振する。
【0020】
本発明において重要なことは、デバイスのスピン注入層(SIL:spin injection layer)がスペーサ層の上方または下方のいずれにあるかによらず、(PMAを有する)FGL1が(面内異方性を有する)FGL2よりもスペーサ層の近くに配置されることである。
【0021】
より具体的には、本発明の目的は以下の構成によって実現される。
【0022】
本発明のマイクロ波生成方法は、スピントルク発振器によってマイクロ波を生成させる方法であって、平行に対向する第1および第2の外表面を有する非磁性スペーサ層を設け、第1の外表面と垂直な容易軸を有すると共に第1の外表面と完全接触する第1のFGLサブ層と、第2の外表面と平行な容易軸を有すると共に第1のFGLサブ層と完全接触する第2のFGLサブ層とからなる二層構造の磁界生成層を、第1の外表面と接触するように設け、第1および第2の外表面に対して垂直な永久磁化を有するスピン注入層を、第2の外表面に対して完全接触するように設け、これにより、低電流密度下において垂直記録磁極の近傍にマイクロ波を生成させるようにしたものである。
【0023】
本発明のスピントルク発振器は、平行に対向する第1および第2の外表面を有する非磁性スペーサ層と、第1の外表面と垂直な容易軸を有すると共に第1の外表面と完全接触する第1のFGLサブ層と、第2の外表面と平行な容易軸を有すると共に第1のFGLサブ層と完全接触する第2のFGLサブ層とからなる二層構造を有し、第1の外表面と接触する磁界生成層と、第1および第2の外表面に対して垂直な永久磁化を有し、第2の外表面 と完全接触するスピン注入層とを備え、低電流密度下において垂直記録磁極の近傍にマイクロ波を生成するものである。
【0024】
本発明のスピントルク発振器およびマイクロ波生成方法では、例えば5×107 A/cm2 〜5×108 A/cm2 という低電流密度下において、例えば30GHzよりも高い周波数の強磁性共鳴が生じるようにすることができる。このようなスピントルク発振器は、SILと記録磁極との間にFGLが位置するトップSIL型のデバイスとして構成可能であるし、あるいは、FGLと記録磁極との間にSILが位置するボトムSIL型のデバイスとしても構成可能である。なお、非磁性スペーサは、Cu層,MgO層,AlOx層,TiOx層,ZnO層,および狭窄電流路(CCP:current confining paths )構造よりなる群から選択可能である。但し、狭窄電流路構造は、Cu層/CCP層/Cu層、またはCu層/ZnO層/Cu層なる構造を含み、CCPは、AlCu層/PIT(プラズマイオン処理)/IAO(イオンアシスト酸化)により形成可能である。
【0025】
本発明のボトムSIL型のスピントルク発振器は、Ta/Ru/Cuなる積層構造を有するシード層と、シード層の上に設けられ、厚さt2のCo100-x Fex の上に厚さt1のNiを積層した[Co100-x Fex /Ni]構造をn回繰り返してなる積層体を含む第1の多層構造と、第1の多層構造の上に形成された非磁性スペーサ層と、非磁性スペーサ層の上に設けられ、厚さt4のCo100-y Fey の上に厚さt3のNiを積層した[Co100-y Fey /Ni]構造をm回繰り返してなる積層体を含む第2の多層構造と、第2の多層構造の上に形成されたFeCo層と、FeCo層の上に設けられた、Ru/Ta/Ruなる積層構造を有するキャップ層とを備えたものである。
【0026】
本発明のボトムSIL型のスピントルク発振器では、シード層Ta/Ru/Cuにおいて、Ta層の厚さは0.5nm以上5nm以下、Ru層の厚さは0.5nm以上10nm以下、Cu層の厚さは0以上10nm以下とすることが好ましい。また、第1および第2の多層構造において、Co100-x Fex 層の厚さt2およびCo100-y Fey 層の厚さt4は0.05nm以上0.5nm以下、より好ましくは0.15nm以上0.3nm以下とし、Niの厚さt1およびt3は0.2nm以上1nm以下、より好ましくは0.35nm以上0.8nm以下とし、Co100-x Fex 層におけるxおよびCo100-y Fey 層におけるyは0以上90%以下とすることが好ましい。繰り返し数nおよびmは5以上50以下であり、10以上30以下とすることがより好ましい。また、[Co100-x Fex /Ni]構造および[Co100-y Fey /Ni]構造におけるNiは、Pt,Pd,Ir,CoPt,FePt,CoPd,FePd,TbFe,およびTbCoからなる群より選択される材料によって置換可能である。
【0027】
本発明のトップSIL型のスピントルク発振器は、Ta/Ru/Cuなる積層構造を有するシード層と、シード層の上に形成されたFeCo層と、FeCo層の上に設けられ、厚さt2のCo100-x Fex の上に厚さt1のNiを積層した[Co100-x Fex /Ni]構造をn回繰り返してなる積層体を含む第1の多層構造と、第1の多層構造の上に形成された非磁性スペーサ層と、非磁性スペーサ層の上に設けられ、厚さt4のCo100-y Fey の上に厚さt3のNiを積層した[Co100-y Fey /Ni]構造をm回繰り返してなる積層体を含む第2の多層構造と、第2の多層構造の上に形成された、Ru/Ta/Ruなる積層構造を有する三重層とを備えたものである。
【0028】
なお、低電流密度下において垂直記録磁極の近傍にマイクロ波を生成させることが可能な本発明のスピントルク発振器は、平行に対向する第1および第2の外表面を有する非磁性スペーサ層を設ける工程と、第1の外表面と垂直な容易軸を有すると共に第1の外表面と完全接触する第1のFGLサブ層と、第2の外表面と平行な容易軸を有すると共に第1のFGLサブ層と完全接触する第2のFGLサブ層とからなる二層構造の磁界生成層を、第1の外表面と接触するように設ける工程と、第1および第2の外表面に対して垂直な永久磁化を有するスピン注入層を、第2の外表面に対して完全接触するように設ける工程とを含む製造方法によって製造可能である。
【発明の効果】
【0029】
本発明のスピントルク発振器およびマイクロ波生成方法によれば、従来の磁界生成層に代えて、容易軸がスペーサに対して垂直な(PMAを示す)FGL1と、容易軸がスペーサ層に対して平行なFGL2とからなる二重層を採用すると共に、FGL1をFGL2よりもスぺーサ層の近くに配置するようにしたので、低電流密度下においてマイクロ波を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】従来のMAMRデバイスを表す図である。
【図2A】下側にSILを備えた従来のMAMR構造の要部を表す図である。
【図2B】上側にSILを備えた従来のMAMR構造の要部を表す図である。
【図3A】図2Aに示した従来デバイスに対応する本発明のデバイス構造を表す図である。
【図3B】図2Bに示した従来デバイスに対応する本発明のデバイス構造を表す図である。
【図4A】部分異方性を有するFGLにおけるSTO試験チップ(TC:testchip)ウェハに関する実験結果を示すグラフである。
【図4B】部分異方性を有するFGLにおけるSTOTCウェハに関する他の実験結果を示すグラフである。
【図4C】部分異方性を有するFGLにおけるSTOTCウェハに関する他の実験結果を示すグラフである。
【図4D】部分異方性を有するFGLにおけるSTOTCウェハに関する他の実験結果を示すグラフである。
【図5A】部分異方性を有するFGLを不適切な位置に挿入した場合のSTOTCに関する実験結果である。
【図5B】部分異方性を有するFGLを不適切な位置に挿入した場合のSTOTCに関する他の実験結果である。
【図5C】部分異方性を有するFGLを不適切な位置に挿入した場合のSTOTCに関する他の実験結果である。
【図5D】部分異方性を有するFGLを不適切な位置に挿入した場合のSTOTCに関する他の実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0032】
MAMRデバイスを機能させるべく、FGLは、通常、FGL材料の最も高い飽和磁化(Bs)と連携して、大きな高周波磁界(Hac)を生成することが求められる。しかしながら、Bsが大きすぎると臨界電流密度もまた非常に大きくなり、その結果、信頼性に深刻な懸念が生じる。
【0033】
前述のSlonczewski モデルは、FGLがPMAまたは部分的PMAを有する場合に、スピントランスファーの臨界電流密度を大幅に低減させ得ることを示唆している。本発明は、FeCo等の高飽和磁化を有するFGL材料に、交換結合による部分的PMAを生じさせるには、[CoFe/Ni]多層構造のPMAをどのように利用すればよいかを開示するものである。そうすること、すなわち、部分的PMAを有する高モーメントFGL材料を用いることによって、FGL発振が大幅に始まり易くなるのである。
【0034】
図2Aおよび図2Bは、比較例に係るスピントルク発振器の構造を表し、図3Aおよび図3Bは、本発明の実施の形態に係るスピントルク発振器の構造を表すものである。図2AではSIL12が下側に位置し、図2BではSIL12が上側に位置している。これらの図ではまた、スペーサ16およびFGL13も示している。
【0035】
図3Aは、FGL33の下方にSIL12を有するボトムスピン注入型のスピントルク発振器を示し、図3Bは、FGL33の上方にSIL12を有するトップスピン注入型のスピントルク発振器を示す。いずれの場合も、FGL33が均一な単層ではなく、ここでは2つのサブ層、すなわち、第1のFGLサブ層(FGL1)331および第2のFGLサブ層(FGL2)332によって構成されている。
【0036】
図3Aおよび図3Bの双方において、第1のFGLサブ層331は、スペーサ16に最も近い位置に設けられ、スペーサ16の2つの対向面に対して垂直な容易軸を有する(すなわち、従来のPMAを示す)。他方、第2のFGLサブ層332の容易軸はスペーサ16に対して平行となっている(すなわち、面内異方性を示す)。
【0037】
第1のFGLサブ層331は、例えば[Co100-x Fex /Ni]×nなる積層構造を有し、第2のFGLサブ層332には、例えばFeCo層が用いられる。また、SIL12は、例えば[Co100-y Fey /Ni]×mなる積層構造を有する。ここで、繰り返し数n,mは、5〜50、より好ましくは10〜30である。xおよびyは0〜90%である。なお、Niは、Pt,Pd,Ir,CoPt,FePt,CoPd,FePd,TbFe,およびTbCoからなる群より選択される材料によって置換可能である.Co100-x Fex 層の厚さt2およびCo100-y Fey 層の厚さt4はいずれも、0.05nm〜0.5nmが好ましく、0.15nm〜0.3nmがより好ましい。Niの厚さt1およびt3は、0.2nm〜1nmが好ましく、0.35nm〜0.8nmがより好ましい。
SIL12は、例えばTa/Ru/Cuなる積層構造を有するシード層の上に形成される。ここで、Ta層の厚さは0.5nm〜5nm、Ru層の厚さは0.5nm〜10nm、Cu層の厚さは0〜10nmが好ましい。
スペーサ16は、例えばCu層,MgO層,AlOx層,TiOx層,ZnO層から選択される非磁性層である。CCP‐CPP(current-perpendicular-to-plane)型デバイスの場合、スペーサ16は、狭窄電流路(CCP:current confining paths )構造を有する。この狭窄電流路構造は、Cu層/CCP層/Cu層、またはCu層/ZnO層/Cu層なる構造を含む。CCPは、例えば、AlCu層を形成した後、PIT(プラズマイオン処理)とIAO(イオンアシスト酸化)とを順次行うことにより形成される。
なお、第2のFGLサブ層332(例えばFeCo層)の上には、例えばRu/Ta/Ruなる積層構造を有するキャップ層が設けられる。
【0038】
図3Aに示したボトムスピン注入型のスピントルク発振器の例では、スペーサ16の上に、第1のFGLサブ層331と第2のFGLサブ層332とがこの順に積層され、スペーサ16の下面に接するようにSIL12が設けられている。一方、図3Bに示したトップスピン注入型のスピントルク発振器の例では、第2のFGLサブ層332と第1のFGLサブ層331とがこの順に積層され、その上にスペーサ16が設けられている。スペーサ16の上にはSIL12が設けられている。いずれの例においても、第1のFGLサブ層331および第2のFGLサブ層332は互いに強く交換結合しているので同時に励起され、その結果、複合層であるFGL33は単層として発振する。
【0039】
次に、FGL33が、高Bs材料(FeCoまたはFeCoAl等)からなる第2のFGL332と、この第2のFGL332に直接接触し高PMAを有する第1のFGLサブ層331([Co(Fe)/Ni]×n、または[Co(Fe)/Pt]×n等)とを備えることの利点を述べる。
【0040】
例えば図3Aを例に説明する。
このSTO構造が機能するためには、SIL12によって反射されたスピン偏極電子によってもたらされるスピントルクによりFGL33が励起される必要がある。第1のFGLサブ層331が高PMAを有する場合には、SIL12と第1のFGLサブ層331とが同じ磁化方向を有し両者間のエネルギーバリアが大幅に減少していることから、SIL12によって反射された偏極電子は、容易に第1のFGLサブ層331を励起することができる。
【0041】
第1のFGLサブ層331が励起されると、それに作用しているスピントルクは直ちに第2のFGLサブ層332へと伝播し、この第2のFGLサブ層332を発振させる。すなわち、第1のFGLサブ層331は、スピントルク点火層(spin torque ignition layer)として機能すると考えられる。SIL12および第1のFGL331におけるスピントルクは同じ方向を向いていることから互いに足し合わされ、その結果、第2のFGLサブ層332の発振が強められる。さらに、第2のFGLサブ層332からの電子はまた、第1のFGLサブ層331の面内発振を促し、それによって、第1のFGLサブ層331の発振をより一層活発にする。
【0042】
図3Bにおけるトップスピン注入型のスピントルク発振器のメカニズムも同様である。この例では、上記したように、SIL12がFGL33よりも上方に位置し、スペーサ層16の上面に接している。スペーサ層16の下面には、高いPMAを有する第1のFGLサブ層331が接している。この第1のFGLサブ層331は、面内磁気異方性を有する第2のFGLサブ層332の上に配置されている。
【0043】
注意する必要があるのは、FGLサブ層の積層順番が上記の逆になった場合(具体的には、図3Aにおいて第1のFGLサブ層331が第2のFGLサブ層332の上側に挿入されたり、あるいは、図3Bにおいて第1のFGLサブ層331が第2のFGLサブ層332の下に挿入された場合)には、STOは効果的に動作しないということである。なぜなら、この場合、SIL12によって反射された電子のスピントルクと第1のFGLサブ層331内の電子のスピントルクとは互いに反対方向に作用し、結果として相殺されるからである。部分異方性FGLの誤った挿入例は、図1に示した従来技術においても見られる。
【0044】
要するに、ボトムSIL型およびトップSIL型のいずれの場合においても、PMA構造を有するFGLサブ層がスペーサ層と直接接触している必要がある。その場合、5x107 A/cm2 〜5x108 A/cm2 、より具体的には、例えば1x108 A/cm2 という低電流密度下においてSTO発振を生じさせることができる。
【実験例】
【0045】
好適な実施の形態を評価するために、以下の構成でボトムSIL構造を作製した。なお、個々の層名に隣接する値はそれぞれの膜厚(単位ナノメートル)を示す。以下の各実験例において同様である。
【0046】
[実験例1]
この実験では、[CoFe/Ni]×mなる積層体( 第1のFGLサブ層) とFeCo( 第2のFGLサブ層) とが結合してなるFGLを上側に配置すると共に、[CoFe/Ni]×nなる積層体(SIL)を下側に配置し、ボトムSIL型のスピントルク発振器を作製した。その具体的な積層構造は以下の通りである。
【0047】
Ta1/Ru2/Cu2/[CoFe(x%)0.2/Ni0.6]×n/スペーサ/ [CoFe(x%)0.2/Ni0.6]×m/FeCo10/Ru1/Ta4/Ru3
【0048】
上記の構造において、Ta1/Ru2/Cu2は、複合シード層として用いた。[CoFe(x%)0.2/Ni0.5]×nなる多層構造は、リファレンス層として用いた。複合組成物CoFe(x%)において、x%はFeの含有率であり、0%(純Co/Niの場合)〜90%である。nは積層数であり、5〜50、好ましくは10〜30である。スペーサの材料は、CPP‐GMRの場合は例えばCuであり、TMRの場合は例えばMgO,AlOx,TiOx,ZnOである。5nm〜30nmのFeCo層はFGLとして機能する。最後に、Ru1/Ta4/Ru3なる積層体はキャップ層として用いた。
【0049】
このようなデバイスにおいて、アニーリングの温度は150°C〜300°C、より好ましくは180°C〜250°Cである。アニーリング時間は0.5時間〜5時間とした。[CoFe(x%)0.2/Ni0.5]×mなる積層体(mは5〜30、より好ましくは5〜20)をFeCo10層の下に挿入した。[CoFe/Ni]×mなる積層体はFeCo層と強く磁気結合しているので、この[CoFe(x%)0.2/Ni0.5]×mなる積層体の強力なPMAによってFeCoの異方性が垂直方向に向かって部分的に傾斜し、これにより、FGL全体が1×108 A/cm2 という低電流密度下において発振することが可能となる。
【0050】
なお、Zhu 等による特許文献3において、PMAを有する層は反対方向のPMAを有している。これは、本実施の形態との根本的な違いである。特許文献3におけるスピントルクの作用は本実施の形態とは完全に異なるものであり、本実施の形態における上記のメカニズムとの関係においては(たとえ作製可能であっても)意味をもたないからである。
【0051】
図4A〜図4Dは、下記の具体的な数値を持つように作製されたデバイスにおける実験結果を表すものである。
【0052】
Ta1/Ru2/Cu2/[Co(50%)Fe0.2/Ni0.5]×15/Cu2/[Co(50%)Fe0.2/Ni0.5]×10/Fe(70%)Co10/Ru1/Ta4/Ru3
【0053】
図4Aは、大きなdR立ち上がり部分を含む、望ましい強い発振特性を表すものである。ここでは、30mvという低い電圧から始まる様々なバイアス電圧における発振特性を示している。図4Bおよび図4Cは、35GHzという高い周波数において高いQ値をもつ強磁性共鳴(FMR)が達成されたことを裏付けるものである。図4Dは、さまざまなバイアス電圧における、ピークFMR周波数対印加磁界の特性を示す。[Fe(50%)Co0.2/Ni0.6]×nなる積層構造をもつFGL1からのPMA補助的作用により、FGL全体として高品質な発振が得られたことがわかる。なお、この図および以下の図において、磁界の単位1[Oe]は106 /4π[A/m]に等しい。
【0054】
比較のために、FeCo10なる構成のFGL2の上に[Co(50%)Fe0.2/Ni0.6]×10なる積層構造をもつFGL1を配置して、従来構造を有するSTOデバイスを作製した。その構造は下記の通りである。
【0055】
Ta1/Ru2/Cu2/[Co(50%)Fe0.2/Ni0.5]×15/Cu2/Fe(70%)Co10/[Co(50%)Fe0.2/Ni0.5]×10/Ru1/Ta4/Ru3
【0056】
この場合、上述のように、[Co(50%)Fe0.2/Ni0.5]×15なる積層構造をもつSILからのスピントルクの大部分は、[Co(50%)Fe0.2/Ni0.5]×10なる積層構造をもつFGL1によって相殺されることから、Fe(70%)Co10/[Co(50%)Fe0.2/Ni0.5]×10なる積層構造をもつFGLに作用する総スピントルクは非常に小さくなる。その結果、図5A〜図5Dに示すように、発振特性は非常に劣ったものとなる。
【0057】
[実験例2]
この実験では、[CoFe/Ni]×nなる積層体(SIL)を上側に配置すると共に、[CoFe/Ni]×mなる積層体( 第1のFGLサブ層) とFeCo( 第2のFGLサブ層) とが結合してなるFGLを下側に配置し、トップSIL型のスピントルク発振器を作製した。その具体的な積層構造は以下の通りである。
【0058】
Ta1/Ru2/Cu2/FeCo10/[CoFe(x%)0.2/Ni0.5]×m/スペーサ/[CoFe(x%)0.2/Ni0.5]×n/Ru1/Ta4/Ru3
【0059】
上記の構造では、[CoFe(x%)0.2/Ni0.5]×mなる積層構造(mは例えば5〜30であり、より好ましくは5〜20である)をFeCo10なる層の上側に挿入した。[CoFe/Ni]×mなる積層構造がFeCo層と強く磁気結合しているので、[CoFe(x%)0.2/Ni0.5]×mなる積層構造の強いPMAによって、FeCo層の異方性は垂直方向に向かって部分的に傾斜する。その結果、FGL全体が1×108 A/cm2 という低電流密度下において発振することが可能となる。
【0060】
このようなボトムSIL型スピントルク発振器の場合においても、トップSIL型スピントルク発振器の場合と同様のデータが得られた。つまり、スペーサに隣接するFGLが高いPMAを有する場合には、低電流密度下においてFGLが発振しやすくなるため、デバイスの性能が向上するという結果が得られた。
[寸法および材料置換可能性等についての包括的コメント]
【0061】
上記したように、シード層としては、例えばTa/Ru/Cuなる3層構造が用いられるが、ここでTa層の厚さは0.5nm〜5nm、Ru層の厚さは0.5nm〜10nm、Cu層の厚さは0nm〜10nmとされる。但し、Cuを省いてTa/Ruなる2層構造にしてもよい。
【0062】
また、上記したように、SILとしては、例えば[CoFe(x%)(t2)/Ni(t1)]×nなる多層構造が用いられるが、ここで、CoFe層の厚さt2は、0.05nm〜0.5nm、より好ましくは0.15nm〜0.3nmとされ、Ni層の厚さt1は、0.2nm〜1nm、より好ましくは0.35nm〜0.8nmとされる。CoFe(x%)におけるFe含有率xは0(純Coの場合)〜90である。[CoFe(x)(t2)/Ni(t1)]×nにおけるnは5〜50、より好ましくは10〜30である。第1のFGLサブ層(FGL1)としての[CoFe/Ni]×mなる積層構造についても、上記のSILの例と同様である。
スペーサ材料は、CPP‐GMRの場合はCuであり、TMRの場合はMgO、AlOx、TiOx、またはZnOである。FGL2としては、5nm〜30nmの厚さを有するFeCo層が適当である。キャップ層としてはRu1/Ta4/Ru3を用いる。
このようなデバイスにおいて、アニーリングの温度は150°C〜300°C、より好ましくは180°C〜250°Cである。アニーリングの時間は0.5時間〜5時間とするのが好ましい。
【0063】
複合シード層Ta/Ru/Cuにおいて、Cuを厚さが0.1nm〜10nmのTi,Pd,W,Rh,Au,Ag等によって置き換えてもよい。Ta/Ru/Cuなる複合シード層はまた、Ta/Ruなる積層構造によって置き換えてもよく、この場合、Ta層の厚さは0.5nm〜5nmとし、Ru層の厚さは2nm〜10nmとする。Ta/Ru/Cuなる積層構造は、Ta/Cuなる積層構造、またはTa/NiCrなる積層構造によって置き換えてもよく、この場合、Ta層の厚さは0.5nm〜5nmであり、Cu層の厚さは2nm〜5nmであり、NiCr層の厚さは4nm〜10nmである。
【0064】
SILとしての[CoFe(x%)(t2)/Ni(t1)]×nなる積層構造はまた、[CoFe(x%)(t2)/Pt(t1)]×nなる積層構造、[CoFe(x%)(t2)/Pd(t1)]×nなる積層構造、[CoFe(x%)(t2)/Ir(t1)]×nなる積層構造、またはCoPt、FePt、CoPd、FePd、TbFe(Co)等の他のPMAシステムによって置き換えてもよい。第1のFGLサブ層(FGL1)としての[Co100-y Fey /Ni]×mなる積層構造についても同様である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピントルク発振器(STP:spin torque oscillator)によってマイクロ波を生成させる方法であって、
平行に対向する第1および第2の外表面を有する非磁性スペーサ層を設け、
前記第1の外表面と垂直な容易軸を有すると共に前記第1の外表面と完全接触する第1のFGLサブ層と、前記第2の外表面と平行な容易軸を有すると共に前記第1のFGLサブ層と完全接触する第2のFGLサブ層とからなる二層構造の磁界生成層(FGL:field generation layer)を、前記第1の外表面と接触するように設け、
前記第1および第2の外表面に対して垂直な永久磁化を有するスピン注入層(SIL:spin injection layer)を、前記第2の外表面に対して完全接触するように設け、
これにより、低電流密度下において垂直記録磁極の近傍にマイクロ波を生成させるようにしたマイクロ波生成方法。
【請求項2】
前記低電流密度は、5×107 A/cm2 以上5×108 A/cm2 以下である
請求項1に記載のマイクロ波生成方法。
【請求項3】
30GHzよりも高い周波数において前記STOに強磁性共鳴が生じるようにする
請求項2に記載のマイクロ波生成方法。
【請求項4】
前記STOは、前記SILと前記記録磁極との間に前記FGLが位置するトップSIL型のデバイスである
請求項1に記載のマイクロ波生成方法。
【請求項5】
前記STOは、前記FGLと前記記録磁極との間に前記SILが位置するボトムSIL型のデバイスである
請求項1に記載のマイクロ波生成方法。
【請求項6】
平行に対向する第1および第2の外表面を有する非磁性スペーサ層と、
前記第1の外表面と垂直な容易軸を有すると共に前記第1の外表面と完全接触する第1のFGLサブ層と、前記第2の外表面と平行な容易軸を有すると共に前記第1のFGLサブ層と完全接触する第2のFGLサブ層とからなる二層構造を有し、前記第1の外表面と接触する磁界生成層と、
前記第1および第2の外表面に対して垂直な永久磁化を有し、前記第2の外表面と完全接触するスピン注入層と
を備え、
低電流密度下において垂直記録磁極の近傍にマイクロ波を生成する
スピントルク発振器。
【請求項7】
前記低電流密度は、5×107 A/cm2 以上5×108 A/cm2 以下である
請求項6に記載のスピントルク発振器。
【請求項8】
30GHzよりも高い周波数において強磁性共鳴が生じる
請求項6に記載のスピントルク発振器。
【請求項9】
前記STOは、前記SILと前記記録磁極との間に前記FGLが位置するトップSIL型のデバイスとなっている
請求項6に記載のスピントルク発振器。
【請求項10】
前記STOは、前記FGLと前記記録磁極との間に前記SILが位置するボトムSIL型のデバイスである
請求項6に記載のスピントルク発振器。
【請求項11】
前記非磁性スペーサは、Cu層,MgO層,AlOx層,TiOx層,ZnO層,および狭窄電流路(CCP:current confining paths )構造よりなる群(但し、前記狭窄電流路構造は、Cu層/CCP層/Cu層、またはCu層/ZnO層/Cu層なる構造を含み、前記CCPは、AlCu層/PIT(プラズマイオン処理)/IAO(イオンアシスト酸化)により形成される)から選択される
請求項6に記載のスピントルク発振器。
【請求項12】
Ta/Ru/Cuなる積層構造を有するシード層と、
前記シード層の上に設けられ、厚さt2のCo100-x Fex の上に厚さt1のNiを積層した[Co100-x Fex /Ni]構造をn回繰り返してなる積層体を含む第1の多層構造と、
前記第1の多層構造の上に形成された非磁性スペーサ層と、
前記非磁性スペーサ層の上に設けられ、厚さt4のCo100-y Fey の上に厚さt3のNiを積層した[Co100-y Fey /Ni]構造をm回繰り返してなる積層体を含む第2の多層構造と、
前記第2の多層構造の上に形成されたFeCo層と、
前記FeCo層の上に設けられた、Ru/Ta/Ruなる積層構造を有するキャップ層と
を備えたボトムSIL型のスピントルク発振器。
【請求項13】
前記シード層において、前記Ta層の厚さは0.5nm以上5nm以下であり、前記Ru層の厚さは0.5nm以上10nm以下であり、前記Cu層の厚さは0以上10nm以下である
請求項12に記載のボトムSIL型のスピントルク発振器。
【請求項14】
前記第1および第2の多層構造において、前記Co100-x Fex 層の厚さt2および前記Co100-y Fey 層の厚さt4は0.15nm以上0.3nm以下であり、前記Niの厚さt1およびt3は0.35nm以上0.8nm以下であり、前記Co100-x Fex 層におけるxおよび前記Co100-y Fey 層におけるyは0以上90%以下である
請求項12に記載のボトムSIL型のスピントルク発振器。
【請求項15】
前記第1および第2の多層構造において、前記Co100-x Fex 層の厚さt2および前記Co100-y Fey 層の厚さt4は0.05nm以上0.5nm以下であり、前記Niの厚さt1およびt3は0.2nm以上1nm以下であり、前記Co100-x Fex 層におけるxおよび前記Co100-y Fey 層におけるyは0以上90%以下である
請求項12に記載のボトムSIL型のスピントルク発振器。
【請求項16】
前記第1および第2の多層構造における前記繰り返し数nおよびmは、10以上30以下である
請求項12に記載のボトムSIL型のスピントルク発振器。
【請求項17】
前記第1および第2の多層構造における前記繰り返し数nおよびmは、5以上50以下である
請求項12に記載のボトムSIL型のスピントルク発振器。
【請求項18】
前記[Co100-x Fex /Ni]構造および前記[Co100-y Fey /Ni]構造におけるNiは、Pt,Pd,Ir,CoPt,FePt,CoPd,FePd,TbFe,およびTbCoからなる群より選択される材料によって置換可能である
請求項12に記載のボトムSIL型のスピントルク発振器。
【請求項19】
Ta/Ru/Cuなる積層構造を有するシード層と、
前記シード層の上に形成されたFeCo層と、
前記FeCo層の上に設けられ、厚さt2のCo100-x Fex の上に厚さt1のNiを積層した[Co100-x Fex /Ni]構造をn回繰り返してなる積層体を含む第1の多層構造と、
前記第1の多層構造の上に形成された非磁性スペーサ層と、
前記非磁性スペーサ層の上に設けられ、厚さt4のCo100-y Fey の上に厚さt3のNiを積層した[Co100-y Fey /Ni]構造をm回繰り返してなる積層体を含む第2の多層構造と、
前記第2の多層構造の上に形成された、Ru/Ta/Ruなる積層構造を有する三重層と
を備えたトップSIL型のスピントルク発振器。
【請求項1】
スピントルク発振器(STP:spin torque oscillator)によってマイクロ波を生成させる方法であって、
平行に対向する第1および第2の外表面を有する非磁性スペーサ層を設け、
前記第1の外表面と垂直な容易軸を有すると共に前記第1の外表面と完全接触する第1のFGLサブ層と、前記第2の外表面と平行な容易軸を有すると共に前記第1のFGLサブ層と完全接触する第2のFGLサブ層とからなる二層構造の磁界生成層(FGL:field generation layer)を、前記第1の外表面と接触するように設け、
前記第1および第2の外表面に対して垂直な永久磁化を有するスピン注入層(SIL:spin injection layer)を、前記第2の外表面に対して完全接触するように設け、
これにより、低電流密度下において垂直記録磁極の近傍にマイクロ波を生成させるようにしたマイクロ波生成方法。
【請求項2】
前記低電流密度は、5×107 A/cm2 以上5×108 A/cm2 以下である
請求項1に記載のマイクロ波生成方法。
【請求項3】
30GHzよりも高い周波数において前記STOに強磁性共鳴が生じるようにする
請求項2に記載のマイクロ波生成方法。
【請求項4】
前記STOは、前記SILと前記記録磁極との間に前記FGLが位置するトップSIL型のデバイスである
請求項1に記載のマイクロ波生成方法。
【請求項5】
前記STOは、前記FGLと前記記録磁極との間に前記SILが位置するボトムSIL型のデバイスである
請求項1に記載のマイクロ波生成方法。
【請求項6】
平行に対向する第1および第2の外表面を有する非磁性スペーサ層と、
前記第1の外表面と垂直な容易軸を有すると共に前記第1の外表面と完全接触する第1のFGLサブ層と、前記第2の外表面と平行な容易軸を有すると共に前記第1のFGLサブ層と完全接触する第2のFGLサブ層とからなる二層構造を有し、前記第1の外表面と接触する磁界生成層と、
前記第1および第2の外表面に対して垂直な永久磁化を有し、前記第2の外表面と完全接触するスピン注入層と
を備え、
低電流密度下において垂直記録磁極の近傍にマイクロ波を生成する
スピントルク発振器。
【請求項7】
前記低電流密度は、5×107 A/cm2 以上5×108 A/cm2 以下である
請求項6に記載のスピントルク発振器。
【請求項8】
30GHzよりも高い周波数において強磁性共鳴が生じる
請求項6に記載のスピントルク発振器。
【請求項9】
前記STOは、前記SILと前記記録磁極との間に前記FGLが位置するトップSIL型のデバイスとなっている
請求項6に記載のスピントルク発振器。
【請求項10】
前記STOは、前記FGLと前記記録磁極との間に前記SILが位置するボトムSIL型のデバイスである
請求項6に記載のスピントルク発振器。
【請求項11】
前記非磁性スペーサは、Cu層,MgO層,AlOx層,TiOx層,ZnO層,および狭窄電流路(CCP:current confining paths )構造よりなる群(但し、前記狭窄電流路構造は、Cu層/CCP層/Cu層、またはCu層/ZnO層/Cu層なる構造を含み、前記CCPは、AlCu層/PIT(プラズマイオン処理)/IAO(イオンアシスト酸化)により形成される)から選択される
請求項6に記載のスピントルク発振器。
【請求項12】
Ta/Ru/Cuなる積層構造を有するシード層と、
前記シード層の上に設けられ、厚さt2のCo100-x Fex の上に厚さt1のNiを積層した[Co100-x Fex /Ni]構造をn回繰り返してなる積層体を含む第1の多層構造と、
前記第1の多層構造の上に形成された非磁性スペーサ層と、
前記非磁性スペーサ層の上に設けられ、厚さt4のCo100-y Fey の上に厚さt3のNiを積層した[Co100-y Fey /Ni]構造をm回繰り返してなる積層体を含む第2の多層構造と、
前記第2の多層構造の上に形成されたFeCo層と、
前記FeCo層の上に設けられた、Ru/Ta/Ruなる積層構造を有するキャップ層と
を備えたボトムSIL型のスピントルク発振器。
【請求項13】
前記シード層において、前記Ta層の厚さは0.5nm以上5nm以下であり、前記Ru層の厚さは0.5nm以上10nm以下であり、前記Cu層の厚さは0以上10nm以下である
請求項12に記載のボトムSIL型のスピントルク発振器。
【請求項14】
前記第1および第2の多層構造において、前記Co100-x Fex 層の厚さt2および前記Co100-y Fey 層の厚さt4は0.15nm以上0.3nm以下であり、前記Niの厚さt1およびt3は0.35nm以上0.8nm以下であり、前記Co100-x Fex 層におけるxおよび前記Co100-y Fey 層におけるyは0以上90%以下である
請求項12に記載のボトムSIL型のスピントルク発振器。
【請求項15】
前記第1および第2の多層構造において、前記Co100-x Fex 層の厚さt2および前記Co100-y Fey 層の厚さt4は0.05nm以上0.5nm以下であり、前記Niの厚さt1およびt3は0.2nm以上1nm以下であり、前記Co100-x Fex 層におけるxおよび前記Co100-y Fey 層におけるyは0以上90%以下である
請求項12に記載のボトムSIL型のスピントルク発振器。
【請求項16】
前記第1および第2の多層構造における前記繰り返し数nおよびmは、10以上30以下である
請求項12に記載のボトムSIL型のスピントルク発振器。
【請求項17】
前記第1および第2の多層構造における前記繰り返し数nおよびmは、5以上50以下である
請求項12に記載のボトムSIL型のスピントルク発振器。
【請求項18】
前記[Co100-x Fex /Ni]構造および前記[Co100-y Fey /Ni]構造におけるNiは、Pt,Pd,Ir,CoPt,FePt,CoPd,FePd,TbFe,およびTbCoからなる群より選択される材料によって置換可能である
請求項12に記載のボトムSIL型のスピントルク発振器。
【請求項19】
Ta/Ru/Cuなる積層構造を有するシード層と、
前記シード層の上に形成されたFeCo層と、
前記FeCo層の上に設けられ、厚さt2のCo100-x Fex の上に厚さt1のNiを積層した[Co100-x Fex /Ni]構造をn回繰り返してなる積層体を含む第1の多層構造と、
前記第1の多層構造の上に形成された非磁性スペーサ層と、
前記非磁性スペーサ層の上に設けられ、厚さt4のCo100-y Fey の上に厚さt3のNiを積層した[Co100-y Fey /Ni]構造をm回繰り返してなる積層体を含む第2の多層構造と、
前記第2の多層構造の上に形成された、Ru/Ta/Ruなる積層構造を有する三重層と
を備えたトップSIL型のスピントルク発振器。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【公開番号】特開2012−104215(P2012−104215A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243998(P2011−243998)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(500475649)ヘッドウェイテクノロジーズ インコーポレイテッド (251)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(500475649)ヘッドウェイテクノロジーズ インコーポレイテッド (251)
【Fターム(参考)】
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