説明

マイクロ複製のための工具を製造する方法

硬質面内に三次元成形用パターン(N)を電気機械彫刻することを含む方法。該硬質面は、該三次元成形用パターン(N)に従ってマイクロ複製するように構成されている。該成型用パターンは、光再指向フィルム(2)の光学素子(5)のマイクロ複製用となることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施態様は、連続材料ウェブ中に三次元パターンの反転形をマイクロ複製する特定の目的で、小さな個別のキャビティから成る成形用パターンを硬質面内に電気機械彫刻(例えばグラビア電気機械彫刻)する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パターン化表面を有するフィルムは種々の用途のために形成される。例えば、印画紙は、艶消し仕上げ又は光沢仕上げを有するフィルムを含むことができる。この艶消し仕上げ又は光沢仕上げは、通常の観察者が見る場合、写真に対して望ましい効果を生み出すことができる。光沢仕上げ又は艶消し仕上げは、或る特定の許容差(すなわち或る特定の精度レベル)を有する印画紙製造プロセスを必要とする。製造プロセスの許容差が厳しくなるにつれて、その製造プロセスは一般により複雑且つ高価になる。換言すれば、印画紙のためのパターン化フィルムを製造するのに必要とされる許容差は、液晶ディスプレイのための光再指向フィルムを製造するのに必要とされる許容差よりも著しく甘いことがある。
【0003】
光再指向フィルムは種々の用途に使用することができる。例えば、光指向フィルムを液晶ディスプレイ(LCD)の一部として使用することにより、LCDの電力効率を高めることができる。LCD(又はその他の類似のディスプレイ)の電力効率を高めることは有意であり得る。液晶ディスプレイはしばしば、バッテリーで動くモバイル・デバイス(例えば携帯電話、ラップトップ・コンピュータ、デジタル・カメラなど)内に含まれる。これらのモバイル・デバイスにとっては、デバイスのバッテリーの動作時間を最大化することが望ましい。バッテリー技術は向上しつつあるものの、モバイル・デバイスのバッテリー寿命を長くする1つの方法は、品質を劣化させずにデバイスの電力消費量を低減することである。液晶ディスプレイをより効率的にすることにより、モバイル・デバイスのバッテリー寿命を延ばすことができ、このことは使用者にとって大きな利益になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光再指向フィルムの光学素子は、写真上の艶消し仕上げ又は光沢仕上げの光学特性と比較して、極めて特異的であり、そして細密である。従って、印画紙上の光沢仕上げ又は艶消し仕上げを生成するための製造プロセスの精度は、光再指向フィルムの製造を目的とする場合には不十分なことがある。例えば、他のパターン化フィルムを製造するのに用いられる製造プロセスは、光再指向フィルムの光学素子を十分に再現することができず、或いは、光再指向フィルムを利用可能にするために必要となることがある均一なフィルム厚を十分に提供することができない。以前の製造プロセスがこのように不十分であることは、光再指向フィルムの製造にとって、重大な考慮事項である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施態様は、硬質面(例えばパターン・ローラ)内に成形用パターンを電気機械彫刻することを含む方法に関する。本発明の他の実施態様は、光再指向フィルム上に光学素子をマイクロ複製することを含む方法に関する。本発明の他の実施態様は、硬質面を含む装置に関する。硬質面内には成形用パターンが形成されており、成形用パターンは、電気機械彫刻(例えばグラビア電気機械彫刻)によって形成される。
【0006】
成形用パターンは、硬質面上に形成される三次元表面形状であるので、三次元表面形状のネガが、硬質面から成形された物体の表面に正確に付与される。本発明における成形用パターンは、硬質面内に切削された、良好に形成された多くのキャビティを含む。
【0007】
本発明の実施態様によれば、この製造方法は、種々の用途に使用することができる光再指向フィルムのための成形用パターンを製造することができる。例えば、本発明の実施態様による製造方法を用いることにより、光再指向フィルムは、特定の光学素子の正確な複製によって製造することができる。特定の光学素子のこのような複製により、液晶ディスプレイの効率を相当高めることができるフィルムを可能にする。従って、効率をこのように高めると、モバイル・デバイス(例えば携帯電話、ラップトップ・コンピュータ、デジタル・カメラなど)のバッテリー寿命を延ばすことができる。実施態様の製造方法は、薄いフィルムが不連続的な光学素子を有するように製造されるのを可能にする。不連続的な光学素子のない光再指向フィルムは、ディスプレイ品質を劣化させないで、ディスプレイ・デバイスの効率を高めるのに有効とはならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
表面上に小さなキャビティから成るパターンを有するシリンダには、数多くの用途がある。典型的には、これらのシリンダは、別の材料内又は材料上にシリンダ面のキャビティ・パターンを、連続的な製造プロセスで複製するために使用される。例えばグラビア印刷の場合、シリンダ面上に所望のパターンで形成された一連のキャビティを使用することにより、インク又は塗布材料を集め、次いでこれを連続ウェブの表面上に移す。
【0009】
パターン形成されたシリンダは、マイクロ複製プロセスにおいて使用することもできる。紫外線(UV)硬化式複製の場合、キャビティを満たすように、シリンダ面に材料を被着し、UV露光によってUV硬化性材料を硬化させ、次いでシリンダからこれを分離する。マイクロ複製の他の例は、ホットエンボス加工及び連続押出成形を含む。ホットエンボス加工の場合、高い圧力及び温度下では、パターン形成されたシリンダを、予め形成されたポリマー・ウェブに圧着することにより、マイクロ構造化面を有する均質な生成物を形成する。連続押出成形の場合、溶融ポリマーから成る薄層を、パターン形成されたシリンダに圧着することにより、マイクロ構造化面を有する均質な生成物を形成する。パターン形成されたシリンダが利用されるプロセスとは無関係に、パターン形成されたシリンダの内在的な魅力は、連続的な生成物製造を可能にする能力である。連続プロセスは、バッチ・プロセスよりも製造コストが低い。
【0010】
連続製造プロセスの魅力を考えると、小さなキャビティから成る所望のパターンを含有するシリンダを効率的に形成することができる。小さなキャビティから成る正確な所望のパターンを形成することができるだけでなく、広い表面積にわたって所望のパターンを形成するのに必要となる時間も妥当でなければならない。小さなキャビティを有するようにパターン化されるべき表面積は、典型的には0.03平方メートル〜2.2平方メートル、たいていの場合には0.32平方メートル〜1.0平方メートルである。小さなキャビティから成るパターンを形成するのに必要とされるプロセスは、3日未満で達成できることが望ましい。
【0011】
パターン形成されたシリンダを形成するための多くの技法が当業者に知られているが、しかし所望のパターンが何らかの光学的実用性を有する場合には、その技法リストは短くなる。光学有用性を有する小さなキャビティから成る複製されたパターンには、多数の用途がある。これらの用途の一例としては、セキュリティ及び包装用途に使用されるホログラム、通信及び画像形成システム用途のためのマイクロレンズ・アレイ、及びバックライト型ディスプレイ・システムに使用される光再指向フィルムが挙げられる。光再指向フィルムの例は、ディフューザ、光視準フィルム、及び偏光回復・再循環フィルムを含む。
【0012】
ダイヤモンド工具を利用して、光学的構成要件を形成するのに必要とされる表面品質及び粗さ特性を達成することができる。種々の技術のいずれか1つを用いて、正確に成形され研磨されたダイヤモンド工具を、シリンダ面と係合させることにより、シリンダ面上の材料を除去、成形、又は形成することができる。ダイヤモンド工具は高価ではあるが、より一般的でより低廉な別の工具材料よりも好ましい。このような別の工具材料、例えばカーバイド又は高速度鋼は、材料の粒子サイズが比較的大きいため、光学品質特徴を生成することができない。この大きな粒子サイズは結果として、カッティングエッジに添って微小な切り屑をもたらす。このような切り屑は、受け入れがたい粗さ特性を有する表面を形成し、これにより、光学有用性を有する表面のための要件を満たさない。シリンダ内に直接に光学品質構成要件を形成するためには、これらの構成要件は、ダイヤモンド工具又はスタイラスを使用して、切削、形成、スクライブ、刻線、又はその他の形式で作成することができる。
【0013】
小さなキャビティから成る所望のパターンを有するシリンダを間接的に形成するために別の手段が存在する。例えば、所望のパターンを平らなワークピース内に形成し、そして後続作業を介して、オリジナルの可撓性コピーを生成することができる。このコピーはシリンダ面に巻き付けることができる。このような技術を利用することにより、完成製品に容易に検出可能な継ぎ目又は線が形成されることになる。その頻度はシリンダの円周に相当する。いくつかの用途においてこのことは許容することができるが、しかし多くの用途では許容できない。このことは、複写又は材料転移によって形成される完成製品がシリンダの円周よりも大きい長さを有している場合に、当てはまる。
【0014】
よく知られているように、小さなキャビティから成る所望のパターンを有するシリンダを形成するのに必要な時間は、このようなシリンダをパターン化する種々の別の方法を著しく制限する。具体的には、小さなキャビティから成る所望のパターンを有するシリンダを形成するのに必要な時間は、このようなシリンダの形成を著しく高価にしてしまうおそれがある。全ての別の方法は、1秒当たり1〜10個の構成要件を製造する能力がある。この速度では、連続製造プロセスで使用される平均的なシリンダをパターン化するのに必要な時間は、数か月と測定される。例えば、所望のパターンが1平方センチメートル当たり3,875個のキャビティから成り、そしてパターン化されるべき表面積が1.0平方メートルである場合、1秒当たり10個の構成要件という速度において、シリンダをパターン化するのに必要な時間は約43日である。
【0015】
ダイヤモンド旋削を用いてシリンダ上に連続的な光学溝を形成するための周知の技法が、当該技術分野において存在する。このプロセスでは、非回転式ダイヤモンド工具が、回転シリンダと係合させられる。典型的には、シリンダ面に対して垂直に対称的な工具を係合させることにより、2つ又は3つ以上のアングル面から成る対称的な溝を形成する。工具をシリンダと係合させながら、シリンダ面内にさらに進入させるか、或いは、シリンダ面から後退させることにより、構成要件深さを変化させることもできる。このことが連続的な非線形運動で行われると、結果として生じる溝は、2つ又は3つ以上の湾曲面から形成されることになる。米国特許第6,581,286号明細書(Campbell他)には、ねじ切りによって単純な連続構成要件を形成するこのような方法が記載されている。この方法によって形成された溝は、対称的、連続的であり、そして2つの湾曲面から成る。
【0016】
他の用途の場合、ダイヤモンド工具は、係合させられながら、シリンダ又はワークピースの回転軸に対して平行に、又は垂直に、又は所定の角度で動かされる。これらの運動のいずれか又は全ての組み合わせが、同時に生じることができ、また、形成される所望のキャビティ形状との関連において、運動が選択される。この方法の用途例は、大きな鏡面集成体の個々のセグメントの製作を含む。
【0017】
本発明の実施態様は、連続材料ウェブ中に三次元パターンの反転形を複製する特定の目的で、小さな個々の三次元キャビティを有するようにパターン化された金属シリンダを含む、マイクロ複製のための成形用パターンを形成する。
【0018】
図1及び2の例は、本発明の実施態様に基づく光再指向フィルム・システム1の1形態を概略的に示す。光再指向フィルム・システム1は、光再指向フィルム2を含んでよい。光再指向フィルム2は、バックライトBL(又はその他の光源)によって放射された光のより多くを、フィルムの表面に対してより垂直な方向に向かって再分配する。フィルム2を使用することにより、ほとんどどの照明用光源からも、所望の視野角内で光を再分配することができる。例えば、フィルム2をディスプレイD(例えば、ラップトップ・コンピュータ、ワード・プロセッサ、航空電子工学ディスプレイ、携帯電話、及びPDAにおいて使用される液晶ディスプレイ)とともに使用することにより、ディスプレイをより明るくすることができる。液晶ディスプレイは、図1及び2の例に概略的に示されているような透過型液晶ディスプレイ、図3の例に概略的に示されているような反射型液晶ディスプレイ、又は図4の例に概略的に示されているような半透過型液晶ディスプレイを含む、いかなるタイプのものであってもよい。
【0019】
図3の例に示された反射型液晶ディスプレイDは、ディスプレイに入った周囲光を反射させてディスプレイから戻すために、背面に隣接してバック・リフレクタ40を含むことにより、ディスプレイの明るさを増大させることができる。本発明の実施態様に基づく光再指向フィルム2は、反射型液晶ディスプレイの上側に隣接して配置することにより、周囲光(又はフロントライトからの光)をディスプレイ内へ、フィルム平面に対してより垂直な方向に向かって再指向して、所望の視野角内でバック・リフレクタによって反射させて元に戻すことにより、ディスプレイの明るさを高める。光再指向フィルム2は、液晶ディスプレイの上側に所定の位置に取り付けるか、ラミネートするか、又はその他の形式で保持することができる。
【0020】
図4の例に示された半透過型液晶ディスプレイDは、ディスプレイとバックライトBLとの間に配置されたトランスリフレクタTを含むことにより、ディスプレイ前面に入った周囲光を反射させてディスプレイから戻し、これにより明環境においてディスプレイの明るさを増大させ、また、バックライトからの光をトランスリフレクタを透過させてディスプレイから出し、これにより暗環境においてディスプレイを照明する。実施態様において、光再指向フィルム2は、ディスプレイの上側に隣接して、又はディスプレイの下側に隣接して、又は図4の例に概略的に示されたように上側及び下側の両方に配置することにより、周囲光及び/又はバックライトからの光をフィルム平面に対してより垂直に再指向又は再分配して、光線出力分布をより受け入れられるものとし、光がディスプレイ中を移動するようにしてディスプレイの明るさを増大させる。
【0021】
光再指向フィルム2は、入射配光を屈折させるために、フィルムの光出口面6上に明確な形状を有する不連続的な個別の光学素子5のパターンを有する薄い透明なフィルム又は基板8を含むので、フィルムを出る光は、フィルムの表面に対してより垂直な方向に分配される。
【0022】
個別の光学素子5のそれぞれは、フィルムの幅及び長さの何分の1も小さな幅及び長さを有していてよく、そしてフィルムの出口面内の凹部又は出口面上の突起によって形成することができる。これらの個別の光学素子5は、光出口面に対して垂直な方向に向かって入射光を屈折させるために、1つ以上の傾斜面を含んでよい。光学素子5のアスペクト比は0.5を上回ってよい。光学素子5は多くの種々異なる形状を成すことができる。「光再指向フィルム及びフィルム・システム(Light Redirecting Films and Film Systems)」と題される米国特許出願公開第2001/0053075号明細書全体を引用することにより本明細書に組み入れる。この出願は光学素子の多くの変更形を示している。しかし、当業者は本発明の実施態様によってカバーされる光再指向システムの光学素子の他の変更形を識別するであろう。
【0023】
図2の例に示されているように、フィルム2の光入射面7は、光学被膜25(例えば反射防止被膜、反射偏光子、リターデーション被膜又は偏光子)を有することができる。また、実施態様において、所望の視野角的な外見に応じて、光入射面7上に、艶消し又は拡散テクスチャを提供することもできる。艶消し仕上げは、さほど明るくない、よりソフトな画像をもたらすことができる。本発明の実施態様の個別の光学素子5の平坦面と湾曲面との組み合わせは、これらの面に衝突した光線のうちのいくつかを種々異なる方向に再指向することにより、フィルムの入射面上にディフューザ又は艶消し仕上げを施す必要なしに、よりソフトな画像を生成するように構成することができる。光再指向フィルム2の個別の光学素子5は、ねじれ形態、絡み合い形態、及び/又は交差形態を成して互いにオーバーラップし、適正な表面積被覆率で光学構造を形成することもできる。
【0024】
個別の光学素子5は、光再指向フィルム2上に複数の形状及びサイズを有することができる。個別の光学素子5は、不規則なパターンを成して表面上に配置されてもよい。この場合、隣接する素子間の間隔が変化する。例えば、光再指向フィルムが他の光学成分との集成体として配置されるときに、モアレ・パターン又は他の光学効果を回避するために、光再指向フィルム2上に個別の光学素子5をランダム又は疑似ランダムに配置することが有用な場合がある。
【0025】
不規則なパターンは、規則的なパターン、例えばマトリックス、格子、又は線状配列に従わない様式で配置されたキャビティを含む。ランダムなパターンは、ランダム処理によって選択された位置を有するキャビティを含む。
【0026】
バックライトBLは実質的に平坦であるか又は湾曲していてよい。バックライトBLは単層又は多層であってよく、そして種々異なる厚さ及び形状を有することができる。バックライトBLは軟質又は硬質であってよく、そして種々の化合物から形成することができる。さらに、バックライトは中空であるか、液体、空気を充填されているか、又は中実であってよく、そして孔又はリッジを有することができる。
【0027】
光源26は、任意の好適なタイプ(例えばアーク灯、着色、フィルタリング又はペイントすることもできる白熱電球、レンズ末端バルブ、ライン・ライト、ハロゲン・ランプ、発光ダイオード(LED)、LEDから形成されたチップ、ネオン管、冷陰極蛍光灯、遠隔源から伝達する光ファイバー・ライトパイプ、レーザー又はレーザー・ダイオード、又は任意の他の好適な光源)であってよい。加えて、光源26は、所望の有色又は白色光出力分布を可能にするために、多色LED、又は複数の有色輻射源の組み合わせであってもよい。例えば、複数の有色光、例えば種々の色(例えば赤、青、緑)のLED、又は複数の色チップを有する単一LEDを採用して、それぞれの個々の有色光の強度を変化させることにより、白色光又は任意の他の有色光の出力分布を形成することができる。
【0028】
図1及び図2の例に概略的に示されているように、バックライトBLの一方の側に、バック・リフレクタ40を取り付けるか、又はこの一方の側に対して位置決めすることにより、その側から放射された光を反射させて戻し、バックライトを経て反対側を通るように放射することにより、バックライトの光出力効率を改善することができる。加えて、図1及び図2の例に概略的に示されているように、バックライトBLの一方又は両方の側に、光学変形部50のパターンを施すことにより、光路を変化させて、臨界内角を上回り、光の一部がバックライトの一方又は両方の側から放射されるようにすることができる。
【0029】
テクスチャが施された表面を有する熱可塑性フィルムは、包装材料から光学フィルムに及ぶ用途範囲を有する。テクスチャは、圧力ローラとパターン化ローラとから成る流延ニップ内で形成することができる。熱可塑性フィルムに転写されるパターンいかんでは、フィルムの全幅にわたって均一な複製度を得ることが難しい場合がある。この均一な複製度を得ること、且つフィルムの平滑な裏側を有することが難しい場合もある。
【0030】
典型的な押出ロール成形システムは、溶融された高分子材料をニップ内に押し出す押出機を含む。ニップは、成形ローラと圧力ローラとの間に形成される。溶融ポリマーは、圧力ローラによって、成形用ローラパターン内に押し込まれ、そして冷却される。ポリマーはニップを半固体から固体状態で出る。ゴム圧力ローラを使用することにより、流延ニップ全体にわたって比較的均一な圧力を提供することができる。それというのもこれらのローラの被覆体は、溶融カーテンの厚さ不均一性に対応するように変形することができるからである。これらの厚さ不均一性は、ネックインから生じる、又は押出ダイからの流れが不均一となるその他の原因から生じる厚いエッジの存在に起因することがある。しかしゴム被覆体は、光沢のある(例えば平滑な)裏面を形成するのに十分に粗さが低い表面を有することはできない。
【0031】
本発明の実施態様は、硬質面内に成形用パターンを電気機械彫刻する方法に関する。成形用パターンは、光再指向フィルムの製造中に、光学素子をマイクロ複製するために使用することができる。電気機械彫刻はグラビア電気機械彫刻であってよい。印刷業界において印刷用ローラを製造するために、グラビア電気機械彫刻法が用いられている。しかし、本出願の実施態様は、成形用パターンを形成するという全く異なる目的で、グラビア電気機械彫刻を利用する。
【0032】
典型的な電気機械彫刻の場合、シリンダ上に切削されたキャビティは、規則的なパターンを成して配置される。図5は、電気機械彫刻機によって切削された典型的な画像の一部を示しており、中心点Mを有するキャビティNが、キャビティ中心間に一定の間隔X及びYを有する規則的なオフセット格子を成して配置されているのを示している。鉛直方向はシリンダの周りに整合され、そして水平方向は、シリンダの軸と整合される。間隔X及びYは一緒に、電気機械彫刻された画像のスクリーン及び角度を定義し、これらの間隔は画像全体にわたって一定である。画像は、シリンダの1回の回転中に一列のキャビティを彫刻し、次いでシリンダ軸に沿って彫刻ヘッドを一定の距離Xだけ動かし、次いで次のキャビティ列を彫刻し、そしてこれを繰り返すことによって彫刻される。
【0033】
図6は、グラビア電気機械彫刻機によって切削された典型的な別の画像部分を示す。キャビティNは、シリンダ面内に種々の厚さで切削されており、キャビティのサイズ及び形状を変化させている。キャビティ深さの変化は、画像内のその点において、種々の量の材料、例えばインク又は塗布材料を転移するように提供される。しかし、キャビティの位置はこの場合にも、固定された間隔Xを有する列を成して配列されている。電気機械彫刻機は、1つの列から次の列へ、一定の距離を常に移動する。光学素子の反復パターン、例えばキャビティ列間の一定のオフセットとともに、典型的な電気機械彫刻法によって形成されることになるパターンは、製品が他の光学成分との集成体として配置されるときに、モアレのような有害な光学効果をもたらすおそれがある。
【0034】
本発明の実施態様は、電気機械彫刻法を著しく改変することにより、三次元マイクロ構成要件を複製するためのキャビティの不規則な位置決めを可能にする。電気機械彫刻機は、キャビティ列間のオフセットを変化可能にし、任意の、不規則な、又はランダムなキャビティ位置を可能にするように改変することができる。任意の、不規則な、又はランダムなキャビティ位置は、キャビティが任意に、不規則に、又はランダムに交差するか又は絡み合うようにすることもできる。図7は、本発明の1実施態様に基づいて切削することができる、交差キャビティの不規則又はランダムなパターンを示す。図7は説明を簡単にするために、キャビティを、これらの間のギャップとともに示す。キャビティ位置は不規則又はランダムであってもよいが、シリンダ面をほとんど覆っている。任意の、不規則な、又はランダムなキャビティの位置及び交差は、シリンダから成形された製品に、光学基板におけるモアレ効果の低減を含む有益な効果をもたらすことができる。
【0035】
キャビティ列間の様々なオフセットは、ゼロのままであってもよく、電気機械彫刻機が複数のキャビティ列を同じX位置で彫刻するようにすることができる。この能力は、マイクロ複製のための工具を形成するいくつかの方法において有用であり得る。電気機械彫刻機によって順次彫刻される隣り合うキャビティのエッジは、彫刻ヘッド及びスタイラスのモーメントにより、キャビティ間にシャープなエッジを有することはできない。図8Aは、2つの隣り合うオーバーラップ・キャビティF1及びF2の側面を示す。図8Bにおいて、キャビティが電気機械彫刻機によって連続して彫刻される場合、これらは丸みを帯びた交差点Q1を有することになる。しかし、図8Cに示すように、同じ位置で切削された2つの列において、隣り合う構成要件F1及びF2を彫刻することにより、2つのキャビティ間に、シャープな移行部Q2を達成することができる。
【0036】
マイクロ複製のための工具は、一回の切削において切削できる深さよりも深いキャビティを有する必要がある場合があり、或いは、工具は、典型的な電気機械彫刻を施される材料よりも硬質の材料、例えばニッケル又はニッケル-リン合金から形成する必要がある場合もある。これらのより硬質の材料における深い構成要件の彫刻は、ダイヤモンド・スタイラスに応力を加えて破断に至らしめるおそれがあり、或いは、光学品質面をもはや達成できない場合もある。同じX位置において複数のキャビティ列を彫刻することにより、各列において増大した深さまでキャビティを切削することによって、この問題に対処することができる。例えば、図9に示されているように、第1の彫刻列は、その最終深さの50 %までキャビティを切削することができ(C1)、同じ位置における第2の彫刻列は、その最終深さの90 %までキャビティを切削することができ(C2)、そして同じ位置における第3且つ最終の彫刻列は、その最終深さまでキャビティを切削することができる(C3)。結果として、構成要件は任意の深さまで切削することができ、スタイラスが被る切削力はより低く、そしてキャビティの表面仕上げは光学品質を有することができる。
【0037】
図10は、本発明の実施態様に基づいて、所望のキャビティ・パターンを生成することができるシリンダ310を示す。シリンダの形態は著しく変化することができ、また特定の末端用途に応じてしばしばカスタマイズされる。全ての形態において、シリンダは、公称面長330とともに公称直径334を有する。シリンダは、回転軸324を画定する公称直径端部に、シャフト338、又はテーパされた取り付け穴340を有することができる。シリンダの全長336は、シリンダがシャフトを有しない場合には、面長に等しいことがある。より具体的には、シリンダは、シリンダ全長内に含まれる長さを有するシャフトを有する。
【0038】
シリンダは中空又は中実であってよいが、しかしいずれの場合にも、シリンダ面は、所望の結果を達成するのに必要な特定の材料の何らかの関連厚さを有することになる。具体的には、所望のキャビティ・パターンが光学有用性を有さなければならない場合、シリンダ面は、非鉄材料又は合金であってよく、これによりシリンダ面はダイヤモンド工具を使用して、首尾よく機械加工することができる。加えて材料は好ましくは極めて小さな粒子構造を有するか、又は非晶質であり、そしてピット、ボイド、及び所望のパターンの光学有用性に影響を及ぼすようなその他の欠陥を含まない。このような材料の一例としては、銅及び銅-ニッケル合金、ニッケル及びニッケル-リン合金、及び高純度アルミニウムが挙げられる。
【0039】
機械加工が生じるシリンダ面は鍛造又はメッキすることができる。鍛造形態の場合、材料は、シリンダ面全体を含むことができ、或いは、より低廉な材料から形成された既存の円筒面上に押し被せるか、又は他の形式でスリーブ状に被せることができる。メッキの場合、電気化学法などを用いて、所望の材料を均一に、そして薄い層としてシリンダ面の外側上に転移させる。このメッキ法はまた、心棒上で行うことにより、好ましい材料から成る薄いスリーブを形成することもできる。次いで、このスリーブは所望のキャビティ又は溝を有するようにパターン化することができ、次いで複製又は材料転移に使用するための好ましいシリンダに移すことができる。このスリーブを心棒から取り出し、そして所望のキャビティの形成前に好ましいシリンダに移すこともできる。
【0040】
所望のキャビティ・パターンの形成後には、スリーブを取り外し、そしてこれを複製又は材料転移プロセスにおいてベルトとして使用することができる。スリーブは所定のサイズに切断して、複製プロセス、例えば射出成形又は熱成形のために平らな状態で使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、本発明の実施態様に基づく光再指向フィルム・システムを示す概略側面図である。
【図2】図2は、本発明の実施態様に基づく、バックライト及び光再指向フィルム・システムの一部を示す拡大部分側面図である。
【図3】図3は、本発明の実施態様に基づく光再指向フィルム・システムを示す概略側面図である。
【図4】図4は、本発明の実施態様に基づく光再指向フィルム・システムを示す概略側面図である。
【図5】図5は、電気機械彫刻機によって切削された典型的な画像を、キャビティが規則的なオフセット格子を成して配置されている状態で示す図である。
【図6】図6は、電気機械彫刻機によって切削された典型的な別の画像部分を、キャビティが種々の深さ、サイズ及び形状で切削されている状態で示す図である。
【図7】図7は、交差するキャビティの不規則又はランダムなパターンを示す図である。
【図8】図8は、種々のタイプの、隣り合うオーバーラップ・キャビティを示す図である。
【図9】図9は、個々のキャビティの断面図、及びキャビティがいかにして複数の工程で、所望の仕上げ深さに切削されたかを示す図である。
【図10】図10は、本発明の実施態様に基づく、小さなキャビティを含有するシリンダの形態を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 光再指向フィルム・システム
2 光再指向フィルム
5 光学素子
6 光出口面
7 光入射面
25 光学被膜
26 光源
30 光学ディフューザ層
40 バック・リフレクタ
310 シリンダ
324 回転軸
330 長さ
334 直径
336 シリンダの長さ
338 シャフト
340 穴
BL バックライト
C1 切削部
C2 切削部
C3 切削部
D ディスプレイ
F1 キャビティ
F2 キャビティ
M 中心点
N キャビティ
Q1 丸みを帯びた交差点
Q2 シャープな移行部
R 光線
X 水平方向間隔
Y 鉛直方向間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質面内に三次元成形用パターンを電気機械彫刻することを含む方法であって、該硬質面は、該三次元成形用パターンに従ってマイクロ複製するように構成されている。
【請求項2】
該電気機械彫刻が、グラビア電気機械彫刻である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該電気機械彫刻が:
該硬質面を一定の速度で動かし;そして
一連の磁石に交流電圧を印加してロッド内にねじり運動を生成することにより、ダイヤモンド・スタイラスを該硬質面に対して内外に動かす
ことを含み、
累積的な該三次元成形用パターンであるキャビティを形成するために、該ダイヤモンド・スタイラスが該ロッドに取り付けられている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該硬質面が、該三次元成形用パターンを有するパターン・ローラの表面である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該硬質面が、該三次元成形用パターンに従って個別の光学素子をマイクロ複製するように構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該硬質面が、光再指向フィルム内に光学素子をマイクロ複製するように構成されている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
該光学素子が、該光再指向フィルムを通過する光を、該光再指向フィルムに対して垂直方向に向かって再分配するために、明確な形状を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
該光学素子のうちの少なくともいくつかがオーバーラップしている、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
該個別の光学素子が列状に彫刻され;そして
列間の距離は不均一である、
請求項5に記載の方法。
【請求項10】
該個別の光学素子が列状に彫刻され;そして
該列が、該パターン・ローラ上の同じ軸方向位置に彫刻される、
請求項5に記載の方法。
【請求項11】
該個別の光学素子が、不規則又は疑似ランダムなパターンを成して配列される、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
該個別の光学素子が列状に彫刻され;そして
該電気機械彫刻が、該個別の光学素子を、最終深さ未満の深さまで列状に切削し、次いで、該個別の光学素子を、最終深さまで列状に切削することを含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項13】
光再指向フィルム内に光学素子をマイクロ複製することを含む方法であって:
前記光学素子のマイクロ複製は、該光学素子を表すパターンを有するパターン・ローラを使用し;そして
該パターン・ローラのパターンは、グラビア電気機械彫刻法によって形成される。
【請求項14】
前記マイクロ複製が、押出ロール成形を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
該押出ロール成形が、パターン・ローラと圧力ローラとの間のニップで、光再指向フィルムを形成する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記マイクロ複製することが、UV硬化することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
該方法がエンボス加工することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
硬質面を含む装置であって:
該硬質面に、三次元成形用パターンが形成されており;
該三次元成形用パターンは、電気機械彫刻によって形成されており;そして
該硬質面は、該三次元成形用パターンに従ってマイクロ複製するように構成されている。
【請求項19】
該電気機械彫刻が、グラビア電気機械彫刻である、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
該硬質面が、該成形用パターンを有するパターン・ローラの表面である、請求項18に記載の装置。
【請求項21】
該硬質面が、該三次元成形用パターンに従って光学素子をマイクロ複製するように構成されている、請求項18に記載の装置。
【請求項22】
該硬質面が、光再指向フィルム上に光学素子をマイクロ複製するように構成されている、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
該光学素子が、該光再指向フィルムを通過する光を、該光再指向フィルムに対して垂直方向に向かって再分配するために、明確な形状を有する、請求項21に記載の装置。
【請求項24】
該光学素子が個別の光学素子であり;そして
該光学素子の少なくともいくつかがオーバーラップしている、
請求項21に記載の装置。
【請求項25】
該光学素子が個別の光学素子であり;そして
該パターン・ローラ軸の方向で、個別の光学素子間の距離が変化する、
請求項21に記載の装置。
【請求項26】
該光学素子が個別の光学素子であり;そして
該個別の光学素子が、不規則又は疑似ランダムなパターンを成して配列される、
請求項21に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【公表番号】特表2008−501551(P2008−501551A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515267(P2007−515267)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【国際出願番号】PCT/US2005/018241
【国際公開番号】WO2005/120791
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】