説明

ムラ検査方法、ムラ検査装置およびプログラム

【課題】筋ムラを精度よく検出しつつ、筋ムラの強度を容易に取得する。
【解決手段】ムラ検査装置では、2値画像取得部62にて多階調の対象画像を複数の閾値にて2値化することにより複数の閾値にそれぞれ対応する複数の2値画像が取得され、筋領域特定部63により複数の2値画像のそれぞれにおいて扁平度が所定値以上となる閉領域である筋領域が特定される。領域グループ取得部64では、閾値が隣接する2つの2値画像において互いに重なる筋領域を同一の領域グループに含めるグループ化により、筋ムラを示す領域グループが求められ、筋ムラ強度取得部65にて各領域グループに関して、筋領域が存在する2値画像に対応する閾値の範囲が筋ムラ強度として取得される。これにより、ムラ検査装置では、筋ムラを精度よく検出しつつ、筋ムラの強度を容易に取得することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物上の筋ムラを検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、表示装置用のガラス基板等(以下、単に「基板」という。)の主面上に所定のパターンを形成する際には、当該主面上にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成することが行われる。レジスト膜の形成の際に、例えば、レジスト液が塗布される直前の基板上に微小な不要物が存在すると、レジスト液を吐出するスリットに不要物が引っ掛かってレジスト膜上に筋ムラが発生することがある。近年では、基板上のこのような筋ムラを検査することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1では、検査対象となる画像中の各画素を順次注目画素としつつ、当該注目画素を中心とする所定の大きさの領域において、値が閾値以上の複数の画素と、当該注目画素を通過する角度基準線との間の距離の総和を、傾きが異なる複数の角度基準線のそれぞれに対して算出し、これらの総和の最小値に基づく値を当該注目画素の値とすることにより、筋ムラの存在位置を示す画像を取得する手法が開示されている。
【0004】
なお、特許文献2では、シャドウマスクを示す画像において、所定方向の各位置において、この方向に垂直に並ぶ画素の値を積算して積算データを取得し、積算データの各値を積算データを平滑化した平滑化データの対応する値にて除算することにより得られる規格化データに基づいてシャドウマスクの筋ムラの良否の判定(すなわち、欠陥か否かの判定)を行う技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−345290号公報
【特許文献2】特開平9−68502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、基板上の筋ムラの解析や、基板の切断の単位となる領域毎の筋ムラの良否の判定等のために、基板上の筋ムラの存在位置を精度よく検出しつつ基板品質への筋ムラの影響の程度(以下、「筋ムラの強度」という。)を個別に取得することが要求されつつある。しかしながら、特許文献1の手法にて筋ムラを精度よく検出するには、多数の角度基準線を用いて膨大な量の演算を行う必要があり、さらに筋ムラの評価値を求める場合には、複雑な演算を再度行う必要がある。したがって、筋ムラを精度よく検出しつつ、筋ムラの強度を容易に取得する新規な手法が必要となる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、筋ムラを精度よく検出しつつ、筋ムラの強度を容易に取得することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、対象物上の筋ムラを検査するムラ検査方法であって、a)対象物から得られる多階調の対象画像を複数の閾値にて2値化することにより、前記複数の閾値にそれぞれ対応する複数の2値画像を取得する工程と、b)前記複数の2値画像のそれぞれにおいて、長手方向における長さと前記長手方向に垂直な方向における幅との比が所定値以上となる筋領域を特定する工程と、c)閾値が隣接する2つの2値画像において互いに重なる筋領域を同一の領域グループに含めるグループ化により、それぞれが筋ムラを示す少なくとも1つの領域グループを求める工程と、d)前記少なくとも1つの領域グループのそれぞれに関して、筋領域が存在する2値画像に対応する閾値の範囲、または、筋領域の長さもしくは面積の和を、筋ムラ強度として取得する工程とを備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のムラ検査方法であって、e)前記少なくとも1つの領域グループのそれぞれのおよその筋ムラ強度を特定可能としつつ、前記少なくとも1つの領域グループの存在位置を表示部に表示する工程をさらに備える。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のムラ検査方法であって、f)前記少なくとも1つの領域グループのうち所定の筋ムラ強度の範囲に属するものの存在位置のみを表示部に表示する工程をさらに備える。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のムラ検査方法であって、前記f)工程が、前記筋ムラ強度の範囲を変更して前記少なくとも1つの領域グループのうち変更後の前記筋ムラ強度の範囲に属するものの存在位置のみを前記表示部に再表示する工程を備える。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載のムラ検査方法であって、前記b)工程において、筋領域が当該領域を代表する筋領域線分にて特定され、前記c)工程および前記d)工程において、筋領域線分が、対応する筋領域として扱われる。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載のムラ検査方法であって、前記b)工程において、前記複数の2値画像のそれぞれにおいて閉領域のモーメントを算出して長手方向を決定した上で、前記閉領域が筋領域か否かが特定される。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載のムラ検査方法であって、前記b)工程において、長手方向が同一であり、前記長手方向に配列され、かつ、互いに近接する複数の筋領域が、1つの筋領域へと更新される。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載のムラ検査方法であって、前記対象物が複数の部位に切断される予定の基板であり、前記d)工程において、前記複数の部位のそれぞれに対応する領域における筋ムラ強度の合計が取得される。
【0015】
請求項9に記載の発明は、対象物上の筋ムラを検査するムラ検査装置であって、対象物を撮像して多階調の元画像を取得する撮像部と、前記元画像または前記元画像から導かれる画像である対象画像を複数の閾値にて2値化することにより、前記複数の閾値にそれぞれ対応する複数の2値画像を取得する2値画像取得部と、前記複数の2値画像のそれぞれにおいて、長手方向における長さと前記長手方向に垂直な方向における幅との比が所定値以上となる筋領域を特定する筋領域特定部と、閾値が隣接する2つの2値画像において互いに重なる筋領域を同一の領域グループに含めるグループ化により、それぞれが筋ムラを示す少なくとも1つの領域グループを求める領域グループ取得部と、前記少なくとも1つの領域グループのそれぞれに関して、筋領域が存在する2値画像に対応する閾値の範囲、または、筋領域の長さもしくは面積の和を、筋ムラ強度として取得する筋ムラ強度取得部とを備える。
【0016】
請求項10に記載の発明は、対象物上の筋ムラをコンピュータに検査させるプログラムであって、前記プログラムの前記コンピュータによる実行は、前記コンピュータに、a)対象物から得られる多階調の対象画像を複数の閾値にて2値化することにより、前記複数の閾値にそれぞれ対応する複数の2値画像を取得する工程と、b)前記複数の2値画像のそれぞれにおいて、長手方向における長さと前記長手方向に垂直な方向における幅との比が所定値以上となる筋領域を特定する工程と、c)閾値が隣接する2つの2値画像において互いに重なる筋領域を同一の領域グループに含めるグループ化により、それぞれが筋ムラを示す少なくとも1つの領域グループを求める工程と、d)前記少なくとも1つの領域グループのそれぞれに関して、筋領域が存在する2値画像に対応する閾値の範囲、または、筋領域の長さもしくは面積の和を、筋ムラ強度として取得する工程とを実行させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、筋ムラを精度よく検出しつつ、筋ムラの強度を容易に取得することができる。
【0018】
また、請求項2の発明では、筋ムラが存在する領域または位置を筋ムラ強度と共に確認することができ、請求項3の発明では、必要な筋ムラのみを効率よく把握することができる。
【0019】
また、請求項4の発明では、実際の筋ムラと筋ムラ強度との関係をより的確に把握することができ、請求項5の発明では、筋ムラ強度を容易に取得することができる。
【0020】
また、請求項6の発明では、筋領域を精度よく特定することができ、請求項7の発明では、後続の処理を効率よく行うことができ、請求項8の発明では、基板の複数の部位のそれぞれにおける筋ムラの程度を数値化して取得することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の一の実施の形態に係るムラ検査装置1の構成を示す図である。ムラ検査装置1は、液晶表示装置等の表示装置に用いられるガラスの基板9において、一方の主面91上にレジスト液を塗布することにより形成されたパターン形成用のレジストの膜92の画像を取得し、この画像に基づいて基板9の膜92上の筋ムラを検査する装置である。なお、本実施の形態における基板上には複数の表示装置用のパネルのパターンが形成される(または、形成される予定となっている。)。
【0022】
ここで、基板9上のムラとは局所的な明暗変動により特定される一定面積以上の領域(ただし、通常、領域の境界は不明瞭である。)であり、筋ムラとはその領域の長手方向における長さαと長手方向に垂直な方向における幅βとの比(α/β)が所定値以上となるものとして定義する。もちろん、実質的にこの条件が満たされるのであれば、筋ムラの定義は適宜変更されてよく、他の条件が追加されてもよい。
【0023】
図1に示すように、ムラ検査装置1は、膜92が形成された主面91(以下、「上面91」という。)を上側(図1中の(+Z)側)に向けて基板9を保持するステージ2、ステージ2に保持された基板9上の膜92に所定の入射角にて光を照射する光照射部3、光照射部3から照射されて基板9の上面91上の膜92にて反射された光を受光する受光ユニット4、ステージ2を光照射部3および受光ユニット4に対して相対的に移動する移動機構21、並びに、ムラ検査装置1の制御部としての役割を果たすコンピュータ5を備える。
【0024】
ステージ2の(+Z)側の表面は、好ましくは黒色艶消しとされる。移動機構21は、モータ211にボールねじ(図示省略)が接続された構成とされ、モータ211が回転することにより、ステージ2がガイド212に沿って基板9の上面91に沿う図1中のX方向に移動する。
【0025】
光照射部3は、白色光(すなわち、可視領域の全ての波長の光を含む光)を出射する光源であるハロゲンランプ31、ステージ2の移動方向に垂直な図1中のY方向に伸びる円柱状の石英ロッド32、および、Y方向に伸びるシリンドリカルレンズ33を備える。光照射部3では、ハロゲンランプ31が石英ロッド32の(+Y)側の端部に取り付けられており、ハロゲンランプ31から石英ロッド32に入射した光は、Y方向に伸びる線状光(すなわち、光束断面がY方向に長い線状となる光)に変換されて石英ロッド32の側面から出射され、シリンドリカルレンズ33を介して基板9の上面91へと導かれる。換言すれば、石英ロッド32およびシリンドリカルレンズ33は、ハロゲンランプ31からの光をステージ2の移動方向に垂直な線状光に変換して基板9の上面91へと導く光学系となっている。
【0026】
図1では、光照射部3から基板9に至る光路を一点鎖線にて示している(基板9から受光ユニット4に至る光路についても同様)。光照射部3から出射された光の一部は、基板9の上面91上の膜92の(+Z)側の上面にて反射される。膜92は光照射部3からの光に対して光透過性を有しており、光照射部3からの光のうち膜92の上面にて反射しなかった光は、膜92を透過して基板9の上面91(すなわち、膜92の下面)にて反射される。ムラ検査装置1では、基板9における膜92の上面にて反射された光と基板9の上面91にて反射された光との干渉光が受光ユニット4に入射し、フィルタ43およびレンズ42を介して所定の波長の干渉光が撮像部41へと導かれる。
【0027】
撮像部41には複数の受光素子(例えば、CCD(Charge Coupled Device))をY方向に直線状に配列して有するラインセンサが設けられ、基板9からの干渉光がラインセンサにて受光され、干渉光の強度分布(すなわち、各受光素子からの出力値のY方向における分布)が取得される。実際には、基板9のX方向への移動に伴って撮像部41のラインセンサにて干渉光の強度分布が繰り返し取得されることにより基板9上の膜92の2次元画像が取得される。
【0028】
コンピュータ5は、図2に示すように、各種演算処理を行うCPU51、基本プログラムを記憶するROM52および各種情報を記憶するRAM53をバスラインに接続した一般的なコンピュータシステムの構成となっている。バスラインにはさらに、情報記憶を行う固定ディスク54、各種情報の表示を行う表示部であるディスプレイ55、操作者からの入力を受け付けるキーボード56aおよびマウス56b(以下、「入力部56」と総称する。)、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体8から情報の読み取りを行う読取装置57、並びに、ムラ検査装置1の他の構成要素に接続される通信部58が、適宜、インターフェイス(I/F)を介する等して接続される。
【0029】
コンピュータ5には、事前に読取装置57を介して記録媒体8からプログラム541が読み出され、固定ディスク54に記憶される。そして、プログラム541がRAM53にコピーされるとともにCPU51がRAM53内のプログラムに従って演算処理を実行することにより(すなわち、コンピュータがプログラムを実行することにより)、コンピュータ5が基板9上の筋ムラを検査する演算部としての動作を行う。
【0030】
図3は、CPU51がプログラム541に従って動作することにより、CPU51、ROM52、RAM53、固定ディスク54等が実現する機能構成を示すブロック図である。図3において演算部6内の対象画像生成部61、2値画像取得部62、筋領域特定部63、領域グループ取得部64、筋ムラ強度取得部65および表示制御部66がCPU51等により実現される機能を示す。なお、これらの機能は専用の電気的回路により実現されてもよく、部分的に専用の電気的回路が用いられてもよい。
【0031】
次に、ムラ検査装置1による筋ムラの検査の流れについて説明する。図4は、ムラ検査装置1が基板9の膜92上の筋ムラを検査する処理の流れを示す図である。基板9上の筋ムラが検査される際には、まず、図1中に実線にて示す検査開始位置に位置するステージ2上に基板9が保持された後、ステージ2の(+X)方向への移動が開始される。続いて、光照射部3から出射されて基板9の上面91に対して所定の入射角にて入射する線状光が、上面91上の直線状の照射領域(以下、「線状照射領域」という。)に照射され、線状照射領域が基板9に対して相対的に移動する。光照射部3からの光は基板9の上面91にて反射し、干渉光が撮像部41へと導かれてラインセンサにて受光され、基板9上の線状照射領域における干渉光の強度分布が取得される。ラインセンサの各受光素子からの出力は、所定の変換式に基づいて例えば8bit(もちろん、8bit以外であってもよい。)の値(画素値)に変換されつつコンピュータ5へと送られる。
【0032】
ムラ検査装置1では、ステージ2が(+X)方向に移動している間、撮像部41における干渉光の強度分布の取得、および、画素値のコンピュータ5への出力がステージ2の移動に同期して繰り返される。そして、ステージ2が検査終了位置まで移動すると、移動機構21によるステージ2の移動が停止され、照明光の照射も停止される。以上のようにして、撮像部41では基板9上の膜92の全体を撮像して多階調の2次元画像(後述する処理が施される前の画像であり、以下、「元画像」という。)が取得され、コンピュータ5の演算部6に入力される(ステップS11)。
【0033】
続いて、演算部6の対象画像生成部61では、元画像が圧縮されて第1画像が生成される。ここで、元画像において座標(X,Y)に位置する画素の画素値をFXYと表すと、元画像をs画素×s画素の範囲を単位として圧縮して生成された第1画像において、座標(x,y)に位置する注目画素の画素値Axyは、数1により求められる。
【0034】
【数1】

【0035】
本実施の形態ではsが4(画素)であるため、数1の演算により第1画像のS/N比は元画像の4倍に向上する。第1画像(圧縮後の元画像)が生成されると、第1画像に対するローパスフィルタ処理が行われ、第1画像から高周波ノイズの影響が抑制されて平滑化された第2画像が生成される。ローパスフィルタ処理の演算範囲を決定するウィンドウは、1辺の長さが(2s+1)画素の正方形であり、第2画像において座標(x,y)に位置する注目画素の画素値Lxyは、注目画素近傍の各画素の第1画像における画素値A(数1参照)を用いて、数2により求められる。
【0036】
【数2】

【0037】
その後、第2画像に対してハイパスフィルタ処理が行われ、第2画像から後述のコントラスト強調処理の妨げとなる低周波の濃度変動が除去された第3画像が生成される。ここで、座標(x,y)に位置する注目画素の画素値Hxyは、注目画素近傍の各画素の第2画像における画素値L(数2参照)を用いて、数3にて求められる。
【0038】
【数3】

【0039】
数3は、ハイパスフィルタ処理の演算範囲を決定するウィンドウとして、注目画素を中心とする各辺の長さが(2s+1)画素の正方形のウィンドウが用いられる場合を示している。以上のように、対象画像生成部61では、元画像を圧縮した第1画像に対して、ローパスフィルタ処理を施した後に、ハイパスフィルタ処理を施すことにより、所定の空間周波数帯域のバンドパスフィルタ処理が行われる(ステップS12)。
【0040】
対象画像生成部61では、さらに、第3画像に対してコントラスト強調処理が行われて強調画像が生成される(ステップS13)。強調画像において座標(x,y)に位置する注目画素の画素値Exyは、第3画像における注目画素の画素値Hxy、コントラスト係数r、および、背景値bを用いて、数4にて求められる。本実施の形態では、rは0.01,0.02,0.05または0.1とされ、bは127とされる。
【0041】
【数4】

【0042】
ここで、基板9の上面91には、それぞれが表示装置のパネル上の表示領域に対応する複数の矩形領域(以下、「矩形表示領域」という。)が隙間を空けて縦横に整列して設定されており、基板9は複数の矩形表示領域に従って複数の部位(パネル)に切断される(すなわち、多面取りされる)予定のものである。対象画像生成部61では、強調画像において基板9上の矩形表示領域外の部分に対応する領域(以下、「背景領域」という。)に背景値bを付与することにより、図5に示すように、背景領域719(図5中にて平行斜線を付して示す。)が実質的にマスクされた新たな画像(後述するように、演算部6における以下の処理の対象とされる画像であり、以下、「対象画像」という。)71が生成される(ステップS14)。なお、図5では多階調の対象画像71を簡略化して示しており、実際には、図5中の矩形表示領域711と背景領域719との境界は必ずしも明確ではない。また、対象画像71の平均濃度(すなわち、画素値の平均値)は約127となっている。
【0043】
対象画像生成部61にて対象画像71が生成されると、2値画像取得部62では、背景値127よりも小さい値103〜122のそれぞれを閾値として対象画像が2値化される。具体的には、対象画像の各画素の値と各閾値(以下、「下閾値」という。)とが比較され、値が下閾値以下の画素に「1」を付与し、下閾値よりも大きい画素に「0」を付与することにより、下閾値103〜122にそれぞれ対応する20個の2値画像が取得される。
【0044】
図6.Aないし図6.Cは2値画像を示す図であり、図6.Aは下閾値を117とした場合の2値画像を示し、図6.Bは下閾値を112とした場合の2値画像を示し、図6.Cは下閾値を103とした場合の2値画像を示している。背景値よりも小さい値を下閾値として2値画像を取得する上記処理では、図6.Aないし図6.Cに示すように、下閾値が小さくなる(背景値127から離れる)に従って2値画像における値1の画素(図6.Aないし図6.C中の白い画素)の数が少なくなる。
【0045】
続いて、2値画像取得部62では、背景値127よりも大きい値132〜151のそれぞれを閾値(以下、「上閾値」という。)とし、対象画像において値が上閾値以上の画素に「1」を付与し、上閾値よりも小さい画素に「0」を付与することにより、値132〜151にそれぞれ対応する20個の2値画像が取得される。背景値よりも大きい値を上閾値として2値画像を取得する上記処理では、上閾値が大きくなる(背景値127から離れる)に従って2値画像における値1の画素数が少なくなる。
【0046】
以上のように、2値画像取得部62では対象画像71を複数の閾値にて2値化することにより、複数の閾値にそれぞれ対応する複数の(本実施の形態では、40個の)2値画像が取得される(ステップS15)。なお、下閾値および上閾値のいずれを用いる場合であっても、取得される2値画像中の背景領域に対応する領域は値が0となる。
【0047】
複数の2値画像が取得されると、筋領域特定部63では、各2値画像においてラベリングにより互いに連続する値1の画素の集合(以下、「閉領域」という。)が特定され、所定の面積(画素数)以下となる閉領域が処理対象から除外され、2値画像から削除される。続いて、各閉領域のモーメントを算出することにより慣性主軸の方向(角度)が求められ、この閉領域に対して慣性主軸の方向に沿う外接矩形が求められる。なお、通常、慣性主軸の方向は閉領域の長手方向となる。以下の説明では、慣性主軸は長手方向に沿うものを指すものとする。
【0048】
図7は、2値画像中の複数の閉領域721a,721b,721cを示す図である。図7では、各閉領域721a〜721cの外接矩形を符号722a〜722cを付して細線にて示している。筋領域特定部63では、さらに、各閉領域721a〜721cの外接矩形722a〜722cにおいて慣性主軸の方向に関する長さL1と、慣性主軸に垂直な方向に関する幅W1との比(L1/W1)が所定値(例えば、2)と比較され、比が所定値以上となる閉領域721a,721bのみが筋領域(以下、閉領域721a,721bと同符号を付す。)とされ、他の閉領域721cは2値画像から削除される。
【0049】
このように、筋領域特定部63では、複数の2値画像のそれぞれにおいて閉領域のモーメントを算出することにより、長手方向における長さと長手方向に垂直な方向における幅との比が所定値以上となる筋領域が特定される(ステップS16)。なお、2値画像における閉領域は、下閾値または上閾値が背景値に近づくと大きくなるため、ある下閾値または上閾値の2値画像で筋領域として検出されても、背景値に近い下閾値または上閾値の2値画像では同じ位置に縦横比の小さい閉領域が現れることがあり、筋領域が検出されるとは限らない。また、筋領域721a,721bのそれぞれでは、重心723a,723bを通って慣性主軸の方向に伸びるとともに両端点が外接矩形722a,722bの辺上に設定される線分(図7中にて一点鎖線にて示す。)が当該筋領域721a,721bを代表する筋領域線分724a,724bとして特定される。
【0050】
続いて、筋領域特定部63では、各2値画像において基板9上の複数の矩形表示領域711(図5参照)に対応する複数の領域(以下、同様に「矩形表示領域」と呼ぶ。)のうちの一の矩形表示領域(以下、「注目矩形表示領域」という。)に注目して、注目矩形表示領域内に含まれる複数の筋領域線分のうちの任意の1つの筋領域線分が特定筋領域線分として特定される。そして、特定筋領域線分と注目矩形表示領域内の他の筋領域線分のそれぞれとの間において、これらの筋領域線分の連結の可否の判定が行われる。
【0051】
図8は筋領域線分の連結の可否の判定を説明するための図であり、図8では図7中の筋領域線分724a,724bを相互の傾きの違いを強調して図示している。筋領域線分724aを特定筋領域線分として、筋領域線分724bとの間において連結の可否の判定を行う場合には、まず、特定筋領域線分724aが代表する筋領域721aの重心723a(筋領域線分の中点であってもよい。以下同様。)と筋領域線分724bが代表する筋領域721bの重心723bとを結ぶ直線(図8中にて符号R1を付す破線にて示す。)が求められる。続いて、特定筋領域線分724aの端点725a,726aと直線R1との間の距離D1,D2、および、筋領域線分724bの端点725b,726bと直線R1との間の距離D3,D4(すなわち、端点725a,726a,725b,726bから直線R1に下ろした垂線の長さ)の全てが所定の第1閾値以下であるか否かが確認される。
【0052】
距離D1〜D4のいずれかが第1閾値よりも大きい場合には筋領域線分の連結が却下される。距離D1〜D4の全てが第1閾値以下である場合には、特定筋領域線分724aが伸びる方向(特定筋領域線分724aが示す筋領域721aの長手方向であり、以下、同様に「長手方向」と呼ぶ。)と筋領域線分724bの長手方向とがほぼ同一であるとされ(図7参照)、続いて、特定筋領域線分724aと筋領域線分724bとの間において最も近接する端点726a,725b間の距離D5、並びに、特定筋領域線分724aと筋領域線分724bとの長さの和が求められる。
【0053】
距離D5と当該長さの和との比が所定の第2閾値よりも大きい場合には筋領域線分の連結が却下される。当該比が所定の第2閾値以下である場合には、特定筋領域線分724aと筋領域線分724bとが互いに近接しているとされ、さらに、特定筋領域線分724aと筋領域線分724bとの間において最も離れた端点725a,726b間の距離D6と、特定筋領域線分724aと筋領域線分724bとの長さの和との比が求められる。そして、当該比が所定の第3閾値以上である場合には、特定筋領域線分724aと筋領域線分724bとが同一の長手方向に配列されているとされて連結が許可され、第3閾値未満である場合には、筋領域線分の連結が却下される。
【0054】
続いて、連結が許可された特定筋領域線分724aと筋領域線分724bとが連結される。具体的には、特定筋領域線分724aをその中点にて分断した2つの分断線分、および、筋領域線分724bをその中点にて分断した2つの分断線分の集合のモーメントを算出することにより、4つの分断線分の集合に対する慣性主軸の方向が求められ、慣性主軸の方向に伸びるとともに4つの分断線分の集合の重心を通る直線(すなわち、慣性主軸)が、図9中にて符号R2を付す破線(ただし、破線の一部が太くされている。)にて示すように求められる。そして、特定筋領域線分724aおよび筋領域線分724bの各端点725a,726a,725b,726bから直線R2に下ろした垂線と直線R2との交点が求められ、4つの交点のうち互いに最も離れた交点727a,727bを端点とする線分が、新たな筋領域線分(図9中にて破線にて示す直線R2のうち太い破線の部分)として取得され、2つの筋領域線分724a,724bが1つの筋領域線分に更新される。
【0055】
実際には、特定筋領域線分724aとの連結が許可される全ての筋領域線分が決定された上で、特定筋領域線分724aとこれらの筋領域線分との連結が同時に行われる。すなわち、特定筋領域線分724aおよび連結が許可された複数の筋領域線分のそれぞれをその中点にて分断することにより複数の分断線分が取得され、これらの分断線分の集合に対する慣性主軸を求め、特定筋領域線分724aおよび連結が許可された複数の筋領域線分の端点から慣性主軸に下ろした垂線と慣性主軸との複数の交点のうち互いに最も離れた2つの交点を端点とする線分が、新たな筋領域線分として求められ、特定筋領域線分724aおよび連結が許可された複数の筋領域線分が1つの筋領域線分へと更新される。
【0056】
特定筋領域線分724aに対する他の筋領域線分との連結の可否の判定および連結が行われると、注目矩形表示領域内における特定筋領域線分724aから更新された筋領域線分(連結が行われない場合には、特定筋領域線分724a)以外の一の筋領域線分を特定筋領域線分として特定し、他の筋領域線分との連結の可否の判定および連結が行われる。実際には、複数の2値画像のそれぞれにおいて、各矩形表示領域を注目矩形表示領域として上記処理が行われることにより、長手方向が同一であり、長手方向に配列され、かつ、互いに近接する同一矩形表示領域内の複数の筋領域線分が1つの筋領域線分へと更新とされる(ステップS17)。
【0057】
続いて、領域グループ取得部64では、2値化の際における閾値が隣接する(本実施の形態では、閾値が連続する)2つの2値画像において、一方の2値画像における各筋領域線分と、この筋領域線分が含まれる矩形表示領域に対応する他方の2値画像中の矩形表示領域内の筋領域線分のそれぞれとのグループ化の可否が判定される。
【0058】
図10は、2値化の際における閾値が隣接する2つの2値画像にそれぞれ含まれる筋領域線分724d,724eを重ねて示す図である。2つの筋領域線分724d,724eのグループ化の可否の判定の際には、まず、一方の筋領域線分724dを延長した直線R3(ただし、筋領域線分724dから延長した部分を破線にて示している。)が設定され、他方の筋領域線分724eの両端点725e,726eのそれぞれと直線R3との距離D7,D8が求められる。距離D7,D8の双方が所定の閾値以下である場合には、各筋領域線分724d,724eに対して、互いに直交する画素の配列方向(図10中のx方向およびy方向)に平行な辺を有する外接矩形727d,727eが求められ、これらの外接矩形727d,727eが少なくとも一部において互いに重なる場合には、筋領域線分724d,724eのグループ化が許可され、同一のグループに含められる。その一方で、一方の筋領域線分を延長した直線と他方の筋領域線分の両端点との間の距離が閾値よりも長い場合や、2つの筋領域線分の外接矩形が互いに重ならない場合には、これらの筋領域線分はグループ化されない。
【0059】
このようにして、各2値画像と閾値が隣接する他の2値画像との間において互いに重なるとみなされる筋領域線分を同一のグループに含めるグループ化が行われ、グループ化されない筋領域線分は削除される。これにより、それぞれが筋ムラを示す複数のグループが求められる(ステップS18)。領域グループ取得部64における上記処理は、閾値が隣接する2値画像において所定の扁平度となる閉領域である筋領域の位置が互いに重なる場合に、これらの筋領域をグループとして特定することと等価であるため、以下の説明では、グループ化された筋領域線分の集合を領域グループと呼ぶ。
【0060】
なお、本実施の形態では、2値画像の生成の際に、上閾値および下閾値を用いて値が背景値から離れた閉領域が特定されるが、上閾値を用いて導かれた2値画像と下閾値を用いて導かれた2値画像との間では、画像中の筋領域の種別が異なるものとされ、筋領域線分のグループ化は行われない。もちろん、領域グループ取得部64における筋領域線分のグループ化は他の手法により行われてもよい。
【0061】
また、領域グループ取得部64では、必要に応じて領域グループに含まれる複数の筋領域線分のうち最長のもの(以下、「代表筋領域線分」という。)が特定され、代表筋領域線分を除く全ての筋領域線分が代表筋領域線分上に重ね合わせられる。具体的には、図10に示す筋領域線分724dが代表筋領域線分として特定されたものとすると、代表筋領域線分724dと同じ領域グループに含まれる他の筋領域線分724eのそれぞれは、各端点725d,726dから代表筋領域線分724dに下ろした垂線との交点728e,729eを端点とする線分に更新される。
【0062】
図11は、領域グループ73を説明するための図である。図11では上閾値を用いて導かれた複数の2値画像72を抽象的に示している。図11中の複数の2値画像72では上方に位置するものほど対応する閾値が大きくなっており、筋領域線分731,732,733a,733bの長さは対応する閾値が背景値から離れるに従って短くなっている。なお、図11中の筋領域線分733a,733bのように同じ2値画像に含まれるとともに同一の領域グループに属するものは、必要に応じて連結されてもよい。
【0063】
複数の2値画像においてそれぞれが筋ムラを示す複数の領域グループが求められると、筋ムラ強度取得部65では、各領域グループに関して、筋領域線分が存在する2値画像に対応する2値化の際の閾値の範囲が筋ムラ強度として取得される(ステップS19)。例えば、図11の場合では、筋領域線分が3個の2値画像72に存在するため、筋領域線分731,732,733a,733bを含む領域グループ73の筋ムラ強度は3とされる。そして、各領域グループの筋ムラ強度、および、当該領域グループの代表筋領域線分の長さ(以下、「筋ムラ長さ」という。)を後述する強度閾値および所定の長さ閾値とそれぞれ比較することにより、当該領域グループが示す筋ムラが許容されるか否かの判定(すなわち、欠陥か否かの判定)が行われる(ステップS20)。なお、筋ムラの許否の判定の際には、筋ムラ長さに代えて、例えば、領域グループの代表筋領域線分に対応する筋領域の面積を用いて、当該面積が所定の面積閾値と比較されてもよい。
【0064】
以上に説明したように、図1のムラ検査装置1では、基板9から得られる多階調の対象画像を複数の閾値にて2値化することにより複数の閾値にそれぞれ対応する複数の2値画像が取得され、複数の2値画像のそれぞれにおいて扁平度が所定値以上となる閉領域である筋領域が特定される。そして、複数の2値画像において、ほぼ同位置に存在するとともに同方向に伸びる筋領域の集合が筋ムラを示す領域グループとして求められ、各領域グループに関して、筋領域が存在する2値画像に対応する閾値の範囲が筋ムラ強度として取得される。これにより、ムラ検査装置1では、筋ムラを精度よく検出しつつ、筋ムラの強度を容易に取得することができる。
【0065】
筋領域特定部63では、2値画像において各閉領域のモーメントを算出して長手方向を決定した上でこの閉領域が筋領域か否かを特定することにより、閉領域が伸びる方向(閉領域の角度)に依存することなく、筋領域を精度よく特定することができる。また、長手方向が同一であり、長手方向に配列され、かつ、互いに近接する同一矩形表示領域内の複数の筋領域線分が1つの筋領域線分へと更新とされることにより、同一の筋ムラに由来する(すなわち、同一の領域グループに含まれる)可能性が高い複数の筋領域線分を1つの筋領域線分として扱うことができ、後続の領域グループ取得部64および筋ムラ強度取得部65における処理を効率よく行うことができる。
【0066】
図4の処理では、基板9上の筋ムラの許否の判定が筋ムラ強度に関する強度閾値を用いて行われるが、実際には、上記処理の前に、操作者により強度閾値が決定されて演算部6にて準備される。以下、強度閾値の決定の際におけるムラ検査装置1の処理について図12を参照しつつ説明する。
【0067】
操作者により強度閾値が決定される際には、図4の処理と同様にして領域グループが求められた後(ステップS18)、表示制御部66にて、各領域グループに属する筋領域線分のそれぞれが対象画像に重ねてディスプレイ55に表示される(ステップS21)。このとき、既述のように代表筋領域線分を除く全ての筋領域線分が代表筋領域線分上に重なるようにされており、表示制御部66では代表筋領域線分上の各位置において互いに重なる筋領域線分の個数に合わせて色が変更される。したがって、ディスプレイ55には部分的またはほぼ全体的に筋ムラ強度に応じた色となる線分が領域グループの存在位置を示すものとして表示されることとなり、各領域グループのおよその筋ムラ強度が特定可能となる。これにより、操作者が筋ムラが存在する対象画像中の位置を筋ムラ強度と共に確認することができ、基板9上の筋ムラの許否の判定に利用される強度閾値を容易に決定することが可能となる。決定された筋ムラ強度は操作者により入力部56を介して入力され、演算部6にて受け付けられる(ステップS22)。そして、入力された筋ムラ強度を用いつつ多数の基板に対する筋ムラの検査が上述した図4の処理に沿って行われる。なお、各領域グループのおよその筋ムラ強度が特定可能であるならば、領域グループの存在位置を示す線分の表示態様はいかなるものであってもよく、例えば当該線分の幅が変更されてもよい。
【0068】
図12に示す処理では、筋領域特定部63および領域グループ取得部64における処理が完了することにより、領域グループに属する各筋領域線分と閾値とが対応付けられており、表示制御部66により筋ムラ強度が特定可能に筋領域線分が表示されるため、実質的には、筋領域特定部63および領域グループ取得部64における処理が筋ムラ強度を取得する処理を含んでいる。
【0069】
次に、表示制御部66による表示制御の他の例について図13を参照しつつ説明する。本処理例では、各領域グループの筋ムラ強度が取得されると(図4:ステップS19)、複数の領域グループのうち操作者により予め設定される筋ムラ強度の範囲(以下、「設定強度範囲」という。)に属する領域グループの存在位置を示す線分のみが対象画像に重ねてディスプレイ55に表示される(ステップS31)。これにより、必要な筋ムラのみが特定可能とされ、当該筋ムラを効率よく把握することが可能となる。
【0070】
また、操作者が筋ムラ強度の他の範囲に含まれる領域グループを確認する場合には(ステップS32)、入力部56を介して操作者により設定強度範囲の変更の入力が行われる。当該入力が演算部6にて受け付けられると(ステップS33)、表示制御部66では設定強度範囲が変更され、複数の領域グループのうち変更後の設定強度範囲に属する領域グループの存在位置を示す線分のみが対象画像に重ねてディスプレイ55に再表示される(ステップS34)。操作者による設定強度範囲の変更および領域グループの存在位置を示す線分の再表示は必要に応じて繰り返される(ステップS35,S33,S34)。これにより、操作者が実際の筋ムラと筋ムラ強度との関係をより的確に把握することが可能となり、その結果、筋ムラの許否の判定に利用される強度閾値をより適切に決定することが可能となる。なお、上記と同様にして、領域グループが示す筋ムラの長さ(すなわち、代表筋領域線分の長さ)や、領域グループの代表筋領域線分に対応する筋領域の面積、あるいは、領域グループに含まれる筋領域が存在する2値画像に対応する閾値の範囲の代表値(例えば、平均値)等、筋ムラ強度以外の値に基づいて領域グループの存在位置を示す線分がディスプレイ55に表示されてもよい。
【0071】
また、ムラ検査装置1の筋ムラ強度取得部65では、対象画像中の各矩形表示領域内の筋ムラの筋ムラ強度の合計が取得されてもよい。例えば、領域グループ取得部64にて筋ムラを示す各領域グループが求められた後(図4:ステップS18)、筋ムラ強度取得部65により各領域グループに含まれる筋領域線分の長さの和が当該領域グループの筋ムラ強度として取得され、基板9の複数のパネル(となる部位)のそれぞれに対応する対象画像中の矩形表示領域内に含まれる筋ムラの筋ムラ強度の合計がさらに取得される(ステップS19)。これにより、基板9の複数のパネルのそれぞれにおける筋ムラの程度を数値化して取得することができ、その結果、各パネルの許否の判定を容易に行うことができる。
【0072】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0073】
図1のムラ検査装置1では、筋領域特定部63において筋領域が筋領域線分として特定されることなく筋ムラ検査が行われてもよい。この場合、筋領域特定部63では、長手方向が同一であり、長手方向に配列され、かつ、互いに近接する複数の筋領域が1つの筋領域へと更新され、領域グループ取得部64では、閾値が隣接する2つの2値画像において互いに重なる筋領域を同一の領域グループに含めるグループ化によりそれぞれが筋ムラを示す領域グループが求められ、筋ムラ強度取得部65では、各領域グループに関して筋領域が存在する2値画像に対応する閾値、または、筋領域の長手方向の長さもしくは面積の和が筋ムラ強度として取得される。また、表示制御部66では、例えば、領域グループに含まれる複数の筋領域のうち長手方向の長さが最長となる代表筋領域のエッジを示す線が対象画像に重ねて表示され、筋ムラが存在する領域が確認可能とされる。ただし、筋ムラの検出および筋ムラ強度の取得を容易に行うという観点では、筋領域特定部63において筋領域が当該領域を代表する筋領域線分にて特定され、領域グループ取得部64および筋ムラ強度取得部65において、筋領域線分が、対応する筋領域として扱われて処理の簡素化が図られることが好ましい。
【0074】
領域グループ取得部64では、1つの領域グループのみが求められる場合もあり、この場合も筋ムラ強度取得部65および表示制御部66における処理は上記と同様である。すなわち、ムラ検査装置1では、領域グループ取得部64にて少なくとも1つの領域グループが求められる場合に、筋ムラ強度取得部65にて少なくとも1つの領域グループのそれぞれに関して筋ムラ強度が取得され、表示制御部66により少なくとも1つの領域グループの存在位置または少なくとも1つの領域グループのうちの特定のものの存在位置が対象画像に重ねて表示される。
【0075】
対象画像の2値化の際における複数の閾値は必ずしも連続する値である必要はなく、また、上閾値および下閾値の双方が用いられる必要もない。2値画像取得部62にて生成される2値画像の個数は2以上であるならば任意の個数とされてよいが、演算部6における演算量を低減しつつ、筋ムラの検出および筋ムラ強度の取得を一定の精度にて実現するという観点では、5以上の閾値を用いて5以上の2値画像が取得されることが好ましい。
【0076】
ところで、撮像部41では基板9からの干渉光を受光することにより元画像が取得されるが、干渉光の強度は膜厚に対して周期的に変化するため、検査対象の基板上の膜の厚さが変更されると、元画像の平均濃度(画素値の平均値)も変化してしまう。したがって、上記実施の形態では、対象画像生成部61において数1〜数4を参照して説明した上記処理により画像の平均濃度がほぼ一定となる対象画像が準備され、2値画像取得部62における対象画像の2値化の際に一定の閾値を用いることが可能とされる。しかしながら、撮像部41が基板9を撮像する際に干渉光を用いない場合や、2値画像取得部62における2値化の閾値を元画像の平均濃度に合わせて変更する場合等には、撮像部41にて取得される元画像がそのまま対象画像とされ、元画像から複数の2値画像が取得されてもよい。すなわち、2値画像取得部62における2値化の対象とされる対象画像は、元画像または元画像から導かれる画像であればよい。
【0077】
また、筋領域特定部63では、2値画像中の各閉領域に対して必ずしもモーメントが求められる必要はなく、閉領域に対して予め定められた複数の方向に沿ってそれぞれ伸びる複数の外接矩形が求められ、これらの外接矩形のうち面積が最小となるものの長手方向の長さと長手方向に垂直な方向の幅との比が所定値と比較されて、当該閉領域が筋領域であるか否かが判定されてもよい。ただし、ある位置から様々な角度にて放射状に伸びる複数の筋領域(例えば、スピンコート方式の塗布装置を用いて基板上にレジストの膜を形成する際に、処理の直前の基板上に不要物が存在することによりこの不要物を起点として放射状に形成される筋ムラに起因するもの)等、筋領域を精度よく特定するには、演算量を低減するために、閉領域のモーメントを算出することにより筋領域が特定されることが好ましい。
【0078】
ムラ検査装置1において検査対象とされる基板は必ずしもレジスト膜等の薄膜が形成されたものでなくてもよい。また、ムラ検査装置1は、表示装置に用いられるガラス基板や半導体基板等、複数の部位に切断される予定の基板上の筋ムラの検査に特に適しているが、基板以外の対象物上の筋ムラの検査に利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】ムラ検査装置の構成を示す図である。
【図2】コンピュータの構成を示す図である。
【図3】コンピュータが実現する機能構成を示すブロック図である。
【図4】ムラ検査装置が基板上の筋ムラを検査する処理の流れを示す図である。
【図5】対象画像を示す図である。
【図6.A】2値画像を示す図である。
【図6.B】2値画像を示す図である。
【図6.C】2値画像を示す図である。
【図7】閉領域を示す図である。
【図8】筋領域線分の連結の可否の判定を説明するための図である。
【図9】筋領域線分の連結を説明するための図である。
【図10】2つの2値画像中の筋領域線分を重ねて示す図である。
【図11】領域グループを説明するための図である。
【図12】ムラ検査装置における他の処理の流れを示す図である。
【図13】ムラ検査装置におけるさらに他の処理の流れを示す図である。
【符号の説明】
【0080】
1 ムラ検査装置
5 コンピュータ
9 基板
41 撮像部
55 ディスプレイ
62 2値画像取得部
63 筋領域特定部
64 領域グループ取得部
65 筋ムラ強度取得部
71 対象画像
72 2値画像
73 領域グループ
541 プログラム
721a,721b 筋領域
724a,724b,724d,724e,731,732,733a,733b 筋領域線分
S15〜S19,S21,S31,S34 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物上の筋ムラを検査するムラ検査方法であって、
a)対象物から得られる多階調の対象画像を複数の閾値にて2値化することにより、前記複数の閾値にそれぞれ対応する複数の2値画像を取得する工程と、
b)前記複数の2値画像のそれぞれにおいて、長手方向における長さと前記長手方向に垂直な方向における幅との比が所定値以上となる筋領域を特定する工程と、
c)閾値が隣接する2つの2値画像において互いに重なる筋領域を同一の領域グループに含めるグループ化により、それぞれが筋ムラを示す少なくとも1つの領域グループを求める工程と、
d)前記少なくとも1つの領域グループのそれぞれに関して、筋領域が存在する2値画像に対応する閾値の範囲、または、筋領域の長さもしくは面積の和を、筋ムラ強度として取得する工程と、
を備えることを特徴とするムラ検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載のムラ検査方法であって、
e)前記少なくとも1つの領域グループのそれぞれのおよその筋ムラ強度を特定可能としつつ、前記少なくとも1つの領域グループの存在位置を表示部に表示する工程をさらに備えることを特徴とするムラ検査方法。
【請求項3】
請求項1に記載のムラ検査方法であって、
f)前記少なくとも1つの領域グループのうち所定の筋ムラ強度の範囲に属するものの存在位置のみを表示部に表示する工程をさらに備えることを特徴とするムラ検査方法。
【請求項4】
請求項3に記載のムラ検査方法であって、
前記f)工程が、前記筋ムラ強度の範囲を変更して前記少なくとも1つの領域グループのうち変更後の前記筋ムラ強度の範囲に属するものの存在位置のみを前記表示部に再表示する工程を備えることを特徴とするムラ検査方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のムラ検査方法であって、
前記b)工程において、筋領域が当該領域を代表する筋領域線分にて特定され、前記c)工程および前記d)工程において、筋領域線分が、対応する筋領域として扱われることを特徴とするムラ検査方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のムラ検査方法であって、
前記b)工程において、前記複数の2値画像のそれぞれにおいて閉領域のモーメントを算出して長手方向を決定した上で、前記閉領域が筋領域か否かが特定されることを特徴とするムラ検査方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のムラ検査方法であって、
前記b)工程において、長手方向が同一であり、前記長手方向に配列され、かつ、互いに近接する複数の筋領域が、1つの筋領域へと更新されることを特徴とするムラ検査方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載のムラ検査方法であって、
前記対象物が複数の部位に切断される予定の基板であり、
前記d)工程において、前記複数の部位のそれぞれに対応する領域における筋ムラ強度の合計が取得されることを特徴とするムラ検査方法。
【請求項9】
対象物上の筋ムラを検査するムラ検査装置であって、
対象物を撮像して多階調の元画像を取得する撮像部と、
前記元画像または前記元画像から導かれる画像である対象画像を複数の閾値にて2値化することにより、前記複数の閾値にそれぞれ対応する複数の2値画像を取得する2値画像取得部と、
前記複数の2値画像のそれぞれにおいて、長手方向における長さと前記長手方向に垂直な方向における幅との比が所定値以上となる筋領域を特定する筋領域特定部と、
閾値が隣接する2つの2値画像において互いに重なる筋領域を同一の領域グループに含めるグループ化により、それぞれが筋ムラを示す少なくとも1つの領域グループを求める領域グループ取得部と、
前記少なくとも1つの領域グループのそれぞれに関して、筋領域が存在する2値画像に対応する閾値の範囲、または、筋領域の長さもしくは面積の和を、筋ムラ強度として取得する筋ムラ強度取得部と、
を備えることを特徴とするムラ検査装置。
【請求項10】
対象物上の筋ムラをコンピュータに検査させるプログラムであって、前記プログラムの前記コンピュータによる実行は、前記コンピュータに、
a)対象物から得られる多階調の対象画像を複数の閾値にて2値化することにより、前記複数の閾値にそれぞれ対応する複数の2値画像を取得する工程と、
b)前記複数の2値画像のそれぞれにおいて、長手方向における長さと前記長手方向に垂直な方向における幅との比が所定値以上となる筋領域を特定する工程と、
c)閾値が隣接する2つの2値画像において互いに重なる筋領域を同一の領域グループに含めるグループ化により、それぞれが筋ムラを示す少なくとも1つの領域グループを求める工程と、
d)前記少なくとも1つの領域グループのそれぞれに関して、筋領域が存在する2値画像に対応する閾値の範囲、または、筋領域の長さもしくは面積の和を、筋ムラ強度として取得する工程と、
を実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6.A】
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【図6.B】
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【図6.C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−322258(P2007−322258A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153148(P2006−153148)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】