説明

モジュール内蔵コネクタ

【課題】内蔵された電気素子を効率的かつ確実に冷却可能とするモジュール内蔵コネクタを得る。
【解決手段】モジュール内蔵コネクタ10の本体カバー12の内部に配置される送信装置20は、電気素子30等が実装されたセラミック基板26を備え、電気素子30の上面にメタルカバー32が接触している。メタルカバー32の一部分が本体カバー12の挿入部14に配置されており、電気素子30で発生した熱は、メタルカバー32を介して第1カバー部材12Aの挿入部14に伝達される。モジュール内蔵コネクタ10を機器52のソケット46に接続することで、挿入部14が空調機器で温度管理された外装ケース54の内側に配置され、確実かつ効率的に冷却が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器のソケットに挿入されてソケット側の機器との間で電気信号の伝達を行うと共に、光素子と電気素子を有する光モジュールを内蔵し、機器間の光信号伝達用の光ファイバに接続されて用いられるモジュール内蔵コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザダイオード等の光素子とドライバIC等の電気素子を備え、電気信号を光信号に変換する光モジュールが、例えば特許文献1に開示されており、この種の光モジュールを内蔵し、機器のソケットに対して電気的に接続を行うモジュール内蔵コネクタが種々考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−40318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電気素子が発熱するため電気素子の冷却を行う必要があり、電気素子の確実な冷却方法が求められている。
本発明は、上記事実を考慮して、内蔵された電気素子を効率的かつ確実に冷却可能とするモジュール内蔵コネクタを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載のモジュール内蔵コネクタは、機器の外装ケースの内側に設けられたソケットに接続された時に、前記外装ケースの内側に侵入する第1の部分、及び前記外装ケースの外側に配置される第2の部分を有するコネクタ本体ケースと、前記コネクタ本体ケースの内部に設けられ、光信号の伝達を行う光素子、前記光素子と接続される電気素子、及び前記電気素子と接続され前記ソケットに設けられた第1の電気端子に対して接続可能な第2の電気端子を備えたモジュールと、少なくとも一部が前記第1の部分に配置され、前記電気素子で発生した熱を前記コネクタ本体ケースの前記第1の部分へ伝達する熱伝達手段と、を有する。
【0006】
請求項1に記載のモジュール内蔵コネクタは、光ファイバと接続されると共に機器の外装ケースの内側に設けられたソケットに対して接続されて使用される。
光素子は、接続された光ファイバとの間で光信号の伝達を行う。光素子としては、レーザ光を出射するレーザ素子、レーザ光を受光するフォトダイオード等がある。
電気素子は、光素子と電気的に接続されると共に、ソケットに設けられた第1の電気端子に接続可能な第2の電気端子に電気的に接続されるので、モジュール内蔵コネクタをソケットに接続することで、光素子〜ソケット間が電気的に接続される。
【0007】
電気素子が作動することで発生した熱は、熱伝達手段を介してコネクタ本体ケースの第1の部分へ伝達する。熱伝達手段は、少なくとも一部がコネクタ本体ケースの第1の部分に配置されているので、効率的に第1の部分へ熱を伝達することができる。
【0008】
ここで、空調機器によって冷却風が機器内部を循環して、内部温度が予め設定された温度範囲内に管理されているタイプの機器に対し、請求項1のモジュール内蔵コネクタを接続すると、外装ケース内で第1の部分に冷却風が当たり、電気素子からの熱を機器内で効率的に発散させて電気素子を効率的、且つ確実に冷却することが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のモジュール内蔵コネクタにおいて、前記熱伝達手段、及び前記コネクタ本体ケースは、金属材料で形成されている。
【0010】
熱伝達手段、及びコネクタ本体ケースを金属材料で形成することで、電気素子の熱を効率的に伝達し、外装ケース内で発散させることができ、冷却効率が更に向上する。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のモジュール内蔵コネクタにおいて、前記第1の部分に前記第2の電気端子が配置され、前記第2の部分に前記電気素子、及び前記光素子が配置されている。
【0012】
第1の部分に第2の電気端子を配置し、第2の部分に電気素子、及び光素子を配置する構成とすることで、第1の部分を第2の部分よりも小型にでき、小型のソケット等に対して十分に対応できる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のモジュール内蔵コネクタにおいて、前記熱伝達手段は、前記光ファイバの端部に設けられた光コネクタを接続する接続部、及び前記光ファイバと前記光素子との間で光の伝達を行う光学部品を支持する支持部を一体的に備え、前記コネクタ本体ケース内面と前記光学部品との最小間隔が、前記コネクタ本体ケース内面と前記熱伝達手段との最小間隔よりも大きく設定されている。
【0014】
熱伝達手段に、光ファイバの端部に設けられた光コネクタを接続する接続部、及び光ファイバと光素子との間で光の伝達を行う光学部品を支持する支持部を一体的に設けることで、これらを別部品として組み付ける場合に比較して部品点数を大幅に削減できる。
【0015】
また、コネクタ本体ケース内面と光学部品との最小間隔を、コネクタ本体ケース内面と熱伝達手段との最小間隔よりも大きく設定することで、部品の組み付け、コネクタ本体ケースの変形等に対し、光学部品とコネクタ本体ケースとの干渉を防止でき、光学特性の低下につながる光学部品のズレを防止できる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、請求項1に記載のモジュール内蔵コネクタによれば、内蔵された電気素子を効率的、且つ確実に冷却することが可能となる、という優れた効果を有する。
【0017】
請求項2に記載のモジュール内蔵コネクタによれば、冷却効率が更に向上する。
【0018】
請求項3に記載のモジュール内蔵コネクタによれば、小型のソケットに十分に対応できる。
【0019】
また、請求項4に記載のモジュール内蔵コネクタによれば、光学特性の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るモジュール内蔵コネクタ、及びソケットの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るモジュール内蔵コネクタの分解斜視図である。
【図3】(A)は本発明の一実施形態に係るモジュール内蔵コネクタの軸線に沿った縦断面図(図3(B)の3A−3A線断面図)であり、(B)はモジュール内蔵コネクタの軸線に沿った水平断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るモジュール内蔵コネクタのセラミック基板付近の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態に係るモジュール内蔵コネクタ10を図1乃至図4にしたがって説明する。
図1、及び図2に示すように、本実施形態のモジュール内蔵コネクタ10は、細長い中空の本体カバー12を備えており、この本体カバー12は、第1カバー部材12Aと第2カバー部材12Bとに軸線に沿って分割可能となっている。なお、本実施形態の第1カバー部材12A、及び第2カバー部材12Bは、金属(例えば、アルミニューム合金、ステンレス、銅等。熱伝導率の高いものが好ましい。)で形成されている。
【0022】
本体カバー12は、一端側に矩形の箱形状とされた挿入部14、挿入部14の他方側には挿入部14よりも大きな箱形状とされた中央部16、中央部16の他端側には円筒形状のファイバ挿通部18を備えている。
挿入部14、中央部16、及びファイバ挿通部18は互いに内部で連通しており、挿入部14の一端側、及びファイバ挿通部18の他端側は、夫々長手方向外側に向けて開口している。
【0023】
図2、及び図3に示すように、本体カバー12の内部には、送信装置20、及び受信装置22が配置されている。
送信装置20は、第1の電気基板24の片面側(カバー外面に近い側)に電気的に接続されるセラミック基板26が取り付けられている。セラミック基板26には、片面側に光素子28、及び光素子28に近接して配置される電気素子30等が実装されている。なお、光素子28と電気素子30とは、図示しないパターンによって電気的に接続されている。
送信装置20に設けた光素子28は、例えば、一列に整列された複数の発光点を有する面発光型半導体レーザ素子(VCSEL)であり、基板面の垂直方向にレーザ光を出射する。
また、セラミック基板26の片面側には、矩形の板形状とされた金属製(例えば、アルミニューム合金、ステンレス、銅等。熱伝導率の高いものが好ましい。)のメタルカバー32が図示しないネジで取り付けられている。
【0024】
図3に示すように、メタルカバー32には、光コネクタ34を接続するための接続部としての凹部36が形成されている。なお、メタルカバー32の凹部36に挿入された光コネクタ34が凹部36から抜けない様に、一般的に用いられている抜け止機構(ロック機構)等を接続部分に用いることができる。
【0025】
図4に示すように、セラミック基板26の光素子28のレーザ光出射側には光学部品40が配置されており、光学部品40はメタルカバー32の凹部36の底部側に接着剤等によって固定されている。この凹部36は、光学部品40の支持部としても機能している。
光学部品40は、光素子28の各光点から出射したレーザ光を、マイクロレンズ及び反射面(図示省略)等を介して光コネクタ34の各ファイバ端面に光結合させる。
【0026】
電気素子(本実施形態ではIC)30の上面は、メタルカバー32に接触しており、電気素子30の熱がメタルカバー32に伝達される様になっている。なお、電気素子30とメタルカバー32とは、直接接触させても良く、金属板、熱伝導シート、放熱グリース等、周知の熱伝達材料を介在させても良い。
【0027】
メタルカバー32は、凹部36の形成されている側とは反対側が、薄肉に形成された熱伝達部32Aとされている。
ここで、図3(A)に示すように、メタルカバー32の熱伝達部32Aは、少なくとも一部分、本実施形態では半分以上の部分が、本体カバー12の挿入部14に配置されており、電気素子30で発生した熱は、メタルカバー32の熱伝達部32Aを介して第1カバー部材12Aの挿入部14に対して最短距離で伝達される様になっている。
なお、電気素子30で発生した熱が、メタルカバー32の熱伝達部32Aを介して第1カバー部材12Aの挿入部14に伝達されれば、熱伝達部32Aと第1カバー部材12Aとは若干の隙間(例えば、200μm)を開けていても良く、直接接触させても良く、金属板、熱伝導シート、放熱グリース等、周知の熱伝達材料を介在させても良い。
【0028】
図2、及び図3に示すように、第1の電気基板24の挿入部側には、第2の電気基板42が配置されており、第1の電気基板24と第2の電気基板42とはフレキシブル基板44を介して電気的に接続されている。
【0029】
なお、第2の電気基板42のフレキシブル基板44とは反対側の端部には、後述するソケット46の端子46Aと接触する端子48が複数形成されている。これらの端子48は、図示しないパターンを介して電気素子30と電気的に接続されている。
【0030】
また、図4に示すように、本体カバー12の中央部16では、メタルカバー32の表面、即ち、第1カバー部材12Aを向いている面よりも、光学部品40の第1カバー部材12Aを向いている面が低く設定され、光学部品40が第1カバー部材12Aの内面から確実に離されている(例えば、400μm)。これにより、第1カバー部材12Aが光学部品40に接触することが防止され、第1カバー部材12Aが光学部品40に接触することに起因する光学部品40のズレが防止される。なお、光コネクタ34も第1カバー部材12Aの内面から離されている。
【0031】
図3(A)に示すように、本体カバー12の内部には、送信装置20の反対側に、送信装置20と略同形状の受信装置22が対称的に配置されている。
受信装置22と送信装置20との主たる相違点は、受信装置22の光素子28がレーザ光を受光するフォトダイオードであり、電気素子30がレーザ光を受けて電気信号に変換するフォトダイオードとなっている点である。
【0032】
この受信装置22においても、メタルカバー32の熱伝達部32Aは、半分以上の部分が本体カバー12の挿入部14に配置されており、電気素子30で発生した熱は、メタルカバー32の熱伝達部32Aを介して第2カバー部材12Bの挿入部14に伝達される様になっている。
【0033】
(作用)
次に、本実施形態のモジュール内蔵コネクタ10の作用を説明する。
本実施形態のモジュール内蔵コネクタ10は、先ず、送信装置20においては、メタルカバー32の凹部36に送信用の光ファイバ50が接続された送信用の光コネクタ34を挿入する。光ファイバ50は、ファイバ挿通部18を介してモジュール内蔵コネクタ10の外部へ取り出す。なお、受信装置22においても送信装置20と同様に接続固定を行う。
【0034】
送信装置20、及び受信装置22を本体カバー12の内部に配置した後、図3に示すように、モジュール内蔵コネクタ10を、機器52の外装ケース(筐体)54に形成された挿入口56を介して機器内部に配置されたソケット46に接続する。
これにより、ソケット46の端子46Aにモジュール内蔵コネクタ10の端子48が接触し、送信装置20、及び受信装置22が機器側と電気的に接続される。
本実施形態では、モジュール内蔵コネクタ10を機器52のソケット46に接続することで、挿入部14の殆どの部分が外装ケース54の内側に配置されることとなる。
【0035】
この機器52は、空調機器によって冷却風が機器内部を循環しており、機器52の内部温度が予め設定された温度範囲内に管理されているものである。
したがって、機器52が作動し、信号の送受信等により電気素子30が発熱した場合、電気素子30の熱はメタルカバー32を介して本体カバー12の挿入部14に伝達され、挿入部14の表面から放熱される。挿入部14には、外装ケース内を循環する冷却風が当たるので、電気素子30を確実、かつ効率的に冷却することができる。
【0036】
機器52の内部温度よりも機器52の設置されている環境温度(機器外部の温度)が高い場合も想定されるが、機器52の内部温度が予め設定された温度範囲内に管理されているため、電気素子30の冷却は環境温度の影響を受け難く、電気素子30の冷却を確実に行うことができる。
また、電気素子30の熱は、本体カバー12の中央部16、及びファイバ挿通部18にも伝達されるので、電気素子30の熱の一部分は外装ケース54の外側の雰囲気中にも放熱される。
【0037】
[その他の実施形態]
なお、上記実施形態では、モジュール内蔵コネクタ10の内部に互いに別体とされた送信装置20と受信装置22とが配置されていたが、何れか一方のみが配置される構成であっても良く、1つの基板にレーザ素子、及びフォトダイオードを備えた送受信装置(送信装置と受信装置とが一体となっているもの)をモジュール内蔵コネクタ10の内部に配置しても良い。
【0038】
上記実施形態では、モジュール内蔵コネクタ10の本体カバー12、及びメタルカバー32が金属製であったが、熱伝導が良好であれば、セラミックス、合成樹脂等の金属以外の材料から形成されていても良い。
【0039】
上記実施形態では、熱伝達部32Aを矩形の平板形状としているが、本体カバー12との熱伝達が良好であればその形状は、矩形の平板形状以外であっても良い。
【0040】
上記実施形態では、電気素子30がICであったが、電気素子30は発熱するものであればIC以外であっても良い。
【0041】
冷却効率を高めるには、電気素子30を可能な限り挿入部14に接近させることが好ましいのは勿論である。上記実施形態では、電気素子30を本体カバー12の挿入部14に配置していないが、本体カバー12の挿入部14に電気素子30を配置する余裕があれば、電気素子30を挿入部14に配置しても良い。
【0042】
上記実施形態では、送信装置20の光素子28が複数の発光点を有する面発光型半導体レーザ素子(VCSEL)であったが、他の形式のレーザ素子であっても良い。
【符号の説明】
【0043】
10 モジュール内蔵コネクタ
12 コネクタ本体カバー
14 挿入部(第1の部分)
16 中央部(第2の部分)
18 ファイバ挿通部(第2の部分)
20 送信装置(モジュール)
22 受信装置(モジュール)
28 光素子
30 電気素子
32 メタルカバー(熱伝達手段)
36 凹部(接続部、支持部)
40 光学部品
46 ソケット
46A 端子(第1の電気端子)
48 端子(第2の電気端子)
52 機器
54 外装ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の外装ケースの内側に設けられたソケットに接続された時に、前記外装ケースの内側に侵入する第1の部分、及び前記外装ケースの外側に配置される第2の部分を有するコネクタ本体ケースと、
前記コネクタ本体ケースの内部に設けられ、光信号の伝達を行う光素子、前記光素子と接続される電気素子、及び前記電気素子と接続され前記ソケットに設けられた第1の電気端子に対して接続可能な第2の電気端子を備えたモジュールと、
少なくとも一部が前記第1の部分に配置され、前記電気素子で発生した熱を前記コネクタ本体ケースの前記第1の部分へ伝達する熱伝達手段と、
を有するモジュール内蔵コネクタ。
【請求項2】
前記熱伝達手段、及び前記コネクタ本体ケースは、金属材料で形成されている、請求項1に記載のモジュール内蔵コネクタ。
【請求項3】
前記第1の部分に前記第2の電気端子が配置され、前記第2の部分に前記電気素子、及び前記光素子が配置されている、請求項1または請求項2に記載のモジュール内蔵コネクタ。
【請求項4】
前記熱伝達手段は、前記光ファイバの端部に設けられた光コネクタを接続する接続部、及び前記光ファイバと前記光素子との間で光の伝達を行う光学部品を支持する支持部を一体的に備え、
前記コネクタ本体ケース内面と前記光学部品との最小間隔が、前記コネクタ本体ケース内面と前記熱伝達手段との最小間隔よりも大きく設定されている、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のモジュール内蔵コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−205102(P2011−205102A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66425(P2011−66425)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(591043064)モレックス インコーポレイテド (441)
【氏名又は名称原語表記】MOLEX INCORPORATED
【Fターム(参考)】