説明

モータ、ファンおよびモータの製造方法

【課題】モータの回転を制御する制御回路を搭載した回路基板を小型化する。
【解決手段】モータは、静止部と回転部と軸受とを備え、静止部が軸受が挿入される軸受ホルダと、軸受ホルダの下部から径方向外方に広がるベース部と、軸受ホルダの外周に固定されるステータと、ベース部上に固定され一部がステータと軸方向に重なる回路基板224とセンサ部225とを備え、回路基板224の周方向における両側の端部と中心軸とのなす角が180度未満であり、センサ部225がホール素子を有し、回路基板224から周方向に離れて配置されるパッケージ部71と、パッケージ部71から回路基板224に平行に延びて回路基板224に接続される複数のリード線72とを備え、パッケージ部71が中心軸J1を中心として回路基板224の中心軸J1から最も離れた位置を通る円内に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式のモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、様々な家電製品や電子機器の筐体内部から、熱を排出するための冷却ファンが設けられる。特開昭58−79461号公報に開示されるファンの電動機は、回転子と、固定子と、金属ケースと、絶縁用円板と、センサと、を備える。金属ケースは、軸方向に延びる壁であるカラーと、中心軸に垂直な端部壁と、を備える。固定子は、カラーの内側面に固定される。回転子は、固定子の内側に配置される。端部壁には、絶縁用円板が固定される。絶縁用円板には、凹陥部が設けられる。センサは、凹陥部に収納された状態にて回転子の永久磁石と対向する。また、センサの端部壁側の面は、端部壁に設けられた突起部に当接する。センサの端子は、径方向外方に向かってから端部壁から離れる方向に湾曲し、接続線に接続される。
【特許文献1】特開昭58−79461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、モータには、ベース部上にモータの回転を制御する制御回路を搭載した回路基板が設けられるものがある。回路基板は、回転部のロータマグネットの磁極の位置を検出するセンサ部を有する。このため、回路基板には、センサ部を配置するためのスペースを設ける必要があり、回路基板の面積を小さくすることができない。その結果、モータの製造コストを削減することができない。また、センサ部を回路基板の外部に配置するために、単純にセンサ部が配置される領域を切り欠くだけでは回路基板の形状が複雑になり、回路基板に外接する矩形の大きさは余り小さくならない。一般的にモータに用いられる回路基板は、1つの母材から複数個の回路基板を切り取り使用されることが多い。したがって、回路基板に外接する矩形の大きさが大きいと、1つの母材から切り出すことができる回路基板の数は増えない。
【0004】
本発明は、回路基板を小さくすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の例示的なモータは、静止部と、ロータマグネットを有する回転部と、前記静止部に対して中心軸を中心に前記回転部を回転可能に支持する軸受と、を備え、前記静止部が、前記軸受が挿入される円筒状の軸受ホルダと、前記軸受ホルダの下部から径方向外方に広がるベース部と、前記ロータマグネットの内側にて、前記軸受ホルダの外周に固定されるステータと、前記ベース部上に固定され、一部が前記ステータと軸方向に重なる回路基板と、前記ロータマグネットにより形成される磁界を検出するセンサ部と、を備え、前記ステータが、周方向に等間隔に配置された4つのティースを有するステータコアと、前記4つのティースに形成されたコイルと、を備え、前記回路基板の周方向における両側の端部と前記中心軸とのなす角が、180度未満であり、前記センサ部が、ホール素子を有し、前記回路基板から周方向に離れて配置されるパッケージ部と、前記パッケージ部から前記回路基板に平行に延びて前記回路基板に接続される複数のリード線と、を備え、前記パッケージ部が、前記中心軸を中心として前記回路基板の前記中心軸から最も離れた位置を通る円内に位置する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、回路基板を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、軸流ファンの断面図である。
【図2】図2は、軸流ファンの平面図である。
【図3】図3は、ベース部および軸受ホルダの平面図である。
【図4】図4は、ベース部の断面図である。
【図5】図5は、ベース部の断面図である。
【図6】図6は、回路基板の平面図である。
【図7】図7は、ベース部、軸受ホルダ、回路基板およびセンサ部の平面図である。
【図8】図8は、ベース部、回路基板およびセンサ部の断面図である。
【図9】図9は、ベース部、回路基板およびセンサ部の平面図である。
【図10】図10は、ベース部および回路基板の断面図である。
【図11】図11は、モータ部の静止部の平面図である。
【図12】図12は、静止部の組み立ての流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書では、軸流ファンの中心軸方向における図1の上側である紙面の左側を単に「上側」と呼び、下側である紙面の右側を単に「下側」と呼ぶ。なお、上下方向は、実際の機器に組み込まれたときの位置関係や方向を示すものではない。また、中心軸に平行な方向を「軸方向」と呼び、中心軸を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸を中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0009】
図1は、本発明の例示的な一の実施形態に係る軸流ファン1を示す断面図である。軸流ファン1は、例えば、電子レンジ等の家電製品に搭載される。
【0010】
軸流ファン1は、モータ部12と、ハウジング13と、複数のリブ14と、インペラ15と、を備える。本実施形態では、モータ部12は、2相モータである。モータ部12は、インペラ15を中心軸J1回りに回転する。ハウジング13は、略筒状である。ハウジング13の内側に、モータ部12およびインペラ15が位置する。複数のリブ14は、モータ部12とハウジング13とを接続する。軸流ファン1では図1中の上側からエアが取り込まれ、下側へと送出されるようにエアの流れが発生する。
【0011】
インペラ15は、略円筒状のカップ151と、複数の翼152と、を備える。図2に示すように、複数の翼152は、周方向に等ピッチにて配置され、カップ151の外側面から径方向外方へと伸びる。カップ151および翼152は樹脂の射出成形により1つの部材として形成される。
【0012】
図1に示すように、モータ部12は、アウタロータ型であり、回転組立体である回転部21と、静止組立体である静止部22と、含油スリーブである軸受23と、を備える。中心軸J1に沿って回転部21が静止部22の上側に位置する。回転部21は、ロータホルダ211と、ロータマグネット212と、シャフト213と、を備える。ロータホルダ211は、有蓋略円筒状の金属製である。ロータホルダ211の外周はカップ151により覆われる。これにより、インペラ15は、回転部21に取り付けられる。ロータホルダ211を樹脂にて形成し、ロータホルダ211がカップ151を兼ねてもよい。ロータマグネット212は、ロータホルダ211の円筒部の内側面に固定される。シャフト213は、ロータホルダ211の中央から下方に突出する。
【0013】
静止部22は、軸受ホルダ221と、ベース部222と、ステータ223と、回路基板224と、センサ部225と、を備える。センサ部225の数は1つである。ベース部222、軸受ホルダ221、ハウジング13およびリブ14は、樹脂の射出成型により1つの部材として形成される。軸受ホルダ221は、円筒状である。軸受23は、軸受ホルダ221に挿入される。軸受23には、シャフト213が挿入される。ベース部222は、円板状の底部41と、円環状の環状部42と、を備える。底部41は、軸受ホルダ221の下部から径方向外方に広がる。環状部42は、底部41の外縁から上方に延びる。環状部42の内側面421は中心軸J1に平行である。
【0014】
ステータ223は、中心軸J1を中心とする環状である。ステータ223は、ロータマグネット212の内側にて、軸受ホルダ221の外周に固定される。ステータ223は、軸受ホルダ221の外周に間接的に固定されてもよい。ステータ223は、ステータコア31と、コイル32と、を備える。ステータコア31は、薄板状の珪素鋼板が積層されて形成される。ステータコア31の表面は絶縁皮膜にて覆われる。ステータコア31には、径方向外方に向かって延びる4つのティース311が設けられる。ティース311に導線が巻回されることにより、コイル32が形成される。回路基板224は、ベース部222上に固定され、ステータ223に電気的に接続される。軸方向において、回路基板224の一部は、ステータ223と重なる。センサ部225は、ロータマグネット212の下端と軸方向に対向し、ロータマグネット212により形成される磁界を検出する。すなわち、センサ部225は、ロータマグネット212の磁極の位置を検出する。
【0015】
軸流ファン1では、シャフト213が軸受23によりベース部222に対して中心軸J1を中心に回転可能に支持される。これにより、回転部21およびインペラ15が静止部22に対して相対的に回転可能である。
【0016】
図3は、ベース部222を示す平面図である。ベース部222の底部41は、第1突出部411と、センサ配置部412と、2つの第2突出部413a,413bと、2つの基板載置部414と、リード線支持部415と、を備える。図4は、図3の矢印Aの位置におけるベース部222の断面図である。図3および図4に示すように、第1突出部411は、底部41の上面41aから上方に向かって突出する。第1突出部411は、平面視において、直線状に延びる第1直線部411aと、第1直線部411aの両端部から互いに平行かつ同じ向きに延びる2つの第2直線部411bと、を備える。第2直線部411bは、載置予定の回路基板224に向かう方向に延びる。図4では、第2直線部411b以外の奥側の形状は図示していない。
【0017】
第1突出部411の第1直線部411aの内側の面511、および、第2直線部411bの内側の面512は中心軸J1に平行である。後述するように、面511,512は、センサ部225の位置決めに利用される面であり、以下、面511,512をそれぞれ、「センサ位置決め面511」および「センサ位置決め面512」と呼ぶ。センサ配置部412は、第1突出部411の内側に設けられ、上面41aから上方に向かって僅かに突出する。平面視において、センサ配置部412は略矩形である。
【0018】
図3に示すように、2つの第2突出部413a,413bは上面41aから上方に向かって突出する。第2突出部413a,413bはそれぞれ、平面視において矩形である。図5は、図3の矢印Bの位置におけるベース部222の断面図である。図5では、第2突出部413b以外の奥側の形状は図示していない。後述の図10においても同様である。第2突出部413aの図5における左側、すわなち、図3における右下の面531aは中心軸J1に平行である。第2突出部413bの図5の紙面に平行な面、すなわち、図3における右上の面531bは中心軸J1に平行である。また、面531a,531bは、互いに垂直である。第2突出部413a,413bの近傍には、1つの基板載置部414が設けられる。図3に示すように、もう1つの基板載置部414は、第1突出部411近傍に設けられる。
【0019】
図6は、回路基板224の平面図である。回路基板224のエッジ61は、第1直線エッジ611と、第2直線エッジ612と、曲線エッジ613と、を備える。第2直線エッジ612は、第1直線エッジ611の図6における下側の端部から第1直線エッジ611に対して垂直に延びる。曲線エッジ613は、第1直線エッジ611の図6における上側の端部と、第2直線エッジ612の第1直線エッジ611に接続する端部とは反対側の端部とを結ぶ。なお、曲線エッジ613は、全体としてはおよそ曲線状ではあるが、正確には、直線状の部位を含む。曲線エッジ613は、第1直線エッジ611から離れる方向に向かって凸となる。このように、回路基板224のエッジ61の形状は、直線および外方に向かって凸となる曲線のみから構成され、各頂点においてエッジ61が外方に向かって凸である。
【0020】
回路基板224は上面に、3つの引出線接続ランド621と、4つのリード線接続ランド622と、を備える。引出線接続ランド621には、図1のコイル32からの引出線321が接続される。リード線接続ランド622には、センサ部225からのリード線が接続される。図6では、引出線接続ランド621およびリード線接続ランド622に平行斜線を付している。
【0021】
図7は、回路基板224およびセンサ部225が取り付けられたベース部222を示す図である。図8は、図7における第1突出部411近傍の断面図であり、図4に対応する。図7および図8に示すように、センサ部225は、パッケージ部71と、パッケージ部71から延びる4つのリード線72と、を備える。パッケージ部71は、ホール素子を樹脂にてパッケージした部位である。パッケージ部71は、平面視において略矩形であり、第1突出部411の内側に配置される。図8に示すように、パッケージ部71の側部711は、中心軸J1に平行である。リード線72は、パッケージ部71から回路基板224に向かって延びる。リード線72は、ベース部222の底部41の上面41aおよび回路基板224に対して平行であることが望ましい。センサ配置部412の上面412aは、軸方向においてパッケージ部71の下面712と当接または近接する。以下、上面412aを「センサ配置面412a」と呼ぶ。
【0022】
図9に示すように、パッケージ部71の3つの側部711は、第1突出部411のセンサ位置決め面511,512に当接または近接する。さらに、リード線支持部415が、パッケージ部71の残りの1つの側部711に当接または近接し、リード線支持部415および第1突出部411によりパッケージ部71の中心軸J1に垂直な方向における位置が決定される。リード線支持部415のパッケージ部71側の中心軸J1に平行な面も、センサ位置決め面として捉えられてよい。リード線72は、リード線支持部415により下方から支持された状態にて、回路基板224上のリード線接続ランド622に半田により接続されることが望ましい。
【0023】
図7に示すように、回路基板224は、図3の2つの基板載置部414上に載置される。この状態において、回路基板224の第1直線エッジ611がベース部222から上方に延びる軸受ホルダ221に近接する。第1直線エッジ611は、軸受ホルダ221の外側面に当接してもよい。回路基板224では、第1直線エッジ611と第2直線エッジ612とにより形成される角部614、および、第1直線エッジ611と曲線エッジ613とにより形成される角部615は直角である。回路基板224を中心軸J1から径方向外方に向かって見た場合に、角部614,615が回路基板224の周方向における両側の端部であり、角部614,615と中心軸J1とのなす角は、180度未満である。
【0024】
図10は、ベース部222の図7における第2突出部413a近傍の断面図であり、図5に対応する。図7および図10に示すように、回路基板224の第1直線エッジ611と第2直線エッジ612とにより形成される角部614が、2つの第2突出部413a,413bの面531a,531bに当接または近接する。また、図7に示す回路基板224の曲線エッジ613の一部が、ベース部222の環状部42の内側面421に当接または近接する。モータ部12では、第2突出部413a,413bの面531a,531bおよび環状部42の内側面421が、回路基板224の中心軸J1に垂直な方向における位置を決定する基板位置決め面となっている。以下、面531aを「基板位置決め面531a」と呼び、面531bを「基板位置決め面531b」と呼ぶ。
【0025】
モータ部12では、センサ部225のパッケージ部71が、回路基板224から周方向に離れて配置される。また、パッケージ部71は、環状部42の内側面421の内側、すなわち、中心軸J1を中心として回路基板224の中心軸J1から最も離れた位置を通る円内に位置する。
【0026】
図11は、静止部22の平面図である。ステータ223の4つティース311は、周方向に等間隔に配置される。回路基板224は、図11における右側のティース311の先端と下側のティース311の先端との間の間隙311aを跨ぐ。既述のように、図7に示す回路基板224の周方向における両側の角部614,615と中心軸J1とのなす角が180度未満であることから、回路基板224は、2以上の間隙311aを跨がない。
【0027】
コイル32から引き出された3つの引出線321は、回路基板224の3つの引出線接続ランド621に半田付けされる。図11では、引出線の半田に平行斜線を付している。全ての引出線接続ランド621のそれぞれの中心は、平面視した際にステータ223の径方向外側に位置する。引出線接続ランド621の中心とは、半田付けを行う際の目標となる位置であり、典型的には重心である。中心がステータ223の径方向外側に位置するのであれば、引出線接続ランド621の一部は、ステータ223と軸方向に重なってもよい。全てのリード線72のリード線接続ランド622に接続された端部も、平面視した際にステータ223の径方向外側に位置する。ただし、径方向に配列されたリード線のうち最も径方向内側に位置するものの一部は、ステータ223と軸方向に重なる。
【0028】
モータ部12では、リード線72および引出線321が回路基板224に直接接続されるため、カラゲピンが利用される場合に比べて、部品点数を少なくすることができる。また、センサ部225が第1突出部411内に強く固定される場合は、回路基板224およびセンサ部225が、ベース部222に直接的に固定されることから、モータ部12の回転や外力によりベース部222が振動しても、回路基板224およびセンサ部225がベース部222の振動に追従する。これにより、リード線72がリード線接続ランド622から剥離する、いわゆる、ランド剥がれや、リード線72が折れてしまう、いわゆる、ピン折れの可能性が低減される。
【0029】
次に、軸流ファン1の組み立ての流れ、特に、モータ部12の静止部22の組み立ての流れについて図12を参照しつつ説明する。軸流ファン1が組み立てられる際には、まず、図7に示すように、回路基板224が、角部614を基板位置決め面531a,531bの間に位置させつつ環状部42の内側面421の内側に嵌め込まれ、ベース部222上に固定される(ステップS11)。次に、図11に示すように、ステータ223が軸受ホルダ221の外周に固定される(ステップS12)。ステータ223のコイル32からの引出線321は、回路基板224の引出線接続ランド621に半田付けされる(ステップS13)。
【0030】
引出線321が回路基板224に半田付けされると、ベース部222の第1突出部411の内側に、センサ部225のパッケージ部71が配置される。この状態にて、リード線72の端部はリード線接続ランド622上に位置する。すなわち、図9に示すように、センサ位置決め面511,512が、パッケージ部71の位置決めを行うことにより、リード線72の端部をリード線接続ランド622上に容易に位置させることができる。そして、当該端部が、リード線接続ランド622に半田付けされる(ステップS14)。回路基板224では、リード線接続ランド622および引出線接続ランド621がステータ223の径方向外側に位置することにより、リード線72および引出線321の半田付けを容易に行うことができる。
【0031】
図9に示すように、センサ部225では、パッケージ部71の3つの側部711が、センサ位置決め面511,512に当接または近接するため、治具を用いることなく半田付けの作業中のセンサ部225の位置ずれが防止される。その結果、ランド剥がれやピン折れが防止される。図8に示すように、センサ部225の下面712は、通常、センサ配置部412のセンサ配置面412aに当接するが、半田付けの作業後にセンサ配置面412aから僅かに離間してもよい。モータ部12では、半田付けの際にパッケージ部71の下面712と当接するセンサ配置面412aが設けられることにより、センサ部225をベース部222上に容易に取り付けることができる。また、安定した質の半田付けを行うことができる。
【0032】
その後、図1に示す軸受ホルダ221の内側に、軸受23が挿入される。軸受23には、回転部21が取り付けられる。最後に、回転部21にインペラ15が固定されて軸流ファン1の組み立てが完了する。
【0033】
以上、軸流ファン1の構造および組み立ての流れについて説明したが、モータ部12では、回路基板224上にセンサ部225を配置するスペースが不要であるため、回路基板224の面積を小さくすることができる。さらに、回路基板224の周方向における両側の端部と中心軸J1とのなす角が180度未満となるように回路基板224を設計することにより、回路基板224の外形を小さくすることが可能となる。これにより、1つの母材から切り出すことができる回路基板の取り数を増やすことができる。その結果、回路基板224を安価に製造することができ、モータ部12の製造コストを削減することができる。
【0034】
モータ部12では、仮に、センサ部225のパッケージ部71を、環状部42の内側、かつ、回路基板224の径方向外側に設けようとすると、回路基板224の形状をパッケージ部71を避ける複雑なものにしないと回路基板224の面積を確保することができない。その結果、母材からの回路基板の取り数が減ってしまう。これに対し、モータ部12では、パッケージ部71が、環状部42の内側にて、回路基板224から周方向に離れて配置される。これにより、回路基板224を単純な形状として回路基板224に外接する最小矩形の大きさを小さくすることができ、母材からの取り数を増やすことができる。また、回路基板224の大きさを抑えつつ十分な大きさの引出線接続ランド621およびリード線接続ランド622を設けることができる。
【0035】
回路基板224では、さらに、エッジ61の形状が、直線および外方に向かって凸となる曲線からのみ構成され、かつ、各頂点においてエッジ61が外方に凸であることにより、エッジが内側に向かって窪む部位を有する回路基板に比べて、回路基板224の母材からの取り数をより増やすことができる。なお、エッジ61には、部材からの取り数に影響を与えない範囲で、第1直線エッジ611、第2直線エッジ612または曲線エッジ613に微小な凹部が含まれてもよい。
【0036】
ステータコア31が絶縁皮膜にて行われるため、インシュレータが利用されるモータに比べて、モータ部12を安価なものとすることができる。回路基板224の製造コストを削減する技術は、このような低価格のモータ部12に特に適している。
【0037】
ベース部222に第1突出部411が設けられることにより、センサ部225を回路基板224に容易に取り付けることができる。また、位置決め用の部品を利用する場合に比べて部品点数を抑えることができ、モータ部12の製造コストをより抑えることができる。位置決め用の部品の取付作業も不要となる。第2突出部413a,413bおよび環状部42が設けられることにより、センサ部225に対する回路基板224の相対位置を容易に固定することができる。これにより、センサ部225を回路基板224により容易に取り付けることができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、第1突出部411は、1つの第1直線部411aおよび1つの第2直線部411bのみにより構成されてもよい。第1突出部411では、パッケージ部71の互いに隣接する少なくとも2つの側部711と対向する面が設けられることにより、センサ部225の回路基板224に対する位置決めを容易に行うことができる。もちろん、上記実施形態のように4つの側部711と対向する面が設けられることにより、センサ部225の位置をより容易に決定することができる。
【0039】
上記実施形態では、およそ径方向に配列される4つのリード線72のうち、中心軸J1に近い端に位置するものが、ステータ223と軸方向に重なるが、全てのリード線72が、ステータの径方向外側に位置してもよい。少なくとも最も中心軸J1に近いリード線72以外のものがステータ223の外側に位置するようにセンサ部225を配置することにより、リード線72の回路基板224への半田付けを容易に行うことができる。
【0040】
上記実施形態では、全てのリード線接続ランド622の中心がステータ223の径方向外側に位置するが、これらのうちの1つがステータ223と軸方向に重なっても、通常、このリード線接続ランド622に半田付けを行うことができる。すなわち、最も径方向内方に位置するリード線接続ランド622以外のものがステータ223の外側に位置することにより、リード線72の回路基板224への半田付けを容易に行うことが実現される。
【0041】
上記実施形態では、リード線72の数は5であってもよい。モータ部12は、単相モータであってもよく、この場合、引出線321の数は2となる。
【0042】
回路基板224は、ベース部222の環状部42から内側に離れて位置してもよい。この場合、回路基板224の曲線エッジ613に当接して第2突出部413a,413bと共に回路基板224を決定する部位がベース部222に別途設けられる。回路基板224のエッジの形状は、三角形、矩形、台形等の様々な他の形状であってもよい。エッジは、直線のみから構成される必要はなく、外方に向かって凸となる曲線を様々な態様にて含んでよい。このように、回路基板224のエッジ61の形状が、直線および/または外方に向かって凸となる曲線のみから構成され、各頂点においてエッジが外方に向かって凸であることにより、母材からの回路基板224の取り数を増やすことができる。ベース部222も、四角形や六角形等の他の形状であってもよい。
【0043】
静止部22の組立作業では、回路基板224をベース部222に固定する工程と、ステータ223を軸受ホルダ221に固定する工程の間に、センサ部225をベース部222に配置する工程が行われてもよい。また、ステータ223を軸受ホルダ221に固定した後に、回路基板224をベース部222に固定してもよい。
【0044】
センサ部を回路基板から周方向に離してベース部に配置する手法は、軸流ファン以外に遠心ファン等の他のファンに適用されてもよい。
【0045】
上記実施形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせられてよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、軸流ファン等の様々なファンのモータとして利用可能であり、ファン以外の機器のモータとしても利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 軸流ファン
12 モータ部
15 インペラ
21 回転部
22 静止部
23 軸受
31 ステータコア
32 コイル
42 環状部
61 (回路基板の)エッジ
71 パッケージ部
72 リード線
212 ロータマグネット
221 軸受ホルダ
222 ベース部
223 ステータ
224 回路基板
225 センサ部
311 ティース
321 引出線
411 第1突出部
411a 第1直線部
411b 第2直線部
412 センサ配置部
412a センサ配置面
413a,413b 第2突出部
421 (環状部の)内側面
511,512 センサ位置決め面
531a,531b 基板位置決め面
611 第1直線エッジ
612 第2直線エッジ
613 曲線エッジ
614,615 (回路基板の)角部
621 引出線接続ランド
711 (パッケージ部の)側部
712 (パッケージ部の)下面
J1 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止部と、
ロータマグネットを有する回転部と、
前記静止部に対して中心軸を中心に前記回転部を回転可能に支持する軸受と、
を備え、
前記静止部が、
前記軸受が挿入される円筒状の軸受ホルダと、
前記軸受ホルダの下部から径方向外方に広がるベース部と、
前記ロータマグネットの内側にて、前記軸受ホルダの外周に固定されるステータと、
前記ベース部上に固定され、一部が前記ステータと軸方向に重なる回路基板と、
前記ロータマグネットにより形成される磁界を検出するセンサ部と、
を備え、
前記ステータが、
周方向に等間隔に配置された4つのティースを有するステータコアと、
前記4つのティースに形成されたコイルと、
を備え、
前記回路基板の周方向における両側の端部と前記中心軸とのなす角が、180度未満であり、
前記センサ部が、
ホール素子を有し、前記回路基板から周方向に離れて配置されるパッケージ部と、
前記パッケージ部から前記回路基板に平行に延びて前記回路基板に接続される複数のリード線と、
を備え、
前記パッケージ部が、前記中心軸を中心として前記回路基板の前記中心軸から最も離れた位置を通る円内に位置する、モータ。
【請求項2】
前記回路基板が、前記コイルの引出線が接続される複数のランドを有し、
前記複数のランドのそれぞれの中心が、前記ステータの径方向外側に位置する、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記複数のリード線の全て、または、前記複数のリード線の配列の端に位置するものを除く残りの全てが、前記ステータの径方向外側に位置する、請求項1に記載のモータ。
【請求項4】
前記ベース部が、軸方向において、前記パッケージ部の下面と当接または近接するセンサ配置面を備える、請求項1ないし3のいずれかに記載のモータ。
【請求項5】
前記ベース部が、前記中心軸に平行な面であって前記パッケージ部の互いに隣接する少なくとも2つの側部と対向するセンサ位置決め面を備える、請求項1ないし4のいずれかに記載のモータ。
【請求項6】
前記ベース部が、前記中心軸に平行な面であって前記回路基板の前記中心軸に垂直な方向における位置を決定する基板位置決め面をさらに備える、請求項4または5に記載のモータ。
【請求項7】
前記回路基板のエッジの形状が、直線および/または外方に向かって凸となる曲線から構成され、各頂点において前記エッジが外方に向かって凸である、請求項1ないし6のいずれかに記載のモータ。
【請求項8】
前記エッジが、
前記軸受ホルダに近接または当接する第1直線エッジと、
前記第1直線エッジの一方の端部から前記第1直線エッジに対して垂直に延びる第2直線エッジと、
前記第1直線エッジと前記第2直線エッジとを結び、前記第1直線エッジから離れる方向に向かって凸となる曲線エッジと、
を備える、請求項7に記載のモータ。
【請求項9】
前記ステータコアの表面が絶縁皮膜にて覆われる、請求項1ないし8のいずれかに記載のモータ。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載のモータと、
前記回転部に取り付けられたインペラと、
を備える、ファン。
【請求項11】
a)回路基板をベース部上に固定する工程と、
b)ステータを前記ベース部から上方に延びる円筒状の軸受ホルダの外周に固定する工程と、
c)前記b)工程よりも後に、前記ステータの4つのティースに形成されたコイルからの引出線を前記回路基板に接続する工程と、
d)前記a)工程よりも後に、センサ部を前記回路基板に接続する工程と、
を備え、
前記回路基板の周方向における両側の端部と中心軸とのなす角が、180度未満であり、前記a)工程および前記b)工程の後において、前記回路基板の一部が前記ステータと軸方向に重なり、
前記センサ部が、
ホール素子を有し、前記回路基板から周方向に離れて配置されるパッケージ部と、
前記パッケージ部から前記回路基板に平行に延びて前記回路基板に接続される複数のリード線と、
を備え、
前記d)工程において、前記パッケージ部が、前記中心軸を中心として前記回路基板の前記中心軸から最も離れた位置を通る円内に配置される、モータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−139058(P2012−139058A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290725(P2010−290725)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】