説明

モータ制御装置

【課題】従来技術によれば、過電流が発生した場合、比較器が過電流閾値との比較を行い、MOSFETをオフさせる構成となっている。この構成ではMOSFETをオフした場合にMOSFETのドレイン・ソース間電圧がVB−GNDの値となり、その後に比較器がモニターした場合、ドレイン・ソース間電圧が過電流閾値を越えてしまうため、比較器は再び過電流と検知してしまうため、正常状態に復帰することができない。
【解決手段】過電流時に、MOSFESTのドレイン・ソース間電圧が過電流閾値よりも大きくなった場合、MOSFETをオフする。その後、CPUがモータ端子の天絡、地絡を検出するために、モータ端子電圧のA/D値を用いて故障の診断を行う。その際、過電流検知の方法としてはコンパレータを用いるシートベルトリトラクタ用モータ制御装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートベルトリトラクタ用のモータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたモータ制御装置(ECU)は、モータ制御方法として、半導体スイッチング素子(MOSFET)で構成されるHブリッジ回路を用いている。また、ECUの過電流保護方法は、電流が流れた時にMOSFET自身のオン抵抗により生じるドレイン・ソース間電圧をアナログ・デジタル(A/D)変換し、あらかじめ、EEPROMなどの記憶装置に記憶された、過電流閾値との比較を行い、過電流の発生有無を判断する構成が用いられている。しかし、MOSFETのオン抵抗は個体差,温度差が大きいため、MOSFETドレイン・ソース間の電位差のばらつき下限を通常時の通電電流より大きな値にしてしまうと、ばらつき上限が大きくなってしまい、実際に過電流が発生した時にドレイン・ソース間電圧が過電流閾値にかかる前にMOSFETが破壊し、発火してしまうという問題があった。
【0003】
ここで、検査時に実使用条件で過電流を流し、MOSFETのドレイン・ソース間電圧をA/D変換し、あらかじめEEPROMなどの記憶装置に過電流の閾値として記憶させることで、個体差のばらつきを補正する技術がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−287399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によれば、過電流が発生した場合、比較器が過電流閾値との比較を行い、MOSFETをオフさせる構成となっている。この構成ではMOSFETをオフした場合にMOSFETのドレイン・ソース間電圧がVB−GNDの値となり、その後に比較器がモニターした場合、ドレイン・ソース間電圧が過電流閾値を越えてしまうため、比較器は再び過電流と検知してしまうため、正常状態に復帰することができない。
【0006】
また、過電流を検知しMOSFETをオフした場合、CPUも電源供給停止する構成となっているため、CPUが故障情報を得ることができない。
【0007】
更に、モータ端子の天絡,地絡の検出ができない。シートベルト用制御装置は通電電流が大きく、発熱が大きくなってしまうため、オン抵抗の大きいMOSFETは使用することができないが、オン抵抗の小さいMOSFETを使用する場合、A/Dの分解能が足りずに過電流検知が難しくなってしまう。
【0008】
例えば、オン抵抗5mΩのMOSFETを使用した場合、MOSFETのドレイン・ソース間の降下電圧Vdsは以下の式(1)で表される。
Vds=Ron×Im …(1)
【0009】
ここで、式(1)においてRonはMOSFETのオン抵抗を、Imはモータ電流を表す。
【0010】
乗員拘束モードの通電電流が40Aとすると、ドレイン・ソース間降下電圧ΔVdsは、ΔVds=5mΩ×40A=200mVとなる。一般にA/D変換回路は5VのVCCで駆動するため、電源を直接印加することはできず、分圧を行っている。例えば、電源は最大30V程度まで上がることがあるため、1/6に分圧を行った場合、分圧後のΔVdsは、200/6=33.3mVとなる。これを10bitのA/D変換回路を用いてデジタル値にA/D変換した場合、A/D変換後の値は33.3mV/5V×1023=6.82LSBとなる。
【0011】
この値は一般的なA/D変換回路の誤差程度に大きいため、A/D変換を用いてオン抵抗の小さなMOSFETのドレイン・ソース間電圧を測定するのは難しいという問題があった。
【0012】
このように、上記従来装置をシートベルトリトラクタに適応した場合は、過電流を検知しMOSFETをオフした場合に、CPUの電源供給も停止してしまい、比較器も過電流と認識し続けるため、誤検知の場合に復帰することができない。また、CPUが停止してしまうために、CPUが故障状態を検知できない。
【0013】
また、シートベルトリトラクタは通電電流が大きいため、過電流の閾値を大きく取る必要があるが、オン抵抗の大きなMOSFETを使用した場合、発熱が大きくなりすぎる可能性がある。一方、オン抵抗の小さいMOSFETを使用した場合は、A/Dの分解能が足りず過電流の検知が難しくなる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記問題を解決するために、本発明では、過電流時に、MOSFETのドレイン・ソース間電圧が過電流閾値よりも大きくなった場合、MOSFETをオフする。その後、CPUがモータ端子の天絡,地絡を検出するために、モータ端子電圧のA/D値を用いて故障の診断を行う。その際、過電流検知の方法としてはコンパレータを用いるシートベルトリトラクタ用モータ制御装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、過電流時に、MOSFETのドレイン・ソース間電圧が過電流閾値よりも大きくなった場合、MOSFETをオフする。その後、CPUがモータ端子電圧のA/D変換値を用いて診断を行い、モータ端子が天絡,地絡していた場合、故障を確定させる。また、過電流の検知が誤診断であった場合は再び所定の動作を開始させることができ、信頼性の高い制御が可能となる。
【0016】
また、過電流が発生し、MOSFETをオフした場合でも、CPUは動作しており、故障情報を得ることができるため信頼性が向上する。
【0017】
また、過電流の検出は、コンパレータを用いることで、オン抵抗の小さなMOSFETを用いた場合でも精度の高い過電流の検出を行う事が可能となる。
【0018】
また、過電流閾値は駆動モード毎に選択可能であり、検査時に電流を流してA/D値を測定することでMOSFETの固体差を補正して過電流閾値を選択できる。過電流閾値は、補正初期値を通常電流より小さく設定しておくことにより、万が一、設定値が初期値から更新されなかった場合でも、モータ動作せず、CPUで検知可能であるため、安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】車両における安全装置接続図。
【図2】シートへの乗員拘束図。
【図3】実施例1の制御回路図。
【図4】モータ電流の経路とMOSFETのオン信号波形を示す図。
【図5】過電流検出回路の内部構成図。
【図6】過電流検出の制御フロー図。
【図7】過電流検出時の波形を示す図。
【図8】実施例2の制御回路図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて実施例について説明する。
【実施例1】
【0021】
先ず図1に、車両における衝突安全装置の配置図を示す。車両112には、障害物との距離に応じた信号を出力する障害物センサ102が車両前方部に取り付けられている。障害物センサ102の出力信号は、障害物センサ102と電気的に接続された衝突判断コントローラ106に伝達される。また、車両の速度に応じた信号を出力する車輪速度センサ104の信号も、車輪速度センサ104と電気的に接続された衝突判断コントローラ106に伝達される。衝突判断コントローラ106は、障害物センサ102と車輪速度センサ104の信号に基づき、車両112が障害物と衝突するか否かを判断する。例えば、障害物センサ102の出力信号から得られた障害物との距離が所定の値より短く、かつ、車輪速度センサ104の出力信号から得られた車両速度が所定の値より速い場合には、衝突判断コントローラ106は車両112が障害物と衝突すると判断し、車両112が障害物と衝突する前に、ブレーキアシスト装置108とリトラクター100に指令信号を出力する。ブレーキアシスト装置108とシートベルト駆動コントローラ110は、衝突判断コントローラ106と電気的に接続されており、衝突判断コントローラ106の指令信号に基づき、それぞれ、あらかじめ定められた動作を実行する。
【0022】
図2に、シートへの乗員拘束図を示す。リトラクター100にはモータ200が内包されており、モータ200が回転する事によりシートベルトの巻き取りが可能となっている。ここで、モータは直流モータやブラシレスモータが考えられる。例えば、乗員202が車両112を運転している状態において、乗員202が車両前方に、微小ではあるが移動し、乗員202とシート204との間に空隙が生じている場合を考える。このような状況において、車両112が障害物と衝突した場合、乗員はシート204に拘束されていない状態であるため、シート204に強く打ちつけられてしまう。そのため、乗員202が重大な損傷を受ける場合が考えられた。しかし、本システムによれば、リトラクター100に内包されたモータ200により、車両112と障害物が衝突する前にシートベルト206を巻き取り、乗員202とシート204との間隙をなくす事が可能である。したがい、車両112と障害物が衝突する時点では、すでに乗員202をシート204に拘束した状態であるため、乗員202への衝撃を緩和し、乗員202の損傷を防ぐ事が可能である。
【0023】
シートベルト駆動コントローラ110によって制御されたモータ200の駆動により、前記リトラクター100は乗員202の安全を目的としたプリクラッシュ動作、快適性向上を目的とした自動フィッティングまたはシートベルト206の自動格納、乗員202に注意を呼びかける警告動作等の巻き取りが行われるようになっている。
【0024】
図3に本実施例に用いられる制御回路図を示す。バッテリと、エンジンにより駆動されるオルタネーターから供給される電源300がシートベルトリトラクタ用制御装置302に供給されると、シートベルトリトラクタ用制御装置302内部の電源回路304に車両バッテリ電圧が供給される。電源回路304は車両バッテリ電圧より信号処理を司るCentral Processing Unit 306(以下、CPU306)等の信号系の素子に供給する電圧VCC=5Vを生成する。また、この電源300はモータ駆動部分にも電力を供給している。また、電源回路304は、CPU306から定期的に信号を受け取り、CPU306の動作を監視する機能、また、CPU306をリセットする機能などを持つ。
【0025】
モータ駆動部分は4つのMOSFET(308a,308b,308c,308d)を用いたHブリッジで構成されている。CPU306はモータを駆動するために、PWM波形発生装置310に駆動モードに応じて信号を与える。PWM波形発生装置310はPWM信号を生成し、シャットダウン312を介して、モータ駆動部分を動作させるプリドライバ回路314にPWM信号を与える。プリドライバ回路314はMOSFET(308a,308b,308c,308d)のゲート電圧(VG308a,VG308b,VG308c,VG308d)を制御することでMOSFETをスイッチングし、モータ316に電力を供給する。
【0026】
シートベルトリトラクタの動作モードとしては、通常時のシートベルト巻き取り動作,緊急時の乗員拘束の動作や、警告動作、あるいは、シートベルトの巻き取りを解除する動作が考えられる。
【0027】
ここで、ハイサイド側に接続された、PchMOSFETは、例えば、昇圧回路を有する駆動回路によってはNchMOSFETでも代用可能である。
【0028】
シャットダウン312は、後述する過電流判定用装置からの過電流時のシャットダウン信号を受け取ることでプリドライバ回路314をシャットダウンする機能を備える。
【0029】
モータ駆動回路はモータ端子電圧診断回路として、PchMOSFET308a,NchMOSFET308cのドレイン端子部分(VDa)とGND間に接続されるモータ端子電圧診断抵抗a(318)と、PchMOSFET308b,NchMOSFET308dのドレイン端子部分(VDb)とVCC間に接続されるモータ端子電圧診断抵抗b(320)を備える。4つのMOSFET(308a,308b,308c,308d)がオフ状態の場合、モータ端子電圧は、このモータ端子電圧診断抵抗a(318),モータ端子電圧診断抵抗b(320)でVCCを分圧した中間電位となる。
【0030】
ハイサイドのPchMOSFET308a,308bの過電流検知機能として、ドレイン・ソース間電圧Vdsを測定している。PchMOSFET308a,308bのドレイン端子VDa,VDb及びPchMOSFET308a,308bのソース端子電圧(VS)はハイサイドA/D変換回路322aに入力され、デジタル値に変換される。デジタル値の情報はCPU306に入力される。CPU306は、入力された値を用いてモータ端子の状態診断を行う。
【0031】
また、同時にPchMOSFET308a,308bのドレイン端子VDa,VDb及びPchMOSFET308a,308bのソース端子電圧はハイサイド過電流検出回路324aに入力される。ハイサイド過電流検出回路324aは、事前に記憶装置326に記憶された過電流閾値とPchMOSFET308a、もしくはPchMOSFET308bのドレイン・ソース間電圧との比較を後述するようにコンパレータを用いて行う。
【0032】
ハイサイド過電流検出回路324aは過電流を検出した場合、シャットダウン312に信号を与え、シャットダウン312はプリドライバ回路314を停止させる。また、過電流を検知したことをCPU306に通知し、CPU306はPchMOSFET308a,308bのドレイン端子電圧のA/D変換値を用いて誤検知診断を行う。故障が確定した場合、必要であれば、外部のECUに故障情報を通信しても良い。
【0033】
この構成により、A/D変換回路の分解能では検出が難しかったオン抵抗の小さいMOSFETを使用した場合でも精度よく過電流を検知できるため、信頼性が向上する。
【0034】
記憶装置326は複数の閾値を備え、駆動するモードにより、閾値を選択可能であり、CPU306で制御可能である。通電電流は駆動するモード毎に決まっているため、事前に閾値を切替えることが可能である。また、過電流閾値は、補正初期値を通常電流よりも小さい値に設定しておくことで、設定値が初期値から更新されなかった場合や誤作動が起こった場合でもプリドライバをシャットダウンし、警告を出すことが可能である。また、シャットダウン後に、MOSFETのドレイン端子VDa,VDbのA/D変換値を用いて診断を行い、確認を行うまで、勝手にプリドライバを駆動しない構成としても良い。
【0035】
また、過電流閾値の算出は、MOSFETのオン抵抗は温度、ゲート電圧により変化する事が知られており、ゲート電圧と温度の最悪条件より算出したオン抵抗を用いることで、MOSFETのドレイン端子VDa,VDbが天絡,地絡した場合の貫通電流によるMOSFETのドレイン・ソース間電圧を算出することが可能である。
【0036】
ハイサイドPchMOSFET308a,308bに対して、ローサイドNchMOSFET308c,308dの過電流検出は、モータ電流検出抵抗328の上流の電圧VRaと下流の電圧VRbを用いて過電流の検出を行う。
【0037】
モータ電流検出抵抗328は、モータ電流が流れることで、両端に電位差が発生する。モータ電流検出抵抗328の両端の電圧VRa,VRbは増幅器330に入力され、増幅器330で増幅し、ローサイドA/D変換回路322bでデジタル値に変換され、そのデジタル値がCPU306に入力されて、モータ電流の診断を行う。
【0038】
また、同時にモータ電流検出抵抗328の両端の電圧VRa,VRbはローサイド過電流検出回路324bに入力される。ローサイド過電流検出回路324bは、事前に記憶装置326に記憶された過電流閾値と同時にモータ電流検出抵抗328の両端の電圧VRa,VRbとの比較を後述するようにコンパレータを用いて行う。
【0039】
ローサイド過電流検出回路324bは過電流を検出した場合、シャットダウン312に信号を与え、シャットダウン312はプリドライバ回路314を停止させる。
【0040】
なお、今回の回路構成は記憶装置326を内臓EEPROMとしたが、外付けのEEPROMやFLASH等の記憶装置を用いることも可能である。同様にシャットダウン312,プリドライバ回路314も外付け部品を使用する回路構成としても良い。
【0041】
シャットダウン時にプリドライバ回路314がMOSFET(308a,308b,308c,308d)をオフにする際に、MOSFETの制御速度を選択可能とし、MOSFETのスイッチング速度を緩慢にすることにより、MOSFETのアバランシェ破壊を防ぐことが可能となる。
【0042】
図4にモータ電流の経路と半導体スイッチング素子308のスイッチング状態を示す。(A)はシートベルト巻き取り時のモータ電流の経路と半導体スイッチング素子308のスイッチング状態を示す。
【0043】
PchMOSFET308aは常時オン状態(308aオン信号はHI)、NchMOSFET308cは常時オフ状態(308cオン信号はLO)となる。この時、ローサイドのNchMOSFET308dがオン状態とオフ状態を繰り返す(308dオン信号は正相PWM)。NchMOSFET308dがオン状態の時、モータ通電電流が流れる。NchMOSFET308dがオフ状態の時は、モータ316のインダクタンス成分により電流が流れ続ける(回生電流)NchMOSFET308dがオフ状態の時はPchMOSFET308bをオン状態にすることで、PchMOSFET308bの発熱を低減する(308bオン信号は逆相PWM)。
【0044】
(B)はシートベルトリリース時のモータ電流の経路と半導体スイッチング素子308のスイッチング状態を示す。リリース時は巻き取り時と逆方向にモータを駆動する必要がある。PchMOSFET308bが常時オン状態(308bオン信号はHI)、NchMOSFET308dは常時オフ状態(308dオン信号はLO)となる。この時ローサイドNchMOSFET308cがオン状態とオフ状態を繰り返す(308cオン信号は正相PWM)。NchMOSFET308cがオン状態の時、モータ通電電流が流れる。NchMOSFET308cがオフ状態の時は、モータ316のインダクタンス成分により電流が流れ続ける(回生電流)。ここで、PchMOSFET308aの寄生ダイオードを通り電流が流れるため、発熱が起こってしまう。そのため、NchMOSFET308cがオフ状態の時はPchMOSFET308aをオン状態にすることで、PchMOSFET308aの発熱を低減する(308aオン信号は逆相PWM)。
【0045】
図5に本実施例の過電流検出回路324a,324bの内部構成を示す。PchMOSFET308aの過電流検出は以下のように行う。まず、PchMOSFET308aのドレイン端子電圧VDa及びPchMOSFET308a,308bのソース端子電圧VSを差動回路a(402a)に入力し、PchMOSFETのドレイン・ソース間電圧を得る。得られたPchMOSFETのドレイン・ソース間電圧はコンパレータa(404a)の非反転入力端子に入力される。コンパレータa(404a)の反転入力端子には、事前に選択した過電流閾値であるVref1が入力されている。コンパレータa(404a)は非反転入力端子のドレイン・ソース間電圧が反転入力端子の閾値Vref1より小さい時はLO出力を、過電流時にドレイン・ソース間電圧が過電流閾値よりも大きくなった時に出力端子からHIを出力する。コンパレータa(404a)の出力電圧とPchMOSFET308aのオン信号はAND回路1(406)に入力される。これにより、PchMOSFET308aのオン信号と同期を取ることができる。
【0046】
PchMOSFET308bの過電流も同様に、PchMOSFET308bのドレイン端子電圧VDb及びPchMOSFET308a,308bのソース端子電圧VSを差動回路b(402b)に入力し、ドレイン・ソース間電圧を得る。得られたドレイン・ソース間電圧はコンパレータb(404b)の非反転入力端子に入力される。コンパレータb(404b)の反転入力端子には、事前に選択した過電流閾値であるVref1が入力されている。コンパレータb(404b)は非反転入力端子のドレイン・ソース間電圧が反転入力端子の閾値Vref1より小さい時はLO出力を、過電流時にドレイン・ソース間電圧が過電流閾値よりも大きくなった時に出力端子からHIを出力する。コンパレータb(404b)の出力電圧とPchMOSFET308bのオン信号はAND回路2(408)に入力される。これにより、PchMOSFET308aのオン信号と同期を取ることができる。
【0047】
ローサイドの過電流検出は以下のように行う。モータ電流検出抵抗328の両端の電圧VRa,VRbを差動回路c(402c)に入力し、モータ電流検出抵抗両端の電圧を得る。得られたモータ電流検出抵抗両端の電圧はコンパレータc(404c)の非反転入力端子に入力される。コンパレータc(404c)の反転入力端子には、事前に選択した過電流閾値であるVref2が入力されている。コンパレータc(404c)は非反転入力端子のモータ電流検出抵抗両端電圧が反転入力端子の閾値Vref2より小さい時はLO出力を、モータ電流検出抵抗両端電圧が過電流閾値よりも大きくなった時に出力端子からHIを出力する。
【0048】
AND回路1(406)とAND回路2(408)の出力はOR回路1(410)に入力されており、OR回路1(410)の出力とコンパレータc(404c)の出力はOR回路2(412)に入力される構成となっており、OR回路2(412)の出力電圧VshutはHI出力となると、シャットダウン回路にHIが入力され、MOSFETがシャットダウンされる構成となっている。
【0049】
尚、この時、どの経路で過電流を検知したか、CPU306に記憶させる構成であっても良い。
【0050】
図6に本実施の過電流検出のフローチャートを示す。バッテリと、エンジンにより駆動されるオルタネーターから供給される電源300がシートベルトリトラクタ用制御装置302に供給されると、シートベルトリトラクタ用制御装置302内部の電源回路304に車両バッテリ電圧が供給される。電源回路304は車両バッテリ電圧より信号処理を司るCPU306等の信号系の素子に供給する電圧VCC=5Vを生成し、動作を開始する(600)。次に、CPU306をリセットする(602)。その後、CPU306はPchMOSFET308a,308bのドレイン端子VDa,VDbの初期診断を始める(604)。初期診断を行い(606)VDa,VDbの電圧が中間電位ではなく、VBやGNDだった場合、CPU306はモータ端子が天絡,地絡状態であると判定を行い、故障確定する。この際、CPU306は故障と判断し(608)、制御を終了する。
【0051】
初期診断において、MOSFETのドレイン端子VDa,VDb電圧が正常値の中間電位を示した場合、モータ動作制御を開始する(612)。モータ制御開始後、コンパレータによるモータ動作中診断を開始する(614)。モータ動作中に過電流が検出されなければ、モータ動作を続ける。
【0052】
モータ動作中に過電流が検出された場合(616)、プリドライバ314をシャットダウンする(618)。検出されない場合、モータ再動作制御開始する(628)。
【0053】
プリドライバ314シャットダウン後、CPU306はMOSFETのドレイン端子VDa、VDbについてA/D変換の値により誤診断かどうか確認を開始する(620)。
【0054】
CPU306はMOSFETのドレイン端子VDa,VDb電圧と中間電位との比較を行う(622)、VDa,VDbが中間電位だった場合は、誤診断とみなし、中断したモータ動作を再始動する(624)。一方、VDa,VDb電圧が中間電位閾値より大きい場合や小さい場合、モータ端子が天絡,地絡状態であると判定を行い、故障と確定し(626)、制御を終了する。
【0055】
図7に過電流検知時の波形を示す。(A)はハイサイド過電流検出時の波形である。モータ停止状態では、MOSFETのゲート電圧(VG308a,VG308b,VG308c,VG308d)はオフ状態である。ここで、PchMOSFET308a,308bはPchMOSFETのため論理が逆になり、オン(オン信号がHI)の時、ゲート電圧VG308a,VG308bはLOとなる。この時、電流は流れていないため、ドレイン・ソース間電圧VdsはLO状態であり、シャットダウンコントロール部分に伝わるOR回路2(412)の出力電圧VshutはLO状態である。CPU306がモータ駆動する信号を出した時、例えば、シートベルトの巻き取り動作の場合、PchMOSFET308b,NchMOSFET308dがPWMスイッチングを行っており、308aは常時オン、308cは常時オフ状態である。ドレイン・ソース間電圧Vdsは308dがオンの時にモータ電流が増え、オフの時には回生電流が流れるため徐々にモータ電流は減少する。ここで、MOSFETのドレイン端子VDaが地絡した場合、過電流が流れ、ドレイン・ソース間電圧VdsがHIに張り付く、ここで、過電流閾値Vref1を超えるとシャットダウンと検知し、OR回路2(412)出力電圧VshutがHIとなり、プリドライバがMOSFET(308a,308b,308c,308d)をオフする。
【0056】
(B)はローサイド過電流検出時の波形である。モータ停止状態では、MOSFETのゲート電圧(VG308a,VG308b,VG308c,VG308d)はオフ状態である。モータ電流検出抵抗328の上流の電圧VRaと下流の電圧VRbの差VRa−VRbはLO状態である。その時、シャットダウンコントロール部分に伝わるOR回路2(412)の出力電圧VshutはLO状態である。CPU306がモータ駆動する信号を出した時、例えば、シートベルトの巻き取り動作の場合、PchMOSFET308b,NchMOSFET308dがPWMスイッチングを行っており、308aは常時オン、308cは常時オフ状態である。VRa−VRbは308dがオンの時にモータ電流が増え、オフの時にはGNDにプルダウン接続されるため、GND電位となる。ここで、MOSFETのドレイン端子VDaが地絡した場合、過電流が流れ、ドレイン・ソース間電圧VdsがHIに張り付く、ここで、過電流閾値Vref2を超えるとシャットダウンと検知し、OR回路2(412)出力電圧VshutがHIとなり、プリドライバがMOSFET(308a,308b,308c,308d)をオフする。
【実施例2】
【0057】
次に実施例2を示す。図8に実施例2の制御回路図を示す。実施例2ではハイサイドの過電流検知機能は、H−ブリッジ上流に配置されたモータ電流検出抵抗(328)上流の電圧VRcと下流の電圧VRdを用いて過電流の検出を行う。
【0058】
モータ電流検出抵抗(328)の両端の電圧VRc,VRdは増幅器330に入力され、増幅器330で増幅し、ハイサイドA/D変換回路322aでデジタル値に変換され、そのデジタル値がCPU306に入力されて、モータ電流の診断を行う。
【0059】
また、同時にモータ電流検出抵抗(328)の両端の電圧VRc,VRdはハイサイド過電流検出回路324aに入力される。ハイサイド過電流検出回路324aは、事前に記憶装置326に記憶された過電流閾値と同時にモータ電流検出抵抗(328)の両端の電圧VRc,VRdとの比較をコンパレータを用いて行う。
【0060】
ローサイドの過電流検知機能として、ドレイン・ソース間電圧Vdsを測定している。NchMOSFET308c,308dのドレイン端子VDa,VDb及びNchMOSFET308c,308dのソース端子電圧(VGND)はローサイドA/D変換回路322bに入力され、デジタル値に変換される。デジタル値の情報はCPU306に入力される。これにより、NchMOSFET308c,308dのドレイン端子VDa,VDbの電圧及び、PchMOSFET308a,308bのドレイン・ソース間電圧を検出することができ、CPU306はモータ端子の状態診断を行う。
【0061】
また、同時にNchMOSFET308c,308dのドレイン端子VDa,VDb及びNchMOSFET308c,308dのソース端子電圧はローサイド過電流検出回路324bに入力される。ローサイド過電流検出回路324bは、事前に記憶装置326に記憶された過電流閾値とNchMOSFET308c、もしくはNchMOSFET308dのドレイン・ソース間電圧との比較をコンパレータを用いて行う。
【0062】
尚、モータ電流検出抵抗を用いずハイサイド,ローサイドいずれもMOSFETのドレイン・ソース間電圧Vdsを測定する構成としても良い。
【符号の説明】
【0063】
100 リトラクター
102 障害物センサ
104 車輪速度センサ
106 衝突判断コントローラ
108 ブレーキアシスト装置
110 シートベルト駆動コントローラ
112 車両
200,316 モータ
202 乗員
204 シート
206 シートベルト
300 電源
302 シートベルトリトラクタ用制御装置
304 電源回路
306 CPU
308a PchMOSFET
308b PchMOSFET
308c NchMOSFET
308d NchMOSFET
310 PWM波形発生装置
312 シャットダウン回路
314 プリドライバ回路
318 モータ端子電圧診断抵抗a
320 モータ端子電圧診断抵抗b
322a ハイサイドA/D変換回路
322b ローサイドA/D変換回路
324a ハイサイド過電流検出回路
324b ローサイド過電流検出回路
326 記憶装置
328 モータ電流検出抵抗
330 増幅器
402a 差動回路a
402b 差動回路b
402c 差動回路c
404a コンパレータa
404b コンパレータb
404c コンパレータc
406 AND回路1
408 AND回路2
410 OR回路1
412 OR回路2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体スイッチング素子で構成されるHブリッジ回路と、コンパレータを用いて、その半導体スイッチング素子の両端間の電圧と、事前に記憶回路に記憶された過電流閾値と比較し、半導体スイッチング素子を制御するシートベルトリトラクタ用制御装置において、複数の選択可能な過電流閾値を持つ、シートベルトリトラクタ用制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は、過電流を検知し、半導体スイッチング素子を制御した後、モータ端子電圧A/D値を診断し、誤検知の場合、所定の動作を再試行する、請求項1記載のシートベルトリトラクタ用制御装置。
【請求項3】
前記制御装置は、過電流を検知後、半導体スイッチング素子を制御したことを、CPUにて記録する、請求項1記載のシートベルトリトラクタ用制御装置。
【請求項4】
前記制御装置は、複数の過電流閾値の、補正初期値を最小値に設定してある、請求項1記載のシートベルトリトラクタ用制御装置。
【請求項5】
前記制御装置は、過電流検知後、半導体スイッチング素子を制御する時に、制御速度を選択可能である、請求項1記載のシートベルトリトラクタ用制御装置。
【請求項6】
前記半導体スイッチング素子がMOSFETであり、MOSFETのドレイン・ソース間電圧と、事前に記憶回路に記憶された過電流閾値と比較し、MOSFETのゲート電圧を制御する、請求項1記載のシートベルトリトラクタ用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−114739(P2011−114739A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270966(P2009−270966)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】