説明

モータ回転検出の異常検出方法及び異常検出装置

【課題】車両駆動用の同期モータの回転検出器の取り付け異常に基づくモータ回転検出の異常を安全に検出する。
【解決手段】異常検出の設定により、車両駆動用の同期モータ3の駆動制御系に、d−q座標系のq軸電流指令値Iqcomを所定値以下に保持しつつd軸励磁電流指令値Idcomとして異常検出用の交流波形の電流指令値を設定し、同期モータ3のロータ回転角度を検出する回転検出器9のロータ回転角度の検出値θが同期モータ3のロータの振動によって異常検出のしきい値以上になるときに、回転検出器9の取り付け異常を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両駆動用の同期モータに取り付けられてそのモータのロータ回転角度を検出する回転検出器の取り付け異常、詳しくは、取り付け角度の異常を検出するモータ回転検出の異常検出方法及び異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のいわゆるハイブリッド車両や電気自動車は、車両駆動用の交流モータとして同期モータを備える。
【0003】
この同期モータは、一般に、回転軸を有するロータの外周にステータが設けられ、このステータの各電機子コイルに例えば3相交流の電流が供給されて回転駆動される。
【0004】
このとき、前記の回転軸にレゾルバやエンコーダ等の回転検出器が取り付けられ、前記の電流は、モータ回転に同期してフィードバック制御される。
【0005】
その際、同期モータの駆動制御系の簡素化等を図るため、前記電流の指令値、検出値は、回転検出器の時々刻々変化するロータ回転の検出値に基くタイミング制御にしたがって、d−q座標系のd軸、q軸の2軸値に座標変換して扱われる。
【0006】
したがって、この種の車両駆動用の同期モータは、回転検出器によりロータ回転を常に精度よく検出して監視する必要があり、製造時の取り付けミスや使用中(車両走行中)の緩み等によって回転検出器に取り付け異常が発生し、制御系のロータ回転検出値と回転角度との関係に対して、回転検出器の実際の取り付け角度がずれ、モータ回転角度検出オフセット異常、すなわち、モータ回転検出の異常が発生すると、重大な故障、事故に至るおそれがある。
【0007】
そして、前記のモータ回転検出の異常が発生すると、本来は磁束のみを増減するd軸励磁電流指令値によってトルクが発生するようになることに着目し、従来は、d軸の励磁電流指令値を直流の適当な値に設定した状態でステータ、ロータ間の異常な位置変化が生じたり、電流指令値に対して大きく異なる電流検出値が得られたりするか否かによって、同期モータの回転検出の異常の発生を検出することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
【特許文献1】特開平11−341897号公報(段落[0007]−[0016]、[0030]−[0036]、[0040]−[0051]図1、図6、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記従来提案(特許文献1記載)の場合、d軸励磁電流指令値に基づき、ステータ、ロータ間の異常な位置変化が生じたり、その電流指令値に対して大きく異なる電流検出値が得られたりしてモータ回転検出の異常が発生すると、直流のd軸励磁電流指令値の設定により、トルクが発生して同期モータの回転軸(モータ軸)が車両の進行方向又はその逆方向に回転し続ける。
【0010】
そのため、とくに同期モータの回転軸が車両の駆動軸に直結されているときには、前記特許文献1にも記載されているように車両が実際に動くおそれがあり、好ましくない。また、ハイブリッド車両の場合は、逆回転によるエンジンの損傷が生じるおそれもある。
【0011】
なお、同期モータの回転軸が車両の駆動軸に直結されていなくても、モータ回転検出の異常検出中に、前記のようにd軸励磁電流指令値の供給によって同期モータの回転軸(モータ軸)が車両の進行方向又はその逆方向に回転し続けることは、好ましくないのは勿論である。
【0012】
本発明は、車両駆動用の同期モータの回転検出器の取り付け異常に基づくモータ回転検出の異常を安全に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成するために、本発明のモータ回転検出の異常検出方法は、異常検出の設定により、車両駆動用の同期モータの駆動制御系に、d−q座標系のq軸電流指令値を所定値以下に保持しつつd軸励磁電流指令値として異常検出用の交流波形の電流指令値を設定し、前記同期モータのロータ回転角度を前記同期モータに取り付けられた回転検出器により検出し、前記回転検出器のロータ回転角度の検出値が異常検出のしきい値以上になるときに、前記回転検出器の取り付け異常を検出することを特徴としている(請求項1)。
【0014】
また、本発明のモータ回転検出の異常検出方法は、前記の異常検出用の交流波形の電流指令値が、d軸成分のみを含む交流波形であることを特徴とし(請求項2)、異常検出の設定に基づく回転検出器の取り付け異常の検出を、少なくとも車両が走行停止状態であることを条件に行なうことも特徴とし(請求項3)、さらに、同期モータの回転軸が車両の駆動軸に直結されていることも特徴としている(請求項4)。
【0015】
つぎに、本発明のモータ回転検出の異常検出装置は、異常検出の設定により、車両駆動用の同期モータの駆動制御系に、d−q座標系のq軸電流指令値を所定値以下に保持しつつd軸励磁電流指令値として異常検出用の交流波形の電流指令値を設定する電流指令値設定手段と、前記同期モータに取り付けられて前記同期モータのロータ回転角度を検出する回転検出器と、前記回転検出器のロータ回転角度の検出値と設定された正常角度のしきい値とを比較し、前記検出値が前記しきい値以上になるときに前記回転検出器の取り付け異常を検出する比較検出手段とを備えたことを特徴としている(請求項5)。
【0016】
また、本発明のモータ回転検出の異常検出装置は、前記の電流指令値設定手段の異常検出用の交流波形の電流指令値が、d軸成分のみを含む交流波形であることを特徴とし(請求項6)、少なくとも車両が走行停止状態であることを条件に、電流指令値設定手段、比較検出手段が動作して回転検出器の取り付け異常を検出することも特徴とし(請求項7)、さらに、同期モータの回転軸が車両の駆動軸に直結されていることも特徴としている(請求項8)。
【発明の効果】
【0017】
まず、請求項1、5の構成によれば、異常検出の設定により、q軸電流指令値を所定値以下に保持しつつd軸励磁電流指令値が異常検出用の交流波形の電流指令値に設定され、このとき、回転検出器の取り付けが正常であれば、q軸電流指令値、d軸励磁電流指令値のいずれによってもトルクが発生せず、ロータが回転しないで静止した状態に保たれることから、回転検出器のロータ回転角度の検出値が設定された異常検出のしきい値より小さくなり、モータ回転検出の異常は検出されず、車両が動くこともない。
【0018】
一方、回転検出器の取り付けがずれて異常になると、d軸励磁電流指令値によって発生する励磁電流の一部が磁束成分に直交する成分になってトルクが発生するが、d軸励磁電流指令値が交流波形であることから、この交流波形にしたがってトルクの向きが正逆にくり返し反転し、同期モータのロータが、一方向に回転し続けるのではなく、正逆に微小回転して振動する。
【0019】
このとき、回転検出器が前記振動のロータ回転角度を検出し、その検出値が設定された異常検出のしきい値以上になることから、回転検出器の取り付け異常を検出することができる。
【0020】
そして、同期モータのロータが、一方向に回転し続けるのではなく、正逆に微小回転して振動するため、この異常検出中に車両が動くことはなく、安全である。
【0021】
したがって、車両駆動用の同期モータの回転軸が一方向(車両の進行方向又はその逆方向)に回転し続けないようにして安全に、回転検出器の取り付け異常に基づくモータ回転検出の異常を検出することができる。
【0022】
ところで、回転検出器の取り付けが正常なときにトルクが確実に発生しないようにして精度よく検出するため、異常検出用の交流波形の電流指令値は、三角関数波形、方形波波形のようなd軸成分のみを含む交流波形であることが好ましい(請求項2、6)。
【0023】
また、車両の走行に支障をきたさず、しかも、安全性を一層向上するため、少なくとも車両が走行停止状態であることを条件に、前記の回転検出器の取り付け異常を検出することが望ましい(請求項3、7)。
【0024】
そして、同期モータの回転軸が車両の駆動軸に直結されている車両に適用することにより、安全であり、しかも、逆回転によるエンジンの損傷が生じるおそれもない(請求項4、8)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
つぎに、本発明をより詳細に説明するため、その一実施形態について、図1〜図4にしたがって詳述する。
【0026】
図1はハイブリッド車両1の駆動系のブロック図、図2は図1の車両駆動用の同期モータ2の駆動制御系のブロック図、図3は図2の交流波形の電流指令値の1例の波形図、図4は図2の構成におけるモータ回転検出の異常検出動作の説明用のフローチャートである。
【0027】
そして、図1に示すように、このハイブリッド車両1は車両駆動用のエンジン2、例えば3相交流の同期モータ3が駆動軸4に直結され、これらの動力がトルクコンバータ5、トランスミッション6を介して左右の駆動輪7に伝わり、両駆動輪7が駆動されて走行する。
【0028】
同期モータ3は、ロータ3a及びステータ3bで構成されてステータ3bに3相の電機子コイル3cが巻回され、各コイル3cに同期モータの駆動制御系を形成するモータ制御部8から電流が供給されることにより、走行モードにおいては、エンジン2の始動及びエンジン始動後のトルクアシストの力行運転状態になる。
【0029】
なお、車両1の減速時等には同期モータ3が回生状態になり、その回生電力が図示省略した車両電源としてのバッテリを充電する。
【0030】
また、同期モータ3には電磁式のレゾルバ、電磁式或いは光学式のエンコーダ等からなる回転検出器9が取り付けられ、この検出器9によりロータ3aの位置を示す同期モータ3の時々刻々の回転角度が検出される。
【0031】
つぎに、モータ制御部8は例えば図2に示すように、同期モータ3に供給する3相(U、V、W)の電流Iu、Iv、Iwを電圧操作によってPWM制御するフィードバック制御システムに構成され、その制御系の簡素化等を図るため、つぎに説明するように、d−q座標で電流Iu、Iv、Iwを制御する。
【0032】
すなわち、車両1のアクセル、ブレーキのペダル操作等に基く停止、始動、走行等の状態モードの設定や各種センサの自車状態の検出信号等に基づき、マイクロコンピュータ構成のモータ制御ECU81により、同期モータ3に要求する状態に応じて、d軸、q軸の電流指令端子82d、82qに、d−q座標系のd軸励磁電流指令値Idcom、q軸電流指令値Iqcomを与える。
【0033】
また、インバータ出力部83から同期モータ3に供給する前記の3相の電流Iu、Iv、Iwのうちの2相の電流、ここでは、V、W相の電流Iv、Iwを、電流センサ84v、84wによって検出し、電流センサ84v、84wから3相交流/d−q座標変換部85に電流Iv、Iwの検出信号iv、iwを出力する。
【0034】
変換部85は回転角度θの検出信号に基き、回転角度θに同期した周知の座標変換を実行し、与えられた電流Iv、Iwの検出信号iv、iwに基いて、検出した3相の電流Iu、Iv、Iwを、d軸励磁電流検出値id、q軸電流検出値iqに変換する。
【0035】
そして、減算器86d、86qにより、d軸励磁電流指令値Idcom、q軸電流指令値Iqcomと、d軸励磁電流検出値id、q軸電流検出値iqとの差ΔId(=Idcom−id)、ΔIq(=Iqcom−iq)を算出し、指令値Idcom、Iqcomに対する検出値id、iqの誤差を求める。
【0036】
さらに、減算器86d、86qの差ΔId、ΔIqをフィードバック制御のPIフイルタ(P:比例、I:積分)87d、87qによりPI処理し、差ΔId、ΔIqに応じたd軸励磁電圧Vd、q軸電圧Vqを生成する。
【0037】
そして、d軸励磁電圧Vd、q軸電圧Vqをd−q座標/3相交流変換部88に供給し、この変換部88により、変換部85の回転角度θの検出信号に基き、変換部85の逆変換である、回転角度θに同期した周知の座標変換を実行し、差ΔId、ΔIqを解消する3相(U、V、W)の電圧Vu、Vv、Vwを形成する。
【0038】
なお、トルク精度を向上するため、ここでは、インバータ出力部83の電源電圧(インバータ電圧)Vinvの検出信号を変換部88に供給して電圧Vu、Vv、Vwを補正している。
【0039】
そして、これらの電圧Vu、Vv、Vwを同期モータ3に印加するように、PWM制御部89により3相インバータ回路構成のインバータ出力部83を周知のPWM制御で駆動し、インバータ出力部83から同期モータ3に供給する3相の電流Iu、Iv、Iwを、差ΔId、ΔIqを解消するようにフィードバック制御する。
【0040】
つぎに、回転検出器9の取り付け角度がずれると、変換部85、88の変換が不正確になり、電流Iu、Iv、Iwの制御ミスが生じるため、モータ制御ECU81はソフトウエアで構成された回転角度振幅判定部81aを備える。
【0041】
この回転角度振幅判定部81aは、確実に安全な状態で回転検出器9の取り付け異常(取り付け角度のずれ)を検出してドライバに報知するため、少なくとも車両1が走行停止状態であることを条件に自動的に検出動作を行う。
【0042】
具体的には、車両1が駐車レンジ等の非走行レンジの操作ポジションにあるとき、あるは、走行停止してブレーキ圧が所定値以上になるときに、モータ制御ECU81が回転角度振幅判定部81aに異常検出を設定して指令し、この指令に基き、回転角度振幅判定部81aが予め設定されたモータ回転検出の異常検出プログラムを実行する。
【0043】
そして、前記異常検出プログラムを実行することにより、回転角度振幅判定部81aはつぎの(i)、(ii)の手段を備える。
【0044】
(i)電流指令値設定手段
この手段は、異常検出の設定により、同期モータ3の駆動制御系に、q軸電流指令値Iqcomを所定値以下、望ましくは0に保持しつつd軸励磁電流指令値Idcomとして異常検出用の交流波形の電流指令値を設定する。
【0045】
具体的には、前記異常検出の設定により、例えば秒単位の一定時間或いは前記交流波形の電流指令値の設定周期長の検出時間、電流指令端子82qに例えばq軸電流指令値Iqcom=0を設定し、電流指令端子82qに例えば図3に示す正弦波形状の数Hz〜数十Hzの交流波形のd軸励磁電流指令値Idcomを設定する。
【0046】
そして、q軸電流指令値Iqcomの前記所定値は車両1が動かない適当な大きさであってよく、交流波形を正弦波形状にするのは、d軸励磁電流指令値Idcomを、いわゆる対称波形であってd軸成分のみを含む波形にして異常がないときにトルクを確実に発生させないためであり、正弦波形状にする代わりに、余弦波形状、方形波形状等にしてもよく、これらの波形状にした場合も同様の効果が得られるのは勿論である。
【0047】
また、交流波形の周波数は適当に設定してよく、数Hz〜数十Hzにしたのは、あまりに低い周波数にすると、異常が検出されたときの回転角度が大きくなりすぎて適当でなく、あまりに高い周波数にすると、異常が検出されたときの回転角度θが極端に小さくなるからである。
【0048】
(ii)比較検出手段
この手段は、回転検出器9のロータ回転角度の検出値(振幅)θと設定された異常検出のしきい値Θとを比較し、θ≧Θになるときに回転検出器9の取り付け異常を検出する。
【0049】
すなわち、回転検出器9の取り付け異常がなく、正常であれば、q軸電流指令値Iqcom=0の設定により、q軸成分に基くトルクは発生しない。しかも、d軸励磁電流指令値Idcomによっては同期モータ3の磁束が交流波形に同期して強弱変化するのみである。
【0050】
そのため、回転検出器9の取り付けずれなく正常であれば、ロータ3aは回転することなく静止し、回転検出器9のロータ回転角度の検出値θは0になってθ<Θになり、このとき、交流波形のd軸励磁電流指令値Idcomによって車両1が動くこともない。
【0051】
一方、回転検出器9の取り付け角度がずれてそのオフセット異常が発生し、回転検出器9の取り付け異常になると、d軸励磁電流指令値Idcomによって発生する電流Iu、Iv、Iwの一部が磁束成分に直交する成分になってトルクが発生するが、d軸励磁電流指令値Idcomが交流波形であることから、この交流波形にしたがってトルクの向きが正逆にくり返し反転し、そのため、ロータ3aは一方向に回転し続けるのではなく、正逆に微小回転して振動する。
【0052】
このとき、回転検出器9が前記振動のロータ回転角度を有検出し、その検出値θが、θ≧Θになることから、回転検出器9の取り付け異常が検出される。
【0053】
しかも、ロータ3aが一方向に回転し続けるのではなく、前記したように正逆に微小回転して振動するため、この異常検出中に車両1が一方向に動き続けたりせず、安全であり、しかも、直結されたエンジン2を逆回転して破損することもない。
【0054】
そして、この実施形態では、前記取り付け異常の検出により、故障報知の信号を、例えば車両1のダッシュボードの警報報知パネル10に出力し、その故障表示ランプ11を点灯する。
【0055】
以上のモータ回転検出の異常の検出をフローチャートで示すと、例えば図4に示すようになり、車両1の前記の走行停止状態を検出すると、ステップS1の判断からステップS2の処理に移行し、例えばq軸電流指令値Iqcom=0を設定し、d軸励磁電流指令値Idcomを正弦波形状に設定する。
【0056】
そして、ステップS2、S3、S4、S5のループにより、車両1が走行状態に変化しない限り、前記の検出時間、回転検出器9のロータ回転角度の検出をくり返し、θ≧Θの異常を検出すると、ステップS3の判断からステップS6の処理に移行し、故障報知信号を出力して故障表示ランプ11を点灯し、ドライバに故障を報知する。
【0057】
そして、この実施形態の場合、q軸電流指令値Iqcomを所定値以下、望ましくは0に保持しつつd軸励磁電流指令値Idcomを正弦波形状に設定してモータ回転検出の異常の検出を行なうため、回転検出器9の取り付けが正常であれば車両1が動くことがないのは勿論、回転検出器9の取り付け異常が発生しても、同期モータ3のロータ3aが振動するのみで一方向に連続的に回転することがなく、車両1が一方向に動きだすことがなく、安全に、しかも、直結されたエンジン2を損傷することもなく回転検出器9の取り付け異常を検出してドライバに報知することができる。
【0058】
しかも、その異常の検出が、非走行レンジの操作ポジションにあるとき、あるは、走行停止してブレーキ圧が所定値以上になるときにのみ行なわれるため、一層安全であるとともに、車両1の走行に支障となることもない。
【0059】
そして、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0060】
例えば、前記実施形態ではエンジン2と同期モータ3と直結したハイブリッド車両1に適用したが、本発明はエンジン2と同期モータ3と種々に連系させた種々のハイブリッド車両に適用することができ、さらには、エンジン2を省いた構成の電気自動車にも同様に適用できるのは勿論である。
【0061】
また、同期モータ3は、3相に限られるものでなく、2相、6相等の種々の構成であっても同様に適用することができ、その際、ホイールに内蔵されたホイールインモータ等に形成されていてもよいのも勿論である。
【0062】
つぎに、交流波形の波形状、周波数やしきい値Θ等は、実験等の基づいて適当に設定してよいのは勿論であり、また、この異常検出は、車両1が走行停止状態になる毎に行なってもよく、例えば、走行停止状態になる条件と他の条件との組合せに基いて、特定の走行停止状態になるときにのみ行なってもよい。
【0063】
さらに、前記の故障報知の信号に基き、アラーム音、メッセージ音声等の種々の報知手段によってドライバに異常(故障)を報知するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
ところで、自車1の装備部品数を少なくするため、例えば図1の回転検出器9のロータ回転角度の検出値θを車両1の他の制御のセンサ出力として兼用する場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】この発明の一実施形態の駆動系のブロック図である。
【図2】図1の車両駆動用の同期モータ2の駆動制御系のブロック図である。
【図3】図2の交流波形の電流指令値の1例の波形図である。
【図4】図2の動作説明用のフローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
1 ハイブリッド車両
3 同期モータ
8 モータ制御部
81a 回転角度振幅判定部
9 回転検出器
θ ロータ回転角度の検出値
Idcom d軸励磁電流指令値
Iqcom q軸電流指令値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常検出の設定により、車両駆動用の同期モータの駆動制御系に、d−q座標系のq軸電流指令値を所定値以下に保持しつつd軸励磁電流指令値として異常検出用の交流波形の電流指令値を設定し、
前記同期モータのロータ回転角度を前記同期モータに取り付けられた回転検出器により検出し、
前記回転検出器のロータ回転角度の検出値が異常検出のしきい値以上になるときに、前記回転検出器の取り付け異常を検出することを特徴とするモータ回転検出の異常検出方法。
【請求項2】
異常検出用の交流波形の電流指令値が、d軸成分のみを含む交流波形であることを特徴とする請求項1記載のモータ回転検出の異常検出方法。
【請求項3】
異常検出の設定に基づく回転検出器の取り付け異常の検出を、少なくとも車両が走行停止状態であることを条件に行なうことを特徴とする請求項1または請求項2記載のモータ回転検出の異常検出方法。
【請求項4】
同期モータの回転軸が車両の駆動軸に直結されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のモータ回転検出の異常検出方法。
【請求項5】
異常検出の設定により、車両駆動用の同期モータの駆動制御系に、d−q座標系のq軸電流指令値を所定値以下に保持しつつd軸励磁電流指令値として異常検出用の交流波形の電流指令値を設定する電流指令値設定手段と、
前記同期モータに取り付けられて前記同期モータのロータ回転角度を検出する回転検出器と、
前記回転検出器のロータ回転角度の検出値と設定された異常検出のしきい値とを比較し、前記検出値が前記しきい値以上になるときに前記回転検出器の取り付け異常を検出する比較検出手段とを備えたことを特徴とするモータ回転検出の異常検出装置。
【請求項6】
電流指令値設定手段の異常検出用の交流波形の電流指令値が、d軸成分のみを含む交流波形であることを特徴とする請求項5記載のモータ回転検出の異常検出装置。
【請求項7】
少なくとも車両が走行停止状態であることを条件に、電流指令値設定手段、比較検出手段が動作して回転検出器の取り付け異常を検出することを特徴とする請求項5または請求項6記載のモータ回転検出の異常検出装置。
【請求項8】
同期モータの回転軸が車両の駆動軸に直結されていることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のモータ回転検出の異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−129636(P2006−129636A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−315672(P2004−315672)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】