説明

ラインヘッドの測定装置および測定方法

【課題】電子写真用ラインヘッドを用いた最終製品に要求される性能に合致した測定精度の向上を図ることができるラインヘッドの測定装置および測定方法を提供すること。
【解決手段】CCDカメラ4で撮像する撮像画像の強度分布が感光体の分光感度特性(潜像の強度分布)に近似するように、適宜な透過特性を有した光学フィルタ9を用いてラインヘッドWの発光点を測定する。従って、電子写真用プリンタ製品等の最終製品に組み込んだ際のラインヘッドWの発光点の特徴量を、測定時において適切に評価することができ、最終製品に要求される性能に合致した測定精度の向上を図ることができる。さらに、発光点の発光分光特性に応じた所定波長領域において、感光体の潜像の強度分布と撮像画像の強度分布とを近似させたことで、発光体ごとの発光分光特性のばらつきの影響を排除または低減して、測定精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光点を複数有した電子写真用ラインヘッド等における発光点の特徴量を測定するためラインヘッド測定装置および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザー光源やLED(Light-Emitting Diode)、有機EL(Electro Luminescence)素子、シリコン発光素子等、発光点を複数有したプリントヘッド(ラインヘッド)における個々の発光点の位置を測定する装置として、プリントヘッドを長尺方向に移動させる移動ステージと、レンズを介してプリントヘッドの1つずつの発光点を撮像するCCD(Charge-Coupled Device )カメラと、このCCDカメラからの出力を処理する画像処理装置と、画像処理した画像データに基づいて発光点の光ビーム特性を測定するコンピュータとを備えたプリントヘッドの測定装置が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−322310号公報
【特許文献2】特許第2994453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に記載された従来の測定装置では、プリントヘッド単体での個々の発光点の特性を測定することはできるものの、測定したプリントヘッドを電子写真用プリンタ製品に組み込んだ際に、発光点が印刷品質に与える影響までは考慮されていない。このため、プリントヘッド単体における測定精度を向上させたとしても、測定された発光点の特徴量が最終製品の性能向上に寄与しない可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、電子写真用ラインヘッドを用いた最終製品に要求される性能に合致した測定精度の向上を図ることができるラインヘッドの測定装置および測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のラインヘッドの測定装置は、並設された複数の発光点を適宜に発光させることで感光体を感光させるラインヘッドにおける前記発光点の特徴量を測定するラインヘッドの測定装置であって、前記ラインヘッドの測定面を撮像して撮像画像を出力する撮像手段と、前記ラインヘッドの発光点の発光を制御する発光制御部と、前記発光制御部および撮像手段を制御して取得した撮像画像に基づいて個々の発光点の特徴量を画像処理によって算出する画像処理部と、前記発光点の発光分光特性に応じた前記撮像手段の感度特性と前記感光体の感度特性との差異を補正する補正手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
ここで、撮像手段の感度特性と感光体の感度特性との差異を補正する補正手段としては、補正装置(補正部材)としてラインヘッドの発光点における光の射出側に設置されるものでもよく、撮像手段における光の入射側に設置されるものや撮像手段の内部に組み込まれるものでもよい。さらに、補正手段としては、画像処理部に組み込まれた装置や、画像処理部で実行される画像処理プログラムの一部(補正プログラム)であってもよい。
また、本発明のラインヘッドの測定装置で測定する発光点の特徴量としては、輝度重心位置、輝度分布形状、最大輝度および輝度積算値等が例示できる。
【0008】
このような本発明では、補正手段によって撮像手段の感度特性と感光体の感度特性との差異を補正することで、電子写真用プリンタ製品等の最終製品に組み込んだラインヘッドによって感光される感光体の感度特性(分光感度特性)を、発光点の発光分光特性に応じて撮像手段の感度特性(分光感度特性)に加味することができる。これにより、感光体に感光される潜像に近似した撮像画像を撮像手段で取得し、この撮像画像に基づいて特徴量を算出したり、あるいは画像処理部において潜像に近似させる補正してから特徴量を算出したりできる。従って、発光点の発光によって感光体を感光させた際に得られる潜像の強度分布に近似させた撮像画像に基づいて、発光点の特徴量を算出することができ、最終製品に要求される性能に合致した測定精度の向上を図ることができる。
すなわち、発光点の発光分光特性が発光点毎に均一で安定している場合には、そのピーク波長によって感光体と撮像手段とで感度特性を一致させることも可能であるが、異なる種別の発光素子を用いたラインヘッドを測定する場合や、同一種別であっても発光分光特性にばらつきのある発光素子を用いたラインヘッドを測定する場合には、ピーク波長による合わせ込みが困難であり、撮像手段と感光体との感度特性の差異が大きくなって測定精度が低下してしまうことがあった。これに対して、本発明では、発光点の発光分光特性に応じた撮像手段の感度特性と感光体の感度特性との差異を補正する、つまり発光分光特性のばらつき(ピーク波長の波長方向のずれ)を考慮し、そのばらつきの範囲において撮像手段および感光体の感度特性が近似するように補正することで、発光分光特性のばらつきの影響を排除または低減することができる。
【0009】
本発明において、前記補正手段は、前記ラインヘッドと前記撮像手段との間に設けられ、かつ前記発光点から射出された光を透過させて前記撮像手段に入射させる光学フィルタであり、前記光学フィルタは、前記撮像手段で撮像した撮像画像の強度分布を、前記ラインヘッドで前記感光体を感光させた際の潜像の強度分布に近似させる透過特性を有して構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、補正手段を装置としての光学フィルタで構成し、この光学フィルタの透過特性を適宜に設定することで、撮像手段や画像処理部などの測定装置本体部分を改変することなく、光学フィルタを取り替えるだけで各種のラインヘッドや感光体の組み合わせに対応することができる。すなわち、ラインヘッドの発光点や感光体の種別、これらの組み合わせに応じて、様々な透過特性を有した複数の光学フィルタを用意しておき、適宜な光学フィルタを選択することで、測定対象範囲を容易に拡大することができ、測定装置の汎用性を高めることができる。
【0010】
この際、前記光学フィルタは、アンバーフィルタで構成されているか、または前記光学フィルタは、透過させる光の波長ごとの透過特性が可変なチューナブルフィルタで構成されていることが好ましい。
この際、ラインヘッドの発光点の発光分光特性として、例えばピーク波長の波長領域が600nm〜700nmの場合に、その波長領域において、感光体の分光感度特性としては波長の増加に伴って感度が増加する感度特性で、撮像手段の撮像素子の分光感度特性としては波長の増加に伴って感度が低下する感度特性が一般的である。この場合に、光学フィルタとして、前記波長領域において、波長の増加に伴って透過率が増加する透過特性を有したアンバーフィルタを用いることで、アンバーフィルタを介して撮像手段で撮像される光の強度分布と、感光体に感光される潜像の強度分布との差異を小さくすることが可能になる。
一方、透過させる光の波長ごとの透過特性が可変なチューナブルフィルタを用いることで、適宜な波長領域における透過特性を任意に設定することができ、このチューナブルフィルタを介して撮像手段で撮像される光の強度分布と、感光体に感光される潜像の強度分布との差異を小さくすることが可能になる。
【0011】
また、本発明において、前記撮像手段は、複数の撮像素子が平面上に配置されたエリアセンサーで構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、前述のように撮像素子の分光感度特性と感光体の分光感度特性との差異があったとしても、その差異を補正手段で補正することで、測定精度の向上を図ることができるとともに、撮像素子から出力される電気信号に基づいて画像処理部における画像処理工程を迅速に実行でき、測定時間を高速化することができる。
【0012】
さらに、本発明のラインヘッドの測定装置は、前記撮像手段が前記ラインヘッドの測定面に沿うように前記ラインヘッドおよび前記撮像手段の少なくとも一方を移動させる移動手段と、前記移動手段による移動を制御して前記ラインヘッドと前記撮像手段とを相対移動させるとともに所定撮像位置で静止させる移動制御部とを備えることが好ましい。
このような構成によれば、一般的に長尺なラインヘッドの測定において、その長手方向に沿って撮像手段とラインヘッドとを相対移動させつつ撮像画像を取得することで、連続的な測定が実行でき、測定時間の高速化を促進させることができる。
【0013】
一方、本発明のラインヘッドの測定方法は、並設された複数の発光点を適宜に発光させることで感光体を感光させるラインヘッドにおける前記発光点の特徴量を測定するラインヘッドの測定方法であって、前記ラインヘッドの測定面を撮像して撮像画像を出力する撮像手段と、前記ラインヘッドの発光点の発光を制御する発光制御部と、前記発光制御部および撮像手段を制御して取得した撮像画像に基づいて個々の発光点の特徴量を画像処理によって算出する画像処理部とを備えた装置を用い、前記発光点の発光分光特性に応じた前記撮像手段の感度特性と前記感光体の感度特性との差異を補正した撮像画像に基づいて前記発光点の特徴量を算出することを特徴とする。
【0014】
このような測定方法によれば、前述の測定装置と同様に、発光点の発光によって感光体を感光させた際に得られる潜像の強度分布を予め予測した状態でラインヘッドの測定を実施することができ、最終製品に要求される性能に合致した測定精度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の測定装置1の構成を示す図である。
測定装置1は、複数の発光点を有した検査対象であるラインヘッドWにおける発光点ごとの特徴量を測定する装置である。ラインヘッドWは、電子写真用プリンタ等に組み込まれる電子写真用ラインヘッドであり、記録紙の搬送経路に沿った所定の配列で並設された発光点としてのLED素子を複数個(例えば、7000ドット)有し、この発光点の像を感光体に結像させる為のレンズアレイが取付けられたもので、全体長尺状でA4、A3などの印字サイズの幅に対応した全長寸法を有したものである。そして、ラインヘッドWは、電子写真用プリンタ等に組み込まれてプリンタの感光体に発光点が対向した状態で、発光点を適宜に発光させることで感光体を感光させるものである。
なお、検査対象としては、LED素子を有したラインヘッドWに限らず、レーザダイオード、有機EL(Electro Luminescence)素子、シリコン発光素子等の各種固体発光素子を有したラインヘッドであってもよく、さらに、プラズマパネル等の各種自己発光型のもの、あるいはバックライト等の光源を有した透過型の液晶ライトバルブを用いたラインヘッドであってもよい。
【0016】
測定装置1は、セットしたラインヘッドWを長手方向(X方向)に移動させる移動手段としての送りステージ2と、送りステージ2の上方に設けられてラインヘッドWのLED素子からの光を受光する顕微鏡3と、顕微鏡3で拡大したラインヘッドWの像を撮像する撮像手段としてのCCDカメラ4とを備えている。さらに、測定装置1は、送りステージ2に駆動信号を出力して送り移動量を制御する移動制御部としてのステージ制御部5と、ラインヘッドWに駆動信号を出力してLED素子の発光を個々に制御する発光制御部としてのヘッド制御部6と、CCDカメラ4の撮像を制御するとともにCCDカメラ4からの出力を受信する撮像制御部としてのカメラ制御部7と、ステージ制御部5、ヘッド制御部6およびカメラ制御部7を統合制御する制御手段としてのパーソナルコンピュータ(PC)8とを備えている。
【0017】
送りステージ2は、PC8の制御に基づくステージ制御部5からの指令に基づきラインヘッドWを図1の左右方向(X方向)に移動させるとともに、所定の撮像位置で静止させるものであって、ラインヘッドWの一方の端部から他方の端部までのストロークを有している。そして、ステージ制御部5は、送りステージ2の移動位置であるラインヘッドWの位置情報をPC8に出力する。
なお、移動手段としては、ラインヘッドWをX方向の一方向に移動させるものに限らず、X方向およびY方向の二方向にラインヘッドWを移動させる二軸の移動ステージであってもよい。
【0018】
CCDカメラ4は、PC8の制御に基づくカメラ制御部7からの指令に基づき、ラインヘッドWの上面、すなわちLED素子が配列された面を撮像し、撮像した画像に応じた信号をカメラ制御部7を介してPC8に出力する。このCCDカメラ4は、具体的な図示は省略するが、光電素子(撮像素子)が平面上に配置されたエリアセンサーであって、入射光束の受光時間を変更可能とするシャッター等を備える。そして、CCDカメラ4の光電素子は、ラインヘッドWの1つのLED素子当たりの入射光束に対して十分に大きな解像度を有しているものが好ましい。
【0019】
パーソナルコンピュータ(PC)8は、所定のプログラムを読み込んで実行するCPU(Central Processing Unit)等を備え、測定装置1全体の動作を制御する。このPC8は、図示しない制御部と、メモリ等の記憶部とを備える。制御部は、記憶部に記憶された制御プログラムにしたがって所定の処理を実行する部分であり、画像データ取得部、画像処理部(画像処理手段)、特徴量算出部(算出制御部)等を備えて構成されている。そして、PC8の特徴量算出部は、個々のLED素子の特徴量としての輝度重心位置、輝度分布形状、最大輝度および輝度積算値を算出して、出力する。
【0020】
画像データ取得部は、CCDカメラ4から出力される電気信号を入力してコンピュータにて読取可能な信号(デジタル信号)に変換し、画素毎に画素値(輝度値)に関する情報を含んだ撮像画像を取得する。そして、画像データ取得部は、取得した検査画像データを記憶部に記憶させる。
取得した撮像画像には、ラインヘッドWにおける1つずつのLED素子の撮像画像、またはラインヘッドWの所定領域に含まれる複数のLED素子の撮像画像が含まれており、このLED素子1つ当たりの撮像画像は、CCDカメラ4における複数の光電素子に対応した複数の画素で構成され、各画素における輝度値が記憶部に記憶されている。
【0021】
画像処理部は、取得した撮像画像に含まれる個々のLED素子の撮像画像に対し、その画素の輝度値を輝度補正処理する。そして、特徴量算出部は、画像処理部による輝度補正処理結果に基づき、個々のLED素子の輝度重心位置、輝度分布形状、最大輝度および輝度積算値を算出し、算出した各値を記憶部に記憶させる。ここで、各画素における輝度値は、例えば、8ビット256階調で取得され、適宜な輝度値の閾値を用いて個々のLED素子を判定するようになっている。また、複数のLED素子を含んだ撮像画像に基づき画像処理および特徴量算出を実施する場合には、特徴量算出部は、複数のLED素子の輝度重心位置に基づき、LED素子相互の位置関係を算出し、これに基づいて撮像画像全体の傾きや位置ずれ等も判定するように構成されている。
【0022】
以上の測定装置1において、顕微鏡3とCCDカメラ4との間(つまりラインヘッドWと撮像手段との間)には、補正手段としての光学フィルタ9が設けられている。この光学フィルタ9は、LED素子から射出された光を透過させるとともに、透過光をCCDカメラ4に入射させるものであり、図2に曲線Tで示すような透過特性を有したアンバーフィルタである。そして、光学フィルタ9の透過特性は、CCDカメラ4で撮像した撮像画像の強度分布を、ラインヘッドWを組み込んだプリンタ製品における感光体を当該ラインヘッドWで感光させた際の潜像の強度分布に近似させるように設定されている。
【0023】
以下、光学フィルタ9を介してCCDカメラ4で撮像される撮像画像と、ラインヘッドWで感光された感光体での潜像との関係に関し、図3に基づいて説明する。
図3は、光学フィルタ9の作用を示すグラフであり、LED素子等の発光点における発光分光特性のピーク波長近傍の波長領域(600nm〜700nm)における感光体の分光感度特性(潜像の強度分布特性)、CCDカメラ4の撮像素子の分光感度特性、光学フィルタ9の透過特性、および光学フィルタ9を介した撮像画像の強度分布特性を示すグラフである。また、図3には、感光体における潜像の強度分布特性と撮像画像の強度分布特性とを一致させることができる理想的なフィルタ(理想フィルタ)の透過特性も併せて記載されている。なお、図3において、感光体や撮像素子の感度特性、フィルタの透過特性および像の強度分布特性は、それぞれ基準化された相対感度として記載されている。
【0024】
図3において、感光体の分光感度特性(潜像の強度分布特性)は、一点鎖線および◆印で示すように、波長の増加に伴って増加する右肩上がりの特性を有している。すなわち、発光点の光の波長が短くなる(図3の左側にずれる)と感光体の分光感度特性(潜像の強度)が低下し(暗く感光され)、波長が長くなる(図3の右側にずれる)と感光体の分光感度特性(潜像の強度)が高くなる(明るく感光される)ようになっている。一方、CCDカメラ4の撮像素子の分光感度特性は、破線および■印で示すように、感光体の分光感度特性とは逆に、波長の増加に伴って低下する右肩下がりの特性を有している。すなわち、発光点の光の波長が短くなると撮像素子の分光感度特性が高くなり(像が明るくなり)、波長が長くなると撮像素子の分光感度特性が低下する(像が暗くなり)ようになっている。このような分光感度特性を有したCCDカメラ4で発光点を撮像して得られる撮像画像の強度分布と、感光体を感光させて得られる潜像の強度分布とは、発光点の光の波長が変動した場合に、相違してしまうこととなる。そこで、二点鎖線および▲印で示す理想フィルタを介してCCDカメラ4で撮像すれば、撮像画像の強度分布と感光体の潜像の強度分布とを一致させることができるようになっている。
【0025】
一方、図3において、光学フィルタ9の透過特性は、実線および×印で示すように、波長の増加に伴って増加する右肩上がりの特性を有している。すなわち、図2にも示すように、光学フィルタ9の透過特性は、所定の波長領域(600nm〜700nm)において、波長が短くなるほど低下し(光を透過しにくくなり)、波長が長くなるほど高くなる(光を透過しやすくなる)ようになっている。このような光学フィルタ9を介してCCDカメラ4で撮像された撮像画像の強度分布特性は、図3において一点鎖線および*印で示すように、低波長領域(600nm〜650nm)において、波長の増加に伴って増加する右肩上がりで、かつ感光体の分光感度特性に近似した特性に補正されるとともに、高波長領域(650nm〜700nm)においても、感光体の分光感度特性に近づくように補正されるようになっている。すなわち、光学フィルタ9を介することで、CCDカメラ4で撮像した撮像画像の強度分布を、感光体を感光させた際の潜像の強度分布に近似させる補正が実施されることになる。
【0026】
次に、上述した測定装置1による測定手順を説明する。
先ず、送りステージ2にラインヘッドWをセットしてからPC8から測定を実行する旨の設定入力を実施すると、PC8の制御部は、メモリから制御プログラムを読み出し、制御プログラムにしたがって測定処理を実行する。この際、設定入力としては、ラインヘッドWのサイズやLED素子の数、配列などが含まれる機種情報の入力であって、PC8の制御部は、機種情報に基づいてラインヘッドWの発光パターンや送りステージ2の移動量、移動回数等の測定パラメータを読み出し、初期値として設定する。また、PC8の制御部は、測定処理の開始時にラインヘッドWの測定開始点とCCDカメラ4との初期位置セットを実行する。
【0027】
測定処理が実行されると、制御部は、ラインヘッドWの発光パターンを初期化してから、ヘッド制御部6に指令して所定の発光パターンでLED素子を発光させる。これに続いて、制御部は、カメラ制御部7に指令してCCDカメラ4にラインヘッドWの測定面を撮像させ、光学フィルタ9を介した撮像画像を取得する。画像データ取得部で撮像画像を取得したPC8は、画像処理部にて前述の画像処理を実行するとともに、特徴量算出部にて個々のLED素子の輝度重心位置、輝度分布形状、最大輝度および輝度積算値を算出し、測定データをメモリに記憶させる。その後、制御部は、次の発光パターンでLED素子を発光させて全発光パターン分だけ撮像を繰り返してから、ステージ制御部5に指令して送りステージ2によって次の撮像位置までラインヘッドWを移動させるとともに、再び発光パターンを初期化し、上述の処理を繰り返し実行する。そして、制御部は、全てのLED素子の測定が終了したと判定した場合には、測定を終了する。
【0028】
なお、本実施形態の測定装置1において、光学フィルタ9は、前述のアンバーフィルタに限らず、図4に示すように、透過させる光の波長領域を可変することができるチューナブルフィルタで構成されていてもよい。
チューナブルフィルタは、任意のピーク波長の狭帯域領域を透過するフィルタ特性を実現でき、これにより、各波長の透過画像が得られる為、それぞれの波長で画像を撮像し、各波長の透過強度が理想フィルタの特性に合うように各画像に補正係数を掛け、それらを加算あるいは、平均化することで、画像処理用の撮像画像を算出すればよい。これにより、撮像画像の強度分布を、感光体を感光させた際の潜像の強度分布に近似させる補正が実施されることになる。
【0029】
上述した本実施形態によれば、以下の効果がある。
すなわち、CCDカメラ4で撮像する撮像画像の強度分布が感光体の分光感度特性(潜像の強度分布)に近似するように、適宜に設定された透過特性を有した光学フィルタ9を用いてラインヘッドWの発光点を測定したことで、電子写真用プリンタ製品等の最終製品に組み込んだ際のラインヘッドWの発光点の特徴量を、測定時において適切に評価することができる。従って、最終製品に要求される性能に合致した測定精度の向上を図ることができる。さらに、発光点の発光分光特性に応じた所定波長領域において、感光体の潜像の強度分布と撮像画像の強度分布とを近似させたことで、発光体ごとの発光分光特性がばらついたとしても、その影響を排除または低減して、測定精度を向上させることができる。
【0030】
さらに、ラインヘッドWの発光点や感光体の種別等に応じて、様々な透過特性を有した複数の光学フィルタ9を用意しておき、選択した光学フィルタ9に取り替えるだけで各種のラインヘッドWや感光体の組み合わせに対応することができ、測定対象範囲を容易に拡大することができ、測定装置1の汎用性を高めることができる。この際、光学フィルタ9として、比較的安価かつ複雑な制御が不要なアンバーフィルタを用いることで、測定装置1における装置コストの増加および測定時間の長期化を防止することができる。
【0031】
一方、光学フィルタ9として、チューナブルフィルタを用いれば、波長領域ごとの画像を撮像することが出来るようになるので、理想フィルタに近づけるように演算処理することが可能になって、測定精度を一層向上させることができる。
【0032】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、LED素子を有したラインヘッドWを測定する測定装置1について説明したが、本発明の測定装置で測定する検査対象は、発光点としてのLED素子を有したものに限らず、レーザダイオード、有機EL素子、シリコン発光素子等の各種固体発光素子を有したものであってもよく、さらにはプラズマパネル等の各種自己発光型のもの、あるいはバックライト等の光源を有した透過型の液晶ライトバルブを用いたものであってもよい。特に、有機EL素子を発光点として用いるラインヘッドでは、個々の有機EL素子同士間において発光分光特性のばらつきが大きい場合があり、ばらつきが大きい発光点の特徴量を算出する際に本願発明の補正手段が有効に作用する。
【0033】
また、前記実施形態では、補正手段として、装置としての光学フィルタ9を用いたが、これに限らず、制御手段(画像処理部)におけるソフトウェア(プログラム)として補正手段が構成されていてもよい。この場合には、予め制御手段の記憶部(メモリ)等に発光点の発光分光特性、撮像素子の分光感度特性、および感光体の分光感度特性等の各種情報と、撮像素子および感光体の分光感度特性を近似させるための補正プログラムを記憶させておき、撮像手段で撮像した撮像画像に対して補正プログラムによる補正処理を実行すればよい。
また、前記実施形態では、光学フィルタ9が顕微鏡3とCCDカメラ4との間に設置されていたが、これに限らず、顕微鏡3入射側に設置されていてもよく、さらにはラインヘッドW側に光学フィルタが設置されていてもよい。
【0034】
本発明を実施するための最良の構成などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
したがって、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の測定装置の構成を示す図。
【図2】前記測定装置における光学フィルタの透過特性を示す図。
【図3】前記光学フィルタの作用を示すグラフ。
【図4】前記光学フィルタとは異なる光学フィルタの透過特性を示す図。
【符号の説明】
【0036】
1…測定装置、2…移動ステージ(移動手段)、4…CCDカメラ(撮像手段)、5…ステージ制御部(移動制御部)、6…ヘッド制御部(発光制御部)、7…カメラ制御部(撮像制御部)、8…パーソナルコンピュータ(画像処理手段)、9…光学フィルタ(補正手段)、W…検査対象であるラインヘッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並設された複数の発光点を適宜に発光させることで感光体を感光させるラインヘッドにおける前記発光点の特徴量を測定するラインヘッドの測定装置であって、
前記ラインヘッドの測定面を撮像して撮像画像を出力する撮像手段と、
前記ラインヘッドの発光点の発光を制御する発光制御部と、
前記発光制御部および撮像手段を制御して取得した撮像画像に基づいて個々の発光点の特徴量を画像処理によって算出する画像処理部と、
前記発光点の発光分光特性に応じた前記撮像手段の感度特性と前記感光体の感度特性との差異を補正する補正手段とを備えたことを特徴とするラインヘッドの測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のラインヘッドの測定装置において、
前記補正手段は、前記ラインヘッドと前記撮像手段との間に設けられ、かつ前記発光点から射出された光を透過させて前記撮像手段に入射させる光学フィルタであり、
前記光学フィルタは、前記撮像手段で撮像した撮像画像の強度分布を、前記ラインヘッドで前記感光体を感光させた際の潜像の強度分布に近似させる透過特性を有して構成されていることを特徴とするラインヘッドの測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載のラインヘッドの測定装置において、
前記光学フィルタは、アンバーフィルタで構成されていることを特徴とするラインヘッドの測定装置。
【請求項4】
請求項2に記載のラインヘッドの測定装置において、
前記光学フィルタは、透過させる光の波長ごとの透過特性が可変なチューナブルフィルタで構成されていることを特徴とするラインヘッドの測定装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のラインヘッドの測定装置において、
前記撮像手段は、複数の撮像素子が平面上に配置されたエリアセンサーで構成されていることを特徴とするラインヘッドの測定装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のラインヘッドの測定装置において、
前記撮像手段が前記ラインヘッドの測定面に沿うように前記ラインヘッドおよび前記撮像手段の少なくとも一方を移動させる移動手段と、
前記移動手段による移動を制御して前記ラインヘッドと前記撮像手段とを相対移動させるとともに所定撮像位置で静止させる移動制御部とを備えることを特徴とするラインヘッドの測定装置。
【請求項7】
並設された複数の発光点を適宜に発光させることで感光体を感光させるラインヘッドにおける前記発光点の特徴量を測定するラインヘッドの測定方法であって、
前記ラインヘッドの測定面を撮像して撮像画像を出力する撮像手段と、
前記ラインヘッドの発光点の発光を制御する発光制御部と、
前記発光制御部および撮像手段を制御して取得した撮像画像に基づいて個々の発光点の特徴量を画像処理によって算出する画像処理部とを備えた装置を用い、
前記発光点の発光分光特性に応じた前記撮像手段の感度特性と前記感光体の感度特性との差異を補正した撮像画像に基づいて前記発光点の特徴量を算出することを特徴とするラインヘッドの測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−155457(P2008−155457A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345738(P2006−345738)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】