説明

ラクトバチルス・ラムノサスの線毛ポリペプチドおよびその生産方法

本発明は、生命科学、および食品、飼料または医薬産業の分野に関する。具体的には、本発明は、新規なペプチド、線毛構造、ポリヌクレオチドならびに該ポリヌクレオチド、ペプチドまたは線毛構造を含むベクター、宿主細胞、製品および医薬組成物に関する。本発明はまた、遺伝子クラスターおよび抗体に関する。さらに、本発明は、該ペプチドまたは線毛構造を生産する方法、または該ペプチドまたは線毛構造を含む製品を製造する方法に関する。さらに、本発明は、処置、ならびに細菌株をスクリーニングするための、粘液への病原性細菌の接着を減少させ又は阻害するための、粘液への細菌細胞の接着を促進するための、および対象における免疫応答を改変するための、使用および方法に関する。さらに、本発明は、プロバイオティック細菌株または病原菌株を検出するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、生命科学および食品、飼料もしくは医薬産業の分野に関する。具体的には、本発明は、新規なペプチド、タンパク質、線毛構造、ポリヌクレオチド、ならびに該ポリヌクレオチド、ペプチド、タンパク質または線毛構造を含むベクター、宿主細胞、製品(product)および医薬組成物に関する。本発明はまた、遺伝子クラスターおよび抗体に関する。さらに、本発明は、該ペプチド、タンパク質もしくは線毛構造を生産する方法または該ペプチド、タンパク質もしくは線毛構造を含む製品を製造する方法に関する。さらに、本発明は、細菌株をスクリーニングするため、病原性細菌の接着を減少させまたは阻害するため、粘液(mucus)および/または上皮への細菌細胞の接着を促進するため、および/または対象における免疫応答を修飾するための、処置ならびに使用および方法に関する。さらに、本発明は、同定および/または阻害されるべきプロバイオティックな(probiotic)細菌株または病原菌株を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
細菌性病原体による宿主組織への侵襲性接着は、微生物の細胞表面から外側へ突出する線毛(pili)または采(fimbriae)と呼ばれる伸長した毛髪様のタンパク質性線維によってしばしば促進される。グラム陰性の病原性細菌において、発病におけるコロニー形成物質としての線毛の役割は良く認識されており、50年を超える研究から、線毛集合(pilus assembly)の全メカニズムは明確に定義されている。構造的に最も特徴決定されたグラム陰性線毛は、例えば腸管病原性の大腸菌(E. coli)において見出される I 型形態、および、例えばナイセリア属(Neisseria)およびシュードモナス属(Pseudomonas)の種ならびに大腸菌において見出される IV 型形態である。典型的には、グラム陰性線毛は長く(長さが 1 から 4 μm)かつ細い(幅が 5 から 8 nm)ものであり、また、柔軟な構造的特性および頑強な構造的特性の両方を示すものである。これらの線毛は一般的に、その集合が特定のシャペロンタンパク質に依存するが、いかなる酵素活性にも依存しない、一連の非共有結合により結合した複数のタンパク質サブユニットによって構成される。しばしば、接着性の特性を有するタンパク質が線毛の先端に位置している。一般的に、微生物の表面からのタンパク質サブユニットの介在長(intervening length)は、接着性の先端タンパク質と、細胞外マトリックス(ECM)の構成成分または糖タンパク質および糖脂質の特定の炭水化物部分によって潜在的に提示される対応する宿主細胞の受容体部位との間の、障害のない接触を促進すると考えられている (Scott J.R. and Zahner D、2006、Mol Microbiol 62、320-330; Telford、J.L.、et al. 2006、Nat Rev Microbiol 4、509-519)。
【0003】
グラム陽性の線毛様構造の存在は、実際、コリネバクテリウム・レナーレ(Corynebacterium renale)の電子顕微鏡観察によって1960年代後半に初めて観察され(Yanagawa、R. et al. 1968、Jpn J Vet Res 16、31-37)、その後、線毛はいくつかの他のグラム陽性細菌種において見出されてきており、これには、ごく最近ヒトにおける侵襲性疾患を引き起こす3つの主要な連鎖球菌病原体、即ち、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)、およびストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)において線毛が発見されたことが含まれる (Telford、J.L.、et al. 2006、Nat Rev Microbiol 4、509-519)。グラム陽性線毛の最も詳細な特徴決定研究は、コリネバクテリウム、連鎖球菌および桿菌の病原体から始まっている。
【0004】
グラム陰性細菌とは異なり、グラム陽性細菌における線毛は幅がずっと細く(2 から 3 nm)、可視的に識別することがより困難であり、この事は、これら線毛の存在が多くのグラム陽性細菌の種において見逃されてきたかも知れない理由を示唆している (Kang、H.J. et al. 2007、Science 318、1625-1628)。今日まで、一般的に全てのグラム陽性線毛を代表するものでもある線毛集合の過程についての最も徹底した記述は、コリネバクテリウム・ジフテリエ(Corynebacterium diphtheriae)における線毛生合成のインビボの特徴決定研究によってなされてきた (Ton-That, H. and Schneewind, O. 2004、Trends Microbiol 12、228-234)。構造上、プロトタイプの線毛は、基部において細胞壁のペプチドグリカン成分に共有結合により固定されてもいる、共有結合により架橋結合したタンパク質サブユニット(ピリンと呼ばれる)によって構成されるポリマーのように見え、これらの共有結合は両者とも、ソルターゼ(sortase)ファミリーの異なる膜結合型トランスペプチダーゼ、即ち、それぞれピリン特異的ソルターゼおよびハウスキーピングソルターゼによる触媒作用に酵素的に依存している (Mandlik、A. et al. 2008、Trends Microbiol 16、33-40)。グラム陽性線毛は、典型的には3つのピリンサブユニットにより構成され、コリネバクテリウム・ジフテリエ(C. diphtheriae)の場合、該タンパク質(またはそれをコードする遺伝子)は、もっぱら線毛の軸または骨格を形成する大きなピリンサブユニットについては SpaA (spaA)(ソルターゼ媒介ピリン集合(sortase-mediated pilin assembly))、補助的な小さなピリンサブユニットについては SpaB (spaB)、そして、線毛の先端に位置する接着性の性質を有する別の小さなピリンサブユニットについては SpaC (spaC) と命名されている (図 1)。これら3つのピリンサブユニットをコードする遺伝子は、近傍にピリン特異的ソルターゼをコードする少なくとも1つの遺伝子を伴って、ピリン遺伝子クラスターとして同じ座(loci)の中に位置している。また、該ピリンクラスター内の遺伝子は、しばしば両末端において転位因子と隣接しており、水平遺伝子移入による起源が示唆される。これら全ての遺伝子の転写は同じ方向を向いており、オペロン調節制御を示唆している (Scott J.R. and Zahner D、2006、Mol Microbiol 62、320-330)。
【0005】
各ピリンサブユニットの一次配列内におけるいくつかの異なる保存されたモチーフおよびドメインに依存する、グラム陽性線毛集合の全過程の改訂モデルは、4つの基本的段階を含んでいる (Mandlik、A. et al. 2008、Proc Natl Acad Sci USA 105、14147-14152; Telford、J.L.、et al. 2006、Nat Rev Microbiol 4、509-519) (図 1)。第一の段階において、その各々が N 末端のシグナルペプチドを含んでいるピリンタンパク質が、Sec 依存性経路によって細菌の細胞膜を通して分泌され、次いで、約 20 残基の疎水性領域および正に帯電したテールからなる C 末端の膜貫通ドメインの存在によって細胞膜中に保持される。
【0006】
集合過程の第二の段階において、膜貫通ドメインの直前にある細胞壁ソーティングシグナル(cell wall sorting signal)(CWSS)、好ましくは LPXTG モチーフが、細胞膜に係留された(cell membrane-anchored)ピリンタンパク質のソルターゼ依存性切断のために利用可能となる。ピリン特異的ソルターゼは、この5残基のモチーフをトレオニン(T)残基とグリシン(G)残基の間で切断し、トレオニン残基のカルボキシル基とソルターゼの触媒ポケット内に見出されるシステイニルチオールとの間の共有結合性チオエステル結合を含むアシル酵素中間体を形成する。
【0007】
第三の段階は、イソペプチド結合形成によるピリンサブユニットの重合を表し、チオエステル結合の切断と、第二のピリンサブユニットのピリンモチーフ(WXXXVXVYPKN)中において保存されているリジン(K)残基の側鎖のε−アミノ基の求核攻撃によるピリンサブユニットからのソルターゼの遊離とを含む。第一のピリンサブユニット中のトレオニン残基の C 末端カルボキシルと、共有結合性チオエステルにより別のピリン特異的ソルターゼと未だ結合している第二のピリンサブユニットピリンモチーフのリジンの側鎖アミノ基との間に、アミド結合が形成されると考えられる(Budzik、J.M. et al. 2008、Proc Natl Acad Sci USA 105、10215-10220)。かかる線毛集合のモデルにおいて、重合構造の成長は線毛の基部におけるさらなるピリンサブユニットによってもたらされ、全体の長さはピリン特異的ソルターゼと結合している利用可能なピリンサブユニットの量によって支配される。該ピリンモチーフが大きな(SpaA)および補助的な小さな(SpaB)ピリンサブユニットに特有の特徴であり、接着性の性質を示す小さなピリンサブユニット(SpaC)の一次配列中には存在しないため、このピリンサブユニットは線毛の軸の先端に存在し、線毛重合を開始するための第一のピリンサブユニットである可能性が高い。
【0008】
重合した線毛の細胞壁への付着が、集合過程の第四の段階である。ここで、補助的な小さなピリンサブユニット(SpaB)線毛重合の休止のシグナルを伝えるが、それは、その遺伝子がゲノムの他の場所にコードされているハウスキーピング(housekeeping)ソルターゼと結合して提示された場合のみである。この最終段階において、大きなピリンサブユニット(SpaA)の成長する重合構造はピリン特異的ソルターゼとのチオエステル結合から移されて、ハウスキーピングソルターゼアシル酵素中間体として結合している小さなピリンサブユニットSpaBのピリンモチーフ中のリジンの側鎖とのアミド結合を形成する。その後、ペプチドグリカンリピドII(lipid II)前駆体のペンタペプチドのアミノ基による求核攻撃によって、ハウスキーピングソルターゼが SpaB ピリンと結合した線毛ポリマーの細胞壁への付着を触媒する事が可能となる。E-ボックスは、多くのグラム陽性細菌のピリンサブユニットの LPXTG モチーフとピリンモチーフとの間に見出される、第三の、あまり特徴決定されていない保存された一次配列モチーフ(YXLXETXAPXGY)を表す。
【0009】
これまでに、X線結晶学による三次元(3-D)構造決定によって、2つのグラム陽性ピリンサブユニットタンパク質についてのみ、その集合および機能に関する構造上の見識が明らかにされている。Krishnan ら(2007, Structure 15:893-903)は、ストレプトコッカス・アガラクチア の小さなピリンである GBS52 の結晶構造を解析し、S. aureus の コラーゲン結合タンパク質である Cna と構造上の類似性を有する2つの IgG様ドメインフォールドの存在を明らかにした。この事は、如何にしてこの小さなピリンサブユニットが特定の宿主組織への線毛の接着を促進し得るのかについて示唆するものでもある。Kang ら(2007、Science 318、1625-1628)によって解析された ストレプトコッカス・ピオゲネス の大きなピリンである Spy0128 の結晶構造は、ピリンサブユニット内のリジン残基およびアスパラギン残基の側鎖間の自己生成する(self-generated)分子内イソペプチド結合が如何にして、線毛の全体的強度および安定性を維持するよう、ソルターゼに触媒される分子間イソペプチド結合を補うことができるのかを明らかにした。
【0010】
プロバイオティックな微生物の大部分はグラム陽性のラクトバチルスおよびビフィドバクテリウムのメンバーであり、発酵食品および乳製品において長く使用されてきた伝統がある (Goldin、B.R. and Gorbach、S.L. 2008、Clin Infect Dis 46、S96-S100; Ljungh、A. and Wadstrom、T. 2006、Curr Issues Intest Microbiol 7、73-89; Salminen、S. et al. 1998、Br J Nutr 80、S147-S171)。プロバイオティックなラクトバチルスの線毛構造またはこれら線毛構造をコードする遺伝子は、これまで文献に記載されていない。線毛様構造またはポリヌクレオチドの存在は、ラクトバチルス・ラムノサスにおいてはこれまでに示されていない。
【発明の概要】
【0011】
本発明の簡単な説明
本発明の目的は、新規な線毛ポリペプチドおよびそれをコードするポリヌクレオチドを提供することである。さらに、本発明の目的は、新規な線毛構造を提供することである。また、本発明の目的は、上記のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、線毛構造およびポリヌクレオチドに関連する新規な方法、使用および製品を提供することである。
【0012】
本発明は、配列番号 1 (GG00441)と少なくとも 94% の配列同一性を有する配列、配列番号 2 (GG00442)と少なくとも 94% の配列同一性を有する配列、配列番号 3 (GG00443)と少なくとも 84% の配列同一性を有する配列、配列番号 4 (GG00444)と少なくとも 91% の配列同一性を有する配列、配列番号 5 (GG02369)と少なくとも 83% の配列同一性を有する配列、配列番号 6 (GG02370)と少なくとも 94% の配列同一性を有する配列、配列番号 7 (GG02371)と少なくとも 93% の配列同一性を有する配列もしくは配列番号 8 (GG02372)と少なくとも 93% の配列同一性を有する配列を含むペプチド、またはその断片もしくは変異体に関する。
【0013】
本発明はまた、配列番号 1 (GG00441)と少なくとも 94% の配列同一性を有するペプチド配列、配列番号 2 (GG00442)と少なくとも 94% の配列同一性を有するペプチド配列、配列番号 3 (GG00443)と少なくとも 84% の配列同一性を有するペプチド配列、配列番号 4 (GG00444)と少なくとも 91% の配列同一性を有するペプチド配列、配列番号 5 (GG02369)と少なくとも 83% の配列同一性を有するペプチド配列、配列番号 6 (GG02370)と少なくとも 94% の配列同一性を有するペプチド配列、配列番号 7 (GG02371)と少なくとも 93% の配列同一性を有するペプチド配列もしくは配列番号 8 (GG02372)と少なくとも 93% の配列同一性を有するペプチド配列をコードするポリヌクレオチド、またはその断片もしくは変異体に関する。
【0014】
本発明はまた、少なくとも1つの本発明のペプチドを含む線毛構造、少なくとも1つの本発明のペプチドもしくは線毛構造を含む製品、および少なくとも1つの本発明のペプチドもしくは線毛構造を含む医薬組成物または栄養組成物に関する。
【0015】
さらに、本発明は、医薬としての使用のための、または下痢症、動脈性高血圧、血管疾患、アレルギー、癌、アトピー性疾患、ウイルス性疾患、感染症、尿路感染症、呼吸器感染症、う蝕、過敏性腸症候群(IBS)、炎症性腸疾患(IBD)、粘膜炎、腸透過性障害(gut permeability disorder)、肥満症、メタボリックシンドローム、酸化ストレスまたは腹痛の予防もしくは処置のための、少なくとも1つの本発明のペプチドまたは線毛構造を含む製品に関する。
【0016】
さらに、本発明は、下痢症、動脈性高血圧、血管疾患、アレルギー、癌、アトピー性疾患、ウイルス性疾患、感染症、尿路感染症、呼吸器感染症、う蝕、IBS、IBD、粘膜炎、腸透過性障害、肥満症、メタボリックシンドローム、酸化ストレスまたは腹痛を処置または予防するための医薬の製造における、少なくとも1つの本発明のペプチドまたは線毛構造の使用に関する。
【0017】
さらに、本発明は、下痢症、動脈性高血圧、血管疾患、アレルギー、癌、アトピー性疾患、ウイルス性疾患、感染症、尿路感染症、呼吸器感染症、う蝕、IBS、IBD、粘膜炎、腸透過性障害、肥満症、メタボリックシンドローム、酸化ストレスまたは腹痛の処置または予防のための、少なくとも1つの本発明のペプチドまたは線毛構造に関する。
【0018】
また、本発明は、配列番号 9-16 のいずれかの配列もしくはその縮重配列を含むかまたは本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチド、本発明のポリヌクレオチドを含むベクター、本発明のポリヌクレオチドもしくはペプチドを含む宿主細胞、および、少なくとも1つの本発明のポリヌクレオチドを含む遺伝子クラスターに関する。
【0019】
また、本発明は、本発明のペプチドまたはその機能ドメインに対する1つまたは複数の抗体に関する。
【0020】
本発明はまた、少なくとも1つの本発明のペプチドまたは線毛構造を対象へ投与することを含む、下痢症、動脈性高血圧、血管疾患、アレルギー、癌、アトピー性疾患、ウイルス性疾患、感染症、尿路感染症、呼吸器感染症、う蝕、IBS、IBD、粘膜炎、腸透過性障害、肥満症、メタボリックシンドローム、酸化ストレスまたは腹痛を処置または予防する方法に関する。
【0021】
本発明は、少なくとも1つの本発明のポリヌクレオチドまたはその断片を含む細菌株のスクリーニングのための方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
i) 細菌株から DNA または RNA を提供する工程;
ii) 本発明のポリヌクレオチドまたはその断片に特異的なプライマーまたはプローブを工程 i) からの DNA または RNA とハイブリダイズさせる工程、および所望により該ポリヌクレオチドまたはその断片を増幅する工程;
iii) 本発明のポリヌクレオチドまたはその断片と相同な少なくとも1つのポリヌクレオチドまたはその断片を検出する工程。
【0022】
本発明は、細菌株のスクリーニングのための、少なくとも1つの本発明のポリヌクレオチドもしくはその断片または少なくとも1つの本発明の抗体の使用に関する。
【0023】
本発明は、少なくとも1つの本発明の抗体を用いて少なくとも1つの本発明のペプチドまたは線毛構造を含む細菌株をスクリーニングする方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
i) 細菌株のタンパク質を提供する工程;
ii) 該抗体を用いて、少なくとも1つのポリペプチド、線毛構造またはその断片を検出する工程。
【0024】
本発明は、対象の消化管、上皮または粘液への病原性細菌の接着を減少させまたは阻害する方法であって、少なくとも1つの本発明のペプチドおよび/または線毛構造を該対象に投与することを含む方法に関する。
【0025】
本発明は、対象の消化管、上皮または粘液への病原性細菌の接着を減少させまたは阻害するための、少なくとも1つの本発明のペプチドおよび/または線毛構造の使用に関する。
【0026】
本発明は、対象の消化管、上皮または粘液への病原性細菌の接着を減少させまたは阻害するための少なくとも1つの本発明のペプチドまたは線毛構造に関する。
【0027】
本発明は、粘液または上皮への細菌細胞の接着または他の物質の接着を促進する方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
i) 少なくとも1つの本発明のペプチドもしくは線毛構造またはその断片を生産する工程;
ii) 該ペプチド、線毛構造および/またはその断片を細菌細胞上または他の物質上に提示させる工程;
iii) 該細菌細胞または他の物質を粘液または上皮と接触させる工程。
【0028】
本発明は、粘液または上皮への細菌細胞の接着または他の物質の接着を促進するための、少なくとも1つの本発明のペプチドまたは線毛構造の使用に関する。
【0029】
本発明は、粘液または上皮への細菌細胞の接着または他の物質の接着を促進するための少なくとも1つの本発明のペプチドまたは線毛構造に関する。
【0030】
本発明は、対象における免疫応答を改変する方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
i) 少なくとも1つの本発明のペプチドもしくは線毛構造またはその断片を生産する工程;
ii) ペプチド、線毛構造および/またはその断片を宿主細胞上に提示させる工程;
iii) 所望により、該宿主細胞を粘液または別の宿主細胞と接触させる工程。
【0031】
本発明は、免疫応答を改変するための、少なくとも1つの本発明のペプチドまたは線毛構造の使用に関する。
【0032】
本発明は、免疫応答を改変するための少なくとも1つの本発明のペプチドまたは線毛構造に関する。
【0033】
本発明は、本発明の製品を製造する方法であって、少なくとも1つの本発明のペプチドまたは線毛構造を生産して製品とする工程を含む方法に関する。
【0034】
本発明はまた、少なくとも1つの本発明のペプチドまたは線毛構造を生産する方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
i) 少なくとも1つの本発明のポリヌクレオチドを提供する工程;
ii) 該ポリヌクレオチドを用いて宿主細胞を形質転換する工程;
iii) 工程 ii) からの宿主細胞を培養してペプチドまたは線毛構造を生産させる工程;
iv) 所望により、該ペプチドまたは線毛構造を回収する工程。
【0035】
さらに、本発明は、少なくとも1つの本発明のペプチドまたは線毛構造を生産する方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
i) 少なくとも1つの本発明のペプチドまたは線毛構造を生産するかまたは含む細胞を破壊する工程;
ii) 所望により、該ペプチドまたは線毛構造を回収する工程。
【0036】
また、本発明は、少なくとも1つの本発明のペプチドを生産する方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
i) アミノ酸を提供する工程;
ii) 少なくとも1つのペプチドを合成することにより、工程 i) のアミノ酸から少なくとも1つの本発明のペプチドを製造する工程。
【0037】
本発明は、生物情報学的アプローチを用いて潜在的なプロバイオティック細菌株を検出する方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
i) 少なくとも1つのペプチド、ポリヌクレオチドまたはその断片の配列を提供する工程;
ii) 工程 i) の配列を、配列コレクション(sequence collection)の配列と比較する工程;
iii) 工程 i) の配列に対して生物学的に合同な断片を有するかまたは工程 i) の配列に対して高い同一性を有する配列を検出する工程。
【0038】
本発明はまた、それに対して本発明のペプチドまたは線毛構造が有効である病原菌株を、生物情報学的アプローチを用いて検出する方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
i) 少なくとも1つのペプチド、ポリヌクレオチドまたはその断片の配列を提供する工程;
ii) 工程 i) の配列を、配列コレクションの配列と比較する工程;
iii) 工程 i) の配列に対して生物学的に合同な断片を有するかまたは工程 i) の配列に対して高い同一性を有する配列を検出する工程。
【0039】
本発明のペプチド、線毛構造およびポリヌクレオチドは、食品、飼料、化粧品および医薬品産業におけるさらなる開発のためのツールを提供する。本発明は、多くの細菌株についての迅速かつ効率的なスクリーニング方法および信頼性が高く且つ正確な定性的または定量的解析を可能にする。したがって、本発明の方法および手段は、新規なプロバイオティック細菌株の発見ならびに新規な製品(材料、サプリメントおよび栄養製品を含む)、医薬および治療方法の発見を可能にする。さらに、本発明によって、より効率的且つ特異性の高い処置が可能となる。
【0040】
健康に対する明確に示された効果を有し、かつ、そのまま使用することまたは別の製品、例えば医薬品または食品もしくは飼料製品の一部として使用することを可能にする形態で生産される新規な製品を消費者に提供するという、明確な要求が存在し続けている。本発明によれば、製品は、例えば毎日の食餌または薬物療法(medication)の便利な部分またはサプリメントとしての使用を可能にするカプセル、丸薬(pill)または錠剤としての適用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図 1a および 1b は、グラム陽性コリネバクテリウムにおける線毛集合および細胞壁への共有結合性付着のモデルを示す。
【図2】図 2 は、ピリン特異的ソルターゼ、大きな線毛軸タンパク質、小さな線毛軸タンパク質およびキャッピング(capping)線毛タンパク質をコードする遺伝子を含むラクトバチルス・ラムノサスGG(LGG)の線毛クラスターを示す。CWSS は細胞壁ソーティングシグナル、即ち多くのグラム陽性細菌において見出される保存されたモチーフを表し、ピリンモチーフおよび E-box もまた、多くのグラム陽性 細菌において見出される保存されたモチーフを表す。
【図3】図 3 は、LGG の線毛構造のペプチド GG00442、GG00443、GG00444、GG02370、GG02371 および GG02372 に結合するポリクローナル抗体の例を示す。
【図4】図 4 は、位相差原子間力顕微鏡による、LGG の突出している線毛構造の顕微鏡写真を示す。
【図5】図 5a および 5b は、ヒスチジンタグが付された組換え LGG タンパク質、即ち SpaA、SpaB、SpaC、SpaD および SpaF ピリンタンパク質の、ヒトの腸管粘液へのインビトロの結合を示す。切除されたヒト腸管組織を、ポリスチレンのマイクロタイタープレート上で粘液の源として用いた。結合したタンパク質を、酵素結合免疫吸着アッセイによって検出した。
【図6】図 6a および 6b は、mTSB 培地または MRS+ 0.6% ox gall bile 培地中で増殖させた LGG および陰性対照としてのラクトバチルス・ラムノサス(L. rhamnosus)LC705(LC705)の細胞壁画分の、それぞれ SpaA および SpaC ピリンタンパク質特異的ポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロットを示す。図 6a は、LGG における SpaA を含む線毛および SpaA モノマーの存在を示し、図 6b は、LGG における SpaC を含む線毛および SpaC モノマーの存在を示す。レーン 1: 組換え SpaA/SpaC ピリンタンパク質; レーン 2: mTSB 中で増殖させた LGG; レーン 3: MRS+ 0.6% ox gall bile 中で増殖させた LGG; レーン 4: mTSB 中で増殖させた LC705、レーン 5: MRS+0.6% ox gall bile 中で増殖させた LC705。使用した抗体は、各画像の上部に示される。図 6b 中、パネル A: レーン 1 から 5 は 1 秒間露光; パネル B: レーン 2-5 は別々に 60 秒間露光。分子量標準の位置は、左側にキロダルトンとして示される。HMW は高分子量ラダーを表す。図 6c は、LGG の細胞壁画分のウエスタンブロットにおいて、SpaB を含む線毛および SpaB モノマーの存在を示す。レーン 1: 分子量マーカー; レーン 2: MRS 中で増殖させた LGG。SpaB ピリンタンパク質特異的ポリクローナル抗体、ヤギ抗ウサギIgG-AP複合体(Bio Rad)および BCIP/NBT 発色試薬を用いて検出を行った。
【図7】図 7a-c は、線毛構造を有する新規なプロバイオティック株の PCR スクリーニングの結果を示す。図 7a-c は、それぞれラクトバチルス・ラムノサス GG、ラクトバチルス・ラムノサス LC705 およびラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)ATCC 334 の増幅産物を示す。レーン 1: 分子量マーカー; レーン 2: SpaF 用のプライマーを用いた増幅産物; レーン 3: SpaE 用のプライマーを用いた増幅産物; レーン 4: SpaD 用のプライマーを用いた増幅産物; レーン 5: SpaC 用のプライマーを用いた増幅産物; レーン 6: SpaB 用のプライマーを用いた増幅産物; レーン 7: SpaA 用のプライマーを用いた増幅産物。
【図8】図 8a-d は、ラクトバチルス・カゼイ ATCC 334、ラクトバチルス・ラムノサス LC705 およびラクトバチルス・ラムノサス GG における spaC、spaB または spaA の存在を示すサザンハイブリダイゼーションのシグナルを示す。図 8a は、アガロースゲル電気泳動によって分離された、消化されたゲノム DNA を示し、図 8b、8c および 8d はそれぞれ、DIG 標識されたラクトバチルス・ラムノサス GG spaC 遺伝子の 801 bp の PCR 増幅産物、ラクトバチルス・ラムノサス GG spaB 遺伝子の 612 bp の PCR 増幅産物またはラクトバチルス・ラムノサス GG spaA 遺伝子の 780 bp の PCR 増幅産物をプローブとして用いた、同じ DNA のサザンハイブリダイゼーションを示す。レーン 1: 分子量マーカーI HindIII-φX174 HaeIII ミックス; レーン 2: DIG 標識された分子量マーカーII (Roche); レーン 3: HindIIIで消化されたラクトバチルス・カゼイ ATCC 334; レーン 4: HindIIIで消化されたラクトバチルス・ラムノサス LC705; レーン 5: HindIIIで消化されたラクトバチルス・ラムノサス GG; レーン 6: - ; レーン 7: 未標識プローブ。
【図9】図 9 は、2x106 cfu/ml のラクトバチルス・ラムノサス GG 生菌またはおよそ 30 pmol/ml の精製した Hisタグ標識されたラクトバチルス・ラムノサス GG タンパク質 SpaA、SpaB および SpaC を用いたマクロファージ刺激の間の TNF-α レベルを示す。
【図10】図 10 は、ラクトバチルス・ラムノサス GG または SpaC、SpaB および SpaA ピリンタンパク質によるヒト腸管粘液からの病原性細菌エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)の排除(displacement)を示す。接着(%)は、5つの並列実験の平均±S.D.として表す。* は、有意に減少したエンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)の接着(P<0.05)を示す。
【図11】図 11a および 11b は、図 2 に示される線毛オペロンをコードするヌクレオチド配列を示す。図 11a は、GG00441 - GG00444 遺伝子(太字)をコードするオペロンを示す。推定上の保存エレメントは、-35 配列(下線)、-10 配列(二重下線)、リボソーム結合部位(下線付きイタリック体)および rho ターミネーター(点線の下線)である。図 11b は、GG02369 - GG02372 遺伝子(太字)をコードするオペロンを示す。推定上の保存エレメントは、-35 配列(下線)、-10 配列(二重下線)、リボソーム結合部位(下線付きイタリック体)および rho ターミネーター(点線の下線)。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の詳細な説明
乳酸菌は長い間食品産業において利用されてきており、今日では様々な食品供給、例えば乳製品において使用されている。例えば、ラクトバチルスおよびビフィドバクテリウムはプロバイオティック効果を有することが知られているが、プロバイオティック細菌が健康に影響を与える方法については完全には理解されていない。したがって、プロバイオティクスのさらなる研究は正当化される。
【0043】
本発明は、グラム陽性細菌も線毛構造を有するという発見にある。さらに、本発明は、グラム陽性細菌、具体的にはラクトバチルス属、より具体的にはラクトバチルス・ラムノサスにおける新規な線毛ペプチドおよび線毛構造の発見にある。
【0044】
線毛構造のペプチド
一般的に、グラム陽性細菌の線毛は該細菌の外膜から外に向かって伸長しており、通常、長さが 1-4 μm、幅が 2-8 nmであり、数は少ない。線毛は、標的の表面への細菌の接着を促進すると考えられている。実際、本明細書において用いる場合、“線毛構造”との表現は、複数のタンパク質サブユニット(好ましくは1より多くのサブユニット)を含む伸長した毛髪状または毛髪様タンパク質性線維をいう。これらのタンパク質の集合は、特定のタンパク質、即ちソルターゼに依存し得る。接着性の性質を有するタンパク質は通常、線毛の上端に位置している。ヘテロマー性線毛構造の他のタンパク質も、接着性であり得る。本明細書において用いる場合、“線毛構造の部分”との表現は、線毛のいずれかの構成要素、好ましくは線毛のいずれかのタンパク質またはいずれかの断片またはいずれかの変異体をいう。本発明の好ましい態様において、線毛構造は、微生物の表面上に位置しているかまたはそこから生じるものである。
【0045】
本明細書において用いる場合、“ペプチド”との表現は、あらゆるペプチド、例えばジペプチド、ポリペプチド、タンパク質および/またはピリンタンパク質をいう。
【0046】
本発明の特定の態様において、ピリンに特有の特徴は、大きな(SpaA)、補助的な小さな(SpaB)およびキャッピング(SpaC)ピリンサブユニットである。
【0047】
ピリン特異的ソルターゼは、ピリンの成長する重合構造において SpaA を SpaC に移すことによって機能する(図 1)。本発明の好ましい態様において、配列番号 1 (GG00441)と少なくとも 94% の配列同一性を有する配列または配列番号 5 (GG002369)と少なくとも 83% の配列同一性を有する配列を含むペプチドが、ピリン特異的ソルターゼである(図 2 参照。図 2 に示される線毛オペロンをコードするヌクレオチド配列については図 11 も参照)。
【0048】
SpaA は、線毛構造の骨格(back-bone)を形成すると考えられる。異なる線毛構造の長さは、骨格中の SpaA の量に依存する (図 1)。本発明の好ましい態様において、配列番号 2 (GG00442)と少なくとも 94% の配列同一性を有する配列または配列番号 6 (GG002370)と少なくとも 94% の配列同一性を有する配列を含むペプチドが、大きな線毛軸タンパク質、即ち大きなピリンサブユニットである (図 2 参照。図 2 に示される線毛オペロンをコードするヌクレオチド配列については図 11 も参照)。GG00442 および GG02370 はソルターゼ認識部位を含んでおり、そのため、ソルターゼの基質となる。
【0049】
SpaB は、線毛形成の最後の状態(終末段階)において線毛構造に付加されると考えられ、細胞壁への線毛の結合を形成する(図 1)。本発明の好ましい態様において、配列番号 3 (GG00443)と少なくとも 84% の配列同一性を有する配列または配列番号 7 (GG002371)と少なくとも 93% の配列同一性を有する配列を含むペプチドが、小さな線毛軸タンパク質である (図 2 参照。図 2 に示される線毛オペロンをコードするヌクレオチド配列については図 11 も参照)。GG00443 および GG002371 はソルターゼ認識部位を含んでおり、そのため、ソルターゼの基質となる。
【0050】
SpaC は、線毛軸の先端に位置し、線毛重合を開始するための最初のピリンサブユニットであると考えられる(図 1)。本発明の好ましい態様において、配列番号 4 (GG00444)と少なくとも 91% の配列同一性を有する配列または配列番号 8 (GG002372)と少なくとも 93% の配列同一性を有する配列を含むペプチドが、結合する線毛タンパク質である(図 2 参照。図 2 に示される線毛オペロンをコードするヌクレオチド配列については図 11 も参照)。GG00444 タンパク質はフォン・ヴィルブランド因子(von Willebrand factor)(vWF)ドメインを含み、また、GG00444 および GG02372 はソルターゼ-認識部位を含み、そのためソルターゼの基質となる。
【0051】
本発明の特定の態様において、本発明のペプチドまたはポリペプチドは、配列番号 1、2、3、4、5、6、7 または 8 のアミノ酸配列またはその断片または変異体と少なくとも 60、65、70、75、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5、99.8、99.9 または 100% の同一性を有する配列を含む。
【0052】
本発明の特定の態様によれば、ペプチドは、配列番号 1、2、3、4、5、6、7 または 8 のアミノ酸配列のいずれかまたはその断片または変異体と少なくとも 60、65、70、75、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5、99.8、99.9 または 100% の同一性を有する。
【0053】
本発明の別の特定の態様において、ペプチドは、配列番号 1、2、3、4、5、6、7 または 8 の配列のいずれかに示される配列またはその断片または変異体を有する。
【0054】
本発明の配列に対するいずれかの配列またはその断片の同一性とは、本発明の配列全体に対するいずれかの配列の同一性をいう。配列同一性は、例えば BLAST (Basic Local Alignment Search Tools) または FASTA (FAST-All) を用いることによって決定し得る。検索において、設定パラメータ“ギャップペナルティ”および“マトリックス”は、通常、デフォルトのままを選択する。
【0055】
本明細書において用いる場合、ペプチドの断片または変異体とは、ペプチドの、生物学的機能を有し得るいずれかの部分または変異体をいう。変異体とは、ペプチド配列の小さな変更、例えば少数の欠失、突然変異または挿入を有するペプチドをいう。本明細書において用いる場合、“ペプチドの機能的断片または変異体”とは、例えば、異なるピリンサブユニット間のイソペプチド結合を形成することができる(例えばピリン特異的ソルターゼのトランスペプチダーゼ活性)か、ソルターゼの基質となることができる(例えば SpaA、SpaB、SpaC、SpaD、SpaE および SpaF の機能)か、または細胞壁に結合することができる(例えば SpaC および SpaF の機能)かもしくは他のタンパク質または断片にに結合することができる(例えば SpaC の機能)断片または変異体をいう。また、“ペプチドの機能的断片または変異体”は、生物学的ドメインを含むあらゆる断片または変異体をも指す。
【0056】
今日では、ポリペプチド内のドメインは通常、フォールドし、単独で機能することができると考えられる空間的に区別可能な構造として定義される(Ponting C. P. and Russell R. R. 2002、Annu Rev Biophys Biomol Struct. 31:45-71)。
【0057】
例えば、一般的なドメインデータベースである PFAM (Finn、R. D. et al. 2009、Nucleic Acids Res. Nov 17. [Epub 出版前])のツールを用いた配列番号 4 のポリペプチド配列の解析に基づき、本研究において配列番号 4 のポリペプチド配列は 0.1 以下の有意な E 値を有する3つのドメインを有すると特徴付けされた。
【0058】
配列番号 4 の 137 から 271 までのアミノ酸は、タンパク質-タンパク質相互作用に関与し、これを媒介する多くのタンパク質(Colombatti、A. et al. 1993、Matrix. 13:297-306; Whittaker C. A. and Hynes R. O. 2002、Mol Biol Cell. 13:3369-87; Konto-Ghiorghi、Y et al. 2009、PLoS Pathog. 5:e1000422)においても見出される、第一のドメイン(PF00092 - フォン・ヴィルブランド因子 A 型ドメイン)を形成する。フォン・ヴィルブランド因子 A 型ドメインを含むタンパク質はしばしば、複数タンパク質の複合体において機能し、膜輸送、プロテアソーム、転写、DNA 修復、細胞接着、遊走、ホーミング(homing)、パターン形成およびシグナル伝達を含む真核生物における多数の生物学的事象に関与することが記載されている(Colombatti、A. et al. Matrix. 13:297-306)。より最近においては、ストレプトコッカス・アガラクチアの病原性株 NEM316 のピリンのフォン・ヴィルブランド因子 A 型ドメインが、ヒト上皮細胞へのこのタンパク質の接着機能に必須であることが示された (Konto-Ghiorghi、Y. et al. 2009、 PLoS Pathog. 5:e1000422)。
【0059】
配列番号 4 の 617 から 691 までのアミノ酸は第二のドメイン(PF05738 - Cna タンパク質 B 型ドメイン)を形成し、749 から 821 までのアミノ酸は第三のドメイン(PF05738 - Cna タンパク質 B 型ドメイン)を形成する。Cna タンパク質 B 型ドメインは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のコラーゲン結合性表面タンパク質と重要な役割を共通にすることが記載されている。しかし、かかる領域はコラーゲンの結合を媒介しないが、その代わりに、タンパク質の他の領域を細菌表面から突出させる‘柄’として働き、その結果、コラーゲンへの細菌の接着を促進する(Deivanayagam、C. C. et al. 2000、Structure. 8:67-78)。近年、イソペプチド結合を形成する残基を含むことが指摘されていた通り、Cna タンパク質 B 型ドメインについて別の性質が示唆され、線毛集合のためおよび異なるピリンサブユニットを連結させるために重要であることが示された(Kang、H. J. et al. 2007、Science 318、1625-1628)。断片の配列同一性のパーセンテージは、ポリペプチド全体について行うのと同様に、同一のツールおよび設定を用いて決定することができる。
【0060】
本発明のあらゆるポリペプチド配列を、上記した配列番号 4 と同様に解析することができる。Cna タンパク質 B 型ドメインは、配列番号 2 (アミノ酸 73-155 および 193-295)、配列番号 3 (アミノ酸 72-164)、配列番号 6 (アミノ酸 374-470 および 69-168)、配列番号 7 (アミノ酸 238-328) および配列番号 8 (アミノ酸 743-805 および 839-906) において見出される。
【0061】
現在の知見に基づけば、十分に高い同一性パーセンテージを有するポリペプチドは、同様の空間的構造を有し、かつ、必ずしも同一ではないが同様の機能に関与する可能性が高い。機能的および構造的等価性に関する配列レベルの同一性パーセンテージは、アラインメントの長さの関数である(Sander C. and Schneider R. 1991、Proteins. 9:56-68)。例えば、少なくとも 50 個のアミノ酸を有するポリペプチドは、その配列レベルの同一性パーセンテージが 35% を超える場合に、良好な構造類似性を有する。したがって、現在の知見によれば、35% を超える配列同一性パーセンテージと 50 アミノ酸を超える長さを有するポリペプチド配列は、同様の機能に関与し、同様の空間的構造を有し、かつ、同じ抗体に関連するスクリーニング方法を用いて検出することができると言える。
【0062】
本発明の好ましい態様において、配列番号 2-4 または 6-8 を有するペプチドは、線毛構造の一部である。本発明の別の好ましい態様において、本発明の線毛構造は、少なくとも1つの本発明のペプチド、より好ましくは少なくとも2つまたは少なくとも3つの本発明のペプチドを含む。さらに、本発明の好ましい態様において、線毛構造は、ペプチド GG00442 (配列番号 2)、GG00443 (配列番号 3) および GG00444 (配列番号 4) ならびに/またはペプチド GG02370 (配列番号 6)、GG02371 (配列番号 7) および GG02372 (配列番号 8)を含む。
【0063】
グラム陽性のプロバイオティック細菌
本発明のペプチドまたは線毛構造は、あらゆる細菌、例えばグラム陽性またはグラム陰性細菌のものであり得る。しかし、本発明の好ましい態様において、該ペプチドまたは線毛構造はグラム陽性細菌のものである。本発明のペプチドまたは線毛構造を含み得るグラム陽性細菌としては、これらに限定されないが、ラクトバチルス、ラクトコッカス、ビフィドバクテリウム、プロピオニバクテリウム、ロイコノストック、ストレプトコッカス、コリネバクテリウム、アクチノマイセスおよびマイコバクテリウムが挙げられる。
【0064】
本発明の好ましい態様において、ペプチドまたは線毛構造は、プロバイオティック細菌、例えばプロバイオティックなラクトバチルス、ラクトコッカス、ビフィドバクテリウム、エンテロコッカス、プロピオニバクテリウム、ロイコノストックおよびストレプトコッカス、または酵母のものである。プロバイオティクスとは、人間または動物に適切な量で投与した場合に宿主の健康を促進する生きた微生物、好ましくは非病原性微生物である(Fuller、R. 1989、J. Appl. Microbiol. 66:365-378)。プロバイオティクスは、食品または栄養補助食品(food supplement)として適切な量を摂取した場合に、宿主に有益な健康上の利益をもたらす。
【0065】
ヒトまたは動物におけるプロバイオティクスの健康機能(health claim)としては、多くの病気(ailment)の予防および処置の可能性が挙げられる。プロバイオティクスの健康促進効果としては、例えば、腸管の菌叢の均衡化および維持、免疫系の刺激および抗発癌活性が挙げられる。ヒトの腸管におけるプロバイオティクスの有用な効果は、生きた細菌細胞、その細胞構造および代謝産物によりもたらされるいくつかの独立した因子に基づく。
【0066】
細菌は、以下の要件を本質的に満たす場合に、プロバイオティックであると称することができる(Lee、Y-K and Salminen、S. 1995 Trend Food Sci Technol、6:241-245): 消化管内において支配的な厳しい条件(胃の低いpH、消化系の酸等)において生存し続けること; 腸管壁に付着すること; GIT にコロニーを形成すること; 腸管内で代謝を行うこと; 技術的に応用可能である(加工に耐える)こと; 臨床的に試験され、かつ、報告された健康上の効果を発揮すること; および、摂取するのに安全であること。
【0067】
微生物の量には消化管の様々な部分の間で非常に大きな差があり、全ての腸管細菌の約95% は結腸(colon)において見られる。一過性の微生物に加えて、400 種を超える細菌種が結腸において繁栄していると推定されている。優勢な種は以下である: バクテロイデス、ビフィドバクテリウム、コプロコッカス、ペプトストレプトコッカス、ユーバクテリウムおよびルミノコッカス。ラクトバチルス、ストレプトコッカス、フソバクテリウム、ベイロネラ、プロピオニバクテリウムおよび腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の種の数は若干少ない。いくつかの種は有用な微生物であるが、他の種はむしろ有害であり得る(Tannock、G.W. 1998、Int. Dairy J. 8:527-533)。腸管菌叢の構成の変化またはその量の突然の減少(重篤な下痢症、抗生物質処置等による)は、深刻な結果(アレルギー、腸管の疾患、癌の発生)をもたらし得る潜在的に病原性のある種の感染力を増大させる。
【0068】
本発明の好ましい態様において、ペプチドまたは線毛構造は、消化管(gastrointestinal tract)(GIT)に、最も好ましくは消化管の上皮に結合する。本発明の別の好ましい態様において、ペプチドまたは線毛構造は、粘液に結合する。粘液は、粘液生産細胞からのつるつるした分泌物であり、粘稠性コロイドである。粘液は、例えば GIT において、上皮細胞を保護する。殺菌性(antiseptic)酵素およびイムノグロブリンに加えて、粘液はムチンおよび無機塩をも含む。本明細書において用いる場合、消化管とは、食物の消化に関与する口から肛門までの管をいう。GIT は、口、食道、胃、十二指腸、空腸、回腸、小腸、大腸(結腸)、盲腸、直腸および肛門を含む。
【0069】
最も良く記載されているプロバイオティクスとしては、ラクトバチルス・ラムノサス(L. rhamnosus) GG、ラクトバチルス・ジョンソニイ(L. johnsonii) LA1、ラクトバチルス・カゼイ(L. casei)シロタおよびビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis) Bb12 が挙げられる。さらに、多数の他のプロバイオティクスが、当該技術分野における文献に記載されている。本発明の好ましい態様において、ペプチドまたは線毛構造は、非病原性グラム陽性分離株であるラクトバチルス・ラムノサス、最も好ましくは米国 (US4839281 A)を起源とするラクトバチルス・ラムノサス GG (LGG、LGG(登録商標))株のものである。LGG 株はヒトの糞便から分離され、pH 3 において良好に生育することができ、より低い pH 値および高い胆汁酸量の下であっても生存する。該株は、粘液および上皮細胞の両方に対して優れた接着を示し、かつ、GIT にコロニー形成する。グルコースからの乳酸収量は良好である: MRS ブロスにおいて生育させた場合、該株は 1.5-2% の乳酸を生産する。該株はラクトースを発酵させず、そのためラクトースから乳酸を生産しない。該株は、以下の炭水化物を発酵させる: D-アラビノース、リボース、ガラクトース、D-グルコース、D-フルクトース、D-マンノース、ラムノース、ズルシトール、イノシトール、マンニトール、ソルビトール、N-アセチルグルコサミン、アミグダリン、アルブチン、エスクリン、サリシン、セロビオース、マルトース、サッカロース、トレハロース、メレジトース、ゲンチオビオース(gentibiose)、D-タガトース、L-フコースおよびグルコネート(gluconate)。該株は、15-45℃において良く生育し、最適な温度は 3-37℃である。LGG は、寄託機関であるアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)に受託番号 ATCC 53103 の下に寄託されている。
【0070】
線毛遺伝子
線毛構造のピリンタンパク質をコードする遺伝子は、LGG ゲノムの同じ座においてクラスターを形成している。生物情報学的方法によって、線毛ペプチドをコードする全部で2つの異なる遺伝子クラスターが LGG ゲノムにおいて見出された(図 2 参照、図 2 に示される線毛オペロンをコードするヌクレオチド配列については図 11 も参照)。
【0071】
本発明の一つの好ましい態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号 9-16 のいずれかの配列またはその縮重配列または断片を有するか、または本発明のペプチドまたはその断片をコードする。配列番号 9-16 のいずれかに示される配列の縮重配列を有するポリヌクレオチドとは、該ポリヌクレオチドが1以上の異なるヌクレオチドを含むが、依然として同じアミノ酸をコードすることを意味する。本明細書において用いる場合、“ポリヌクレオチド”とは、ヌクレオチドの配列、例えば DNA または RNA 配列であり、一本鎖または二本鎖のポリ核酸であり得る。ポリヌクレオチドとの用語には、ゲノム DNA、cDNA および mRNA が含まれる。また、ポリヌクレオチドは単離された DNA であってもよい。
【0072】
本発明の別の好ましい態様において、遺伝子クラスターは少なくとも1つの本発明のポリヌクレオチドを含む。本発明の別の好ましい態様において、遺伝子クラスターは、少なくとも2つ、少なくとも3つまたは少なくとも4つの本発明のポリヌクレオチドを含む。最も好ましくは、遺伝子クラスターは、配列番号 9-12 または配列番号 13-16 に示されるポリヌクレオチドを含む。本明細書において用いる場合、“遺伝子クラスター”とは、結合機能(協調作用(concerted action))、本明細書においては例えば線毛構造に必要とされるペプチド/タンパク質をコードする少なくとも2つの遺伝子の群をいう。同じクラスターの遺伝子は通常、同じ遺伝的座位に集まっている。
【0073】
本発明の特定の態様によれば、ポリヌクレオチドは、配列番号 9、10、11、12、13、14、15 または 16 のヌクレオチド配列のいずれかまたはその断片に対して、少なくとも 30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5、99.8、99.9 または 100% の同一性を有する。
【0074】
本発明の別の特定の態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号 9、10、11、12、13、14、15 または 16 の配列のいずれかに示される配列を有する。
【0075】
製品および医薬組成物
本発明の一つの好ましい態様において、製品は少なくとも1つの本発明のペプチドまたは線毛構造を含む。製品はまた、少なくとも2つまたは少なくとも3つの本発明のペプチドを含み得る。一つの好ましい態様において、製品は、少なくとも1つの本発明のペプチドの断片を含む。本発明の製品は、これらに限定されないが、食品、動物飼料、栄養製品、栄養補助食品、食品材料(food ingredient)、健康食品、医薬品および化粧品からなる群より選択され得る。本発明の一つの好ましい態様において、製品は食品または飼料である。本発明の別の態様において、製品は機能性食品、即ち、健康を増進させる性質および/または疾患を予防もしくは処置する性質を有する食品である。好ましくは、本発明の食品は、乳製品、ベーカリー製品(bakery product)、チョコレートおよび菓子、砂糖およびガム菓子、穀物製品、スナック、ベリーもしくは果物に基づく製品ならびにドリンク/飲料からなる群より選択される。乳製品としては、これらに限定されないが、ミルク、酸乳(sour milk)、ヨーグルトおよび他の発酵乳製品、例えばチーズおよびスプレッド、粉ミルク、子供用食品、ベビーフード、幼児用食品、乳児用フォーミュラ(infant formula)、ジュースならびにスープが挙げられる。本発明のペプチドまたは線毛構造に加えて、製品は、他のスターター(starter)、プロバイオティクス等を含んでもよい。
【0076】
本発明の好ましい態様において、製品は医薬組成物である。本発明の一つの好ましい態様において、医薬組成物は少なくとも1つの本発明のペプチドまたは線毛構造を含み、別の態様においては、少なくとも2つまたは少なくとも3つの本発明のペプチドを含む。医薬組成物は、例えば、固体、半固体または液体の形態、例えば錠剤、ペレット、カプセル、溶液、エマルション、懸濁液、膣用ゲルおよび軟膏、膣用坐剤等の形態において用い得る。好ましくは、組成物は、経口投与または経腸適用のためのものである。
【0077】
少なくとも1つの本発明のペプチドまたは線毛構造に加えて、医薬組成物は、プレバイオティクス、医薬上許容される担体(例えば、水、グルコースまたはラクトース)、アジュバント、賦形剤、補助的賦形剤、防腐剤、安定化剤、増粘剤または着色剤、香料、結合剤、充填剤、潤滑剤、懸濁剤、甘味料、香味料、ゼラチン化剤、抗酸化剤、保存剤、緩衝剤、pH 調整剤、湿潤剤または対応する製品において通常見出される成分を含み得る。
【0078】
本発明の製品または医薬組成物は、ペプチドまたは線毛構造を、所望の効果を生み出すのに十分な量で含む。他の成分ならびに製品または医薬組成物の他の特定の構成成分は、市場で入手されるかまたは当該技術分野において公知の常套の技術によって調製される。
【0079】
製品または医薬組成物は、当該技術分野において知られるあらゆる常套のプロセスによって製造することができる。ペプチドまたは線毛構造を製品にすることは、ペプチドまたは線毛構造を、例えばいかなる製品に添加してもよく、あるいはいかなる物質と混合しても良いことを意味する。ペプチドまたは線毛構造はまた、例えば適切な条件における発現によって、製品中に生じさせてもよい。ペプチドまたは線毛構造は、調製と共に、またはその後、最終製品の仕上げの間に、添加または混合し得る。本発明の好ましい態様において、本発明のペプチドまたは線毛構造は、製品に添加される。
【0080】
生産方法
本発明のペプチドまたは線毛構造は、例えば合成方法、例えばペプチド合成によって、または遺伝的に改変された生物を用いる組換え生産によって生産することができる。本発明の好ましい態様において、ペプチドまたは線毛構造は、組換えのものである。本明細書において用いる場合、“組換え”の遺伝物質とは、典型的には1以上の遺伝物質、例えば様々な由来の DNA 鎖の組み合せである物質をいい、配列を結合させまたは装入することによって生み出される。組換え生産は、遺伝子または遺伝子産物の中へ、または、例えば遺伝子の発現(例えば過剰発現または低発現)の中へ特定のおよび/または特別の形質を達成することを可能にする。本発明のポリヌクレオチドは、例えば、あらゆる内在性または外来性調節因子、例えばプロモーターの制御下におくことができる。組換えタンパク質は、組換え DNA から生じる。
【0081】
少なくとも1つの対象のポリヌクレオチドは、細胞から単離してもよく、または合成により生産してもよい。かかるヌクレオチドを、宿主細胞に形質転換することができる。本発明のいずれかのペプチドを生産するのに適した宿主細胞は、あらゆる真核細胞または微生物、好ましくは細菌、最も好ましくは乳酸菌、例えばラクトバチルス、ラクトコッカス、ビフィドバクテリウム、エンテロコッカス、ロイコノストックおよびストレプトコッカス、またはプロピオニバクテリウム、または酵母であり得る。
【0082】
本明細書において用いる場合、“形質転換”とは、外来性の遺伝物質、好ましくは DNA による細胞の遺伝的変更であって、この遺伝物質の発現をもたらすものをいう。外来性の遺伝物質は、そのまま導入するか、または他の遺伝物質、例えばベクター、プラスミド等に組み込むことができる。あらゆる遺伝子工学の方法またはあらゆる分子クローニングの方法を、本発明のポリヌクレオチドを用いて宿主細胞を形質転換するために用いることができる。真核細胞に外来性物質を導入する様々な方法がある。物質、例えばポリマー(例えば、DEAE-デキストランまたはポリエチレンイミン)、リポソームおよびナノ粒子(例えば、金)が、形質転換のための担体として使用されている。遺伝物質は、例えばウイルスまたはベクターを担体として用いることによって細胞に導入することもできる。外来性物質を細胞に導入するための他の方法としては、これらに限定されないが、ヌクレオフェクション(nucleofection)、エレクトロポレーション、コンジュゲーション(conjucation)、トランスフェクション、ソノポレーション(sonoporation)、ヒートショックおよびマグネトフェクション(magnetofection)が挙げられる。様々なトランスフェクション試薬、例えばリン酸カルシウムまたはリポフェクタミン(lipofectamine)の使用が、当該技術分野において周知である。外来性物質を細菌細胞に導入するための好ましい方法は、エレクトロポレーションである。
【0083】
本発明のペプチドまたは線毛構造は、該ペプチドまたは線毛構造を天然に発現する細胞によって生産することもできる。
【0084】
天然の細胞または形質転換された宿主細胞が適切な条件下で本発明のペプチドを生産した後、該ペプチドを例えば細胞から精製することができ、または、分泌された形態の該ペプチドを例えば培養培地から回収することができる。ペプチドを精製するために、例えば超音波処理、照射(radiation)、加熱、溶解、機械的攪拌(せん断)、酵素的方法、‘cell pomb’または化学物質(低浸透圧ショック、界面活性剤(detergent)、および溶剤)またはこれらの混合によって、細胞を破壊することができる。ペプチドまたは線毛構造は、生育しているかもしくは代謝的に活性な、即ち、生きているおよび/または凍結乾燥された生物、または生存していない、例えば熱により殺された、照射されたもしくは溶解された生物から得ることができる。ペプチドまたは線毛構造は、死細胞または生細胞から得ることができる。
【0085】
ペプチドまたは線毛構造は、ある細胞において生産し、次いで同じ細胞上に提示させることができ、あるいは、ペプチドまたは線毛構造は、それが提示される細胞以外の別の細胞において生産してもよい。
【0086】
あらゆる既知の方法、例えば免疫化を、本発明のペプチドに対する抗体を生産するために用いることができる。抗体は、該ペプチドのあらゆるエピトープまたは機能ドメインに対して作成することができ、モノクローナルまたはポリクローナルのいずれであってもよい。本発明の好ましい態様において、抗体はポリクローナルである(図 3)。本明細書において用いる場合、“ペプチドの機能ドメイン”とは、該ペプチドの、生物学的機能を有するいずれかの部分をいう。
【0087】
処置
単細胞微生物の大きなグループである細菌は、真核生物、例えば人間、動物および植物において様々な疾患を引き起こす。しかし、重要な病原体の表面における線毛の存在が研究者の間で興味を獲得したのは最近のことにすぎない。GIT およびその微生物叢は対象の健康に影響を与えるため、細菌の線毛の有用性は新規な処置を強化(potentiate)する。本発明のペプチド、線毛構造またはポリヌクレオチドは、微生物、例えば細菌もしくはウイルスによって、または他の理由、例えば栄養の不均衡、ストレスのかかる生活習慣もしくは遺伝的素因によって引き起こされる疾患を処置又は予防する方法において利用することができる。ペプチド、線毛構造もしくはポリヌクレオチドを用いて、または本発明の医薬品を用いて予防または処置し得る疾患または病気としては、これらに限定されないが、下痢症、例えば旅行者下痢症、動脈性高血圧、血管疾患、アレルギー、アトピー性疾患、尿路感染症、呼吸器感染症、う蝕、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患が挙げられ、小腸(minor bowel)の不快感を改善することおよび人の全体的な健康を増強/促進することも含まれる。本発明の組成物は、消化管の障害および疾患の予防および処置のため、および一般的健康を促進するためにも有用である。該障害または疾患は、好ましくは、粘膜炎、腸透過性障害、IBD、IBS、および他の消化管の障害からなる群より選択される。本発明の特別の態様において、ペプチドまたは線毛構造は、ワクチン(免疫学的応答)として用いられる。
【0088】
対象の GIT への病原性細菌の接着を減少させるかまたは阻害する方法は、病原体によって引き起こされる症候の予防または軽減をもたらす。病原体は、本発明のペプチドまたは線毛構造との競合によって、GIT の上皮または表面から排除される。本願の実施例 11 は、LGG の線毛タンパク質を用いて有害な病原性細菌を排除する競合アッセイを記載している。好ましい排除されるべき病原体としては、これらに限定されないが、大腸菌(Escherichia coli)、サルモネラ、バチルス、バクテロイデス、リステリア、スタフィロコッカス、エンテロコッカス、クロストリジウムおよびストレプトコッカスが挙げられる。本明細書において用いる場合、“病原性細菌”とは、何らかの疾患または有害な効果を引き起こすあらゆる細菌をいう。本明細書において用いる場合、“接着”とは、化学的または物理的な結合/力によって、またはそれらによらないで、少なくとも2つの分子または構造が互いに繋ぎ止められることをいう。様々なタイプの接着、例えば機械的接着、化学的接着、分散(dispersive)接着、静電(electrostatic)接着および拡散(diffusive)接着が知られている。接着は、可逆的または非可逆的事象であり得るが、生化学の系においては、接着は通常、可逆的なものである。
【0089】
エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)およびエンテロコッカス・フェシウムは、重要な臨床的抗生物質であるバンコマイシンに対して高度に抵抗性のバンコマイシン耐性エンテロコッカス(VRE)(de Regt、M.J. et al.、2008、J Antimicrob Chemother. 62(6):1401-1406)を含む新興の(emerging)院内病原体である腸管細菌である。これらの種は、入院患者における血流、手術部位および尿路の感染症を引き起こす上位3つの院内細菌性病原体に順位付けされる(Richards、M.J. et al.、2000、Infect Control Hosp Epidemiol 21:510-515)。エンテロコッカスは、広範な疾患を引き起こし得る: 尿路感染症、菌血症、敗血症、心内膜炎、創傷および組織の感染、腹腔内および骨盤感染 (Kayser、F.H. et al. 2003、Int J Food Microbiol 88(2-3):255-262)、また、特に植え込まれた装置の存在下において手術部位に感染し得(Baldassarri L et al.、2005、Int J Artif Organs 28 (11):1101-1109)、さらに、髄膜炎 (Pintado V et al.、2003、Medicine (Baltimore). 82(5):346-64)、慢性根尖性歯周炎 (Hancock H.H et al.、2001. Oral Surg Oral Med Oral pathol 91:579-586) および根尖部病変 (Sunde P.T. et al.、2002、J Endod 28:304-310)を引き起こし得る。
【0090】
近年、エンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)の分離株が表面に位置する線毛を含み、著しい事に、エンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)の院内(hospital-acquired)株の大多数(71 %)および非院内(non-hospital)株の重要な部分(43 %)が線毛遺伝子を含むことが記載された (Hendricks A.P. et al.、2008、Microbiology 154:3212-3223)。二重盲検プラセボ対照研究において、ラクトバチルス・ラムノサス GG の摂取によって、VRE陽性の患者における感染からエンテロコッカスが効果的に除去されたことが記載されている (Manley K.J. et al.、2007 Med J Aust. 186(9):454-457)。線毛を含むラクトバチルス・ラムノサス GG と VRE との間の競合についての分子的裏付けは、ラクトバチルス・ラムノサスがヒトの消化管粘液に対してバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)よりも 20-130 倍高い結合性を有することを示した結合研究から生じる (Pultz N.J. et al.、2006 Curr Microbiol. 52(3):221-224)。驚くべき事に、本発明の結合アッセイにおいて、精製された Hisタグ標識された LGG タンパク質 SpaA、SpaB および SpaC は、病原体、例えばバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)が粘液に結合するのを阻害する。
【0091】
対象の消化管、上皮または粘液への病原性細菌の接着を減少させるかまたは阻害する方法は、以下の工程を含み得る: i) 少なくとも1つの本発明のペプチドまたはその断片または線毛構造を生産する工程; ii) 該ペプチド、断片および/または線毛構造を細胞または粘液上に提示させる工程。
【0092】
有害なまたは病原性の細菌の接着性を減少させることに加えて、本発明は、GIT への有益な細胞または他の物質、例えば酵素、組換え細胞、マイクロカプセル、ナノカプセルまたは医薬の接着を促進する可能性をも提供する。粘液および GIT への細菌細胞の接着を促進する方法、または消化管粘液への細菌細胞の接着を促進するための本発明のペプチドまたは線毛構造の使用は、インビボ、エキソビボ(ex vivo)またはインビトロで GIT に接着するという新規なペプチドまたは線毛構造の驚くべき能力に関連する。該線毛ペプチドまたは線毛構造は、細胞または他の物質、例えば医薬、酵素、微生物、組換え細胞、マイクロカプセルまたはナノカプセルを GIT に結合させるためのツールとして機能する。
【0093】
対象において免疫応答を改変する方法、および免疫応答を改変するためのペプチドまたは線毛構造の使用は、本発明のペプチドまたは線毛構造が免疫応答の変化を引き起こすという驚くべき発見に基づく。免疫応答とは、体内またはエキソビボの系もしくはインビトロの系における抗原に対する応答、または別のモジュレーター(modulator)に対する応答をいう。かかる応答は、リンパ球および/または特異的な抗体による抗原の認識によって媒介され得る。免疫応答の一つの目的は、通常は外来性のものである抗原を破壊すること、または抗原を中和することである。本明細書において用いる場合、“改変”とは、免疫応答の変化、例えば増大または減少をいう。免疫応答の変化は、これらに限定されないが、シグナル伝達経路の活性化を検出すること、およびマーカー遺伝子の転写もしくは翻訳レベルまたはタンパク質、例えば抗体もしくは受容体の量を検出することに基づく方法を含むあらゆる適切な医学的、生理学的または生物学的試験によってモニターすることができる。現在、細胞または生物における免疫応答を決定するために利用できる単一のマーカーは存在しない。しかし、好ましいマーカーとして、これらに限定されないが、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターロイキン 12 (IL-12)、IL-10、IL-1β、およびインターフェロンα(IFN-α)が挙げられる。他の可能なマーカーは、IL-1α、IL-6、IL-18、IFN-γ、IL-4、TGF-β、IL-I Ra および IL-18BP である。本発明の好ましい態様において、マーカーは、TNF-α、Th1 サイトカイン、IL-10 および IL-12 からなる群より選択される。
【0094】
TNF-αは、免疫系を活性化し、かつ、炎症反応を開始して感染に対抗する炎症性サイトカインである(Bertazza L and Mocellin S. 2008、Front Biosci. 13:2736-43)。TNF-αはまた、IL-6 および INF-γと共に、炎症の全身作用、例えば発熱および急性期タンパク質の合成をも媒介する。適切な量の TNF-αおよび他の炎症性サイトカインの産生は、感染の消散(resolution)のための応答において重要である。しかし、不適切または過剰な量の炎症性サイトカイン、例えば TNF-αは、病態生理学的状態、例えば関節リウマチ、脊椎関節炎(spondyloarthritis)、ぶどう膜炎、乾癬および炎症性腸疾患と関連している。TNF-α は、IFN-γと共に、Th1 型サイトカインの一つでもあり、そのため、TNF-αはマクロファージを活性化し、B 細胞を阻害し、それにより Th1 型免疫を促進する。TNF-αは、マスト細胞の活性化にも関与しており、そのため、アレルギー反応に関与する。Th1 型応答は、細胞性免疫をもたらす。Th1 型応答は、細胞内の病原体に対する宿主の応答を協調させ、かつ、様々な感染、例えば呼吸器感染症および消化管感染、例えば下痢症において重要な貪食細胞の活性化および微生物殺傷の促進において中心的な役割を有する。Th1 型応答は、アレルギーにおいて免疫応答のバランスをとるのにも重要である − アレルギーにおいて、免疫応答は過敏症をもたらす Th2 型応答の方に向かって歪んでおり、Th1 型免疫応答を刺激する物質は、該状況のバランスをとることができる。
【0095】
免疫応答の変化は、あらゆる生物学的サンプルまたは対象から、インビトロ、エキソビボまたはインビボの試験によってチェックすることができる。プロバイオティックな株の性質は、例えば末梢血単核球(PBMC)、ヒト単球、マクロファージおよび樹状突起細胞を用いて、細胞培養(インビトロ)において調査し得る。エキソビボの実験の例としては、好中球および単球の食作用、酸化バースト、即ち好中球および単球のスーパーオキシド生成、NK 細胞の活性、リンパ球増殖および末梢血単核球、単球またはリンパ球によるサイトカインの産生の測定が挙げられる。インビボの実験としては、これらに限定されないが、ワクチンに対する応答(例えば、ワクチン特異的抗体またはワクチン特異的抗体を形成する細胞)、遅延型過敏症および弱毒化された病原体に対する応答の測定が挙げられる。
【0096】
プロバイオティック効果に代わるものとして、本発明のペプチドまたは線毛構造は、細胞または対象において他の効果をもたらし得る。これらの他の効果は、単独で、またはプロバイオティック効果に加えて生じ得る。プロバイオティック効果は、他の免疫調節物質とペプチドまたは線毛構造との組み合わせであり得る。
【0097】
本発明において、処置または予防の対象は、あらゆる真核生物、好ましくはヒトまたは動物、特にペットおよび生産動物(production animal)であり得る。動物は、生産動物およびペット、例えばウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、家禽、イヌ、ネコ、ウサギ、爬虫類およびヘビからなる群より選択され得る。
【0098】
スクリーニング方法
本発明のあらゆるポリヌクレオチドまたはそのあらゆる断片を、同様の線毛構造を有する細菌株をスクリーニングするために用いることができる。細菌株をスクリーニングする方法において、線毛ペプチドまたはその断片をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドまたはその断片を、例えば、PCR に基づく方法、例えば常套の PCR および配列決定またはミニ配列決定; ハイブリダイゼーション方法、例えばサザンまたはノーザンハイブリダイゼーション; 様々なプログラムおよびパラメータを用いるあらゆる生物情報学的方法; ならびに本発明のペプチドに対する抗体、フローサイトメトリー、免疫沈降、共免疫沈降、免疫組織化学、免疫蛍光、ELISA および ELISPOT の手法を用いるあらゆる抗体に基づく方法によって決定することができる。したがって、本発明の好ましい態様において、線毛構造を有する新規な細菌株は、LGG の線毛遺伝子上に設計されたプライマーを用いる PCR によってスクリーニングされる。本発明の別の好ましい態様において、線毛構造を有する新規な細菌株は、本発明の LGG の遺伝子の増幅産物をプローブとして用いるサザンハイブリダイゼーションによってスクリーニングされる。
【0099】
本発明のポリヌクレオチドに対して相同な配列または断片をスクリーニングするための方法において、プライマーまたはプローブについてストリンジェントなハイブリダイゼーション条件が好ましい。本明細書において用いる場合、“相同な配列”または“高い同一性を有する配列”とは、他の配列に対して同一であってもよいが同一である必要は無い配列をいう。しかし、該配列は類似しており、かつ、高い同一性の % を有する。
【0100】
“生物学的に合同な(biologically congruent)断片”とは、類似の配列または 35% を超える同一性パーセンテージおよび 50 アミノ酸を超える長さを有する配列をいう。
【0101】
本発明の別の好ましい態様において、線毛構造を有する新規な細菌株およびメタ集団(meta-population)は、計算的アプローチによって、現存のまたは新たに作成される配列のリストまたはデータベースからスクリーニングされる。
【0102】
スクリーニングの対象となるサンプルは、あらゆる生物またはあらゆる物質から得ることができ、例えば、細菌培養物、組織サンプル、血液サンプル(血清または血漿サンプル)、食品サンプルまたは環境サンプルであり得る。本発明の好ましい態様において、スクリーニングの対象となる細菌株は、潜在的なプロバイオティック細菌株である。
【0103】
本発明のスクリーニング方法を用いて、病原性細菌株または既知の病原性構成要素を含む細菌株に関連する株を検出することが可能である。かかる株は、本発明の配列、例えば配列番号 4 (GG00444)に機能的に対応する断片を有し且つ少なくとも 35 から100% の配列同一性を有する配列を含み得、または本発明のポリヌクレオチド、例えば配列番号 12 もしくはその縮重形態を含むポリヌクレオチドを含み得、または本発明のペプチドをコードし得る。
【0104】
本発明において、スクリーニングは、インビボ、インビトロ、インシリコまたはエキソビボの条件で行うことができる。
【0105】
本発明を、何ら限定する意図のない以下の実施例によって説明する。
【実施例】
【0106】
実施例 1、組換え LGG ピリンタンパク質のクローニング、発現および精製
N末端のシグナルペプチドおよび C末端の細胞壁ソーティングシグナル(CWSS)をコードする領域を除く、SpaA (GG00442)、SpaB (GG00443)、SpaC (GG00444)、SpaD (GG02370)、SpaE (GG02371) および SpaF (GG02372)のコード配列を、一方が EcoRI 部位(GG02372 については SacI 部位)を含み、他方が XhoI 部位を含む、隣接する 5'- および 3'-末端オリゴヌクレオチドプライマーのペア(表 1 参照)を用いて、LGG のゲノム DNA から PCR により増幅した。増幅された PCR 断片を EcoRI (または GG02372 については SacI) および XhoI 制限エンドヌクレアーゼを用いて切断し、次いで T7 に調節される発現ベクター pET28b+ の対応する部位へ連結し、そして、得られた組換えプラスミド(GG00442 については pKTH5319、GG00443 については pKTH5320、GG00444 については pKTH5321、GG02370 については pKTH5324、GG02371 については pKTH5379、GG02372 については pKTH5341)を、細胞内の C末端ヘキサヒスチジンタグが付されたタンパク質の発現のために大腸菌株 BL21 (DE3) pLysS において増殖させた。標準的なプロトコールを用いる全ての DNA 操作において、確立された手順を採用した。タンパク質生産のために、大腸菌を 50 μg/ml のカナマイシンが補充されたルリア-ベルターニ(Luria-Bertani)培地中で 37℃において対数期の中間まで増殖させ、タンパク質発現を 1 mM の IPTG によって3時間の間誘導し、細胞を遠心分離によって回収し、細胞ペレットを溶解バッファー[50 mM NaH2PO4 (pH 8.0)、300 mM NaCl、10 mM イミダゾール]中に再懸濁させた。細胞を超音波処理によって破壊し、遠心分離によって清澄化し、細胞を含まない可溶化液(lysate)を、0.45 μmのフィルターを通過させた。次いで、ヘキサヒスチジンタグが付されたピリンタンパク質を Ni2+ キレートアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。簡潔に記載すると、細胞を含まない可溶化液をそれぞれ Ni-NTA アガロース(Qiagen)のカラムにアプライし、洗浄バッファー[50 mM NaH2PO4 (pH 8.0)、300 mM NaCl、20 mM イミダゾール]を用いて洗浄し、溶出バッファー[50 mM NaH2PO4 (pH 8.0)、300 mM NaCl、250 mM イミダゾール]を用いてタンパク質をカラムから溶出させた。精製されたタンパク質を含むカラム画分をプールし、BioRad EconoPac 10 DG 脱塩カラムを用いて、SpaA (GG00442)、SpaC (GG00444)、SpaD (GG02370)、SpaE (GG02371) および SpaF (GG02372)タンパク質については 10 mM のトリス-HCl(pH 8.0)に、SpaB (GG00443)タンパク質については 50 mM の酢酸ナトリウム(pH 5.1)にバッファー交換し、30 kDa の Microsep フィルター(Pall Life Sciences)を用いて濃縮した。組換えピリンタンパク質の純度を SDS-PAGE によってモニターし、該タンパク質の濃度を A280 測定によって推定した。
【0107】
実施例 2、組換え LGG ピリンタンパク質に特異的なポリクローナル抗体の作成
SpaA (GG00442)、SpaB (GG00443)、SpaC (GG00444)、SpaD (GG02370)、SpaE (GG02371) および SpaF (GG02372)ピリンタンパク質に特異的なウサギポリクローナル抗体を、Johnston B.A. ら (1991、Laboratory of Animal Science 41: 15-21)によって記載された免疫化プロトコールに従って作成した。簡潔に記載すると、フロイント(Freud's)完全アジュバント中の 400 μg の精製された組換えピリンタンパク質の 1:1 の混合物の皮下(SC)注入(1 ml)を最初に投与し、その後、3週間間隔で、フロイント(Freud's)不完全アジュバント中の 200 μgのタンパク質の 1:1 の混合物の3セットのブースター注入(SC)を行った。最後のブースター注入の2週間後に、最後の血液採取を行った。標準的なプロトコールを用いて、血液からの抗血清の調製を行った。
【0108】
【表1】

【0109】
実施例 3、生物情報学的方法によるタンパク質をコードする配列の予測
Glimmer3 (Delcher A.L. et al. 2007、Bioinformatics. 23:673-679)を用い、LGG の全ゲノム配列を解析することによって、タンパク質をコードする配列の予測を達成した。Glimmer3 を、デフォルトのパラメータに対する以下の変更を伴う反復モード(iteration-mode)スクリプト(g3-iterated.csh)を用いて適用した: 最小遺伝子長(150 bp)および最大オーバーラップ(50 bp)。BLAST (Altschul S.F. et al. 1997、Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402) を用い、推定上のリボソーム結合部位を探索することによって最初の予測の開始部位を修正した。GG00441、GG00442、GG00443、GG00444、GG02369、GG02370 および GG02371 についての Glimmer3 による予測はそのまま受け入れられたが、GG02372 の予測についてはさらに 21 bp 下流において開始するよう手動で修正した。TransTermHP (Kingsford C.L. et al. 2007、Genome Biol. 8:R22.)を用いて Rho 依存性停止部位を予測し、これにより、GG00441、GG00442、GG00443 および GG00444; GG02369、GG02370、GG02371 および GG02372 が単一の転写産物として転写され、独自のオペロンを形成していることが明らかとなった。
【0110】
予測されたタンパク質をコードする配列をタンパク質配列に変換すること、および公共の配列データベースに対して相同性検索を行うことによってアノテーションを得た (Wheeler D.L. et al. 2008、Nucleic Acids Res. 36: D13-21)。クエリーとのローカルアラインメントが ≧35% のアミノ酸同一性を有し、かつ、対象の配列の ≧80% をカバーする配列からのみ、アノテーションを受け入れた。かかる検索に基づいて、GG00441 および GG02369 はソルターゼ酵素としてアノテートされ; GG00444 はフォン・ヴィルブランド因子ドメインを含むタンパク質としてアノテートされ; GG02370 および GG02371 は保存された仮説上のタンパク質としてアノテートされ、GG02372 は外膜タンパク質としてアノテートされた。GG00442 および GG00443 についてはアノテーションが得られなかった。
【0111】
InterPro および COG 解析(Mulder N.J. et al. 2007、Nucleic Acids Res. 35:D224-D228; Tatusov R.L. et al. 2000、Nucleic Acids Res. 28:33-36)の情報を取り入れ、特定のドメイン解析を行うことによって、該配列に関するさらなるアノテーションおよび情報を得た。該特定のドメイン検索は、Hmmerパッケージの Hmmsearch ツールを使用し、かつ、PFAM および TIGRFAM の公共データベース(Finn R.D. et al. 2008、Nucleic Acids Res. 36:D281-288; Haft D.H. et al. 2003、Nucleic Acids Res. 31:371-373)から得られるソルターゼ結合(sortase associated)ドメインモデルを用いて実施した。以下のモデルを用いてソルターゼ認識部位を検索し: TIGR01167、TIGR03063、TIGR03065、TIGR03068 および PF00746、また、以下のモデルを用いてソルターゼを検索した: TIGR01076、TIGR03064、PF04203 および PF07170。PFAM モデルの fs- および ls- モデルの両方ならびに TIGR モデルの全長モデルを検索した。両方の検索型、即ち配列検索およびドメイン検索を用いた。該データベースによって与えられる記録された信頼されたカットオフよりも高いスコアを有する一致を、有意なものとみなした。配列モデルが有意であった場合には、全てのドメインのヒットを受け入れた。これらの検索により、GG00441 および GG02369 がソルターゼ酵素であること、ならびに GG00442、GG00443、GG02370 および GG02372 がソルターゼ認識部位を含み、そのため、ソルターゼの基質である可能性が高いことが示された。また、正規表現(regular expression)検索(パターン LPXTG および LVNTG (Ton-That H et al. 2004、Mol Microbiol. 53:251-261)を用いる、ここで X は任意のアミノ酸を意味する)を用いてソルターゼ認識部位を検索し、以下の一致が明らかとなった: GG00442 および GG00443、GG00444、GG02370、GG02371 および GG02372。元の YXLXETXAPXGY パターン(Ton-That、H et al. 2004、Mol Microbiol. 53:251-261)に由来する正規表現として YXXXETXXPX(G/N)X を用いて、E-ボックスを検索した。該 E-ボックス検索によって、GG00442、GG00443、GG00444、GG02370 および GG02372 上に、これらの配列がソルターゼの基質である可能性を立証するヒットが見出された。SignalP3 ツールを使用し、隠れマルコフモデルおよびニューラル・ネットワーク法の両方を用いて、可能性のある分泌シグナルの存在を調べた。全ての場合において、両方の方法により、GG00441、GG00442、GG00443、GG02370、GG02371 および GG02372 のペプチド配列が分泌に適したシグナルを含んでいることが予測された。
【0112】
実施例 4、 公共のデータベース上における生物情報学的スクリーニング
公共の推定配列コレクションに対する計算的(computational)検索を行い、それによって同様のペプチド配列、ポリヌクレオチド配列または線毛構造を含む細菌株を検出するために、本発明のペプチド配列、その断片、その変異体、ポリヌクレオチド配列、その断片またはその変異体を用いることができる。生物情報学的スクリーニング方法の別の好ましい使用は、ペプチド配列、ポリヌクレオチド配列または線毛構造によって濃縮された細菌群を選択するための使用である。生物情報学的検索は、公共の配列コレクションの中にあるが、専門家によって未だアノテートもキュレート(curate)もされていない配列を有する株の検出のための妥当な(plausible)方法を提供する。
【0113】
生物情報学的検索を、アルゴリズム、例えば BLAST (Altschul、S.F. et al. 1997、Nucleic Acids Res. 25(17): 3389-3402) または FASTA (Pearson、W.R. 1990、Methods Enzymol 183:63-98) (好ましくはデフォルトのパラメータを用いる)を用いて行う。BLAST および FASTA アルゴリズムを用いて、選択された配列を他の一連の配列と比較し、統計的に有意なヒットを報告する。ペプチド配列、ポリヌクレオチド配列または線毛構造を、例えば国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)(NCBI)によって提供される以下の公共配列コレクションから検索するか: 非冗長タンパク質配列、環境サンプル、全ゲノムショットガンリードおよびゲノム調査(Genomic survey)配列; または、好ましくは、例えばハイスループットな配列決定法を用いて作成される推定配列のコレクションから検索する。
【0114】
配列番号 1-8 のペプチド配列またはその断片を用いて、NCBI の非冗長タンパク質配列コレクションに対して標準的 Blast 検索を行うことにより、ペプチドの有意な一致をスクリーニングする。有意なペプチドの一致が見出された場合には、興味のあるこのペプチドをコードする細菌を、推定上のプロバイオティック株として、またはそれに対して該ペプチドが有効である推定上の病原体として分類する。
【0115】
実施例 5、 LGG の線毛を示す原子間力顕微鏡観察
LGG 株を、37℃において 20 時間、MRS (LabM) アガープレート上で嫌気的に増殖させた。細菌細胞を滅菌水中で希釈し、雲母(Mica)スライドに固定し、空気乾燥した。Nanoscope IIIa Multimode AFM (原子間力顕微鏡、Digital Instruments、Santa Barbara)顕微鏡および J スキャナーによって、細菌のトポグラフィー画像および位相差画像の両方を得た(図 4)。
【0116】
実施例 6、非定量的 ELISA アッセイによって評価されるヒト腸管粘液への組換え LGG タンパク質の結合
ヘキサヒスチジンタグが付された組換えの SpaA、SpaB、SpaC、SpaD、SpaF ピリンタンパク質のヒト腸管粘液への結合を、インビトロで評価した。切除されたヒトの腸管組織を粘液の源として用いた。切除されたヒト腸管組織の使用はトゥルク大学およびトゥルク大学中央病院(いずれもフィンランドのトゥルクにある)の共同倫理委員会によって承認され、患者から書面によるインフォームドコンセントを得た。例えば結腸直腸癌による結腸の手術を受けている患者から得た組織の健康な部分から、粘液を分離した。腸管組織の処理および粘液の分離は、これまでに記載された通りに行った(Vesterlund、S. et al 2005; Res Microbiol. 156(2):238-244; J Microbiol Methods 2005、60(2):225-233)。粘液は、4℃における終夜インキュベーションによって、ポリスチレン製のマイクロタイタープレート(Maxisorp、Nunc、Denmark)上に受動的に固定化された。リン酸緩衝食塩水(PBS; pH 7.2)を用いてウェルを3回洗浄し、PBS中の0.5%(w/v)ウシ血清アルブミン(Sigma A7030)を用いて、室温で 1 時間ブロッキングした。ブロッキング液を除去し、BSA-PBS 中の 0.5 または 0.05 nmol のヘキサヒスチジンタグが付されたピリンタンパク質を添加した後、37℃において1時間インキュベートした。インキュベーションおよび洗浄の後、結合しているタンパク質を酵素結合免疫吸着アッセイによって検出した。マウステトラHis抗体(Qiagen、34670)および二次抗体としての Fab 特異的ヤギ抗マウスIgG アルカリフォスファターゼコンジュゲート(Sigma、A1293)を用いてピリンタンパク質を検出した。一次および二次抗体について、それぞれ 1:2000 および 1:5000 (v/v) の希釈を用いた。ジエタノールアミン-MgCl バッファー(Reagena、170057、フィンランド)中の基質である 4-ニトロフェニルリン酸二ナトリウム塩(pNPP、Sigma、A7030)を 2 mg/ml の濃度で添加し、1 時間後に 405 nm において発色を測定した。結果は、並行した3つの測定の平均±stdevである (図 5a-b)。
【0117】
実施例 7、 細胞壁に結合した線毛タンパク質の抽出およびウエスタンブロット
20g/l のバクトペプトン(Bacto peptone)(Difco)を用いて強化した mTSB 培地(15 g/l TSB 培地、BD Biosciences)、または 0.6% の ox gall bile (Sigma) が補充された MRS 培地に、MRS(LabM)中の LGG および LC705 (陰性対照) 細胞の新鮮な 10 時間培養物を接種し(1%)、37℃で培養した。光学密度(OD600)を測定することにより増殖をモニターし、定常増殖期における細胞を遠心分離によって回収した。
【0118】
細菌細胞の分画を、他に記載されているのと本質的に同様にして行った(Avall-Jaaskelainen、S. et al. 2003、Appl Environ Microbiol 69:2230-2236)。簡潔に記載すると、細菌(109 cfu)を、PBS を用いて一回洗浄し、細胞ミル(cell mill)(Buhler Vibrogen-Zellmuhle)中においてガラスビーズと共に2分間、3回撹拌することによって破砕した。該細菌の破砕物を 500 μl の PBS 中に再懸濁させ、1,000 g で5分間遠心した。上清を +4℃において 30 分間、16,000 g で遠心して細胞壁を回収した。得られたペレットを、5 mM の MgCl2、5 mM の CaCl2、10 mg/ml のリゾチームおよび 42 U/ml のムタノリシン(mutanolysin)が補充された、50 μl の 50 mM トリス-Cl (pH 8..0) 中に再懸濁させた。該再懸濁させた細胞壁ペレットを 37℃で 3 時間インキュベートして、細胞壁に結合したポリペプチドを遊離させた。
【0119】
酵素的に処理した細胞壁画分を、4-15% の勾配ゲル(Bio-Rad)上で移動させ、イモビロンP (Immobilon-P) PVDF 膜 (Millipore)に転写した。該膜を、製造者の説明書に従って、ECL Advance(商標) ウエスタンブロッティング検出キット(Amersham)を用いるウエスタン解析に供試した。SpaA および SpaC ピリンタンパク質に特異的なポリクローナル一次抗体(実施例 2 を参照)を 1:25,000 に希釈し、ヤギ抗ウサギ IgG (H+L)-HRP コンジュゲート(Bio-Rad)二次抗体を 1:100,000 に希釈した。SpaB ピリンタンパク質を、SpaB ピリンタンパク質特異的ポリクローナル一次抗体、ヤギ抗ウサギ IgG-AP コンジュゲート(Bio Rad)および BCIP/NBT 発色試薬を用いて検出した。
【0120】
グラム陽性細菌の線毛は、互いに共有結合したピリンサブユニットによって構成されている。ソルターゼの作用により、単量体のピリンサブユニットが成長する線毛に一つずつ付加され、その結果、所与の時点において、各個々の細胞はその表面上に様々な長さの線毛を保有する(Scott J.R. and Zahner D. 2006、Mol Microbiol 62:320-330)。したがって、線毛の存在を示すための古典的な方法は、ムタノリシン/リゾチームで処理した細胞壁画分をウエスタン解析に供試することである: 線毛が存在する場合、高分子量ラダー(HMW)がブロット上に検出され、かつ、多くの場合、ピリンモノマーも観察される (Scott、J.R. and Zahner、D. 2006、Mol Microbiol 62:320-330)。SpaA、SpaB および SpaC 特異的抗体を用いて LGG の細胞壁抽出物から単量体の SpaA、Spa B および SpaC ピリンサブユニットならびに HMW が同定できる一方、LC705 細胞は SpaA、SpaB および SpaC 部分を欠いていることから、LGG における SpaA、Spa B および SpaC を含む線毛の存在は 図 6a、6b および 6c から明らかである。SpaC のブロットからの化学発光シグナルを記録するために必要な露光時間は 60 秒であったが、SpaA のブロットについては 1 秒の露光時間で十分であったため、これは SpaA が線毛中において SpaC よりも多数存在していることを意味する。かかる相対数における差異は、SpaA が軸を形成するピリンサブユニットである一方、SpaC が線毛先端の付着因子(adhesion)として機能し得ることを示唆する。胆汁を補充した培地中で増殖させた LGG 細胞において線毛が見出されることにも注目すべきであり、これは線毛がヒトの消化管においても発現する可能性があることを示す。
【0121】
実施例 8、 線毛構造を有する新規なプロバイオティック株の PCR によるスクリーニング
ラクトバチルスを、MRS ブロス中において +37℃で 10 時間嫌気的に増殖させた。ゲノム DNA を以下の通りに単離した。1 ml の培養物を 14,000 g で 2 分間遠心する。回収した細胞を 480 μl の 50 mM EDTA 中に再懸濁させ、100 μl の 50 mg/ml リゾチーム(Amresco、Solon、OH、USA) および 20 μl の 50 U/μl ムタノリシン(Sigma)を添加し、該混合物を 37℃で 1 時間インキュベートした。混合物を 14000 g で 2 分間遠心し、上清を廃棄し、製造者の説明書に従って Wizard(登録商標)ゲノム DNA 精製キット(Promega)を用いて細菌ペレットを抽出した。精製された DNA を 200 μl のトリス-EDTA (TE) バッファー中に再懸濁させた。約 200 ng のゲノム DNA を、PCR 反応の鋳型として用いた。Dynazyme ポリメラーゼ(Finnzymes、Espoo、Finland)および表 2 に示される配列 GG00442、GG00443、GG00444 および GG02370、GG02371、GG02372 遺伝子に基づくオリゴヌクレオチドプライマーを用いて PCR を行った。PCT-200 装置(MJ Research、Waltham、MA、USA)を用いて PCR 反応を行い、該PCR反応は 10 mM のトリス-HCl、1.5 mM の MgCl2、50 mM の KCl および 0.1% のトリトン X 100 (pH 8.8)を含んだ。プライマーは 1 μM の濃度で使用し、デオキシヌクレオチドは 200 μM の濃度で使用した。最初の変性は 94°で 2 分間であった。最初のサイクルは 95℃、65℃および 72℃を各1分、次の5サイクルは 95℃、60℃および 72℃を各1分、最後の 25 サイクルは 95℃、55℃および 72℃を各1分であった。サイクルを終結させるため、反応混合物を 72℃で 5 分間維持し、その後 4℃で 15 分間維持した。増幅された DNA のバンドを、0.7% アガロースゲルにおいてゲル電気泳動によって分離した (図 7a-c を参照)。
【0122】
全ての株、即ち LGG、LC705 およびラクトバチルス・カゼイ ATCC 334 が、本発明の線毛構造を示した (図 7a-c を参照)。
【0123】
【表2】

【0124】
線毛遺伝子の増幅のためのプライマーの例を表 2 に示すが、プライマーはそれらに限定されない。鋳型としてのラクトバチルス・ラムノサス(L. rhamnosus) GG の DNA および表 2 のプライマーを用いて増幅された PCR 産物のサイズは、SpaA、SpaB、SpaC についてはそれぞれ 780bp、612 bp および 801 bp であり、SpaD、SpaE および SpaF についてはそれぞれ 688bp、705bp および 799 bp である。
【0125】
実施例 9、 線毛遺伝子を有する新規プロバイオティクスのサザンハイブリダイゼーションによるスクリーニング
線毛構造を有する新規なプロバイオティック株を、実施例 8 の LGG 増幅産物をプローブとして用いるサザンハイブリダイゼーションによってスクリーニングした。ハイブリダイゼーションの条件を、同一の配列に対してのみプローブのハイブリダイゼーションを可能にするストリンジェントな条件、またはある程度の量の配列不一致を許容するストリンジェンシーの低い条件に調整した。SpaA、B、C、D、E および F の PCR 増幅産物を NuSieve 低融点(low melt)アガロース(FMC Bioproducts、Rockland、ME、USA)において精製し、DIG システム(Roche Diagnostics)を用いて標識した。細菌株の全 DNA を HindIII で消化し、得られた断片を 0.7% アガロースゲルにおいて分離した。アガロース中の DNA 断片をナイロンメンブレン上にブロットし、DIG システムの標準的手順に従ってハイブリダイズさせた。ストリンジェントなハイブリダイゼーションを 68℃において行い、洗浄は 2 x SSC - 0.1% SDS 中で室温において2回行い、さらに 0.1 x SSC-0.1% SDS 中で 68℃において 15 分間の洗浄を2回行った。ストリンジェンシーの低いハイブリダイゼーションを 60℃において行い、最後の2回の洗浄を 0.5 x SSC-0.1% SDS 中において 50℃で 15 分間とした。アルカリフォスファターゼと複合体化した抗体および NBT/BCIP 発色反応(DIGシステム、Roche)を用いてハイブリダイゼーションを検出した。
【0126】
図 8 は、アガロースゲル電気泳動によって分離された消化されたゲノム DNA (図 8a)、および、ラクトバチルス・ラムノサス GG spaC 遺伝子 (801 bp)、spaB (612 bp) または spaA (780 bp) の DIG 標識された PCR 増幅産物をプローブとして用いる同じ DNA のサザンハイブリダイゼーション(図 8b-8d)を示す。表 2 に示される SpaC、SpaB または SpaA プライマーを用いて PCR 反応を行った。ハイブリダイゼーションは +68℃において行った。
【0127】
ハイブリダイゼーションシグナルにより、spaC、spaB および spaA がラクトバチルス・カゼイ(L. casei) ATCC 334 (レーン 3) およびラクトバチルス・ラムノサス(L. rhamnosus) GG (レーン 5) において存在するが、ラクトバチルス・ラムノサス(L. rhamnosus) LC705 (レーン 4)には存在しないことが示された。
【0128】
実施例 10、 精製された LGG 線毛タンパク質による免疫調節(immunomodulation)
ヒトマクロファージを、健康な志願者の血液(バフィーコート画分)から、先に記載された通りに単離した (Miettinen、M. et al. 2000、J Immunol 164:3733-3740; Miettinen、M. et al. 2008、J Leuk Biol 84:1092-1100)。基本的に、新鮮に採取された 4 人の健康な血液ドナーの白血球に富むバフィーコート(Finnish Red Cross Blood Transfusion Service、Helsinki FI によって供給された)を用いてこれを行い、Ficoll-Paque (Amersham Pharmacia Biotech、Uppsala SE) 勾配遠心分離によって末梢血単核球(PBMC)を単離した。6ウェルのプラスチックプレート(Falcon Becton Dickinson、Franklin Lakes NJ、US)上への接着によって PBMC から単球を精製し、マクロファージ-無血清培地 (Gibco Invitrogen、Grand Island NY、US)中において 10 ng/ml の組換えヒト(rh)GM-CSF (Leucomax、Schering-Plough、Innishannon、IRL)の存在下で 7 日間培養してマクロファージを得た。マクロファージを 6 ウェルのマイクロタイタープレート中でウェルあたりおよそ 4 百万細胞の濃度においてインキュベートし、同じ数の生細菌(LGG およびストレプトコッカス・ピオゲネス T1M1) またはおよそ 3、100、3000 もしくは 10000 fmol 等の精製された His タグ標識された LGG タンパク質 SpaA および SpaC を用いて刺激した。6 時間および 24 時間のインキュベーションの後、免疫マーカーの量の変化またはシグナル伝達経路もしくは受容体発現の活性化を、先に記載された通りに測定した(Miettinen、M. et al. 1996、Infec immunol 64:5403-5405; Miettinen、M. et al. 2000、J Immunol 164:3733-3740; Miettinen、M. et al. 2008、J Leuk Biol 84:1092-1100)。
【0129】
図 9 は、生きた LGG 細菌 (2x106 cfu/ml) または精製された His タグ標識された LGG タンパク質 SpaA、SpaB および SpaC (およそ 30 pmol/ml) を用いるマクロファージの刺激の間における TNF-αのレベルを示す。TNF-αレベルは、SpaA および SpaC を用いる刺激において増大した。
【0130】
通常、プロバイオティックな LGG および病原体であるストレプトコッカス・ピオゲネス (S. pyogenes) T1M1 の細胞は、免疫調節活性を示し、PBMC またはマクロファージにおいて特定の Th1 様応答を誘導する (Miettinen、M. et al. 2000、J Immunol 164: 3733-3740; Veckman、V. et al. 2003、J Leuk Biol 74:395-402)。際立っていることに、精製された LGG 線毛タンパク質もまたマクロファージにおいて応答を誘導し、この事は免疫調節における該線毛タンパク質の機能性を実証する。さらに、これらの実験は、LGG 線毛タンパク質がヒト宿主細胞へ情報伝達することを示す。
【0131】
実施例 11、 LGG 線毛タンパク質を用いる競合アッセイ
腸管組織の処理および粘液の単離を、実施例 6 に記載した通りに行った。
【0132】
Vesterlund、S. et al. 2006 (Microbiology 152(6):1819-1826)に従って競合アッセイを行った。0.5 mg/ml の濃度の粘液 (Sigma) を、4℃における終夜のインキュベーションによって、ポリスチレン製のマイクロタイタープレート上に受動的に固定化した (Maxisorp、Nunc、Denmark)。リン酸緩衝食塩水 (PBS; pH 7.2)を用いてウェルを2回洗浄した。エンテロコッカス・フェシウムをブレイン・ハート・インフュージョン(brain-heart-infusion)ブロス中で、また、LGG を MRS ブロス中で、37℃において嫌気条件下で終夜培養した。エンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)の培養物に 10μl ml-1 の[5'-3H]チミジン (16.7 Ci mmol-1; 618 GBq mmol-1) を添加し、該細菌を代謝的に放射標識した。該細菌細胞を遠心分離によって回収し、PBS バッファーを用いて2回洗浄した。細菌懸濁液の OD600 を、PBS を用いて 0.25 に調整した。
【0133】
濃度調整されたエンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)細胞懸濁液を 100 μlの容量でウェルに添加し、各々の実験において5つの並列なウェルを用いた。37℃で 1 時間、細菌を接着させ、200 μl の PBS を用いてウェルを2回洗浄して非接着性細菌を除去した。100 μl の濃度調整された LGG 細胞懸濁液または 100 μl の PBS バッファー中の 0.5 nmol の SpaC タンパク質を添加し、その後 37℃で 1 時間インキュベートした。200 μl の PBS を用いてウェルを2回洗浄し、粘液に結合している細菌を、1% SDS - 0.1 M NaOH を用いて 60℃における 1 時間のインキュベーションによって遊離させおよび溶解し、その後、液体シンチレーションによって放射能の測定を行った。接着した細菌の数を添加した細菌の数と比較することによって、細菌の接着比率 (%) を算出した。対比較(pairwise)スチューデント t 検定を用いて、対照とサンプルの間の差の有意性(P<0.05)を決定した。
【0134】
図 10 は、LGG および LGG のピリンタンパク質 SpaA、SpaB および SpaC が、接着した病原性細菌(E. faecium)をヒト腸管粘液から排除したことを示す。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号 4 (GG00444) と少なくとも 91% の配列同一性を有する配列またはその断片もしくは変異体を含むペプチド。
【請求項2】
配列番号 1 (GG00441) と少なくとも 94% の配列同一性を有する配列またはその断片もしくは変異体を含むペプチド。
【請求項3】
配列番号 2 (GG00442) と少なくとも 94% の配列同一性を有する配列またはその断片もしくは変異体を含むペプチド。
【請求項4】
配列番号 3 (GG00443) と少なくとも 84% の配列同一性を有する配列またはその断片もしくは変異体を含むペプチド。
【請求項5】
配列番号 5 (GG02369) と少なくとも 83% の配列同一性を有する配列またはその断片もしくは変異体を含むペプチド。
【請求項6】
配列番号 6 (GG02370) と少なくとも 94% の配列同一性を有する配列またはその断片もしくは変異体を含むペプチド。
【請求項7】
配列番号 7 (GG02371) と少なくとも 93% の配列同一性を有する配列またはその断片もしくは変異体を含むペプチド。
【請求項8】
配列番号 8 (GG02372) と少なくとも 93% の配列同一性を有する配列またはその断片もしくは変異体を含むペプチド。
【請求項9】
線毛構造の一部である、請求項 1 および 3-4 および/または 6-8 のいずれかに記載のペプチド。
【請求項10】
請求項 1 および 3-4 および/または 6-10 のいずれかに記載の少なくとも1つのペプチドを含む線毛構造。
【請求項11】
請求項 1 および 3-4 に記載のペプチドを含む、請求項 10 に記載の線毛構造。
【請求項12】
請求項 6-8 に記載のペプチドを含む、請求項 10 に記載の線毛構造。
【請求項13】
組換えのものである、請求項 1-12 のいずれかに記載のペプチドまたは線毛構造。
【請求項14】
細菌からのものである、請求項 1-13 のいずれかに記載のペプチドまたは線毛構造。
【請求項15】
ラクトバチルス・ラムノサスからのものである、請求項 1-14 のいずれかに記載のペプチドまたは線毛構造。
【請求項16】
ラクトバチルス・ラムノサス GG (LGG) 株からのものである、請求項 1-15 のいずれかに記載のペプチドまたは線毛構造。
【請求項17】
消化管に結合するものである、請求項 1-16 のいずれかに記載のペプチドまたは線毛構造。
【請求項18】
粘液に結合するものである、請求項 1-17 のいずれかに記載のペプチドまたは線毛構造。
【請求項19】
請求項 1-18 のいずれかに記載の少なくとも1つのペプチドまたは線毛構造を含む製品。
【請求項20】
食品または飼料製品である、請求項 19 に記載の製品。
【請求項21】
乳製品、ベーカリー製品、チョコレートおよび菓子、砂糖およびガム菓子、穀物製品、スナック、ベリーもしくは果物に基づく製品ならびにドリンク/飲料からなる群より選択される、請求項 20 に記載の食品。
【請求項22】
ミルク、酸乳、ヨーグルト、チーズおよびスプレッド、粉ミルク、子供用食品、ベビーフード、幼児用食品、乳児用フォーミュラ、ジュースならびにスープからなる群より選択される、請求項 21 に記載の食品。
【請求項23】
請求項 1-18 のいずれかに記載の少なくとも1つのペプチドまたは線毛構造を含む医薬組成物。
【請求項24】
医薬としての使用のための、請求項 1-18 のいずれかに記載の少なくとも1つのペプチドまたは線毛構造を含む製品。
【請求項25】
下痢症、動脈性高血圧、血管疾患、アレルギー、癌、アトピー性疾患、ウイルス性疾患、感染症、尿路感染症、呼吸器感染症、う蝕、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、粘膜炎、腸透過性障害、肥満症、メタボリックシンドローム、酸化ストレスまたは腹痛の予防または処置のための、請求項 1-18 のいずれかに記載の少なくとも1つのペプチドまたは線毛構造を含む製品。
【請求項26】
下痢症、動脈性高血圧、血管疾患、アレルギー、癌、アトピー性疾患、ウイルス性疾患、感染症、尿路感染症、呼吸器感染症、う蝕、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、粘膜炎、腸透過性障害、肥満症、メタボリックシンドローム、酸化ストレスまたは腹痛を処置又は予防するための医薬の製造における、請求項 1-18 に記載の少なくとも1つのペプチドまたは線毛構造の使用。
【請求項27】
配列番号 9-16 のいずれかの配列もしくはその縮重配列を含むかまたは請求項 1-9 もしくは 13-18 のいずれかに記載のペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項28】
請求項 27 に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項29】
請求項 27 に記載のポリヌクレオチドまたは請求項 1-18 のいずれかに記載のペプチドを含む宿主細胞。
【請求項30】
請求項 27 に記載の少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む遺伝子クラスター。
【請求項31】
請求項 1-9 もしくは 13-18 のいずれかに記載のペプチドのいずれかまたはその機能ドメインに対する抗体。
【請求項32】
請求項 1-18 のいずれかに記載の少なくとも1つのペプチドまたは線毛構造を対象に投与することを含む、下痢症、動脈性高血圧、血管疾患、アレルギー、癌、アトピー性疾患、ウイルス性疾患、感染症、尿路感染症、呼吸器感染症、う蝕、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、粘膜炎、腸透過性障害、肥満症、メタボリックシンドローム、酸化ストレスまたは腹痛を処置または予防する方法。
【請求項33】
以下の工程を含む、配列番号 9-16 の少なくとも1つのポリヌクレオチドまたはその断片を含む細菌株をスクリーニングする方法:
i) 細菌株から DNA または RNA を提供する工程;
ii) 配列番号 9-16 のポリヌクレオチドまたはその断片に特異的なプライマーまたはプローブを工程 i) からの DNA または RNA とハイブリダイズさせる工程、および所望により該ポリヌクレオチドまたはその断片を増幅する工程;
iii) 配列番号 9-16 のポリヌクレオチドまたはその断片と相同な少なくとも1つのポリヌクレオチドまたはその断片を検出する工程。
【請求項34】
細菌株のスクリーニングのための、配列番号 9-16 の少なくとも1つのポリヌクレオチドもしくはその断片または請求項 31 に記載の少なくとも1つの抗体の使用。
【請求項35】
請求項 31 に記載の少なくとも1つの抗体を用いて請求項 1-18 のいずれかに記載の少なくとも1つのペプチドまたは線毛構造を含む細菌株をスクリーニングする方法であって、以下の工程を含む方法:
i) 細菌株のタンパク質を提供する工程;
ii) 該抗体を用いて、少なくとも1つのポリペプチド、線毛構造またはその断片を検出する工程。
【請求項36】
細菌株がプロバイオティックなものである、請求項 33 もしくは 35 に記載の方法または請求項 34 に記載の使用。
【請求項37】
対象の消化管、上皮または粘液への病原性細菌の接着を減少させ又は阻害する方法であって、請求項 1-18 のいずれかに記載の少なくとも1つのペプチドおよび/または線毛構造を該対象に投与することを含む方法。
【請求項38】
対象の消化管、上皮または粘液への病原性細菌の接着を減少させ又は阻害するための、請求項 1-18 のいずれかに記載の少なくとも1つのペプチドおよび/または線毛構造の使用。
【請求項39】
以下の工程を含む、粘液または上皮への細菌細胞の接着または他の物質の接着を促進する方法:
i) 請求項 1-18 のいずれかに記載の少なくとも1つのペプチドもしくは線毛構造またはその断片を生産する工程;
ii) 該ペプチド、線毛構造および/またはその断片を細菌細胞上または他の物質上に提示させる工程;
iii) 該細菌細胞または他の物質を粘液または上皮と接触させる工程。
【請求項40】
粘液または上皮への細菌細胞または他の物質の接着を促進するための、請求項 1-18 のいずれかに記載の少なくとも1つのペプチドまたは線毛構造の使用。
【請求項41】
以下の工程を含む、対象における免疫応答を改変する方法:
i) 請求項 1-18 のいずれかに記載の少なくとも1つのペプチドもしくは線毛構造またはその断片を生産する工程;
ii) 該ペプチド、線毛構造および/またはその断片を宿主細胞上に提示させる工程;
iii) 所望により、該宿主細胞を別の宿主細胞と接触させる工程。
【請求項42】
対象における免疫応答を改変するための、請求項 1-18 のいずれかに記載の少なくとも1つのペプチドまたは線毛構造の使用。
【請求項43】
請求項 1-18 のいずれかに記載の少なくとも1つのペプチドまたは線毛構造を生産して製品とする工程を含む、請求項 19-22 のいずれかに記載の製品を製造する方法。
【請求項44】
請求項 1-18 のいずれかに記載の少なくとも1つのペプチドまたは線毛構造の製品への添加を含む、請求項 43 に記載の方法。
【請求項45】
以下の工程を含む、請求項 1-18 のいずれかに記載の少なくとも1つのペプチドまたは線毛構造を生産する方法:
i) 請求項 27 に記載の少なくとも1つのポリヌクレオチドを提供する工程;
ii) 該ポリヌクレオチドを用いて宿主細胞を形質転換する工程;
iii) 工程 ii) からの宿主細胞を培養してペプチドまたは線毛構造を生産させる工程;
iv) 所望により、該ペプチドまたは線毛構造を回収する工程。
【請求項46】
以下の工程を含む、請求項 1-18 のいずれかに記載の少なくとも1つのペプチドまたは線毛構造を生産する方法:
i) 請求項 1-18 のいずれかに記載の少なくとも1つのペプチドまたは線毛構造を生産するかまたは含む細胞を破壊する工程;
ii) 所望により、該ペプチドまたは線毛構造を回収する工程。
【請求項47】
細胞が死細胞または生細胞である、請求項 46 に記載の方法。
【請求項48】
以下の工程を含む、請求項 1-9 または 13-18 のいずれかに記載の少なくとも1つのペプチドを生産する方法:
i) アミノ酸を提供する工程;
ii) 少なくとも1つのペプチドを合成することにより、工程 i) のアミノ酸から少なくとも1つの本発明のペプチドを製造する工程。
【請求項49】
生物情報学的アプローチを用いて潜在的なプロバイオティック細菌株を検出する方法であって、以下の工程を含む方法:
i) 請求項 1-9、13-18 または 27 に記載の少なくとも1つのペプチド、ポリヌクレオチドまたはその断片の配列を提供する工程;
ii) 工程 i) の配列を、配列コレクションの配列と比較する工程;
iii) 工程 i) の配列に対して生物学的に合同な断片を有する配列を検出する工程。
【請求項50】
それに対して請求項 1-18 に記載のペプチドまたは線毛構造が有効である病原菌株を、生物情報学的アプローチを用いて検出する方法であって、以下の工程を含む方法:
i) 請求項 1-9、13-18 または 27 に記載の少なくとも1つのペプチド、ポリヌクレオチドまたはその断片の配列を提供する工程;
ii) 工程 i) の配列を、配列コレクションの配列と比較する工程;
iii) 工程 i) の配列に対して生物学的に合同な断片を有する配列を検出する工程。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7a−c】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図9】
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【図10】
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【図11a−1】
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【図11a−2】
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【図11b−1】
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【図11b−2】
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【公表番号】特表2012−516681(P2012−516681A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546898(P2011−546898)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【国際出願番号】PCT/FI2010/050059
【国際公開番号】WO2010/086512
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(500185416)ヴァリオ・リミテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】Valio Ltd.
【Fターム(参考)】