説明

ラクトン化合物、ラクトン含有単量体、高分子化合物、それを用いたレジスト材料及びパターン形成方法

【課題】 本発明は、新規なラクトン化合物、ラクトン含有単量体、それを用いた高分子化合物、レジスト材料及びパターン形成方法を提供することにある。
【解決手段】 一般式(1)で表されるラクトン含有単量体(式中、XはCH、CHCH、O、S、NRを示す。R〜Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基を示す。そのアルキル基の水素の一部あるいは全部がフッ素原子に置換されてもよく、さらにアルキル基の一部に酸素原子、硫黄原子、窒素原子、炭素―炭素二重結合、カルボニル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基を含有する原子団を含んでもよい。Rは単結合、CH、カルボニル基を表す。)。
【化1】



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(1)6員環ラクトンとノルボルナン環を同一分子内にもつ化合物とその単量体、(2)その単量体を構成単位として含有する高分子化合物、(3)この高分子化合物を含有するレジスト材料、及び(4)このレジスト材料を用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピューターや家電製品に代表されるデジタル機器の発展により、取り扱う演算データや二次元、三次元画像データの処理量が膨大になってきており、大容量で高速な半導体デバイスが必要となっている。また、インターネットなどのネットワークの発展に伴って、デジタル機器に求められる処理能力は益々高まっている。
【0003】
この要求を達成するために、半導体デバイスの高密度及び高集積化、つまりパターンルールの微細化が求められている。微細化を図る手段の一つとして、レジストのパターン形成の際に使用される露光光源の短波長化が知られており、これまで高圧水銀灯のi線(365nm)やKrFエキシマレーザー光(248nm)が露光光源として採用されてきた。現在は最小線幅として0.13μm以下が求められており、その加工には従来使用してきたi線やKrFエキシマレーザー光では対応できないため、ArFエキシマレーザー(193nm)が利用され始めている。さらに微細なパターンを加工する目的で、F(157nm)やEUV極紫外線を用いたフォトリソグラフィー技術の開発が進められている。
【0004】
ArFエキシマレーザーリソグラフィーにおいては、KrFエキシマレーザーに使用されていたノボラックやポリビニルフェノール系(芳香族系)等の樹脂は193nm付近に非常に強い吸収を持つため、ArFレジスト用のベース樹脂として用いることができない。そこで透明性向上のために芳香族系から脂肪族系に替えたアクリル系樹脂が主に検討されている。Fレーザーリソグラフィーに関しては0.10μm以下の微細化が期待されており、透明性の確保のために含フッ素ポリマーが有効であることが判っている。
【0005】
ベース樹脂に要求される性能としてはレーザー光に対する透明性の他、酸不安定性、エッチング耐性及び基板密着性等が求められている。すべての性能を兼ね備えた単量体は存在しないため、各性能を有した複数種の単量体から成る共重合体をベース樹脂とすることで、要求特性を満足しようとしているが、未だ実用に足る高分子化合物が得られていない。そのため、現在、各性能を充分に発揮する多種多様の単量体の開発が活発に行われている。
【0006】
中でも、基板密着性を持つ単量体の開発は困難であった。なぜなら、これまで基板密着性は親水基であるヒドロキシ基やカルボキシ基で発現させ、一方でエッチング耐性はアダマンチル、ノルボルニル等の多環式炭化水素基で付与させていたため、極端に親水性の高い単量体と極端に疎水性の高い単量体との重合では、単重合体の副生やブロック共重合体の生成等が頻発して均一に反応を進行させることが困難であった。このような状態で得られた高分子化合物をレジスト材料のベース樹脂として用いると、レジストの解像性は極めて低くなることが判っていた。つまり、偏って配置している親水性部位への現像液の浸透による膨潤、高疎水性部位の剥がれによるパターン倒壊、レジスト膜内層分離による不均一な溶解等が起こるからである。
【0007】
上記問題を解決するために、最近、5員環ラクトン構造とノルボルナン環とを併せ持つ3環式ラクトンが開発された(特許文献1,2)。これは基板密着性となる親水基の5員環ラクトン構造と疎水基であるノルボルナン環を同一分子内に合わせ持つので、親水性部位と疎水性部位の分離は原理的に起こり得ず、結果として良好な溶解特性を持った均一な高分子化合物が得られ、さらに、縮合3環部位の剛直性が高分子化合物に十分なエッチング耐性を付与することも確認された。しかし、5員環ラクトンが予想以上に剛直であるため、ラクトン部の酸素原子の非共有電子対すべてが基板密着性に寄与できず、期待した能力よりも劣っており実用レベルにはまだ充分でないことが判った。さらに有機溶媒への溶解性が低いことから重合溶媒が限られ、高分子化合物の精製の際、その単量体の除去が非常に困難であった。それ故、それら欠点を克服できる新規ラクトン含有単量体又はその原料の創出が強く望まれていた。
【特許文献1】特開2000−26446号公報
【特許文献2】特開2000−159758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、(1)6員環ラクトン化合物とノルボルナン環が組み込まれた新規3環式ラクトン化合物及びその単量体、(2)該単量体から誘導される高分子化合物、(3)該高分子化合物をベース樹脂として使用したレジスト材料、及び(4)該レジスト材料を用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、6員環ラクトン構造とノルボルナン環とが組み込まれた新規3環式ラクトン化合物及びその単量体を見出した。この単量体を用いて重合又は共重合した高分子化合物は、紫外線領域から近赤外線領域に至るまでの幅広い波長領域で高い透明性を有し、縮合3環部位により十分なエッチング耐性と適度な現像液浸透性を持ち、5員環ラクトンに比べ6員環ラクトン部位は自由に動けることから、酸素上の非共有電子対の殆どが基板密着性に発揮できるようになったため、従来品よりも基板密着性が上回ることを確認した。また、5員環ラクトンよりもメチレン鎖がひとつ延びたことで有機溶媒への溶解性を劇的に上げる効果があったことから、重合溶媒の選択幅が広がったばかりでなく、高分子化合物の精製の際に単量体の除去が容易になることを発見した。最後に、上記の性能を備えた高分子化合物をベース樹脂にしたレジスト材料を提供し、そのレジスト材料を用いたパターン形成方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の1、2のラクトン化合物、3,4のラクトン含有単量体、5、6のラクトン含有単量体から誘導された高分子化合物、7、8のこれを用いたレジスト材料、9、10のパターン形成方法である。
【0011】
1:一般式(1)で表されるラクトン化合物(式中、XはCH、CHCH、O、S、NRを示し、Rは水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基を表す。そのアルキル基の水素の一部あるいは全部がフッ素原子に置換されてもよく、さらにアルキル基、一部に酸素原子、硫黄原子、窒素原子、炭素―炭素二重結合、カルボニル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基を含有する原子団を含んでもよい。)。
【0012】
【化5】

【0013】
2:一般式(2)で表されるラクトン化合物。
【0014】
【化6】

【0015】
3:一般式(3)で表されるラクトン含有単量体(式中、XはCH、CHCH、O、S、NRを示す。R〜Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基を示す。そのアルキル基の水素の一部あるいは全部がフッ素原子に置換されてもよく、さらにアルキル基の一部に酸素原子、硫黄原子、窒素原子、炭素―炭素二重結合、カルボニル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基を含有する原子団を含んでもよい。Rは単結合、CH、カルボニル基を表す。)。
【0016】
【化7】

【0017】
4:一般式(4)で表されるラクトン含有アクリレート誘導体(式中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基のいずれか1つの官能基を表す。)。
【0018】
【化8】

【0019】
本発明の高分子化合物は、
5:上記3又は4のいずれか1項に記載の化合物を用いて重合又は共重合された高分子化合物。
【0020】
本発明の高分子化合物は、
6:上記3又は4のいずれか1項に記載の化合物を用いて酸不安定性を有した単量体と共重合された高分子化合物。
【0021】
7:上記5又は6に記載の高分子化合物を含有することを特徴とするレジスト材料。
【0022】
8:上記5又は6に記載のレジスト材料と光酸発生剤を含むことを特徴とする化学増幅型レジスト材料。
【0023】
9:上記の7又は8に記載のレジスト材料を用い、これを基板上に塗布する工程、フォトマスクを介して波長1〜300nm帯の高エネルギー線で露光する工程、加熱処理後に現像液で現像処理する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【0024】
10:高エネルギー線がKrFレーザー、ArFレーザー、Fレーザー、EUVレーザー又はX線であることを特徴とする上記の9に記載のパターン形成方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明において、6員環ラクトン構造とノルボルナン環を組み込んだ一般式(3)又は(4)で表される単量体を用いて重合又は共重合した高分子化合物をレジスト材料のベース樹脂に用いることにより、レジスト材料の透明性、基板密着性、現像液浸透性及びエッチング耐性が向上することがわかった。従って、本発明のレジスト材料は、紫外線領域から近赤外線領域に至るまでの幅広い波長領域で高い透明性を有し、かつ基板への高い密着性及び適度な現像液浸透性、高エッチング耐性を併せ持ったレジスト材料を提供する。さらに、本発明のパターン形成方法により微細でしかも基板に対して垂直なパターンを容易に形成でき、本発明のレジスト材料は、超LSI製造用の微細パターン形成材料として好適となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明について詳しく説明する。これまで基板密着性は親水基であるヒドロキシ基、カルボキシル基で発現させており、アダマンチル基等の多環式炭化水素基を有する疎水性単量体との重合では単重合体の副生、ブロック共重合体の生成が頻繁に起こっていた。その結果、高疎水性部位の剥がれによるパターン倒壊、偏って配置している親水性部位への現像液の浸透による膨潤、レジスト膜内層分離による不均一な溶解等が起こり、レジストの解像性は極めて低くなることが判っていた。
【0027】
最近、5員環ラクトン構造とノルボルナン環を併せ持つ3環式ラクトンが開発された。これは基板密着性を親水基のラクトン構造で発現させ、疎水基であるノルボルナン環も同一分子内に合わせ持つため、親水性部位と疎水性部位の分離が起こらず、結果として良好な溶解特性を持った均一な高分子化合物が得られた。しかし、5員環ラクトンが予想以上に剛直であるため、ラクトン部の酸素原子の非共有電子対すべてが基板密着性に寄与できず、期待した能力よりも劣っており実用レベルにはまだ充分でないことが判った。さらに有機溶媒への溶解性が低いことから重合溶媒が限られ、得られた高分子化合物の精製の際、その単量体の除去は非常に困難であることが知られている。
【0028】
これに対し、一般式(3)又は(4)で表される単量体は6員環ラクトン構造を有するので、5員環に比べラクトン部位が自由に動けるようになり、酸素上の非共有電子対の殆どが基板への密着性に発揮できるようになり、従来品より上回る性能を持つことが判った。また、メチレン鎖がひとつ延びたことで有機溶媒への溶解性を上げる効果もあったことから、重合溶媒の選択幅が広がったばかりでなく、高分子化合物の精製の際、その単量体の除去も容易になった。もちろん5員環ラクトン化合物と同様に縮合3環性による高エッチング耐性と適度な現像液透過性を有することから、この高分子化合物をベース樹脂として配合したレジスト材料は、矩形性良好なパターンを形成し、剥がれを起こさず、エッチングにも強いことが判った。
【0029】
従って、本発明は一般式(1)〜(4)に表されるラクトン化合物、それを含有した単量体とその高分子化合物を提供するものであり、これを用いたレジスト材料が、高透明性、高エッチング耐性と適度な現像液浸透性を持ちながら、基板密着性を飛躍的に向上させ、矩形のパターンニングが得られることを見出したものである。
【0030】
以下、本発明につきさらに詳細を説明する。本発明の一般式(1)〜(4)で表される化合物において、基板密着性等の性能を損なわないかぎり、一般式(1)〜(4)の化合物中の水素の代わりに各種官能基が置換しても差し支えない。
【0031】
本発明の一般式(1)で示される化合物において、XはCH、CHCH、O、S、NRを示し、Rは水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基を表す。そのアルキル基の水素の一部あるいは全部がフッ素原子に置換されてもよく、さらにアルキル基の一部に酸素原子、硫黄原子、窒素原子、炭素―炭素二重結合、カルボニル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基を含有する原子団を含んでもよい。Rに使用できる炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、sec−ペンチル基,ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、エチルヘキシル基、ペンテニル基、オクチル基、ノナニル基、デカニル基、ノルボルネル基、アダマンチル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、エチニル基などが例示でき、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、カルボニル結合、ヒドロキシ基、カルボキシル基を含むものとしては、上記アルキル基に−OH、−OR、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−COH、−CO、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−、−NH−、−NHR−、−N(R−等の形態で含有又は介在する官能基である。Rは炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基を示す。そのアルキル基及びヘテロ原子を含むアルキル基の一部又は全部がフッ素原子で置換された官能基も使用できる。
【0032】
本発明の一般式(2)で表される化合物は、本発明の6員環ラクトン含有単量体の原料として好適に採用され、一般式(3)又は(4)で表される様々なラクトン含有単量体へ誘導するための最も基本的なラクトン化合物である。
【0033】
一般式(3)で示される化合物のXはCH、CHCH、O、S、NRを示し、Rは水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基を表す。そのアルキル基の水素の一部あるいは全部がフッ素原子に置換されてもよく、さらにアルキル基の一部に酸素原子、硫黄原子、窒素原子、炭素―炭素二重結合、カルボニル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基を含有する原子団を含んでもよい。Rに使用できる炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、sec−ペンチル基,ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、エチルヘキシル基、ペンテニル基、オクチル基、ノナニル基、デカニル基、ノルボルネル基、アダマンチル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、エチニル基などが例示でき、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、カルボニル結合、ヒドロキシ基、カルボキシル基を含むものとしては、上記アルキル基に−OH、−OR、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−CO、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−、−NH−、−NHR−、−N(R−等の形態で含有又は介在する官能基である。Rは炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基を示す。そのアルキル基及びヘテロ原子を含むアルキル基の一部又は全部がフッ素原子で置換された官能基も使用できる。
【0034】
一般式(3)で示される化合物のR〜Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基を示す。そのアルキル基の水素の一部あるいは全部がフッ素原子に置換されてもよく、さらにアルキル基の一部に酸素原子、硫黄原子、窒素原子、炭素―炭素二重結合、カルボニル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基を含有する原子団を含んでもよい官能基であるが、R〜Rに使用できる炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、sec−ペンチル基,ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、エチルヘキシル基、ペンテニル基、オクチル基、ノナニル基、デカニル基、ノルボルネル基、アダマンチル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、エチニル基などが例示でき、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、カルボニル結合、ヒドロキシ基、カルボキシル基を含むものとしては、上記アルキル基に−OH、−OR、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−CO、−S−、−S(=O)−、−S(=O)−、−NH−、−NHR−、−N(R−等の形態で含有又は介在する官能基である。Rは炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基を示す。そのアルキル基及びヘテロ原子を含むアルキル基の一部又は全部がフッ素原子で置換された官能基も使用できる。
一般式(3)で示される化合物のRは単結合、CH、カルボニル基を示す。
【0035】
本発明によると、一般式(4)で表される化合物は、本発明の6員環ラクトン含有アクリレート体のベース化合物として好適に採用される。本発明によれば、一般式(4)(式中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基のいずれか1つの官能基を表す。)で表される化合物は、一般式(3)で表される様々な6員環ラクトン含有単量体の最も基本的な化合物である。
【0036】
次に、一般式(1)又は(2)で表される化合物の合成法について説明する。
【0037】
一般式(1)又は(2)で表される化合物は対応するカルボン酸から導かれ、一般式(2)で例示するならば、一般式(5)で表されるカルボン酸誘導体を過酸化水素水と反応させることにより、一般式(2)で示される6員環ラクトン化合物を合成する方法(特開2003−55363など参照)である。
【0038】
【化9】

【0039】
本発明において使用される過酸化水素水としては、経済性、安全性の面から通常、30%程度の濃度の過酸化水素水溶液を使用するのが好ましい。
【0040】
過酸化水素水溶液の使用量は、特に制限されないが、収率および生産性の観点から、過酸化水素に換算して、通常、不飽和カルボン酸(構造式(5))に対して、1〜20当量の範囲であるのが好ましく、操作性、経済性の観点から1〜10当量の範囲であるのがより好ましい。
【0041】
本反応の促進剤として炭酸水素塩が有効であり、炭酸水素塩としては、例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩などや、アミンの水溶液に二酸化炭素を導入して得られる炭酸水素塩、炭酸水素アンモニウムなどが挙げられ、かかるアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、エタノールアミン、2−メトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミンなどの1級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジエタノールアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリンなどの2級アミンなどが挙げられる。また、これらのアミンを、適当なスペーサーと組み合わせて得られる、1分子中に2個以上の窒素原子を有する化合物を用いることも可能である。かかる化合物としては、例えばエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、金属成分を不純物として含有しないラクトンを得る観点からは、炭酸水素塩として上記の炭酸水素塩を使用するのが好ましく、入手性、経済性の観点から、炭酸水素アンモニウムを使用するのがより好ましい。炭酸水素塩の添加方法に特に制限はなく、炭酸水素塩をそのまま、または溶液として系内に添加する方法、上記したアミンまたはアンモニアの水溶液に二酸化炭素を導入し、炭酸水素塩を系中で発生させる方法などを用いることができる。
【0042】
炭酸水素塩の使用量は、特に制限されないが、一般式(5)で表される不飽和カルボン酸誘導体に対して、1〜10当量の範囲であるのが好ましく、操作性、経済性、反応速度の観点から、1〜5当量の範囲であるのがより好ましく好ましい。
【0043】
本発明においては、溶媒として水が使用される。溶媒の使用量は、炭酸水素塩を溶解させるのに十分な量であればよく、使用する炭酸水素塩の種類によって異なるが、通常、炭酸水素塩1重量部に対して5〜20重量部の範囲であるのが好ましい。
【0044】
反応温度は、0〜60℃の範囲であるのが好ましく、20〜50℃の範囲であるのがより好ましい。反応温度が60℃を超える場合には、過酸化水素の自己分解により過酸化水素あたりの収率が低下する傾向にあり、10℃未満である場合には、反応速度が著しく遅くなり、滞留時間が長くなるために収率が低下する傾向にあり、いずれの場合も好ましくない。
【0045】
上記した方法により得られたラクトンは、有機化合物の単離・精製に一般的に用いられる方法により単離・精製することができる。例えば、反応混合物に酢酸エチルなどの有機溶媒を加えて抽出を行い、得られた有機層を濃縮した後、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどにより精製する。
【0046】
次に、一般式(3)又は(4)で表される化合物の合成法について説明する。
【0047】
一般式(3)又は(4)で表される化合物は対応する一般式(1)又は(2)で示されるラクトン化合物から導かれ、一般式(4)で例示するならば、一般式(2)で表されるラクトン化合物を酸又は塩基存在下、アクリル酸誘導体と反応させることにより、一般式(4)で示されるラクトン含有アクリレート体を合成する方法である。
【0048】
アクリル酸誘導体としては、アクリル酸、メタクリル酸、トリフルオロメタクリル酸、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、トリフルオロメタクリル酸無水物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、トリフルオロメタクリル酸クロライドなどが例示でき、カルボン酸と無水物は酸存在下で、酸クロライドは塩基存在下で使用でき、無水物を使用した場合には適度な反応速度が得られることから好適に採用される。アクリル酸誘導体の使用量は、原料となるラクトン誘導体(構造式(2))1モルに対して1倍モル以上使用すればよく、反応速度と目的とするラクトン含有アクリレート体(一般式(4))の収率の観点から1.1倍モルから2倍モルの量が好ましい。
【0049】
使用できる酸としてはプロトン酸とルイス酸があり、例示するならば、フッ化水素、硫酸、燐酸、塩化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などのプロトン酸と、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化ガリウム、臭化ガリウム、塩化第二鉄(FeCl)、塩化亜鉛、塩化アンチモン、四塩化チタン、四塩化錫、三フッ化ホウ素、Ti(OCH、Ti(OC、Ti(OC、Ti(OCH(CH、Zn(CHCOO)・2HOなどのルイス酸が挙げられる。この中で、プロトン酸を用いた場合に収率よく目的物が得られることから、好ましく採用される。より好ましくは、反応が速やかに進行し、入手も容易なメタンスルホン酸が採用される。
【0050】
酸の量としては、原料となるラクトン誘導体(構造式(2))1モルに対して0.01〜10倍モルの量が使用できるが、0.01モルより少ない場合には反応速度が遅すぎることと目的のラクトン含有アクリレート体(一般式(4))の収率が非常に小さいことから現実的ではなく、また10倍モル以上の酸を加えても収率向上の効果は期待できず、副生成物も増加する。より好ましくは基質に対して0.1〜1.5倍モルの酸が使用され、適当な反応速度と良好な収率が達成される。
【0051】
本反応で塩基を使用する理由は、酸クロライドをアクリル酸誘導体として用いる場合、反応で発生する酸(塩化水素)を捕捉するためであり、ヒドロキシ基化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ヒドロキシ基化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシドなどの無機塩基の他、ピリジン、ルチジン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ピペリジン、ピロリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセンなどの有機塩基を用いることができる。好ましくは、有機塩基が用いられ、特にルチジン、ピリジン、トリエチルアミンが用いられる。塩基は構造式(2)の化合物1モルに対して、1〜10モル、好ましくは1〜3モル用いられる。
【0052】
溶媒としては反応に関与せず、原料となるラクトン誘導体(構造式(2))を溶解するものであれば特に制限はなく、例えばヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒等が例示でき、これらを単独で又は2種以上混合して使用してもよい。
【0053】
反応温度は特に限定されないが、通常、−10℃から150℃の範囲で反応が可能である。反応時間は前述のアクリル酸誘導体、酸、塩基の種類や量、反応温度などによって反応速度が変わることから、これに合わせて適宜変更される。実際には、反応中に反応溶液を逐次分析しながら反応を行い、原料が消費されるまで反応することが可能である。
【0054】
上記した方法により得られたラクトン含有アクリレート誘導体(一般式(4))は、有機化合物の単離・精製に一般的に用いられる方法により単離・精製することができる。例えば、反応混合物に酢酸エチルなどの有機溶媒を加えて抽出を行い、得られた有機層を濃縮した後、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどにより精製する。
【0055】
次に、本発明による高分子化合物について説明する。本発明の高分子化合物とは一般式(3)又は(4)のいずれかのラクトン含有単量体を単独重合体又は共重合させた高分子材料のことである。
【0056】
本発明の重合性ラクトン含有単量体と共重合可能な単量体を具体的に例示するならば、少なくとも、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物、ビニルエーテル、含フッ素ビニルエーテル、アリルエーテル、含フッ素アリルエーテル、オレフィン、含フッ素オレフィン、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物から選ばれた一種類以上の単量体との共重合が好適である。
【0057】
本発明で使用できるアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとしてはエステル側鎖について特に制限なく使用できるが、公知の化合物を例示するならば、メチルアクリレート又はメタクリレート、エチルアクリレート又はメタクリレート、n−プロピルアクリレート又はメタクリレート、イソプロピルアクリレート又はメタクリレート、n−ブチルアクリレート又はメタクリレート、イソブチルアクリレート又はメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート又はメタクリレート、n−オクチルアクリレート又はメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート又はメタクリレート、ラウリルアクリレート又はメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート又はメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート又はメタクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール基を含有したアクリレート又はメタクリレート、さらにアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどの不飽和アミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルコキシシラン含有のビニルシランやアクリル酸又はメタクリル酸エステル、tert−ブチルアクリレート又はメタクリレート、3−オキソシクロヘキシルアクリレート又はメタクリレート、アダマンチルアクリレート又はメタクリレート、アルキルアダマンチルアクリレート又はメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート又はメタクリレート、トリシクロデカニルアクリレート又はメタクリレート、ラクトン環やノルボルネン環などの環構造を有したアクリレート又はメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸などが使用できる。さらにα位にシアノ基を含有した上記アクリレート類化合物や、類似化合物としてマレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸などを共重合することも可能である。
【0058】
また、本発明で使用できる含フッ素アクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステルとしては、フッ素原子又はフッ素原子を有する基がアクリルのα位に含有した単量体、又はエステル部位にフッ素原子を含有した置換基からなるアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルであって、α位とエステル部ともにフッ素を含有した含フッ素化合物も好適である。さらにα位にシアノ基が導入されていてもよい。例えば、α位に含フッ素アルキル基が導入された単量体としては、上述した非フッ素系のアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルのα位にトリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ノナフルオロ−n−ブチル基などが付与された単量体が好適に採用され、その場合のエステル部位には必ずしもフッ素を含有する必要はない。α−トリフルオロメチルアクリル酸アルキルエステルを共重合成分として使用した場合には、重合体の収率が比較的高く、また得られるポリマーの有機溶媒に対する溶解性が良好で好ましく採用される。
【0059】
一方、そのエステル部位にフッ素を含有する単量体としては、エステル部位としてパーフルオロアルキル基、フルオロアルキル基であるフッ素アルキル基や、またエステル部位に環状構造とフッ素原子を共存する単位であって、その環状構造が例えばフッ素原子、トリフルオロメチル基、ヘキサフルオロカルビノール基などで置換された含フッ素ベンゼン環、含フッ素シクロペンタン環、含フッ素シクロヘキサン環、含フッ素シクロヘプタン環等を有する単位などを有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルである。またエステル部位が含フッ素のt−ブチルエステル基であるアクリル酸又はメタクリル酸のエステルなども使用可能である。これらの含フッ素の官能基は、α位の含フッ素アルキル基と併用した単量体を用いることも可能である。そのような単位のうち特に代表的なものを単量体の形で例示するならば、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルアクリレート、1,1−ジヒドロヘプタフルオロ−n−ブチルアクリレート、1,1,5−トリヒドロオクタフルオロ−n−ペンチルアクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロトリデカフルオロ−n−オクチルアクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロヘプタデカフルオロ−n−デシルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルメタクリレート、1,1−ジヒドロヘプタフルオロ−n−ブチルメタクリレート、1,1,5−トリヒドロオクタフルオロ−n−ペンチルメタクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロトリデカフルオロ−n−オクチルメタクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロヘプタデカフルオロ−n−デシルメタクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルアクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルメタクリレート、6−[3、3、3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イルアクリレート、6−[3、3、3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イル 2−(トリフルオロメチル)アクリレート、6−[3、3、3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イルメタクリレート、1、4−ビス(1、1、1、3、3、3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシルアクリレート、1、4−ビス(1、1、1、3、3、3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシルメタクリレート、1、4−ビス(1、1、1、3、3、3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシル 2−トリフルオロメチルアクリレート、などが挙げられる。
【0060】
さらに、本発明に使用できるスチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物としてはスチレン、フッ素化スチレン、ヒドロキシスチレンなどの他、ヘキサフルオロカルビノール基やそのヒドロキシ基を修飾した官能基が一つ又は複数個結合した化合物が使用できる。すなわち、フッ素原子又はトリフルオロメチル基で水素を置換したスチレン又はヒドロキシスチレン、α位にハロゲン、アルキル基、含フッ素アルキル基が結合した上記スチレン、パーフルオロビニル基含有のスチレンなどが好ましく使用可能である。
【0061】
また、ビニルエーテル、含フッ素ビニルエーテル、アリルエーテル、含フッ素アリルエーテルとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシブチル基などのヒドロキシ基を含有してもよいアルキルビニルエーテルあるいはアルキルアリルエーテル、シクロヘキシル基やその環状構造内に水素やカルボニル結合を有した環状型ビニル、アリルエーテルや、上記官能基の水素の一部又は全部がフッ素原子で置換された含フッ素ビニルエーテル、含フッ素アリルエーテルも使用できる。なお、ビニルエステル、ビニルシラン、オレフィン、含フッ素オレフィン、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物やその他の重合性不飽和結合を含有した化合物であれば特に制限なく使用することが可能である。
【0062】
オレフィンとしてはエチレン、プロピレン、イソブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどを、含フッ素オレフィンとしてはフッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテンなどが例示できる。
【0063】
ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物は一核又は複数の核構造を有するノルボルネン単量体である。この際、含フッ素オレフィン、アリルアルコール、含フッ素アリルアルコール、ホモアリルアルコール、含フッ素ホモアリルアルコールがアクリル酸、α−フルオロアクリル酸、α−トリフルオロメチルアクリル酸、メタクリル酸、本明細書で記載したすべてのアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステル又は含フッ素メタクリル酸エステル、2−(ベンゾイルオキシ)ペンタフルオロプロパン、2−(メトキシエトキシメチルオキシ)ペンタフルオロプロペン、2−(テトラヒドロキシピラニルオキシ)ペンタフルオロプロペン、2−(ベンゾイルオキシ)トリフルオロエチレン、2−(メトキメチルオキシ)トリフルオロエチレンなどの不飽和化合物と、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンとのDiels−Alder付加反応で生成するノルボルネン化合物で、3−(5−ビシクロ[2.2.1]ヘプテン−2−イル)−1,1,1−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2−プロパノール等が例示できる。なお、以上の共重合性化合物は単独使用でも2種以上の併用でもよい。
【0064】
本発明のラクトン含有単量体の共重合組成比としては特に制限はなく採用されるが、10〜100%の間で選択することが好ましい。さらに好ましくは30〜100%であり、30%未満では応用分野の波長域によっては十分な透明性や成膜性が発現しない。
【0065】
本発明にかかる高分子化合物の重合方法としては、一般的に使用される方法であれば特に制限されないが、ラジカル重合、イオン重合などが好ましく、場合により、配位アニオン重合やリビングアニオン重合などを使用することも可能である。ここではより一般的なラジカル重合法を説明する。すなわち、ラジカル重合開始剤あるいはラジカル開始源の存在下で、塊状重合、溶液重合、懸濁重合又は乳化重合などの公知の重合方法により、回分式、半連続式又は連続式のいずれかの操作で行えばよい。
【0066】
ラジカル重合開始剤としては特に限定されるものではないが、例としてアゾ系化合物、過酸化物系化合物、レドックス系化合物が挙げられ、とくにアゾビスイソブチロニトリル、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−t−ブチルパーオキシド、i−ブチリルパーオキシド、ラウロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキシド、ジシンナミルパーオキシド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、過硫酸アンモニウム等が好ましい。
【0067】
重合反応に用いる反応容器は特に限定されない。また、重合反応においては、重合溶媒を用いてもよい。重合溶媒としては、ラジカル重合を阻害しないものが好ましく、代表的なものとしては、酢酸エチル、酢酸n−ブチルなどのエステル系、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系、トルエン、シクロヘキサンなどの炭化水素系、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶剤などがある。また水、エーテル系、環状エーテル系、フロン系、芳香族系、などの種々の溶媒を使用することも可能である。これらの溶剤は単独でもあるいは2種類以上を混合しても使用できる。また、メルカプタンのような分子量調整剤を併用してもよい。共重反応の反応温度はラジカル重合開始剤あるいはラジカル重合開始源により適宜変更され、通常は20〜200℃が好ましく、特に30〜140℃が好ましい。
【0068】
このようにして得られる本発明にかかる高分子化合物の溶液又は分散液から、媒質である有機溶媒又は水を除去する方法としては、公知の方法のいずれも利用できるが、例を挙げれば再沈殿ろ過又は減圧下での加熱留出等の方法がある。得られた本発明の高分子化合物の数平均分子量としては、通常、1,000〜100,000、好ましくは3,000〜50,000の範囲が適切である。
【0069】
次に酸不安定性基を有した化合物との共重合体について説明する。酸不安性基の目的はポジ型感光性及び波長300nm以下の遠赤外線、エキシマレーザー、X線等の高エネルギー線もしくは電子線の露光後のアルカリ水溶液への溶解性を発現させることであり、その官能基にフッ素原子を持つものは透明性を、環状構造を含むものはエッチング耐性や高ガラス転移温度(Tg)点などの特徴をさらに付与させるためで、本発明の応用分野ごとに使い分けることが可能である。
【0070】
酸不安定性基を有した化合物とは以下に示した酸不安定性基と重合性基を併せ持つ化合物であり、酸不安定性基としては光酸発生剤や加水分解などの効果で脱離が起きる基であり、例示するならば、アルキコキシカルボニル基、アセタール基、シリル基、アシル基等を挙げることができる。アルコキシカルボニル基としてはtert−ブトキシカルボニル基、tert−アミルオキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基等を例示できる。アセタール基としては、メトキシメチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基、シクロヘキシルオキシエチル基、ベンジルオキシエチル基、フェネチルオキシエチル基、エトキシプロピル基、ベンジルオキシプロピル基、フェネチルオキシプロピル基、エトキシブチル基、エトキシイソブチル基などが挙げられる。またR、Rが水素原子である場合、そのヒドロキシ基に対してビニルエーテルを付加させたアセタール基を使用することもできる。シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、メチルジエチルシリル基、トリエチルシリル基、i−プロピルジメチルシリル基、メチルジ−i−プロピルシリル基、トリ−i−プロピルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、メチルジ−t−ブチルシリル基、トリ−t−ブチルシリル基、フェニルジメチルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、バレリル基、ピバロイル基、イソバレリル基、ラウリロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、アジポイル基、ピペロイル基、スベロイル基、アゼラオイル基、セバコイル基、アクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、オレオイル基、マレオイル基、フマロイル基、メサコノイル基、カンホロイル基、ベンゾイル基、フタロイル基、イソフタロイル基、テレフタロイル基、ナフトイル基、トルオイル基、ヒドロアトロポイル基、アトロポイル基、シンナモイル基、フロイル基、テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基等を挙げることができる。さらに、これら酸不安定性基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものも使用することもできる。
【0071】
重合性基としてはアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物、ビニルエーテル、含フッ素ビニルエーテル、アリルエーテル、含フッ素アリルエーテル、オレフィン、含フッ素オレフィン、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物等が例示できる。酸不安定性基を有した化合物との共重合体とは、上記酸不安定性基と重合性基を併せ持つ化合物と、一般式(3)及び(4)で表されるラクトン含有単量体とを共重合させた高分子材料のことである。
【0072】
本発明の高分子化合物は、レジスト材料、特に化学増幅型、とりわけ化学増幅ポジ型レジスト材料のベース樹脂として使用することができるが、アルカリ可溶性やその他の物性を変える目的で他の高分子化合物を混合することもできる。その際、混合する高分子化合物の範囲は特に限定されないが、レジスト用の公知の高分子化合物等と任意の範囲で混合することができる。
【0073】
本発明のレジスト材料は、本発明の高分子化合物をベース樹脂とする以外は公知の成分を用いて調製し得るが、特に化学増幅ポジ型レジスト材料は、上記高分子化合物(ベース樹脂)、有機溶剤、酸発生剤を含有する。この場合、これらレジスト材料に、さらに塩基性化合物、溶解阻止剤を配合してもよい。
【0074】
本発明で使用できる有機溶剤としては、ベース樹脂、酸発生剤、その他の添加剤等が溶解可能であればいずれでもよい。このような有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2‐ヘプタノンなどのケトン類やエチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、又はジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル又はモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類及びその誘導体や、ジオキサンのような環式エーテル類や乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類、キシレン、トルエンなどの芳香族系溶媒、フロン、代替フロン、パーフルオロ化合物、ヘキサフルオロイソプロピルアルコールなどのフッ素系溶剤、塗布性を高める目的で高沸点弱溶剤であるターペン系の石油ナフサ溶媒やパラフィン系溶媒などが使用可能である。
これらの溶媒は1種を単独で又は2種以上を混合して使用することもできるが、これらに限定されるものではない。
なお、上記溶剤の使用量は、ベース樹脂100部(重量部、以下同じ)に対し300〜10,000部、特に500〜5,000部が好ましい。
【0075】
本発明のレジスト材料に用いられる光酸発生剤については特に制限はなく、化学増幅型レジストの酸発生剤として用いられるものの中から、任意のものを選択して使用することができる。このような光酸発生剤の例としては、ジアゾメタン類、グリオキシム誘導体類、ニトロベンジル誘導体類、オニウム塩類、ハロゲン含有トリアジン化合物類、β−ケトスルホン酸誘導体類、ジスルホン誘導体類、シアノ基含有オキシムスルホネート化合物類、イミドイルスルホネート誘導体類、その他のオキシムスルホネート化合物などが挙げられる。これらの光酸発生剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その含有量は、高分子化合物100重量部に対して、通常0.5〜20重量部の範囲で選ばれる。この量が0.5重量部未満では像形成性が不十分であるし、20重量部を超えると均一な溶液が形成されにくく、保存安定性が低下する傾向がみられる。
【0076】
塩基性化合物は、酸発生剤より発生する酸がレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制することができる化合物が適している。このような塩基性化合物の配合により、レジスト膜中での酸の拡散速度が抑制されて解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制したり、基板や環境依存性を少なくし、露光余裕度やパターンプロファイル等を向上することができる。
【0077】
このような塩基性化合物としては、アンモニア、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシル基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシ基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド誘導体、イミド誘導体等が挙げられる。
【0078】
これら塩基性化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は全ベース樹脂100部に対して0.01〜2部、特に0.01〜1部が好適である。配合量が0.01部未満であると添加剤としての効果が十分に得られない場合があり、2部を超えると解像度や感度が低下する場合がある。
【0079】
溶解抑制剤とは酸の作用によりアルカリ水溶液に対する溶解性が変化するもので、つまり酸不安定性基を有した化合物であるが、その構造は特に制限なく使用可能である。一般的な酸不安定性基としては前述した酸不安定性基であり、酸によって切断される官能基である。このような溶解抑制剤を用いた高分子化合物は活性エネルギー線が照射される前にはアルカリ性水溶液に不溶もしくは難溶であって、活性エネルギー線を照射したことにより酸発生剤から発生した酸により加水分解されアルカリ性水溶液に対して溶解性を示すようになる。
【0080】
溶解阻止剤は、酸の作用によりアルカリ現像液への溶解性が変化する分子量3,000以下の化合物、特に分子量2,500以下のフェノール、カルボン酸誘導体、ヘキサフルオロイソプロパノールを含む化合物のヒドロキシ基の一部あるいは全部を酸不安定性基で置換した化合物が適している。それら溶解阻止剤の添加量としては、レジスト材料中のベース樹脂100部に対して20部以下、好ましくは15部以下である。20部より多いとレジスト材料の耐熱性が低下する。
【0081】
本発明のレジスト材料の使用方法は、従来のフォトレジスト技術のレジストパターン形成方法を用いることができる。すなわち、まずシリコンウエーハのような基板に、レジスト材料の溶液をスピンナーなどを用いて塗布し、乾燥することによって感光層を形成させ、これに露光装置などにより高エネルギー線を所望のマスクパターンを介して照射し、加熱する。次いでこれを現像液、例えば0.1〜10重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液のようなアルカリ性水溶液などを用いて現像処理する。この形成方法でマスクパターンに忠実なパターンを得ることができる。さらに、所望によってレジスト材料に混和性のある添加物、例えば付加的樹脂、クエンチャー、可塑剤、安定剤、着色剤、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤、相溶化剤、密着剤、酸化防止剤などの種々添加剤を含有させることができる。
【0082】
本発明で用いる高エネルギー線は特に限定されないが、特に微細加工を行なおうとする場合にはKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUVレーザー、又はX線など短波長の高エネルギー線の発生源を備えた露光装置を用いることが有効である。また、光路の一部に水やフッ素系の溶媒など、使用する高エネルギー線の吸収が少ない媒質を用い、開口数や有効波長においてより効率的な微細加工を可能とする液浸露光装置を使用することが有効であり、本レジスト材料は、この装置に用いる場合にも好適である。
【実施例1】
【0083】
構造式(2)で表される化合物の合成を下記の方法で行った。
【0084】
【化10】

【0085】
温度計、回転子を備えた4口フラスコに構造式(5)に示す化合物(10.52g)、水(50g)、炭酸水素アンモニウム(8.53g)を順に加えた。内温40℃にして、30%過酸化水素水(62.01g)を30分間で滴下して、その温度で17時間攪拌した。反応液に亜硫酸水素マグネシウムを加え、過剰の過酸化水素水を処理した後、飽和重曹水に投入し塩基性にした。酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾過し、濾液をエパポレーターで濃縮した。残査にトルエンを加え再結晶して構造式(2)に示す化合物(6.74g、66%)を得た。
H−NMR(TMS、CDCl):0.89(dq,1H),1.54(dq,1H),1.99(dd,1H),2.05(br,1H),2.11(dq,1H),2.23(m、1H),2.33(m,1H),2.41(m,1H),2.60(dq,2H),3.70(d,1H),4.55(m,1H)
IR(cm−1):3392,2962,1702,1376,1357,1230,1217,1181,1152,1137,1102,1083,1061,1041,11012,962,945,807,789、616
GC−MS(EI法):m/e 168(M),150(−HO),140,122,111,99,79,67,55
【実施例2】
【0086】
構造式(6)で表される化合物の合成を下記の方法で行った。
【0087】
【化11】

【0088】
温度計、回転子を備えた4口フラスコに構造式(2)に示す化合物(1.80g)、トルエン(18mL)、メタクリル酸無水物(1.86g)、メタンスルホン酸(0.10g)を順に加えて、内温70℃で6時間攪拌した。反応液を飽和重曹水に注ぎ、二層分離した。有機層を飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾過し、濾液に重合禁止剤を加えエパポレーターで濃縮した。残査にジイソプロピルエーテルを加え再結晶して構造式(6)に示す化合物(1.52g、60%)を得た。
H−NMR(TMS、CDCl):1.07(dq,1H),1.59(dq,1H),1.86(d,1H),1.94(m,3H),2.17(dq,1H),2.39(m、1H),2.41(m,1H),2.49(m,1H),2.64(dq,2H),4.59(d,1H),4.73(m,1H),5.59(m,1H),6.10(m,1H)
IR(cm−1):2959,2869,1730,1716,1635,1376,1355,1324,1309,1226,1176,1153,1121,1061,1041,1006,959,902,820,804
GC−MS(EI法):m/e 236(M),218,208,190,180,168,150,139,135,122,109,93,79,69,55
【実施例3】
【0089】
構造式(6)で表される化合物の重合を下記の方法で行った。
【0090】
【化12】

【0091】
攪拌子を備えたフラスコに、構造式(6)であらわされる化合物(0.6g)を入れ、重合開始剤としてV−601(4mol%)を入れ、重合溶媒としてメチルエチルケトン(400wt%)を入れた。このフラスコを75℃のオイルバスで加熱して16時間反応させた。反応終了後、反応溶液をn−ヘキサンに投入して攪拌し、生成した沈殿を濾過してとり、50℃で10時間真空乾燥した。得られたポリマーの組成はH−NMRから、分子量に関して(Mn、Mw/Mn)はGPC分析(標準ポリスチレン)から求めた。結果を表1に示した。
【実施例4】
【0092】
構造式(6)で表される化合物と構造式(7)で表される化合物の共重合を下記の方法で行った。
【0093】
【化13】

【0094】
攪拌子を備えたフラスコに構造式(6)で表される化合物(0.30g)、構造式(7)で表される化合物(0.30g)、重合開始剤としてパーブチルPV(4mol%)、重合溶媒としてメチルエチルケトン(400wt%)を順に入れた。このフラスコを75℃のオイルバスで加熱して16時間反応させた。反応終了後、反応溶液をn−ヘキサンに投入して攪拌し、生成した沈殿を濾過してとり、50℃で10時間真空乾燥した。結果を表1に示した。
【実施例5】
【0095】
構造式(6)で表される化合物、構造式(7)で表される化合物と構造式(8)で表される化合物の共重合を下記の方法で行った。
【0096】
【化14】

【0097】
攪拌子を備えたフラスコに構造式(6)で表される化合物(0.15g)、構造式(7)で表される化合物(0.15g)、構造式(8)で表される化合物(0.31g)、重合開始剤としてパーブチルPV(4mol%)、重合溶媒としてメチルエチルケトン(400wt%)を順に入れた。このフラスコを75℃のオイルバスで加熱して16時間反応させた。反応終了後、反応溶液をn−ヘキサンに投入して攪拌し、生成した沈殿を濾過してとり、50℃で10時間真空乾燥した。結果を表1に示した。
【実施例6】
【0098】
構造式(6)で表される化合物、構造式(7)で表される化合物と構造式(9)で表される化合物の共重合を下記の方法で行った。
【0099】
【化15】

【0100】
攪拌子を備えたフラスコに構造式(6)で表される化合物(0.17g)、構造式(7)で表される化合物(0.17g)、構造式(9)で表される化合物(0.26g)、重合開始剤としてパーブチルPV(4mol%)、重合溶媒としてメチルエチルケトン(400wt%)を順に入れた。このフラスコを75℃のオイルバスで加熱して16時間反応させた。反応終了後、反応溶液をn−ヘキサンに投入して攪拌し、生成した沈殿を濾過してとり、50℃で10時間真空乾燥した。結果を表1に示した。
【実施例7】
【0101】
構造式(8)で表される化合物、構造式(9)で表される化合物、構造式(10)で表される化合物、構造式(11)で表される化合物の共重合を下記の方法で行った。
【0102】
【化16】

【0103】
攪拌子を備えたフラスコに構造式(8)で表される化合物(0.29g)、構造式(9)で表される化合物(0.29g)、構造式(10)で表される化合物(0.41g)、構造式(11)で表される化合物(0.56g)、重合開始剤としてパーブチルPV(4mol%)、重合溶媒としてメチルエチルケトン(400wt%)を順に入れた。このフラスコを75℃のオイルバスで加熱して16時間反応させた。反応終了後、反応溶液をn−ヘキサンに投入して攪拌し、生成した沈殿を濾過してとり、50℃で10時間真空乾燥した。結果を表1に示した。
【実施例8】
【0104】
構造式(12)で表される化合物、構造式(13)で表される化合物、構造式(14)で表される化合物、構造式(8)で表される化合物の共重合を下記の方法で行った。
【0105】
【化17】

【0106】
攪拌子を備えたフラスコに構造式(12)で表される化合物(0.28g)、構造式(13)で表される化合物(0.30g)、構造式(14)で表される化合物(0.18g)、構造式(8)で表される化合物(0.63g)、重合開始剤としてパーブチルPV(4mol%)、重合溶媒としてメチルエチルケトン(400wt%)を順に入れた。このフラスコを75℃のオイルバスで加熱して16時間反応させた。反応終了後、反応溶液をn−ヘキサンに投入して攪拌し、生成した沈殿を濾過してとり、50℃で10時間真空乾燥した。結果を表1に示した。
【0107】
【表1】

【実施例9】
【0108】
レジスト材料を下記の方法により製造し、パターンを作製して評価した。
【0109】
実施例4〜8の高分子化合物をプロピレングリコールメチルアセテートに溶解させ、固形分14%になるように調整した。さらに高分子化合物100重量部に対して、酸発生剤としてみどり化学製トリフェニルスルフォニウムトリフレート(TPS105)を2重量部になるように溶解し、2種類のレジスト溶液を調整した。これらをスピンコートし、膜厚100nmの光透過率を波長193nmにて測定したところ、実施例4〜8に対しそれぞれ92%、93%、96%、94%、91%であり、真空紫外域の波長で高い透明性を発現した。
【0110】
次いで、全レジスト溶液を孔径0.2・高フメンブランフィルターでろ過した後、各組成物溶液をシリコンウェハー上にスピンコートし膜厚250nmのレジスト膜を得た。110℃でプリベークを行った後、フォトマスクを介して248nm紫外線での露光を行ったのち、120℃でポストエクスポーザーベークを行った。その後、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、23℃で1分間現像したところ、レジスト膜の剥がれや現像欠陥のないパターン形状が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるラクトン化合物(式中、XはCH、CHCH、O、S、NRを示し、Rは水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基を表す。そのアルキル基の水素の一部あるいは全部がフッ素原子に置換されてもよく、さらにアルキル基の一部に酸素原子、硫黄原子、窒素原子、炭素―炭素二重結合、カルボニル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基を含有する原子団を含んでもよい。)。
【化1】

【請求項2】
一般式(2)で表されるラクトン化合物。
【化2】

【請求項3】
一般式(3)で表されるラクトン含有単量体(式中、XはCH、CHCH、O、S、NRを示す。R〜Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基を示す。そのアルキル基の水素の一部あるいは全部がフッ素原子に置換されてもよく、さらにアルキル基の一部に酸素原子、硫黄原子、窒素原子、炭素―炭素二重結合、カルボニル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基を含有する原子団を含んでもよい。Rは単結合、CH、カルボニル基を表す。)。
【化3】

【請求項4】
一般式(4)で表されるラクトン含有アクリレート誘導体(式中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基のいずれか1つの官能基を表す。)。
【化4】

【請求項5】
請求項3又は4のいずれか1項に記載の化合物を用いて重合又は共重合された高分子化合物。
【請求項6】
請求項3又は4のいずれか1項に記載の化合物を用いて酸不安定性を有した単量体と共重合された高分子化合物。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の高分子化合物を含有することを特徴とするレジスト材料。
【請求項8】
請求項5又は6に記載のレジスト材料と光酸発生剤を含むことを特徴とする化学増幅型レジスト材料。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のレジスト材料を用い、これを基板上に塗布する工程、フォトマスクを介して波長1〜300nm帯の高エネルギー線で露光する工程、加熱処理後に現像液で現像処理する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項10】
高エネルギー線がKrFレーザー、ArFレーザー、F2レーザー、EUVレーザー又はX線であることを特徴とする請求項9に記載のパターン形成方法。

【公開番号】特開2006−76981(P2006−76981A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266071(P2004−266071)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】