ラテラルリンク
【課題】
中実鋼棒や厚肉鋼管を使用しているラテラルリンクの連結ロッドにおいて、薄肉鋼管を使用することで重量とコストの低減を図るとともに、強度低下に対しては通常のものよりも大径のものを採用するとともに、端部を増厚肉することで対応した。
【解決手段】
所定の太さの中実鋼棒又は厚肉鋼管で構成される連結ロッドの両端にリングを溶着し、リングの内部に防振ゴムを装填したラテラルリンクにおいて、連結ロッドを、所定の太さのものよりも大径のものの両端を塑性加工によって増厚肉した薄肉鋼管で構成したことを特徴とするラテラルリンク。
中実鋼棒や厚肉鋼管を使用しているラテラルリンクの連結ロッドにおいて、薄肉鋼管を使用することで重量とコストの低減を図るとともに、強度低下に対しては通常のものよりも大径のものを採用するとともに、端部を増厚肉することで対応した。
【解決手段】
所定の太さの中実鋼棒又は厚肉鋼管で構成される連結ロッドの両端にリングを溶着し、リングの内部に防振ゴムを装填したラテラルリンクにおいて、連結ロッドを、所定の太さのものよりも大径のものの両端を塑性加工によって増厚肉した薄肉鋼管で構成したことを特徴とするラテラルリンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として自動車において使用され、二つの足廻り部品を連結したり、エンジンやミッションといった部材を補助的に支えたりするときに使用されるラテラルリンク(ラテラルロッドとも称する)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のラテラルリンクは、いずれも金属製の連結ロッドの両端にリングを溶接し、リングの中に防振ゴムを装填したものであるが、連結ロッドの材料、形状は様々である。特許文献1には、連結ロッドとして、中実鋼棒を用いてその両端を先細のテーパに成形したものが示されているが、これによると、重量も重く、加工工数も必要とする。このため、特許文献2に見られるような鋼板のもの、特許文献3に見られるような鋼管のものが提案されているが、連結ロッドには強度が要求されるため、鋼板のものは幅広のものを使用しており、鋼管のものは厚肉鋼管(直径21.7mm程度のもので、肉厚3.7mm位)を使用している。したがって、重量が重くなるし、コストも高くなる。
【0003】
一方、リングについていえば、一般的には、厚肉鋼管を機械加工して所望のものにしている。このため、加工工数を要してコストが高いといった欠点がある。さらに、リングの中に装填される防振ゴムについては、必要なばね特性を出すために、加硫成形後に押圧して所定の圧縮状態にする必要がある。したがって、ラテラルリンクの防振ゴムについては、特許文献4に見られるように、ゴム弾性体を加硫成形した後に押圧して圧縮状態でリングに接着するのが一般的であり、前処理を必要としたり、過熱の問題があったりして問題の多い作業である。
【特許文献1】特開2001−97015号公報
【特許文献2】特開平11−301229号公報
【特許文献3】実開平06−003704号公報
【特許文献4】特開2001−271859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような課題を解決するものであり、連結ロッドとして従来使用されている鋼管等よりも大径の薄肉鋼管を使用することで、重量とコストの低減を図るとともに、強度の低下に対しては、必要な個所の径大化と増厚肉化で対処したものである。加えて、リングも、鋼板を巻いたもので構成して肉厚と径の自由度を高めるとともに、防振ゴムの構成及び防振ゴムのリングへの装填も、良好なばね特性を発揮できるようにするとともに、抜出も規制されるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題の下、本発明は、請求項1に記載した、所定の太さの中実鋼棒又は厚肉鋼管で構成される連結ロッドの両端にリングを溶着し、リングの内部に防振ゴムを装填したラテラルリンクにおいて、連結ロッドを、所定の太さのものよりも大径のものの両端を塑性加工によって増厚肉した薄肉鋼管で構成したことを特徴とするラテラルリンクを提供したものである。
【0006】
また、本発明は、以上のラテラルリンクにおいて、請求項2に記載した、薄肉鋼管の両端を内側に折り返して二重層にして増厚肉し、その端面にリングを溶着した手段、請求項3に記載した、薄肉鋼管の両端を軸方向に押圧して外周方向に出張部を設けて増厚肉するとともに、全体を押し潰して偏平にする他、端面を凹形状にした手段、請求項4に記載した、薄肉鋼管の両端を端に行くほど細くするとともに、増厚肉した手段を提供したものである。
【0007】
さらに、本発明は、リングとして、請求項5に記載した、短冊形の鋼板を巻いて突き合わせ面を溶着したもので形成するとともに、周面に内周から外周に突出する突起を形成した手段、請求項6に記載した、その突き合わせ面を凹凸面にするとともに、この凹凸面の形状を薄肉鋼管の端の外形形状に沿うものにし、端面同士の溶接と薄肉鋼管とリングとの溶接を兼用した手段を提供したものである。
【0008】
この他、本発明は、防振ゴムとして、請求項7に記載した、リングに装填される防振ゴムが、内周にコアを加硫成形したゴム弾性体をリテーナに収容してリテーナを圧縮することでゴム弾性体を圧縮したものであり、このリテーナをリングに両端を余して内嵌するとともに、余したリテーナの両端を外方へ膨らませてリングに対する抜け止めとした手段、請求項8に記載した、リングに装填される防振ゴムが、外周の両端に膨出部が形成されてリングに内嵌されたゴム弾性体の内周に端を余してリテーナが嵌合されたものであり、リテーナの内周にこれよりも所定に径大をしているコアを圧入することで、ゴム弾性体を所定に膨大させるとともに、リテーナの両端を外方に折り曲げてリテーナとコアとの抜け止めとする一方、ゴム弾性体の膨出部がリングに対する抜け止めを構成している手段を提供する。
【0009】
さらに、請求項9に記載した、リングに装填される防振ゴムが、内周に内側リテーナを嵌合したゴム弾性体を外側リテーナに内嵌して外側リテーナをリングに両端を余して内嵌したものであり、内側リテーナの内周にこれよりも所定に径大をしているコアを圧入することで、ゴム弾性体を所定に膨大させるとともに、外側リテーナの余した両端を外方へ膨らませることで、リングに対する抜け止めとした手段を提供する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の手段、すなわち、連結ロッドを薄肉鋼管で構成すれば、重量の軽減とコストの低減が可能になる。このとき、もっとも荷重がかかる中央部の必要な強度は、径を大径にすることで確保できる。また、薄肉鋼管(連結ロッド)とリングは溶接するが、この場合、溶接個所には応力集中が起こり、周辺部には熱影響によって強度低下が波及する。したがって、十分な溶接肉盛り寸法と溶接長さ及び母材の十分な溶込み深さを確保する必要があるが、このように、両端を増厚肉することで、これを可能にしている。
【0011】
加えて、この増厚肉を切粉等を排出しない塑性加工ですることで、生産性の向上及び作業環境の向上が果たされる。また、請求項2〜3の具体的な手段によると、上記した溶接条件が充たされる。さらに、請求項4の手段によると、薄肉鋼管の径大化に制限が課されない。この他、請求項5〜6の手段によると、リングの寸法の自由度が高まるし、リングと連結ロッドとの溶接コストも安くてすむ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一例を示すラテラルリンクの正面図、図2は平面図、図3は右側面図、図4は図1のAーA断面図であるが、ラテラルリンクは、連結ロッド1とその両端に配されるリング2とから構成される。なお、本例のリング2は、同じ大きさで同じ方向に向くものの、その前後位置はある程度オフセットされているものを示しているが、これは、一例であって、大きさ、向き、オフセット量については種々のものがある。
【0013】
本発明における連結ロッド1は、その母材として薄肉鋼管を採用する。ラテラルリンクには、数トンの引張荷重や圧縮荷重が振動の形で負荷されるから、それに対抗する強度を備えていなければならない。それには、引張に対しては第一にそれに耐えうる鋼管の断面積の確保であり、第二に溶接の肉盛り寸法と長さからなる溶接条件の充足であり、第三に溶接時に起こる母材への溶込み量の確保であり、第四に溶接のバラツキ等による部分的な応力集中や母材周辺への熱影響による強度低下を加味した母材の肉厚の確保である。なお、ラテラルリンクは、直径に比べて長さが大幅に長いため、引張荷重に対する断面積よりも、圧縮荷重(座屈)による中央部を最大として端に行くに従って順次減少する曲げモーメントに対する配慮が設計ポイントとなる。
【0014】
したがって、連結ロッド1には、この圧縮に対する中央部を最大として端に行くに従って減少する応分の断面係数と断面二次モーメントを持たせる必要がある。このことから、従来の中実鋼棒や厚肉鋼管に比べて断面係数と断面二次モーメントとで圧倒的に有利な大径の薄肉鋼管を採用したものである。ちなみに、断面係数は、直径の3乗に比例し、断面二次モーメントは4乗に比例することから、径を大きくすることは、これらを3乗倍、4乗倍に増大することになる。そして、必要な断面係数等が確保できることを条件に、軸方向位置の断面を適宜変化させてもよいとしたものである。
【0015】
このことを具体的な例を挙げて検証すると、必要な断面係数と断面二次モーメント及び溶接時の溶込みと母材の強度低下等を考慮して、従来、STKMの直径21.7mm、肉厚3.7mmの厚肉鋼管を使用していたものに対し、直径が25.4mm、肉厚が1.6mm程度の薄肉鋼板で代替できることを確認している。これによると、強度はほとんど変わらないが、重量は約50%軽くなるといった効果がある。また、薄肉鋼管を採用することで、その採寸も、プレス加工で簡単にできるから(切削加工を必要としない)、生産性が向上し、作業環境が悪化しない。なお、連結ロッド1の表面の適所には、溶接加工のときの位置決めの治具等が挿入できる凹み3を同じくプレス加工で成形しておく。
【0016】
一方、リング2と溶着される連結ロッド1の端部(溶接部)は、溶接のバラツキによる部分的な応力集中及び母材周辺への熱の浸透によって強度低下が起こる懸念がある。このため、溶接個所には、適正な肉盛り量とその溶接長及び十分な溶込み深さを可能にするための肉厚が必要であるが、本発明では、薄肉鋼管を使用しているため、両端を塑性加工(塑性流動ともいう)で増厚肉している。この増厚肉の程度は、負荷される荷重にもよるが、上記の例でいえば、3〜4mmが適するであろう(この点で中央部との肉厚の差は2倍程度になる)。
【0017】
そして、両端を増厚肉する塑性流動の方法には、爆発成形、液圧成形等、種々の方法があり、そのいずれであってもよいが、ダイスによるプレス加工が優れている。すなわち、奥が径小のテーパとなっているダイス(図示省略)を用意し、これに連結ロッド1の端を突っ込んで軸方向に押して成形する方法である。図5はこの方法によって成形された連結ロッド1の断面図であるが、これによると、塑性流動によって端に行くほど直径が減少して(先細)、それに反比例して肉厚が増している。したがって、端部をリング2の寸法に対応した寸法にできるので、連結ロッド1の大径化が制約を受けないという利点がある。なお、この成形時、座屈が生じて加工不能になることがあるので、数次に分けて成形する等の配慮が必要である。
【0018】
以上の方法は、基本的には、直径を縮めることで、周長を短縮させて増厚肉する方法であるが、軸方向に縮めて増厚肉する方法もある。図6はこの方法によって成形された連結ロッド1の一部断面正面図、図7は側面図であるが、これによる成形は、連結ロッド1の両端部分を所定長さに亘って外周方向に出張部1aを設けて増厚肉したものであり、このとき、全体を押し潰した形状の偏平にする他、端面を凹形状1bにしたものである。この成形の基本は、連結ロッド1を、その端部に外方に出っ張り空間を有する受型に収容するとともに、端面側を押型で押して空間内に膨らませたものである。この場合も、何回かに分けて膨らませて行くことで、所要の増厚肉量を確保できる。なお、偏平にしたのは、リング2の寸法が少々小さいものであっても、短い方を当接することで溶接ができるようにするためであり、凹形状1bにしたのは、リング2の周面に極力沿わせるためである。
【0019】
図8は更に他の方法で成形した連結ロッドの断面図、図9は一部斜視図であるが、本例のものは、連結ロッド1の両端を内側に折り曲げて二重層1cにするとともに、これによって肉厚が増した端面にリング2を当てて溶接したものである。内側に折り返すことで肉厚を増厚肉して強度を高め、折り返して二重層1cを有することになった端面にリング2をあてがうことで、接触面積を大きくして必要な溶接条件を確保したものである。
【0020】
ところで、以上において、連結ロッド1の中央の薄肉大径部分は、最初から所要の径のものを採用しているが、この他に、多少細めで厚肉の鋼管を採用し、これをバルジ加工して中央部を所定の径に拡径してもよい。要は、主体部分が所定の径が確保された薄肉であり、端部が所定の厚肉になっておればよいのであり、この点で、端部を除く部分の断面形状は一律である必要はない。加えて、端面の形状や肉厚は、必要な肉盛り寸法と溶接長が確保できるものであればよいのであり、限定的なものではない。そして、これらすべての成形は、切削加工ではなく、生産性、作業環境ともに優れた塑性加工によるのである。
【0021】
リング2は、径と肉厚が限られた標準鋼管の中から所望のものを選択し、これを切断して使用していたのであるが、一般的には、肉厚が厚いことから、機械加工して薄肉化していた。しかし、これでは、生産性、切粉の排出等の不都合があることは上述したとおりである。そこで、本例では、肉厚が自由に選択できる短冊形の鋼板を巻いてリング2にする方法を採用している。これによると、リングの肉厚はもちろん、径までも自由に設定できる利点がある。図10はこの場合のリング2の斜視図、図11は断面図、図12は右側面図であるが、具体的には、展開した形状に鋼板を剪断し、これを巻いてリング2にする。このとき、溶接時の位置決め等に利用するために、リング2の周面となる個所に内周から外周に突出した突起4を形成しておく。なお、これらの加工は、すべて塑性加工で行うし、このとき、ロール(図示省略)に通す塑性流動によって切断面の面取り及び平滑化を行っておく。
【0022】
鋼板を巻いたものでリング2を形成するとなると、その両端を突き合わせて溶接しなければならない。この場合、単に長方形の短冊材を巻いたのでは真円度が出難い。また、実際には、鋼管に比べて薄い、具体的には、3mm程度の鋼板を使用することになるが、個別の溶接を行っていたのでは、効率的な連続自動溶接で製作される鋼管に比べてかえってコストが高くなりかねない。そこで、本例では、端面を凹凸面2a、2bとして互いに入り込ませて真円度の向上を図るとともに、この凹凸面2a、2bの形状を連結ロッド1の端の外形形状に沿うものにし(図12参照)、端面2a、2b同士の肉盛溶接と連結パイプ1とリング2との肉盛溶接を兼ねて同時に行っている。こうすることで、溶接に伴うコスト増をカバーできる。
【0023】
以上の溶接は、連結ロッド1の全周に亘って行い、このとき、上記した連結ロッド1の凹み3やリング2の突起4を位置決め具(図示省略)に係合して正確な位置決めと確実な固定を図っている。そして、このとき、連結ロッド1とリング2との接合面は溶接材で完全に塞ぐようにする。ここに隙間があると、塗装の処理液等が連結ロッド1の中に侵入して錆が発生したりするからである。この点は、上記した凹み3や突起4も同様であり、これらも内外に通じないように形成する必要がある。なお、これら凹み3や突起4の形状、形成部位、個数等は図示のものに限定されないのはいうまでもなく、要は、強度低下が少ない位置が決められる凹凸や平面等であればよい。そして、本発明では、すべての加工を塑性加工によっているのが特徴である。
【0024】
次に、防振ゴム5のリング2への装填について説明する。図13は第一例に係る防振ゴム5を成形する工程を示す断面図であるが、この場合の防振ゴム5は、内周側から被支持部材を連結する金属製のコア6、ゴム弾性体7及びリング2に固定される同じく金属製のリテーナ8とからなる。従来は、コア6を加硫成形したゴム弾性体7の外周を絞ってリング2に嵌合して接着することで、抜け止めを可能にする装填をしていたのであるが、この作業が面倒でコストがかかることは上述したとおりである。このため、本発明では、防振ゴム5の圧縮と装填を、リテーナ8を用いて行う簡単で信頼性の高い方法によったのである。
【0025】
このため、第一例において、リテーナ8として上端が開口した金属製のカップ体を使用し、このリテーナ8の中にコア6と加硫成形されたゴム弾性体7を嵌め込む(a)。このとき、リテーナ8の底壁8aは下方に膨らんでおり、上端の筒壁8bはゴム弾性体7の端を超えて延びている。なお、このときの嵌合は緊いものである必要はない。次いで、この状態のリテーナ8の筒壁8bを内側にやや折り込み(b)、ゴム弾性体7の抜出を規制するものにする。そして、筒壁8bを完全に折り込んでゴム弾性体7の端面に当てて端を外方に膨らませるとともに、リテーナ8の外周を絞ってゴム弾性体7を所定に圧縮する(c)。
【0026】
なお、本例では、この絞りを容易にするため、リテーナ8の外周に、上端から下方に向けて切れ込む切欠8cを前後二箇所形成している。この絞りは、径にして5%程度であり、このとき、切欠8cの途中を狭めて絞ったときにこの部分が接当するようにすれば(c)、絞り量が正確になる。最後に、以上のリテーナ8をリング2に嵌入し、底壁8aを上方に押し潰せば、端が外方に膨らみ、この膨らみと上端の膨らみとでリング2を上下から挟み付け、抜出を規制する。これにより、リング2に防振ゴム5が装填されるのであるが、このとき、ゴム弾性体7は適当に圧縮されることになり、良好なばね特性が出現できるのである。
【0027】
図14は第二例を示す防振ゴム5の各要素の断面図、図15は組立状態の断面図であるが、本例のものは、コア6を外端に鍔6aが付いた鍔付きのものにしてこれを二つに分割し、リテーナ8に内嵌したものである。そして、リテーナ8の外周側にゴム弾性体7とリング2を嵌合したものである。この場合、コア6の外径をリテーナ8の内径よりもゴム弾性体7の圧縮相当量分だけ大きくし、嵌合すると、リテーナ8が拡径されるようにしてある。なお、このリテーナ8は、鋼管を使用してもよいが、鋼板を螺旋形に巻いたもので構成すれば、拡径が容易になって好ましい。この組立ては、リング2にリテーナ8を内周に嵌合したゴム弾性体7をリング2に内嵌しておき、リテーナ8の両側からコア6を圧入する。
【0028】
すると、鍔6aによってリテーナ8の両端はそれぞれ外方に折り曲げられ、ゴム弾性体7の抜け止めとなる。なお、抜け止めは、リング2とゴム弾性体7にも必要であり、本例では、ゴム弾性体7の上下両端をリング2からはみ出すものにしてこの部分に膨出部7aを形成しておくとともに、リング2の内端面も面取りをしてこの膨出部7aの傾斜に沿った形状にしている。これにより、リテーナ8が拡径されると、当然にゴム弾性体7も拡径させられ、リング2に嵌合されたときには、所定の与圧がかかった膨大状態になっていて抜け止めも果たされる。
【0029】
図16は第三例を示す防振ゴム5の各要素の断面図、図15は組立状態の断面図であるが、本例のものは、防振ゴム5が、内周側からコア6、内側リテーナ8、ゴム弾性体7及び外側リテーナ9を互いに嵌合したものである。見てわかるとおり、本例のものは、上記二例を組み合わせたものであり、これに伴い、内側リテーナ8は、第二例のリテーナ8に類似しており、外側リテーナ9は、第一例のリテーナ8に類似している。したがって、内側リテーナ8は、拡径が容易な鋼板の螺旋巻きのもの、外側リテーナ9は、押し潰しが容易な薄肉のもので構成される。なお、リング2の内周の角の面取りは不要になる。この場合も、組付けの最後に、内側リテーナ8の内径よりも所定量径大な外径を有するコア6を内側リテーナ8に圧入する。
【0030】
前にも述べたが、拡径されるリテーナ8(及び第三例の内側リテーテ8)は、肉厚1mm程度の鋼板を螺旋巻きして作られる。このとき、端面は、当初密着しているが、コア6が圧入されると、端面同士は離れて比較的容易に拡径される。また、外側リテーナ9も同様であり、肉厚1mm程度の鋼板を螺旋に巻いたり、一枚物を突き合わせ巻回して作られる。このとき、上記したリング2のように端面を凹凸の嵌合にしてもよいし、平坦のままであってもよい。この外側リテーナ9(及び第一例のリテーナ8)はリング2に内嵌される上下端が外側に膨らんで抜け止めを果たす必要があり、そのための成形の容易性は確保される必要がある。
【0031】
防振ゴムは、原料の種類や配合の管理等だけではなく、通常は、性能特性値の変化量が少なくなるように加硫成形の後で所定の圧縮を行ってリングから抜け出ることがないように装填しており、この抜け止め防止は、普通、接着によって対応している。本発明は、この所定の圧縮を、内外リテーナやコアを用いることで、リングへの装填を兼ねて定性的、かつ、安定的に行うことができるようにしたものであり、抜け止めについては、リテーナを外曲げする等で対処している。したがって、本発明によれば、従来必要としていた面倒で作業環境を害する接着作業を排することができるのである。また、圧入するコアを採用する第二例及び第三例では、設計時に必要となる防振ゴムの圧縮量の設定において、異なる数種類の外形のもので性能試験をすることで、すべての場合における特性が把握できるものとなり、費用の節減と時間の短縮が図られる。なお、いうまでもないが、以上の防振ゴムの構成及びリングへの組付けに際しても、機械加工ではなく、すべて塑性加工によるのである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一例を示すラテラルリンクの正面図である。
【図2】本発明の一例を示すラテラルリンクの平面図である。
【図3】本発明の一例を示すラテラルリンクの右側面図である。
【図4】本発明の一例を示す図1のAーA断面図である。
【図5】本発明の一例を示す連結ロッドの断面図である。
【図6】本発明の一例を示す連結ロッドの一部断面正面図である。
【図7】本発明の一例を示す連結ロッドの側面図である。
【図8】本発明の一例を示す連結ロッドの断面図である。
【図9】本発明の一例を示す連結ロッドの一部斜視図である。
【図10】本発明の一例を示すリングの斜視図である。
【図11】本発明の一例を示すリングの断面図である。
【図12】本発明の一例を示すリングの右側面図である。
【図13】本発明の一例を示す防振ゴムの成形工程の説明図である。
【図14】本発明の一例を示す防振ゴムの各要素の断面図である。
【図15】本発明の一例を示す防振ゴムの組立て状態の断面図である。
【図16】本発明の一例を示す防振ゴムの各要素の断面図である。
【図17】本発明の一例を示す防振ゴムの組立て状態の断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 連結ロッド
1a 出張部
1b 凹形状
1c 二重層
2 リング
2a リングの端面
2b リングの端面
3 凹み
4 突起
5 防振ゴム
6 コア
6a 鍔
7 ゴム弾性体
7a 膨出部
8 リテーナ(内側リテーナ)
8a 底壁
8b 筒壁
8c 切欠
9 外側リテーナ
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として自動車において使用され、二つの足廻り部品を連結したり、エンジンやミッションといった部材を補助的に支えたりするときに使用されるラテラルリンク(ラテラルロッドとも称する)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のラテラルリンクは、いずれも金属製の連結ロッドの両端にリングを溶接し、リングの中に防振ゴムを装填したものであるが、連結ロッドの材料、形状は様々である。特許文献1には、連結ロッドとして、中実鋼棒を用いてその両端を先細のテーパに成形したものが示されているが、これによると、重量も重く、加工工数も必要とする。このため、特許文献2に見られるような鋼板のもの、特許文献3に見られるような鋼管のものが提案されているが、連結ロッドには強度が要求されるため、鋼板のものは幅広のものを使用しており、鋼管のものは厚肉鋼管(直径21.7mm程度のもので、肉厚3.7mm位)を使用している。したがって、重量が重くなるし、コストも高くなる。
【0003】
一方、リングについていえば、一般的には、厚肉鋼管を機械加工して所望のものにしている。このため、加工工数を要してコストが高いといった欠点がある。さらに、リングの中に装填される防振ゴムについては、必要なばね特性を出すために、加硫成形後に押圧して所定の圧縮状態にする必要がある。したがって、ラテラルリンクの防振ゴムについては、特許文献4に見られるように、ゴム弾性体を加硫成形した後に押圧して圧縮状態でリングに接着するのが一般的であり、前処理を必要としたり、過熱の問題があったりして問題の多い作業である。
【特許文献1】特開2001−97015号公報
【特許文献2】特開平11−301229号公報
【特許文献3】実開平06−003704号公報
【特許文献4】特開2001−271859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような課題を解決するものであり、連結ロッドとして従来使用されている鋼管等よりも大径の薄肉鋼管を使用することで、重量とコストの低減を図るとともに、強度の低下に対しては、必要な個所の径大化と増厚肉化で対処したものである。加えて、リングも、鋼板を巻いたもので構成して肉厚と径の自由度を高めるとともに、防振ゴムの構成及び防振ゴムのリングへの装填も、良好なばね特性を発揮できるようにするとともに、抜出も規制されるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題の下、本発明は、請求項1に記載した、所定の太さの中実鋼棒又は厚肉鋼管で構成される連結ロッドの両端にリングを溶着し、リングの内部に防振ゴムを装填したラテラルリンクにおいて、連結ロッドを、所定の太さのものよりも大径のものの両端を塑性加工によって増厚肉した薄肉鋼管で構成したことを特徴とするラテラルリンクを提供したものである。
【0006】
また、本発明は、以上のラテラルリンクにおいて、請求項2に記載した、薄肉鋼管の両端を内側に折り返して二重層にして増厚肉し、その端面にリングを溶着した手段、請求項3に記載した、薄肉鋼管の両端を軸方向に押圧して外周方向に出張部を設けて増厚肉するとともに、全体を押し潰して偏平にする他、端面を凹形状にした手段、請求項4に記載した、薄肉鋼管の両端を端に行くほど細くするとともに、増厚肉した手段を提供したものである。
【0007】
さらに、本発明は、リングとして、請求項5に記載した、短冊形の鋼板を巻いて突き合わせ面を溶着したもので形成するとともに、周面に内周から外周に突出する突起を形成した手段、請求項6に記載した、その突き合わせ面を凹凸面にするとともに、この凹凸面の形状を薄肉鋼管の端の外形形状に沿うものにし、端面同士の溶接と薄肉鋼管とリングとの溶接を兼用した手段を提供したものである。
【0008】
この他、本発明は、防振ゴムとして、請求項7に記載した、リングに装填される防振ゴムが、内周にコアを加硫成形したゴム弾性体をリテーナに収容してリテーナを圧縮することでゴム弾性体を圧縮したものであり、このリテーナをリングに両端を余して内嵌するとともに、余したリテーナの両端を外方へ膨らませてリングに対する抜け止めとした手段、請求項8に記載した、リングに装填される防振ゴムが、外周の両端に膨出部が形成されてリングに内嵌されたゴム弾性体の内周に端を余してリテーナが嵌合されたものであり、リテーナの内周にこれよりも所定に径大をしているコアを圧入することで、ゴム弾性体を所定に膨大させるとともに、リテーナの両端を外方に折り曲げてリテーナとコアとの抜け止めとする一方、ゴム弾性体の膨出部がリングに対する抜け止めを構成している手段を提供する。
【0009】
さらに、請求項9に記載した、リングに装填される防振ゴムが、内周に内側リテーナを嵌合したゴム弾性体を外側リテーナに内嵌して外側リテーナをリングに両端を余して内嵌したものであり、内側リテーナの内周にこれよりも所定に径大をしているコアを圧入することで、ゴム弾性体を所定に膨大させるとともに、外側リテーナの余した両端を外方へ膨らませることで、リングに対する抜け止めとした手段を提供する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の手段、すなわち、連結ロッドを薄肉鋼管で構成すれば、重量の軽減とコストの低減が可能になる。このとき、もっとも荷重がかかる中央部の必要な強度は、径を大径にすることで確保できる。また、薄肉鋼管(連結ロッド)とリングは溶接するが、この場合、溶接個所には応力集中が起こり、周辺部には熱影響によって強度低下が波及する。したがって、十分な溶接肉盛り寸法と溶接長さ及び母材の十分な溶込み深さを確保する必要があるが、このように、両端を増厚肉することで、これを可能にしている。
【0011】
加えて、この増厚肉を切粉等を排出しない塑性加工ですることで、生産性の向上及び作業環境の向上が果たされる。また、請求項2〜3の具体的な手段によると、上記した溶接条件が充たされる。さらに、請求項4の手段によると、薄肉鋼管の径大化に制限が課されない。この他、請求項5〜6の手段によると、リングの寸法の自由度が高まるし、リングと連結ロッドとの溶接コストも安くてすむ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一例を示すラテラルリンクの正面図、図2は平面図、図3は右側面図、図4は図1のAーA断面図であるが、ラテラルリンクは、連結ロッド1とその両端に配されるリング2とから構成される。なお、本例のリング2は、同じ大きさで同じ方向に向くものの、その前後位置はある程度オフセットされているものを示しているが、これは、一例であって、大きさ、向き、オフセット量については種々のものがある。
【0013】
本発明における連結ロッド1は、その母材として薄肉鋼管を採用する。ラテラルリンクには、数トンの引張荷重や圧縮荷重が振動の形で負荷されるから、それに対抗する強度を備えていなければならない。それには、引張に対しては第一にそれに耐えうる鋼管の断面積の確保であり、第二に溶接の肉盛り寸法と長さからなる溶接条件の充足であり、第三に溶接時に起こる母材への溶込み量の確保であり、第四に溶接のバラツキ等による部分的な応力集中や母材周辺への熱影響による強度低下を加味した母材の肉厚の確保である。なお、ラテラルリンクは、直径に比べて長さが大幅に長いため、引張荷重に対する断面積よりも、圧縮荷重(座屈)による中央部を最大として端に行くに従って順次減少する曲げモーメントに対する配慮が設計ポイントとなる。
【0014】
したがって、連結ロッド1には、この圧縮に対する中央部を最大として端に行くに従って減少する応分の断面係数と断面二次モーメントを持たせる必要がある。このことから、従来の中実鋼棒や厚肉鋼管に比べて断面係数と断面二次モーメントとで圧倒的に有利な大径の薄肉鋼管を採用したものである。ちなみに、断面係数は、直径の3乗に比例し、断面二次モーメントは4乗に比例することから、径を大きくすることは、これらを3乗倍、4乗倍に増大することになる。そして、必要な断面係数等が確保できることを条件に、軸方向位置の断面を適宜変化させてもよいとしたものである。
【0015】
このことを具体的な例を挙げて検証すると、必要な断面係数と断面二次モーメント及び溶接時の溶込みと母材の強度低下等を考慮して、従来、STKMの直径21.7mm、肉厚3.7mmの厚肉鋼管を使用していたものに対し、直径が25.4mm、肉厚が1.6mm程度の薄肉鋼板で代替できることを確認している。これによると、強度はほとんど変わらないが、重量は約50%軽くなるといった効果がある。また、薄肉鋼管を採用することで、その採寸も、プレス加工で簡単にできるから(切削加工を必要としない)、生産性が向上し、作業環境が悪化しない。なお、連結ロッド1の表面の適所には、溶接加工のときの位置決めの治具等が挿入できる凹み3を同じくプレス加工で成形しておく。
【0016】
一方、リング2と溶着される連結ロッド1の端部(溶接部)は、溶接のバラツキによる部分的な応力集中及び母材周辺への熱の浸透によって強度低下が起こる懸念がある。このため、溶接個所には、適正な肉盛り量とその溶接長及び十分な溶込み深さを可能にするための肉厚が必要であるが、本発明では、薄肉鋼管を使用しているため、両端を塑性加工(塑性流動ともいう)で増厚肉している。この増厚肉の程度は、負荷される荷重にもよるが、上記の例でいえば、3〜4mmが適するであろう(この点で中央部との肉厚の差は2倍程度になる)。
【0017】
そして、両端を増厚肉する塑性流動の方法には、爆発成形、液圧成形等、種々の方法があり、そのいずれであってもよいが、ダイスによるプレス加工が優れている。すなわち、奥が径小のテーパとなっているダイス(図示省略)を用意し、これに連結ロッド1の端を突っ込んで軸方向に押して成形する方法である。図5はこの方法によって成形された連結ロッド1の断面図であるが、これによると、塑性流動によって端に行くほど直径が減少して(先細)、それに反比例して肉厚が増している。したがって、端部をリング2の寸法に対応した寸法にできるので、連結ロッド1の大径化が制約を受けないという利点がある。なお、この成形時、座屈が生じて加工不能になることがあるので、数次に分けて成形する等の配慮が必要である。
【0018】
以上の方法は、基本的には、直径を縮めることで、周長を短縮させて増厚肉する方法であるが、軸方向に縮めて増厚肉する方法もある。図6はこの方法によって成形された連結ロッド1の一部断面正面図、図7は側面図であるが、これによる成形は、連結ロッド1の両端部分を所定長さに亘って外周方向に出張部1aを設けて増厚肉したものであり、このとき、全体を押し潰した形状の偏平にする他、端面を凹形状1bにしたものである。この成形の基本は、連結ロッド1を、その端部に外方に出っ張り空間を有する受型に収容するとともに、端面側を押型で押して空間内に膨らませたものである。この場合も、何回かに分けて膨らませて行くことで、所要の増厚肉量を確保できる。なお、偏平にしたのは、リング2の寸法が少々小さいものであっても、短い方を当接することで溶接ができるようにするためであり、凹形状1bにしたのは、リング2の周面に極力沿わせるためである。
【0019】
図8は更に他の方法で成形した連結ロッドの断面図、図9は一部斜視図であるが、本例のものは、連結ロッド1の両端を内側に折り曲げて二重層1cにするとともに、これによって肉厚が増した端面にリング2を当てて溶接したものである。内側に折り返すことで肉厚を増厚肉して強度を高め、折り返して二重層1cを有することになった端面にリング2をあてがうことで、接触面積を大きくして必要な溶接条件を確保したものである。
【0020】
ところで、以上において、連結ロッド1の中央の薄肉大径部分は、最初から所要の径のものを採用しているが、この他に、多少細めで厚肉の鋼管を採用し、これをバルジ加工して中央部を所定の径に拡径してもよい。要は、主体部分が所定の径が確保された薄肉であり、端部が所定の厚肉になっておればよいのであり、この点で、端部を除く部分の断面形状は一律である必要はない。加えて、端面の形状や肉厚は、必要な肉盛り寸法と溶接長が確保できるものであればよいのであり、限定的なものではない。そして、これらすべての成形は、切削加工ではなく、生産性、作業環境ともに優れた塑性加工によるのである。
【0021】
リング2は、径と肉厚が限られた標準鋼管の中から所望のものを選択し、これを切断して使用していたのであるが、一般的には、肉厚が厚いことから、機械加工して薄肉化していた。しかし、これでは、生産性、切粉の排出等の不都合があることは上述したとおりである。そこで、本例では、肉厚が自由に選択できる短冊形の鋼板を巻いてリング2にする方法を採用している。これによると、リングの肉厚はもちろん、径までも自由に設定できる利点がある。図10はこの場合のリング2の斜視図、図11は断面図、図12は右側面図であるが、具体的には、展開した形状に鋼板を剪断し、これを巻いてリング2にする。このとき、溶接時の位置決め等に利用するために、リング2の周面となる個所に内周から外周に突出した突起4を形成しておく。なお、これらの加工は、すべて塑性加工で行うし、このとき、ロール(図示省略)に通す塑性流動によって切断面の面取り及び平滑化を行っておく。
【0022】
鋼板を巻いたものでリング2を形成するとなると、その両端を突き合わせて溶接しなければならない。この場合、単に長方形の短冊材を巻いたのでは真円度が出難い。また、実際には、鋼管に比べて薄い、具体的には、3mm程度の鋼板を使用することになるが、個別の溶接を行っていたのでは、効率的な連続自動溶接で製作される鋼管に比べてかえってコストが高くなりかねない。そこで、本例では、端面を凹凸面2a、2bとして互いに入り込ませて真円度の向上を図るとともに、この凹凸面2a、2bの形状を連結ロッド1の端の外形形状に沿うものにし(図12参照)、端面2a、2b同士の肉盛溶接と連結パイプ1とリング2との肉盛溶接を兼ねて同時に行っている。こうすることで、溶接に伴うコスト増をカバーできる。
【0023】
以上の溶接は、連結ロッド1の全周に亘って行い、このとき、上記した連結ロッド1の凹み3やリング2の突起4を位置決め具(図示省略)に係合して正確な位置決めと確実な固定を図っている。そして、このとき、連結ロッド1とリング2との接合面は溶接材で完全に塞ぐようにする。ここに隙間があると、塗装の処理液等が連結ロッド1の中に侵入して錆が発生したりするからである。この点は、上記した凹み3や突起4も同様であり、これらも内外に通じないように形成する必要がある。なお、これら凹み3や突起4の形状、形成部位、個数等は図示のものに限定されないのはいうまでもなく、要は、強度低下が少ない位置が決められる凹凸や平面等であればよい。そして、本発明では、すべての加工を塑性加工によっているのが特徴である。
【0024】
次に、防振ゴム5のリング2への装填について説明する。図13は第一例に係る防振ゴム5を成形する工程を示す断面図であるが、この場合の防振ゴム5は、内周側から被支持部材を連結する金属製のコア6、ゴム弾性体7及びリング2に固定される同じく金属製のリテーナ8とからなる。従来は、コア6を加硫成形したゴム弾性体7の外周を絞ってリング2に嵌合して接着することで、抜け止めを可能にする装填をしていたのであるが、この作業が面倒でコストがかかることは上述したとおりである。このため、本発明では、防振ゴム5の圧縮と装填を、リテーナ8を用いて行う簡単で信頼性の高い方法によったのである。
【0025】
このため、第一例において、リテーナ8として上端が開口した金属製のカップ体を使用し、このリテーナ8の中にコア6と加硫成形されたゴム弾性体7を嵌め込む(a)。このとき、リテーナ8の底壁8aは下方に膨らんでおり、上端の筒壁8bはゴム弾性体7の端を超えて延びている。なお、このときの嵌合は緊いものである必要はない。次いで、この状態のリテーナ8の筒壁8bを内側にやや折り込み(b)、ゴム弾性体7の抜出を規制するものにする。そして、筒壁8bを完全に折り込んでゴム弾性体7の端面に当てて端を外方に膨らませるとともに、リテーナ8の外周を絞ってゴム弾性体7を所定に圧縮する(c)。
【0026】
なお、本例では、この絞りを容易にするため、リテーナ8の外周に、上端から下方に向けて切れ込む切欠8cを前後二箇所形成している。この絞りは、径にして5%程度であり、このとき、切欠8cの途中を狭めて絞ったときにこの部分が接当するようにすれば(c)、絞り量が正確になる。最後に、以上のリテーナ8をリング2に嵌入し、底壁8aを上方に押し潰せば、端が外方に膨らみ、この膨らみと上端の膨らみとでリング2を上下から挟み付け、抜出を規制する。これにより、リング2に防振ゴム5が装填されるのであるが、このとき、ゴム弾性体7は適当に圧縮されることになり、良好なばね特性が出現できるのである。
【0027】
図14は第二例を示す防振ゴム5の各要素の断面図、図15は組立状態の断面図であるが、本例のものは、コア6を外端に鍔6aが付いた鍔付きのものにしてこれを二つに分割し、リテーナ8に内嵌したものである。そして、リテーナ8の外周側にゴム弾性体7とリング2を嵌合したものである。この場合、コア6の外径をリテーナ8の内径よりもゴム弾性体7の圧縮相当量分だけ大きくし、嵌合すると、リテーナ8が拡径されるようにしてある。なお、このリテーナ8は、鋼管を使用してもよいが、鋼板を螺旋形に巻いたもので構成すれば、拡径が容易になって好ましい。この組立ては、リング2にリテーナ8を内周に嵌合したゴム弾性体7をリング2に内嵌しておき、リテーナ8の両側からコア6を圧入する。
【0028】
すると、鍔6aによってリテーナ8の両端はそれぞれ外方に折り曲げられ、ゴム弾性体7の抜け止めとなる。なお、抜け止めは、リング2とゴム弾性体7にも必要であり、本例では、ゴム弾性体7の上下両端をリング2からはみ出すものにしてこの部分に膨出部7aを形成しておくとともに、リング2の内端面も面取りをしてこの膨出部7aの傾斜に沿った形状にしている。これにより、リテーナ8が拡径されると、当然にゴム弾性体7も拡径させられ、リング2に嵌合されたときには、所定の与圧がかかった膨大状態になっていて抜け止めも果たされる。
【0029】
図16は第三例を示す防振ゴム5の各要素の断面図、図15は組立状態の断面図であるが、本例のものは、防振ゴム5が、内周側からコア6、内側リテーナ8、ゴム弾性体7及び外側リテーナ9を互いに嵌合したものである。見てわかるとおり、本例のものは、上記二例を組み合わせたものであり、これに伴い、内側リテーナ8は、第二例のリテーナ8に類似しており、外側リテーナ9は、第一例のリテーナ8に類似している。したがって、内側リテーナ8は、拡径が容易な鋼板の螺旋巻きのもの、外側リテーナ9は、押し潰しが容易な薄肉のもので構成される。なお、リング2の内周の角の面取りは不要になる。この場合も、組付けの最後に、内側リテーナ8の内径よりも所定量径大な外径を有するコア6を内側リテーナ8に圧入する。
【0030】
前にも述べたが、拡径されるリテーナ8(及び第三例の内側リテーテ8)は、肉厚1mm程度の鋼板を螺旋巻きして作られる。このとき、端面は、当初密着しているが、コア6が圧入されると、端面同士は離れて比較的容易に拡径される。また、外側リテーナ9も同様であり、肉厚1mm程度の鋼板を螺旋に巻いたり、一枚物を突き合わせ巻回して作られる。このとき、上記したリング2のように端面を凹凸の嵌合にしてもよいし、平坦のままであってもよい。この外側リテーナ9(及び第一例のリテーナ8)はリング2に内嵌される上下端が外側に膨らんで抜け止めを果たす必要があり、そのための成形の容易性は確保される必要がある。
【0031】
防振ゴムは、原料の種類や配合の管理等だけではなく、通常は、性能特性値の変化量が少なくなるように加硫成形の後で所定の圧縮を行ってリングから抜け出ることがないように装填しており、この抜け止め防止は、普通、接着によって対応している。本発明は、この所定の圧縮を、内外リテーナやコアを用いることで、リングへの装填を兼ねて定性的、かつ、安定的に行うことができるようにしたものであり、抜け止めについては、リテーナを外曲げする等で対処している。したがって、本発明によれば、従来必要としていた面倒で作業環境を害する接着作業を排することができるのである。また、圧入するコアを採用する第二例及び第三例では、設計時に必要となる防振ゴムの圧縮量の設定において、異なる数種類の外形のもので性能試験をすることで、すべての場合における特性が把握できるものとなり、費用の節減と時間の短縮が図られる。なお、いうまでもないが、以上の防振ゴムの構成及びリングへの組付けに際しても、機械加工ではなく、すべて塑性加工によるのである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一例を示すラテラルリンクの正面図である。
【図2】本発明の一例を示すラテラルリンクの平面図である。
【図3】本発明の一例を示すラテラルリンクの右側面図である。
【図4】本発明の一例を示す図1のAーA断面図である。
【図5】本発明の一例を示す連結ロッドの断面図である。
【図6】本発明の一例を示す連結ロッドの一部断面正面図である。
【図7】本発明の一例を示す連結ロッドの側面図である。
【図8】本発明の一例を示す連結ロッドの断面図である。
【図9】本発明の一例を示す連結ロッドの一部斜視図である。
【図10】本発明の一例を示すリングの斜視図である。
【図11】本発明の一例を示すリングの断面図である。
【図12】本発明の一例を示すリングの右側面図である。
【図13】本発明の一例を示す防振ゴムの成形工程の説明図である。
【図14】本発明の一例を示す防振ゴムの各要素の断面図である。
【図15】本発明の一例を示す防振ゴムの組立て状態の断面図である。
【図16】本発明の一例を示す防振ゴムの各要素の断面図である。
【図17】本発明の一例を示す防振ゴムの組立て状態の断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 連結ロッド
1a 出張部
1b 凹形状
1c 二重層
2 リング
2a リングの端面
2b リングの端面
3 凹み
4 突起
5 防振ゴム
6 コア
6a 鍔
7 ゴム弾性体
7a 膨出部
8 リテーナ(内側リテーナ)
8a 底壁
8b 筒壁
8c 切欠
9 外側リテーナ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の太さの中実鋼棒又は厚肉鋼管で構成される連結ロッドの両端にリングを溶着し、リングの内部に防振ゴムを装填したラテラルリンクにおいて、連結ロッドを、所定の太さのものよりも大径のものの両端を塑性加工によって増厚肉した薄肉鋼管で構成したことを特徴とするラテラルリンク。
【請求項2】
薄肉鋼管の両端を内側に折り返して二重層にして増厚肉し、その端面にリングを溶着した請求項1のラテラルリンク。
【請求項3】
薄肉鋼管の両端を軸方向に押圧して外周方向に出張部を設けて増厚肉するとともに、全体を押し潰して偏平にする他、端面を凹形状にした請求項1又は2のラテラルリンク。
【請求項4】
薄肉鋼管の両端を端に行くほど細くするとともに、増厚肉した請求項1のラテラルリンク。
【請求項5】
リングを、短冊形の鋼板を巻いて突き合わせ面を溶着したもので形成するとともに、周面に内周から外周に突出する突起を形成した請求項1〜4いずれかのラテラルリンク。
【請求項6】
突き合わせ面を凹凸面にするとともに、この凹凸面の形状を薄肉鋼管の端の外形形状に沿うものにし、突き合わせ面同士の溶接と薄肉鋼管とリングとの溶接を兼用した請求項5のラテラルリンク。
【請求項7】
リングに装填される防振ゴムが、内周にコアを加硫成形したゴム弾性体をリテーナに収容してリテーナを圧縮することでゴム弾性体を圧縮したものであり、このリテーナをリングに両端を余して内嵌するとともに、余したリテーナの両端を外方へ膨らませてリングに対する抜け止めとした請求項1〜6いずれかのラテラルリンク。
【請求項8】
リングに装填される防振ゴムが、外周の両端に膨出部が形成されてリングに内嵌されたゴム弾性体の内周に端を余してリテーナが嵌合されたものであり、リテーナの内周にこれよりも所定に径大をしているコアを圧入することで、ゴム弾性体を所定に膨大させるとともに、リテーナの両端を外方に折り曲げてリテーナとコアとの抜け止めとする一方、ゴム弾性体の膨出部がリングに対する抜け止めを構成している請求項1〜6いずれかのラテラルリンク。
【請求項9】
リングに装填される防振ゴムが、内周に内側リテーナを嵌合したゴム弾性体を外側リテーナに内嵌して外側リテーナをリングに両端を余して内嵌したものであり、内側リテーナの内周にこれよりも所定に径大をしているコアを圧入することで、ゴム弾性体を所定に膨大させるとともに、外側リテーナの余した両端を外方へ膨らませることで、リングに対する抜け止めとした請求項1〜6いずれかのラテラルリンク。
【請求項1】
所定の太さの中実鋼棒又は厚肉鋼管で構成される連結ロッドの両端にリングを溶着し、リングの内部に防振ゴムを装填したラテラルリンクにおいて、連結ロッドを、所定の太さのものよりも大径のものの両端を塑性加工によって増厚肉した薄肉鋼管で構成したことを特徴とするラテラルリンク。
【請求項2】
薄肉鋼管の両端を内側に折り返して二重層にして増厚肉し、その端面にリングを溶着した請求項1のラテラルリンク。
【請求項3】
薄肉鋼管の両端を軸方向に押圧して外周方向に出張部を設けて増厚肉するとともに、全体を押し潰して偏平にする他、端面を凹形状にした請求項1又は2のラテラルリンク。
【請求項4】
薄肉鋼管の両端を端に行くほど細くするとともに、増厚肉した請求項1のラテラルリンク。
【請求項5】
リングを、短冊形の鋼板を巻いて突き合わせ面を溶着したもので形成するとともに、周面に内周から外周に突出する突起を形成した請求項1〜4いずれかのラテラルリンク。
【請求項6】
突き合わせ面を凹凸面にするとともに、この凹凸面の形状を薄肉鋼管の端の外形形状に沿うものにし、突き合わせ面同士の溶接と薄肉鋼管とリングとの溶接を兼用した請求項5のラテラルリンク。
【請求項7】
リングに装填される防振ゴムが、内周にコアを加硫成形したゴム弾性体をリテーナに収容してリテーナを圧縮することでゴム弾性体を圧縮したものであり、このリテーナをリングに両端を余して内嵌するとともに、余したリテーナの両端を外方へ膨らませてリングに対する抜け止めとした請求項1〜6いずれかのラテラルリンク。
【請求項8】
リングに装填される防振ゴムが、外周の両端に膨出部が形成されてリングに内嵌されたゴム弾性体の内周に端を余してリテーナが嵌合されたものであり、リテーナの内周にこれよりも所定に径大をしているコアを圧入することで、ゴム弾性体を所定に膨大させるとともに、リテーナの両端を外方に折り曲げてリテーナとコアとの抜け止めとする一方、ゴム弾性体の膨出部がリングに対する抜け止めを構成している請求項1〜6いずれかのラテラルリンク。
【請求項9】
リングに装填される防振ゴムが、内周に内側リテーナを嵌合したゴム弾性体を外側リテーナに内嵌して外側リテーナをリングに両端を余して内嵌したものであり、内側リテーナの内周にこれよりも所定に径大をしているコアを圧入することで、ゴム弾性体を所定に膨大させるとともに、外側リテーナの余した両端を外方へ膨らませることで、リングに対する抜け止めとした請求項1〜6いずれかのラテラルリンク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−250234(P2006−250234A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−67019(P2005−67019)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(591283501)備前発条株式会社 (33)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(591283501)備前発条株式会社 (33)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]