説明

リソグラフィ装置のためのレベルセンサの構成及びデバイス製造方法

【課題】改良されたレベルセンサを提供する。
【解決手段】レベルセンサはリソグラフィ装置において基板表面高さを測定する。レベルセンサには、検出用の放射を基板に発する光源と、基板から反射された放射を測定するための検出器ユニットと、が設けられている。光源は、リソグラフィ装置において基板を処理するために使用されるレジストが反応する波長域の検出用放射を発する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィ装置及びデバイス製造方法に関する。特に、本発明は、レベルセンサの構成及び基板のレベル測定の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板、通常は基板の目標部分に転写する機械である。リソグラフィ装置は例えば集積回路(IC)の製造に用いられる。この場合、例えばマスクまたはレチクルとも称されるパターニングデバイスが、集積回路の各層に対応した回路パターンを形成するために使用され得る。このパターンが基板(例えばシリコン基板)の(例えばダイの一部、あるいは1つまたは複数のダイからなる)目標部分に転写されることになる。パターンの転写は典型的には、基板に塗布された放射感応性材料(レジスト)層への像形成により行われる。一般に一枚の基板にはネットワーク状に隣接する一群の目標部分が含まれ、これらは連続的にパターン形成される。公知のリソグラフィ装置にはいわゆるステッパとスキャナとがある。ステッパにおいては、目標部分にパターン全体が一度に露光されるようにして各目標部分は照射を受ける。スキャナにおいては、所与の方向(スキャン方向)に放射ビームによりパターンを走査するとともに基板をスキャン方向に平行または逆平行に走査するようにして各目標部分は照射を受ける。また、パターンを基板にインプリントすることにより、パターニングデバイスから基板にパターンを転写することも可能である。
【0003】
欧州特許出願EP-A-1037117には、リソグラフィ投影装置におけるオフアクシスのレベリングの構成が開示されている。この構成を使用することにより、リソグラフィマップにおける基板の高さマップが測定される。ここでのレベルセンサは、回折光学素子と、600乃至1050nmの範囲の波長の多色放射とを使用している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
改良されたレベルセンサの構成及び動作が提供されることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、リソグラフィ装置における基板の感光層表面の位置を測定するためのレベルセンサが提供される。レベルセンサは、基板からの反射された放射を動作中に測定するための検出器ユニットを備え、検出器ユニットは、基板を処理するために使用される感光層に反応する波長範囲の放射を測定する。
【0006】
本発明の一態様によれば、基板の感光層表面の位置を測定するよう構成されているリソグラフィ装置が提供される。リソグラフィ装置は、基板により反射された化学線に基づいて高さを測定する。
【0007】
本発明の一態様によれば、リソグラフィ装置における基板の感光層表面の位置を測定する方法が提供される。この方法は、基板からの反射された放射を動作中に測定することを含み、反射された放射は、基板を処理するために使用される感光層に反応する波長範囲にある。本発明の一態様によれば、パターニングデバイスから基板にパターンを転写することを含むデバイス製造方法が提供される。この方法は、該基板により反射された化学線に基づいて基板の感光層表面の位置を測定する。
【0008】
本発明の実施形態が以下に説明されるがこれらは例示に過ぎない。この説明に用いられる参照符号は各図面において対応する部分を指し示す。各図面において同様の符号は同様の部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係るリソグラフィ装置を示す図である。
【図2】投影格子を使用するレベルセンサの構成を模式的に示す図である。
【図3】基板上の層とレベルセンサの測定ビームとを含む模式的な断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るレベルセンサの構成を模式的に示す図である。
【図5】検出器ユニットの一部を示す断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る検出器ユニットの一部を示す断面図である。
【図7a】フロントエンドプロセスに典型的な基板上の層を示す断面図である。
【図7b】フロントエンドプロセス層をもつ基板の見かけ表面沈下量を2つの波長域について入射角度の関数として示すグラフである。
【図8a】バックエンドプロセスに典型的な基板上の層を示す断面図である。
【図8b】バックエンドプロセス層をもつ基板の見かけ表面沈下量を2つの波長域について入射角度の関数として示すグラフである。
【図9】本発明の一実施形態に係り、シャッタを含むレベルセンサの構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係るリソグラフィ装置を模式的に示す図である。この装置は、
放射ビームB(例えばUV放射またはDUV放射)を調整するよう構成されている照明光学系(イルミネータ)ILと、
パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するよう構成され、いくつかのパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするよう構成されている第1の位置決め装置PMに接続されている支持構造(例えばマスクテーブル)MTと、
基板(例えばレジストでコーティングされたウエーハ)Wを保持するよう構成され、いくつかのパラメータに従って基板を正確に位置決めするよう構成されている第2の位置決め装置PWに接続されている基板テーブル(例えばウエーハテーブル)WTと、
パターニングデバイスMAにより放射ビームBに付与されたパターンを基板Wの(例えば1つまたは複数のダイからなる)目標部分Cに投影するよう構成されている投影系(例えば屈折投影レンズ系)PSと、を備える。
【0011】
照明系は、放射の方向や形状の調整またはその他の制御用に、各種の光学素子例えば屈折光学素子、反射光学素子、磁気的光学素子、電磁気的光学素子、静電的光学素子または他の各種光学部品を含んでもよく、あるいはこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0012】
支持構造は、パターニングデバイスを支持する。すなわち支持構造MTは、パターニングデバイスの荷重を支える。支持構造は、パターニングデバイスの向きやリソグラフィ装置の構成、あるいはパターニングデバイスが真空環境下で保持されるか否かなどの他の条件に応じた方式でパターニングデバイスを保持する。支持構造においてはパターニングデバイスを保持するために、機械的固定、真空固定、静電固定、または他の固定用技術が用いられる。支持構造は例えばフレームまたはテーブルであってよく、必要に応じて固定されていてもよいし移動可能であってもよい。支持構造は、パターニングデバイスを例えば投影系に対して所望の位置に位置決めできるようにしてもよい。本明細書では「レチクル」または「マスク」という用語を用いた場合には、より一般的な用語である「パターニングデバイス」に同義であるとみなされるものとする。
【0013】
本明細書では「パターニングデバイス」という用語は、例えば基板の目標部分にパターンを形成すべく放射ビームの断面にパターンを付与するために使用され得るいかなるデバイスをも指し示すよう広く解釈されるべきである。放射ビームに与えられるパターンは、基板の目標部分に所望されるパターンと厳密に対応していなくてもよい。このような場合には例えば、放射ビームのパターンが位相シフトフィーチャあるいはいわゆるアシストフィーチャを含む場合がある。一般には、放射ビームに付与されるパターンは、目標部分に形成される集積回路などのデバイスの特定の機能層に対応する。
【0014】
パターニングデバイスは透過型であっても反射型であってもよい。パターニングデバイスの例としては、例えばマスクやプログラマブルミラーアレイ、プログラマブルLCDパネルなどがある。マスクはリソグラフィの分野では周知であり、バイナリマスクやレベンソン型位相シフトマスク、ハーフトーン型位相シフトマスク、更に各種のハイブリッド型マスクが含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例としては、小型のミラーがマトリックス状に配列され、各ミラーが入射してくる放射ビームを異なる方向に反射するように個別に傾斜されるというものがある。これらの傾斜ミラーにより、マトリックス状ミラーで反射された放射ビームにパターンが付与されることになる。
【0015】
本明細書では「投影系」という用語は、使用される露光光あるいは液浸や真空の利用などの他の要因に関して適切とされるいかなる投影系をも包含するよう広く解釈されるべきである。投影系には例えば屈折光学系、反射光学系、反射屈折光学系、磁気的光学系、電磁気的光学系、静電的光学系、またはこれらの任意の組み合わせなどが含まれる。以下では「投影レンズ」という用語は、より一般的な用語である「投影系」と同義に用いられ得る。
【0016】
ここに説明されるのは、(例えば透過型マスクを用いる)透過型のリソグラフィ装置である。これに代えて、(例えば上述のようなプログラマブルミラーアレイや反射型マスクなどを用いる)反射型のリソグラフィ装置を用いることもできる。
【0017】
リソグラフィ装置は2つ以上(2つの場合にはデュアルステージと呼ばれる)の基板テーブル(及び/または2つ以上のマスクテーブル)を備えてもよい。このような多重ステージ型の装置においては追加されたテーブルは並行して使用されるか、あるいは1以上のテーブルで露光が行われている間に他の1以上のテーブルで準備工程を実行するようにしてもよい。
【0018】
リソグラフィ装置は、基板の少なくとも一部が液体で覆われるものであってもよい。この液体は比較的高い屈折率を有する例えば水などの液体であり、投影系と基板との間の空隙を満たす。液浸露光用の液体は、例えばマスクと投影系との間などのリソグラフィ装置の他の空間に適用されるものであってもよい。液浸技術は投影系の開口数を増大させる技術として周知である。本明細書では「液浸」という用語は、基板等の構造体が液体に完全に浸されているということを意味するのではなく、露光の際に投影系と基板との間に液体が存在するということを意味するに過ぎない。
【0019】
図1に示されるようにイルミネータILは放射源SOから放射ビームを受け取る。例えば光源がエキシマレーザである場合には、光源とリソグラフィ装置とは別体であってもよい。この場合、光源はリソグラフィ装置の一部を構成しているとはみなされなく、放射ビームは光源SOからイルミネータILへとビーム搬送系BDを介して受け渡される。ビーム搬送系BDは例えば適当な方向変更用のミラー及び/またはビームエキスパンダを含んで構成される。あるいは光源が例えば水銀ランプである場合には、光源はリソグラフィ装置に一体に構成されていてもよい。光源SOとイルミネータILとは、またビーム搬送系BDが必要とされる場合にはこれも合わせて、放射系または放射システムと総称される。
【0020】
イルミネータILは放射ビームの角強度分布を調整するためのアジャスタADを備えてもよい。一般には、イルミネータの瞳面における強度分布の少なくとも半径方向外径及び/または内径の大きさ(通常それぞれ「シグマ−アウタ(σ−outer)」、「シグマ−インナ(σ−inner)」と呼ばれる)が調整される。加えてイルミネータILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の要素を備えてもよい。イルミネータはビーム断面における所望の均一性及び強度分布を得るべく放射ビームを調整するために用いられる。
【0021】
放射ビームBは、支持構造(例えばマスクテーブルMT)に保持されるパターニングデバイス(例えばマスクMA)に入射して、当該パターニングデバイスによりパターンが付与される。マスクMAを通過した放射ビームBは投影系PSに進入する。投影系PSはビームを基板Wの目標部分Cに投影する。第2の位置決め装置PWと位置センサIF(例えば、干渉計、リニアエンコーダ、静電容量センサなど)により基板テーブルWTを正確に移動させることができる。基板テーブルWTは例えば放射ビームBの経路に異なる目標部分Cを順次位置決めするように移動される。同様に、第1の位置決め装置PMと他の位置センサ(図1には明示せず)とにより放射ビームBの経路に対してマスクMAを正確に位置決めすることができる。この位置決めは例えばマスクライブラリからのマスクの機械的交換後や露光走査中に行われる。一般にマスクテーブルMTの移動は、第1の位置決め装置PMの一部を構成するロングストロークモジュール(粗い位置決め用)及びショートストロークモジュール(精細な位置決め用)により実現される。同様に基板テーブルWTの移動は、第2の位置決め装置PWの一部を構成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールにより実現される。ステッパでは(スキャナとは逆に)、マスクテーブルMTはショートストロークのアクチュエータにのみ接続されているか、あるいは固定されていてもよい。マスクMAと基板Wとは、マスクアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を用いてアライメントされてもよい。図においては基板アライメントマークが専用の目標部分を占拠しているが、アライメントマークは目標部分間のスペースに配置されてもよい(これはスクライブライン・アライメントマークとして公知である)。同様に、マスクMAに複数のダイがある場合にはマスクアライメントマークをダイ間に配置してもよい。
【0022】
図示の装置は例えば次のうちの少なくとも1つのモードで使用され得る。
【0023】
1.ステップモードにおいては、放射ビームに付与されたパターンの全体が1回の照射(すなわち単一静的露光)で目標部分Cに投影される間、マスクテーブルMT及び基板テーブルWTは実質的に静止状態とされる。そして基板テーブルがX方向及び/またはY方向に移動されて、異なる目標部分Cが露光される。ステップモードでは露光フィールドの最大サイズが単一静的露光で転写される目標部分Cのサイズを制限することになる。
【0024】
2.スキャンモードにおいては、放射ビームに付与されたパターンが目標部分Cに投影される間(すなわち単一動的露光の間)、マスクテーブルMT及び基板テーブルWTは同期して走査される。マスクテーブルMTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影系PSの拡大(縮小)特性及び像反転特性により定められる。スキャンモードでは露光フィールドの最大サイズが単一動的露光での目標部分の(非走査方向の)幅を制限し、スキャン移動距離が目標部分の(走査方向の)長さを決定する。
【0025】
3.別のモードにおいては、マスクテーブルMTがプログラム可能パターニングデバイスを保持して実質的に静止状態とされ、放射ビームPBに付与されたパターンが目標部分Cに投影される間、基板テーブルWTが移動または走査される。このモードではパルス放射源が通常用いられ、プログラム可能パターニングデバイスは、基板テーブルWTの毎回の移動後、または走査中の連続放射パルス間に必要に応じて更新される。この動作モードは、上述のプログラマブルミラーアレイ等のプログラム可能パターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
【0026】
上記で記載したモードを組み合わせて動作させてもよいし、各モードに変更を加えて動作させてもよいし、さらに全く別のモードでリソグラフィ装置を使用してもよい。
【0027】
本発明の実施形態は、リソグラフィ装置における基板に関してレベルセンサ測定を実行するための方法及び構成に関する。
【0028】
従来のレベルセンサにおいては、レベルセンサは基板Wの表面高さまたは表面高さプロファイルを測定する。レベルセンサの模式図を図2に示す。レベルセンサ測定は基板処理のすべての段階で実行される。基板Wに複数の層4が既に形成されている場合にも実行される。層4は例えば、酸化物層、ポリシリコン層、誘電体反射防止コーティング(DARC)、金属層(例えば銅)、及びレジスト層を含む。
【0029】
放射体6(例えば光源の形式をとる)は、パターン7(例えば30μmのピッチPを有する格子)に放射を発し、そうして形成された放射ビームは基板W(または基板W上の複数層4の最上面)に投影される。この投影は、投影光学系(例えばレンズの形式をとる)9を使用して入射角θでなされる。リソグラフィ装置においてレベルセンサ測定に使用される放射は600nm乃至1050nmの波長範囲を持つ。すなわち、基板Wの処理に使用されるレジストが反応しない波長範囲である。反射された放射は、別のレンズ9を使用して基準格子8へと再度集束される。基準格子8により伝達された放射を処理するために検出器5が使用される。そして、測定信号が処理されて層4の高さが得られる。このレベルセンサの構成は、光学三角測量技術に基づいている。測定高さは検出器5により測定された信号の強度に直接関連しており、入射角に依存する周期性をもつ(P/2 sinθ)。
【0030】
実際には、基板W上のレジスト及びその下の処理済み層4は(半)透明である。ある波長の光が処理済みの下層で反射され、この反射光にレジスト層で反射された光がコヒーレントに加わる。こうした干渉作用が重なって、大きな測定誤差が生じうる。この誤差は層の真の厚さに依存する。干渉作用を平均化するために、およそ1オクターブの広波長域が使用される。これが図3に模式的に示される。入射ビーム11の一部が層4(この例ではレジスト層のみを含む)の表面で反射して反射ビーム12が生じる。ところが、入射ビーム11の一部は層4の内部へと屈折し、基板Wと層4との界面で反射する。このビームは層4の表面でもう一度屈折して二次ビーム13となる。二次ビーム13は反射ビーム12に平行である。その結果、層4の正確な高さhとは異なる値が得られてしまう。
【0031】
測定高さの真のレジスト高さからの偏差は、「見かけの表面沈下(ASD)」と呼ばれる。このASDは、例えば600nm乃至1050nmの広帯域の光を使用して積層の干渉作用の有害な影響を平均化することにより最小化される。
【0032】
ASDの影響は、ウェーハ表面とノズルとの間の圧力計測または流量計測に基づく補助センサ(エアゲージ)を使用して補正される。しかし、このセンサは遅いので、ウェーハ上の数フィールドでの散発的な較正に使用されるのみである。また、基板表面に非常に接近するので(およそ200μm)装置の安全性に問題が生じうる。これを解決するには高価な安全対策が必要である。さらに、2種のセンサを併用することもコスト増をもたらす。
【0033】
本発明の一実施形態に係るレベルセンサの構成10が図4に示される。この構成は既述のリソグラフィ装置(図1参照)に適用される。光源16は特定の光スペクトルを有し、基板Wに放射を発する。光源16からの放射は投影用の格子17に向けられる。投影格子17は光源16と基板Wとの間に配置されている。図示の実施例では複数のミラー14、15を含む反射投影光学系を使用して、投影格子17の形成する像が基板Wに投影される。基板Wで反射された放射は、更なる複数の反射要素14、15を使用して検出器ユニット18へと光学的に集束される。検出器ユニット18には例えば紫外線センサが設けられており、基板Wから反射された放射を計測しかつその反射放射から基板高さ(プロファイル)を動作中に決定する。
【0034】
本発明の実施形態によれば、公知のレベルセンサに比べて短い波長の入射ビーム11を発する光源16を使用することによりASDの影響が軽減される。具体的には、光源16は、リソグラフィ装置で基板Wの処理に使用されるレジストが反応する波長域の放射を発する。言い換えれば、リソグラフィ装置のレベルセンサで使用される波長は、基板処理に使用されるレジストが感光する波長に変更されている。これは化学線(すなわち化学変化を引き起こす光放射)とも言われる。使用するレジストにもよるが、500nm未満の波長で測定が実行されるということである。一実施例においては、400nm未満の波長(UV放射)が使用されてもよいし、300nm未満の波長(DUV放射)が使用されてもよい。
【0035】
短い波長がプロセスのロバスト性を改善する理由はいくつかある。波長が短いほどレジストの屈折率は増加する。これによりレジストと空気との界面での反射が増えてレジストに進入する光が減る。今日の薄膜においては干渉作用の平均化が短波長でも改善されている。バックエンドプロセスでは銅が用いられるが、この場合には短波長で極めて低反射率であるという銅の特性を利用することができる。また、ポリシリコンや炭素ハードマスク等の最近の多くのプロセス層は紫外線に不透明であり、レベルセンサには下層があまり見えない。この作用についての詳細は「Refractive Index Measurements of Photoresist and Antireflective Coatings with Variable Angle Spectroscopic Ellipsometry(R.A. Synowickiほか著、SPIE Vol. 3332、384-390頁)」を参照されたい。この文献ではSiONが可視光域(k=0)では透明であるが400nm以下の波長では光エネルギを吸収し始めることが記載されている。SiONは基板コーティングに使用される公知の非有機反射防止材料である。
【0036】
レベルセンサによる測定にUV光を用いるという思いつきは完全に受け入れ不可能であるように聞こえる。それは、決して基板を測定光で露光すべきでないという「神聖」なルールが存在するからである。しかしながら、システム上の要求をよく検討することで、レベリング測定は露光に通常使用されるよりもかなり低い極小の光レベルで行うことが可能であることが判明した。すなわち、更なる一実施例においては、(レベルセンサ測定に使用するために)基板Wに発せられる放射の線量(またはエネルギレベル)は予め定められた水準すなわち設定されたしきい値よりも小さい。このしきい値は例えば0.1mJ/cmである。本発明の更なる一実施例によれば、レベルセンサ測定は、(図1を参照して)説明したリソグラフィ装置において実行される。この場合、投影系PSから出射することが許容された迷光レベルに依存して予め定められた水準を使用する。上述の0.1mJ/cmというしきい値は、リソグラフィ装置への実際の適用から導かれた値である。リソグラフィ装置においては、投影系PSはその水準(約1%)の迷光がマスクパターンの露光中に基板Wに照射されることが許容されている。
【0037】
しきい値設定の他の手法は、ロバストかつ反復可能な測定を実現するために要するエネルギの大きさはどの程度かということから考えることである。ある再現精度σを実現するのに必要とされるフォトン数はおおよそ次式で与えられる。

【数1】

σを1nm、Pを30μmとした場合には、Nphは約6×10となる。光検出器の効率を10%、検出光学系の効率を75%、レジストの反射(即ち鏡面反射)を20%と仮定した場合には(これらは保守的な値であるが)、レジストに入射するフォトン数Nphotonsは4×10となる。フォトン1つあたりの平均エネルギを6.6×10−19Jとし、照射面積を2.5×2.5mmとすると、基板に入射するエネルギ密度は4×10−5mJ/cmとなる。これは、結像時のUV迷光の要求水準(およそ0.1mJ/cm)よりも大きさのオーダが小さい。
【0038】
レベルセンサ10により伝達された測定光のエネルギ線量が上述の予め定められたしきい値を超える場合であっても、上述のリソグラフィ装置(図1参照)での次の露光ステップを少し変更することにより本技術は使用可能である。この実施例においては、照明系ILは、予め定められたしきい値を超える線量(またはエネルギレベル)をもつ放射をレベルセンサが与えた場合に、露光レベルのオフセットを適用するよう構成されている。すなわち、リソグラフィ装置のレベルセンサはしきい値を超える測定放射の線量(またはエネルギレベル)を基板Wに与えるよう動作し、その基板Wへの以降の露光ステップで線量補正を適用する。このようにして、レベルセンサの測定光による露光は基板W全体にわたって予測可能なCDのオフセットをもたらし、これは実際の露光中における少量の線量低減により補正が可能である。
【0039】
更なる一実施例においては、レベルセンサ10は、基板Wの全体にわたる測定光の光子エネルギの予測可能な分布(例えば均質な分布)を与えるよう構成されている。測定エネルギの実際の分布が既知である場合には、レベルセンサ測定中にそのエネルギ分布に依存して基板Wの実際の露光中に非常に単純な線量低減を適用することが可能である。
【0040】
一実施例においては、光源16は、本レベルセンサでの使用に適する特定の性質を有するものが使用される。重水素光源16は約200nm乃至400nmの波長スペクトルを有し、このスペクトルは分光放射照度が短波長ほど大きくなる。よって、測定高さへの複数層4の影響がほとんどまたはまったくない改良されたレベルセンサに特に適している。層の干渉は短波長で低感度となるからである。
【0041】
更なる一実施例においては、検出器ユニット18には、整合された複数の素子が設けられている。整合された素子は例えば放射検出器35、36である(下記の説明及び図6を参照)。整合された検出器35、36は、光源波長の関数であるエネルギプロファイルとは実質的に反比例であり波長の関数である感度プロファイルを有する。言い換えれば、使用される波長域での検出特性は、光源16のそれと相補的である。
【0042】
これに代えてまたはこれとともに、検出器ユニット18におけるその他の(光学)素子が、例えばミラーの反射率または照明ファイバの透過率が、上述の整合された特性を得るよう調整されていてもよい。一例としては、短波長において高エネルギをもつ重水素光源が使用される場合に、検出器ユニット18(または、より具体的には放射検出器35、36)は使用波長域の長波長側で高感度に設定される。このような整合のとりかたによって、レベルセンサ10は波長の関数として実質的に均一な応答を与えることが可能となる。
【0043】
公知のレベルセンサは図1及び図4の実施例に示されるように、格子を斜めの角度θで基板Wに投影する。反射された像が検出用の格子に投影される(例えば図1における基準格子8)。基板Wの垂直変位Zは検出格子に対し反射格子像を移動させる。これにより検出格子を透過した光に強度変化が生じる。この強度変化はZ変位に比例する一方で、光源強度または基板(鏡面)反射率の変動によっても変化してしまう。これらの変動を取り除くには差分検出法が用いられる。この方法による公知の検出器ユニット5の構成においては、偏光子21とシャープレート22(例えばウォラストン(Wollaston)・プリズムの形式をとる)との組合せにより、反射ビーム20から互いに横方向にずれた2つの格子像(e及びo)が基準格子23上に生成される。これを図5に模式的に示す。e像及びo像は基準格子23により伝達され2つの検出器(25、26)により検出される。そして、e像及びo像は処理ユニット27において、正規化された高さ信号hを与えるよう処理される。
【0044】
この検出器ユニット5の公知の構成にはいくつかの欠点がある。偏光光学系(例えば偏光子21)は高価であり、サイズの大型化とともに急速に価格が増加する。そのためレベルセンサを大視野へと大型化するとコスト増大を招く。ウォラストン・プリズムまたはシャープレートは、波長λ依存の位置ずれをもたらすという点で有色的である。この位置ずれにより、色依存の高さ誤差が生じる。この誤差は、ウォラストン・プリズム22での分散が小さい長波長域では許容可能であり得るが、UV波長域に向けて急速に増加していく。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、振幅透過格子を使用するのではなく、三角形状のグレーティング形状をもつ比較的深さの浅い刻線が引かれた格子31が使用される。図6に示すのが、一実施例に係る検出器ユニット18の構成である。図示される検出器ユニット18は、位相格子として機能する刻線格子31を備える。刻線格子31のピッチPは、光源16から発せられる放射の波長よりも大きい。ピッチPは例えば、投影格子17(図4参照)の像の周期に等しく、例えば30μmである。図6には透過性の格子31が示されているが、代替例として反射性の刻線格子も使用可能である。透過性格子31として適切な材料にはフッ化マグネシウムがあろう。これは(120nmより大きい)使用波長域において十分に透明である。
【0046】
刻線格子31の三角形格子形状は1つの連続したくさび31a、31bとして機能する。このくさびは周知のスネルの法則に従って光ビーム20の方向を変える。正のくさび31a上の像は上方(u)へと向けられ、負のくさび31b上の像は下方(d)へと向けられる。刻線格子31のちょうど中心に像が位置する場合には、u像及びd像は等しい強度を持つ。このため、2つの検出器35、36に接続された処理ユニット37の出力hはゼロとなる。基板高さが変わると投影格子31の像位置がずれるので、u信号とd信号とが釣り合わなくなる。
【0047】
uビームとdビームとがなす角度は投影格子17に入射する像の発散度よりも大きくすべきである。また、刻線格子31は光の発散度を増加させる。これは、波長依存の屈折(透過性の格子の場合に限る)と、くさびの大きさが有限であるために生じる回折とによるものである。回折による発散度は、おおよそ2λ/Pで与えられる。付加される発散度の合計は(0.1ラジアンのオーダと)小さく、実際の設計において許容可能である。なお、回折誘起の発散度増加は既存の偏光型検出(図5参照)においても存在することに留意すべきである。
【0048】
図6の実施例における検出器ユニット18にはいくつかの利点がある。例えば、実施例の構成は公知技術に比べて安価である。特にUV領域においては偏光子21及びシャープレート22が非常に高価である。また、検出器ユニット18は波長依存の高さオフセットを持たない。更に、容易に大視野のレベルセンサへと大型化することが可能である。
【0049】
また、この新規の構成は、光の観点からも大変効率的である。つまり遮断される光がない。振幅格子8ではなく位相格子31が使用されるからである。したがって、より多数の光子を使用した測定をすることができる。この検出器ユニット18の実施例は、上述のようにUVレベルセンサの実施例に特に好適である。しかし、コスト低減のために、可視光波長で使用する公知のレベルセンサへの適用も可能である。
【0050】
刻線格子31自体は公知であり例えば分光の分野で使用されている。多くの適用例において刻線格子31はブレーズ角を有する。本実施例ではブレーズ角は必須ではなくゼロに等しくてもよい。正のくさび31a及び負のくさび31bが刻線格子31の法線に対しなす角度が等しくてもよい。
【0051】
シミュレーション結果を示す。レベルセンサが500nm乃至1000nmの波長域で使用された場合と、200nm乃至400nmの波長域で(上述の実施例にて)使用された場合とを示す。見かけの表面沈下量(ASD)を入射角θの関数として測定した。入射角及びASDを図7b及び8bに示す。
【0052】
1つ目のシミュレーションはフロントエンドプロセスに典型的な基板W上の複数層4についてのものである。基板W上の層4は下から順に、50nmの酸化層4a、70nmのポリシリコン層4b、40nmの誘電体反射防止コーティング(DARC)層4c、80nmのレジスト層4dである(図7a参照)。得られたASDは2つのうち短波長域のほうが良好である。これは図7bにはっきりと表れている。
【0053】
2つ目のシミュレーションはバックエンドプロセスに典型的な基板W上の複数層4についてのものである。基板W上の層4は下から順に、50nmの酸化層4a、70nmの銅層4e、40nmの誘電体反射防止コーティング(DARC)層4c、80nmのレジスト層4dである(図8a参照)。得られたASDは同様に短波長域が良好である。これは図8bにはっきりと表れている。
【0054】
上述の各実施形態に有用に組合せ可能である一実施例を述べる。この実施例では、光源16からの化学線は、アライメント走査中、またはレベルセンサ測定を必要または有用としないいずれかの期間に基板Wに投射されないようにしている。この作用は図9に例示されるシャッタ19を組み込むことにより実現されてもよい。シャッタ19は所望の開閉状態に制御される。なお、シャッタ19は投影格子17の上流に配置することは必須ではなく、光源16と基板Wとの間の光路上の任意の位置に設けてもよい。しかし、光源近傍にシャッタを配置することにより、反射された迷光や光路での加熱などの潜在的な問題を軽減することができる。他の構成としては、不使用時に光源を切るよう動作するコントローラCを設けてもよい。この場合、機械的にはシャッタより単純であるものの、要求される切り換えがシステムの安定性に影響しうるという問題が生じる可能性がある。
【0055】
本明細書ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用を例として説明しているが、リソグラフィ装置は他の用途にも適用することが可能であるものと理解されたい。他の用途としては、集積光学システム、磁区メモリ用案内パターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどがある。当業者であればこれらの他の適用に際して、本明細書における「基板」あるいは「ダイ」という用語がそれぞれ「基板」あるいは「目標部分」という、より一般的な用語と同義であるとみなされると理解することができるであろう。基板は露光前または露光後においてトラック(典型的にはレジスト層を基板に塗布し、露光後のレジストを現像する装置)、メトロロジツール、及び/またはインスペクションツールにより処理されてもよい。適用可能であれば、本明細書の開示はこれらのまたは他の基板処理装置にも適用され得る。また、基板は例えば多層ICを製造するために複数回処理されてもよく、その場合には本明細書における基板という用語は既に処理されている多数の処理層を含む基板をも意味する。
【0056】
ここでは特に光学的なリソグラフィを本発明に係る実施形態に適用したものを例として説明しているが、本発明は例えばインプリントリソグラフィなど文脈が許す限り他にも適用可能であり、光学的なリソグラフィに限られるものではない。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイスのトポグラフィーが基板に生成されるパターンを決める。パターニングデバイスのトポグラフィーが基板に塗布されているレジスト層に押し付けられ、電磁放射によってレジストが硬化される。レジストが硬化されてから、パターニングデバイスは、パターンが生成されたレジストから外されて外部に移動される。
【0057】
本明細書において「放射」及び「ビーム」という用語は、紫外(UV)放射(例えば約365nm、355nm、248nm、193nm、157nm、または126nmの波長を有する)、極紫外(EUV)放射(例えば5乃至20nmの範囲の波長を有する)、及び、イオンビームまたは電子ビーム等の粒子ビームを含むあらゆる種類の電磁放射を示す。
【0058】
「レンズ」という用語は、文脈が許す限り、屈折光学素子、反射光学素子、磁気的光学素子、電磁的光学素子、及び静電的光学素子を含む1つまたは各種の光学素子の組み合わせを指し示すものであってもよい。
【0059】
本発明の具体的な実施形態が上述のように説明されたが、本発明は上述の形式以外の形式でも実施可能であると理解されたい。例えば本発明は、上述の方法が記述された機械で読み取り可能な1以上の一連の指示を含むコンピュータプログラムの形式、またはこのようなコンピュータプログラムが記録されたデータ記録媒体(例えば半導体メモリや磁気・光ディスク)の形式をとってもよい。
【0060】
本発明の種々の実施例を上に記載したが、それらはあくまでも例示であって、それらに限定されるものではない。本発明の請求項の範囲から逸脱することなく種々に変更することができるということは、関連技術の当業者には明らかなことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィ装置における基板の感光層表面の位置を測定するためのレベルセンサであって、
基板からの反射された放射を動作中に測定するための放射検出器を備え、
前記放射検出器は、基板を処理するために使用される感光層に反応する波長範囲の放射を測定し、
前記放射検出器は、三角形格子形状をもつ刻線格子を備え、該刻線格子は、光源の発する放射の波長よりも大きいピッチを有することを特徴とするレベルセンサ。
【請求項2】
前記光源と基板との間に配置された投影用の格子をさらに備え、前記刻線格子のピッチと前記投影用の格子のピッチとが等しいことを特徴とする請求項1に記載のレベルセンサ。
【請求項3】
前記放射検出器は、光源波長の関数である分光放射照度プロファイルとは実質的に反比例であり波長の関数である感度プロファイルを有する素子を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のレベルセンサ。
【請求項4】
前記三角形格子形状は、交互に配列された正のくさびと負のくさびとによって形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のレベルセンサ。
【請求項5】
基板を支持するための基板支持部をさらに備え、該基板支持部は、前記光源の放射が前記検出器へと基板により鏡面反射される位置に前記表面を位置決めすることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のレベルセンサ。
【請求項6】
前記光源は、500nm未満の広帯域の放射を発するよう構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のレベルセンサ。
【請求項7】
前記波長範囲は400nm未満の放射を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のレベルセンサ。
【請求項8】
基板の感光層表面の受光する放射の線量が予め定められた水準を下回ることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のレベルセンサ。
【請求項9】
前記予め定められた水準は、1×10−8J/mであることを特徴とする請求項8に記載のレベルセンサ。
【請求項10】
基板の感光層表面の位置を測定するよう構成されているリソグラフィ装置であって、
前記リソグラフィ装置は、基板により反射された化学線に基づいて高さを測定するよう構成されており、
前記リソグラフィ装置は、露光放射の放射ビームを調整する照明系を備え、該照明系は、レベルセンサにより与えられる放射の線量を補正するための露光レベルのオフセットを与えるよう構成されていることを特徴とするリソグラフィ装置。
【請求項11】
請求項1から9のいずれかに記載のレベルセンサを備えることを特徴とする請求項10に記載のリソグラフィ装置。
【請求項12】
前記リソグラフィ装置は、基板の目標部分に露光放射のパターン付き放射ビームを投影する投影系をさらに備え、基板の感光層表面の受光する放射の線量が予め定められた水準以下であり、該水準は、前記投影系を出射することが許容されている迷光の大きさに依存することを特徴とする請求項10または11に記載のリソグラフィ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−199594(P2012−199594A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−160478(P2012−160478)
【出願日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【分割の表示】特願2010−52645(P2010−52645)の分割
【原出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【Fターム(参考)】