リソソームα−ガラクトシダーゼAの増強方法
【課題】 リソソームα−ガラクトシダーゼAの増強方法
【解決手段】 哺乳動物細胞中のリソソームα−ガラクトシダーゼA(α−GalA)の活性を増大する方法、並びに1−デオキシ−ガラクトノジリマイシンおよび関連化合物の投与によるファブリ病の治療方法。
【解決手段】 哺乳動物細胞中のリソソームα−ガラクトシダーゼA(α−GalA)の活性を増大する方法、並びに1−デオキシ−ガラクトノジリマイシンおよび関連化合物の投与によるファブリ病の治療方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、哺乳動物細胞中のリソソームα−ガラクトシダーゼA(α−GalA)の活性を増大する方法、および、1−デオキシ−ガラクトノジリマイシン(galactonojirimycin)および関連化合物の投与によるスフィンゴ糖脂質蓄積症、特にファブリ病(Fabry disease)の治療方法に関する。
【0002】
2.発明の背景
ファブリ病(1)は、スフィンゴ糖脂質からの末端α−ガラクトシル残基の加水分解を生じる酵素、即ち、リソソームαガラクトシダーゼA(α−GalA)のXリンク遺伝性欠損によって発生するスフィンゴ糖脂質リソソーム蓄積症である。酵素活性の欠損は、主に脈管の内皮細胞中に中性スフィンゴ糖脂質、主としてグロボトリアオシルセラミド(globotriaosylceramide)(セラミドトリヘキソシド、CTH)の進行性蓄積を生じ、この症状を呈する患者においては、早発心筋梗塞および発作を伴った腎機能不全を引き起こす(2)。この疾患は、臨床症状によって2つのグループに分類される。すなわち、全身性脈管障害を有する古典的タイプ、および心臓に限定された臨床症状を有する非古典的変異タイプである。最近、その疾患の非古典的変異タイプは、未解明の左の心室肥大を患った成人男性患者の10%において確認され、その疾患に関する推定の発生頻度は増加している(3)。他のスフィンゴ糖脂質リソソーム蓄積症のように、この疾患を治療することが可能な方法としては、酵素補充療法、遺伝子療法、骨髄移植および基質妨害が示唆されている(4)。しかしながら、そのとき、この疾患に対する唯一の処置は対症療法である。従って、この疾患に対する新しい治療方法の開発が急務となっている。
【0003】
変異酵素の残留性α−GalA活性に関する研究(5)では、幾つかの変異酵素が正常α−GalAに対して類似の速度的性質を有するが、顕著な不安定性があることが明らかになった。これは、一般に典型的ファブリ患者よりも高い残留性α−GalA活性を示す非典型的変異タイプの患者の大部分に対する症例と考えられる。例えば(6)、ファブリ病の非典型的変異型の患者で確認された、Q279Eの遺伝子型を保有する精製変異α−GalAは、正常な酵素と同じkmおよびVmaxを示したが、pH7.0、30℃で30分間酵素をインキュベートした際、正常な酵素は同条件下で安定していたのに対し、そのほとんどの酵素活性は失活していた。変異酵素および正常酵素はともに37℃、pH5.0で安定していた。更に、細胞中の大多数の変異酵素タンパク質は、小胞体(ER)中に凝集体を形成して迅速に分解されたが(7)、このことは、この変異における酵素活性の欠損が主としてERの不完全な流出によって生じ、酵素タンパク質の過度の分解が導かれる可能性を示唆している。本発明は、酵素がERから順調に放出されることを補助し、変異酵素の分解を防止することに着目するものである。
【発明の概要】
【0004】
本発明の方法は以下のモデルに基づくものである。変異酵素タンパク質は、pHが約7であるER中において不適当な立体配座に折り畳まれる傾向がある。その結果、酵素が、ERからゴルジ装置およびエンドソームを介してリソソームまでの正常な輸送経路から妨げられ、代わりに、分解に供せられる。一方、正常な立体配座を有する酵素タンパク質はリソソームまで順調に輸送され、その酵素はpH5未満で比較的安定であるので、活性型で保持される。従って、変異酵素中での適切な立体配座を誘導し得る化合物は、その酵素に対するエンハンサとして役立つ可能性がある。本発明者は思いがけなく、低濃度でのα−GalAに対する強力な競合的阻害剤は、変異α−GalA遺伝子を形質移入したCOS−1細胞、変異α−GalA過剰発現トランスジェニックマウスからの繊維芽細胞、およびファブリ患者からのリンパ芽球を含む、細胞中の変異酵素活性を増大することを確認した。
【0005】
なお、上述の内容が本発明の操作のメカニズムであると考えているが、本発明の成功は、この正しいメカニズムに依存するものではない。
【0006】
従って、本発明の1つの目的は、哺乳動物細胞中の、特にヒト細胞中の変異α−GalAの分解を防止する方法を提供することである。
【0007】
また、本発明の更なる目的は、哺乳動物細胞中の、特にヒト細胞中のα−GalA活性を増大する方法を提供することである。本発明の方法は、正常α−GalAおよび変異α−GalAの活性をともに増大するが、特にファブリ病のある形態に存在する変異α−GalAの活性を増大する。
【0008】
更に、本発明の方法は哺乳類以外の細胞、例えば、昆虫細胞および酵素補充療法用のα−GalAの生産を目的として使用される培養CHO細胞などにおいても有用であると推測される。
【0009】
本発明の方法に有効であると推測される化合物は、環中に酸素と置換する窒素を有するガラクトース誘導体およびグルコース誘導体であり、好ましくは、1−デオキシガラクトノジリマイシン(deoxygalactonojirimycin)および3,4−diepi−α−ホモノジリマイシン(homonojirimycin)などのガラクトース誘導体である。なお、ガラクトース誘導体は、例えば次の構造によって表わされるように、C−3位の水酸基が水平方向で、C−4位の水酸基が軸方向であることを意味する。
【化1】
【0010】
式中、R1はH、メチルまたはエチルを表わし、R2およびR3は、それぞれ独立して、H、OH、単糖(例えば、−O−ガラクトース)、1〜3炭素アルキル、アルコキシまたはヒドロキシアルキル基(例えば、CH2OH)を表わす。
【0011】
また、α−ガラクトシダーゼに対する他の特異的競合阻害剤、例えば、カリステジン(calystegine)A3、B2およびB3、およびこれら化合物のN−メチル誘導体は、本発明の方法において有用であるはずである。カリステジン化合物は次式によって表わすことができる;
【化2】
【0012】
上式において、カリステジンA3については、R1=Hであり、R2=OHであり、R3=Hであり、R4=Hである;カリステジンB2については、R1=Hであり、R2=OHであり、R3=Hであり、R4=OHである;カリステジンB3については、R1=Hであり、R2=Hであり、R3=OHであり、R4=OHである;N−メチル−カリステジンA3については、R1=CH3であり、R2=OHであり、R3=Hであり、R4=Hである;N−メチル−カリステジンB2については、R1=CH3であり、R2=OHであり、R3=Hであり、R4=OHである;N−メチル−カリステジンB3については、R1=CH3であり、R2=Hであり、R3=OHであり、R4=OHである。
【0013】
また、本発明の更なる目的は、ファブリ病の患者に対する治療方法を提供することである。次式の化合物
【化3】
【0014】
(式中、R1はH、CH3またはCH3CH2を表わし、R2およびR3は、それぞれ独立して、H、OH、1〜6炭素アルキル、ヒドロキシアルキル、またはアルコキシ基(好ましくは1〜3)、または単糖を表わし、R4およびR5は独立してHまたはOHを表わす)、または、2,5−ジデオキシ−2,5−イミノ−D−マンニトール、α−ホモノジリマイシン、3,4−diepi−α−ホモノジリマイシン、5−O−α−D−ガラクトピラノシル−α−ホモノジリマイシン、1−デオキシガラクトノジリマイシン、4−epi−ファゴミン(fagomine)、および1−デオキシ−ノジリマイシン、並びにそれらのN−アルキル誘導体からなる群から選択される化合物の薬学的有効量の投与によって、ファブリ病の患者において変異α−GalAの活性を増大させることによりファブリ病の症状を緩和する。また、カリステジン化合物およびそれらの誘導体など他のα−GalAの競合阻害剤は、ファブリ病を治療するのに有用であるはずである。
【0015】
当業者は、本発明の方法で使用される化合物の有効量は、日常的な実験操作によって決定することが可能であるということを理解するであろう。しかしながら、その量は0.01から100μM、好ましくは0.01から10μM、最も好ましくは0.05から1μMの血清濃度を生じる量であると推測される。また、化合物の有効量は、1日当たり0.5から1000mg/kg体重、好ましくは1日当たり0.5から100mg/kg体重、最も好ましくは、1日当たり1から50mg/kg体重であると推測される。化合物は、予備処方された投薬量で、単独で、場合によっては薬学的に許容し得る担体および賦形剤に加えて投与することができる。有効量の化合物を投与することによって、患者の症状を改善するのに十分な患者内の細胞のα−GalA活性を高めることができる。明らかに健常者で確認された酵素活性の低い範囲が平均値の約30%であるので(2)、正常の30%の酵素活性レベルがファブリ患者の症状を著しく改善し得ることが推測される。
【0016】
本明細書に記載した化合物、および当業者に公知のα−GalAに対する他の競合的阻害剤は、α−GalAの細胞内活性を増大し、かつファブリ病を治療する方法において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】インビトロにおける阻害(1A)、およびアルカロイド化合物によるα−GalAの細胞内の増強(1Bおよび1C)を示す図である。用いたアルコロイド化合物は、(1)2,5−ジデオキシ−2,5−イミノ−D−マンニトール、(2)α−ホモノジリマイシン、(3)3,4−Diepi−α−ホモノジリマイシン、(4)5−O−α−D−ガラクトピラノシル−α−ホモノジリマイシン、(5)1−デオキシガラクトノジリマイシン、(6)4−epi−ファゴミン(Fagomine)、(7)1−デオキシ−ノジリマイシン、(Gal)ガラクトースである。「方法」に記載しているように、変異α−GalA(R301Q)のcDNAによって形質移入したCOS−1細胞中の細胞内α−GalA活性を分析した。(A)方法のもとに阻害アッセイを実施した。化合物のIC50は、各々、1.3mM(1)、2.6mM(2)、2.9μM(3)、0.62mM(4)、4.7nM(5)、0.25mM(6)、0.8mM(7)、および24mM(Gal、ガラクトース)であった。
【図1B】インビトロにおける阻害(1A)、およびアルカロイド化合物によるα−GalAの細胞内の増強(1Bおよび1C)を示す図である。用いたアルコロイド化合物は、(1)2,5−ジデオキシ−2,5−イミノ−D−マンニトール、(2)α−ホモノジリマイシン、(3)3,4−Diepi−α−ホモノジリマイシン、(4)5−O−α−D−ガラクトピラノシル−α−ホモノジリマイシン、(5)1−デオキシガラクトノジリマイシン、(6)4−epi−ファゴミン(Fagomine)、(7)1−デオキシ−ノジリマイシン、(Gal)ガラクトースである。「方法」に記載しているように、変異α−GalA(R301Q)のcDNAによって形質移入したCOS−1細胞中の細胞内α−GalA活性を分析した。(A)方法のもとに阻害アッセイを実施した。化合物のIC50は、各々、1.3mM(1)、2.6mM(2)、2.9μM(3)、0.62mM(4)、4.7nM(5)、0.25mM(6)、0.8mM(7)、および24mM(Gal、ガラクトース)であった。
【図1C】インビトロにおける阻害(1A)、およびアルカロイド化合物によるα−GalAの細胞内の増強(1Bおよび1C)を示す図である。用いたアルコロイド化合物は、(1)2,5−ジデオキシ−2,5−イミノ−D−マンニトール、(2)α−ホモノジリマイシン、(3)3,4−Diepi−α−ホモノジリマイシン、(4)5−O−α−D−ガラクトピラノシル−α−ホモノジリマイシン、(5)1−デオキシガラクトノジリマイシン、(6)4−epi−ファゴミン(Fagomine)、(7)1−デオキシ−ノジリマイシン、(Gal)ガラクトースである。「方法」に記載しているように、変異α−GalA(R301Q)のcDNAによって形質移入したCOS−1細胞中の細胞内α−GalA活性を分析した。(A)方法のもとに阻害アッセイを実施した。化合物のIC50は、各々、1.3mM(1)、2.6mM(2)、2.9μM(3)、0.62mM(4)、4.7nM(5)、0.25mM(6)、0.8mM(7)、および24mM(Gal、ガラクトース)であった。
【図2A】Tgマウス(2A)から取得した繊維芽細胞中のDGJによるα−GalAの増強を示す図である。
【図2B】ファブリ患者(2B)から取得したリンパ芽球中のDGJによるα−GalAの増強を示す図である。
【図3A】TgM繊維芽細胞(A)およびリンパ芽球(B)中のDGJによるα−GalAの増強の時間経過を示す図である。方法の項に従って細胞培養を実施した。添加したDGJ濃度は20μMであった。ヒトリンパ芽球の遺伝子型はR301Qであった。●はDGJ非含有で培養した変異細胞であり、○はDGJ含有で培養した変異細胞であり、▲はDGJ非含有で培養した正常リンパ芽球であり、△はDGJ含有で培養された正常リンパ芽球である。
【図3B】TgM繊維芽細胞(A)およびリンパ芽球(B)中のDGJによるα−GalAの増強の時間経過を示す図である。方法の項に従って細胞培養を実施した。添加したDGJ濃度は20μMであった。ヒトリンパ芽球の遺伝子型はR301Qであった。●はDGJ非含有で培養した変異細胞であり、○はDGJ含有で培養した変異細胞であり、▲はDGJ非含有で培養した正常リンパ芽球であり、△はDGJ含有で培養された正常リンパ芽球である。
【図4A】形質移入したCOS−1細胞(A)、TgM繊維芽細胞(B)およびR301Q(C)の遺伝子型を有するリンパ芽球中のα−GalA増強のDGJ濃度依存性を示す図である。細胞は、HamのF−10培地(COS−1細胞、TgM繊維芽細胞)またはDGJ含有10%FCS(リンパ芽球)を補充したRPMI−1640培地で37℃にて4日間、可変的な濃度で培養した。COS−1細胞へ形質移入したcDNAは変異α−GalA(R301Q)をコードしていた。
【図4B】形質移入したCOS−1細胞(A)、TgM繊維芽細胞(B)およびR301Q(C)の遺伝子型を有するリンパ芽球中のα−GalA増強のDGJ濃度依存性を示す図である。細胞は、HamのF−10培地(COS−1細胞、TgM繊維芽細胞)またはDGJ含有10%FCS(リンパ芽球)を補充したRPMI−1640培地で37℃にて4日間、可変的な濃度で培養した。COS−1細胞へ形質移入したcDNAは変異α−GalA(R301Q)をコードしていた。
【図4C】形質移入したCOS−1細胞(A)、TgM繊維芽細胞(B)およびR301Q(C)の遺伝子型を有するリンパ芽球中のα−GalA増強のDGJ濃度依存性を示す図である。細胞は、HamのF−10培地(COS−1細胞、TgM繊維芽細胞)またはDGJ含有10%FCS(リンパ芽球)を補充したRPMI−1640培地で37℃にて4日間、可変的な濃度で培養した。COS−1細胞へ形質移入したcDNAは変異α−GalA(R301Q)をコードしていた。
【図5】形質移入したCOS−1細胞中のα−GalA増強のDE−HNJ濃度依存性を示す図である。
【図6】リンパ芽球中のDGJ増強α−GalAの安定化を示す図である。△はDGJ非含有で培養したR301Qリンパ芽球、▲はDGJ含有で培養したR301Qリンパ芽球である。
【図7】DGJ含有下で培養したTgN繊維芽細胞中の[14C]−CTH代謝のTLC分析を示す図である。TgN繊維芽細胞は、4日間、0μM(レーン1)、2μM(レーン2)および20μM(レーン3)でDGJを含有しているHamのF−10培地−10%FCS中において37℃で培養した。DGJ非含有の培地で洗浄した後、2.5mlのOpti−MEM培地(Gibco, Gaithersburg, MD U.S.A.)中の[14C]−CTH(200,000 cpm)を細胞に添加し、5時間培養した。2mlの1%BSAおよび2mlのPBSで細胞をそれぞれ3回洗浄した。中性糖脂質をCHCl3:MeOH(2:1)によって抽出し、穏やかなアルカリ処理、MeOH:n−ヘキサン(1:1)を用いた抽出、およびFolch抽出(19)によって精製した。
【図8A】DGJ含有下で培養した変異体リンパ芽球(R301Q)中のα−GalAのmRNAの検出を示す図である。ヒト変異体リンパ芽球(R301Q)は、4日間、50μMのDGJの含有下で、または非含有下で培養した。α−GalAのmRNAは、競合RT−PCR法(15)により検出した。
【図8B】TgM繊維芽細胞中で発現された変異α−Gal A(R301Q)のウェスタンブロットを示す図である。10μgのタンパク質を含有する細胞ホモジネートの上澄みをSDS−PAGEにかけ、ウェスタンブロットをウサギで得られた抗−α GalA抗体を用いて実施した。
【図9A】TgM繊維芽細胞(A)、20μMのDGJ含有下で培養したTgM繊維芽細胞(B)、およびTgN繊維芽細胞(C)を用いたパーコール密度勾配遠心分離の結果を示す図である。Oshimaら(8)によって以前報告されたように、密度マーカー(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO, U.S.A.)を用いてパーコール密度勾配遠心分離を行った。リソソーム標識酵素のβ−ヘキソサミニダーゼは、基質として4−メチルウンベリフェリル−β−N−アセチル−D−グルコサミンで分析した。実線はα−GalA活性であり、破線はβ−ヘキソサミニダーゼ活性である。
【図9B】TgM繊維芽細胞(A)、20μMのDGJ含有下で培養したTgM繊維芽細胞(B)、およびTgN繊維芽細胞(C)を用いたパーコール密度勾配遠心分離の結果を示す図である。Oshimaら(8)によって以前報告されたように、密度マーカー(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO, U.S.A.)を用いてパーコール密度勾配遠心分離を行った。リソソーム標識酵素のβ−ヘキソサミニダーゼは、基質として4−メチルウンベリフェリル−β−N−アセチル−D−グルコサミンで分析した。実線はα−GalA活性であり、破線はβ−ヘキソサミニダーゼ活性である。
【図9C】TgM繊維芽細胞(A)、20μMのDGJ含有下で培養したTgM繊維芽細胞(B)、およびTgN繊維芽細胞(C)を用いたパーコール密度勾配遠心分離の結果を示す図である。Oshimaら(8)によって以前報告されたように、密度マーカー(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO, U.S.A.)を用いてパーコール密度勾配遠心分離を行った。リソソーム標識酵素のβ−ヘキソサミニダーゼは、基質として4−メチルウンベリフェリル−β−N−アセチル−D−グルコサミンで分析した。実線はα−GalA活性であり、破線はβ−ヘキソサミニダーゼ活性である。
【図10】DGJによる形質移入COS−1細胞中のα−GalAの増大。COS−1細胞に形質移入されたcDNAは、L166V、A156V、G373SおよびM296I上に変異を有するα−GalAであった。添加したDGJ濃度は20μMであった。
【図11】TgMマウスへのDGJ投与によるα−GalA活性の増大。TgMマウス(1つの群として4匹のマウス)の飲料源としてDGJ溶液(0.05mMまたは0.5mM)を置いた。投与1週間後に、酵素活性を測定するため臓器をホモゲナイズした。データは、TgMマウスの活性から、DGJで飼養した非Tgマウスから得られた内因性マウスα−GalA活性を減算したものである。示した酵素活性は平均値であり、標準偏差は10%未満であった。
【発明の詳細な説明】
【0018】
<略語>
便宜のために本明細書で使用する略語を以下に記述する。α−GalAは、ヒトリソソームのα−ガラクトシダーゼAである。TgNマウスは、正常なヒトリソソームのα−ガラクトシダーゼAを過剰発現するトランスジェニックマウスである。TgMマウスは、Gln(R301Q)による301位置でのArgの単一アミノ酸置換を有する変異体ヒトリソソームのα−ガラクトシダーゼAを過剰発現するトランスジェニックマウスである。TgN繊維芽細胞は、TgNマウスから発生した繊維芽細胞である。TgM繊維芽細胞は、TgMマウスから発生した繊維芽細胞である。DGJは、1−デオキシ−ガラクトノジリマイシンである。DE−HNJは、3,4−di−epi−α−ホモノジリマイシンである。pNP−α−Galは、p−ニトロフェニル−α−D−ガラクトシドである。4−mU−α−Galは、4−メチルウンベリフェリル−α−D−ガラクトシドである。FCSはウシ胎児血清であり、PBSはリン酸緩衝食塩水であり、BSAはウシ血清アルブミンである。TLCは、薄層クロマトグラフィーである。CTHは、グロボトリアオシルセラミド(globotriaosylceramide)またはセラミドトリヘキソシドである。CDHはジヘキソシドセラミドであり、CMHはモノヘキソシドセラミドであり、ERは小胞体である。
【0019】
<材料と方法>
(材料):
アルカロイド化合物は、植物、または植物生産物を部分的に化学的修飾した誘導体(9)の何れかから精製した。TgNマウスおよびTgMマウスは、以前に報告されているように(10、11)調製した。TgNまたはTgMの繊維芽細胞は、手順どおりにTgNマウスまたはTgMマウスから確立した。ヒトリンパ芽球は、正常成人またはファブリ病患者(6)からのエプスタイン−バールウィルス形質転換リンパ芽球ラインであった。COS−1細胞中で一時的に発現する正常および変異α−GalAのcDNAは、報告(12)どおりにクローン化した。アルカロイドに関するインビトロでの阻害研究でα−GalAは述べられており、正常α−GalA遺伝子がコード化された組換えバキュロウイルスによって感染したSf−9細胞を培地から精製した(13)。[14C]−CTHは、化学物質の組み合わせとスフィンゴリピドセラミドN−デアシラーゼ反応(14)により調製した。
【0020】
(方法):
細胞培養:
COS−1細胞、TgNおよびTgM繊維芽細胞は、10%FCSおよび抗生物質を補充したHamのF−10培地で培養した。リンパ芽球は、10%FCSおよび抗生物質を補充したRPMI−1640で培養した。すべての細胞培養は、5%のCO2下で、37℃において実施した。繊維芽細胞およびリンパ芽球に対するモデルとして、細胞内酵素活性のアッセイを始める前に、細胞(繊維芽細胞用については3×105、およびリンパ芽球については5×105)を4日間、20μMのDGJを含有した、またはDGJを含有していない好ましい培地10ml中で培養した。
【0021】
COS−1細胞中のα−Gal Aの一時的発現
COS−1細胞(5×105)は、60mm皿につき、1.2mlのOpti−MEM培地(Gibco)で、1μgのプラスミドDNAおよび8μlのリポフェクタミン(Lipofectamine)(Gibco, Gaithersburg ,MD U.S.A.)を用いて感染させた。6時間、37℃で培養した後、20%FCSを含有する同培地1.2mlを添加し、その培養物を一晩培養した。その培地を2.4mlの完全HamF−10培地と取り換えた後、適切な濃度でアルカロイドを添加し、細胞内酵素活性のアッセイを始める前に、1日間更にそれを培養した。
【0022】
α−GalAの細胞内酵素アッセイ:
リン酸緩衝食塩水で2度洗浄した後、水200μl中で細胞をホモゲナイズし、酵素アッセイのために、10,000×gの遠心分離によって得られた上澄み10μlを0.1Mのクエン酸塩緩衝液(pH4.5)中で6mMの4−mU−α−Galおよび90mMのN−アセチルガラクトサミンによって構成された基質溶液50μlで37℃にて培養した。データはすべて10%未満の標準偏差を有する三回測定の平均である。酵素活性の1単位は、37℃で毎時遊離された4−メチルウンベリフェロン1nmolとして定義した。
【0023】
α−GalAのインビトロにおける阻害アッセイ:
酵素活性は、基質としてpNP−α−Galを用いて分析した。代表的な阻害反応は、0.05Mのクエン酸塩緩衝液(pH4.5)で全容量を120μlとした、200nmolのpNP−α−Gal、適当な酵素、および阻害剤の混合物で実施した。15分間、37℃でのインキュベーションし、その反応を0.2Mのホウ酸塩緩衝液(pH9.8)1mlの添加によって中止し、490nmにおける吸光度として遊離されたpNP量を測定した。
【0024】
実施例1
α−GalA活性のインビトロにおける阻害および細胞内増大に関する双方の研究において、一連の植物アルカロイド(スキーム1、文献9)を使用した。阻害実験の結果は、図1Aに示した。
【化4】
【0025】
試験した化合物のうち、α−GalAに対する強力な競合的阻害剤として知られている1−デオキシ−ガラクトノジリマイシン(DGJ、5)は、4.7nMでIC50の最も高い阻害活性を示した。α−3,4−Di−epi−ホモノジリマイシン(3)は、2.9μMでIC50の有効な阻害剤であった。他の化合物は、0.25mM(6)から2.6mM(2)の範囲にわたるIC50の適度な阻害活性を示した。更に驚いたことに、これらの化合物は、正常の4%の残存性α−GalA活性を有するファブリ病の異型性変異から確認された、変異α−GalA遺伝子(R301Q)を形質移入したCOS−1細胞中のα−GalA活性を著しく増大した。IC50の阻害剤の全3〜10倍濃度でこれらの化合物を形質移入したCOS−1細胞を培養することによって、α−GalA活性は1.5〜4倍に増大した(図1C)。細胞内増大の有効性はインビトロでの阻害活性と対応しており、また、化合物を10μM濃度で培地に添加した(図1B)。
【0026】
実施例2
最も強力なインビトロにおける阻害剤および最も有効な細胞内エンハンサーのDGJを、より詳細に特徴化するために選択した。TgMまたはTgNの繊維芽細胞(図2A)、および、R301QまたはQ279E変異体の遺伝子型を有すつファブリ患者から得たリンパ芽球(図2B)にDGJを添加した。TgM繊維芽細胞で確認された酵素活性は、20μMのDGJとの共培養によって6倍に増加し、正常の52%に達した。更に、DGJはリンパ芽球に対して類似の効果を示し、R301QおよびQ279Eにおいて8倍および7倍まで残存性酵素活性が増大し、それは、すなわち、正常の48%および45%であった。また、Tg正常(TgN)繊維芽細胞および正常リンパ芽球中の酵素活性は、DGJを用いた培養法によって増加が確認された。
【0027】
実施例3
TgM繊維芽細胞並びに健常者およびR301Q上に変異を有する患者のヒトリンパ芽球は、20μMのDGJの存在下で培養した。DGJを含有しない場合の培養においては、TgM繊維芽細胞または変異リンパ芽球中のα−Gal A活性は変化しなかった(図3)。しかしながら、DGJを含有することによって、酵素活性はこれらの細胞培養において顕著な増加を示した。変異リンパ芽球中の酵素活性は、5日目で、DGJを含有しないで培養した正常リンパ芽球で確認されたものの64%に達した。更に、正常リンパ芽球中の酵素活性は、DGJを含有した培養の後では30%増大した。
【0028】
実施例4
形質移入COS−1細胞、TgM繊維芽細胞、およびR301Qの表現型を有するリンパ芽球中のα−Gal A増大のDGJ濃度依存性を試験した。
【0029】
図4に示すとおり、形質移入COS−1細胞(図4A)およびリンパ芽球(図4C)では、0.2〜20μMの範囲でDGJの濃度の増加とともに酵素活性が増加し、TgM繊維芽細胞(図4B)では0.2〜200μMの間で酵素活性が増大した。高濃度のDGJの場合、増大効果は抑制された。
【0030】
DGJ(図5)と比較した場合、DE−HNJは、高濃度(1〜1000μM)において、酵素(R301Q)の変異cDNAを形質移入したCOS−1細胞中のα−GalAの増大に関する同様の効果を示した。培地中、1mMのDE−HNJがCOS−1細胞の細胞内酵素活性を阻害しなかったことは明らかである。
【0031】
実施例5
図6は、リンパ芽球中のDGJ増大α−GalAの安定性を測定するための実験を示す。細胞を4日間、20μMのDGJを含有する10%FCSを補充したRPMI−1640培地10ml中で37℃にて培養し、5×105の細胞をDGJ非含有の10%FCSを補充したRPMI1640培地13ml中に移した。2mlの培地を酵素アッセイのために毎日得た。DGJ非含有の培地の置換後に、DGJ含有での事前培養およびDGJ非含有での事前培養との間に初期剰余の全α−Gal A活性が維持されており(図6)、増大した酵素が少なくとも5日間細胞において安定していることが示唆されている。
【0032】
実施例6
細胞内で増大した酵素の機能を研究するために、[14C]−CTHをTgN繊維芽細胞の培養物に加えた。
【0033】
糖脂質の検出は、展開溶媒としてCHCl3:MeOH:水(65:25:4)を用いた薄層クロマトグラフィーによって行い、Fuji−BAS画像診断システムによって視覚化した(図7)。α−GalAによるCTHの代謝産物である二ヘキソシドセラミド(CDH)の量は、20μMのDGJとともに培養した細胞、およびDGJを含有しないで培養した細胞との間で比較可能であり(全中性糖脂質の4.5%対4.3%)、これにより、細胞内酵素は用いた濃度でのDGJによって阻害されないことが示された。
【0034】
実施例7
DGJがα−GalAの生合成に影響を与えるか否か検討するために、DGJを用いて培養した変異リンパ芽球(R301Q)中のα−GalAのmRNA濃度を、競合的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)方法によって測定した(15)。図8Aは、α−GalAのmRNAがDGJ50μMを用いてのリンパ芽球の培養によって変化しなかったことを明らかに示している。
【0035】
一方、ウェスタンブロット分析は、TgM繊維芽細胞の酵素タンパク質が著しく増加していることを示し、その増加はDGJの濃度に対応していた(図8B)。DGJを用いて培養した細胞中の低分子量(約46kD)を有する比較的多くの酵素タンパク質は、高レベルの成熟酵素を示唆している(16)。これらの結果は、酵素の増大におけるDGJの作用がポスト転写事象であることを示している。
【0036】
実施例8
増大した酵素がリソソームに運ばれることを確認するために、Tgマウス繊維芽細胞で細胞下分画を行った(図8)。TgM繊維芽細胞中の全般的酵素活性は低く、ゴルジ器官分画を含む1.042g/mlの密度マーカーで溶出された(20)(図9A)。20μMのDGJを用いた培養では、TgM繊維芽細胞中の酵素活性は全般的に高い酵素活性を示し、ほとんどの酵素が、リソソーム標識酵素ヘキソサミニダーゼの同一分画で溶出された(図9B)。更に、TgM中のα−GalA活性の溶出パターンは、TgN繊維芽細胞で確認されたものに変更した(図9C)。
【0037】
実施例9
R301QおよびQ279Eの遺伝子型は、異型性型のファブリ病患者から確認された。α−GalA活性の増大に関するDGJの有効性をファブリ病の他の遺伝子型および表現型で試験した。この実験では、ファブリ病の典型的型を有する患者で確認された3つの変異α−GalA cDNA、L166V、A156VおよびG373S、およびその疾患の異型性型を有する患者から確認された変異M296Iを使用した。図10は、DGJの包含物は、試験した4つの遺伝子型すべてにおいて、特にL166V(7倍増加)およびA156V(5倍増加)に対する酵素活性を増加させることを示している。また、データは、本方法が異型性型にだけでなく、その疾患の典型的型にも有用であることを示している。
【0038】
実施例10
1日当たり体重1キログラム当たり約3または30mgのDGJ投薬量に対応する1週間の飲用源として0.05または0.5mMのDGJ溶液を供給することによりTgマウスにDGJを投与した。酵素活性は、各々、心臓で4.8倍および18倍、腎臓で2.0倍および3.4倍、脾臓で3.1倍および9.5倍、肝臓で1.7倍および2.4倍を示した(図11)。臓器における酵素活性の増加はDGJ投薬量の増加に対応していた。変異遺伝子(R301Q)が、心臓に制限される臨床症状を有している異型性変異型ファブリ患者で確認されたので、DGJの経口投与がTgMマウスの心臓のα−GalA活性を特に増大するという事実は特に重要である。
【0039】
<考察>
ゴルジ複合体への輸送が正しく折り畳まれたタンパク質および構築されたタンパク質に限定されており、精度管理の主要なプロセスが様々なシャペロンによって実施されることを確保するために、ERが効率的な精度管理システムを保持していることが知られている(17)。本出願中で示した結果の1つの説明は以下のとおりである。ファブリ病における幾つかの表現型では、不完全で可撓性の酵素の折り畳みを生じる一方、触媒中心は無損傷で残存する。阻害剤は、酵素触媒中心に対して通常高い親和性を有し、阻害剤の存在によって酵素触媒中心が付加され、折り畳みの屈曲性を低減して、おそらくは酵素の「適切な」立体配座を導く。その結果、酵素が「精度管理システム(quality control system)」を通過し、ゴルジ複合体に輸送され熟成に達することができる。一度pHが酸性であるリソソームに酵素を輸送すれば、酵素は酸性条件下で安定しているので(6)、酵素は同じ立体配座で安定している傾向にある。そのような場合、阻害剤は、適切な立体配座を呈するように酵素に強いるシャペロンとして作用する。我々はそのような機能をもった低分子量化学物質に対する用語として「化学シャペロン」を使用する。
【0040】
その化合物がリソソーム中の酵素触媒中心から円滑に解離し得るということは酵素の機能において重要である。本研究で使用する化合物は競合的阻害剤であるので、阻害剤の解離は2つの因子、i)阻害剤濃度、および、ii)pHに依存する。Daleら(18)は、1−デオキシノジリマイシンのα−グルコシダーゼへの結合がpH依存性であり、その場合、阻害剤はpH6.5でpH4.5に比べて80倍以上しっかりと酵素に結合し、ノジリマイシン誘導体が非プロトン付加形態としての機能することを示唆することを示した。阻害剤は中性条件で酵素に結合し、DGJがプロトン化しやすい酸性条件で酵素から遊離することができるので、これは、図7で示した細胞中のα−GalAの機能に関する結果を説明し得るものである。
【0041】
本明細書で述べた結果は、DGJが、R301QおよびQ279Eの遺伝子型を有するファブリ病の異型性変異を持つ患者のリンパ芽球における変異α−GalA活性を有効に増大することを示している。更に、古典的タイプおよび非古典的タイプを含むファブリ変異の他の表現型におけるDGJの有効性を試験した。DGJは、異型性ファブリ病と診断された患者から得た3つの遺伝子型すべての細胞株、および高い残留酵素活性を有する典型的ファブリ型を保持する幾つかの細胞株において酵素活性を有効に増大した。本発明によれば、α−GalA阻害剤の投与法は、変異が触媒中心以外の部位で生じるファブリ患者に対する有効な治療であることが立証され、また、他のスフィンゴ糖脂質蓄積症にも有用であるはずである。
【0042】
本明細書で引用した文献は引用によって本明細書に援用し、便宜のために下記に列挙する。
【参考文献】
【0043】
特許請求の範囲に定義される本発明の範囲および意図から逸脱することなく、上述した本発明において種々の変更を行うことができることは認識されるであろう。
【背景技術】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、哺乳動物細胞中のリソソームα−ガラクトシダーゼA(α−GalA)の活性を増大する方法、および、1−デオキシ−ガラクトノジリマイシン(galactonojirimycin)および関連化合物の投与によるスフィンゴ糖脂質蓄積症、特にファブリ病(Fabry disease)の治療方法に関する。
【0002】
2.発明の背景
ファブリ病(1)は、スフィンゴ糖脂質からの末端α−ガラクトシル残基の加水分解を生じる酵素、即ち、リソソームαガラクトシダーゼA(α−GalA)のXリンク遺伝性欠損によって発生するスフィンゴ糖脂質リソソーム蓄積症である。酵素活性の欠損は、主に脈管の内皮細胞中に中性スフィンゴ糖脂質、主としてグロボトリアオシルセラミド(globotriaosylceramide)(セラミドトリヘキソシド、CTH)の進行性蓄積を生じ、この症状を呈する患者においては、早発心筋梗塞および発作を伴った腎機能不全を引き起こす(2)。この疾患は、臨床症状によって2つのグループに分類される。すなわち、全身性脈管障害を有する古典的タイプ、および心臓に限定された臨床症状を有する非古典的変異タイプである。最近、その疾患の非古典的変異タイプは、未解明の左の心室肥大を患った成人男性患者の10%において確認され、その疾患に関する推定の発生頻度は増加している(3)。他のスフィンゴ糖脂質リソソーム蓄積症のように、この疾患を治療することが可能な方法としては、酵素補充療法、遺伝子療法、骨髄移植および基質妨害が示唆されている(4)。しかしながら、そのとき、この疾患に対する唯一の処置は対症療法である。従って、この疾患に対する新しい治療方法の開発が急務となっている。
【0003】
変異酵素の残留性α−GalA活性に関する研究(5)では、幾つかの変異酵素が正常α−GalAに対して類似の速度的性質を有するが、顕著な不安定性があることが明らかになった。これは、一般に典型的ファブリ患者よりも高い残留性α−GalA活性を示す非典型的変異タイプの患者の大部分に対する症例と考えられる。例えば(6)、ファブリ病の非典型的変異型の患者で確認された、Q279Eの遺伝子型を保有する精製変異α−GalAは、正常な酵素と同じkmおよびVmaxを示したが、pH7.0、30℃で30分間酵素をインキュベートした際、正常な酵素は同条件下で安定していたのに対し、そのほとんどの酵素活性は失活していた。変異酵素および正常酵素はともに37℃、pH5.0で安定していた。更に、細胞中の大多数の変異酵素タンパク質は、小胞体(ER)中に凝集体を形成して迅速に分解されたが(7)、このことは、この変異における酵素活性の欠損が主としてERの不完全な流出によって生じ、酵素タンパク質の過度の分解が導かれる可能性を示唆している。本発明は、酵素がERから順調に放出されることを補助し、変異酵素の分解を防止することに着目するものである。
【発明の概要】
【0004】
本発明の方法は以下のモデルに基づくものである。変異酵素タンパク質は、pHが約7であるER中において不適当な立体配座に折り畳まれる傾向がある。その結果、酵素が、ERからゴルジ装置およびエンドソームを介してリソソームまでの正常な輸送経路から妨げられ、代わりに、分解に供せられる。一方、正常な立体配座を有する酵素タンパク質はリソソームまで順調に輸送され、その酵素はpH5未満で比較的安定であるので、活性型で保持される。従って、変異酵素中での適切な立体配座を誘導し得る化合物は、その酵素に対するエンハンサとして役立つ可能性がある。本発明者は思いがけなく、低濃度でのα−GalAに対する強力な競合的阻害剤は、変異α−GalA遺伝子を形質移入したCOS−1細胞、変異α−GalA過剰発現トランスジェニックマウスからの繊維芽細胞、およびファブリ患者からのリンパ芽球を含む、細胞中の変異酵素活性を増大することを確認した。
【0005】
なお、上述の内容が本発明の操作のメカニズムであると考えているが、本発明の成功は、この正しいメカニズムに依存するものではない。
【0006】
従って、本発明の1つの目的は、哺乳動物細胞中の、特にヒト細胞中の変異α−GalAの分解を防止する方法を提供することである。
【0007】
また、本発明の更なる目的は、哺乳動物細胞中の、特にヒト細胞中のα−GalA活性を増大する方法を提供することである。本発明の方法は、正常α−GalAおよび変異α−GalAの活性をともに増大するが、特にファブリ病のある形態に存在する変異α−GalAの活性を増大する。
【0008】
更に、本発明の方法は哺乳類以外の細胞、例えば、昆虫細胞および酵素補充療法用のα−GalAの生産を目的として使用される培養CHO細胞などにおいても有用であると推測される。
【0009】
本発明の方法に有効であると推測される化合物は、環中に酸素と置換する窒素を有するガラクトース誘導体およびグルコース誘導体であり、好ましくは、1−デオキシガラクトノジリマイシン(deoxygalactonojirimycin)および3,4−diepi−α−ホモノジリマイシン(homonojirimycin)などのガラクトース誘導体である。なお、ガラクトース誘導体は、例えば次の構造によって表わされるように、C−3位の水酸基が水平方向で、C−4位の水酸基が軸方向であることを意味する。
【化1】
【0010】
式中、R1はH、メチルまたはエチルを表わし、R2およびR3は、それぞれ独立して、H、OH、単糖(例えば、−O−ガラクトース)、1〜3炭素アルキル、アルコキシまたはヒドロキシアルキル基(例えば、CH2OH)を表わす。
【0011】
また、α−ガラクトシダーゼに対する他の特異的競合阻害剤、例えば、カリステジン(calystegine)A3、B2およびB3、およびこれら化合物のN−メチル誘導体は、本発明の方法において有用であるはずである。カリステジン化合物は次式によって表わすことができる;
【化2】
【0012】
上式において、カリステジンA3については、R1=Hであり、R2=OHであり、R3=Hであり、R4=Hである;カリステジンB2については、R1=Hであり、R2=OHであり、R3=Hであり、R4=OHである;カリステジンB3については、R1=Hであり、R2=Hであり、R3=OHであり、R4=OHである;N−メチル−カリステジンA3については、R1=CH3であり、R2=OHであり、R3=Hであり、R4=Hである;N−メチル−カリステジンB2については、R1=CH3であり、R2=OHであり、R3=Hであり、R4=OHである;N−メチル−カリステジンB3については、R1=CH3であり、R2=Hであり、R3=OHであり、R4=OHである。
【0013】
また、本発明の更なる目的は、ファブリ病の患者に対する治療方法を提供することである。次式の化合物
【化3】
【0014】
(式中、R1はH、CH3またはCH3CH2を表わし、R2およびR3は、それぞれ独立して、H、OH、1〜6炭素アルキル、ヒドロキシアルキル、またはアルコキシ基(好ましくは1〜3)、または単糖を表わし、R4およびR5は独立してHまたはOHを表わす)、または、2,5−ジデオキシ−2,5−イミノ−D−マンニトール、α−ホモノジリマイシン、3,4−diepi−α−ホモノジリマイシン、5−O−α−D−ガラクトピラノシル−α−ホモノジリマイシン、1−デオキシガラクトノジリマイシン、4−epi−ファゴミン(fagomine)、および1−デオキシ−ノジリマイシン、並びにそれらのN−アルキル誘導体からなる群から選択される化合物の薬学的有効量の投与によって、ファブリ病の患者において変異α−GalAの活性を増大させることによりファブリ病の症状を緩和する。また、カリステジン化合物およびそれらの誘導体など他のα−GalAの競合阻害剤は、ファブリ病を治療するのに有用であるはずである。
【0015】
当業者は、本発明の方法で使用される化合物の有効量は、日常的な実験操作によって決定することが可能であるということを理解するであろう。しかしながら、その量は0.01から100μM、好ましくは0.01から10μM、最も好ましくは0.05から1μMの血清濃度を生じる量であると推測される。また、化合物の有効量は、1日当たり0.5から1000mg/kg体重、好ましくは1日当たり0.5から100mg/kg体重、最も好ましくは、1日当たり1から50mg/kg体重であると推測される。化合物は、予備処方された投薬量で、単独で、場合によっては薬学的に許容し得る担体および賦形剤に加えて投与することができる。有効量の化合物を投与することによって、患者の症状を改善するのに十分な患者内の細胞のα−GalA活性を高めることができる。明らかに健常者で確認された酵素活性の低い範囲が平均値の約30%であるので(2)、正常の30%の酵素活性レベルがファブリ患者の症状を著しく改善し得ることが推測される。
【0016】
本明細書に記載した化合物、および当業者に公知のα−GalAに対する他の競合的阻害剤は、α−GalAの細胞内活性を増大し、かつファブリ病を治療する方法において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】インビトロにおける阻害(1A)、およびアルカロイド化合物によるα−GalAの細胞内の増強(1Bおよび1C)を示す図である。用いたアルコロイド化合物は、(1)2,5−ジデオキシ−2,5−イミノ−D−マンニトール、(2)α−ホモノジリマイシン、(3)3,4−Diepi−α−ホモノジリマイシン、(4)5−O−α−D−ガラクトピラノシル−α−ホモノジリマイシン、(5)1−デオキシガラクトノジリマイシン、(6)4−epi−ファゴミン(Fagomine)、(7)1−デオキシ−ノジリマイシン、(Gal)ガラクトースである。「方法」に記載しているように、変異α−GalA(R301Q)のcDNAによって形質移入したCOS−1細胞中の細胞内α−GalA活性を分析した。(A)方法のもとに阻害アッセイを実施した。化合物のIC50は、各々、1.3mM(1)、2.6mM(2)、2.9μM(3)、0.62mM(4)、4.7nM(5)、0.25mM(6)、0.8mM(7)、および24mM(Gal、ガラクトース)であった。
【図1B】インビトロにおける阻害(1A)、およびアルカロイド化合物によるα−GalAの細胞内の増強(1Bおよび1C)を示す図である。用いたアルコロイド化合物は、(1)2,5−ジデオキシ−2,5−イミノ−D−マンニトール、(2)α−ホモノジリマイシン、(3)3,4−Diepi−α−ホモノジリマイシン、(4)5−O−α−D−ガラクトピラノシル−α−ホモノジリマイシン、(5)1−デオキシガラクトノジリマイシン、(6)4−epi−ファゴミン(Fagomine)、(7)1−デオキシ−ノジリマイシン、(Gal)ガラクトースである。「方法」に記載しているように、変異α−GalA(R301Q)のcDNAによって形質移入したCOS−1細胞中の細胞内α−GalA活性を分析した。(A)方法のもとに阻害アッセイを実施した。化合物のIC50は、各々、1.3mM(1)、2.6mM(2)、2.9μM(3)、0.62mM(4)、4.7nM(5)、0.25mM(6)、0.8mM(7)、および24mM(Gal、ガラクトース)であった。
【図1C】インビトロにおける阻害(1A)、およびアルカロイド化合物によるα−GalAの細胞内の増強(1Bおよび1C)を示す図である。用いたアルコロイド化合物は、(1)2,5−ジデオキシ−2,5−イミノ−D−マンニトール、(2)α−ホモノジリマイシン、(3)3,4−Diepi−α−ホモノジリマイシン、(4)5−O−α−D−ガラクトピラノシル−α−ホモノジリマイシン、(5)1−デオキシガラクトノジリマイシン、(6)4−epi−ファゴミン(Fagomine)、(7)1−デオキシ−ノジリマイシン、(Gal)ガラクトースである。「方法」に記載しているように、変異α−GalA(R301Q)のcDNAによって形質移入したCOS−1細胞中の細胞内α−GalA活性を分析した。(A)方法のもとに阻害アッセイを実施した。化合物のIC50は、各々、1.3mM(1)、2.6mM(2)、2.9μM(3)、0.62mM(4)、4.7nM(5)、0.25mM(6)、0.8mM(7)、および24mM(Gal、ガラクトース)であった。
【図2A】Tgマウス(2A)から取得した繊維芽細胞中のDGJによるα−GalAの増強を示す図である。
【図2B】ファブリ患者(2B)から取得したリンパ芽球中のDGJによるα−GalAの増強を示す図である。
【図3A】TgM繊維芽細胞(A)およびリンパ芽球(B)中のDGJによるα−GalAの増強の時間経過を示す図である。方法の項に従って細胞培養を実施した。添加したDGJ濃度は20μMであった。ヒトリンパ芽球の遺伝子型はR301Qであった。●はDGJ非含有で培養した変異細胞であり、○はDGJ含有で培養した変異細胞であり、▲はDGJ非含有で培養した正常リンパ芽球であり、△はDGJ含有で培養された正常リンパ芽球である。
【図3B】TgM繊維芽細胞(A)およびリンパ芽球(B)中のDGJによるα−GalAの増強の時間経過を示す図である。方法の項に従って細胞培養を実施した。添加したDGJ濃度は20μMであった。ヒトリンパ芽球の遺伝子型はR301Qであった。●はDGJ非含有で培養した変異細胞であり、○はDGJ含有で培養した変異細胞であり、▲はDGJ非含有で培養した正常リンパ芽球であり、△はDGJ含有で培養された正常リンパ芽球である。
【図4A】形質移入したCOS−1細胞(A)、TgM繊維芽細胞(B)およびR301Q(C)の遺伝子型を有するリンパ芽球中のα−GalA増強のDGJ濃度依存性を示す図である。細胞は、HamのF−10培地(COS−1細胞、TgM繊維芽細胞)またはDGJ含有10%FCS(リンパ芽球)を補充したRPMI−1640培地で37℃にて4日間、可変的な濃度で培養した。COS−1細胞へ形質移入したcDNAは変異α−GalA(R301Q)をコードしていた。
【図4B】形質移入したCOS−1細胞(A)、TgM繊維芽細胞(B)およびR301Q(C)の遺伝子型を有するリンパ芽球中のα−GalA増強のDGJ濃度依存性を示す図である。細胞は、HamのF−10培地(COS−1細胞、TgM繊維芽細胞)またはDGJ含有10%FCS(リンパ芽球)を補充したRPMI−1640培地で37℃にて4日間、可変的な濃度で培養した。COS−1細胞へ形質移入したcDNAは変異α−GalA(R301Q)をコードしていた。
【図4C】形質移入したCOS−1細胞(A)、TgM繊維芽細胞(B)およびR301Q(C)の遺伝子型を有するリンパ芽球中のα−GalA増強のDGJ濃度依存性を示す図である。細胞は、HamのF−10培地(COS−1細胞、TgM繊維芽細胞)またはDGJ含有10%FCS(リンパ芽球)を補充したRPMI−1640培地で37℃にて4日間、可変的な濃度で培養した。COS−1細胞へ形質移入したcDNAは変異α−GalA(R301Q)をコードしていた。
【図5】形質移入したCOS−1細胞中のα−GalA増強のDE−HNJ濃度依存性を示す図である。
【図6】リンパ芽球中のDGJ増強α−GalAの安定化を示す図である。△はDGJ非含有で培養したR301Qリンパ芽球、▲はDGJ含有で培養したR301Qリンパ芽球である。
【図7】DGJ含有下で培養したTgN繊維芽細胞中の[14C]−CTH代謝のTLC分析を示す図である。TgN繊維芽細胞は、4日間、0μM(レーン1)、2μM(レーン2)および20μM(レーン3)でDGJを含有しているHamのF−10培地−10%FCS中において37℃で培養した。DGJ非含有の培地で洗浄した後、2.5mlのOpti−MEM培地(Gibco, Gaithersburg, MD U.S.A.)中の[14C]−CTH(200,000 cpm)を細胞に添加し、5時間培養した。2mlの1%BSAおよび2mlのPBSで細胞をそれぞれ3回洗浄した。中性糖脂質をCHCl3:MeOH(2:1)によって抽出し、穏やかなアルカリ処理、MeOH:n−ヘキサン(1:1)を用いた抽出、およびFolch抽出(19)によって精製した。
【図8A】DGJ含有下で培養した変異体リンパ芽球(R301Q)中のα−GalAのmRNAの検出を示す図である。ヒト変異体リンパ芽球(R301Q)は、4日間、50μMのDGJの含有下で、または非含有下で培養した。α−GalAのmRNAは、競合RT−PCR法(15)により検出した。
【図8B】TgM繊維芽細胞中で発現された変異α−Gal A(R301Q)のウェスタンブロットを示す図である。10μgのタンパク質を含有する細胞ホモジネートの上澄みをSDS−PAGEにかけ、ウェスタンブロットをウサギで得られた抗−α GalA抗体を用いて実施した。
【図9A】TgM繊維芽細胞(A)、20μMのDGJ含有下で培養したTgM繊維芽細胞(B)、およびTgN繊維芽細胞(C)を用いたパーコール密度勾配遠心分離の結果を示す図である。Oshimaら(8)によって以前報告されたように、密度マーカー(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO, U.S.A.)を用いてパーコール密度勾配遠心分離を行った。リソソーム標識酵素のβ−ヘキソサミニダーゼは、基質として4−メチルウンベリフェリル−β−N−アセチル−D−グルコサミンで分析した。実線はα−GalA活性であり、破線はβ−ヘキソサミニダーゼ活性である。
【図9B】TgM繊維芽細胞(A)、20μMのDGJ含有下で培養したTgM繊維芽細胞(B)、およびTgN繊維芽細胞(C)を用いたパーコール密度勾配遠心分離の結果を示す図である。Oshimaら(8)によって以前報告されたように、密度マーカー(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO, U.S.A.)を用いてパーコール密度勾配遠心分離を行った。リソソーム標識酵素のβ−ヘキソサミニダーゼは、基質として4−メチルウンベリフェリル−β−N−アセチル−D−グルコサミンで分析した。実線はα−GalA活性であり、破線はβ−ヘキソサミニダーゼ活性である。
【図9C】TgM繊維芽細胞(A)、20μMのDGJ含有下で培養したTgM繊維芽細胞(B)、およびTgN繊維芽細胞(C)を用いたパーコール密度勾配遠心分離の結果を示す図である。Oshimaら(8)によって以前報告されたように、密度マーカー(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO, U.S.A.)を用いてパーコール密度勾配遠心分離を行った。リソソーム標識酵素のβ−ヘキソサミニダーゼは、基質として4−メチルウンベリフェリル−β−N−アセチル−D−グルコサミンで分析した。実線はα−GalA活性であり、破線はβ−ヘキソサミニダーゼ活性である。
【図10】DGJによる形質移入COS−1細胞中のα−GalAの増大。COS−1細胞に形質移入されたcDNAは、L166V、A156V、G373SおよびM296I上に変異を有するα−GalAであった。添加したDGJ濃度は20μMであった。
【図11】TgMマウスへのDGJ投与によるα−GalA活性の増大。TgMマウス(1つの群として4匹のマウス)の飲料源としてDGJ溶液(0.05mMまたは0.5mM)を置いた。投与1週間後に、酵素活性を測定するため臓器をホモゲナイズした。データは、TgMマウスの活性から、DGJで飼養した非Tgマウスから得られた内因性マウスα−GalA活性を減算したものである。示した酵素活性は平均値であり、標準偏差は10%未満であった。
【発明の詳細な説明】
【0018】
<略語>
便宜のために本明細書で使用する略語を以下に記述する。α−GalAは、ヒトリソソームのα−ガラクトシダーゼAである。TgNマウスは、正常なヒトリソソームのα−ガラクトシダーゼAを過剰発現するトランスジェニックマウスである。TgMマウスは、Gln(R301Q)による301位置でのArgの単一アミノ酸置換を有する変異体ヒトリソソームのα−ガラクトシダーゼAを過剰発現するトランスジェニックマウスである。TgN繊維芽細胞は、TgNマウスから発生した繊維芽細胞である。TgM繊維芽細胞は、TgMマウスから発生した繊維芽細胞である。DGJは、1−デオキシ−ガラクトノジリマイシンである。DE−HNJは、3,4−di−epi−α−ホモノジリマイシンである。pNP−α−Galは、p−ニトロフェニル−α−D−ガラクトシドである。4−mU−α−Galは、4−メチルウンベリフェリル−α−D−ガラクトシドである。FCSはウシ胎児血清であり、PBSはリン酸緩衝食塩水であり、BSAはウシ血清アルブミンである。TLCは、薄層クロマトグラフィーである。CTHは、グロボトリアオシルセラミド(globotriaosylceramide)またはセラミドトリヘキソシドである。CDHはジヘキソシドセラミドであり、CMHはモノヘキソシドセラミドであり、ERは小胞体である。
【0019】
<材料と方法>
(材料):
アルカロイド化合物は、植物、または植物生産物を部分的に化学的修飾した誘導体(9)の何れかから精製した。TgNマウスおよびTgMマウスは、以前に報告されているように(10、11)調製した。TgNまたはTgMの繊維芽細胞は、手順どおりにTgNマウスまたはTgMマウスから確立した。ヒトリンパ芽球は、正常成人またはファブリ病患者(6)からのエプスタイン−バールウィルス形質転換リンパ芽球ラインであった。COS−1細胞中で一時的に発現する正常および変異α−GalAのcDNAは、報告(12)どおりにクローン化した。アルカロイドに関するインビトロでの阻害研究でα−GalAは述べられており、正常α−GalA遺伝子がコード化された組換えバキュロウイルスによって感染したSf−9細胞を培地から精製した(13)。[14C]−CTHは、化学物質の組み合わせとスフィンゴリピドセラミドN−デアシラーゼ反応(14)により調製した。
【0020】
(方法):
細胞培養:
COS−1細胞、TgNおよびTgM繊維芽細胞は、10%FCSおよび抗生物質を補充したHamのF−10培地で培養した。リンパ芽球は、10%FCSおよび抗生物質を補充したRPMI−1640で培養した。すべての細胞培養は、5%のCO2下で、37℃において実施した。繊維芽細胞およびリンパ芽球に対するモデルとして、細胞内酵素活性のアッセイを始める前に、細胞(繊維芽細胞用については3×105、およびリンパ芽球については5×105)を4日間、20μMのDGJを含有した、またはDGJを含有していない好ましい培地10ml中で培養した。
【0021】
COS−1細胞中のα−Gal Aの一時的発現
COS−1細胞(5×105)は、60mm皿につき、1.2mlのOpti−MEM培地(Gibco)で、1μgのプラスミドDNAおよび8μlのリポフェクタミン(Lipofectamine)(Gibco, Gaithersburg ,MD U.S.A.)を用いて感染させた。6時間、37℃で培養した後、20%FCSを含有する同培地1.2mlを添加し、その培養物を一晩培養した。その培地を2.4mlの完全HamF−10培地と取り換えた後、適切な濃度でアルカロイドを添加し、細胞内酵素活性のアッセイを始める前に、1日間更にそれを培養した。
【0022】
α−GalAの細胞内酵素アッセイ:
リン酸緩衝食塩水で2度洗浄した後、水200μl中で細胞をホモゲナイズし、酵素アッセイのために、10,000×gの遠心分離によって得られた上澄み10μlを0.1Mのクエン酸塩緩衝液(pH4.5)中で6mMの4−mU−α−Galおよび90mMのN−アセチルガラクトサミンによって構成された基質溶液50μlで37℃にて培養した。データはすべて10%未満の標準偏差を有する三回測定の平均である。酵素活性の1単位は、37℃で毎時遊離された4−メチルウンベリフェロン1nmolとして定義した。
【0023】
α−GalAのインビトロにおける阻害アッセイ:
酵素活性は、基質としてpNP−α−Galを用いて分析した。代表的な阻害反応は、0.05Mのクエン酸塩緩衝液(pH4.5)で全容量を120μlとした、200nmolのpNP−α−Gal、適当な酵素、および阻害剤の混合物で実施した。15分間、37℃でのインキュベーションし、その反応を0.2Mのホウ酸塩緩衝液(pH9.8)1mlの添加によって中止し、490nmにおける吸光度として遊離されたpNP量を測定した。
【0024】
実施例1
α−GalA活性のインビトロにおける阻害および細胞内増大に関する双方の研究において、一連の植物アルカロイド(スキーム1、文献9)を使用した。阻害実験の結果は、図1Aに示した。
【化4】
【0025】
試験した化合物のうち、α−GalAに対する強力な競合的阻害剤として知られている1−デオキシ−ガラクトノジリマイシン(DGJ、5)は、4.7nMでIC50の最も高い阻害活性を示した。α−3,4−Di−epi−ホモノジリマイシン(3)は、2.9μMでIC50の有効な阻害剤であった。他の化合物は、0.25mM(6)から2.6mM(2)の範囲にわたるIC50の適度な阻害活性を示した。更に驚いたことに、これらの化合物は、正常の4%の残存性α−GalA活性を有するファブリ病の異型性変異から確認された、変異α−GalA遺伝子(R301Q)を形質移入したCOS−1細胞中のα−GalA活性を著しく増大した。IC50の阻害剤の全3〜10倍濃度でこれらの化合物を形質移入したCOS−1細胞を培養することによって、α−GalA活性は1.5〜4倍に増大した(図1C)。細胞内増大の有効性はインビトロでの阻害活性と対応しており、また、化合物を10μM濃度で培地に添加した(図1B)。
【0026】
実施例2
最も強力なインビトロにおける阻害剤および最も有効な細胞内エンハンサーのDGJを、より詳細に特徴化するために選択した。TgMまたはTgNの繊維芽細胞(図2A)、および、R301QまたはQ279E変異体の遺伝子型を有すつファブリ患者から得たリンパ芽球(図2B)にDGJを添加した。TgM繊維芽細胞で確認された酵素活性は、20μMのDGJとの共培養によって6倍に増加し、正常の52%に達した。更に、DGJはリンパ芽球に対して類似の効果を示し、R301QおよびQ279Eにおいて8倍および7倍まで残存性酵素活性が増大し、それは、すなわち、正常の48%および45%であった。また、Tg正常(TgN)繊維芽細胞および正常リンパ芽球中の酵素活性は、DGJを用いた培養法によって増加が確認された。
【0027】
実施例3
TgM繊維芽細胞並びに健常者およびR301Q上に変異を有する患者のヒトリンパ芽球は、20μMのDGJの存在下で培養した。DGJを含有しない場合の培養においては、TgM繊維芽細胞または変異リンパ芽球中のα−Gal A活性は変化しなかった(図3)。しかしながら、DGJを含有することによって、酵素活性はこれらの細胞培養において顕著な増加を示した。変異リンパ芽球中の酵素活性は、5日目で、DGJを含有しないで培養した正常リンパ芽球で確認されたものの64%に達した。更に、正常リンパ芽球中の酵素活性は、DGJを含有した培養の後では30%増大した。
【0028】
実施例4
形質移入COS−1細胞、TgM繊維芽細胞、およびR301Qの表現型を有するリンパ芽球中のα−Gal A増大のDGJ濃度依存性を試験した。
【0029】
図4に示すとおり、形質移入COS−1細胞(図4A)およびリンパ芽球(図4C)では、0.2〜20μMの範囲でDGJの濃度の増加とともに酵素活性が増加し、TgM繊維芽細胞(図4B)では0.2〜200μMの間で酵素活性が増大した。高濃度のDGJの場合、増大効果は抑制された。
【0030】
DGJ(図5)と比較した場合、DE−HNJは、高濃度(1〜1000μM)において、酵素(R301Q)の変異cDNAを形質移入したCOS−1細胞中のα−GalAの増大に関する同様の効果を示した。培地中、1mMのDE−HNJがCOS−1細胞の細胞内酵素活性を阻害しなかったことは明らかである。
【0031】
実施例5
図6は、リンパ芽球中のDGJ増大α−GalAの安定性を測定するための実験を示す。細胞を4日間、20μMのDGJを含有する10%FCSを補充したRPMI−1640培地10ml中で37℃にて培養し、5×105の細胞をDGJ非含有の10%FCSを補充したRPMI1640培地13ml中に移した。2mlの培地を酵素アッセイのために毎日得た。DGJ非含有の培地の置換後に、DGJ含有での事前培養およびDGJ非含有での事前培養との間に初期剰余の全α−Gal A活性が維持されており(図6)、増大した酵素が少なくとも5日間細胞において安定していることが示唆されている。
【0032】
実施例6
細胞内で増大した酵素の機能を研究するために、[14C]−CTHをTgN繊維芽細胞の培養物に加えた。
【0033】
糖脂質の検出は、展開溶媒としてCHCl3:MeOH:水(65:25:4)を用いた薄層クロマトグラフィーによって行い、Fuji−BAS画像診断システムによって視覚化した(図7)。α−GalAによるCTHの代謝産物である二ヘキソシドセラミド(CDH)の量は、20μMのDGJとともに培養した細胞、およびDGJを含有しないで培養した細胞との間で比較可能であり(全中性糖脂質の4.5%対4.3%)、これにより、細胞内酵素は用いた濃度でのDGJによって阻害されないことが示された。
【0034】
実施例7
DGJがα−GalAの生合成に影響を与えるか否か検討するために、DGJを用いて培養した変異リンパ芽球(R301Q)中のα−GalAのmRNA濃度を、競合的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)方法によって測定した(15)。図8Aは、α−GalAのmRNAがDGJ50μMを用いてのリンパ芽球の培養によって変化しなかったことを明らかに示している。
【0035】
一方、ウェスタンブロット分析は、TgM繊維芽細胞の酵素タンパク質が著しく増加していることを示し、その増加はDGJの濃度に対応していた(図8B)。DGJを用いて培養した細胞中の低分子量(約46kD)を有する比較的多くの酵素タンパク質は、高レベルの成熟酵素を示唆している(16)。これらの結果は、酵素の増大におけるDGJの作用がポスト転写事象であることを示している。
【0036】
実施例8
増大した酵素がリソソームに運ばれることを確認するために、Tgマウス繊維芽細胞で細胞下分画を行った(図8)。TgM繊維芽細胞中の全般的酵素活性は低く、ゴルジ器官分画を含む1.042g/mlの密度マーカーで溶出された(20)(図9A)。20μMのDGJを用いた培養では、TgM繊維芽細胞中の酵素活性は全般的に高い酵素活性を示し、ほとんどの酵素が、リソソーム標識酵素ヘキソサミニダーゼの同一分画で溶出された(図9B)。更に、TgM中のα−GalA活性の溶出パターンは、TgN繊維芽細胞で確認されたものに変更した(図9C)。
【0037】
実施例9
R301QおよびQ279Eの遺伝子型は、異型性型のファブリ病患者から確認された。α−GalA活性の増大に関するDGJの有効性をファブリ病の他の遺伝子型および表現型で試験した。この実験では、ファブリ病の典型的型を有する患者で確認された3つの変異α−GalA cDNA、L166V、A156VおよびG373S、およびその疾患の異型性型を有する患者から確認された変異M296Iを使用した。図10は、DGJの包含物は、試験した4つの遺伝子型すべてにおいて、特にL166V(7倍増加)およびA156V(5倍増加)に対する酵素活性を増加させることを示している。また、データは、本方法が異型性型にだけでなく、その疾患の典型的型にも有用であることを示している。
【0038】
実施例10
1日当たり体重1キログラム当たり約3または30mgのDGJ投薬量に対応する1週間の飲用源として0.05または0.5mMのDGJ溶液を供給することによりTgマウスにDGJを投与した。酵素活性は、各々、心臓で4.8倍および18倍、腎臓で2.0倍および3.4倍、脾臓で3.1倍および9.5倍、肝臓で1.7倍および2.4倍を示した(図11)。臓器における酵素活性の増加はDGJ投薬量の増加に対応していた。変異遺伝子(R301Q)が、心臓に制限される臨床症状を有している異型性変異型ファブリ患者で確認されたので、DGJの経口投与がTgMマウスの心臓のα−GalA活性を特に増大するという事実は特に重要である。
【0039】
<考察>
ゴルジ複合体への輸送が正しく折り畳まれたタンパク質および構築されたタンパク質に限定されており、精度管理の主要なプロセスが様々なシャペロンによって実施されることを確保するために、ERが効率的な精度管理システムを保持していることが知られている(17)。本出願中で示した結果の1つの説明は以下のとおりである。ファブリ病における幾つかの表現型では、不完全で可撓性の酵素の折り畳みを生じる一方、触媒中心は無損傷で残存する。阻害剤は、酵素触媒中心に対して通常高い親和性を有し、阻害剤の存在によって酵素触媒中心が付加され、折り畳みの屈曲性を低減して、おそらくは酵素の「適切な」立体配座を導く。その結果、酵素が「精度管理システム(quality control system)」を通過し、ゴルジ複合体に輸送され熟成に達することができる。一度pHが酸性であるリソソームに酵素を輸送すれば、酵素は酸性条件下で安定しているので(6)、酵素は同じ立体配座で安定している傾向にある。そのような場合、阻害剤は、適切な立体配座を呈するように酵素に強いるシャペロンとして作用する。我々はそのような機能をもった低分子量化学物質に対する用語として「化学シャペロン」を使用する。
【0040】
その化合物がリソソーム中の酵素触媒中心から円滑に解離し得るということは酵素の機能において重要である。本研究で使用する化合物は競合的阻害剤であるので、阻害剤の解離は2つの因子、i)阻害剤濃度、および、ii)pHに依存する。Daleら(18)は、1−デオキシノジリマイシンのα−グルコシダーゼへの結合がpH依存性であり、その場合、阻害剤はpH6.5でpH4.5に比べて80倍以上しっかりと酵素に結合し、ノジリマイシン誘導体が非プロトン付加形態としての機能することを示唆することを示した。阻害剤は中性条件で酵素に結合し、DGJがプロトン化しやすい酸性条件で酵素から遊離することができるので、これは、図7で示した細胞中のα−GalAの機能に関する結果を説明し得るものである。
【0041】
本明細書で述べた結果は、DGJが、R301QおよびQ279Eの遺伝子型を有するファブリ病の異型性変異を持つ患者のリンパ芽球における変異α−GalA活性を有効に増大することを示している。更に、古典的タイプおよび非古典的タイプを含むファブリ変異の他の表現型におけるDGJの有効性を試験した。DGJは、異型性ファブリ病と診断された患者から得た3つの遺伝子型すべての細胞株、および高い残留酵素活性を有する典型的ファブリ型を保持する幾つかの細胞株において酵素活性を有効に増大した。本発明によれば、α−GalA阻害剤の投与法は、変異が触媒中心以外の部位で生じるファブリ患者に対する有効な治療であることが立証され、また、他のスフィンゴ糖脂質蓄積症にも有用であるはずである。
【0042】
本明細書で引用した文献は引用によって本明細書に援用し、便宜のために下記に列挙する。
【参考文献】
【0043】
特許請求の範囲に定義される本発明の範囲および意図から逸脱することなく、上述した本発明において種々の変更を行うことができることは認識されるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,5−ジデオキシ−2,5−イミノ−D−マンニトール、3,4−diepi−α−ホモノジリマイシン(homonojirimaycin)、5−O−α−D−ガラクトピラノシル−α−ホモノジリマイシン、1−デオキシガラクトノジリマイシン、4−epi−ファゴミン(fagomine)、カリステジン(calystegine)A3、カリステジンB2、およびカリステジンB3、並びそれらのN−アルキル誘導体からなる群から選択される有効量の化合物を投与することを含んでなる、哺乳動物細胞中のリソソームα−ガラクトシダーゼAの活性を増大する方法。
【請求項2】
リソソームα−ガラクトシダーゼAがファブリ病の患者に存在する変異型である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞がヒト細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞がファブリ病患者の細胞である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
2,5−ジデオキシ−2,5−イミノ−D−マンニトール、3,4−diepi−α−ホモノジリマイシン、5−O−α−D−ガラクトピラノシル−α−ホモノジリマイシン、1−デオキシガラクトノジリマイシン、4−epi−ファゴミン、カリステジンA3、カリステジンB2、およびカリステジンB3、並びそれらのN−アルキル誘導体からなる群から選択される有効量の化合物を投与することを含んでなる、ファブリ病の治療方法。
【請求項6】
前記化合物が1−デオキシガラクトノジリマイシンまたは3,4−diepi−α−ホモノジリマイシンである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物が1−デオキシガラクトノジリマイシンである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
次式の有効量の化合物を投与することを含んでなる哺乳動物細胞中のリソソームα−ガラクトシダーゼ活性を増大する方法であって、
【化1】
式中、
R1はH、−CH2−またはCH2OHを表わし、
R2はH、OHまたは−O−ガラクトースを表わし、
R3およびR4は独立してHまたはOHを表わし、
R5はHまたは−CH2−を表わし、
R6はCH2OHまたはOHを表わし、
R7はHまたは1〜3個の炭素原子を含んでいるアルキル基(但し、R1またはR5の何れかが−CH2−である場合、それらは同一で、別の環構造を形成するためにリンクされる)を表わす方法。
【請求項9】
次式の有効量の化合物を投与することを含んでなるファブリ病を治療する方法であって、
【化2】
式中、
R1はH、−CH2−またはCH2OHを表わし、
R2はH、OHまたは−O−ガラクトースを表わし、
R3およびR4は独立してHまたはOHを表わし、
R5はHまたは−CH2−を表わし、
R6はCH2OHまたはOHを表わし、
R7はHまたは1〜3個の炭素原子を含んでいるアルキル基(但し、R1またはR5の何れかが−CH2−である場合、それらは同一で、別の環構造を形成するためにリンクされる)を表わす方法。
【請求項1】
2,5−ジデオキシ−2,5−イミノ−D−マンニトール、3,4−diepi−α−ホモノジリマイシン(homonojirimaycin)、5−O−α−D−ガラクトピラノシル−α−ホモノジリマイシン、1−デオキシガラクトノジリマイシン、4−epi−ファゴミン(fagomine)、カリステジン(calystegine)A3、カリステジンB2、およびカリステジンB3、並びそれらのN−アルキル誘導体からなる群から選択される有効量の化合物を投与することを含んでなる、哺乳動物細胞中のリソソームα−ガラクトシダーゼAの活性を増大する方法。
【請求項2】
リソソームα−ガラクトシダーゼAがファブリ病の患者に存在する変異型である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞がヒト細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞がファブリ病患者の細胞である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
2,5−ジデオキシ−2,5−イミノ−D−マンニトール、3,4−diepi−α−ホモノジリマイシン、5−O−α−D−ガラクトピラノシル−α−ホモノジリマイシン、1−デオキシガラクトノジリマイシン、4−epi−ファゴミン、カリステジンA3、カリステジンB2、およびカリステジンB3、並びそれらのN−アルキル誘導体からなる群から選択される有効量の化合物を投与することを含んでなる、ファブリ病の治療方法。
【請求項6】
前記化合物が1−デオキシガラクトノジリマイシンまたは3,4−diepi−α−ホモノジリマイシンである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物が1−デオキシガラクトノジリマイシンである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
次式の有効量の化合物を投与することを含んでなる哺乳動物細胞中のリソソームα−ガラクトシダーゼ活性を増大する方法であって、
【化1】
式中、
R1はH、−CH2−またはCH2OHを表わし、
R2はH、OHまたは−O−ガラクトースを表わし、
R3およびR4は独立してHまたはOHを表わし、
R5はHまたは−CH2−を表わし、
R6はCH2OHまたはOHを表わし、
R7はHまたは1〜3個の炭素原子を含んでいるアルキル基(但し、R1またはR5の何れかが−CH2−である場合、それらは同一で、別の環構造を形成するためにリンクされる)を表わす方法。
【請求項9】
次式の有効量の化合物を投与することを含んでなるファブリ病を治療する方法であって、
【化2】
式中、
R1はH、−CH2−またはCH2OHを表わし、
R2はH、OHまたは−O−ガラクトースを表わし、
R3およびR4は独立してHまたはOHを表わし、
R5はHまたは−CH2−を表わし、
R6はCH2OHまたはOHを表わし、
R7はHまたは1〜3個の炭素原子を含んでいるアルキル基(但し、R1またはR5の何れかが−CH2−である場合、それらは同一で、別の環構造を形成するためにリンクされる)を表わす方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−270146(P2010−270146A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−173733(P2010−173733)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【分割の表示】特願2000−551773(P2000−551773)の分割
【原出願日】平成11年5月28日(1999.5.28)
【出願人】(500072792)マウント シナイ スクール オブ メディシン オブ ニューヨーク ユニバーシティー (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173733(P2010−173733)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【分割の表示】特願2000−551773(P2000−551773)の分割
【原出願日】平成11年5月28日(1999.5.28)
【出願人】(500072792)マウント シナイ スクール オブ メディシン オブ ニューヨーク ユニバーシティー (7)
【Fターム(参考)】
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