説明

リンク式ロボットアーム装置

【課題】アームの制御性低下を効果的に抑制するとともに、吸着ON・OFF状態の切替応答性が向上するリンク式ロボットアーム装置を提供する。
【解決手段】アームの先端側に配置され且つ吸着用エア供給口C3を有するエンドエフェクタCによって搬送対象物を吸着保持可能なリンク式ロボットアーム装置Xとして、アーム1の内部に設けたエア管4を介して吸着用エア供給口C3に接続され、吸着用エア供給口C3に吸着用エアを供給可能な状態と、吸着用エア供給口C3への吸着用エア供給を停止する状態との間で切替可能な吸着切替ユニット3を備え、この吸着切替ユニット3を、アーム1のうちアーム長1Lの半分1Cよりもシータ軸J3に近い位置に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばウェーハや液晶等の搬送対象物を搬送(移送)する機構に適用されるリンク式ロボットアーム装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ウェーハや液晶等の搬送対象物を搬送するロボットアーム装置として、複数のリンク要素を連結したリンク式(リンク構造)のアームを備え、アームのうち最も基端側に配置したリンク要素(以下、「第1リンク要素」と称する)を旋回軸によって基台に水平旋回可能に支持させたものが知られている。このリンク式ロボットアーム装置によって搬送対象物を吸着保持して例えば次工程の処理装置などの所定場所に搬送できるように、アームのうち最も先端側に配置したリンク要素であるエンドエフェクタ(ロボットが作業対象に直接働きかける機能をもつ部分)には、吸着切替ユニットにエア管を介して接続された吸着用エア供給口が形成されている。例えば、吸着用エア供給口から供給されるエアが負圧エアである場合には、吸引作用によって搬送対象物を吸着保持することができる。また、吸着用エア供給口から供給されるエアが正の低圧エアである場合には、吸着用エア供給口から吐出される低圧エアが搬送対象物とエンドエフェクタとの隙間に流れて、当該隙間の気圧を低下させて負圧とし、大気圧との圧力差によって搬送対象物に働くエンドエフェクタ側に向かう力を利用して搬送対象物を吸着することができる。
【0003】
このようなリンク式ロボットアーム装置においては、アームの先端部近傍に吸着切替ユニットを設ける態様が考えられる。しかしながら、比較的重量の大きい吸着切替ユニットをアームの先端部近傍に設けた場合には、当然のことながらアームの先端部近傍領域の負荷重量が増大し、リンク要素をそれぞれ回転可能に支持する各軸に作用する負荷も増加することによって、アーム全体の制御性能が大幅に低下するおそれがある。
【0004】
そこで、通常のリンク式ロボットアーム装置には、アームを支持する基台、或いは基台の外部(基台よりもさらにアームの先端部から離れた位置)に吸着切替ユニットを設ける態様が採用されている(特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−9132号公報
【特許文献2】特開2009−88222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、吸着切替ユニットを基台あるいは基台の外部に設けた態様では、アームの先端部に設けられる吸着用エア供給口から吸着切替ユニットまでの距離(エア管の経路長)が必然的に長くなる。そして、この吸着用エア供給口と吸着切替ユニットとの距離が長ければ長いほど、吸着切替ユニットをエア供給を停止している状態(エア供給停止状態)からエア供給可能な状態(エア供給可能状態)に切り替えた場合に、吸着用エア供給口から実際にエアが供給されるまでの時間、または吸着切替ユニットをエア供給可能状態からエア供給停止状態に切り替えた場合に、吸着用エア供給口からのエア供給が実際に停止されるまでの時間が掛かることになり、エンドエフェクタによる吸着動作のON・OFF切替の応答性が低下し得るという問題が考えられる。
【0007】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであって、主たる目的は、アームの制御性低下を効果的に抑制するとともに、吸着ON・OFF状態の切替応答性の向上を図ることが可能なリンク式ロボットアーム装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、複数のリンク要素から構成されたアームと、アームのうち最も基端側に配置した第1リンク要素を旋回軸により水平旋回可能に支持する基台とを備え、アームのうち最も先端側に配置されて吸着用エア供給口を有するエンドエフェクタによって搬送対象物を吸着保持可能なリンク式ロボットアーム装置に関するものである。
【0009】
ここで、「吸着用エア供給口」から供給されるエアは負圧または正の低圧の何れであってもよい。吸着用エア供給口から供給されるエアが負圧である場合は、吸引作用を利用して搬送対象物を吸着することができる。また、吸着用エア供給口から供給されるエアが低圧である場合は、吸着用エア供給口から吐出される低圧エアが搬送対象物とエンドエフェクタとの隙間に流れて、当該隙間の圧力を低下させて負圧として、大気圧との圧力差によって搬送対象物に働くエンドエフェクタ側に向かう力を利用して搬送対象物を吸着することができる。また、本発明において、エンドエフェクタはリンク要素の1つである。
【0010】
そして、本発明に係るリンク式ロボットアーム装置は、アームの内部に設けたエア管を介して吸着用エア供給口に接続され、吸着用エア供給口に吸着用エアを供給可能な状態(供給可能状態)と、吸着用エア供給口への吸着用エア供給を停止する状態(供給停止状態)との間で切替可能な吸着切替ユニットを備え、この吸着切替ユニットを、アームのうちアームの全長の半分よりも旋回軸に近い位置に付帯していることを特徴としている。ここで、「付帯」とは、アームの内部空間に配置した「内蔵」及びアームの内部空間外に配置した「外付け」の何れをも含む概念である。また、以下の説明では、「吸着用エア」、「吸着用エア供給口」をそれぞれ「エア」、「エア供給口」と称する場合がある。
【0011】
本発明のリンク式ロボットアーム装置は、吸着切替ユニットをアーム自体に付帯させているため、吸着切替ユニットが基台に設けられた従来の態様と比較して、アームの先端部に設けたエア供給口から吸着切替ユニットまでの距離(エア供給口と吸着切替ユニットを接続するエア管の経路長)を短く設定することができる。その結果、吸着切替ユニットを供給可能状態から供給停止状態に切り替えた際にエア供給口からのエア供給が実際に停止されるまでの時間、及び吸着切替ユニットを供給停止状態から供給可能状態に切り替えた際にエア供給口からエアが実際に供給されるまでの時間を効率良く短縮することができ、エンドエフェクタによる吸着保持機能を発揮する吸着ON状態と、エンドエフェクタによる吸着保持機能を発揮し得ない吸着OFF状態との間の切替反応速度が向上する。
【0012】
さらに、本発明のリンク式ロボットアーム装置は、アームのうちアーム長(アームの全長)の半分よりも旋回軸に近い位置に吸着切替ユニットを付帯させるという技術的思想を採用することによって、吸着切替ユニットをアームの先端部近傍領域に設けた態様であれば生じ得る不具合、すなわち、アームの先端部近傍領域に作用する負荷の増大に伴って、リンク要素を連結する各軸に作用する負荷も増大し、アーム全体の制御性能が大幅に低下し得るという不具合を効果的に抑制することができる。
【0013】
また、本発明のリンク式ロボットアーム装置において、吸着切替ユニットの好ましい配置箇所としては、アームのうち最も基端側に配置した第1リンク要素を挙げることができ、より具体的な好ましい配置箇所としては、第1リンク要素のうち当該第1リンク要素の全長の半分よりも旋回軸に近い位置を挙げることができる。このような配置箇所を選択した場合には、吸着切替ユニットの重量は各リンク要素同士を接続する軸には負荷とはならず、吸着切替ユニットの重量が負荷として作用する軸は旋回軸のみとなり、アームの制御性能が大きく低下する事態を回避することができる。
【0014】
また、本発明のリンク式ロボットアーム装置は、リンク要素同士の連結態様や、アームと基台との連結態様を特に限定するものではないが、高速なタクトタイム(生産工程の均等なタイミングを図るための工程作業時間)が要求される場合には、少なくとも第1リンク要素を旋回軸によって基台に水平旋回可能に連結していることが望ましい。このような連結態様を採用すれば、アームの基端側の小さい回転角度でアームの先端側を大きく回転させることができ、搬送対象物を所定の搬送場所へ効率良く搬送することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、吸着切替ユニットをアームのうちアーム長の半分よりも基端側(旋回軸側)に付帯させるという斬新な技術的思想を採用することによって、アームの制御性能低下を効果的に抑制するとともに、吸着ON・OFF状態の切替応答速度の向上を図ることが可能なリンク式ロボットアーム装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るリンク式ロボットアーム装置の全体概略図。
【図2】同実施形態に係るリンク式ロボットアーム装置全体を一部断面にして示す模式図。
【図3】図2の要部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態に係るリンク式ロボットアーム装置Xは、図1、図2及び図3に示すように、複数のリンク要素(第1リンク要素A、第2リンク要素B、エンドエフェクタC)から構成されたアーム1と、アーム1を支持する基台2とを備えたものである。
【0019】
アーム1は、アーム1のうち最も基端側(基台2側)に配置した第1リンク要素Aと、第1旋回軸J1を介して第1リンク要素Aの先端部に水平旋回可能に連結した第2リンク要素Bと、第2旋回軸J2を介して第2リンク要素Bの先端部に水平旋回可能に連結したエンドエフェクタCとを備えたものである。このアーム1は、各リンク要素(第1リンク要素A、第2リンク要素B、エンドエフェクタC)が各軸(第1旋回軸J1、第2旋回軸J2、後述するシータ軸J3)回りに旋回することによってアーム長1Lが最大になる伸長状態(図1参照)と、アーム長1Lが最小になる折畳状態(図示省略)との間で形状が変わるリンク構造(多関節構造)のものである。本実施形態では、第2リンク要素Bを第1リンク要素Aよりも相対的に上方に配置し、エンドエフェクタCを第2リンク要素Bよりも相対的に上方に配置している。したがって、折畳状態では、第1リンク要素A、第2リンク要素B及びエンドエフェクタCが重なり合った状態になる。なお、本発明及び本実施形態においてアーム1の「基端」側とは、伸長状態において基台2に近い側を意味し、アーム1の「先端」側とは、伸長状態において基台2から遠い側を意味する。
【0020】
本実施形態のリンク式ロボットアーム装置Xは、シータ軸J3(本発明の「旋回軸」に相当)を介してアーム1と基台2とを連結している。本実施形態では、シータ軸J3を介して第1リンク要素Aの基端部を基台2に連結している。
【0021】
第1リンク要素Aは、底壁部A11及び底壁部A11の外縁から上方に起立した起立壁部A12を有する第1リンク本体A1と、底壁部A11と対向する位置に設けられて第1リンク本体A1の上方に開口した開口部A13を蓋封する第1リンク蓋体A2とを備え、これら第1リンク本体A1と第1リンク蓋体A2とによって囲まれた内部空間ASを有するものである。なお、図1及び図2では、第1リンク蓋体A2を、相対的に第1リンク本体A1の基端側領域を被覆する蓋体A21と、相対的に第1リンク本体の先端部側領域を被覆する蓋体A22とから構成した態様を例示しているが、単一の蓋体のみで第1リンク蓋体A2を構成してもよい。
【0022】
また、第1リンク要素Aの底壁部A11における基端側には、シータ軸J3を配置する領域A3を形成している。なお、図示していないが、本実施形態では、シータ軸J3の下端部に、シータ軸用モータによって駆動・従動するシータ軸用プーリ及びシータ軸用ベルトを配置し、シータ軸J3のうちこれらシータ軸用プーリ及びシータ軸用ベルトに干渉しない上半部領域にシータ軸用ギアを一体回転可能に設けている。
【0023】
また、第1リンク蓋体A2(具体的には蓋体A22)の先端部には、第2リンク要素Bの基端部の形状に対応した切欠部A2aを形成し、この切欠部A2aに第2リンク要素Bの基端部を嵌合可能に構成している。
【0024】
第2リンク要素Bは、底壁部B11及び底壁部B11の外縁から上方に起立した起立壁部B12を有する第2リンク本体B1と、底壁部B11と対向する位置に設けられ、第2リンク本体B1の上方に開口した開口部B13を蓋封する第2リンク蓋体B2とを備え、これら第2リンク本体B1と第2リンク蓋体B2とによって囲まれた内部空間BSを有するものである。第2リンク要素Bの底壁部B11における基端側には、第1旋回軸J1を配置する領域B3を形成している。なお、図示していないが、本実施形態では、第1旋回軸J1の下端部に、第1旋回軸用モータによって駆動・従動する第1旋回軸用プーリ及び第1旋回軸用ベルトを配置し、第1旋回軸J1のうちこれら第1旋回軸用プーリ及び第1旋回軸用ベルトに干渉しない上半部領域に第1旋回軸用ギアを一体回転可能に設けている。
【0025】
また、第2リンク蓋体B2の先端部には、エンドエフェクタCの基端部の形状に対応した切欠部B2aを形成し、この切欠部B2aにエンドエフェクタCの基端部を嵌合可能に構成している。
【0026】
エンドエフェクタCは、先端部がフォーク状(図示例では二股状)をなすエンドエフェクタ本体C1と、エンドエフェクタ本体C1の基端部を支持し、第2リンク要素Bの先端部に直接固定される固定部C2とを備えたものである。本実施形態では、板状をなすエンドエフェクタ本体C1及び固定部C2の組を複数組(図示例では2組)積層したエンドエフェクタCを適用している。エンドエフェクタ本体C1の適宜箇所には吸着用エア供給口C3を形成している。本実施形態では、エンドエフェクタ本体C1のうち、先端部(フォーク部分の先端部)と、フォーク状に分岐していない部分にそれぞれ吸着用エア供給口C3を形成している。これら吸着用エア供給口C3は、アーム1の内部に設けたエア管(具体的には後述する第1エア管4)を介して吸着切替ユニット3に接続されている。なお、エア管4と供給口C3との接続は周知の手段や構造で実現することができる。また、エンドエフェクタ(エンドエフェクタ本体)の形状はフォーク状のものに限られず、他の適宜の形状のものであってもよい。
【0027】
吸着切替ユニット3は、吸着用エア供給口C3に吸着用エアを供給可能な状態(以下、「供給可能状態」と称する)と、吸着用エア供給口C3への吸着用エア供給を停止する状態(以下、「供給停止状態」と称する)との間で切替可能なものである。図1及び図2では、説明の便宜上、極めて概略的に示した吸着切替ユニット3にパターンを付している。
【0028】
そして、本実施形態のリンク式ロボットアーム装置Xは、伸長状態にあるアーム1のアーム長1Lの中間点1Cよりもシータ軸J3に近い位置に吸着切替ユニット3を設けている。具体的には、第1リンク要素Aのうち当該第1リンク要素Aの全長ALの半分ACよりもシータ軸J3に近い位置に吸着切替ユニット3を設けている。本実施形態では、第1リンク要素Aの底壁部A11上に吸着切替ユニット3を載置して固定した状態で第1リンク蓋体A2を第1リンク本体A1に取り付けることによって、吸着切替ユニット3を第1リンク要素A内(内部空間AS)に収容(内蔵)している。
【0029】
吸着切替ユニット3は、切替バルブ31を主体としてなり、複数の給排口(第1給排口32、第2給排口33)を備えたものである。第1給排口32には、先端を吸着用エア供給口C3に接続した第1エア管4の基端を接続し、第2給排口33には、リンク式ロボットアーム装置Xの外部に配置した図示しないエア供給源(本実施形態では真空ポンプ)に基端を接続した第2エア管5の先端を接続している。
【0030】
吸着用エア供給口C3と吸着切替ユニット3とを接続する第1エア管4は、アーム1の内部に這わせた状態で設けられている。本実施形態では、第1旋回軸J1及び第2旋回軸J2として軸心部を中空にした筒状のものを適用しており、第1エア管4はこれら第1旋回軸J1及び第2旋回軸J2の筒状中空部J1a,J2aを通過している。また、第1リンク要素A内(内部空間AS)及び第2リンク要素B内(内部空間BS)で第1エア管4がギアやモータ等の部品と干渉することを回避すべく、第1リンク要素A内や第2リンク要素B内における複数箇所で第1エア管4を保持(固定)している。好適な保持(固定)態様としては、タイマウント及び結束用バンド(タイケーブルとも称される)を用いた態様を挙げることができる。本実施形態では、図2に示すように、第1リンク要素A内において第1エア管4を底壁部A11近く(第1リンク要素Aの下部側)を通過させるとともに、第2リンク要素B内において第1エア管4を第2リンク蓋体B2近く(第2リンク要素Bの上部側)を通過させて、第1リンク要素A内及び第2リンク要素B内でエア管4が他の部品と干渉することを回避している。特に、第1リンク要素A及び第2リンク要素Bの内部空間AS,BSのうち幅方向(長手方向と直交する方向)中央領域はエア管4以外の部材を配置する密度が高くなる傾向があるため、本実施形態では、第1リンク要素A及び第2リンク要素Bの各起立壁部A12,B12に沿って第1エア管4を通している。
【0031】
基台2は、基台本体部21と、シータ軸J3を介してアーム1の基端部(第1リンク要素Aの基端部)を水平旋回可能に支持した状態で基台本体部21に対して昇降可能な昇降部22とを備えたものである。なお、図1では、基台本体部21のカバー21a、21bを外した状態を示している。昇降部22を昇降させる昇降機構23としては、種々のものを採用することができるが、本実施形態では、図1に示すように、基台本体部21に設けたリニアガイドレール231と、昇降部22に取り付けられてリニアガイドレール231に沿って上下動する可動子(図示省略)とを備えた昇降機構23を採用し、基台本体部21に設けた昇降用モータで昇降用プーリ及び昇降用ベルトを駆動・従動させて、基台本体部21に起立姿勢で配置したボールネジのネジ軸232を回転させ、このネジ軸232に対して螺合進退動作可能な可動子をリニアガイドレール231に沿って上下動させることによって、昇降部22を昇降移動可能に構成している。
【0032】
なお、吸着切替ユニット3の第2給排口33に先端を接続した第2エア管5は、第1リンク要素Aの内部空間AS、シータ軸J3の中空筒状部J3a、昇降部22の内部空間22S、図示しないケーブルベア、及び基台本体部21の内部空間21Sを通過して、リンク式ロボットアーム装置Xの外部に引き出され、図示しない真空ポンプに接続されている。
【0033】
このような構成を有するリンク式ロボットアーム装置Xは、シータ軸J3、第1旋回軸J1、第2旋回軸J2、これら各軸J1,J2周りに水平旋回する第1リンク要素A、第2リンク要素B、エンドエフェクタCを作動させてアーム1全体の形状(姿勢)を適宜変形させることができる。
【0034】
そして、本実施形態に係るリンク式ロボットアーム装置Xは、エンドエフェクタC上にウェーハ等の搬送対象物を保持して搬送する際に、吸着切替ユニット3を供給可能状態にして、エンドエフェクタCの吸着用エア供給口C3から供給される負圧エアによって搬送対象物をエンドエフェクタC上に吸引して保持することができる状態(吸着ON状態)になる。また、本実施形態に係るリンク式ロボットアーム装置Xは、吸着ON状態を維持したままアーム1を適宜変形させて搬送対象物を所定の搬送位置まで搬送した時点で、吸着切替ユニット3を供給可能状態から供給停止状態に切り替える。その結果、リンク式ロボットアーム装置Xは、エンドエフェクタCの吸着用エア供給口C3からの負圧エア供給動作を停止して搬送対象物の吸引保持状態を解除する状態(吸着OFF状態)になる。
【0035】
このように、本実施形態に係るリンク式ロボットアーム装置Xは、吸着切替ユニット3を供給可能状態と供給停止状態との間で切り替えることによって、吸着ON状態または吸着OFF状態となり、エンドエフェクタC上に吸着保持した搬送対象物を好適に搬送することができる。
【0036】
そして、本実施形態のリンク式ロボットアーム装置Xは、アーム長1Lの中間点1Cよりも基端側(基台2側)に配置されるリンク要素である第1リンク要素A内に吸着切替ユニット3を設けているため、吸着切替ユニット3を基台2に設ける態様と比較して、アーム1の先端部に設けた吸着用エア供給口C3から吸着切替ユニット3までの距離(エア供給口C3と吸着切替ユニット3との間に配置される第1エア管4の経路長)が短くなる。これにより、本実施形態のリンク式ロボットアーム装置Xは、吸着切替ユニット3の供給可能状態と供給停止状態との間の切替に応じて、エンドエフェクタCによる吸着保持機能を発揮する吸着ON状態とエンドエフェクタCによる吸着保持機能を発揮し得ない吸着OFF状態との間で瞬時に切り替わり、応答性が向上する。
【0037】
また、本実施形態のリンク式ロボットアーム装置Xは、吸着切替ユニット3を第1リンク要素Aに設けることによって、吸着切替ユニット3の重量が負荷として作用する軸がシータ軸J3のみとなるように構成しているため、吸着切替ユニット3をアーム1の先端部近傍領域に設けた態様であれば生じ得る不具合、すなわち、アーム1の先端部近傍領域に作用する負荷の増大に伴って、エンドエフェクタC、第2リンク要素B、第1リンク要素Aをそれぞれ回転可能に支持する各軸(第2旋回軸J2、第1旋回軸J1、シータ軸J3)及びこれら各軸J2,J1,J3を回転駆動させるモータ(第2旋回軸用モータ、第1旋回軸用モータ、シータ軸用モータ)に吸着切替ユニット3の重量が負荷として作用し、アーム1全体の制御性能低下を招来するという不具合を効果的に抑制することができる。特に、本実施形態では、第1リンク要素Aの全長ALの半分ACよりもシータ軸J3に近い位置に吸着切替ユニット3を設けているため、第1リンク要素Aの先端部側に吸着切替ユニット3を設ける態様と比べて、シータ軸J3に作用する負荷の軽減、及びシータ軸用モータの負荷イナーシャの軽減を有効に図ることができる。
【0038】
また、本実施形態に係るリンク式ロボットアーム装置Xは、アーム1の基端部である第1リンク要素Aの基端部をシータ軸J3によって水平旋回可能に構成しているため、シータ軸J3の少ない回転角度でアーム1の先端(エンドエフェクタC)側を大きく回転させることができ、速いタクトタイムが要求される場面にも好適に対応することができる。
【0039】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、吸着用エア供給口から低圧エアを供給するリンク式ロボットアーム装置であってもよい。この場合、吸着用エア供給口から吐出される低圧エアをエンドエフェクタの表面に沿って流すことで、搬送対象物とエンドエフェクタを近付けた際に、搬送対象物とエンドエフェクタとの隙間に負圧が生じ、大気圧との圧力差によって搬送対象物に働くエンドエフェクタ側に向かう力を利用して搬送対象物を吸着することができる。
【0040】
また、アームに対する吸着切替ユニットの配置箇所は、伸長状態におけるアーム長の中間位置(図2の「1C」に相当する位置)よりもシータ軸側に寄った位置であればよく、上述した実施形態で例示した配置箇所(第1リンク要素の全長の半分よりもシータ軸側に寄った位置)に限定されない。
【0041】
また、吸着切替ユニットとして、アームの内部空間に収容される内蔵型のものに代えて、アームの内部空間外に設けた外付け型のものを適用することもできる。
【0042】
また、アームを構成するリンク要素の数や長さは適宜変更してもよく、リンク要素同士を、水平旋回動作に代えて、或いは加えて、鉛直面内で旋回(回転)する(縦振り)動作可能に連結したり、スライド動作可能に連結してもよい。さらには、エンドエフェクタの形状、或いは吸着用エア供給口の数や形状等も適宜変更しても構わない。
【0043】
また、本発明のリンク式ロボットアーム装置Xで搬送可能な搬送対象物は、ウェーハに限らず、液晶等、他のものであってもよい。
【0044】
また、基台は、シータ軸を介してアームを旋回可能に支持するものであればよく、アームを昇降動作可能に支持するものでなくても構わない。
【0045】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…アーム
2…基台
3…吸着切替ユニット
4…エア管(第1エア管)
A…第1リンク要素
B…第2リンク要素
C…エンドエフェクタ
C3…吸着用エア供給口
J3…旋回軸(シータ軸)
X…リンク式ロボットアーム装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリンク要素から構成されたアームと、当該アームのうち最も基端側に配置した第1リンク要素を旋回軸によって旋回可能に支持する基台とを備え、前記アームのうち最も先端側に配置され且つ吸着用エア供給口を有するエンドエフェクタによって搬送対象物を吸着保持可能なリンク式ロボットアーム装置であって、
前記アームの内部に設けたエア管を介して前記吸着用エア供給口に接続され、吸着用エア供給口に吸着用エアを供給可能な状態と、吸着用エア供給口への吸着用エア供給を停止する状態との間で切替可能な吸着切替ユニットを備え、
当該吸着切替ユニットを、前記アームのうち当該アームの全長の半分よりも前記旋回軸に近い位置に付帯していることを特徴とするリンク式ロボットアーム装置。
【請求項2】
前記吸着切替ユニットを前記第1リンク要素に付帯している請求項1に記載のリンク式ロボットアーム装置。
【請求項3】
前記吸着切替ユニットを前記第1リンク要素のうち当該第1リンク要素の全長の半分よりも前記旋回軸に近い位置に付帯している請求項1又は2の何れかに記載のリンク式ロボットアーム装置。
【請求項4】
前記第1リンク要素を前記旋回軸によって前記基台に水平旋回可能に連結している請求項1乃至3の何れかに記載のリンク式ロボットアーム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−56035(P2012−56035A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202327(P2010−202327)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】