説明

レジスト積層体の形成方法

真空紫外領域の光線を利用するフォトリソグラフィープロセスにおいて充分な反射防止効果を有し、かつ現像プロセスにおいても充分な現像特性を有するレジスト積層体を形成する。(I)基板上にフォトレジスト層(L1)を形成する工程、および(II)フォトレジスト層(L1)上に、親水性基Yを有する含フッ素重合体(A)を含むコーティング組成物を塗布することにより反射防止層(L2)を形成する工程を含むフォトレジスト積層体の形成方法であって、含フッ素重合体(A)が親水性基Yを含有する含フッ素エチレン性単量体由来の構造単位を有し、さらに該含フッ素重合体(A)が、(i)親水性基YがpKaで11以下の酸性OH基を含むこと、(ii)フッ素含有率が50質量%以上であること、および(iii)含フッ素重合体(A)100g中の親水性基Yのモル数が0.14以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフォトレジスト層上に、反射防止層を設けてなるレジスト積層体の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、リソグラフィーにおけるデザインルールの微細化が求められており、そのため、レジストパターンの形成の際に使用する露光光源の短波長化が進んでいる。64MビットDRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)の量産プロセスにはKrFエキシマレーザー(248nm)が使用されたが、256Mや1Gビット以上のDRAMの製造には、より短波長なArF(193nm)エキシマレーザーが露光源として使用される。また、近年、更なる微細化を目指して、より短波長なF(157nm)レーザーも新たな露光光として検討されている。
【0003】
これらリソグラフィーの露光系としては単色光と屈折光学系レンズの組み合わせが主流であるが、露光時において入射する光と基盤からの反射光とが干渉し定在波が発生するため、パターン線幅などの寸法変動や形状の崩れなどが起っている。特に、段差を有する半導体基盤上に微細なレジストパターンを形成する場合には、この定在波による寸法変動や形状の崩れが著しい(定在波効果)。
【0004】
従来、この定在波効果を抑える方法として、レジスト材料に吸光剤を入れる方法、レジスト層上面に反射防止層を設ける方法(ARCOR法。特開昭60−38821号公報、特開昭62−62520号公報、特開昭62−62521号公報)や、レジスト下面に反射防止層を設ける方法(BARC法。特開昭62−159143号公報)が提案された。この中でARCOR法は、レジスト上面に透明な上層反射防止膜を形成し、露光後剥離する工程を含む方法であり、その簡便な手法で繊細かつ寸法精度、特に合わせ精度の高いパターンを形成する方法である。
【0005】
BARC法でも高い反射防止効果を得ることができるが、下地に段差がある場合は、段差上で反射防止膜の膜厚が大きく変動し大きく反射率が変動する点、膜厚の変動を抑えるため反射防止膜の膜厚を厚くすると反射率が上昇する点などの欠点を持つため、フォトレジスト層の上面に設けられる上層反射防止膜との併用が望まれている。また、上層反射防止膜は本来の反射防止機能だけでなく、露光後の現像液との親和性を上げることにより現像欠陥を防止するといった機能、あるいは環境遮断膜としての機能も有しており、今後ますます重要な材料になる。
【0006】
当初、ARCOR法に用いる反射防止膜材料として屈折率が低いパーフルオロポリエーテルが検討されたが、希釈剤や剥離剤として含フッ素炭化水素系溶剤を用いねばならず、コストがかさみ、また成膜性にも問題があり、実用面でデメリットがあった。
【0007】
この難点を克服するため、現像液として用いられるアルカリ水溶液やリンス液として用いられる純水で容易に剥離できるフッ素系の反射防止膜材料が開発されてきた(特開平5−188598号公報、特開平6−41768号公報、特開平6−51523号公報、特開平7−234514号公報、特開平8−305032号公報、特開平8−292562号公報、特開平11−349857号公報、特開平11−352697号公報)。
【0008】
これらは主に、非フッ素系のバインダーポリマーであるポリビニルピロリドンやポリビニルアルコールなどの水溶性高分子と、低分子量の含フッ素アルキルスルホン酸、含フッ素アルキルカルボン酸とそのアミン塩、またさらに主鎖末端がスルホン酸、カルボン酸またはそれらのアミン塩である高分子量の含フッ素ポリエーテルとからなる組成物である。
【0009】
しかし、低分子量の含フッ素アルキルスルホン酸、含フッ素アルキルカルボン酸やそれらのアミン塩を用いた場合、分子量が小さいためレジスト層中に拡散してしまい、レジストのパターンプロファイルが劣化するという欠点がある。
【0010】
また、主鎖末端がスルホン酸、カルボン酸またはそれらのアミン塩である高分子量の含フッ素ポリエーテルを用いた場合、拡散を防ぐために充分な高分子量では水溶性が低下するかまたは不溶になるという欠点があり、また、成膜性も悪化する。
【0011】
さらにKrF用に開発されたポリビニルピロリドンをバインダーポリマーとして用いる反射防止膜では、ポリビニルピロリドンがArFエキシマレーザーの露光波長における屈折率が高く、また露光光の透過率が低いため、ArFレジスト用の反射防止膜材料としては不適である。
【0012】
一方、これらの欠点を補うために、フッ素系高分子の側鎖にスルホン酸またはそのアミン塩を有する含フッ素重合体(特開2001−194798号公報、特開2001−200019号公報)やカルボン酸のフッ素化アルキルアミン塩またはアルカノールアミン塩をカウンターイオンとして有するパーフルオロ化合物を用いた反射防止膜用組成物が開発されてきた(特開2001−133984号公報)。
【0013】
これらのうち側鎖にスルホン酸やそのアミン塩を用いたフッ素系の反射防止膜材料では(特開2001−194798号公報、特開2001−200019号公報)、スルホン酸およびそのアミン塩の酸性度が強すぎて、現像後のレジストパターン表層部が丸くなりエッチング工程で問題になる点、未露光部の表層も化学増幅反応を起こして膜減りする点、また酸成分の影響で素子製造装置類が腐食され錆びなどが発生し製品不良を引き起こす点などの問題がある。
【0014】
一方、カルボン酸のフッ素化アルキルアミン塩またはアルカノールアミン塩をカウンターイオンとして有するパーフルオロ化合物を用いたフッ素系の反射防止膜材料(特開2001−133984号公報)では、フッ素含有率が低く、実用上充分な低屈折率が得られない。また、単量体中に含有される親水性基量が少ないために、レジスト現像液や水系溶媒に対する溶解性(=溶解速度)が非常に低い点、さらには成膜性が悪いといった欠点がある。
【0015】
また、カルボキシル基の含有比率の高い含フッ素重合体を用いた反射防止膜用組成物(特開平11−124531号公報、特開2004−37887号公報)が検討されているが、これらではカルボキシル基含有含フッ素重合体として分子量の低いものを得ているだけで、低分子量の含フッ素重合体を用いてレジスト用反射防止膜用組成物の検討を行っている。
【0016】
これら低分子量の含フッ素重合体は水に対する溶解性が不十分であり、アミン類や界面活性剤などの添加が必要となり、それによって反射防止被膜の屈折率を低下させたり、透明性を低下させてしまう問題点がある。
【0017】
またさらには、可溶化させるため水にアルコール類等の水溶性有機溶媒を大量に混合させる必要が生じ、その結果、レジスト膜上に塗布する際にレジスト層と反射防止層の界面がインターミキシングしてしまい充分な反射防止効果が得られなくなってしまう。
【0018】
したがって、これらの問題点を改善し、実用的な水溶性を有する上層反射防止膜材料、特にArF用、F用フォトレジストの上層反射防止膜材料が渇望されているのが現状である。
【0019】
このように従来の反射防止膜材料に使用される重合体は屈折率が高く、パターン形成における効果が充分得られなかった。
【0020】
一方、従来の材料は屈折率が低いものであっても水溶性が不充分であったために、フォトレジスト層上に反射防止層を形成する際、重合体を含むコーティング組成物に有機溶剤を使用する必要が生じ、フォトレジスト層と反射防止層とがインターミキシングしてしまい、それらの界面が不明確になり、パターン形成において低屈折率による充分な効果を発揮できなくなってしまっていた。また現像液溶解性(溶解速度)も不充分であり、従来の現像プロセスでは反射防止層を除去できなかったり、現像プロセスにおける露光部のレジスト層除去工程でも反射防止層をスムーズに除去できないこともある。
【0021】
本発明は、より低屈折率で、かつ現像液溶解性に優れた含フッ素重合体からなるレジスト用反射防止膜をフォトレジスト層上に設けることで、特に真空紫外領域の光線を利用するフォトリソグラフイープロセスにおいて充分な反射防止効果を有し、かつその中の現像プロセスにおいても充分な現像特性を有するレジスト積層体を形成することを課題とする。
【発明の開示】
【0022】
本発明者らは、親水性基を有する種々の含フッ素重合体を検討した結果、低屈折率性と水または現像液(2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド水溶液)に対する溶解性とを両立できる含フッ素重合体を見出すことができ、さらにフォトレジスト層にこの含フッ素重合体からなる反射防止層を設けることで、フォトリソグラフィーの露光プロセスにおいて良好な反射防止効果を発揮でき、なおかつ現像プロセスにおいても容易に反射防止層を除去できることを見出した。
【0023】
すなわち本発明の形成方法は、
(I)基板上にフォトレジスト層(L1)を形成する工程、および
(II)フォトレジスト層(L1)上に、親水性基Yを有する含フッ素重合体(A)を含むコーティング組成物を塗布することにより反射防止層(L2)を形成する工程
を含むフォトレジスト積層体の形成方法であって、
含フッ素重合体(A)が親水性基Yを含有する含フッ素エチレン性単量体由来の構造単位を有し、さらに該含フッ素重合体(A)が、
(i)親水性基YがpKaで11以下の酸性OH基を含むこと
(ii)フッ素含有率が50質量%以上であること、および
(iii)含フッ素重合体(A)100g中の親水性基Yのモル数が0.14以上であること
を特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のフォトレジスト積層体の形成方法を説明するための工程図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
はじめに、本発明のフォトレジスト積層体の形成方法において反射防止層(L2)を構成する含フッ素重合体(A)について述べる。
【0026】
本発明において反射防止層(L2)に用いる含フッ素重合体(A)は親水性基Yを有する。この親水性基Yは親水性基Yを有する含フッ素エチレン性単量体を重合することにより、含フッ素重合体(A)の構造単位の一部として導入したものである。
【0027】
つまり親水性基Yを有する含フッ素エチレン性単量体の繰返し単位(構成単位)を有することが重要である。それによって特に、低屈折率と水溶性または現像液溶解性(溶解速度)を両立でき、さらに薄層の反射防止被膜としたとき、自立膜として良好な機械的強度を付与できる。
【0028】
特に、含フッ素重合体(A)を構成する構造単位のなかで、親水性基Yを有する構造単位は、親水性基Yを有する含フッ素エチレン性単量体を重合して得られる構造単位のみで実質的に構成されることが好ましく、それによって、良好な水溶性または現像液溶解性(溶解速度)を維持しながらさらに低屈折率化を達成できる。
【0029】
含フッ素重合体(A)を構成する親水性基Yを有する含フッ素エチレン性単量体由来の構造単位における親水性基Yは、pKaで11以下の酸性OH基を含む親水性基である。
【0030】
具体的には、
【0031】
【化1】

【0032】
などの酸性OH基を含有する親水性基であり、その中でpKaが11以下の酸性を示すものである。
【0033】
なかでも、−OH、−COOHが透明性、低屈折率性に優れる点において好ましい。
【0034】
一方、−SOHおよび−P(=O)(OH)は、それらを有する含フッ素重合体をフォトレジスト層(L1)上に形成した場合、フォトレジストの種類によっては、酸強度が強すぎたりまたは酸の拡散などによるパターン形状への悪影響や未露光部での過度の膜減りなどが生ずることがあり、注意を要する。
【0035】
これら親水性基Y中の酸性OH基はpKaで11以下のものであり、好ましくは10以下、より好ましくは9以下である。
【0036】
親水性基Yが−OHの場合は、pKaを11以下の酸性とするためには、−OHに直接結合する炭素原子に含フッ素アルキル基または含フッ素アルキレン基を結合させることが好ましく、具体的には、下式:
【0037】
【化2】

【0038】
(式中、Rfは炭素数1〜10のエーテル結合を有していても良い含フッ素アルキル基;RはH、炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のエーテル結合を有していても良い含フッ素アルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種)で表される部位を有することが好ましい。
【0039】
はなかでも炭素数1〜10のエーテル結合を有していても良い含フッ素アルキル基であることが好ましい。
【0040】
さらには、Rf、Rは共にパーフルオロアルキル基であることが好ましく、具体的には、
【0041】
【化3】

【0042】
などの部位が好ましい。
【0043】
またさらには、下式:
【0044】
【化4】

【0045】
(式中、Rfは炭素数1〜10のエーテル結合を有していても良い含フッ素アルキル基;RはH、炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のエーテル結合を有していても良い含フッ素アルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種)で表される部位を有するものが、水溶性、現像液溶解性の面でより好ましい。
【0046】
具体的には、
【0047】
【化5】

【0048】
などの部位を有するものが好ましい。
【0049】
上記例示の−OHを含む部位中の酸性OH基は、pKaで11以下を達成できるものであり、好ましい。
【0050】
また、−COOH中の酸性OH基は周辺の構造に関わらず、pKaで11以下を達成できるものであり、具体的にはpKaで6以下、より好ましくは5以下のものである。
【0051】
親水性基Y中の酸性OH基のpKaの下限は1、好ましくは2、より好ましくは3である。pKaが低すぎると下層のフォトレジスト層(L1)の種類によっては、酸強度が強すぎたり、または酸の拡散などによるパターン形状への悪影響や、未露光部での過度の膜減りなどが生ずることがある。
【0052】
これら例示の−OH基含有親水性基は特に透明性に優れ、低屈折率である面で好ましく、−COOH基含有親水性基は水溶性、現像液溶解性の面で特に好ましい。
【0053】
なかでも−COOH基は、水溶性、現像液溶解性に優れ、193nm以上の波長での透明性を有する点でArFまたはKrFフォトリソグラフィープロセスにおける反射防止膜として有用でありとくに好ましい。
【0054】
本発明の反射防止層(L2)に用いる含フッ素重合体(A)のフッ素含有率は50質量%以上であり、それを下回るものは、露光時に200nm以下の真空紫外領域の光線を用いるフォトリソグラフィープロセスにおいてはその波長で測定した屈折率が高くなりすぎ、反射防止効果が充分に得られず、定在波効果や多重反射効果によるレジストパターンへの悪影響に対する改善効果が不充分となる。
【0055】
含フッ素重合体(A)のフッ素含有率の好ましくは、55質量%以上、より好ましくは57.5質量%以上である。それによって、例えば193nmでの屈折率を1.46以下とすることができ、また1.44以下、さらには1.42以下とすることができるため好ましい。
【0056】
フッ素含有率の上限は70質量%であり、好ましくは65質量%、より好ましくは62.5質量%、特には60質量%である。フッ素含有率が高すぎると、形成される被膜の撥水性が高くなり過ぎて現像液溶解速度を低下させたり、現像液溶解速度の再現性を悪くしたりすることがある。
【0057】
さらに本発明において、反射防止層(L2)に親水性基Yの含有率が特定量以上のもの、つまり従来のものに比べて高い親水性基含有率の含フッ素重合体を用いることが重要である。
【0058】
具体的には含フッ素重合体(A)100g中の親水性基Yのモル数が0.14以上のものであり、それによって水溶性、現像液溶解性(溶解速度)において良好なものとなり、実用的なものとなり得る。
【0059】
含フッ素重合体(A)100g中の親水性基Yのモル数が0.14を下回ると水または現像液に対して不溶になるか、あるいは現像液には溶解しても現像プロセス時の溶解速度が低く、フォトリソグラフィープロセスにおいて実用性が不充分なものとなる。
【0060】
好ましくは、含フッ素重合体(A)100g当たりの親水性基Yのモル数は0.21以上、より好ましくは0.22以上である。
【0061】
親水性基Yの含有率(モル数)の上限は、含フッ素重合体(A)100g当たり0.5、より好ましくは0.45、さらに好ましくは0.4である。親水性基Yの含有率が高くなりすぎると、特に真空紫外領域での透明性が低下し屈折率が高くなる場合がある。
【0062】
特に、親水性基Yがカルボキシル基(−COOH)の場合は、含有量を増やしすぎると193nm波長での透明性や屈折率が悪化する(高くなる)傾向が高く、100g当たりの−COOH基の好ましいモル数は0.14〜0.40、より好ましくは0.21〜0.29、特に好ましくは0.22〜0.28である。これらの−COOH基含有量とすることで、含フッ素重合体の水溶性と低屈折率性および透明性を両立できるものである。
【0063】
また、本発明者らは、上記−COOH基を高い含有量で含み、さらに高フッ素含有率の含フッ素重合体に関し、水溶性の更なる向上について検討した結果、特定の数平均分子量を有する含フッ素重合体を用いることで良好な水溶性を有することを見いだした。
【0064】
それによって、水とアルコール系溶剤の混合溶剤によって可溶化させる場合においても、アルコール系溶剤の混合比率を低下させることができ、コーティング組成物をレジスト被膜上にオーバーコートする際に起こる、界面のインターミキシングなどによる反射防止効果の悪化を防止できる。
【0065】
また、さらに水との組成物とした時、長期保存においても安定的に水溶性を維持できることを見いだせた。また、酸性物質、界面活性剤および有機溶剤、その他添加物などの添加においても良好な溶解性を示すことも見いだせた。
【0066】
つまり上記−COOH基含有含フッ素重合体の数平均分子量は、10000〜750000、好ましくは20000〜500000、より好ましくは31000〜300000、特に好ましくは40000〜200000である。
【0067】
数平均分子量が低すぎると、水溶性を低下させたり、一旦、水溶化できていても、水溶液の安定性が不十分となり、保存や他の添加物の添加により、含フッ素重合体が部分的に沈降、析出または白濁してしまう。
【0068】
一方、数平均分子量が高すぎると、反射防止被膜の成膜性を悪化させるため好ましくない。
【0069】
本発明のフォトレジスト積層体の形成方法において、上記の親水性基Yの種類(i)と含有量(iii)およびフッ素含有率(ii)を満たす含フッ素重合体(A)を反射防止層(L2)に用いることで、従来のフォトレジストプロセスにおいても実用的に適応でき、かつ定在波効果や多重反射効果によるレジストパターンへの悪影響を改善できるものである。
【0070】
親水性基含有含フッ素重合体(A)の具体例の好ましい第一は、式(M−1):
−(M1)−(N1)− (M−1)
〔式中、構造単位M1は式(1):
【0071】
【化6】

【0072】
(式中、X、Xは同じかまたは異なりHまたはF;XはH、F、Cl、CHまたはCF;X、Xは同じかまたは異なりHまたはF;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基に親水性基Yが1〜4個結合した1価の有機基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基に親水性基Yが1〜4個結合した1価の有機基;a、bおよびcは同じかまたは異なり0または1)で表される含フッ素単量体由来の構造単位;構造単位N1は前記式(1)の含フッ素単量体と共重合可能な単量体由来の構造単位]であり、構造単位M1が30〜100モル%、構造単位N1が0〜70モル%の含フッ素重合体である。
【0073】
式(1)の含フッ素単量体は、側鎖に含フッ素アルキル基を含む1価の有機基Rfを有し、そのRf基に1〜4個の親水性基Yが結合していることを特徴とし、式(1)の含フッ素単量体自体で親水性基Yと多くのフッ素原子を含有することから、それを用いた重合体に低屈折率性と水溶性および現像液溶解性を両立させることができる。
【0074】
式(1)の含フッ素単量体におけるRfは、好ましくは親水性基が1〜4個結合した炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または親水性基が1〜4個結合した炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基であるが、親水性基Yは通常、1個有するものが好ましい。
【0075】
また、Rfとしては親水性基が結合した炭素数1〜40のパーフルオロアルキル基または親水性基が結合した炭素数2〜100のエーテル結合を有するパーフルオロアルキル基が、重合体をより低屈折率にすることができる点で好ましい。
【0076】
親水性基Yとしては、具体的には前述の例示のものが同様に好ましい。
【0077】
また、式(1)の含フッ素単量体は、それ自体、重合性が良好であり、それ自体の単独重合または、その他の含フッ素エチレン性単量体との共重合が可能である点でも好ましい。
【0078】
式(1)の親水性基Yを有する含フッ素エチレン性単量体の具体的に好ましい第一は、式(2):
【0079】
【化7】

【0080】
(式中、X、X、X、X、X、a、cおよびYは前記式(1)と同じ;Rfは炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する2価の含フッ素アルレン基)で表される単量体であり、これらは特に重合性が良好であり、それ自体の単独重合または、その他の含フッ素エチレン性単量体との共重合が可能である点で好ましい。
【0081】
式(2)の親水性基Yを有する含フッ素エチレン性単量体は、具体的には、式(2−1):
CH=CFCF−O−Rf−Y (2−1)
(式中、Rfは前記式(2)と同じ)で表される含フッ素エチレン性単量体があげられる。
【0082】
式(2−1)の単量体は、具体的には、
【0083】
【化8】

【0084】
(式中、ZはFまたはCF;Z、ZはHまたはF;ZはH、FまたはCF;p1+q1+r1が0〜10の整数;s1は0または1;t1は0〜5の整数、ただし、Z、ZがともにHの場合、p1+q1+r1+s1が0でない)で表される含フッ素エチレン性単量体であり、これらは、それ自体の単独重合性に優れ、含フッ素重合体に親水性基Yをより数多く導入でき、その結果、反射防止層(L2)に低屈折率性と優れた水溶性・現像液溶解性を付与できる点で好ましい。
【0085】
また、テトラフルオロエチレンやフッ化ビニリデンなどの含フッ素エチレン類との共重合性も高く、反射防止層(L2)に低屈折率性を付与できる。
【0086】
さらに具体的には、
【0087】
【化9】

【0088】
などが好ましく挙げられ、なかでも
【0089】
【化10】

【0090】
であることが好ましい。
【0091】
式(2)の親水性基Yを有する含フッ素エチレン性単量体は、さらに式(2−2):
CF=CF−O−Rf−Y (2−2)
(式中、Rfは前記式(2)と同じ)で表される含フッ素エチレン性単量体があげられる。
【0092】
式(2−2)の単量体は、具体的には、
【0093】
【化11】

【0094】
(式中、ZはFまたはCF;ZはHまたはF;ZはHまたはF;p2+q2+r2が0〜10の整数;s2は0または1;t2は0〜5の整数)で表される含フッ素エチレン性単量体であり、これらは、テトラフルオロエチレンやフッ化ビニリデンなどの含フッ素エチレン類との共重合性も高く、反射防止層(L2)に低屈折率性を付与できる。
【0095】
式(2−2)の単量体は、さらに具体的には、
【0096】
【化12】

【0097】
などが好ましく挙げられる。
【0098】
式(2)の親水性基Yを有する他の含フッ素エチレン性単量体としては、
【0099】
【化13】

【0100】
(式中、Rfは前記式(2)と同じ)で表される含フッ素エチレン性単量体が挙げられ、具体的には、
【0101】
【化14】

【0102】
などが挙げられる。
【0103】
これらの例示の含フッ素単量体における親水性基Yとしては、前述の例示の親水性基が好ましく挙げられるが、特に好ましくは−OH、−COOHであり、特には−COOHが好ましい。
【0104】
式(1)の親水性基Yを有する含フッ素エチレン性単量体の具体的に好ましい第二は、式(3):
【0105】
【化15】

【0106】
(式中、X、X、X、X、Xおよびaは前記式(1)と同じ;Rfは炭素数1〜10のエーテル結合を有しても良い含フッ素アルキル基;RはH、炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のエーテル結合を有しても良い含フッ素アルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種)で表される含フッ素エチレン性単量体である。
【0107】
これらを用いた含フッ素重合体は、特に透明性および低屈折率性に優れ、反射防止層(L2)に用いた場合、極微細パターン形成時において特に効果的である。
【0108】
式(3)の含フッ素単量体は、具体的には、
【0109】
【化16】

【0110】
(式中、Rf、Rは式(3)と同じ)などが好ましく挙げられ、さらに具体的には、
【0111】
【化17】

【0112】
が好ましく挙げられる。
【0113】
本発明の反射防止層(L2)に用いる式(M−1)の含フッ素重合体は式(1)の親水性基を有する含フッ素単量体の単独重合体であっても、その他の単量体との共重合体であっても良い。
【0114】
式(1)の単量体のうち単独重合可能な単量体の場合は、単独重合体である方が、反射防止層(L2)の現像液溶解速度を向上させることが可能であるためより好ましい。
【0115】
また共重合体とする場合、共重合成分の構造単位(N1)は適宜選択できるが、現像液溶解性を維持する範囲で屈折率を低く設定する目的で選択するのが好ましく、具体的には、含フッ素エチレン性単量体由来の構造単位の中から選択される。
【0116】
なかでも、つぎの(N1−1)および(N1−2)の構造単位から選ばれるものが好ましい。
(N1−1)炭素数2または3のエチレン性単量体であって、少なくとも1個のフッ素原子を有する含フッ素エチレン性単量体由来の構造単位:
この構造単位N1−1は、現像液溶解性を低下させずに効果的に屈折率を低くできたり、透明性を改善できる点で好ましい。また、反射防止層の被膜強度を改善できる点でも好ましい。
【0117】
具体的には、
CF=CF、CF=CFCl、CH=CF、CFH=CH、CFH=CF、CF=CFCF、CH=CFCF、CH=CHCFなどが挙げられ、なかでも、共重合性が良好でかつ透明性、低屈折率性を付与する効果が高い点で、テトラフルオロエチレン(CF=CF)、クロロトリフルオロエチレン(CF=CFCl)、フッ化ビニリデン(CH=CF)が好ましい。
【0118】
(N1−2)式(n1−2):
【0119】
【化18】

【0120】
(式中、X、X、X、X、X、aおよびcは前記式(1)と同じ;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される単量体由来の構造単位:
この構造単位は、効果的に屈折率を低くしたり、透明性を改善できる点で好ましい。
【0121】
具体的には、
CH=CFCF−O−Rf
CF=CF−O−Rf
CF=CFCF−O−Rf
CF=CF−Rf
CH=CH−Rf
CH=CH−O−Rf
(式中、Rfは前記式(n1−2)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0122】
式(M−1)の含フッ素重合体における各構造単位の存在比率は、前記の好ましいフッ素含有率および親水性基含有率に応じて適宜選択されるが、好ましくは構造単位M1が30〜100モル%、構造単位N1が0〜70モル%であり、さらに好ましくは構造単位M1が40〜100モル%、構造単位N1が0〜60モル%、より好ましくは構造単位M1が50〜100モル%、構造単位N1が0〜50モル%、特に好ましくは構造単位M1が60〜100モル%、構造単位N1が0〜40モル%である。
【0123】
式(M−1)の含フッ素重合体の分子量は、数平均分子量で1000〜1000000、好ましくは2000〜200000、より好ましくは3000〜100000であり、特には5000〜50000である。
【0124】
分子量が低すぎると反射防止層(L2)の被膜の強度が低くなりすぎたり、また下層のフォトレジスト層(L1)へ含フッ素重合体自体が浸透してしまうなどの問題が生じることがある。また、反射防止層の成膜性が悪くなって均一な薄膜形成が困難となることもある。
【0125】
本発明の反射防止層(L2)に用いる含フッ素重合体(A)の好ましい第二は、式(M−2):
−(M2)−(N2)− (M−2)
[式中、構造単位M2は親水性基Yとして−COOHを含む式(4):
【0126】
【化19】

【0127】
(式中、X、Xは同じかまたは異なりHまたはF;XはH、F、Cl、CHまたはCFであり、ただし、X、X、Xの少なくとも1つはフッ素原子を含む)で表される含フッ素単量体由来の構造単位;構造単位N2は前記式(4)の含フッ素単量体と共重合可能な単量体由来の構造単位]で表され、構造単位M2が10〜100モル%、構造単位N2が0〜90モル%の含フッ素重合体である。
【0128】
この含フッ素重合体は、親水性基Yとして−COOHを含む含フッ素単量体である含フッ素アクリル酸由来の構造単位を水溶性・現像液溶解性を付与する成分として含むもので、特に水溶性・現像液溶解性に優れたものとなる点で好ましい。
【0129】
式(4)の含フッ素単量体は、具体的には、
【0130】
【化20】

【0131】
が挙げられ、なかでも
【0132】
【化21】

【0133】
が重合性が良好な点で好ましい。
【0134】
本発明の反射防止層(L2)に用いる含フッ素重合体(M−2)は、式(4)の含フッ素単量体の単独重合体であっても良いが、通常、共重合により任意の構造単位N2を含有させることが好ましい。
【0135】
共重合成分の構造単位N2は、適宜選択できるが、現像液溶解性を維持する範囲で屈折率を低く設定する目的で選択するのが好ましく、具体的には、つぎの含フッ素エチレン性単量体由来の構造単位の中から選択される。
【0136】
(N2−1)含フッ素アクリレート系単量体由来の構造単位:
具体的には、式(n2−1):
【0137】
【化22】

【0138】
(式中、XはH、FまたはCH;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される含フッ素アクリレート単量体由来の構造単位であることが好ましく、これらは式(4)の含フッ素単量体との共重合性が高く、含フッ素重合体に低屈折率性を付与できる点で好ましい。
【0139】
式(n2−1)の含フッ素アクリレートにおいて、Rf基は、
【0140】
【化23】

【0141】
(式中、d3は1〜4の整数;e3は1〜10の整数)などが挙げられる。
【0142】
(N2−2)含フッ素ビニルエーテル系単量体由来の構造単位:
具体的には、式(n2−2):
CH=CHO−Rf (n2−2)
(式中、Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される含フッ素ビニルエーテル由来の構造単位であることが好ましく、これらは式(4)の含フッ素単量体との共重合性が高く、含フッ素重合体に低屈折率性を付与できる点で好ましい。
【0143】
式(n2−2)の単量体は、具体的には、
【0144】
【化24】

【0145】
(式中、e6は1〜10の整数)などが好ましく挙げられる。
【0146】
より具体的には、
【0147】
【化25】

【0148】
などの単量体由来の構造単位が挙げられる。
【0149】
その他、つぎの構造単位(N2−3)や(N2−4)も挙げられる。
【0150】
(N2−3)式(n2−3):
CH=CHCHO−Rf (n2−3)
(式中、Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される含フッ素アリルエーテル由来の構造単位。
【0151】
(N2−4)式(n2−4):
CH=CH−Rf (n2−4)
(式中、Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される含フッ素ビニル単量体由来の構造単位。
【0152】
これらは含フッ素重合体に低屈折率性を付与できる点で好ましい。
【0153】
式(n2−3)、(n2−4)の単量体は、具体的には、
【0154】
【化26】

【0155】
などの単量体由来の構造単位が挙げられる。
【0156】
式(M−2)の含フッ素重合体における各構造単位の存在比率は、前記の好ましいフッ素含有率および親水性基含有率に応じて適宜選択されるが、好ましくは構造単位M2が10〜100モル%、構造単位N2が0〜90モル%であり、さらに好ましくは構造単位M2が20〜80モル%、構造単位N2が20〜80モル%、より好ましくは構造単位M2が30〜70モル%、構造単位N2が30〜70モル%、特に好ましくは構造単位M2が40〜60モル%、構造単位N2が40〜60モル%である。
【0157】
構造単位M2の存在比率が低すぎると、水溶性・現像液溶解性が不充分となり、構造単位M2の存在比率が高くなりすぎると、屈折率が高くなりすぎるため好ましくない。
【0158】
式(M−2)の含フッ素重合体の分子量は、数平均分子量で1000〜1000000、好ましくは2000〜200000、より好ましくは3000〜100000であり、特には、5000〜50000である。
【0159】
分子量が低すぎると反射防止層(L2)の被膜の強度が低くなりすぎたり、また下層のフォトレジスト層(L1)へ含フッ素重合体自体が浸透してしまうなどの問題が生じることがある。また、反射防止層の成膜性が悪くなって均一な薄膜形成が困難となることもある。
【0160】
本発明の反射防止層(L2)に用いる含フッ素重合体(A)の好ましい具体例は、つぎの式(M−1−1)、式(M−1−2)および式(M−2−1)で表される含フッ素重合体が挙げられる。
式(M−1−1):
−(M1−1)− (M−1−1)
[式中、構造単位M1−1は式(2−1):
CH=CFCF−O−Rf−Y (2−1)
(式中、Rfは前記式(2)と同じ)で表される単量体由来の構造単位]
で表され、数平均分子量で1000〜200000の含フッ素重合体である。つまり、式(2−1)の単量体から選ばれる1種または2種以上の単量体からなる、含フッ素アリルエーテル単独重合体である。これらは高いフッ素含有率と、高い親水性基含有率を両立できるため、低屈折率と現像液溶解性に優れる点で好ましい。
式(M−1−2):
−(M1−2)−(N1−1)− (M−1−2)
[式中、構造単位M1−2は式(3):
【0161】
【化27】

【0162】
(式中、X、X、X、X、X、Rf、Rおよびaは前記式(3)と同じ)で表される単量体由来の構造単位;構造単位N1−1は炭素数2または3のエチレン性単量体であって、少なくとも1個のフッ素原子を有する含フッ素エチレン性単量体由来の構造単位]で表され、構造単位M1−1を30〜70モル%、構造単位N1−1を30〜70モル%含み、数平均分子量が1000〜200000の含フッ素重合体である。
【0163】
構造単位M1−2は式(3)の単量体の中で、前述の例示のものが同様に好ましく、なかでも
【0164】
【化28】

【0165】
(式中、Rf、Rは式(3)と同じ)で表される単量体から選ばれる単量体由来の構造単位であることが好ましい。
【0166】
構造単位N1−1は、上記のなかでもテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンから選ばれる単量体由来の構造単位であることが好ましい。
【0167】
これらは、特に真空紫外領域の光に対して透明性が高く、かつ屈折率を低く設定できる点で好ましい。
【0168】
式(M−2−1):
−(M2)−(N2−2)− (M−2−1)
[式中、構造単位M2が式(4):
【0169】
【化29】

【0170】
(式中、X、XおよびXは前記式(4)と同じ)で表される単量体由来の構造単位;構造単位N2−2は式(n2−2):
CH=CHO−Rf (n2−2)
(式中、Rfは前記式(n2−2)と同じ)で表される単量体由来の構造単位]で表され、構造単位M2を30〜70モル%、構造単位N2−2を30〜70モル%含み、数平均分子量が1000〜200000の含フッ素重合体である。
【0171】
構造単位M2は式(4)の単量体の中で、前述の例示のものが同様に好ましく、なかでも特に、
【0172】
【化30】

【0173】
が好ましい。
【0174】
構造単位N2−2は式(n2−2)の単量体の中で、前述の例示のものが同様に好ましく、なかでも
【0175】
【化31】

【0176】
(式中、ZはHまたはF;e4は1〜10の整数)で表される単量体由来の構造単位であることが好ましい。
【0177】
これらは、特に、水溶性・現像液溶解性に優れたものとなる点で好ましい。
【0178】
本発明のフォトレジスト積層体の形成方法において、予め形成されたフォトレジスト層(L1)上に反射防止層(L2)が、前述の含フッ素重合体(A)を含むコーティング組成物を塗布することで形成される。
【0179】
反射防止層(L2)を形成するコーティング組成物は、
前記親水性基Yを有する含フッ素重合体(A)と
水およびアルコール類よりなる群から選ばれる少なくとも1種の溶剤(B)
とからなるものである。
【0180】
溶剤(B)は、コーティング組成物を塗布したとき、予め形成された下層のフォトレジスト被膜(L1)を再溶解させない溶剤から選ばれることが好ましく、その点からも水および/またはアルコール類であることが好ましい。
【0181】
本発明の前述の含フッ素重合体(A)は、これら水やアルコール類に対して良好な溶解性を有するものである。
【0182】
溶剤(B)のうち、水は、水であれば特に制限されないが、蒸留水、イオン交換水、フィルター処理水、各種吸着処理などにより有機不純物や金属イオンなどを除去したものが好ましい。
【0183】
アルコール類は、フォトレジスト層(L1)を再溶解させないものから選ばれ、下層のフォトレジスト層(L1)の種類に応じて適宜選択されるが、一般に低級アルコール類が好ましく、具体的にはメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールなどが好ましい。
【0184】
なお、これら溶剤(B)に加えて、フォトレジスト層(L1)を再溶解させない範囲内で、塗布性等の改善を目的として、水に可溶な有機溶媒を併用しても良い。
【0185】
水に可溶な有機溶媒としては、水に対して1質量%以上溶解するものであればとくに制限されない。例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチルなどの酢酸エステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、カルビトールアセテートなどといった極性溶媒などが好ましく挙げられる。
【0186】
水またはアルコール類に加えて添加される水溶性の有機溶媒の添加量は、溶剤(B)全体量に対し、0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%、特に好ましくは1〜10質量%である。
【0187】
本発明の反射防止層(L2)を形成するコーティング組成物は、必要に応じて、塩基性の物質、例えばアンモニアまたは有機アミン類から選ばれる少なくとも1種を添加しても良い。この場合、コーティング組成物中でpKaが11以下の酸性OH基は、たとえばアンモニウム塩、アミン塩などの形で親水性誘導体部位になっていることもある。
【0188】
塩基性物質の添加は、特に含フッ素重合体(A)中の親水性基Yが−COOHまたは−SOHであるとき、水溶性・現像液溶解性を向上させる点で、また、現像液溶解速度の再現性を保つために有効である。また、コーティング組成物のpHを最適な範囲に調整するためにも有効である。
【0189】
有機アミン類は水溶性の有機アミン化合物が好ましく、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミンなどの第一級アミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミンなどの第二級アミン類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ピロール、ピペリジン、オキサゾール、モルホリン、ピペリジンなどの第三級アミン類;モノエタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどのヒドロキシルアミン類;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウムなどの第四級アンモニウム化合物;エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、テトラエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレントリアミン、イミダゾール、イミダゾリジン、ピラジン、s−トリアジン等の第一級〜第三級の多価アミン類などが好ましく挙げられる。
【0190】
なかでも、低屈折率の維持、現像液溶解速度の向上という面で、モノエタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどのヒドロキシルアミン類であることが好ましく、なかでも特にモノエタノールアミンが好ましい。
【0191】
コーティング組成物においてアンモニアまたは有機アミン類の添加量は、使用する含フッ素重合体(A)の親水性基1モルに対し、通常0.01モル〜10モルの範囲で添加でき、好ましくは0.1〜5モル、より好ましくは0.5〜1モルである。
【0192】
本発明の反射防止層(L2)を形成するコーティング組成物には、必要に応じて公知の界面活性剤を添加しても良い。
【0193】
界面活性剤の添加は下層のフォトレジスト層(L1)表面に対するコーティング組成物の濡れ性を改善し、均一な薄膜を形成するために有効である。またさらに、コーティング後、得られる反射防止層(L2)表面の表面張力を低下させ、その結果、現像液溶解性を安定化させる点でも好ましい。さらに、ストリエーションを防ぐ点でも好ましい。
【0194】
添加される界面活性剤として、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられるが、アニオン系界面活性剤が好ましく用いられる。
【0195】
ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレートなど、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシ脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、アセチレングリコール誘導体などが挙げられる。
【0196】
また、アニオン系界面活性剤としては、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、およびそのアンモニウム塩または有機アミン塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸、およびそのアンモニウム塩または有機アミン塩、アルキルベンゼンスルホン酸、およびそのアンモニウム塩または有機アミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、およびそのアンモニウム塩または有機アミン塩、アルキル硫酸、およびそのアンモニウム塩または有機アミン塩などが挙げられる。
【0197】
両性界面活性剤としては、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホンベタインなどが挙げられる。
【0198】
また、さらにフッ素系界面活性剤も反射防止層(L2)に低屈折率性を維持させることができる点で好ましく、具体的には、
【0199】
【化32】

【0200】
【化33】

【0201】
【化34】

【0202】
などがあげられる。
【0203】
また、さらにフッ素系界面活性剤は上記低分子化合物のみならず、つぎの高分子系化合物も反射防止層(L2)に低屈折率性を維持させることができる点で好ましい。
【0204】
具体的には、(a)フルオロアルキル基を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル(単量体(a))、(b)ポリアルキレングリコールアクリレートまたはポリアルキレングリコールメタクリレート(単量体(b))、(c)3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(単量体(c))、および(d)グリセロールモノ(メタ)アクリレート(単量体(d))から誘導される構成単位を含有する数平均分子量1,000〜500,000の共重合体、およびこれを含有する高分子型フッ素系界面活性剤があげられる。
【0205】
各構成単位を与える単量体について以下に説明する。
【0206】
単量体(a)としては、たとえば式:
Rf2010OCOCR11=CH
[式中、Rf20は炭素数3〜20の直鎖状または分岐状のパーフルオロアルキル基、R11は水素原子またはメチル基、R10は炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基、−SON(R12)R13−基(R12は炭素数1〜10のアルキル基、R13は炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基)または−CHCH(OR14)CH−基(R14は水素原子または炭素数1〜10のアシル基)]で示される化合物の1種または2種以上があげられる。
【0207】
単量体(a)の好ましい例を以下に挙げる。これらは単独または2種以上混合して使用してもよい。
(a−1)CF(CF(CHOCOCR11=CH(式中、R11は水素原子またはメチル基、nは2〜19の整数、mは1〜10の整数)
具体例としては、
CF(CF(CH10OCOCH=CH
CF(CF(CHOCOCH=CH
CF(CFCHOCOC(CH)=CH
CF(CF(CHOCOC(CH)=CH
CF(CF(CHOCOC(CH)=CH
CF(CF11(CHOCOC(CH)=CH
などが挙げられる。
【0208】
(a−2)(CFCF(CF(CHOCOCR11=CH(式中、R11は水素原子またはメチル基、nは0〜17の整数、mは1〜10の整数)
具体例としては、
(CFCF(CF(CHOCOCH=CH
などが挙げられる。
【0209】
(a−3)CF(CFSON(R12)(CHOCOCR11=CH(式中、R11は水素原子またはメチル基、R12は炭素数1〜10のアルキル基、nは2〜19の整数、mは1〜10の整数)
具体例としては、
CF(CFSON(CH)(CHOCOCH=CH
CF(CFSON(C)(CHOCOC(CH)=CH
などが挙げられる。
【0210】
(a−4)(CFCF(CFCHCH(OR14)(CHOCOCR11=CH(式中、R11は水素原子またはメチル基、R14は水素原子または炭素数1〜10のアシル基、nは0〜17の整数、mは1〜10の整数)
具体例としては、
(CFCF(CFCHCH(OCOCH)CHOCOC(CH)=CH
(CFCF(CFCHCH(OH)CHOCOCH=CH
などが挙げられる。
【0211】
単量体(b)としては、たとえば式:
CH=CR15COO−(R16O)−R17
(式中、R15およびR17は水素原子またはメチル基、R16は炭素数2〜6のアルキレン基、nは3〜50の整数)で示される化合物の1種または2種以上であることが好ましい。
【0212】
16としては、通常−CHCH−が好適であるが、−CH(CH)CH−、−CH(C)CH−などであってもよい。すなわち本発明においては、R16が−CHCH−であるポリエチレングリコールアクリレートまたはメタクリレートが特に好ましく用いられ得る。また、nは3〜50の整数から選ばれるが、通常はnが9〜25の整数から選ばれる場合に特に良好な結果が得られる。もちろん、R16の種類やnの異なる2種以上の単量体の混合物の形態であってもよい。
【0213】
単量体(b)の例を以下に挙げる。これらは単独または2種以上混合して使用してもよい。
(b−1)CH=CR15COO(CHCHO)17(式中、R15およびR17は水素原子またはメチル基、nは3〜50の整数)
具体例としては、
CH=C(CH)COO(CHCHO)H、
CH=C(CH)COO(CHCHO)H、
CH=C(CH)COO(CHCHO)H、
CH=C(CH)COO(CHCHO)40H、
CH=C(CH)COO(CHCHO)CH
CH=C(CH)COO(CHCHO)23CH
などが挙げられる。
【0214】
(b−2)CH=CR15COO(CHCH(CH)O)17(式中、R15およびR17は水素原子またはメチル基、nは3〜50の整数)
具体例としては、
CH=C(CH)COO(CHCH(CH)O)12H、
CH=CHCOO(CHCH(CH)O)11CH
などが挙げられる。
【0215】
(b−3)CH=CR15COO(CHCHO)(CHCH(CH)O)17(式中、R15およびR17は水素原子またはメチル基、n+mは3〜50の整数)
具体例としては、
CH=C(CH)COO(CHCHO)(CHCH(CH)O)
などが挙げられる。
【0216】
単量体(c)の3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートは、式:
CH=CR18COOCHCH(OH)CHCl
(式中、R18は水素原子またはメチル基)で示される3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレートおよび/または3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートである。
【0217】
単量体(d)のグリセロールモノ(メタ)アクリレートは、式:
CH=CR19COOCHCH(OH)CHOH
(式中、R19は水素原子またはメチル基)で示されるグリセロールモノアクリレートおよび/またはグリセロールモノメタクリレートである。
【0218】
本発明で用い得る高分子型フッ素系界面活性剤としての共重合体において、フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(単量体(a))の共重合割合は、少なくとも5質量%、好ましくは6〜70質量%である。
【0219】
ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(単量体(b))の共重合割合は、少なくとも10質量%、好ましくは14〜60質量%である。10質量%未満では水に対する分散性が低下する傾向にある。
【0220】
3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(単量体(c))の共重合割合は、少なくとも0.5質量%、好ましくは0.5〜30質量%であり、グリセロールモノ(メタ)アクリレート(単量体(d))の共重合割合は、少なくとも0.5質量%、好ましくは0.5〜30質量%である。
【0221】
また、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(単量体(c))とグリセロールモノ(メタ)アクリレート(単量体(d))の合計の共重合割合は、少なくとも1質量%、好ましく1.2〜30質量%であることが好ましい。また、単量体(c)および単量体(d)の合計に対する3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(単量体(c))の割合は、10〜90質量%、特に20〜80質量%であることが好ましい。
【0222】
かかる高分子型フッ素系界面活性剤の数平均分子量は、1,000〜500,000、好ましくは5,000〜200,000である。1,000未満では耐久性が低下する傾向にあり、500,000を超えると処理液粘度が高くなり、作業性が低下することがある。また高分子型フッ素系界面活性剤は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
【0223】
これらの高分子型フッ素系界面活性剤として用いる共重合体には、単量体(a)、(b)、(c)および(d)の他に、これらと共重合可能なエチレン、塩化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、ベンジルメタクリレート、ビニルアルキルケトン、ビニルアルキルエーテル、イソプレン、クロロプレン、無水マレイン酸、ブタジエンなどのフルオロアルキル基を含まない単量体を共重合させることができる。これらの他の単量体を共重合することにより、共重合体の分散性、均一塗布性、低屈折率性、撥水撥油性、耐久性を向上させることができる。また、溶解性、耐水性その他の種々の性質を適宜改善することもできる。これらのフルオロアルキル基を含まない共単量体の共重合割合は、0〜40質量%、好ましくは0〜20質量%である。
【0224】
本発明における高分子型フッ素系界面活性剤として好適な共重合体の具体的な組成としては、たとえばつぎの共重合体組成が例示できるが、これらに限定されるものではない。
(組成I)
CFCF(CFCFCHCHOCOC(CH)=CH(n=3、4、5の化合物の重量比5:3:1の混合物)で示される単量体(a)が19〜22質量部、
CH=C(CH)COO(CHCHO)CHの単量体(b)が8〜13質量部、
CH=C(CH)COO(CHCH(CH)O)12Hの単量体(b)が4〜7質量部、
CH=C(CH)COOCHCH(OH)CHClの単量体(c)が3〜5質量部、
CH=C(CH)COOCHCH(OH)CHOHの単量体(d)が1〜2質量部
からなる共重合体。
(組成II)
CFCF(CFCFCHCHOCOC(CH)=CH(n=3、4の化合物の重量比5.4:1の混合物)で示される単量体(a)が8〜13質量部、
CH=C(CH)COO(CHCHO)CHの単量体(b)が8〜12質量部、
CH=C(CH)COO(CHCH(CH)O)12Hの単量体(b)が4〜9質量部、
CH=C(CH)COOCHCH(OH)CHClの単量体(c)が0.5〜3質量部、
CH=C(CH)COOCHCH(OH)CHOHの単量体(d)が0.3〜2質量部
からなる共重合体。
(組成III)
CFCF(CFCFCHCHOCOC(CH)=CH(n=3、4の化合物の重量比3.9:1の混合物)で示される単量体(a)が5〜8質量部、
CH=C(CH)COO(CHCHO)CHの単量体(b)が14〜17質量部、
CH=C(CH)COO(CHCH(CH)O)12Hの単量体(b)が5〜8質量部、
CH=C(CH)COOCHCH(OH)CHClの単量体(c)が0.5〜1.5質量部、
CH=C(CH)COOCHCH(OH)CHOHの単量体(d)が0.5〜1.5質量部
からなる共重合体。
【0225】
この他、市販品として、KP341(商品名、信越化学工業製)、ポリフローNo.75,同No.95(商品名、共栄社油脂化学工業製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352、同EF204(商品名、トーケムプロダクツ製)、メガファックF171、同F173(商品名、大日本インキ化学工業製)、フロラードFC430、同FC431(商品名、住友スリーエム製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(商品名、旭硝子製)等を挙げることができる。これらの界面活性剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0226】
前記界面活性剤の配合量は、反射防止膜材料中の重合体成分の合計100質量部当たり、通常、100質量部以下、好ましくは70質量部以下、特に好ましくは0.1〜50質量部である。
【0227】
本発明の反射防止層(L2)を形成するコーティング組成物には、必要に応じて公知の酸を添加しても良い。
【0228】
酸の添加は、主としてコーティング組成物のpHを4以下に調整する目的で添加され、好ましくはpHで3以下、より好ましくは2以下に調整される。
【0229】
酸性のコーティング組成物により反射防止層(L2)を形成することで、露光後、フォトレジスト層(L1)より反射防止層(L2)への酸の拡散や移動を防止でき、レジストパターンの形状のT−トップ化を防止できる。
【0230】
本発明に用いられる酸は、有機酸あるいは無機酸の何れでもよい。有機酸としてはアルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルカルボン酸、アルキルベンゼンカルボン酸、および一部がフッ素化されたものが好ましいものとして挙げられる。そして前記アルキル基としては、炭素数がC1〜C20までのものが好ましい。これらの有機酸は組成物中に通常、0.1〜2.0質量%、好ましくは0.5〜1.0質量%の添加量で用いられる。
【0231】
フッ素系の有機酸は、そのフッ素鎖がパーフルオロアルキル基、ハイドロフルオロアルキル基からなるフルオロアルキルスルホン酸、フルオロアルキルカルボン酸でもよく、また直鎖および分岐鎖でもよい。
【0232】
前記フルオロアルキル基としては、例えば炭素数が1〜4のフルオロアルキル基を有するものだけでなく、炭素数5〜15のフルオロアルキル基のほか、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5−デカフルオロペンチル基;1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−ドデカフルオロヘキシル基;1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−テトラデカフルオロヘプチル基;1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−ヘキサデカフルオロオクチル基;1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−オクタデカフルオロノニル基;1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−エイコサフルオロデシル基;2−(パーフルオロノニル)エチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11−エイコサフルオロウンデシル基、パーフルオロデシルメチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11−ドコサフルオロウンデシル基、パーフルオロウンデシル基;2−(パーフルオロデシル)エチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12−ドコサフルオロドデシル基、パーフルオロウンデシルメチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12−テトラコサフルオロドデシル基、パーフルオロドデシル基;2−(パーフルオロウンデシル)エチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13−テトラコサフルオロトリデシル基、パーフルオロドデシルメチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13−ヘキサコサフルオロトリデシル基、パーフルオロトリデシル基;2−(パーフルオロドデシル)エチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14−ヘキサコサフルオロテトラデシル基、パーフルオロトリデシルメチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14−オクタコサフルオロテトラデシル基、パーフルオロテトラデシル基;2−(パーフルオロトリデシル)エチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15−オクタコサフルオロペンタデシル基、パーフルオロテトラデシルメチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15−トリアコンタフルオロペンタデシル基、パーフルオロペンタデシル基等を挙げることができる。
【0233】
このようなフルオロアルキルスルホン酸の具体例としては、2−(パーフルオロプロピル)エタンスルホン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5−デカフルオロペンタンスルホン酸、パーフルオロペンタンスルホン酸;2−(パーフルオロブチル)エタンスルホン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−ドデカフルオロヘキサンスルホン酸、パーフルオロヘキサンスルホン酸;2−(パーフルオロペンチル)エタンスルホン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−テトラデカフルオロヘプタンスルホン酸、パーフルオロヘプタンスルホン酸;2−(パーフルオロヘキシル)エタンスルホン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−ヘキサデカフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸;2−(パーフルオロヘプチル)エタンスルホン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−オクタデカフルオロノナンスルホン酸、パーフルオロノナンスルホン酸;2−(パーフルオロオクチル)エタンスルホン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−エイコサフルオロデカンスルホン酸、パーフルオロデカンスルホン酸;2−(パーフルオロノニル)エタンスルホン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11−ドコサフルオロウンデカンスルホン酸、パーフルオロウンデカンスルホン酸;2−(パーフルオロデシル)エタンスルホン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12−テトラコサフルオロドデカンスルホン酸、パーフルオロドデカンスルホン酸;2−(パーフルオロウンデシル)エタンスルホン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13−ヘキサコサフルオロトリデカンスルホン酸、パーフルオロトリデカンスルホン酸;2−(パーフルオロドデシル)エタンスルホン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14−オクタコサフルオロテトラデカンスルホン酸、パーフルオロテトラデカンスルホン酸;2−(パーフルオロトリデシル)エタンスルホン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15−トリアコンタフルオロペンタデカンスルホン酸、パーフルオロペンタデカンスルホン酸等を挙げることができる。
【0234】
また、フルオロアルキルカルボン酸の具体例としては、2−(パーフルオロプロピル)エタンカルボン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5−デカフルオロペンタンカルボン酸、パーフルオロペンタンカルボン酸;2−(パーフルオロブチル)エタンカルボン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−ドデカフルオロヘキサンカルボン酸、パーフルオロヘキサンカルボン酸;2−(パーフルオロペンチル)エタンカルボン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−テトラデカフルオロヘプタンカルボン酸、パーフルオロヘプタンカルボン酸;2−(パーフルオロヘキシル)エタンカルボン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−ヘキサデカフルオロオクタンカルボン酸、パーフルオロオクタンカルボン酸;2−(パーフルオロヘプチル)エタンカルボン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−オクタデカフルオロノナンカルボン酸、パーフルオロノナンカルボン酸;2−(パーフルオロオクチル)エタンカルボン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−エイコサフルオロデカンカルボン酸、パーフルオロデカンカルボン酸;2−(パーフルオロノニル)エタンカルボン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11−ドコサフルオロウンデカンカルボン酸、パーフルオロウンデカンカルボン酸;2−(パーフルオロデシル)エタンカルボン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12−テトラコサフルオロドデカンカルボン酸、パーフルオロドデカンカルボン酸;2−(パーフルオロウンデシル)エタンカルボン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13−ヘキサコサフルオロトリデカンカルボン酸、パーフルオロトリデカンカルボン酸;2−(パーフルオロドデシル)エタンカルボン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14−オクタコサフルオロテトラデカンカルボン酸、パーフルオロテトラデカンカルボン酸;2−(パーフルオロトリデシル)エタンカルボン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15−トリアコンタフルオロペンタデカンカルボン酸、パーフルオロペンタデカンカルボン酸等を挙げることができる。
【0235】
これらのフルオロアルキルスルホン酸およびフルオロアルキルカルボン酸は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0236】
また、無機酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、りん酸、フッ化水素酸、臭化水素酸などが好ましい。これらの無機酸はコーティング組成物のpHを4.0以下とする目的において好ましいものである。また、無機酸の使用量はコーティング組成物に対して通常、0.01〜0.2質量%の量で用いられる。これらの有機酸および無機酸は単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
【0237】
本発明の反射防止層(L2)を形成するコーティング組成物には、必要に応じてさらに、含フッ素重合体(A)以外の水溶性ポリマーを添加しても良い。水溶性ポリマーは、成膜性を改善するために利用でき、被膜の屈折率や透明性を悪化させない範囲(ポリマーの種類、使用量)で使用しても良い。
【0238】
水溶性ポリマーとしては、例えばポリビニルアルコール類、ポリアルキルビニルエーテル類(ポリメチルビニルエーテル、ポリエチルビニルエーテル)、ポリアクリル酸類、カルボキシル基含有アクリレート系樹脂、ポリメタクリル酸類、ポリエチレングリコール類、セルロース類などが挙げられる。
【0239】
水溶性ポリマーの使用量は、コーティング組成物中に含まれる含フッ素重合体(A)100質量部に対して、0.1〜100質量部、好ましくは0.5〜50質量部、より好ましくは1〜30質量部、特に好ましくは1〜10質量部である。
【0240】
本発明の反射防止層(L2)を形成するコーティング組成物には、必要に応じて公知の光酸発生剤を添加しても良い。コーティング組成物に光酸発生剤を添加することで、露光後、フォトレジスト層(L1)より反射防止層(L2)への酸の拡散や移動を防止でき、レジストパターンの形状のT−トップ化を防止できる。
【0241】
酸発生剤としては、例えばオニウム塩、ハロアルキル基含有化合物、o−キノンジアジド化合物、ニトロベンジル化合物、スルホン酸エステル化合物、スルホン化合物等が挙げられ、これらの酸発生剤を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。好ましい酸発生剤は、オニウム塩である。
【0242】
前記酸発生剤の配合量は、コーティング組成物中の重合体(A)の100質量部に対して、通常、20質量部以下、好ましくは10質量部以下、特には5質量部以下である。酸発生剤の使用量が多すぎると、レジスト積層体の現像性を低下させたり、反射防止層(L2)の透明性や屈折率を悪化させる傾向を示す。
【0243】
またさらに、本発明の反射防止層(L2)を形成するコーティング組成物には、必要に応じて、消泡剤、吸光剤、保存安定剤、防腐剤、接着助剤、光酸発生剤、染料などを添加しても良い。
【0244】
本発明の反射防止層(L2)を形成するコーティング組成物において、親水性基含有含フッ素重合体(A)の含有率は、重合体の種類、分子量、添加物の種類、量、溶剤の種類などによって異なり、薄層被膜を形成可能となる適切な粘度となるように適宜選択される。例えばコーティング組成物全体に対し0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%、特には2〜10質量%である。
【0245】
コーティング組成物はフォトレジスト層(L1)上に塗布され、反射防止層(L2)を形成する。塗布方法としては従来公知の方法が採用され、特に回転塗布法、流延塗布法、ロール塗布法などが好適に例示でき、なかでも回転塗布法(スピンコート法)が好ましい。その他の反射防止層(L2)の形成法については後述する。
【0246】
つぎに本発明のフォトレジスト層(L1)上に反射防止層(L2)を設けてフォトレジスト積層体を形成する方法、さらにはそのフォトレジスト積層体を用いて微細パターンを形成する方法についての一例を図面を参照して説明する。
【0247】
図1は、本発明のフォトレジスト積層体の形成方法を経由しての微細パターン形成方法の各工程(a)〜(e)を説明するための概略図である。
【0248】
(a)フォトレジスト層(L1)の形成工程:
まず、図1(a)に示すように基板L0にフォトレジスト組成物を回転塗布法等によって0.01〜5μm、好ましくは0.05〜0.5μm、より好ましくは0.1〜0.3μmの膜厚で塗布する。
【0249】
ついで150℃以下、好ましくは80〜130℃の所定の温度でプリベーク処理を行って、フォトレジスト層L1を形成する。
【0250】
なお、ここで用いられる前記基板としては、例えばシリコンウェハー;ガラス基板;有機系または無機系反射防止膜が設けられたシリコンウェハーやガラス基板;表面に各種の絶縁膜、電極および配線などが形成された段差を有するシリコンウェハー;マスクブランクス;GaAs、AlGaAs等のIII−V族化合物半導体ウェハーやII−VI族化合物半導体ウェハー;水晶、石英またはリチウムタンタレイト等の圧電体ウェハーなどが挙げられる。
【0251】
本発明で用いるフォトレジスト組成物としては、従来のフォトレジスト組成物が利用できる。例えばノボラック樹脂とジアゾナフトキノンを主成分とするポジ型フォトレジスト(g線、i線リソグラフィー)、ポリヒドロキシスチレンをバインダー樹脂に用いた化学増幅型ポジ型またはネガ型レジスト(KrFリソグラフィー)、側鎖に脂環式構造を有するアクリル系ポリマーやポリノルボルネン構造を有する脂環式重合体などを用いた化学増幅型ポジ型フォトレジスト(ArFリソグラフィー)、含フッ素ポリマーを用いた化学増幅型ポジ型フォトレジスト(Fリソグラフィー)などが利用できる。
【0252】
本発明の反射防止層(L2)は、従来のものに比べより一層の低屈折率化が実現できるため、特に側鎖に脂環式構造を有するアクリル系ポリマーやポリノルボルネン構造を有する脂環式重合体などを用いた化学増幅型ポジ型フォトレジスト(ArFリソグラフィー)、含フッ素ポリマーを用いた化学増幅型ポジ型フォトレジスト(Fリソグラフィー)を用いたフォトリソグラフィープロセスにおいて好ましく適用でき、精密なパターン形状やパターンの高寸法精度、さらにはそれらの再現性において効果的に目的を達成するものである。
【0253】
(b)反射防止層(L2)の形成工程:
図1(b)に示すように、乾燥後のフォトレジスト層L1上に、前述の含フッ素重合体(A)を含むコーティング組成物を回転塗布法等によって塗布する。ついで、必要に応じてプリベークを行ない、反射防止層L2を形成する。
【0254】
その際、反射防止層L2の膜厚dtarcは、数式:
tarc=x・λ/4ntarc
(式中、dtarcは反射防止層の膜厚(nm);xは奇数の整数;λは露光波長(nm);ntarcは反射防止層の露光波長(λ)で測定した屈折率)で算出される膜厚に調整することが好ましい。それによってレジスト被膜の上側界面での反射防止効果、つまり反射率が低減し、定在波の影響を低減できる。
【0255】
プリベークは、反射防止層L2中の残留溶剤(B)を蒸発させ、さらに均質な薄層被膜を形成するために適宜、条件選択される。例えばプリベーク温度は室温〜150℃の範囲内から選ばれ、好ましくは40〜120℃、より好ましくは60〜100℃である。
【0256】
(c)露光工程:
つぎに図1(c)に示すように、フォトレジスト積層体(L1+L2)に所望のパターンを有するマスク11を介して、矢印13で示すようにエネルギー線を照射することによって、特定の領域12を選択的に露光することによってパターン描画を行なう。
【0257】
このときエネルギー線(あるいは化学放射線)としては、例えばg線(436nm波長)、i線(365nm波長)、KrFエキシマレーザー光(248nm波長)、ArFエキシマレーザー光(193nm波長)、Fレーザー光(157nm波長)などがあげられ、フォトリソグラフィープロセスに応じて適宜選択して使用する。
【0258】
その他、X線、高エネルギー電子線、シンクロトロン放射光等を露光光として用いたり、マスクを用いずに電子線、イオンビーム線等を走査して前記フォトレジスト積層体を直接パターン露光することも可能である。
【0259】
なかでも、ArFエキシマレーザー光、Fレーザーを露光光として用いる場合に、本発明の反射防止効果がもっとも発揮される。
【0260】
続いて、70〜160℃、好ましくは90〜140℃で30秒間〜10分間程度の露光後ベーキング(PEB工程)を行うことによって、図1(d)に示すように、フォトレジスト層L1の露光領域12に潜像14を形成させる。このとき、露光によって生じた酸が触媒として作用して溶解抑止基(保護基)が分解されるため、現像液溶解性が向上しレジスト膜の露光部分が現像液に可溶化する。
【0261】
また反射防止層L2は、上記露光後ベーキング(PEB工程)を実施する前に純水などでリンスすることで予め除去しても良いし、PEB後の現像工程において除去しても良い。
【0262】
(d)現像工程:
ついで露光後ベーキングを行ったフォトレジスト層L1に対して現像液で現像処理を行うと、フォトレジスト層L1の未露光部分は現像液に対する溶解性が低いため基板上に残存するが、一方、上述したように露光領域12は現像液に溶解する。
【0263】
一方、上層の反射防止層L2は、露光部、未露光部に関わらず現像液溶解性に優れているため、たとえ残存していても現像工程で露光部と同時に除去される。
【0264】
現像液としては2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が好ましく用いられる。またさらに、反射防止層L2表面、フォトレジスト層L1表面との濡れ性を調整するため、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液中に界面活性剤やメタノール、エタノール、プロパノールまたはブタノールなどのアルコール類を添加したものを用いても良い。
【0265】
ついで、純水、低級アルコールまたはそれらの混合物などで前記現像液を洗い流したあと、基板を乾燥させることにより、図1(e)に示すような所望のレジストパターン15を形成することができる。
【0266】
なお、以上の例では、基板L0の上にフォトレジスト積層体を形成する場合について説明した。しかし、これはいわゆる基板の上にて限定されるものではなく、基板上の導電膜あるいは絶縁膜など所定の層の上に形成されてよい。また、かかる基板上に例えばBrewer Science社製のDUV−30、DUV−32、DUV−42、DUV−44などの反射防止膜(下層反射防止層)を施すことも可能であるし、基板を密着性向上剤によって処理しても良い。
【0267】
また、このように形成した微細レジストパターンをマスクとして、その下の所定の層をエッチングして導電膜あるいは絶縁膜の所望の微細パターンを形成し、さらに他の工程を重ねて半導体装置など電子装置を製造することができる。これらの工程はよく知られているところであるから、説明は省略する。
【0268】
本発明の第二は、−COOH基を有する含フッ素重合体と水溶性溶剤からなる、コーティング組成物に関するものであり、前述のレジスト被膜上に設ける反射防止膜を、より効果的に効率的に得るために特に好ましいコーティング組成物である。
【0269】
つまり、本発明のコーティング組成物は、
(A1)カルボキシル基を有する含フッ素重合体
(B)水およびアルコール類よりなる群から選ばれる少なくとも1種の溶剤
からなる組成物であって、
含フッ素重合体(A1)が式(M−3):
−(M3)−(N3)− (M−3)
〔式中、構造単位M3は式(5):
【0270】
【化35】

【0271】
(式中、X10、X11は同じかまたは異なりHまたはF;X12はH、F、Cl、CHまたはCF;X13、X14は同じかまたは異なりHまたはF;Rf10は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する2価の含フッ素アルキレン基;a1およびc1は同じかまたは異なり0または1)で表される含フッ素単量体由来の構造単位;構造単位N3は前記式(5)の含フッ素単量体と共重合可能な単量体由来の構造単位〕であり、構造単位M3を55〜100モル%、構造単位N3を0〜45モル%含み、数平均分子量が10000〜750000の含フッ素重合体であるコーティング組成物である。
【0272】
本発明のコーティング組成物は、特に含フッ素重合体(A1)に特徴を有し、つまり構造単位M3を構成する単量体(式(5))の構造、構造単位M3の含有率、重合体の数平均分子量において、上記の条件に特定することで、水又は水を含む溶剤に対して安定性良く溶解し、薄層被膜の成膜性も良好であり、レジスト被膜に良好な反射防止効果を与えうるものである。
【0273】
本発明のコーティング組成物における含フッ素重合体(A1)は、上記構造単位M3を必須成分として含み、上記式(5)の単量体の単独重合体又は、式(5)と共重合可能な単量体との共重合体である。
【0274】
構造単位M3は、一つの側鎖に含フッ素アルキレン基Rf10と−COOH基とを同時に有することが重要であり、その結果、重合体自体に親水性と低屈折率性を同時に付与できる。
【0275】
構造単位M3を構成する式(5)の単量体において、Rf10は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する2価の含フッ素アルキレン基あり、なかでも炭素数1〜40のパーフルオロアルキレン基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する2価のパーフルオロアルキレン基であることが重合体をより低屈折率にすることができる点で好ましい。
【0276】
式(5)のCOOH基含有含フッ素エチレン性単量体は、具体的には、式(5−1):
CH=CFCF−O−Rf10−COOH (5−1)
(式中、Rf10は前記式(5)と同じ)で表される含フッ素エチレン性単量体があげられる。
【0277】
式(5−1)の単量体は、具体的には、
【0278】
【化36】

【0279】
(式中、ZはFまたはCF;Z、ZはHまたはF;ZはH、FまたはCF;p1+q1+r1が0〜10の整数;s1は0または1;t1は0〜5の整数、ただし、Z、ZがともにHの場合、p1+q1+r1+s1が0でない)で表される含フッ素エチレン性単量体であり、これらは、それ自体の単独重合性に優れ、含フッ素重合体に−COOH基をより数多く導入でき、その結果、重合体に良好な親水性を与え、さらに被覆後の反射防止層に低屈折率性と優れた現像液溶解性を付与できる点で好ましい。
【0280】
また、テトラフルオロエチレンやフッ化ビニリデンなどの含フッ素エチレン類との共重合性も高く、反射防止層により低屈折率性を付与できる。
【0281】
さらに具体的には、
【0282】
【化37】

【0283】
【化38】

【0284】
などが好ましく挙げられ、なかでも
【0285】
【化39】

【0286】
であることが好ましい。
【0287】
式(5)の−COOH基含有含フッ素エチレン性単量体は、さらに式(5−2):
CF=CF−O−Rf10−COOH (5−2)
(式中、Rf10は前記式(5)と同じ)で表される含フッ素エチレン性単量体があげられる。
【0288】
式(5−2)の単量体は、具体的には、
【0289】
【化40】

【0290】
(式中、ZはFまたはCF;ZはHまたはF;ZはHまたはF;p2+q2+r2が0〜10の整数;s2は0または1;t2は0〜5の整数)で表される含フッ素エチレン性単量体であり、これらは、テトラフルオロエチレンやフッ化ビニリデンなどの含フッ素エチレン類との共重合性も高く、反射防止層に低屈折率性を付与できる。
【0291】
式(5−2)の単量体は、さらに具体的には、
【0292】
【化41】

【0293】
などが好ましく挙げられる。
【0294】
式(5)の−COOH基を有する他の含フッ素エチレン性単量体としては、
【0295】
【化42】

【0296】
(式中、Rf10は前記式(5)と同じ)で表される含フッ素エチレン性単量体が挙げられ、具体的には、
【0297】
【化43】

【0298】
などが挙げられる。
【0299】
共重合体とする場合、共重合成分の構造単位(N3)は適宜選択できるが、水溶性、現像液溶解性を維持する範囲で屈折率を低く設定する目的で選択するのが好ましく、具体的には、含フッ素エチレン性単量体由来の構造単位の中から選択される。
【0300】
なかでも、つぎの(N3−1)および(N3−2)の構造単位から選ばれるものが好ましい。
【0301】
(N3−1)炭素数2または3のエチレン性単量体であって、少なくとも1個のフッ素原子を有する含フッ素エチレン性単量体由来の構造単位:
【0302】
この構造単位N3−1は、現像液溶解性を低下させずに効果的に屈折率を低く設定できたり、透明性を改善できる点で好ましい。また、反射防止層の被膜強度を改善できる点でも好ましい。
【0303】
具体的には、
CF=CF、CF=CFCl、CH=CF、CFH=CH、CFH=CF、CF=CFCF、CH=CFCF、CH=CHCFなどが挙げられ、なかでも、共重合性が良好でかつ透明性、低屈折率性を付与する効果が高い点で、テトラフルオロエチレン(CF=CF)、クロロトリフルオロエチレン(CF=CFCl)、フッ化ビニリデン(CH=CF)が好ましい。
(N3−2)式(n3−2):
【0304】
【化44】

【0305】
(式中、X10、X11、X12、X13、X14、a1およびc1は前記式(5)と同じ;Rf11は炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される単量体由来の構造単位:
【0306】
この構造単位は、効果的に屈折率を低くしたり、透明性を改善できる点で好ましい。
【0307】
具体的には、
CH=CFCF−O−Rf11
CF=CF−O−Rf11
CF=CFCF−O−Rf11
CF=CF−Rf11
CH=CH−Rf11
CH=CH−O−Rf11
(式中、Rf11は前記式(n3−2)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0308】
式(M−3)の含フッ素重合体における各構造単位の存在比率は、前記の好ましいフッ素含有率および親水性基含有率に応じて適宜選択されるが、構造単位M3の含有比率が高い方が、水を含む組成物とした場合、水溶性を向上でき、アルコールの混合により重合体(A1)の溶解性を補助する場合も、アルコールの混合比率を低減できる点で好ましい。
【0309】
本発明のコーティング組成物に用いる含フッ素重合体(A1)の組成比率は、構造単位M3が55〜100モル%、構造単位N3が0〜45モル%であり、好ましくは構造単位M3が60〜100モル%、構造単位N3が0〜40モル%、より好ましくは構造単位M3が70〜100モル%、構造単位N3が0〜30モル%、特に好ましくは構造単位M3が80〜100モル%、構造単位N3が0〜20モル%である。
【0310】
またさらには、式(5)の単量体のうち単独重合可能な単量体の場合は、単独重合体である方が、含フッ素重合体(A1)の水溶性や反射防止被膜の現像液溶解速度を向上させることが可能であるためより好ましく、これら構造単位M3の比率の重合体であっても、上記例示の含フッ素単量体を用いることで、低屈折率と透明性を維持できるものである。
【0311】
式(M−3)の含フッ素重合体の分子量は、数平均分子量で10000〜750000であることが重要であり、この範囲とすることで、含フッ素重合体(A1)が、安定的に親水性を維持できるものである。
【0312】
好ましくは20000〜500000、より好ましくは31000〜300000、特に好ましくは40000〜200000である。
【0313】
数平均分子量が低すぎると、含フッ素重合体(A1)の親水性が低下し、水を含む溶剤に可溶化させるためにアルコール系溶剤を多量に混合させる必要が生じ、レジスト被膜上に反射防止被膜を形成する際に、界面インターミキシング現象により反射防止効果が低減されてしまう。また、さらに被覆後の反射防止被膜の現像液溶解速度も低下し、レジストの解像度を悪化させてしまう。
【0314】
逆に、含フッ素重合体(A1)の分子量が高すぎると、反射防止被膜の成膜性が悪化し、均質な薄膜形成が困難となる。
【0315】
本発明のコーティング組成物における溶剤(B)は水およびアルコール類よりなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0316】
溶剤(B)は、コーティング組成物を塗布したとき、予め形成された下層のフォトレジスト被膜を再溶解させない溶剤から選ばれることが好ましく、その点からも水および/またはアルコール類であることが好ましく、さらには水単独または水とアルコール類との混合溶剤であることが好ましい。特には、なるべくアルコール類を用いないかまたはアルコール比率の低い混合溶剤であることが好ましい。
【0317】
本発明の前述の含フッ素重合体(A1)は、これら水やアルコール類、水とアルコール類との混合溶剤に対して良好な溶解性を有するものである。
【0318】
溶剤(B)のうち、水は、水であれば特に制限されないが、蒸留水、イオン交換水、フィルター処理水、各種吸着処理などにより有機不純物や金属イオンなどを除去したものが好ましい。
【0319】
アルコール類は、フォトレジスト層(L1)を再溶解させないものから選ばれ、下層のフォトレジスト層(L1)の種類に応じて適宜選択されるが、一般に炭素数1〜6の低級アルコール類が好ましく、具体的にはメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブチルアルコール類などが好ましい。
【0320】
上記水とアルコール類の混合溶剤を用いる場合、その混合比率は、水とアルコールの合計に対して、水の比率が60質量%を超えることが好ましく、より好ましくは65質量%を超えること、特に好ましくは70質量%を超えること、さらには75質量%を超えることが好ましい。
【0321】
なお、これら溶剤(B)に加えて、フォトレジスト層(L1)を再溶解させない範囲内で、塗布性等の改善を目的として、水に可溶な有機溶媒を併用しても良い。
【0322】
水に可溶な有機溶媒としては、水に対して1質量%以上溶解するものであればとくに制限されない。例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチルなどの酢酸エステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、カルビトールアセテートなどといった極性溶媒などが好ましく挙げられる。
【0323】
水またはアルコール類に加えて添加される水溶性の有機溶媒の添加量は、溶剤(B)全体量に対し、0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%、特に好ましくは1〜5質量%である。
【0324】
本発明のコーティング組成物は、必要に応じて、塩基性の物質、例えばアンモニアまたは有機アミン類から選ばれる少なくとも1種を添加しても良い。この場合、含フッ素重合体(A1)中の−COOH基の一部または全てが、たとえばアンモニウム塩、アミン塩などの塩の形態になっていてもよい。
【0325】
塩基性物質の添加は、水溶性・現像液溶解性を向上させる点で、また、現像液溶解速度の再現性を保つために有効である。また、コーティング組成物のpHを最適な範囲に調整するためにも有効である。
【0326】
またさらに、本発明においては、含フッ素重合体(A1)の水溶性を改善でき、例えば、水/アルコール類の混合溶剤を用いる場合においても、アルコール類の混合比率を低くすることができ、より水の比率の高い溶剤に溶解させることができる。またはアルコール類を含まない水のみの溶剤に可溶化させることができる。
【0327】
有機アミン類は水溶性の有機アミン化合物が好ましく、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミンなどの第一級アミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミンなどの第二級アミン類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ピロール、ピペリジン、オキサゾール、モルホリン、ピペリジンなどの第三級アミン類;モノエタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどのヒドロキシルアミン類;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウムなどの第四級アンモニウム化合物;エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、テトラエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレントリアミン、イミダゾール、イミダゾリジン、ピラジン、s−トリアジン等の第一級〜第三級の多価アミン類などが好ましく挙げられる。
【0328】
なかでも、低屈折率の維持、現像液溶解速度の向上、水溶性の改善という面で、モノエタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどのヒドロキシルアミン類であることが好ましく、なかでも特にモノエタノールアミンが好ましい。
【0329】
本発明のコーティング組成物においてアンモニアまたは有機アミン類の添加量は、使用する含フッ素重合体(A1)の親水性基1モルに対し、通常0.01モル〜10モルの範囲で添加でき、好ましくは0.1〜5モル、より好ましくは0.1〜2モル、特に好ましくは0.4〜1モルである。
【0330】
本発明のコーティング組成物には、必要に応じて公知の界面活性剤を添加しても良い。
【0331】
界面活性剤の添加は下層のフォトレジスト層表面に対するコーティング組成物の濡れ性を改善し、均一な薄膜を形成するために有効である。またさらに、コーティング後、得られる反射防止層表面の表面張力を低下させ、その結果、現像液溶解性を安定化させる点でも好ましい。さらに、ストリエーションを防ぐ点でも好ましい。
【0332】
またさらに、本発明においては、含フッ素重合体(A1)の水溶性を改善でき、例えば、水/アルコール類の混合溶剤を用いる場合においても、アルコール類の混合比率を低くすることができ、より水の比率の高い溶剤に溶解させることができる。またはアルコール類を含まない水のみの溶剤に可溶化させることができる。
【0333】
添加される界面活性剤として、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられるが、アニオン系界面活性剤が好ましく用いられる。
【0334】
ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレートなど、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシ脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、アセチレングリコール誘導体などが挙げられる。
【0335】
また、アニオン系界面活性剤としては、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、およびそのアンモニウム塩または有機アミン塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸、およびそのアンモニウム塩または有機アミン塩、アルキルベンゼンスルホン酸、およびそのアンモニウム塩または有機アミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、およびそのアンモニウム塩または有機アミン塩、アルキル硫酸、およびそのアンモニウム塩または有機アミン塩などが挙げられる。
【0336】
両性界面活性剤としては、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホンベタインなどが挙げられる。
【0337】
また、さらにフッ素系界面活性剤も反射防止層に低屈折率性を維持させることができる点で好ましく、具体的には、
【0338】
【化45】

【0339】
【化46】

【0340】
【化47】

【0341】
などがあげられる。
【0342】
また、さらにフッ素系界面活性剤は上記低分子化合物のみならず、つぎの高分子系化合物も反射防止層(L2)に低屈折率性を維持させることができる点で好ましい。
【0343】
具体的には、(a)フルオロアルキル基を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル(単量体(a))、(b)ポリアルキレングリコールアクリレートまたはポリアルキレングリコールメタクリレート(単量体(b))、(c)3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(単量体(c))、および(d)グリセロールモノ(メタ)アクリレート(単量体(d))から誘導される構成単位を含有する数平均分子量1,000〜500,000の共重合体、およびこれを含有する高分子型フッ素系界面活性剤があげられる。
【0344】
各構成単位を与える単量体について以下に説明する。
【0345】
単量体(a)としては、たとえば式:
Rf2010OCOCR11=CH
[式中、Rf20は炭素数3〜20の直鎖状または分岐状のパーフルオロアルキル基、R11は水素原子またはメチル基、R10は炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基、−SON(R12)R13−基(R12は炭素数1〜10のアルキル基、R13は炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基)または−CHCH(OR14)CH−基(R14は水素原子または炭素数1〜10のアシル基)]で示される化合物の1種または2種以上があげられる。
【0346】
単量体(a)の好ましい例を以下に挙げる。これらは単独または2種以上混合して使用してもよい。
(a−1)CF(CF(CHOCOCR11=CH(式中、R11は水素原子またはメチル基、nは2〜19の整数、mは1〜10の整数)
具体例としては、
CF(CF(CH10OCOCH=CH
CF(CF(CHOCOCH=CH
CF(CFCHOCOC(CH)=CH
CF(CF(CHOCOC(CH)=CH
CF(CF(CHOCOC(CH)=CH
CF(CF11(CHOCOC(CH)=CH
などが挙げられる。
【0347】
(a−2)(CFCF(CF(CHOCOCR11=CH(式中、R11は水素原子またはメチル基、nは0〜17の整数、mは1〜10の整数)
具体例としては、
(CFCF(CF(CHOCOCH=CH
などが挙げられる。
【0348】
(a−3)CF(CFSON(R12)(CHOCOCR11=CH(式中、R11は水素原子またはメチル基、R12は炭素数1〜10のアルキル基、nは2〜19の整数、mは1〜10の整数)
具体例としては、
CF(CFSON(CH)(CHOCOCH=CH
CF(CFSON(C)(CHOCOC(CH)=CH
などが挙げられる。
【0349】
(a−4)(CFCF(CFCHCH(OR14)(CHOCOCR11=CH(式中、R11は水素原子またはメチル基、R14は水素原子または炭素数1〜10のアシル基、nは0〜17の整数、mは1〜10の整数)
具体例としては、
(CFCF(CFCHCH(OCOCH)CHOCOC(CH)=CH
(CFCF(CFCHCH(OH)CHOCOCH=CH
などが挙げられる。
【0350】
単量体(b)としては、たとえば式:
CH=CR15COO−(R16O)−R17
(式中、R15およびR17は水素原子またはメチル基、R16は炭素数2〜6のアルキレン基、nは3〜50の整数)で示される化合物の1種または2種以上であることが好ましい。
【0351】
16としては、通常−CHCH−が好適であるが、−CH(CH)CH−、−CH(C)CH−などであってもよい。すなわち本発明においては、R16が−CHCH−であるポリエチレングリコールアクリレートまたはメタクリレートが特に好ましく用いられ得る。また、nは3〜50の整数から選ばれるが、通常はnが9〜25の整数から選ばれる場合に特に良好な結果が得られる。もちろん、R16の種類やnの異なる2種以上の単量体の混合物の形態であってもよい。
【0352】
単量体(b)の例を以下に挙げる。これらは単独または2種以上混合して使用してもよい。
(b−1)CH=CR15COO(CHCHO)17(式中、R15およびR17は水素原子またはメチル基、nは3〜50の整数)
具体例としては、
CH=C(CH)COO(CHCHO)H、
CH=C(CH)COO(CHCHO)H、
CH=C(CH)COO(CHCHO)H、
CH=C(CH)COO(CHCHO)40H、
CH=C(CH)COO(CHCHO)CH
CH=C(CH)COO(CHCHO)23CH
などが挙げられる。
【0353】
(b−2)CH=CR15COO(CHCH(CH)O)17(式中、R15およびR17は水素原子またはメチル基、nは3〜50の整数)
具体例としては、
CH=C(CH)COO(CHCH(CH)O)12H、
CH=CHCOO(CHCH(CH)O)11CH
などが挙げられる。
【0354】
(b−3)CH=CR15COO(CHCHO)(CHCH(CH)O)17(式中、R15およびR17は水素原子またはメチル基、n+mは3〜50の整数)
具体例としては、
CH=C(CH)COO(CHCHO)(CHCH(CH)O)
などが挙げられる。
【0355】
単量体(c)の3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートは、式:
CH=CR18COOCHCH(OH)CHCl
(式中、R18は水素原子またはメチル基)で示される3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレートおよび/または3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートである。
【0356】
単量体(d)のグリセロールモノ(メタ)アクリレートは、式:
CH=CR19COOCHCH(OH)CHOH
(式中、R19は水素原子またはメチル基)で示されるグリセロールモノアクリレートおよび/またはグリセロールモノメタクリレートである。
【0357】
本発明で用い得る高分子型フッ素系界面活性剤としての共重合体において、フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(単量体(a))の共重合割合は、少なくとも5質量%、好ましくは6〜70質量%である。
【0358】
ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(単量体(b))の共重合割合は、少なくとも10質量%、好ましくは14〜60質量%である。10質量%未満では水に対する分散性が低下する傾向にある。
【0359】
3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(単量体(c))の共重合割合は、少なくとも0.5質量%、好ましくは0.5〜30質量%であり、グリセロールモノ(メタ)アクリレート(単量体(d))の共重合割合は、少なくとも0.5質量%、好ましくは0.5〜30質量%である。
【0360】
また、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(単量体(c))とグリセロールモノ(メタ)アクリレート(単量体(d))の合計の共重合割合は、少なくとも1質量%、好ましく1.2〜30質量%であることが好ましい。また、単量体(c)および単量体(d)の合計に対する3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(単量体(c))の割合は、10〜90質量%、特に20〜80質量%であることが好ましい。
【0361】
かかる高分子型フッ素系界面活性剤の数平均分子量は、1,000〜500,000、好ましくは5,000〜200,000である。1,000未満では耐久性が低下する傾向にあり、500,000を超えると処理液粘度が高くなり、作業性が低下することがある。また高分子型フッ素系界面活性剤は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
【0362】
これらの高分子型フッ素系界面活性剤として用いる共重合体には、単量体(a)、(b)、(c)および(d)の他に、これらと共重合可能なエチレン、塩化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、ベンジルメタクリレート、ビニルアルキルケトン、ビニルアルキルエーテル、イソプレン、クロロプレン、無水マレイン酸、ブタジエンなどのフルオロアルキル基を含まない単量体を共重合させることができる。これらの他の単量体を共重合することにより、共重合体の分散性、均一塗布性、低屈折率性、撥水撥油性、耐久性を向上させることができる。また、溶解性、耐水性その他の種々の性質を適宜改善することもできる。これらのフルオロアルキル基を含まない共単量体の共重合割合は、0〜40質量%、好ましくは0〜20質量%である。
【0363】
本発明における高分子型フッ素系界面活性剤として好適な共重合体の具体的な組成としては、たとえばつぎの組成の共重合体が例示できるが、これらに限定されるものではない。
(組成I)
CFCF(CFCFCHCHOCOC(CH)=CH(n=3、4、5の化合物の重量比5:3:1の混合物)で示される単量体(a)が19〜22質量部、
CH=C(CH)COO(CHCHO)CHの単量体(b)が8〜13質量部、
CH=C(CH)COO(CHCH(CH)O)12Hの単量体(b)が4〜7質量部、
CH=C(CH)COOCHCH(OH)CHClの単量体(c)が3〜5質量部、
CH=C(CH)COOCHCH(OH)CHOHの単量体(d)が1〜2質量部
からなる共重合体。
(組成II)
CFCF(CFCFCHCHOCOC(CH)=CH(n=3、4の化合物の重量比5.4:1の混合物)で示される単量体(a)が8〜13質量部、
CH=C(CH)COO(CHCHO)CHの単量体(b)が8〜12質量部、
CH=C(CH)COO(CHCH(CH)O)12Hの単量体(b)が4〜9質量部、
CH=C(CH)COOCHCH(OH)CHClの単量体(c)が0.5〜3質量部、
CH=C(CH)COOCHCH(OH)CHOHの単量体(d)が0.3〜2質量部
からなる共重合体。
(組成III)
CFCF(CFCFCHCHOCOC(CH)=CH(n=3、4の化合物の重量比3.9:1の混合物)で示される単量体(a)が5〜8質量部、
CH=C(CH)COO(CHCHO)CHの単量体(b)が14〜17質量部、
CH=C(CH)COO(CHCH(CH)O)12Hの単量体(b)が5〜8質量部、
CH=C(CH)COOCHCH(OH)CHClの単量体(c)が0.5〜1.5質量部、
CH=C(CH)COOCHCH(OH)CHOHの単量体(d)が0.5〜1.5質量部
からなる共重合体。
【0364】
この他、市販品として、KP341(商品名、信越化学工業製)、ポリフローNo.75,同No.95(商品名、共栄社油脂化学工業製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352、同EF204(商品名、トーケムプロダクツ製)、メガファックF171、同F173(商品名、大日本インキ化学工業製)、フロラードFC430、同FC431(商品名、住友スリーエム製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(商品名、旭硝子製)等を挙げることができる。これらの界面活性剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0365】
前記界面活性剤の配合量は、反射防止膜材料中の重合体成分の合計質量部に対し、通常、100質量部以下、好ましくは70質量部以下であり、なかでも、好ましくは0.01〜50質量部、特には0.1〜30質量部、さらには0.5〜20質量部である。
【0366】
本発明のコーティング組成物には、必要に応じて公知の酸を添加しても良い。
【0367】
酸の添加は、主としてコーティング組成物のpHを4以下に調整する目的で添加され、好ましくはpHで3以下、より好ましくは2以下に調整される。
【0368】
酸性のコーティング組成物により反射防止層(L2)を形成することで、露光後、フォトレジスト層より反射防止層への酸の拡散や移動を防止でき、レジストパターンの形状のT−トップ化を防止できる。
【0369】
本発明に用いられる酸は、有機酸あるいは無機酸の何れでもよい。有機酸としてはアルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルカルボン酸、アルキルベンゼンカルボン酸、および一部がフッ素化されたものが好ましいものとして挙げられる。そして前記アルキル基としては、炭素数がC1〜C20までのものが好ましい。これらの有機酸は組成物中に通常、0.1〜2.0質量%、好ましくは0.5〜1.0質量%の添加量で用いられる。
【0370】
フッ素系の有機酸は、そのフッ素鎖がパーフルオロアルキル基、ハイドロフルオロアルキル基からなるフルオロアルキルスルホン酸、フルオロアルキルカルボン酸でもよく、また直鎖および分岐鎖でもよい。
【0371】
前記フルオロアルキル基としては、例えば炭素数が1〜4のフルオロアルキル基を有するものだけでなく、炭素数5〜15のフルオロアルキル基のほか、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5−デカフルオロペンチル基;1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−ドデカフルオロヘキシル基;1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−テトラデカフルオロヘプチル基;1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−ヘキサデカフルオロオクチル基;1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−オクタデカフルオロノニル基;1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−エイコサフルオロデシル基;2−(パーフルオロノニル)エチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11−エイコサフルオロウンデシル基、パーフルオロデシルメチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11−ドコサフルオロウンデシル基、パーフルオロウンデシル基;2−(パーフルオロデシル)エチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12−ドコサフルオロドデシル基、パーフルオロウンデシルメチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12−テトラコサフルオロドデシル基、パーフルオロドデシル基;2−(パーフルオロウンデシル)エチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13−テトラコサフルオロトリデシル基、パーフルオロドデシルメチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13−ヘキサコサフルオロトリデシル基、パーフルオロトリデシル基;2−(パーフルオロドデシル)エチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14−ヘキサコサフルオロテトラデシル基、パーフルオロトリデシルメチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14−オクタコサフルオロテトラデシル基、パーフルオロテトラデシル基;2−(パーフルオロトリデシル)エチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15−オクタコサフルオロペンタデシル基、パーフルオロテトラデシルメチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15−トリアコンタフルオロペンタデシル基、パーフルオロペンタデシル基等を挙げることができる。
【0372】
このようなフルオロアルキルスルホン酸の具体例としては、2−(パーフルオロプロピル)エタンスルホン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5−デカフルオロペンタンスルホン酸、パーフルオロペンタンスルホン酸;2−(パーフルオロブチル)エタンスルホン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−ドデカフルオロヘキサンスルホン酸、パーフルオロヘキサンスルホン酸;2−(パーフルオロペンチル)エタンスルホン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−テトラデカフルオロヘプタンスルホン酸、パーフルオロヘプタンスルホン酸;2−(パーフルオロヘキシル)エタンスルホン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−ヘキサデカフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸;2−(パーフルオロヘプチル)エタンスルホン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−オクタデカフルオロノナンスルホン酸、パーフルオロノナンスルホン酸;2−(パーフルオロオクチル)エタンスルホン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−エイコサフルオロデカンスルホン酸、パーフルオロデカンスルホン酸;2−(パーフルオロノニル)エタンスルホン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11−ドコサフルオロウンデカンスルホン酸、パーフルオロウンデカンスルホン酸;2−(パーフルオロデシル)エタンスルホン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12−テトラコサフルオロドデカンスルホン酸、パーフルオロドデカンスルホン酸;2−(パーフルオロウンデシル)エタンスルホン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13−ヘキサコサフルオロトリデカンスルホン酸、パーフルオロトリデカンスルホン酸;2−(パーフルオロドデシル)エタンスルホン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14−オクタコサフルオロテトラデカンスルホン酸、パーフルオロテトラデカンスルホン酸;2−(パーフルオロトリデシル)エタンスルホン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15−トリアコンタフルオロペンタデカンスルホン酸、パーフルオロペンタデカンスルホン酸等を挙げることができる。
【0373】
また、フルオロアルキルカルボン酸の具体例としては、2−(パーフルオロプロピル)エタンカルボン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5−デカフルオロペンタンカルボン酸、パーフルオロペンタンカルボン酸;2−(パーフルオロブチル)エタンカルボン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−ドデカフルオロヘキサンカルボン酸、パーフルオロヘキサンカルボン酸;2−(パーフルオロペンチル)エタンカルボン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−テトラデカフルオロヘプタンカルボン酸、パーフルオロヘプタンカルボン酸;2−(パーフルオロヘキシル)エタンカルボン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−ヘキサデカフルオロオクタンカルボン酸、パーフルオロオクタンカルボン酸;2−(パーフルオロヘプチル)エタンカルボン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−オクタデカフルオロノナンカルボン酸、パーフルオロノナンカルボン酸;2−(パーフルオロオクチル)エタンカルボン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−エイコサフルオロデカンカルボン酸、パーフルオロデカンカルボン酸;2−(パーフルオロノニル)エタンカルボン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11−ドコサフルオロウンデカンカルボン酸、パーフルオロウンデカンカルボン酸;2−(パーフルオロデシル)エタンカルボン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12−テトラコサフルオロドデカンカルボン酸、パーフルオロドデカンカルボン酸;2−(パーフルオロウンデシル)エタンカルボン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13−ヘキサコサフルオロトリデカンカルボン酸、パーフルオロトリデカンカルボン酸;2−(パーフルオロドデシル)エタンカルボン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14−オクタコサフルオロテトラデカンカルボン酸、パーフルオロテトラデカンカルボン酸;2−(パーフルオロトリデシル)エタンカルボン酸、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15−トリアコンタフルオロペンタデカンカルボン酸、パーフルオロペンタデカンカルボン酸等を挙げることができる。
【0374】
これらのフルオロアルキルスルホン酸およびフルオロアルキルカルボン酸は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0375】
また、無機酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、りん酸、フッ化水素酸、臭化水素酸などが好ましい。これらの無機酸はコーティング組成物のpHを4.0以下とする目的において好ましいものである。また、無機酸の使用量はコーティング組成物に対して通常、0.01〜0.2質量%の量で用いられる。これらの有機酸および無機酸は単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
【0376】
本発明のコーティング組成物には、必要に応じてさらに、含フッ素重合体(A1)以外の水溶性ポリマーを添加しても良い。水溶性ポリマーは、成膜性を改善するために利用でき、被膜の屈折率や透明性を悪化させない範囲(ポリマーの種類、使用量)で使用しても良い。
【0377】
水溶性ポリマーとしては、例えばポリビニルアルコール類、ポリアルキルビニルエーテル類(ポリメチルビニルエーテル、ポリエチルビニルエーテル)、ポリアクリル酸類、カルボキシル基含有アクリレート系樹脂、ポリメタクリル酸類、ポリエチレングリコール類、セルロース類などが挙げられる。
【0378】
また、本発明のコーティング組成物に上記水溶性ポリマーを混合した組成物は、KrFレジストなどに用いる反射防止用組成物としても有用であり、それによって従来の組成物に混合、使用されていたパーフルオロアルキルスルホン酸類(例えば、炭素数4〜8のもの)を削減または不要とすることができる。
【0379】
水溶性ポリマーの使用量は、コーティング組成物中に含まれる含フッ素重合体(A1)100質量部に対して、0.1〜100質量部、好ましくは0.5〜50質量部、より好ましくは1〜30質量部、特に好ましくは1〜10質量部である。
【0380】
本発明のコーティング組成物には、必要に応じて公知の光酸発生剤を添加しても良い。コーティング組成物に光酸発生剤を添加することで、露光後、フォトレジスト層より反射防止層への酸の拡散や移動を防止でき、レジストパターンの形状のT−トップ化を防止できる。
【0381】
酸発生剤としては、例えばオニウム塩、ハロアルキル基含有化合物、o−キノンジアジド化合物、ニトロベンジル化合物、スルホン酸エステル化合物、スルホン化合物等が挙げられ、これらの酸発生剤を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。好ましい酸発生剤は、オニウム塩である。
【0382】
前記酸発生剤の配合量は、コーティング組成物中の重合体(A1)の100質量部に対して、通常、20質量部以下、好ましくは10質量部以下、特には5質量部以下である。酸発生剤の使用量が多すぎると、レジスト積層体の現像性を低下させたり、反射防止被膜の透明性や屈折率を悪化させる傾向を示す。
【0383】
またさらに、本発明の反射防止被膜を形成するコーティング組成物には、必要に応じて、消泡剤、吸光剤、保存安定剤、防腐剤、接着助剤、光酸発生剤、染料などを添加しても良い。
【0384】
本発明のコーティング組成物において、親水性基含有含フッ素重合体(A1)の含有率は、重合体の種類、分子量、添加物の種類、量、溶剤の種類などによって異なり、薄層被膜を形成可能となる適切な粘度となるように適宜選択される。例えばコーティング組成物全体対し0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%、特には2〜10質量%である。
【0385】
なお、本発明および本特許請求の範囲および明細書に記載の諸物性値の測定法はつぎの方法による。pKa、屈折率、現像液溶解速度および反射率については実施例中で説明する。
【0386】
(1)組成分析:H−NMRと19F−NMRとIRのデータから算出する。
NMRはBRUKER社製のAC−300を用いる。
H−NMR測定条件:300MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
19F−NMR測定条件:282MHz(トリクロロフルオロメタン=0ppm)
の条件で室温にて測定する。
IR分析:Perkin Elmer社製フーリエ変換赤外分光光度計1760Xで室温にて測定する。
【0387】
(2)フッ素含有率(質量%):
酸素フラスコ燃焼法により試料10mgを燃焼し、分解ガスを脱イオン水20mlに吸収させ、吸収液中のフッ素イオン濃度をフッ素選択電極法(フッ素イオンメータ。オリオン社製の901型)で測定することによって求めた値を採用する。
【0388】
(3)数平均分子量:
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、東ソー(株)製のGPC HLC−8020を用い、Shodex社製のカラム(GPC KF−801を1本、GPC KF−802を1本、GPC KF−806Mを2本直列に接続)を使用し、溶媒としてテトラハイドロフラン(THF)を流速1ml/分で流して測定し、単分散ポリスチレンを標準として分子量を算出した。
【0389】
(4)親水性基Yの含有率(モル数/重合体100g):
H−NMRと19F−NMRとIRのデータから算出する。NMRはBRUKER社製のAC−300を用いる。
H−NMR測定条件:300MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
19F−NMR測定条件:282MHz(トリクロロフルオロメタン=0ppm)
の条件で室温にて測定し、重合体中の各構造単位の存在比率より、重合体100g中に含まれる親水性基のモル数を算出する。
【0390】
(5)コーティング組成物のpH測定
pH測定はHORIBA社製のpH METER F−22を用い、25℃にて測定を行った。
【0391】
つぎに本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0392】
合成例1(親水性基Yが−COOHである含フッ素重合体の合成)
攪拌装置および温度計を備えた100mlのガラス製四つ口フラスコに、パーフルオロ−(9,9−ジハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネン酸):
【0393】
【化48】

【0394】
を21.1gと
【0395】
【化49】

【0396】
の8.0質量%パーフルオロヘキサン溶液を21.6g入れ、充分に窒素置換を行ったのち、窒素雰囲気下20℃で24時間重合反応を行ったところ、高粘度の固体が生成した。
【0397】
得られた固体をアセトンに溶解させたものをn−ヘキサンに注ぎ、分離、真空乾燥させ、無色透明な重合体17.6gを得た。
【0398】
この重合体を19F−NMR分析、H−NMR分析およびIR分析により分析したところ、上記含COOH基含有含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなる含フッ素重合体であった。
【0399】
また、分子量測定は、以下の方法で重合体中のカルボキシル基をメチルエステル化した後、前述のGPC測定を行った。
【0400】
(メチルエステル化反応)
上記で得た重合体1gを5mlのテトラハイドロフラン(THF)に溶解し、攪拌させながらトリメチルシリルジアゾメタンの2規定ヘキサン溶液を滴下していき、反応液が淡黄色に着色するまで滴下した。反応後の溶液から溶媒を減圧溜去し、得られた反応物のH−NMRより試料のCOOH基が全てメチルエステル化したことを確認した。
【0401】
メチルエステル化後の含フッ素重合体のGPC測定による数平均分子量は13,000であった。
【0402】
合成例2(親水性基YがCOOH基である含フッ素重合体の合成)
合成例1においてパーフルオロ−(9,9−ジハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネン酸)に代えて、パーフルオロ−(12,12−ジハイドロ−2,5,8−トリストリフルオロメチル−3,6,9−トリオキサ−11−ドデセン酸):
【0403】
【化50】

【0404】
の23.5gと
【0405】
【化51】

【0406】
の8.0質量%パーフルオロヘキサン溶液を17.3g用いた以外は、合成例1と同様にして、重合反応および重合体の単離を行い、無色透明な重合体20.6gを得た。
【0407】
19F−NMR、H−NMR分析およびIR分析により分析したところ、上記COOH基含有含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなる含フッ素重合体であった。
【0408】
合成例3(親水性基YがCOOH基である含フッ素重合体の合成)
合成例1においてパーフルオロ−(9,9−ジハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネン酸)に代えて、パーフルオロ−(15,15−ジハイドロ−2,5,8,11−テトラキストリフルオロメチル−3,6,9,12−テトラオキサ−14−ペンタデセン酸):
【0409】
【化52】

【0410】
の22.6gと
【0411】
【化53】

【0412】
の8.0質量%パーフルオロヘキサン溶液を12.9g用いた以外は、合成例1と同様にして、重合反応および重合体の単離を行い、無色透明な重合体18.6gを得た。
【0413】
19F−NMR、H−NMR分析およびIR分析により分析したところ、上記COOH基含有含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなる含フッ素重合体であった。
【0414】
合成例4(親水性基YがCOOH基である含フッ素重合体の合成)
攪拌装置および温度計を備えた100mlのガラス製四つ口フラスコに、1,1,2,4,4,8−ヘキサハイドロ−3−オキサ−1−オクテン:
CH=CHOCH(CFCF−H
を5.0gと酢酸エチルを50g、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.03g入れ、系内を窒素置換したのち、窒素気流下に2−(トリフルオロメチル)アクリル酸:
【0415】
【化54】

【0416】
を5g仕込み、60℃にて攪拌させながら反応を行った。
【0417】
得られた反応溶液を取り出し、ついでヘキサン溶剤で再沈殿させることにより固形分を分離した。この固形分を恒量になるまで真空乾燥し、白色粉末状の共重合体9.1gを得た。
【0418】
この共重合体の組成比は、H−NMRおよび19F−NMRにより分析したところ、パーフルオロ−(1,1,2,4,4,8−ヘキサハイドロ−3−オキサ−1−オクテン)/2−(トリフルオロメチル)アクリル酸が50/50(モル%)であった。また数平均分子量は87,000であった。
【0419】
合成例5(親水性基YがCOOH基である含フッ素重合体の合成)
合成例4において2−(トリフルオロメチル)アクリル酸に代えて、無水マレイン酸4.0gを用いた以外は合成例4と同様にして、重合反応および重合体の単離を行い、白色粉末状の重合体8.2gを得た。
【0420】
この共重合体の組成比は、H−NMR、19F−NMR分析により、パーフルオロ−(1,1,2,4,4,8−ヘキサハイドロ−3−オキサ−1−オクテン)/無水マレイン酸が50/50モル%であった。
【0421】
得られた重合体を1N−NaOH水溶液100mlに放ち、攪拌することにより均一に溶解した。その溶液に、35%濃塩酸を加え、pHを2以下にした。酸性溶液をジクロロメタンにより抽出し有機物を取り出した。有機層を乾燥後、ジクロロメタンを濃縮・留去したところ、白色固体状の共重合体7.0gを得た。
【0422】
この共重合体の組成比は、H−NMR、19F−NMR分析により、パーフルオロ−(1,1,2,4,4,8−ヘキサハイドロ−3−オキサ−1−オクテン)/マレイン酸が50/50モル%であった。
【0423】
合成例6(親水性基YがOH基である含フッ素重合体の合成)
合成例1においてパーフルオロ−(9,9−ジハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネン酸)に代えて、(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネノール):
【0424】
【化55】

【0425】
の20.4gを用いた以外は合成例1と同様にして、重合反応および重合体の単離を行い、無色透明な重合体17.1gを得た。
【0426】
19F−NMR、H−NMR分析およびIR分析により分析したところ、上記OH基含有含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなる含フッ素重合体であった。
【0427】
合成例7(親水性基YがOH基である含フッ素重合体の合成)
バルブ、圧力ゲージ、温度計を備えた100ml内容量のステンレススチ−ル製オートクレーブに、1,1−ビストリフルオロメチル−3−ブテン−1−オール:
【0428】
【化56】

【0429】
を5.2gとCHCClF(HCFC−141b)を30ml、n−ヘプタフルオロブチリルパーオキサイド(HBP)の10モル%パーフルオロヘキサン溶液を10g入れ、ドライアイス/メタノール溶液で冷却しながら系内を窒素ガスで充分置換した。ついでバルブからテトラフルオロエチレン(TFE)を10g仕込み、30℃にて振とうさせながら反応を行った。反応中は、系内のゲージ圧に変化はなく(反応前9.0MPaG)、20時間後も9.0MPaGであった。
【0430】
反応開始20時間後に未反応モノマーを放出し、析出した固形物を取り出し、アセトンに溶解させ、ついでヘキサン溶剤で再沈殿させることにより固形分を分離精製した。この固形分を恒量になるまで真空乾燥し、共重合体3.0gを得た。
【0431】
この共重合体の組成比は、H−NMRおよび19F−NMRにより分析したところ、1,1−ビストリフルオロメチル−3−ブテン−1−オール/テトラフルオロエチレンが50/50(モル%)であった。数平均分子量は4,900であった。
【0432】
合成例8(親水性基Yが−COOH基である含フッ素重合体の合成)
パーフルオロ−(9,9−ジハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネン酸):
【0433】
【化57】

【0434】
を40.0gと
【0435】
【化58】

【0436】
の8.0質量%パーフルオロヘキサン溶液を59.2g用いた他は、合成例1と同様にして重合反応および後処理を行い無色透明な重合体38.2gを得た。
【0437】
この重合体を19F−NMR分析、H−NMR分析およびIR分析により分析したところ、上記COOH基含有含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなる含フッ素重合体であった。
【0438】
また、合成例1と同様にしてカルボキシル基をメチルエステル化した後、GPC測定を行った。数平均分子量は7,800であった。
【0439】
合成例9(親水性基Yが−COOH基である含フッ素重合体の合成)
パーフルオロ−(9,9−ジハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネン酸):
【0440】
【化59】

【0441】
を40.0gと
【0442】
【化60】

【0443】
の8.0質量%パーフルオロヘキサン溶液を8.46g用いた他は、合成例1と同様にして重合反応および後処理を行い無色透明な重合体32.6gを得た。
【0444】
この重合体を19F−NMR分析、H−NMR分析およびIR分析により分析したところ、上記COOH基含有含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなる含フッ素重合体であった。
【0445】
また、合成例1と同様にしてカルボキシル基をメチルエステル化した後、GPC測定を行った。数平均分子量は29,000であった。
【0446】
合成例10(親水性基Yが−COOH基である含フッ素重合体の合成)
攪拌装置および温度計を備えた100mlのガラス製四つ口フラスコに、パーフルオロ−(6,6−ジハイドロ−2−トリフルオロメチル−3−オキサ−5−ヘキセン酸):
【0447】
【化61】

【0448】
を30.0gと
【0449】
【化62】

【0450】
の8.0質量%パーフルオロヘキサン溶液を31.4g入れ、充分に窒素置換を行ったのち、窒素雰囲気下20℃で24時間重合反応を行ったところ、高粘度の固体が生成した。
【0451】
得られた固体をアセトンに溶解させたものをn−ヘキサンに注ぎ、分離、真空乾燥させ、無色透明な重合体27.9gを得た。
【0452】
この重合体を19F−NMR分析、H−NMR分析およびIR分析により分析したところ、上記COOH基含有含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなる含フッ素重合体であった。
【0453】
また、合成例1と同様にしてカルボキシル基をメチルエステル化した後、GPC測定を行った。数平均分子量は11,000であった。
【0454】
合成例11(親水性基Yが−COOH基である含フッ素重合体の合成)
パーフルオロ−(6,6−ジハイドロ−2−トリフルオロメチル−3−オキサ−5−ヘキセン酸):
【0455】
【化63】

【0456】
を50.0gと
【0457】
【化64】

【0458】
8.0質量%パーフルオロヘキサン溶液を13.9g用いた他は、合成例10と同様にして重合反応および後処理を行い無色透明な重合体43.2gを得た。
【0459】
この重合体を19F−NMR分析、H−NMR分析およびIR分析により分析したところ、上記COOH基含有含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなる含フッ素重合体であった。
【0460】
また、合成例1と同様にしてカルボキシル基をメチルエステル化した後、GPC測定を行った。数平均分子量は34,000であった。
【0461】
合成例12(親水性基Yが−COOH基である含フッ素重合体の合成)
パーフルオロ−(6,6−ジハイドロ−2−トリフルオロメチル−3−オキサ−5−ヘキセン酸):
【0462】
【化65】

【0463】
を5.0gと
【0464】
【化66】

【0465】
の8.0質量%パーフルオロヘキサン溶液を1.39g用いた他は、合成例10と同様にして重合反応および後処理を行い無色透明な重合体4.1gを得た。
【0466】
この重合体を19F−NMR分析、H−NMR分析およびIR分析により分析したところ、上記COOH基含有含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなる含フッ素重合体であった。
【0467】
また、合成例1と同様にしてカルボキシル基をメチルエステル化した後、GPC測定を行った。数平均分子量は55,000であった。
【0468】
合成例13(親水性基Yが−COOH基である含フッ素重合体の合成)
パーフルオロ−(9,9−ジハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネン酸):
【0469】
【化67】

【0470】
を50.0gと
【0471】
【化68】

【0472】
8.0重量%パーフルオロヘキサン溶液を5.3g用いた他は、合成例10と同様にして重合反応および後処理を行い無色透明な重合体39.5gを得た。
【0473】
この重合体を19F−NMR分析、H−NMR分析およびIR分析により分析したところ、上記COOH基含有含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなる含フッ素重合体であった。
【0474】
また、合成例1と同様にしてカルボキシル基をメチルエステル化した後、GPC測定を行った。数平均分子量は50,000であった。
【0475】
合成例14(親水性基Yが−COOH基である含フッ素重合体の合成)
攪拌装置および温度計を備えた100mlのガラス製四つ口フラスコに、パーフルオロ−(6,6−ジハイドロ−2−トリフルオロメチル−3−オキサ−5−ヘキセン酸):
【0476】
【化69】

【0477】
を10.0gおよび過硫酸アンモニウム89mgを水20gに溶かしたものを加え、充分に窒素置換を行ったのち、窒素雰囲気下80℃で6時間重合反応を行った。重合後の溶液に10%塩酸を10g加え、ポリマーを析出させ、析出したポリマーをアセトンに溶解させたものをn−ヘキサンに注ぎ、分離、真空乾燥させ、無色透明な重合体8.3gを得た。
【0478】
この重合体を19F−NMR分析、H−NMR分析およびIR分析により分析したところ、上記COOH基含有含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなる含フッ素重合体であった。
【0479】
また、合成例1と同様にしてカルボキシル基をメチルエステル化した後、GPC測定を行った。数平均分子量は54,000であった。
【0480】
合成例15(親水性基Yが−COOH基である含フッ素重合体の合成)
攪拌装置および温度計を備えた100mlのガラス製四つ口フラスコに、パーフルオロ−(9,9−ジハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネン酸):
【0481】
【化70】

【0482】
を25.0gと、パーフルオロ−(6,6−ジハイドロ−2−トリフルオロメチル−3−オキサ−5−ヘキセン酸):
【0483】
【化71】

【0484】
を25.0g、および過硫酸アンモニウム180mgを水100gに溶解したものを入れ、充分に窒素置換を行ったのち、窒素雰囲気下80℃で6時間重合反応を行った。重合後の溶液に10%塩酸を50g加え、ポリマーを析出させ、析出したポリマーをアセトンに溶解させたものをn−ヘキサンに注ぎ、分離、真空乾燥させ、無色透明な重合体38gを得た。
【0485】
この重合体は、19F−NMR分析、H−NMR分析およびIR分析により分析したところ、パーフルオロ−(9,9−ジハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネン酸)/パーフルオロ−(6,6−ジハイドロ−2−トリフルオロメチル−3−オキサ−5−ヘキセン酸)が38/62(モル%)の組成比である含フッ素重合体であった。
【0486】
また、合成例1と同様にしてカルボキシル基をメチルエステル化した後、GPC測定を行った。数平均分子量は39,000であった。
【0487】
合成例16(親水性基Yが−COOH基である含フッ素重合体の合成)
攪拌装置および温度計を備えた100mlのガラス製四つ口フラスコに、パーフルオロ−(9,9−ジハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネン酸):
【0488】
【化72】

【0489】
を15.0gと、パーフルオロ−(6,6−ジハイドロ−2−トリフルオロメチル−3−オキサ−5−ヘキセン酸):
【0490】
【化73】

【0491】
を35.0g、および過硫酸アンモニウム200mgを水100gに溶解したものを入れ、充分に窒素置換を行ったのち、窒素雰囲気下80℃で6時間重合反応を行った。重合後の溶液に10%塩酸を50g加え、ポリマーを析出させ、析出したポリマーをアセトンに溶解させたものをn−ヘキサンに注ぎ、分離、真空乾燥させ、無色透明な重合体8.3gを得た。
【0492】
得られた固体をアセトンに溶解させたものをn−ヘキサンに注ぎ、分離、真空乾燥させ、無色透明な重合体39gを得た。
【0493】
この重合体は、19F−NMR分析、H−NMR分析およびIR分析により分析したところ、パーフルオロ−(9,9−ジハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネン酸)/パーフルオロ−(6,6−ジハイドロ−2−トリフルオロメチル−3−オキサ−5−ヘキセン酸)が17/83(モル%)の組成比である含フッ素重合体であった。
【0494】
また、合成例1と同様にしてカルボキシル基をメチルエステル化した後、GPC測定を行った。数平均分子量は37,000であった。
【0495】
実験例1(含フッ素重合体の溶剤溶解性の確認)
合成例1〜7、および合成例10〜18でそれぞれ得た親水性基を有する含フッ素重合体を用いて、水およびアルコール類との溶解性を確認した。
【0496】
表1に示す各溶剤に重合体濃度が5質量%となるように混合し、攪拌を行ないながら室温で24時間放置し、溶液の外観を観測した。評価は、つぎの基準で行った。結果を表1に示す。
○:完全に溶解し、透明で均一な溶液となった。
×:一部または全く不溶で、不透明な溶液であった。
【0497】
【表1】

【0498】
実験例2(親水性基含有単量体のpKaの測定)
合成例1〜7および合成例10でそれぞれ用いた親水性基含有単量体(ただし、合成例5に関しては、無水マレイン酸の代わりにマレイン酸について測定した)について、以下の方法で親水性基のpKaを測定算出した。
【0499】
(pKaの測定算出方法)
1,1−ビストリフルオロメチル−3−ブテン−1−オール(合成例7で使用)
【0500】
【化74】

【0501】
を例にして測定算出法を記載する。
【0502】
水/アセトン=10/15ml溶液にCH=CHCHC(CFOHを0.7865g入れ、室温下攪拌した。均一溶液であることを確認した後、0.2mol/LのNaOH溶液で滴定を行った。滴定曲線は、0.15mlずつNaOH溶液を滴下し、そのときのpHを記録して得た。滴定曲線の変曲点(滴定曲線の微分値=dpH/dmlの最大値)から等量点を決定した。この場合、等量点は14.5mlであった。この半分の値7.25mlでのpHを滴定曲線から読み取ると、10.58であった。あらかじめブランクで測定した水/アセトン溶液と水溶液の滴定曲線から、7.25ml滴下時の液間電位差に由来するpH差は1.29であった。よって、10.98−1.29=9.69から、このCH=CHCHC(CFOHのpKaを9.69と決定した。
【0503】
同様の操作で、1.0865gのCH=CHCHC(CFOHを滴定した場合、等量点は20.15ml、1/2等量点は10.08mlとなり、1/2等量点でのpHは10.78となった。10.08mlでの両溶液間のpH差は1.14となり、10.78−1.14=9.64から、CH=CHCHC(CFOHのpKaを9.64と決定した。
【0504】
滴定溶液を約0.05mol/LのNaOH溶液に代えて同様の操作を行ったとき、0.115gのCH=CHCHC(CFOHの等量点は8.00mlとなり、1/2等量点は4.00ml、このときのpHは10.92となった。4.00mlでの両溶液間のpH差は1.38となり、10.92−1.38=9.54から、CH=CHCHC(CFOHのpKaを9.54と決定した。
【0505】
この3回の実験から、CH=CHCHC(CFOHのpKaを9.6とした。
【0506】
表2に示す各種OH基含有含フッ素エチレン性単量体について上記と同様な方法でpKaを測定した。結果を表2に示す。
【0507】
【表2】

【0508】
実験例3(フッ素含有率および親水性基含有率の測定)
合成例1〜7および合成例10、15〜18で得た親水性基を有する含フッ素重合体について、フッ素含有率(質量%)、親水性基含有率(モル数/重合体100g)を測定した。結果を表3に示す。
【0509】
【表3】

【0510】
実験例4(コーティング組成物の調製)
合成例1、2、4および5でそれぞれ得た含フッ素重合体10gをメタノール10mlに溶解した。得られた含フッ素重合体のメタノール溶液全量を、室温で攪拌しながら純水150mlに約10分間かけて滴下した。さらに純水を追加し、組成物の全体量を200mlに調整したのち、孔径0.2μmサイズのフィルターで濾過することで均一なコーティング組成物を得た。
【0511】
実験例5(コーティング組成物の調製)
合成例6および7でそれぞれ得た含フッ素重合体10gをメタノール200mlに溶解した後、孔径0.2μmサイズのフィルターで濾過することで均一なコーティング組成物を得た。
【0512】
実験例6(コーティング組成物の調製)
合成例3で得た含フッ素重合体10gをアセトン200mlに溶解した後、孔径0.2μmサイズのフィルターで濾過することで均一なコーティング組成物を得た。
【0513】
実験例7(コーティング組成物の調製)
合成例1で得た含フッ素重合体21.1gをメタノール20mlに溶解し、これにさらにエタノールアミン0.6gを混合した。ついで、得られた含フッ素重合体のメタノール溶液全量を室温で攪拌を行いながら、純水350mlに約10分かけて滴下した。さらに純水を追加し、組成物の全体量を420mlに調整したのち、孔径0.2μmサイズのフィルターで濾過することで均一なコーティング組成物を得た。
【0514】
実験例8(コーティング組成物の調製)
実験例7において、エタノールアミン量を1.5gにした以外は実験例7と同様にして含フッ素重合体のコーティング組成物を得た。
【0515】
実験例9(コーティング組成物の調製)
実験例7において、エタノールアミン量を3.0gにした以外は実験例7と同様にして含フッ素重合体のコーティング組成物を得た。
【0516】
実験例10(被膜の屈折率の測定)
8インチのシリコンウエハ基板に、実験例4〜9で調製したコーティング組成物のそれぞれを、スピンコーターを用いて、はじめに300rpmで3秒間、ついで4000rpmで20秒間ウェハーを回転させながら塗布し、乾燥後約100nmの膜厚になるように調整しながら被膜を形成した。
【0517】
上記の方法でシリコンウエハ基板上に形成したそれぞれの被膜について、屈折率を測定した。結果を表4に示す。
【0518】
(屈折率の測定)
分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製のVASE ellipsometer)を用いて193nm波長光における屈折率および膜厚を測定する。
【0519】
実験例11(被膜の現像液溶解速度の測定)
つぎの水晶振動子法(QCM法)により現像液溶解速度(nm/sec)を測定した。結果を表4に示す。
【0520】
試料の作製:
金で被覆された直径24mmの水晶振動子板に実験例4〜9で調製したコーティング組成物のそれぞれを塗布し乾燥後、約100nmの被膜を作製した。
【0521】
現像液溶解速度の測定:
膜厚は水晶振動子板の振動数から換算して算出し測定する。
【0522】
上記で作製した含フッ素重合体を塗布した水晶振動子板を標準現像液である2.38質量%濃度のテトラメチルアンモニウムヒドロキサイド(TMAH)水溶液に浸し、浸漬させた時点から時間に対する被膜の膜厚変化を振動数の変化により測定し、単位時間あたりの溶解速度(nm/sec)を算出した(参考文献:Advances in Resist Technology and Proceedings of SPIE Vol.4690,904(2002))。
【実施例1】
【0523】
(レジスト積層体の形成)
フォトレジスト層(L1)の形成:
ArFリソグラフィー用フォトレジストTArF−P6071(東京応化工業(株))を、スピンコーターにて、8インチのシリコン基板上に回転数を変えながら200〜300nmの膜厚に調整しながら塗布した後、130℃で60秒間プリベークしてフォトレジスト層(L1)を形成した。
【0524】
反射防止層(L2)の形成:
上記で形成したフォトレジスト層(L1)上に、実験例4、5および7〜9でそれぞれ調製した親水性基含有含フッ素重合体を含むコーティング組成物を、スピンコーターで、はじめに300rpmで3秒間、ついで4000rpmで20秒間ウェハーを回転させ膜厚約100nmに調整しながら反射防止層(L2)を形成し、フォトレジスト積層体を形成した。
【0525】
得られたフォトレジスト積層体について193nmにおける反射率を測定した。結果を表4に示す。
【0526】
(反射率の測定)
分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製のVASE ellipsometer)を用いて193nm波長光における反射率を測定する。
【0527】
また、実験例11で現像液溶解性が確認できた含フッ素重合体について、上記同様にして反射防止層(L2)を形成したフォトレジスト積層体について、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド2.38質量%の現像液で温度23℃、時間60秒間で静止パドル現像を行った後純水リンスを行った。いずれのコーティング組成物を使用した場合にも反射防止層(L2)が選択的に除去されたことが確認できた。
【0528】
【表4】

【0529】
実験例12(含フッ素重合体(A1)の水/イソプロパノール混合溶剤に対する溶解性)
合成例1および8〜18でそれぞれ得た含フッ素重合体1gに、表5に示す組成の水/イソプロパノール(IPA)混合溶媒の9gを加え攪拌しながら室温で24時間放置し、さらに室温で24時間靜置したのち溶液の外観を観測した。
【0530】
評価は、つぎの基準で行った。結果を表5に示す。
○:完全に溶解し、透明で低粘度の均一な溶液となった。
△:透明で均一な溶液となるが、高粘度のゲル状溶液となった
×:一部または全く不溶で、不透明な溶液であった。
【0531】
結果を表5に示した。
【0532】
【表5】

【実施例2】
【0533】
(コーティング組成物の調製)
合成例1で得た含フッ素重合体10gをイソプロパノール35gに溶解した。得られた含フッ素重合体のイソプロパノール溶液全量を、室温で攪拌しながら純水65gに約10分間かけて滴下した。さらに水/イソプロパノール:65/35質量%の混合溶液を追加し、組成物の全体量を200gに調整したのち、孔径0.2μmサイズのフィルターで濾過することで均一なコーティング組成物を得た。
【実施例3】
【0534】
(コーティング組成物の調製)
合成例9で得た含フッ素重合体10gをイソプロパノール30gに溶解した。得られた含フッ素重合体のイソプロパノール溶液全量を、室温で攪拌しながら純水70gに約10分間かけて滴下した。さらに水/イソプロパノール:70/30質量%の混合溶液を追加し、組成物の全体量を200gに調整したのち、孔径0.2μmサイズのフィルターで濾過することで均一なコーティング組成物を得た。
【0535】
実験例13
合成例8で得た含フッ素重合体10gをイソプロパノール40gに溶解した。得られた含フッ素重合体のイソプロパノール溶液全量を、室温で攪拌しながら純水60gに約10分間かけて滴下した。さらに水/イソプロパノール:60/40質量%の混合溶液を追加し、組成物の全体量を200gに調整したのち、孔径0.2μmサイズのフィルターで濾過することで均一なコーティング組成物を得た。
【実施例4】
【0536】
(コーティング組成物の調製)
合成例10で得た含フッ素重合体10gを純水190gに混合し、室温にて24時間撹拌、完全溶解させた。さらに得られた水溶液を孔径0.2μmサイズのフィルターで濾過することで均一なコーティング組成物を得た。
【実施例5】
【0537】
(コーティング組成物の調製)
合成例10で得た含フッ素重合体に代えて、合成例11で得た含フッ素重合体を使用した以外は実施例4と同様にして、コーティング組成物を得た。
【実施例6】
【0538】
(コーティング組成物の調製)
合成例10で得た含フッ素重合体に代えて、合成例12で得た含フッ素重合体を使用した以外は実施例4と同様にして、コーティング組成物を得た。
【0539】
実験例14(被膜の屈折率測定)
実施例2、3および4〜6、実験例13で得たコーティング組成物のそれぞれを用いて実験例10と同様にして、シリコンウエハ上に被膜を形成した後、193nm波長光での屈折率を測定した。
【0540】
結果を表6に示す。
【0541】
実験例15(被膜の現像液溶解速度の測定)
実施例2、3および4〜6、実験例13で得たコーティング組成物のそれぞれを用いて実験例11と同様にして、試料の作成および水晶振動子法(QCM法)により現像液溶解速度(nm/sec)を測定した。
【0542】
結果を表6に示す。
【0543】
実験例16(レジスト積層体の形成と反射率の測定)
フォトレジスト層の形成:
実施例1と同様にしてArFリソグラフィー用のレジストを用いてフォトレジスト層を形成した。
【0544】
反射防止層の形成:
上記で形成したフォトレジスト層上に実施例2、3および4〜6、実験例13で得たコーティング組成物のそれぞれを用いて、実施例1と同様にして反射防止層を形成し、フォトレジスト積層体を得た。
【0545】
得られたフォトレジスト積層体のそれぞれについて、実施例1と同様にして、193nm波長光における反射率を測定した。
【0546】
結果を表6に示す。
【0547】
【表6】

【実施例7】
【0548】
(コーティング組成物の調製)
(アミン類(C)の添加)
合成例1で得た含フッ素重合体10gに、含フッ素重合体中に含まれるカルボキシル基に対して0.6当量となるようにジエタノールアミン(1.5g)を混合し、さらに純水を加え、組成物の全体量で200gとし、室温で6時間撹拌した。室温で24時間放置後、溶液の外観を観測した。
【0549】
評価は、つぎの基準で行った。
○:完全に溶解し、透明で低粘度の均一な溶液となった。
△:透明で均一な溶液となるが、高粘度のゲル状溶液となった
×:一部または全く不溶で、不透明な溶液であった。
【0550】
(酸類(D)の添加−1)
上記アミン類を含むコーティング組成物の50gに、パラトルエンスルホン酸を含フッ素重合体中に含まれるカルボキシル基に対して、0.2当量となるように混合した。室温で6時間撹拌、さらに室温で24時間放置後、上記と同様、溶液の外観を観測した。
【0551】
(酸類(D)の添加−2)
上記アミン類を含むコーティング組成物の50gに、パーフルオロブタン酸を含フッ素重合体中に含まれるカルボキシル基に対して、0.2当量となるように混合した。室温で6時間撹拌、さらに室温で24時間放置後、上記と同様、溶液の外観を観測した。
【0552】
(コーティング組成物のpHの測定)
前記pHメーターを用いて、上記コーティング組成物のpHを測定した。また前記実施例5で得たコーティング組成物のpHを測定した。
【0553】
結果を表7に示す。
【0554】
【表7】

【実施例8】
【0555】
(コーティング組成物の調製)
(界面活性剤(E)の添加)
合成例1で得た含フッ素重合体10gをイソプロパノール25gに溶解した。得られた含フッ素重合体のイソプロパノール溶液全量を、室温で攪拌しながら純水75gに約10分間かけて滴下した。さらに水/イソプロパノール:75/25質量%の混合溶液を追加し、組成物の全体量を200gにし、室温で6時間撹拌した。室温で24時間放置後、溶液の外観を観測したところ、一部不溶物が残り、不透明な溶液となった。
【0556】
上記組成物の50g、4種を分けて取りだし、そのそれぞれに界面活性剤として、下式(E−1)、(E−2)、(E−3)および(E−4)、
【0557】
【化75】

【0558】
(E−4):
CFCF(CFCFCHCHOCOC(CH)=CH(n=3、4、5の化合物の重量比5:3:1の混合物)で示される化合物の20g、
CH=C(CH)COO(CHCHO)CHの10g、
CH=C(CH)COO(CHCH(CH)O)1Hの5g、
CH=C(CH)COOCHCH(OH)CHClの4g、
CH=C(CH)COOCHCH(OH)CHOHの1g
を共重合してなる数平均分子量12000(スチレン換算)の共重合体の0.05g(組成物中のポリマーに対して2.0質量%)を添加し、室温で6時間撹拌した。室温で24時間放置後、溶液の外観を観測した。
【0559】
評価は、つぎの基準で行った。
○:完全に溶解し、透明で低粘度の均一な溶液となった。
△:透明で均一な溶液となるが、高粘度のゲル状溶液となった
×:一部または全く不溶で、不透明な溶液であった。
【0560】
結果を表8に示す。
【0561】
【表8】

【実施例9】
【0562】
(コーティング組成物の調製)
合成例13で得た含フッ素重合体10gをイソプロパノール20gに溶解した。得られた含フッ素重合体のイソプロパノール溶液全量を、室温で攪拌しながら純水80gに約10分間かけて滴下した。さらに水/イソプロパノール:80/20質量%の混合溶液を追加し、組成物の全体量を200gに調整したのち、孔径0.2μmサイズのフィルターで濾過することで均一なコーティング組成物を得た。
【実施例10】
【0563】
(コーティング組成物の調製)
合成例13で得た含フッ素重合体に代えて、合成例14で得た含フッ素重合体を使用した以外は実施例9と同様にして、コーティング組成物を得た。
【実施例11】
【0564】
(コーティング組成物の調製)
合成例13で得た含フッ素重合体に代えて、合成例15で得た含フッ素重合体を使用した以外は実施例9と同様にして、コーティング組成物を得た。
【実施例12】
【0565】
(コーティング組成物の調製)
合成例13で得た含フッ素重合体に代えて、合成例16で得た含フッ素重合体を使用した以外は実施例9と同様にして、コーティング組成物を得た。
【0566】
実験例17(被膜の屈折率測定)
実施例9〜12で得たコーティング組成物のそれぞれを用いて実験例10と同様にして、シリコンウエハ上に被膜を形成した後、193nm波長光での屈折率を測定した。
【0567】
結果を表9に示す。
【0568】
実験例18(被膜の現像液溶解速度の測定)
実施例9〜12で得たコーティング組成物のそれぞれを用いて実験例11と同様にして、試料の作製および水晶振動子法(QCM法)により現像液溶解速度(nm/sec)を測定した。
【0569】
結果を表9に示す。
【0570】
実験例19(レジスト積層体の形成と反射率の測定)
フォトレジスト層の形成:
実施例1と同様にしてArFリソグラフィー用のレジストを用いてフォトレジスト層を形成した。
【0571】
反射防止層の形成:
上記で形成したフォトレジスト層上に実施例9〜12で得たコーティング組成物のそれぞれを用いて、実施例1と同様にして反射防止層を形成し、フォトレジスト積層体を得た。
【0572】
得られたフォトレジスト積層体のそれぞれについて、実施例1と同様にして、193nm波長光における反射率を測定した。
【0573】
結果を表9に示す。
【0574】
【表9】

【0575】
実験例20(被膜の水に対する溶解速度の測定)
つぎの水晶振動子法(QCM法)により水に対する溶解速度(nm/sec)を測定した。結果を表10に示す。
【0576】
試料の作製:
金で被覆された直径24mmの水晶振動子板に実施例6、9〜12で調製したコーティング組成物のそれぞれを塗布し乾燥後、約100nmの被膜を作製した。
【0577】
水に対する溶解速度の測定:
膜厚は水晶振動子板の振動数から換算して算出し測定する。
【0578】
上記で作製した含フッ素重合体を塗布した水晶振動子板を純水に浸し、浸漬させた時点から時間に対する被膜の膜厚変化を振動数の変化により測定し、単位時間あたりの溶解速度(nm/sec)を算出した(参考文献:Advances in Resist Technology and Proceedings of SPIE Vol.4690,904(2002))。結果を表10に示す。
【0579】
【表10】

【0580】
合成例17(親水性基Yが−COOH基である含フッ素重合体の合成)
300mlオートクレーブにパーフルオロ−(6,6−ジハイドロ−2−トリフルオロメチル−3−オキサ−5−ヘキセン酸):
【0581】
【化76】

【0582】
を20.0g、CHCClFを80gおよびジノルマルプロピルパーオキシジカーボネートを0.2g入れ充分に窒素置換した後、テトラフルオロエチレン20gを入れた。このオートクレーブを40℃の温水浴につけ15時間振とうさせたところ、無色透明な固体が生成した。
【0583】
この固体をアセトンに溶解させたものをn−ヘキサンに注ぎ、分離、真空乾燥させ、無色透明な重合体17.3gを得た。
【0584】
この重合体を19F−NMR分析、H−NMR分析およびIR分析により分析したところ、
【0585】
【化77】

【0586】
の共重合体であった。
【0587】
また、合成例1と同様にしてカルボキシル基をメチルエステル化した後、GPC測定を行った。数平均分子量は61,000であった。
【0588】
合成例18(親水性基Yが−COOH基である含フッ素重合体の合成)
100mlオートクレーブにパーフルオロ−(6,6−ジハイドロ−2−トリフルオロメチル−3−オキサ−5−ヘキセン酸):
【0589】
【化78】

【0590】
を10.0g、CHCClFを40gおよびジノルマルプロピルパーオキシジカーボネートを0.1g入れ充分に窒素置換した後、テトラフルオロエチレン5gを入れた。このオートクレーブを40℃の温水浴につけ15時間振とうさせたところ、無色透明な固体が生成した。
【0591】
この固体をアセトンに溶解させたものをn−ヘキサンに注ぎ、分離、真空乾燥させ、無色透明な重合体7.5gを得た。
【0592】
この重合体を19F−NMR分析、H−NMR分析およびIR分析により分析したところ、
【0593】
【化79】

【0594】
の共重合体であった。
【0595】
また、合成例1と同様にしてカルボキシル基をメチルエステル化した後、GPC測定を行った。数平均分子量は46,000であった。
【実施例13】
【0596】
(コーティング組成物の調製)
合成例17で得た含フッ素重合体5gをイソプロパノール24gに溶解した。得られた含フッ素重合体のイソプロパノール溶液全量を室温で攪拌しながら純水96gに約10分間かけて滴下したのち、孔径0.2μmサイズのフィルターでろ過することで均一なコーティング組成物を得た。
【実施例14】
【0597】
(コーティング組成物の調製)
合成例18で得た含フッ素重合体を用いた他は実施例13と同様にしてコーティング組成物を得た。
【0598】
実験例21(皮膜の屈折率測定)
実施例13、14で得たコーティング組成物のそれぞれを用いて実験例10と同様にしてシリコンウエハ上に皮膜を形成した後、193nm波長光での屈折率を測定した。結果を表11に示す。
【0599】
実験例22(皮膜の現像液溶解速度の測定)
実施例13、14で得たコーティング組成物のそれぞれを用いて実験例11と同様にして、試料の作成および水晶振動子法(QCM法)により現像液溶解速度(nm/sec)を測定した。結果を表11に示す。
【0600】
実験例23(レジスト積層体の形成と反射率の測定)
フォトレジスト層の形成:
実施例1と同様にしてArFリソグラフィー用のレジストを用いてフォトレジスト層を形成した。
【0601】
反射防止層の形成:
上記で形成したフォトレジスト層上に実施例13、14で得たコーティング組成物のそれぞれを用いて、実施例1と同様にして反射防止層を形成し、フォトレジスト積層体を得た。
【0602】
得られたフォトレジスト積層体のそれぞれについて、実施例1と同様にして193nm波長光における反射率を測定した。結果を表11に示す。
【0603】
【表11】

【産業上の利用可能性】
【0604】
本発明は、特に反射防止層(L2)に用いる含フッ素重合体(A)に特徴を有するものであり、この含フッ素重合体(A)を反射防止層(L2)中に主成分として存在させることで、フォトレジスト層(L1)単独の場合で発生する定在波効果や段差のあるパターニングでの多重反射効果によるレジストパターンへの悪影響を低減でき、また外部雰囲気(空気中の酸性または塩基性物質や水分など)の影響によるパターン形状の変化を低減でき、その結果、パターンの形状、寸法精度が向上し、またそれらの再現性に優れた極微細レジストパターンを形成できるものである。
【0605】
本発明の反射防止層(L2)に用いる含フッ素重合体(A)は、従来では困難であった低屈折率と水溶性または現像液溶解性(溶解速度)を両立できるものであり、その結果、上記パターン形成における効果に加えて、さらに従来のフォトリソグラフィープロセス、なかでも特に現像プロセスにおいて、従来どおり適応可能な性能を有するものである。
【0606】
本発明によれば、リソグラフィー用フォトレジスト積層体を形成する工程において、とりわけArF(193nm)レーザーまたはFレーザーを露光光とするリソグラフィーにおいて、レジスト積層体の反射防止層を親水性基を含み高フッ素含有率の含フッ素重合体から構成しているため、フォトレジスト層内での照射光と基板からの反射光が干渉するために生じるパターン寸法精度の低下および現像工程での溶解速度の低下を防ぎ、微細加工性を改善することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)基板上にフォトレジスト層(L1)を形成する工程、および
(II)フォトレジスト層(L1)上に、親水性基Yを有する含フッ素重合体(A)を含むコーティング組成物を塗布することにより反射防止層(L2)を形成する工程
を含むフォトレジスト積層体の形成方法であって、
含フッ素重合体(A)が親水性基Yを含有する含フッ素エチレン性単量体由来の構造単位を有し、さらに該含フッ素重合体(A)が、
(i)親水性基YがpKaで11以下の酸性OH基を含むこと
(ii)フッ素含有率が50質量%以上であること、および
(iii)含フッ素重合体(A)100g中の親水性基Yのモル数が0.14以上であること
を特徴とするフォトレジスト積層体の形成方法。
【請求項2】
含フッ素重合体(A)において、酸性OH基を含む親水性基YがpKaで11以下の−OHおよび/またはpKaで11以下の−COOHである請求の範囲第1項記載のフォトレジスト積層体の形成方法。
【請求項3】
含フッ素重合体(A)100g中の親水性基Yのモル数が0.21以上である請求の範囲第1項または第2項記載のフォトレジスト積層体の形成方法。
【請求項4】
含フッ素重合体(A)中の親水性基Yが−COOHであって、さらに100g中の−COOHのモル数が0.21以上、0.290以下である請求の範囲第1項記載のフォトレジスト積層体の形成方法。
【請求項5】
含フッ素重合体(A)中の親水性基Yが−COOHであって、さらに数平均分子量において10000〜750000である請求の範囲第1項または第3項記載のフォトレジスト積層体の形成方法。
【請求項6】
含フッ素重合体(A)中の親水性基Yが−COOHであって、さらに数平均分子量において31000〜750000である請求の範囲第1項または第3項記載のフォトレジスト積層体の形成方法。
【請求項7】
含フッ素重合体(A)が、式(M−1):
−(M1)−(N1)− (M−1)
〔式中、構造単位M1は式(1):
【化1】

(式中、X、Xは同じかまたは異なりHまたはF;XはH、F、Cl、CHまたはCF;X、Xは同じかまたは異なりHまたはF;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基に親水性基Yが1〜4個結合した1価の有機基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基に親水性基Yが1〜4個結合した1価の有機基;a、bおよびcは同じかまたは異なり0または1)で表される含フッ素単量体由来の構造単位;構造単位N1は前記式(1)の含フッ素単量体と共重合可能な単量体由来の構造単位]であり、構造単位M1が30〜100モル%、構造単位N1が0〜70モル%の含フッ素重合体である請求の範囲第1項〜第6項のいずれかに記載のフォトレジスト積層体の形成方法。
【請求項8】
構造単位M1が、式(2):
【化2】

(式中、X、X、X、X、X、a、cおよびYは前記式(1)と同じ;Rfは炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する2価の含フッ素アルキレン基)で表される含フッ素単量体由来の構造単位である請求の範囲第7項記載のフォトレジスト積層体の形成方法。
【請求項9】
構造単位M1が、式(3):
【化3】

(式中、X、X、X、X、Xおよびaは前記式(1)と同じ;Rfは炭素数1〜10のエーテル結合を有しても良い含フッ素アルキル基;RはH、炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のエーテル結合を有しても良い含フッ素アルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種)で表される含フッ素単量体由来の構造単位である請求の範囲第7項記載のフォトレジスト積層体の形成方法。
【請求項10】
含フッ素重合体(A)が、式(M−2):
−(M2)−(N2)− (M−2)
[式中、構造単位M2は親水性基Yとして−COOHを含む式(4):
【化4】

(式中、X、Xは同じかまたは異なりHまたはF;XはH、F、Cl、CHまたはCFであり、ただし、X、X、Xの少なくとも1つはフッ素原子を含む)で表されるフッ素単量体由来の構造単位;構造単位N2は前記式(4)の含フッ素単量体と共重合可能な単量体由来の構造単位]で表され、構造単位M2が10〜100モル%、構造単位N2が0〜90モル%の含フッ素重合体である請求の範囲第1項および第3項〜第4項のいずれかに記載のフォトレジスト積層体の形成方法。
【請求項11】
コーティング組成物が、さらに(B)水およびアルコール類よりなる群から選ばれる少なくとも1種の溶剤を含むことを特徴とする請求の範囲第1項〜第10項のいずれかに記載のフォトレジスト積層体の形成方法。
【請求項12】
コーティング組成物が、さらに(C)アンモニアおよび有機アミン類よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求の範囲第11項記載のフォトレジスト積層体の形成方法。
【請求項13】
(A1)カルボキシル基を有する含フッ素重合体、
(B)水およびアルコール類よりなる群から選ばれる少なくとも1種の溶剤
からなるコーティング組成物であって、
含フッ素重合体(A1)が式(M−3):
−(M3)−(N3)− (M−3)
〔式中、構造単位M3は式(5):
【化5】

(式中、X10、X11は同じかまたは異なりHまたはF;X12はH、F、Cl、CHまたはCF;X13、X14は同じかまたは異なりHまたはF;Rf10は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する2価の含フッ素アルキレン基;a1およびc1は同じかまたは異なり0または1)で表される含フッ素単量体由来の構造単位;構造単位N3は前記式(5)の含フッ素単量体と共重合可能な単量体由来の構造単位]であり、構造単位M3を55〜100モル%、構造単位N3を0〜45モル%含み、数平均分子量が10000〜750000の含フッ素重合体であるコーティング組成物。
【請求項14】
含フッ素重合体(A1)が数平均分子量で31000〜750000の含フッ素重合体である請求の範囲第13項記載のコーティング組成物。
【請求項15】
含フッ素重合体(A1)において、構造単位M3が70〜100モル%、構造単位N3が0〜30モル%である請求の範囲第13項または第14項記載のコーティング組成物。
【請求項16】
溶剤(B)が水または水とアルコール類の混合溶剤から選ばれるものであって、溶剤(B)中の水の含有比率が、水とアルコールの合計重量に対して、65質量%を超えることを特徴とする請求の範囲第13項〜第15項のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項17】
コーティング組成物が、さらに(C)アンモニアおよび有機アミン類よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求の範囲第13項〜第16項のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項18】
アンモニアおよび有機アミン類よりなる群から選ばれる少なくとも1種(C)が、アンモニアおよびヒドロキシルアミン類から選ばれる少なくとも1種である請求の範囲第17項記載のコーティング組成物。

【図1】
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【国際公開番号】WO2005/050320
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【発行日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515600(P2005−515600)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016937
【国際出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】