説明

レンズのクリーニング方法およびクリーニング装置

【課題】簡単な構造で、各種形状の異なるレンズに対しこれに付着した異物を確実に除去することができるレンズのクリーニング方法およびクリーニング装置を提供する。
【解決手段】レンズLに付着した異物をワイピング部材41により拭き取るレンズLのクリーニング方法であって、レンズLおよびワイピング部材41の一方を保持するロボット2と、他方を保持する保持機構71と、を用い、レンズLの拭取り面を撮像し、拭取り面の形状を画像認識する形状認識工程と、認識した拭取り面の形状に基づいて、レンズLに対するワイピング部材41の、拭取り動作における移動軌跡を生成する移動軌跡生成工程と、生成した移動軌跡に基づいて、ロボット2および保持機構71により、レンズLに対しワイピング部材41を相対的に拭取り動作させる拭取り工程と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてメガネレンズに付着した異物を拭き取るレンズのクリーニング方法およびクリーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レンズのクリーニングではないが、レンズを保持するレンズ保持部と、レンズ保持部を揺動させる揺動機構と、ドーム状の研磨パッドを有する研磨部と、研磨部を回転駆動させる回転機構と、を備えたメガネレンズの研磨装置が知られている(特許文献1参照)。この研磨装置では、レンズの曲面全体をこれと相補形状の研磨パッドに密着させた状態で、揺動機構の揺動および回転機構の回転により、レンズの表面を研磨している。
【特許文献1】特開2004―216545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、このような研磨装置による研磨工程の後に、ハードコート膜や反射防止膜をレンズ表面に成膜するが、その際、レンズに塵や埃等の異物が付着していることがあるため、これら作業の前工程として、ワイピング部材によりレンズをクリーニングする必要がある(現状は手拭きである。)。しかしながら、上記従来技術を踏襲して、研磨パッドをワイプピング部材に替え、上記研磨装置を適用してクリーニングを行った場合、ワイプピング部材が常にレンズの曲面全体に面接触するため、単位面積当りの押圧力が不足し、且つかき取り動作が行われず、払拭不良を生じる可能性がある。また、レンズには、円形のものの他、楕円等の非円形のものあり、且つ凹凸形状における曲率の相違や厚みも区々であり、これら各種形状のレンズに対応させるためには、装置構造が極めて複雑になることが想定される。
【0004】
本発明は、簡単な構造で、各種形状の異なるレンズに対しこれに付着した異物を確実に除去することができるレンズのクリーニング方法およびクリーニング装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のレンズのクリーニング方法は、レンズに付着した異物をワイピング部材により拭き取るレンズのクリーニング方法であって、レンズおよびワイピング部材の一方を保持するロボットと、他方を保持する保持機構と、を用い、レンズの拭取り面を撮像し、拭取り面の形状を画像認識する形状認識工程と、認識した拭取り面の形状に基づいて、レンズに対するワイピング部材の、拭取り動作における移動軌跡を生成する移動軌跡生成工程と、生成した移動軌跡に基づいて、ロボットおよび保持機構により、レンズに対しワイピング部材を相対的に拭取り動作させる拭取り工程と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
本発明のレンズのクリーニング装置は、レンズに付着した異物をワイピング部材により拭き取るレンズのクリーニング装置であって、レンズの拭取り面を撮像し、拭取り面の形状を画像認識する形状認識手段と、認識した拭取り面の形状に基づいて、レンズに対するワイピング部材の、拭取り動作における移動軌跡を生成する移動軌跡生成手段と、生成した移動軌跡に基づいて、レンズに対しワイピング部材を相対的に拭取り動作させる拭取り動作手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、画像認識した拭取り面の形状に基づいて、レンズに対するワイピング部材の、拭取り動作における移動軌跡を生成し、これに基づいて拭取り動作を実施するため、各種形状の異なるレンズに対し、最も適切な拭取り動作を行うことができる。このため、各種のレンズに対し、拭き残しなくこれに付着した異物を確実に拭き取ることができる。また、この拭取り動作をロボットで行うことにより、装置構成を単純化することができると共に、立体的な拭取り動作であっても、これを忠実に実行することができる。なお、移動軌跡は、予め基本形態を決めておき、レンズの形状に合わせてこれを変形(移動軌跡の生成)することが、好ましい。
【0008】
この場合、移動軌跡は、渦巻き状であることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、レンズの拭取り面全域を、連続して且つ拭き残しなく拭き取ることができ、レンズを効率良く拭き取ることができる。
【0010】
これらの場合、拭取り動作手段は、ワイピング部材を保持する保持機構と、レンズを非拭取り面側から保持すると共に、レンズの拭取り面をワイピング部材に押し当てた状態で移動軌跡に基づいて移動させるロボットと、を有していることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、ロボットにより、移動軌跡に基づく複雑な拭取り動作を行わせることができ、レンズに付着した異物を確実かつ効率良く除去することができる。
【0012】
この場合、保持機構は、ワイピング部材を保持するワイピングホルダと、ワイピングホルダを介して、ワイピング部材をレンズに押圧する押圧機構部と、を有していることが、好ましい。
【0013】
この構成によれば、レンズの凹凸面(拭取り面)、すなわち光軸方向に対しワイピング部材を精度良く追従させることができるため、レンズに付着した異物を確実に除去することができる。
【0014】
また、複数のレンズをストックするレンズストッカを、更に備え、ロボットは、拭取り動作の前後に、レンズストッカに対するレンズの給材動作および徐材動作を行なうことが、好ましい。
【0015】
この構成によれば、ロボットにレンズの徐給材機能を併せ持たせることができ、全体としてロボットを効率良く稼動させることができ、レンズクリーニングのタクトタイムを短縮することができる。
【0016】
一方、ワイピング部材は、弾性材をワイピングシートで包んだものであり、レンズの一部に押し当てられる大きさを有していることが、好ましい。
【0017】
この構成によれば、弾性材により、ワイピングシートをレンズの拭取り面に倣うように、且つ拭取り部分に押圧力を集中させるように押し当てることができ、レンズを良好にクリーニングすることができる。
【0018】
同様に、ワイピング部材は、弾性材と、前記弾性材を覆う帯状のワイピングシートとから成り、弾性材に対し、ロール状に巻回したワイピングシートを繰り出すと共にロール状に巻き取るワイピングシート供給手段を、更に備えることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、弾性材により、ワイピングシートをレンズに倣うようにしてその拭取り面に押し当てることができ、レンズを良好にクリーニングすることができる。また、弾性材に対し、ワイピングシートの供給を連続して行うことができ、ワイピング部材の交換のために装置を停止させる必要がない。
【0020】
これらの構成において、レンズが、メガネレンズであることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、メガネレンズに付着した異物を確実に除去することができるクリーニング装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の本実施形態にかかるメガネレンズのクリーニング方法およびクリーニング装置(以下、「クリーニング装置」と言う。)について説明する。このクリーニング装置は、ワイピング部材によりレンズの拭取り表面に付着した異物を拭取るものであり、ハードコート膜や反射防止膜の成膜工程の前工程として、行われるものである。なお、本実施形態では、レンズにメガネレンズを適用し、凹面をクリーニングする場合を例に挙げて説明する。
【0023】
図1および図2に示すように、クリーニング装置1は、レンズ保持機構21を介して、メガネレンズLを非拭取り面側から吸着保持するロボット2と、メガネレンズLの拭取り面に接触して拭取り面に付着した異物を拭き取るクリーニングユニット3と、複数のメガネレンズLをストックしたレンズトレイ(レンズストッカ)31をセットするトレイセット部4と、メガネレンズLを表裏反転させる反転機構5と、メガネレンズLの形状を画像認識する画像認識ユニット(形状認識手段)6と、認識カメラ8による認識結果に基づいてクリーニングにおけるワイピング部材41の移動軌跡を生成する移動軌跡生成部(移動軌跡生成手段)42を有すると共に、ロボット2を始めこれら構成装置を統括制御する制御装置7と、を備えている。なお、図示では、これら構成装置を支持する機台や安全カバーは、省略されている。
【0024】
ロボット2は、いわゆる水平多関節ロボットであり、ロボットベース11と、鉛直軸である第1回転軸15を介してロボットベース11に回転自在に支持された第1アーム12と、鉛直軸である第2回転軸16を介して第1アーム12の先端部に支持された第2アーム13と、回転/スライド軸17を介して第2アーム13の先端部に支持された出力部14と、を備えている。そして、この出力部14に上記のレンズ保持機構21が着脱自在に取り付けられている。第1アーム12および第2アーム13はいずれも水平面内で回動する水平アームであり、レンズ保持機構21を水平面内で移動させる。出力部14は、回転/スライド軸17により、レンズ保持機構21を介して、メガネレンズLを回転させると共に上下動させる。なお、本実施形態では、水平多関節ロボットを用いているが、単関節のロボットを用いるようにしてもよい。
【0025】
レンズ保持機構21は、メガネレンズLを吸着保持する吸着ヘッド22と、真空チューブ23を介して吸着ヘッド22に接続された真空吸引設備(図示省略)とで構成されている。吸着ヘッド22は、ゴムや樹脂で構成された略円錐台形状のヘッド本体24と、ヘッド本体24を支持するヘッド回転軸25とから成り、ヘッド回転軸25の軸心には上記の真空チューブ23に連通する真空経路26が形成されている。
【0026】
第1回転軸15および第2回転軸16には、それぞれ第1モータ(サーボモータ)27および第2モータ(サーボモータ)28が組み込まれており、第1モータ27および第2モータ28は、上記の制御装置7に接続されている。制御装置7は、第1モータ27および第2モータ28を駆動し、第1アーム12および第2アーム13を介して、出力部14を水平面内において往復動させる。これにより、拭取り動作において、吸着ヘッド22が往復動する。
【0027】
回転/スライド軸17には、ヘッド回転軸25を介して吸着ヘッド22を正逆回転させる回転モータ(サーボモータ)29と、吸着ヘッド22を上下動させるスライドモータ(サーボモータ)30と、が組み込まれている。回転モータ29およびスライドモータ30は、上記の制御装置7に接続されており、制御装置7の制御信号に従ってメガネレンズLを回転且つ上下動させる。すなわち、吸着ヘッド22に吸着されるメガネレンズLは、回転しながらクリーニングユニット3に押圧される。
【0028】
トレイセット部4には、レンズトレイ31を位置決めする機構(図示省略)が設けられおり、トレイセット部4にレンズトレイ31をセットすることで、レンズトレイ31(各メガネレンズL)とロボット2とが自動的に位置合わせされる。レンズトレイ31は、マトリクス状に複数のセット溝(図示省略)を有し、各メガネレンズLは、その曲面に傷が付かないように凹面が下になるようにして、セット溝にセットされている。この場合、複数のメガネレンズLは、クリーニング装置1に対し、レンズトレイ31に収容した状態で搬入搬出される。また、各メガネレンズLは、レンズトレイ31から一枚ずつピックアップされてクリーニングされ、クリーニング後、元の位置に戻される(図4(b)参照)。
【0029】
反転機構5は、メガネレンズLを四方から把持する4つの把持爪32と、把持爪32を支持する支持部材33と、支持部材33を介して把持爪32を把持動作させる把持機構34と、把持機構34と共に把持爪32に把持したメガネレンズLを180°回転させる回転機構36と、を備えている(図4(c)参照)。上述したように、メガネレンズLは、凹面が下になるようにレンズトレイ31にセットされるため、凸面側をクリーニング(拭取り動作)する場合には、ロボット2により持ち込まれたメガネレンズLを、反転機構5により反転してからクリーニング動作に移行する。また、クリーニングの後、再度メガネレンズLを反転させ、凹面を下にしてレンズトレイ31に戻される。
【0030】
画像認識ユニット6は、CCDまたはCMOS等の認識カメラ8および照明とで構成されており、クリーニングに先立って、ロボット2より運び込まれたメガネレンズLを撮像し、その形状を画像認識する(図4(c)参照)。メガネレンズLの撮像結果は、画像処理されることでメガネレンズLの形状が認識され、この認識結果に基づいて拭取り動作におけるワイピング部材41の相対的な移動軌跡が作成される。画像認識では、撮像されたメガネレンズLの輪郭を複数箇所プロットし、プロットした各点のレンズ中心からの座標を求めて、メガネレンズLの外形を把握する。なお、撮像時には、斜め下から照明することで、メガネレンズLの撮像を容易にすることが好ましい。また、可能であれば、拭取り面の凹凸形状も画像認識することが、好ましい。
【0031】
移動軌跡生成部42は、撮像されたメガネレンズLの形状に基づいてワイピング部材41の移動軌跡を作成する。移動軌跡生成部42は、RAM43に記憶されている拭取り動作の基本移動軌跡を、上記の画像認識ユニット6の認識結果であるメガネレンズLの外形に合わせて拡大・縮小或いは変形することで、ワイピング部材41の移動軌跡を作成する。この場合、基本移動軌跡は、メガネレンズLの中心から周縁端へ向かう渦巻き状のものが好ましい。したがって、ワイピング部材41の移動軌跡は、円形のメガネレンズLに対しては、外形に倣った通常の(円に近い)渦巻き状となるが(図3(a)参照)、楕円のメガネレンズLに対しては、扁平の(楕円に近い)渦巻き状となる(図3(b)参照)。なお、拭取り面の凹凸形状を加味する場合には、この渦巻きが凹凸形状に合わせて立体形状となる。
【0032】
また、メガネレンズLの中心部を確実にクリーニングできるように、中心を僅かに外れた位置から中心に向い、さらに中心から周縁端へ向かう渦巻き状のものが、より好ましい(図3参照)。この場合の拭取り動作は、回転するメガネレンズLに対し、その中心から外れた位置に押し当てられたワイピング部材41が、中心を通って周縁端まで相対的に移動するように、ロボット2を制御する。
【0033】
本実施形態では、渦巻き状に基本移動軌跡を用いたが、移動軌跡は任意であり、これに限定されるものではない。例えば、メガネレンズLの中心部は拭取り難いため、この部分の拭取りでは、回転を停止しワイピング部材41往復動のみで拭取りを行った後に、渦巻き状に拭き取る基本移動軌跡としてもよい。また、ワイピング部材41の往復動のみ、あるいは往復動とメガネレンズLの間欠回転により、拭取り動作を行う基本移動軌跡としてもよい。
【0034】
クリーニングユニット3は、弾性材55および帯状のワイピングシート56から成るワイピング部材41と、弾性材55に対しワイピングシート56を繰出し且つ巻取るシート供給機構51と、供給されたワイピングシート56を不動に押えるワイピング材押え機構52と、弾性材55を保持するワイピングホルダ53と、ワイピングホルダ53を支持するユニットテーブル54と、有している。この場合、ワイピングホルダ53およびユニットテーブル54により、請求項にいう保持機構が構成されている。
【0035】
ワイピングホルダ53は、正面視略三角形状に形成され、その延在方向(図示のものでは奥行き方向)がメガネレンズLの直径より短く形成されている。ワイピングホルダ53の上部には、弾性材55を受容する断面「V」字状の切欠き部57が形成されている。そして、この切欠き部57に、後述する弾性材55が接着されている。
【0036】
弾性材55は、正面視略ひし形形状に構成され(図2参照)、その延在方向がワイピングホルダ53と略同長に形成されている(図2参照)。弾性材55は、発泡材やゴム等の樹脂性材料で形成されており、クリーニング時に、メガネレンズLにより押圧されると、その押圧力に応じてつぶれるように変形する。また、弾性材55は、後述するワイピングシート56にアセトンが供給された場合でも、その機能が十分発揮できるように、耐アセトン性を有していることが好ましい。
【0037】
ワイピングシート56は、シート供給機構51により弾性材55を覆うように繰り出され、この弾性材55を覆う部分が、弾性材55と共にメガネレンズLの拭取り部58を構成する。すなわち、拭取り部58は、弾性材55の形状に倣い上部が突状に形成されると共に、その延在方向がメガネレンズLの直径より短く形成されている。拭取り部58にメガネレンズLが押圧されると、その押圧に倣って弾性材55がつぶれて、拭取りのための押圧力を拭取り部58に集中させることができる。
【0038】
シート供給機構51は、巻回したワイピングシート56を繰り出す繰出しリール61と、ワイピングシート56を巻き取る巻取りリール62と、巻取りリール62を回転させる巻取りモータ63と、を有している。巻取りモータ63の駆動により、繰り出されたワイピングシート56は、ベース64および弾性材55の上面に沿うように走行してセットされ、使用後、巻取りリール62で巻き取られるようになっている。
【0039】
ワイピング材押え機構52は、ユニットテーブル54上の両端部に設けられた左右一対の押え部材65,66と、各押え部材65,66を押圧動作(昇降)させる一対のシリンダ67,68と、を有し、一対のシリンダ67,68は制御装置7により制御される。ワイピング材押え機構52は、クリーニングユニット3に導入したワイピングシート56を所望の位置で不動に押さえる。これにより、クリーニング時に、ワイピングシート56がずれたり、シワになることがなく、良好にクリーニングを行うことができる。
【0040】
なお、図示では省略したが、シート供給機構51には、ワイピングシート56にアセトンを含浸させるアセトン供給手段が併設されており、アセトン供給手段は、エアー供給設備に連通する噴霧ヘッドを有し、繰り出されたワイピングシート56にアセトンを噴霧する。これにより、メガネレンズLを傷つけることなくクリーニングを行うことができる。
【0041】
次に、図4を参照して、クリーニング装置1を用いたメガネレンズLの一連のクリーニング方法について説明する。先ず、ロボット2を駆動させて、レンズトレイ31からメガネレンズLをピックアップ(吸着)し(図4(a)参照)、これを画像認識ユニット6の直上部に移動させる(図4(b)参照)。メガネレンズLの凸面をクリーニングする場合には、画像認識ユニット6への移動に先立ち、メガネレンズLを反転機構5に受け渡し(図4(c)参照)、ここで反転させてから画像認識ユニット6に臨ませる。画像認識ユニット6は、メガネレンズLを撮影し、画像処理することでメガネレンズLの形状を認識する(形状認識工程)(図4(b)参照)。続いて、制御装置7の移動軌跡生成部42が、認識したメガネレンズLの形状に基づいて、メガネレンズLに対するワイピング部材41の拭取り動作における移動軌跡を作成する(移動軌跡生成工程)(図4(d)参照)。
【0042】
ここでロボット2は、メガネレンズLをクリーニングユニット3の直上部に移動させ、上記の移動軌跡に基づく拭取り動作(クリーニング動作)を実施する(拭取り工程)(図2参照)。この拭取り動作では、メガネレンズLをワイピング部材41の直上部の所定の位置(拭取り開始位置)に移動させ、メガネレンズLを回転させながらワイピング部材41に押し付ける。更にこの状態からワイピング部材41がメガネレンズLの中心を通って周縁部に移動するように、メガネレンズLを略直線状に移動させる(なお、この動作を数回繰り返してもよい)。このようにして、メガネレンズLのクリーニングが終了したら、メガネレンズLをレンズトレイ31の元の位置に戻す。上述のように、メガネレンズLの凸面をクリーニングした場合には、メガネレンズLを反転機構5により反転(図4(c)参照)させてから、レンズトレイ31に戻すようにする。
【0043】
このようにして、レンズトレイ31の全てのメガネレンズLについてその片面をクリーニングする。ここで、いったんレンズトレイ31を成膜装置に運び込み、全てのメガネレンズLについて、クリーニング済みの片面に対して反射防止膜などを成膜する。再度、レンズトレイ31をクリーニング装置1に戻し、今度は全てのメガネレンズLについて他方の片面をクリーニングする。そして再度、レンズトレイ31を成膜装置に運び込み、他方の片面に反射防止膜などを成膜する。
【0044】
以上のように、本実施形態によれば、メガネレンズLに対して、拭取り部58を相対的に回転接触且つ往復接触させることで移動軌跡に沿って拭取りを行うので、メガネレンズLの表面全体をくまなくかき取り、レンズLに付着した異物を確実に除去することができる。また、ロボット2により、レンズトレイ31に対するメガネレンズLの除給材(搬送)等がなされるため、メガネレンズLのクリーニングを効率良く行うことができる。
【0045】
次に、図5を参照して、クリーニングユニット3の第2実施形態について説明する。この実施形態のクリーニングユニット3は、弾性材55およびワイピングシート56からなるワイピング部材41と、ワイピング部材41を保持する保持機構71と、保持機構71を支持する支持フレーム72と、を有している。弾性材55は、かまぼこ形状に形成され、ワイピングシート56に包まれた状態でワイピングホルダ53に保持されている。
【0046】
保持機構71は、ワイピング部材41を保持するワイピングホルダ53と、ワイピングホルダ53を介してワイピング部材41をメガネレンズLに押圧する押圧シリンダ(押圧機構部)73と、を有しており、押圧支持部材74を介して支持フレーム72に支持されている。押圧シリンダ73には、開閉バルブ(エアーオペレートバルブ)75および電空レギュレータ76が接続されており、制御装置7により、電空レギュレータ76を介して押圧シリンダ73の押圧力を制御できるようになっている。すなわち、保持機構71は、メガネレンズLの曲面に対し、ワイピング部材41を一定の圧力で押し付けるようになっている。
【0047】
なお、本実施形態では、ロボット2によりメガネレンズLを吸着保持し、ワイピング部材41に対しメガネレンズLを移動させて、拭取り動作を行うようにしたが、ロボット2によりワイピング部材41を保持し、固定的に吸着保持したメガネレンズLに対し、ワイピング部材41を移動させて、拭取り動作を行うようにしてもよい。かかる場合には、クリーニングユニット3に代えて、レンズ保持ユニットによりメガネレンズLを吸着保持することになる。また、本実施形態では、メガネレンズLを例に説明したが、本発明は、他の光学レンズのクリーニングにも適用できることは、言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】クリーニング装置の模式図である。
【図2】第1実施形態にかかるロボットおよびクリーニングユニットの断面模式図である。
【図3】円形のメガネレンズに対する移動軌跡の模式図である。
【図4】クリーニング装置によるクリーニング動作を説明するための説明図である。
【図5】第2実施形態にかかるロボットおよびクリーニングユニットの断面模式図である。
【符号の説明】
【0049】
1…クリーニング装置 2…ロボット 6…画像認識ユニット 21…レンズ保持機構 31…レンズトレイ 41…ワイピング部材 51…シート供給機構 53…ワイピングホルダ 55…弾性材 56…ワイピングシート 71…保持機構 73…押圧シリンダ L…メガネレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズに付着した異物をワイピング部材により拭き取るレンズのクリーニング方法であって、
前記レンズおよび前記ワイピング部材の一方を保持するロボットと、他方を保持する保持機構と、を用い、
前記レンズの拭取り面を撮像し、前記拭取り面の形状を画像認識する形状認識工程と、
認識した前記拭取り面の形状に基づいて、前記レンズに対する前記ワイピング部材の、拭取り動作における移動軌跡を生成する移動軌跡生成工程と、
生成した前記移動軌跡に基づいて、前記ロボットおよび前記保持機構により、前記レンズに対し前記ワイピング部材を相対的に拭取り動作させる拭取り工程と、を備えたことを特徴とするレンズのクリーニング方法。
【請求項2】
レンズに付着した異物をワイピング部材により拭き取るレンズのクリーニング装置であって、
前記レンズの拭取り面を撮像し、前記拭取り面の形状を画像認識する形状認識手段と、
認識した前記拭取り面の形状に基づいて、前記レンズに対する前記ワイピング部材の、拭取り動作における移動軌跡を生成する移動軌跡生成手段と、
生成した前記移動軌跡に基づいて、前記レンズに対し前記ワイピング部材を相対的に拭取り動作させる拭取り動作手段と、を備えたことを特徴とするレンズのクリーニング装置。
【請求項3】
前記移動軌跡は、渦巻き状であることを特徴とする請求項2に記載のレンズのクリーニング装置。
【請求項4】
前記拭取り動作手段は、前記ワイピング部材を保持する保持機構と、
前記レンズを非拭取り面側から保持すると共に、前記レンズの拭取り面を前記ワイピング部材に押し当てた状態で前記移動軌跡に基づいて移動させるロボットと、を有していることを特徴とする請求項2または3に記載のレンズのクリーニング装置。
【請求項5】
前記保持機構は、前記ワイピング部材を保持するワイピングホルダと、
前記ワイピングホルダを介して、前記ワイピング部材を前記レンズに押圧する押圧機構部と、を有していることを特徴とする請求項4に記載のレンズのクリーニング装置。
【請求項6】
複数の前記レンズをストックするレンズストッカを、更に備え、
前記ロボットは、前記拭取り動作の前後に、前記レンズストッカに対する前記レンズの給材動作および徐材動作を行なうことを特徴とする請求項4または5に記載のレンズのクリーニング装置。
【請求項7】
前記ワイピング部材は、弾性材をワイピングシートで包んだものであり、
前記レンズの一部に押し当てられる大きさを有していることを特徴とする請求項2ないし6のいずれかに記載のレンズのクリーニング装置。
【請求項8】
前記ワイピング部材は、弾性材と、前記弾性材を覆う帯状のワイピングシートとから成り、
前記弾性材に対し、ロール状に巻回した前記ワイピングシートを繰り出すと共にロール状に巻き取るワイピングシート供給手段を、更に備えたことを特徴とする請求項2ないし6のいずれかに記載のレンズのクリーニング装置。
【請求項9】
前記レンズが、メガネレンズであることを特徴とする請求項2ないし8のいずれかに記載のレンズのクリーニング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−66702(P2009−66702A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237550(P2007−237550)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】