説明

レーザアブレーションレジスト

第1のレジスト層(12)を基板(10)上にコーティングすることによってマイクロ構造デバイスを製造する方法。レジストの放射線誘導熱除去によって、パターンが基板上に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にはマイクロ電子デバイスの製造に関し、具体的には、レーザアブレーションによって形成されるレジストを用いる乾燥プロセスを使用したマイクロ電子デバイスの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィパターン化法が、フラットパネル用途のための薄膜トランジスタ(TFT)アレイなどのマイクロ電子デバイスの従来の製造に使用されてきた。マイクロ加工に適用される従来のフォトレジストリソグラフィ法は、基板上に約100nmの寸法内で構造体を画定し、材料領域を形成することができることが分かっている。
【0003】
印刷モデルに基づいて、リソグラフィプロセスは、コーティング(例えばインク)または幾つかの他の処理に対して受容性または抵抗性(非受容性)のいずれかであるパターンの領域を形成する。従来のフォトリソグラフィは少数の基本ステップを必要とし、使用される材料および他の要因によって変わる。典型的な順序は次の通りである:
(i)ポジ型またはネガ型フォトレジスト(例えば、スピンコーティングによる)のウェットコーティング、
(ii)フォトレジストのプリベイク(prebake)、
(iii)光学マスクアライナを用いてオーバーレイマスクを通して電磁放射の幾つかの形式により露光し、パターンを形成する、
(iv)例えばポストベイク(postbake)によって、マスクされたパターンを硬化させる、および
(v)液体エッチング剤を用いて、未硬化部分を除去する。
【0004】
次に表面をコーティングまたは処理した後、保護用のフォトレジストパターン自身を除去することができる。
【0005】
ステップ(i)から(v)は空気中(例えば、クリーンルーム環境)で実行されてもよく、典型的には別個の機器を用いて行われる。あるいは、1つ以上のステップ(例えば、コーティング堆積)が真空中で行われることがある。これらのステップの各々で実行されるプロセスは性質が非常に異なるために、どのタイプの自動化された連続製造システムまたは装置においても、ステップ(i)から(v)を組み合わせることは容易にはできない。
【0006】
より良い寸法分解能を実現し、コストを低減し、エッチング剤などの化学物質の使用をなくすために、上のステップ(i)から(v)に記載のような従来の方法を変えるために相当な努力が費やされてきた。特に有益な1つの改善は液体エッチング剤の使用を撤廃するプラズマエッチング法の改良である。上記ステップ(v)を参照すると、プラズマエッチングの使用は、乾燥した環境中でのマイクロリソグラフィ加工を行うための要因(enabler)である。
【0007】
マイクロリソグラフィ業者には周知のように、従来のフォトレジスト材料は、受け取られる総露光量、つまり経時的な照明の積分に応じた「相反則」に従う。従来のフォトレジストは一般に、光子エネルギーが特に高いスペクトルのUV部分の光を用いて露光される。半導体部品のマイクロ加工に使用されるフォトレジストの例は米国特許第6,787,283号明細書(アオアイら)に示されている。
【0008】
上記の従来のプロセスに対する追加の利点は、X線リソグラフィは依然としてマスクの使用を必要とするが、化学処理を部分的に低減し、電子ビームを用いてマスクなしで直接レジストにパターンを書き込むことができるという点で、電子ビームおよびX線リソグラフィによって提供される。有機材料中の結合の破壊を引き起こすのに十分な高エネルギー放射線は、放射線が照射されていない領域を除去しない溶媒を用いて画像領域内で除去できるように、鎖の切断、すなわち解重合をコーティングされたレジストに生じさせる。このタイプのリソグラフィ工程は、現像ステップにおけるレジストのイメージワイズな微分溶媒和に依存し、したがって、高価なマスクを必要とすることに加えて、液体化学物質の不利な使用を保持する。直接パターン書き込みデバイス(direct pattern writing device)として使用されるとき、電子ビームは単一ビーム露光の連続的な制限の結果として走査時間が長くなることに起因する低スループットを被り、このために生産量は低く制限される。電子ビームはサブマイクロメートルの高い分解能力があるため、従来のプロセス用のマスクを製造するために、主にマイクロ加工産業で使用される。
【0009】
更なる改善は、照射領域においてレジスト結合破壊、揮発化、およびレジストの材料排出を引き起こすのに十分なエネルギーを用い、400nm未満の波長の高エネルギーレーザを用いたレジストの直接光アブレーションによってもたらされ、これにより溶媒現像ステップが不要になる。しかし、直接UVアブレーション用のレーザシステムは非常に高価で、パルスの維持は難しく、それらの単一ビームの制限に起因して低スループットを被る。大面積の試験用レーザがその欠点を解決するが、パターンを形成するためのマスクの要件に苦しむ。
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,787,283号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、直接書き込み、すなわち高価でなく用途の広いクラスのレーザ誘導放射線、具体的にはソリッドステートIRダイオードレーザの使用を可能にするマスクレスリソグラフィの方法の必要性がある。IRダイオードレーザはコスト、利用可能性、信頼性、および寿命の利点を提供し、通信産業、CDおよびDVDライタおよびプレイヤーなどの多様な電子デバイス、およびデジタルカラープリンタ、レーザサーマルプレートライタ、イメージセッタ、およびプルーファーを含むグラフィックアートおよびレプログラフィックアートにおいて広く使用されている。また、個々のレーザはほぼ100以上の別個の変調レーザのアレイに連結することができる。単一ビームデバイスに比してスループットが劇的に増大する。あるいは、光は幾つかのレーザ源から、個々に制御されたビームの200乃至1000の別個のアドレス可能チャネルのセグメント化された光ゲート変調器を備えた単一バーレーザに結合することができる。このビーム寸法はそれらが運ぶ光の波長によってのみ制限され、2マイクロメートルの小ささのスポットを空間光変調器によって画定されるようなアレイ方向に生成することができる。そのような能力を有する市販のレーザシステムの例は、コダック社のNewsetterおよびCreo Trensetter plate−writer−prooferである。したがって、2マイクロメートルのフィーチャ分解能はダイオードレーザアレイシステムを用いて可能であり、これはLCDおよびOLEDディスプレイにおいて用いられる薄膜トランジスタアレイバックプレーンおよびカラーフィルタアレイにとって十分過ぎる。可視スペクトルで働くこれらのIRレーザおよびYAGレーザは、有機結合を破壊し、レジストの直接アブレーションをもたらすのには十分ではない光子エネルギーに悩まされる。
【0012】
また、コストを低減し、互換性のある可撓性支持基板およびロール間の連続製造であるために、ウェットケミカル処理の必要性を制限またはなくすマイクロ構造体構築のためのマスクレスリソグラフィ法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明およびその目的ならびに利点は、以下に示す好適な実施形態の詳細な説明において更に明白となろう。この発明はマイクロ構造デバイス、および特にマイクロ電子回路および薄膜トランジスタならびにカラーフィルタアレイの製造のための改善されたプロセスに関し、以下を含む。
1.レジスト材料の第1の層を基板上にコーティングする。
2.基板はパターン化されるべき材料の上部層を含む。
3.第1のレジスト材料のイメージワイズ放射線誘導熱除去によって基板材料上にパターンを形成する。
4.エッチングプロセスを用いて、パターン化されるべき基板材料を除去する。
5.ステップ2で露光されていない領域からレジストを除去して、基板材料のマイクロパターンを晒す。
【0014】
更なる実施形態では、レジストおよび(場合によっては)パターン化されるべき材料は、イメージワイズ放射線源の主要波長にて強力に吸収する光熱転換物質を備え、この放射線源は、525nmを超える波長の光、好ましくは遠赤外において750乃至1100nmの波長の光を発射するレーザである。本発明の幾つかの実施形態は、真空中で、あるいは蒸着源からレジスト層を塗布し、これを全てのドライエッチング法と組み合わせると、基板上に材料をパターン化するための完全な乾燥方法が可能となる。
【0015】
したがって、マイクロ構造およびマイクロ電子デバイスを製造する現行の方法の欠点は、マスクレスであり、完全に乾燥した状態で、化学的処理ステップの全部またはほとんどを用いず、高価でなく用途の広いクラスのレーザ、すなわちソリッドステートIRダイオードレーザを含む方法を提供することによって、本発明の要素によって補正される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本明細書は、本発明の主題を具体的に指摘し、明確に主張する特許請求の範囲で終わるが、本発明は添付図面を併用して以下の説明を読めば、より良く理解されるものと考えられる。
【0017】
本発明は、本発明の装置の一部を形成する要素、または本発明の装置とより直接的に協働する要素に特に向けられる。具体的に示されていないか、記載されていない要素は当該分野で周知の形態を取り得ることを理解されたい。
【0018】
基板10(図2および3)に取り付けられた図4および5の層11によって示したパターン化されるべき材料が、マイクロ加工産業で実施される幾つかの方法(限定するものではないが、スピンコーティング、スプレーコーティング、ホッパーコーティング、マイヤーロッドコーティング、グラビアコーティング、インクジェットコーティング、ディップコーティング、超臨界C02(スーパークリティカルC02:supercritical C02)、蒸着およびプラズマ真空蒸着)のいずれかを用いて、図6および7のレジスト層12でコーティングされる。レジスト層12は上記コーティング法のいずれかによって部分的にパターン化されてもよい。
【0019】
インテリジェンスなパターンが、イメージワイズ熱源によってレジスト材料を熱誘導アブレーション除去によって、レジスト層12に形成される。このイメージワイズ熱は、変調レーザビームまたはそういったビームのアレイによってもたらされることが好ましい。このようなレーザパターニングデバイスの略図を図1に示す。
【0020】
ここで図1を参照すると、本発明のインテリジェンスなアブレーションパターン形成に従って、支持基板10上にパターン化されるべき基板層11からレジスト層12をアブレーションするパターニング装置(以下、レーザシステムIと呼ぶ)が示されている。このパターニング装置のレーザ14はダイオードレーザでもよいし、750乃至1100nm、好ましくは805乃至840nmの好適な波長を有するレーザビーム26を生成する他の任意の高出力レーザであってもよい。本発明では2以上のレーザ14またはレーザビーム26を同時に用いることができる。レーザビーム26を走査して、レーザビーム26とレジスト層12との間に相対運動をもたらすために、可動ミラーを含む検流計22がfシータレンズ24を通るビームを走査して、X方向に走査線を形成する。当業者であれば、レーザビームの走査は、ミラー面を有する多角形を回転するような他の種類の可動性反射表面によって、あるいは回折格子を回転するような他のデバイスによって達成することも可能であることを理解しよう。あるいは、必要な相対運動は、レーザビーム26に対して基板10を移動させることによって得ることもできる。
【0021】
図1に示した実施形態では、基板組立体10、11、12は、全領域の走査を可能にする並進ステージによって、走査線に直交するY方向に運ばれる。好適な実施形態では、パターン化すべき基板は、レジスト側がレーザ源を向いた配向になっており、破片を収集するために設けられたカバーシートまたは前記破片を除去するために取り付けられた真空収集デバイスを備える。あるいは、透明基板10および基板層11を用いれば、レジスト側をレーザ源から離れる方向に向け、かつ、アブレーション材料を可撓性アンダーシートまたは真空チャネルに向けた状態で、基板を位置決めすることが可能となる。この支持基板は剛性または可撓性であり得る。
【0022】
走査の任意の地点のレーザビーム26の強度は、制御論理プロセッサ28からの命令を用いてレーザ出力制御ライン30によって制御される。あるいは、レーザビーム26の強度は、レーザ光学業者には周知であるように、音響光学変調器(図示せず)などの別個の変調器によって制御することができる。この代替実施形態では、基板組立体10、11、12は静止したままであることができ、レーザ書き込み装置が移動されるか、レーザビーム26が光学的に再方向付けされる。重要な特徴は、全領域の走査を可能にするために、レーザビーム26と基板組立体10、11、12との間には、相対運動が存在するということである。レーザシステムIのレーザビーム出力は、約6乃至約900マイクロ秒の滞留時間に相当する100乃至1Hzの走査周波数および約230乃至約34000mJ/cmの露光量で、0から約700ミリワットまで変動する。この走査パラメータはレジスト層アブレーション閾値より上で、ラインおよびスポットを過度に広く生み出して、その下側の物質に損傷を生じさせる過剰な露光量より下に、露光を最適化するように選択される。
【0023】
以下レーザシステムIIと呼ぶ好適な実施形態では、本願に援用する米国特許出願公開第2005/0266172号明細書(ケイら)に記載されているように、808nm(+/−10nm)の非コヒーレントな赤外線ダイオードレーザバーから構成され、ビームはビーム幅に亘って5マイクロメートルの間隔で空間光変調器によって変調される256の別個のアドレス可能なチャネルに分割される。高速走査方向のビーム強度分布は、1/e2直径値が3.6マイクロメートルであるガウス分布である。高速走査方向のピーク間距離は、変調スキームによって本発明の実施例については5マイクロメートルまで制限され、任意の画像演出において、1ピクセルを表す最大約5マイクロメートルのフィルム平面に最小のアブレーションスポットを生じる。サンプルを保持した2軸可動ステージによって、サンプルを横断してビームを走査させた。露光は高速走査軸可動ステージが1.0乃至0.1m/秒の速度で走るときに発生した。レーザシステムIIで利用可能な出力は、0.22乃至11J/cmの総露光範囲に相当するチャネル当たり11乃至55ミリワットであったが、本発明に有用な出力および露光は、これらの範囲に限定されるものではない。低速走査軸可動ステージは、別の高速走査運動を準備する際に設定された距離だけサンプルを増加させる。このシーケンスは所望の領域全体が露光されるまで継続する。
【0024】
基板は真空によってステージに対して保持されるが、当業者であれば、基板をステージに取り付ける他の多くの手段、例えば、クランプ締め、圧力の印加、接着剤、場合によっては基板の加熱等を用い、基板をアブレーションパターンと正確に位置決めおよび整合するための手段を含むことが理解されよう。この位置決めのための固定具の1例が、米国特許第6,695,029号明細書(フィリップスら)に開示されている。この可動ステージは、レジスト側面がレーザ源に向いて配向されているか、透明基板10および基板層11と一緒に働くときは、レーザ源から離れる方に向いて配向された基板を支持することができる。レーザ源に向いているとき、アブレーションの破片は、カバーシート上で、または好ましくは、レーザヘッドに取り付けられた真空収集デバイス内で収集することができる。このパターン情報はCPUおよびテストパターンまたはTif画像(1ピクセルには5×5マイクロメートルのパターン寸法が割り当てられた)を処理することのできるRIPを用いて提供される。
【0025】
任意の赤外線または可視光線YAGレーザシステムが本発明のレジスト層12と共に使用されてもよく、これは上記のレーザシステムIおよびIIに限定されるものではない。このレーザのアレイは、Kodak Approval Digital Proofing Systemのような目立たないダイオードのアセンブリであってもよいし、Kodak NewsetterまたはCreo Trendsetter Plate Writer−Proofersのようなセグメント化された光変調器を備えたバーレーザであってもよい。基板10を搬送するデバイスは剛性基板用の平台であってもよく、相対運動はレーザアレイまたは支持ステージを移動させることによってもたらされてもよい。可撓性支持体を利用したドラムシステムのほか、基板10の移動ウェブのために適切に近傍に設けられたレーザアレイが考慮されてもよい。デバイス自体の実際の限界および適した速度で情報を運ぶCPUの能力以外には、アレイを含んだアドレス可能なチャネルまたはレーザの数に制限はない。2つ以上のヘッドが同時に採用されてもよい。
【0026】
レジスト層12の平面上でレーザ出力を変調して所望のアブレーションパターンを生成することは、当該分野では周知の任意の手段、例えば、本発明のレーザシステムIおよびIIにおいて実施されるようなオンまたはオフモードのバイナリ露光によって、あるいはパルス幅変調によって達成することができる。唯一の要件は、オンモード時の出力は選択された走査速度でアブレーションを生じさせるのに十分なものでなければならないということである。
【0027】
レジスト層12および基板層11に供給されるイメージワイズ放射線は、非レーザ源、例えばマスクを通るキセノンフラッシュからのものでもよいし、熱誘導アブレーションを生じさせるために光熱転換物質の吸収波長において十分に高い強度を有する他の放射線源からのものでもよい。
【0028】
光熱転換物質
IRレーザの光源が結合を破壊することができない波長を発射する場合、パターン化されるべきレジスト層12または基板層11、または本発明の層12および11の組み合わせは、アブレーション閾値を超えるのに必要な熱を発生するために、光熱転換物質を用いて入射放射線の一部を吸収しなければならない。このため、層には放射線吸収材料(例えば、染料、顔料、カーボン、または金属)が提供されている。好適な熱物質は、750乃至1100nm、好ましくは800乃至840nmの近赤外の放射線を吸収する。また、YAGレーザと共に525nmを超える可視スペクトルで吸収する染料も、本発明には有用であり得る。
【0029】
本発明の好適なIR吸収染料は、共通の譲受人による米国特許第4,973,572号明細書(DeBoer)および第5,578,416明細書(Tutt)に指定されているか、「Infrared Absorbing Dyes」(マサル マツオカ編集、Plenum Press、1990)に記載されている。本発明に有用な染料タイプには、限定するものではないが、シアニン、スクアリリウム、クロコニウム、ピリリウムス、キノン、フタロシアニンおよびその金属錯体、ナフタロシアニンおよびその金属錯体、アゾ染料、ならびに分子間電荷移動錯体が挙げられる。当業者であれば、放射線吸収性発色団または本発明は、カーボンブラック、金属ナノ粒子、またはカーボンナノチューブを含んでもよい吸収体の特定の特性に応じて、単分子染料として、または色素粒子としてレジスト層12に提供することができることが理解されよう。本発明のレジスト層12に有用な他の放射線吸収体は、金属または無機金属材料(例えばクロム、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ジルコニウム)、合金(例えば、NiCr、MoCr、WTi、等)、酸素欠乏金属酸化物(例えば、アルミニウム酸化物またはクロム酸化物、等)、あるいはその反射防止性のために放射線を吸収する材料の層状積層体である。主要な基準は、放射線吸収物質が、レジスト層12から材料をアブレーションするのに十分高い吸光において、イメージワイズ放射線の所定波長のレーザ光を吸収することである。この移動の効率は、レーザ流束量、スポットサイズ、ビームオーバーラップ、および他の要因に左右されることは周知である。一般に、基板−レジスト積層体10、11、12に提供されるような放射線吸収材料の光学密度は少なくとも0.1であるべきである(光の20%は吸収される)。
【0030】
本発明の放射線吸収体は、レジスト層12の有機バインダーに溶解されたとして単分子種、レジスト層12の境界内の別個の層として、あるいはバインダー層が介在する複数の層としてレジスト層12に存在し得る。また、この放射線吸収物質は、真空蒸着された染料または金属などのパターン化されるべき基板層11の最上層として提供することができる。あるいはパターン化されるべき基板層11は完全な放射線吸収性の層ではあるが、非アブレーション層であってよい。基板層11に有用な放射線吸収金属および最上部金属には、限定するものではないが、Mo、Ni、Ti、Zr、W、Cr、等が挙げられる。こういった第2の金属最上部層は、小丘(hillock)欠陥を防止するためのアルミニウムの上に、拡散バリアとして設置される場合、マイクロエレクトロニクス産業においては一般的である。この放射線吸収材料はパターン化されるべき基板層11に含まれるとき、副層に存することもできる。本発明の特に有益で好適な実施形態は、レジスト層12の最も清浄的で最も効果的なアブレーションパターン排出のために、放射線吸収材料(例えば、材料11の最上層である上記金属の1つ)をレジスト層12(層12も染料などの放射線吸収物質を含む)に直接隣接して設置することである。
【0031】
本発明の放射線吸収物質は、当該分野で知られた多様な方法(限定するものではないが、スピンコーティング、スプレーコーティング、ホッパーコーティング、グラビアコーティング、インクジェット堆積、超臨界C02、等)で、バインダー材料を含んでいても含んでいなくてもよい溶液からレジスト層12またはパターン化されるべき材料11に塗布することができる。他の塗布方法には真空蒸着または蒸着が挙げられる。
【0032】
バインダー
本発明の目的のために、レジスト層12のバインダーはポリマーバインダー、または単肢ガラス、あるいはこれらの混合物を少なくとも含み、追加のガス生成物質を含み得ることが好ましい。アブレーションパターンの効率および清浄度を強化するために、ポリマーバインダーは全体または一部が、熱に不安定であるか、400℃未満の温度で解重合し易いポリマーから成ることが更に好ましい。
【0033】
「アブレーション除去」とは、基板層11からレジスト層12の熱誘導による物体排出であると広く理解され、ここではレジストの成分の少なくとも一部が気相状態に転換される。気相状態に転換される材料は、レジスト材料自身であってもよいし、アブレーション排出のための推進剤としてこのように働くレジスト層12の他の幾つかの成分材料であってもよい。アブレーション除去は断片化または微粒子排出も含み、ドナー材料の少なくとも一部は実際には気相状態に転換されなくてもよいが、ドナーの加熱された成分の一部から蒸気に転換されることによって効果的に断片化され、推進される。したがって、レジスト層は基板層11に最終パターンを形成する次のエッチングプロセスに耐える限り、熱に不安定な材料をできるだけ多く含むことが好ましい。
【0034】
この目的のために、ポリマーバインダーの好適なクラスはモノマーCH=CXY(式中、XおよびYは独立して、電気的に陰性な基または共鳴安定化された基である)由来のポリマーとして定義することができ、XおよびYは、ハロゲン基(XはYに等しくない場合)、−CN基、−(C=O)OR基、−(C=O)R基、−(C=O)NR2基(式中、Rは独立してHであることができる)、アルキル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基、アリール基、−(OCH2CH2)CH3基、−(OCH(CH3)CH2)CH3基、あるいは置換アルキルあるいはアルコキシド基(少なくとも1つの水素原子がハロゲン、シリコン、またはチタン原子で置換された)の中にあるものとして更に指定される。上記ポリマーの混合物もレジスト層12に含むことができる。
【0035】
この定義の下で、ポリマーのうちで特に有用なものはアルキルシアノアクリレートポリマーである。Xは−CNおよびYは(C=O)ORであり、R基はメチル、エチル、またはそれらのコポリマーである。このタイプのポリマーは、米国特許第5,468,591号明細書(Pearceら);第5,858,607号明細書(Burberryら);および第6,165,671号明細書(Weidnerら)に示されるように効果的にアブレーションされる有用な樹脂であることが知られている。シアノアクリレートはまた、ヘルベルトらの;Radiation Degradation of α−Substituted Acrylate Polymers and Copolymers;Journal of Applied Polymer Science,Vol.21,1977,pp.797−807により電子ビームレジストと同じほど有用であると、また、ホーガンらの;Laser Photoablation of Spin−on−Glass and Poly(Ethyl Cyanoacrylate)Photoresist;Applied Surface Science 36,1989,pp.343−349により高エネルギーUV放射線用の光アブレーションレジストと同じほど有用であるとして引用されている。
【0036】
特に、改善された接着性を基板層11に与え、基板層11のためのエッチング剤に対するエッチング抵抗性を与えるために、前記シアノアクリレートポリマーの物理的特性は改質される必要があり得ることが予想される。このような改善は電子ビームレジストとしてそれらを使用することに適用され、米国特許第5,359,101明細書(ウッズら)に教示されているように、例えば3−トリメチルシリルプロピル2−シアノアクリレートを生成するために、シアノアクリレートエステルのアルキル基を改質することを含む。このクラスのポリマー特性を改質するのに広く実施されている方法には、欧州特許第0343603号明細書、米国特許第4,686,168明細書(フジイら)、および特開平7−056341号公報のように、種々のビニルモノマーと共重合させて、エッチング抵抗性、接着性、および分子量安定性を改善することを含む。有用な組成物には、アクリレート、メタクリレート、フルオロアクリレート、およびフルオロメタクリレートとのシアノアクリレートコポリマー、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン、スチレン、a−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、メタクリルアミド、アクリルアミド、アクリルニトリル、およびメタアクリルニトリル、ならびにこれらの混合物が挙げられる。また、レジスト層12の最初のアブレーションパターン化の後にエッチング抵抗性を改善するために、コモノマー(例えば、放射線で架橋可能な、または化学的に架橋可能な基を含むケイ皮酸ビニル)が含まれてもよい。
【0037】
シアノアクリレートポリマーは、それらが高い分子量から低い分子量に種々の溶媒に平衡化するという点で、溶解されたときに分子量安定性を示すことが知られている(ウッズら;Vapour deposition of poly(alkyl−2−cyanoacrylate)resist coatings:a new Electron−beam/deep−ultra−violet photoresist technology;Polymer 1989,Vol.30,pp.1091−1098)。本発明で実施されるように殆どの場合、有用な重合度は殆ど常に維持され、一般に10,000(重量平均)未満には低下せず、典型的には溶液中で約30,000である。現像ステップを制御するために明確で一貫性のある溶液挙動に依存する電子ビームまたはX線リソグラフィにとっては、この挙動は特に厄介である。しかし、本発明の目的のために、実用的なアブレーション閾値エネルギーが提供されている限り、好ましい分子量は一切指定されず、レジストは基板層11の最終パターンに用いられるエッチング化学に耐える。当業者であれば、アブレーション効率が低い分子量によって恐らく好まれ、エッチング耐性などの物理的化学的特性がより高い分子量によって好まれてもよく、バランスは使用される基板層11およびプロセスの要求に応じて決定されなければならないことを理解しよう。
【0038】
ポリシアノアクリレートおよびそのコポリマーを含むレジスト層12は当該分野で実施されるコーティングまたは堆積の任意の手段を用いて基板層11に塗布することができ、特に有用な方法は米国特許第第4,675,273号明細書(ウッズら)によって教示されるような蒸着である。このような蒸着プロセスは、基板層11に最終的にパターンを形成するためのドライプラズマエッチング工程と組み合わされるときに、完全な乾燥プロセスの可能性を提供する。蒸着されたシアノアクリレートを放射線吸収種(例えば染料または金属)と組み合わせることは、別個のシアノアクリレート層と染料(金属)層とを交互に堆積させることによって達成可能になる。当業者であれば、熱に不安定なポリマーに近接する放射線吸収要素が十分な熱エネルギーをそのポリマーに付与してアブレーションをもたらすことを理解しよう。
【0039】
レジスト層12のバインダーを含む、他の熱に不安定であり、そうでなければ有用なポリマーには、ニトロセルロース、無水マレイン酸(メチルビニルエーテル無水マレイン酸およびスチレンマレイン酸を含む)のコポリマー、α−置換脂肪族ポリカーボネート、ポリケトン、ポリアルケンスルホン、α−メチルスチレン、およびシリコーン、ならびに一般構造CH=CXY(式中、X及びYは独立して電気陰性で、共鳴安定化した基である)のポリマーとのそれらの混合物が挙げられる。
【0040】
単独で、または既に引用されたポリマーと組み合わせたレジスト層12のポリマーバインダーは、リソグラフィプロセスにおいて耐性を提供することが知られたポリマーがあり、例えばShipley G−LineまたはMicroposit(登録商標)フォトレジスト(Shipley社、マサチューセッツ州マルボロ所在)が挙げられ、および材料(例えば、ポリメタクリレートおよびアクリレート、ポリスチレンおよびブタジエンとのコポリマー、アクリレートおよびメタクリレート、アクリルニトリル、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニルおよび酢酸ビニル、ポリビニルエステル、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニルおよびブチラルとのコポリマー、エポキシド、ポリイミド、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、等)を含む。本発明に用いてよい別の有用な樹脂には、ジビニルシロキサンビス(ベンゾシクロブテン)(Dow Chemical社のCyclotene Resins)由来の樹脂が挙げられる。
【0041】
例えば、熱分解[2.2]パラシクロファン(商標名はUnion Carbide社のParyleneである)由来のポリp−キシレン、およびグロープラズマ重合によって形成される樹脂(例えば、ポリアルケンおよびフルオロアルケン)など、真空蒸着プロセスによって形成されるポリマー樹脂は、レジスト層12用の有用なバインダーとして考慮することもできる。このように真空蒸着された樹脂は、放射線吸収材料(例えば、染料および金属)と共蒸着させてもよいし、レジスト層12の境界の別個の層に塗布されてもよい。
【0042】
ポリマー材料に加え、レジスト層12用の有用なバインダー要素には、25℃より高いガラス転移温度を有するガラス状態を有し、前記レジスト中に非結晶質ガラスを形成することのできる非ポリマー有機材料として米国特許第5,891,602明細書(ノイマン)に定義されているモノマーガラスが挙げられ、本明細書において主張され、指定された材料を含む。更に有用なモノマーガラスおよびオリゴマーガラスが、共通の譲受人による米国特許出願シリアル番号第11/240,964号明細書に指定されており、米国特許第6,165,671号明細書に先に引用されたような樹脂(例えば、水素化または部分的に水素化されたロジンエステルおよび類似のロジンエステル)を含む。市販の材料には、水素化されたウッドロジンのグリセロールエステル、例えば、Staybellite Ester10(Hercules)、水素化ロジンのグリセロールエステル(例えばForal85(Hercules))および修飾ロジンのペンタエリスリトールエステル(例えば、Pentalyn344(Hercules)が挙げられる。レジスト層12の非結晶質有機固体は、分子量が約4000未満のオリゴマー樹脂(例えば、ポリエステルであるTone260)であってもよい。
【0043】
モノマーガラスは不要な共有結合を加えることなく、有機バルクを加え、一般的な多くの樹脂よりもアブレーションによって揮発され易い化学種を表す。
【0044】
レジスト層12は部分的に、アブレーション領域の高温に晒されるときにガスを放出することのできるモノマーまたはオリゴマー材料のいずれかで成っていてもよく、このように、前記アブレーションパターンから材料塊の放出を支援する。こういった材料には、テトラゾールおよびトリアゾールならびにそれらのアミノ誘導体、例えば、自動車用エアバッグ推進剤として用いられるような、3−アミノテトラゾール、アジ化ナトリウム、アゾ化合物(例えばアゾ−ビス−イソブチリルニトリル)、アジド−オキセタンポリマーおよびオリゴマー(例えば「ポリバモ」)、等が挙げられる。
【0045】
レジスト層12の層はいずれも、既に開示された材料に加えて、コーティングを支援するものとして必要で、表面特性を改質するのに用いられる界面活性剤、プロセスステップ中の物理的統合性のために必要な、硬化剤、接着促進剤等を含んでもよい。イメージワイズ放射線以外の波長において吸収される可視的な染料をレジスト12の層のいずれかに加えて、プロセスを可視化してもよい。
【0046】
レジスト層12は0.10乃至10マイクロメートルの厚さであってよく、0.25乃至2.5マイクロメートルが好ましい。
【0047】
熱誘導イメージワイズアブレーションパターンを形成直後に、図14のアイテム13により示すように、少量の残った有機材料がアブレーション領域の底部に残ることがある。この残った層は残った樹脂または他の有機熱分解産物である可能性があり、基板層11に適用される最終のエッチングプロセスの前に除去する必要があり得る。この材料は、酸素プラズマなど、従来のリソグラフィに用いられる任意の回数のゴミ除去操作によって真空中または気圧で容易に除去することができる。こういった操作は一般に、アブレーションされていない領域の相当な量のレジストを除去しないように短時間かつ低出力(但し、意図するアブレーション領域を清掃するには十分な)で行われる。図8および9は清掃後のパターン化されたレジスト層を示しており、露光された基板層11はエッチングの準備ができている。また、酸素による清掃ステップにより、レジスト層12の壁の輪郭を急峻にすることもできる。図15は事前エッチング酸素によるエッチングが行われた後にレーザによって実施されたアブレーションラインの側面図である。アブレーション層の側面は基板10に対して直交し、領域の底部は残ったレジストによって清掃される。
【0048】
パターン化できる基板層11の例は、すべてのエッチング可能な金属または導体、半導体、誘電体、およびポリマーである。これらのレジストと共に一般に使用される幾つかの金属または導体は、Al、Mo、MoCr、Ni、NiCr、Cr、W、WTi、Ti、Zr、Ag、Cu、Au、Pt、Pd、スズ、ITOおよびポリチオフェン等である。一般に使用される半導体は、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ドープシリコン、亜鉛酸化物、ゲルマニウム、ガリウム砒素、リン化インジウム、水銀カドミウムテルル、等である。一般に使用される幾つかの誘電体は、SiNx、SiO、Al等である。一般に使用される幾つかの誘電体は、ポリメチルメタクリレート、ポリフェノール、ポリイミド等である。
【0049】
本発明のプロセスによってパターン化することのできる基板層11の他の機能的構造には、プリント基板用の回路、相互接続、および、MoCr合金から作製されたフリップチップに用いられるマイクロスプリングが挙げられる。
【0050】
パターン化されるべき基板層11は、単一材料または複数の層であってよい。しかし、すべての層はこのプロセスにおいて影響を受ける。影響を受けない層は基板10にあると考えられる。このように、レジスト層12によって被覆されていない基板層11の領域が、このように露光して化学エッチング剤またはプラズマエッチング剤のエッチング作用に晒される。レジスト層12のエッジの輪郭は基板に対して直交するが、処理が必要とする場合には傾斜になっていてもよいことが推定される。図9は図8の側面図であり、レジスト層12をアブレーションし、残りの有機物を清掃した後のデバイスを示している。図10および11は最終的なパターン化されたデバイスを示しており、ここでは基板10は基板層11が図8で露光された所で露光されており、アブレーションされていないレジスト層12はまだ基板層11の最上部にある。
【0051】
基板層11は化学的またはプラズマエッチングプロセスを用いてエッチングすることができる。使用されるエッチングプロセスは、反応性イオンエッチング、プラズマトーチ、またはウェットエッチングを用いたプラズマによって真空中で行うことができる。プラズマエッチングに用いられるエッチングガスの例には、Cl、BCl、SF、O、H、CH、クロロホルム、およびNが挙げられる。例示的なウェットエッチングには、HCl、硝酸、アシディック(acidic)酸、リン酸、硝酸鉄が挙げられる。レジスト層はエッチングプロセスによってもたらされるが、それが基板層11のパターンの品質を危うくするというポイントにはもたらされないと思われる。図11は図10の側面図であり、エッチング後で、最終的なレジスト除去前のパターンを示している。
【0052】
最終パターンの基板層11上に残るレジストは、従来のリソグラフィプロセスで一般に実施される方法(限定するものではないが、高出力Oプラズマ、溶剤による洗浄、高圧ウォータージェット、および高温ベーキング)によって除去することができる。図12および13は基板層11の最終パターンを示しており、ここでは図8では保護された領域において露光されている。レジスト除去ステップは任意選択である。特に基板層11の元のパターンの境界内側にある基板層11に二次パターンを作製する場合、そのプロセスおよびレジストに応じて、前記レジストが適所に残されてもよい。
【0053】
基板10は基板層11の担体として用いられるどのような材料であってもよく、ガラス、シリコンウエハ、ステンレス鋼などの金属、プリント基板、等が挙げられる。可撓性支持体も用いてよく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート、ポリスルホン、ポリイミド、等が挙げられる。あるいは、基板10は最終デバイスの予備基板でもよく、これには機能層、アライメント用の位置合わせマーク、例えば、LCDまたはOLEDディスプレイ用の薄膜トランジスタアレイバックプレーン種々の層を含み得る。
【実施例】
【0054】
<実施例I>
500乃至1000Åのアルミニウムがスパッタリングされた1.1mmガラス基板の上に、レーザアブレーションレジスト層を50/50アセトニトリル/シクロペンタノン中の5重量%ポリ(メチル−コ−エチル)シアノアクリレート、1.0重量%IR染料(1)、0.5重量%シアン染料(1)、0.05%フルオロカーボン界面活性剤FC−431(3M社)の溶液を1000RPMでスピンコーティングすることにより塗布して、約0.33マイクロメートルの乾燥厚を得た。
【0055】
このアブレーションレジスト層の一部を830nmの単一赤外線レーザビームから構成されるレーザシステムIによってインテリジェンスなパターンで除去した。幅広いビーム方向に沿った1/e点走査に対して、ビームザイズは約16マイクロメートル×80マイクロメートルとした。レーザビームとレジストおよびアルミニウムコーティングされた基板との間の相対運動は、f−シータレンズを通るビームを走査して幅広いビーム方向に走査線を形成する可動ミラーを含んだ検流計によってもたらした。適した出力密度を用い、滞留時間は0.9ミリ秒であった(走査周波数は170の出力設定で10Hであった)。格子パターンの格子間領域においてレジスト層の除去を行った(非アブレーション領域はエッチング後に残っているはずのアルミニウムの格子線に相当する)。
【0056】
レジスト層のレーザエッチング後、ラムリサーチ社(カリフォルニア州フレモント所在)の製品であるLam model4600(塩素ベースのプラズマエッチングツール)にサンプルを設置した。レーザアブレーションした領域のアルミニウムを除去することによって、パターンを金属層にエッチングした。次いで、サンプルを酸素プラズマアッシャー(Asher)に入れ、残りのレーザアブレーションレジスト材料を除去した。このプロセスはレーザレジストパターンをアルミニウムに転写する。このレジストを除去すると、完全なドライパターニングプロセスにより高い忠実性でアルミニウム格子パターンが得られた。
【0057】
<実施例II>
約1000Åのアルミニウムがスパッタリングされた1.1mmガラス基板の上に、レーザアブレーションレジスト層を50/50アセトニトリル/シクロペンタノン中の7.5重量%ポリ(メチル−コ−エチル)シアノアクリレート、1.0重量%IR染料(1)、0.5重量%シアン染料(1)、0.05%フルオロカーボン界面活性剤FC−431(3M社)の溶液を4000RPMでスピンコーティングすることにより塗布して、約0.33マイクロメートルの乾燥厚を得た。
【0058】
このアブレーションレジスト層の一部を808nmの非コヒーレント赤外線ダイオードレーザビーム(このビームは、ビーム幅に亘って5マイクロメートルの間隔で空間光変調器によって変調される256の別個のアドレス可能なチャネルに分割される)から構成されるレーザシステムIIによってインテリジェンスなパターンで除去した。1.0乃至0.1m/秒の速度でサンプルを保持する可動ステージによってサンプルを横断してビームを走査した。この実施例のために、256の使用可能なチャネルのうちの32のチャネルを作動させた。チャネル当たり11乃至38ミリワットの電力密度を用いた。ビーム走査方向に対して平行で直交する5マイクロメートルの線のパターン内の照明された領域において、レジスト層を除去した。
【0059】
パターン化後、アブレーションされた領域に残っている有機材料の痕跡を除去するために、サンプルを50ワットで300ミリトールの酸素プラズマに40から80秒間晒した。この処理は非アブレーション領域のレジストの厚さを実質的に低減せず、エッチング工程に対するレジストとしてのその有効性も和らげなかった。
【0060】
次いで、アブレーション領域のアルミニウムを除去するために、液体エッチング剤を実施例IIのサンプルに塗布した。このエッチング浴は3分15秒間の25部分のHPO、1部分のHNO、および5部分の氷酢酸から構成され、蒸留水の2回のリンス浴が続く。非アブレーション領域のレジストをアセトン浴で除去し、非アブレーション領域に対して高い忠実性でアルミニウム線パターンが得られた。
【0061】
<実施例III>
PECVD法によって、ガラス基板を50nmクロム、300nm窒化シリコン、200nmアモルファスシリコン、および50nmのn型ドープしたアモルファスシリコンの順で被覆した。レーザアブレーションレジスト層を50/50アセトニトリル/シクロペンタノン中の10重量%ポリ(メチル−コ−エチル)シアノアクリレート、1.0重量%IR染料(1)、0.5重量%シアン染料(1)、0.05%フルオロカーボン界面活性剤FC−431(3M社)の溶液を1000RPMでこの基板にスピンコーティングすることにより塗布して、約1.0マイクロメートルの乾燥厚を得た。
【0062】
このアブレーションレジスト層の一部を100マイクロメートルだけ分離された垂直方向および水平方向の10マイクロメートルのアブレーションされた線の格子から構成されるレーザシステムIIによってインテリジェンスなパターンで除去した。実施例IIに記載の酸素プラズマ処理によって、アブレーション領域に残っているレジストを除去した後、この基板をSF6プラズマで2.5分間処理して、アブレーション領域からシリコン層および窒化シリコン層を除去した。次いで、残りのレジストを300mTorrおよび400ワットのO2プラズマによって5分間除去した。得られたパターンは非常に鋭く明確なエッジを有する6乃至10マイクロメートルの空隙で分離された各側面上にある100マイクロメートルの、絶縁された窒化シリコン/a−シリコン/n+シリコンのブロックの格子アレイとなった。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の熱抵抗性パターンを塗布するパターニング装置を示すブロック図である。
【図2】パターン化された層を担持するのに用いられる基板を示す図である。
【図3】図2の側断面図である(原寸ではない)。
【図4】基板上にパターン化される均一に堆積された材料を示すブロック図である。
【図5】図4の側断面図である(原寸ではない)。
【図6】均一に堆積されたレジスト材料を示す図である。
【図7】図6の側断面図である(原寸ではない)。
【図8】下のパターン化されていない材料を露光する、レジスト内のパターンを示すブロック図である。
【図9】図8の側断面図である(原寸ではない)。
【図10】下の基板を露光することによってエッチングされた材料を示すブロック図であり、レジストはまだエッチングされていない。
【図11】図10の側断面図である(原寸ではない)。
【図12】レジスト除去後に露光されたパターン化材料を示すブロック図である。
【図13】図12の側断面図である(原寸ではない)。
【図14】パターン化されるべき基板または材料の上にあるレジストの側断面図(原寸ではない)であり、清掃が不完全であることを示す。
【図15】ゴミ除去(descumming)エッチング後の図14側断面図である(原寸ではない)。
【符号の説明】
【0064】
10 基板、11 基板層、12 レジスト層、13 残留物、14 レーザ、22 検流計、24 レンズ、26 レーザビーム、28 制御論理プロセッサ、30 制御ライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジスト材料の第1の層を基板上にコーティングするステップと、前記第1のレジスト材料のイメージワイズ放射線誘導熱除去によって前記基板材料上にパターンを形成するステップとを含む、マイクロ構造デバイスを製造する方法。
【請求項2】
前記マイクロ構造デバイスがマイクロ電子デバイスである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記放射線が525nmを超える波長を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記レジスト材料の第1の層が複数の層を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の層が有機固体および光熱転換物質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
基板が光熱転換物質を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記有機固体がポリマーバインダー、モノマーガラス、またはこれらの混合物からなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の層がガス生成物質を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
光熱転換物質が染料、顔料、カーボン、または金属である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
ポリマーバインダーが、モノマーまたは一般構造CH=CXY(式中、XおよびYは、電気的に陰性な基または共鳴安定化された基である)のモノマーの混合物の1つまたは複数を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
XがYに等しい、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
モノマーCH=CXYのXおよびY基が独立して、ハロゲン基(XはYに等しくない場合)、−CN基、−(C=O)OR基、−(C=O)R基、−(C=O)NR2基(式中、Rは独立してHであることができる)、アルキル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基、アリール基、−(OCH2CH2)CH3基、−(OCH(CH3)CH2)CH3基、あるいは置換アルキルあるいはアルコキシド基(少なくとも1つの水素原子がハロゲン、シリコン、またはチタン原子で置換された)の中にある、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
Xは−CNであり、Yは(C=O)ORであり、R基はメチル、エチル、またはそれらのコポリマーである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
構造式CH=CXYで表されるモノマーがビニルモノマーと共重合される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記ビニルモノマーが、アクリレート、メタクリレート、フルオロアクリレート、およびフルオロメタクリレート、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ケイ皮酸ビニル、スチレン、a−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、メタクリルアミド、アクリルアミド、アクリルニトリル、およびメタアクリルニトリルからなる群より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ポリマーバインダーがニトロセルロースである、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
ポリマーバインダーが無水マレイン酸を含むコポリマーである、請求項7に記載の方法。
【請求項18】
ポリマーバインダーがα−置換脂肪族ポリカーボネートである、請求項7に記載の方法。
【請求項19】
ポリマーバインダーがポリアルケンスルホンである、請求項7に記載の方法。
【請求項20】
ポリマーバインダーがポリケトンである、請求項7に記載の方法。
【請求項21】
ポリマーバインダーがシリコーンである、請求項7に記載の方法。
【請求項22】
ポリマーバインダーが構造式CH=CR−C6H6(式中、Rはアルキル、シクロアルキル、または置換アルキル基である)によって表される、請求項7に記載の方法。
【請求項23】
ポリマーバインダーが、ポリマーを含む群より選択され、一般式CH2=CXY(式中、XおよびYは電気的に陰性な基または共鳴安定化された基およびそれらのコポリマー、ニトロセルロース、無水マレイン酸のコポリマー、α−置換脂肪族ポリカーボネート、ポリケトン、ポリアルケンスルホン、α−メチルスチレン、およびシリコーンである)由来の2以上のバインダーの混合物である、請求項7に記載の方法。
【請求項24】
ポリマーバインダーが、熱分解[2.2]パラシクロファン由来の真空蒸着されたポリp−キシレンである、請求項7に記載の方法。
【請求項25】
ポリマーバインダーが、ジビニルシロキサンビス(ベンゾシクロブテン)由来の樹脂である、請求項7に記載の方法。
【請求項26】
ポリマーバインダーが、ポリエチレン、またはおよびグロー放電プラズマ重合によって生成されるポリフルオロアルケンである、請求項7に記載の方法。
【請求項27】
モノマーガラスが、25℃より高いガラス転移温度を有するガラス状態を有し、前記レジスト層中に非結晶質ガラスを形成することのできる非ポリマー有機材料を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項28】
前記ガス生成物質が、アミノテトラゾールまたはアミノトリアゾールである、請求項7に記載の方法。
【請求項29】
前記レジスト層が、別個のバインダーおよび光熱転換層を有する複数の層を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項30】
レジスト層が0.10乃至10マイクロメートル、好ましくは0.25乃至2.5マイクロメートルである、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記基板が複数の層を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記基板が少なくとも2つの層を含み、この副層の少なくとも1つが525nmより大きく、1100nm未満の波長で95%未満の反射性である金属である、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記イメージワイズパターンが、前記レジストの光熱転換物質の吸収波長に一致する波長を有するレーザを用いて生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記レーザが近赤外線波長を放出する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記パターンがマスクを通したレーザを用いて生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記パターンがマスクに放射線を適用することによって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
O2プラズマを用いて、残った有機レジストおよびレジスト分解副産物を除去する追加ステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記熱除去の後に架橋、光架橋、または化学的架橋することによって前記レジストを硬化させる追加ステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記レジストパターンによって被覆されていない材料の層がプラズマエッチングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
前記レジストパターンによって被覆されていない材料の層が液体エッチング剤によって除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記パターンが前記基板に生成された後に、酸素プラズマ、溶剤による洗浄、または高圧の水によって前記レジストを除去する追加ステップを含む、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2009−539251(P2009−539251A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513166(P2009−513166)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/011626
【国際公開番号】WO2007/142788
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】