説明

レーザ照射装置

【課題】 使用されるレーザビームの波長に制約を受けることなく、被加工物に対して十分な光量を有しかつ任意の断面形状を有するレーザビームを投射することが可能なレーザビーム投射装置を提供すること。
【解決手段】 レーザ光源(1)の出射光をDMD(2)のミラーアレイに照射し、その反射回折光を集光レンズ(3)と対物レンズ(4)で被加工物(8)に結像させる。ミラーアレイを通過した光が2本に分離しないよう、DMD(2)を適切な角度(β)に傾け、ミラーアレイを通過した光が2本に分離することなく、被加工物に効率的に伝送されるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ照射を利用した各種の加工(例えば、加熱、溶融、気化、切断、露光記録、CVD(Chemical Vapor Deposition)等々)に好適なレーザ照射装置に係り、特に、デジタル・マイクロミラー・デバイス(以下、「DMD」と言う)を使用することにより、レーザ光源からの光を対象物上に所望の断面形状に整形して照射可能としたレーザ照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DMDを使用することにより、レーザ光源からの光を対象物上に所望の断面形状に整形して照射可能としたレーザ照射装置は、従来より知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
同文献1に記載されたレーザ照射装置の代表例が図12に示されている。同図に示されるように、このレーザ照射装置(同文献では、「レーザ加工装置」と称される)は、レーザビームを発するレーザ光源101と、加工対象となる試料が載置される試料テーブル108と、試料テーブル108の真上にあって、その基準平面(初期姿勢にある一連のマイクロミラーの反射面により定義される)を下向きにしてほぼ水平姿勢で配置されたDMD103と、試料上のレーザ照射状態をモニタするための第1撮像素子110と、照射レーザビームをモニタするための第2撮像素子114とを有する。
【0004】
当業者にはよく知られているように、DMD103の基板上には、多数のマイクロミラーを縦横に配置してなるミラーアレイが設けられており、このミラーアレイを構成する各マイクロミラーのそれぞれは、外部から与えられる電気信号によって、少なくとも、初期姿勢と1又は2以上の傾き姿勢とを選択的にとることが可能とされている。
【0005】
例えば、図示のDMD103の場合には、大きさが10μm角で表面に金属膜が蒸着されるなどして高効率の反射面とされた傾動可能なマイクロミラーが、800×600個、アレイ状に配列され、それぞれが基準平面(初期姿勢にある一連のマイクロミラーの反射面により定義される)に対して±12度の傾斜角で傾動可能とされている。
【0006】
レーザ光源101とDMD103との間には、レーザ光源101からの光を加工して照明用のレーザビームB1を得るための照明光学系102が介在されている。照明光学系102は、レーザ光源101から発せられるレーザビームを断面強度分布が均一化された略平行光束とする光学系からなり、例えば、フライアイレンズ、回折素子、非球面レンズ、カレイド型ロッドを用いたもの等、種々の構成が知られている。
【0007】
DMD103と試料テーブル108との間には、集光レンズ104と対物レンズ105とハーフミラー106とを含んで構成される同軸落射型の投射光学系が設けられている。この投射光学系は、照明光学系102から到来するレーザビームB1のうちで、傾き姿勢にあるマイクロミラーで反射されて生じたレーザビームB11のみを、集光レンズ104、ハーフミラー106、及び対物レンズ105を介して、試料テーブル108上の試料(図示せず)へと導くように構成されている。なお、符号107が付されているのは、試料照明用の照明器である。
【0008】
試料テーブル108上の試料(図示せず)からの光は、対物レンズ105を逆行してハーフミラー106に至り、ここで直角に向きを変えられたのち、撮像光学系109を介して第1撮像素子110へと入射され、映像信号に変換される。この映像信号は、第1画像処理部111にて所定の画像処理が施されることにより、DMD103のマイクロミラー傾き制御に供されるべき第1の制御信号と、コントローラ116に供されるべき第2の制御信号とに変換される。
【0009】
コントローラ116は、第2の制御信号に基づいて現在位置を確認しつつ、アクチュエータドライバ117を介して2軸変位アクチュエータ118を駆動することにより、DMD103の水平面内におけるXY位置を制御する。
【0010】
DMD103と第2撮像素子114との間には、照明光学系102から到来するレーザビームB1のうちで、傾き姿勢にあるマイクロミラーで反射されて生じたレーザビームB12のみを第2撮像素子114へと導くためのリレー光学系112及び減衰フィルタ113が設けられている。
【0011】
第2撮像素子114に入射されたレーザビームB12は、ここで映像信号に変換される。この映像信号は、第2画像処理部115へと送られて、制御装置に供されるべき第3の制御信号に変換される。この第3の制御信号に基づいて、コントローラ116は、DMD103のミラーアレイを構成する個々のマイクロミラーの劣化を診断する。この診断結果に応じて、レーザ光源101の駆動態様が制御される。
【0012】
このように、上述のレーザ照射装置(レーザ加工装置)にあっては、DMD103のミラーアレイ上に配列された傾動可能なマイクロミラーのうちで、傾き姿勢にあるもののみが、光源から到来するレーザビームを投射光学系を構成する集光レンズ104の光軸方向へと正確に指向させるように構成することで、光源から到来するレーザビームを第1の傾き姿勢にある一群のマイクロミラーの配列パターンに対応する断面形状に整形して、試料上に照射可能とするものである。
【0013】
なお、上述のDMDのミラー傾き制御によるビーム断面形状制御は、図13に示される如き、従来のレーザCVD装置にも応用が期待されている。すなわち、図において、201はレーザ光源、202はレーザ光源201から発せられる光を減衰させるための減衰器、203は減衰された光を均一な断面強度を有する照明光に変換するための照明光学系、204は照明光の断面形状を整形するためのスリット、205は集光レンズ、206は対物レンズ、207は目的とする被着金属を含むガスを加工対象部位に供給するためのガス供給器具、208は被加工物、209は被加工物が載置される移動ステージである。
【0014】
そして、図13に示される装置において、レーザ光源201に代えて、上述のDMDのミラー傾き制御によるビーム断面形状制御を採用すれば、レーザ光源からの光を被加工物208上に所望の断面形状に整形して照射可能となり、スリット204の開閉と移動ステージ209の移動とを連動しつつ、被加工物208上にレーザビーム描画を行うようした従来例に比べて、装置の構成が簡素化されると共に、描画精度及び描画速度の向上を図ることができるであろう。
【特許文献1】特開2006−227198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、DMD103は、多数の傾動可能なマイクロミラーを基準平面上に整然と配列したものであるから、単なるマイクロミラーの集合体としての性質と、多数のマイクロミラーが集合してなる回折格子としての性質との双方を備えている。
【0016】
単なるマイクロミラーの集合体としての性質は、個々のマイクロミラーの反射面において、レーザビームの入射角と出射角とが略等しくなる方向にパワーが偏向される現象として発現する。
【0017】
一方、多数のマイクロミラーが集合してなる回折格子としての性質は、マイクロミラーが配列される基準平面の面内方向の成分に関して、入射光の波数ベクトルと一連のマイクロミラーの周期性による波数ベクトルとの和が出射光の波数ベクトルに等しくなる現象として発現する。
【0018】
すなわち、数式で表すと、

Λsin(2α)=mλ

v=w=13.68μm

Λ2=v2+w2

という関係が成り立つ。ここで、Λはマイクロミラーの配列ピッチ、2αはマイクロミラーの配列される基準平面に対する入射角、mは任意の整数、λはレーザ光源101から出射されたレーザ光の波長である。
【0019】
ミラーアレイは、多数のマイクロミラーを集合してなる回折格子としての性質があることから、ミラーアレイの各マイクロミラーで反射される光は、特定の1方向にのみ出射するのではなくて、回折次数mの値に応じた分散傾向をもって、一連の角度に出射する。
【0020】
ここで、回折次数mは、

Λ{sin(2α+β)−sinβ}=mλ

として表すことができ、この回折次数mの値が整数となるようにレーザビームの波長λを選択すると、上記の反射光の強度は、互いに等しい角度を隔てた幾つかの離散的な出射角度に集中する。ここで、vとwは、可動ミラー面の縦方向のピッチと横方向のピッチである(後述する図2参照)。
【0021】
そのため、従来のDMD製品にあっては、入射光と出射光との間における光の伝達効率を良好なものとするために、使用されるレーザビームの波長λには、DMD製品毎に推奨値が決められている。例えば、米国テキサスインスツルメンツ社の1つのDMD製品の場合には、使用波長λは550nmが推奨値となるように、各パラメータの値が決められている。
【0022】
一方、この種のレーザ照射装置における使用レーザの波長は、被加工物の加工部分の材質を考慮した上で、加工効率が最良となる値に選ばれる。例えば、ガラス基板に塗布されたフォトレジスト膜を加工する場合は、パルス幅が数ナノ秒程度でピーク出力が数メガワット(MW)程度のYAGレーザ(波長λ1=1.064μm)、その第2、第3、第4高調波(それぞれ波長λ2=532nm、λ3=355nm、λ4=266nm)が、レーザ光源として好ましい。
【0023】
しかし、DMD製品として上述のテキサスインスツルメンツ社のDMDを使用し、レーザ光源101として加工に好ましいYAGレーザの第3高調波(λ3=355nm)を使用すると、回折次数mは、

α=12°

λ=0.355μm

∴ m=22.2

となり、整数とはならない。
【0024】
この場合には、第22次モードと第23次モードが励起されることで、DMDからは2本の回折光線が出射されるが、第22次の回折光線の2αは23.8度、第23次の回折光線の2αは25.0度となって、これらの回折光線は、互いに角度1.2度をなすため、焦点距離が200mmの集光レンズ104と焦点距離が4mmの対物レンズ105とを、両者の間隔が200mmになるように配置した投射光学系を例に取ると、回折光線は対物レンズ105で互いに4.2mmの間隔に集光することとなる。
【0025】
そのため、対物レンズ105として、例えば、開口数が0.42、すなわち、瞳の直径が3.4mm(=4mm×0.42×2)のものを選ぶと、2本の回折光線は、同時に瞳を通過できないため、かなりの光量が瞳で蹴られ、光源の光量を余程増大させない限り、十分な光量によるレーザ投射ができないと言う問題点がある。
【0026】
加えて、従来のDMDを利用したレーザ照射装置にあっては、その実用化にあたっては、以下に述べるように、調光技術上の問題点、CVDに適用した場合における膜厚制御上の問題点、及びレーザ光源の利用効率上の問題点も指摘されていた。
【0027】
[調光技術上の問題点]
従来のDMDを使用したレーザ照射装置における光量制御(調光)は、光の吸収を利用した減衰器により行われていたため、耐久性の関係で使用できる光量が限られていた。減衰器としては、光の偏光を利用したタイプのものもあるが、そのような減衰器は、楕円偏光には対応できないという欠点があった。さらに、光の吸収を利用したタイプのもの、又は光の偏光を利用したタイプのもの、のいずれにあっても、レーザビームの直径を超える寸法の部品を機械的に動かさなければならないため、調光に時間がかかり、調光応答性が悪いと言う問題点があった。
【0028】
[CVDに適用した場合における膜厚制御上の問題点]
CVDにおいては、時間の経過とともに、まず核となる粒子が被加工物上に点在するようになり、次にその核を起点に塊が成長し、最後に塊同士が繋がることで膜が形成される。そのため、DMDを使用したレーザ照射装置であっても、一定の領域に均質な成膜を行うためには、レーザ照射を行ないながら、被加工物を移動ステージで移動させると言った複雑な制御を行わねばならないと言う問題点があった。
【0029】
[レーザ光源の利用効率上の問題点]
従来のDMDを使用したレーザ照射装置にあっては、ミラーアレイ上のどのマイクロミラーが投射ONとなる傾き姿勢になった場合にも、その影響が出射光に現れるようにするために、常に、ミラーアレイ上のマイクロミラーの全てをレーザ光源からの光で照明するように構成されていた。そのため、光源からの光量が相当に無駄に消費されると言う問題点があった。
【0030】
この発明は、上述の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、使用されるレーザビームの波長に制約を受けることなく、被加工物に対して十分な光量を有しかつ任意の断面形状を有するレーザビームを投射することが可能なレーザビーム投射装置を提供することにある。
【0031】
この発明の他の目的とするところは、レーザ光源が円偏光か楕円偏光かと言った偏光特性の相違に拘わらず、レーザビームを高速に調光することが可能なレーザ投射装置を提供することにある。
【0032】
この発明の他の目的とするところは、例えばCVDプロセスに適用した場合であれば、被加工物上に均一な膜厚をもって成膜を行うことが可能なレーザ投射装置を提供することにある。
【0033】
この発明の他の目的とするところは、ミラーアレイを無駄に照明しないことにより、光源の低消費電力化が可能なレーザ投射装置を提供することにある。
【0034】
この発明のさらに他の目的並びに作用効果については、明細書の以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0035】
上述の技術的課題は、以下の構成を有するレーザ投射装置により解決することができると考えられる。
【0036】
すなわち、この発明に係るレーザ投射装置は、対物レンズと、前記対物レンズと光軸を共有する集光レンズと、多数のマイクロミラーで構成されるミラーアレイがピッチΛで配列され、かつ初期姿勢にある一連のミラーアレイの反射面により基準平面が定義されたDMDと、前記DMDのミラーアレイを照明するレーザ光源とを包含する。
【0037】
前記DMDは、前記基準平面が、前記集光レンズと正対する面に対して角度βをなすように位置決めされ、さらに前記ミラーアレイを構成する各マイクロミラーのそれぞれは、前記基準平面に対応する初期姿勢と、前記基準平面から前記角度βと同じ方向へとさらに角度αだけ傾けられた傾き姿勢とに、個別に切替制御可能とされている。
【0038】
前記レーザ光源は、前記光軸に対して、前記角度βと同じ方向へ角度(2α+2β)をなす方向から前記ミラーアレイを照明するように仕組まれており、さらに前記レーザ光源から出射される光の波長をλとおいたとき、

Λ{sin(2α+β)−sinβ}=mλ

を満たす回折次数mが整数となるように、前記角度βの値が決められている。
【0039】
このような構成によれば、角度βという任意に選べるパラメータを有するため、波長λの値に拘わらず、回折次数mを必ず整数に取ることができる。ゆえに、形状の転写に係るレーザビームが1本だけとなり、対物レンズで蹴られることなく、加工に利用できる。そのため、使用されるレーザビームの波長に制約を受けることなく、被加工物に対して十分な光量を有しかつ任意の断面形状を有するレーザビームを投射することが可能となる。
【0040】
また、上述の発明において、前記回折次数mが前記角度βの絶対値を最小にとる整数となるように、前記角度βの値が決められていれば、ミラーアレイは、集光レンズや対物レンズにほぼ正対する。ゆえに、ミラーアレイの像は、被加工物にピントずれなく結ばれる。
【0041】
また、上述の発明において、前記ミラーアレイ上の描画対象領域内に存在するマイクロミラーを、前記初期姿勢と前記傾き姿勢との間で、前記DMDのほぼ最大駆動周波数で切り替えると共に、前記初期姿勢にある時間と前記傾き姿勢にある時間との比を操作するようにすれば、ミラーアレイを通過する光の減衰率を自由に制御できる。そのため、レーザ光源が円偏光か楕円偏光かと言った偏光特性の相違に拘わらず、レーザビームを高応答に調光することが可能となる。
【0042】
また、上述の発明において、前記ミラーアレイ上の描画対象領域内に存在するマイクロミラーを、複数のマイクロミラー塊に分けると共に、それらのマイクロミラー塊をその配列の順にかつ所定の遅れ時間をもって、塊単位で、初期姿勢、傾き姿勢、初期姿勢の如く姿勢変化させつつ全体として波状動作を生成することにより、前記描画対象領域内を前記傾き姿勢にあるマイクロミラー塊が所定速度で移動するようにすれば、特にCVDなどの加工で均一な膜厚を有する成膜加工が実現できる。
【0043】
さらに、前記描画対象領域は複数の小領域に区画されると共に、前記波状動作を個々の小領域毎に生成することにより、前記描画対象領域内を前記傾き姿勢にある複数のマイクロミラー塊が同時に移動するようにすれば、被加工物の複数の領域で同時に光を走査させることで、並列に加工を実行でき、これにより加工時間を短縮することができる。
【0044】
さらに、上述の発明において、前記レーザ光源と前記DMDとの間にビーム走査機構を介在させることにより、前記ミラーアレイを構成するマイクロミラーのうちで、任意のマイクロミラー又はマイクロミラー群を選択的に照明可能とすることにより、光量が無駄になることを排除して、光源の低消費電力化が可能となる。
【発明の効果】
【0045】
この発明に係るレーザ投射装置によれば、角度βという任意に選べるパラメータを有するため、必ず回折次数mを整数に取ることができる。ゆえに、形状の転写に係るレーザビームが1本だけとなり、対物レンズで蹴られることなく、加工に利用できる。そのため、使用されるレーザビームの波長に制約を受けることなく、被加工物に対して十分な光量を有しかつ任意の断面形状を有するレーザビームを投射することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下に、この発明に係るレーザ投射装置の好適な実施の一形態を添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0047】
本発明に係るレーザ投射装置(レーザCVD装置)の第1実施形態の構成図が図1に示されている。同図に示されるように、このレーザ投射装置100は、光軸B1であるレーザビームを発するレーザ光源(この例では、光源自体と照明光学系との双方を含む)1と、加工対象となる被加工物が載置される被加工物テーブル8と、被加工物テーブル8の真上にあって、その基準平面(初期姿勢にある一連のマイクロミラーの反射面により定義される)P4を水平面P3に対して時計回りに角度βだけ傾斜させて配置されたDMD2と、後述する減衰率の計算に必要な投射レーザビームをモニタするための光検出器6と、加工に利用しない光を安全に熱に変換するためのレーザ吸収器7と、CVD原料ガスを被加工物テーブル8上の被加工物(図示せず)の加工箇所に供給するためのガス供給器具5とを有する。
【0048】
DMD2の受光面側から見た正面図が図2に示されている。同図に示されるように、DMD2の基板2aには、縦方向にピッチvで、横方向にピッチwで、対角線方向にピッチΛで、多数のマイクロミラー21が配置されている。また、このミラーアレイは、各マイクロミラー21の対角線方向が、角度βの傾斜方向(図1において左右方向)と対応するようにして、DMD2上に配置されている。
【0049】
DMD2上のマイクロミラー21の配列を説明する模式的断面図が図3に示されている。同図に示されるように、DMD2は、その基準平面P4が、集光レンズ3(図1参照)と正対する面(すなわち、水平面)P3に対して、時計回りに角度βをなすような傾斜姿勢に位置決めされている。
【0050】
基板上に配置されたミラーアレイを構成する各マイクロミラー21のそれぞれは、基準平面P4と平行な初期姿勢(マイクロミラー21aが相当)と、基準平面P4から時計回りに角度αだけ傾けられた第1の傾き姿勢(マイクロミラー21bが相当)と、基準平面P4から反時計回りに角度αだけ傾けられた第2の傾き姿勢(マイクロミラー21cが相当)とに、外部から与えられる電気信号に応じて、個別に切替制御可能とされている。
【0051】
レーザ光源1(図1参照)は、集光レンズ3(図1参照)の光軸B12に対して、時計回りに角度(2α+2β)をなす方向(光軸B1の方向)から、所定ビーム径のレーザ光線をもって、DMD2のミラーアレイを照明するように仕組まれている。
【0052】
ここで、角度βの値は、レーザ光源1(図1参照)から出射される光の波長をλとおいたとき、

Λ{sin(2α+β)−sinβ}=mλ

の関係をを満たす回折次数mが整数となるように決められている。ここで、mは回折次数、λはレーザ光源1から出射された光の波長である。また、Λは、

Λ2=v2+w2

λ=0.349μm

1=p2=13.68μm

で計算されるマイクロミラーの対角方向のピッチ(図2参照)である。
【0053】
上記の式において、回折次数mの値が整数となるような角度βの値は複数存在するが、特に、この実施形態における角度βの値は、回折次数mが整数となるような角度βの中で、その絶対値が最小となるものが選ばれている。
【0054】
以上の構成よりなるレーザ投射装置(第1実施形態)の作用効果は、次のように説明される。
【0055】
第1の傾き姿勢にあるマイクロミラー21bは、ミラーアレイの基準平面P4が対物レンズ3と正対する面P3に対して角度βだけ時計回りに傾けられていると、垂線(対物レンズ3の光軸方向)P1に対して時計回りに角度(2α+2β)だけ傾いた方向から光が入射された場合、「入射角=反射角=α+β」の関係が成立することから、垂線(対物レンズ3の光軸方向)P1の方向に最もパワーを偏向し易い。
【0056】
しかし、入射光のビーム径がマイクロミラー21の寸法よりも十分に大きいと、各マイクロミラー21の反射光同士が干渉するため、ミラーアレイの基準平面P4に直交する線P6を基準に考えれば、「入射角=2α+β」、「出射角=β」になるので、

Λ{sin(2α+β)−sinβ}=mλ

を満たす方向に回折光が発生する。
【0057】
DMDにレーザ照明したときに得られる回折ビームの説明図が、図9に概念的に示されている。同図(a)に示されるように、DMDの基準平面P4を対物レンズと正対する面P3に対して全く傾けない場合、又は同図(c)に示されるように、DMDの基準平面P4を角度2β傾けた場合には、互いに角度θをなす複数本の回折ビームが離散的に生じるものの、そのうちの比較的に大きなパワーを有する2本のビームは、いずれも集光レンズ3の光軸B12を左右に逸れる方向へ進行するから、レーザビームのパワーを加工処理に有効に活用することができない。
【0058】
これに対して、同図(b)に示されるように、DMDの基準平面P4を対物レンズと正対する面P3に対して角度β傾けた場合には、互いに角度θをなす複数本の回折ビームが離散的に生じるものの、そのうちの最も大きなパワーを有する1本のビームは、集光レンズ3の光軸B12の方向へと進行するから、レーザビームのパワーを加工処理に有効に活用することができる。
【0059】
なお、同図(d)に示されるように、DMDの基準平面P4を対物レンズと正対する面P3に対して角度3β傾けた場合にも、最も大きなパワーを有する1本のビームは、集光レンズ3の光軸B12の方向へと進行するが、そのビームの有するパワーに関しては、角度β傾けた場合に比べて明らかに劣る。
【0060】
このように、本発明によれば、角度βという任意に選べるパラメータを有するため、波長λの値に拘わらず、回折次数mを必ず整数に取ることができる。ゆえに、形状の転写に係るレーザビームが1本だけとなり、対物レンズ4(図1参照)で蹴られることなく、加工に利用できる。そのため、使用されるレーザビームの波長に制約を受けることなく、被加工物に対して十分な光量を有しかつ任意の断面形状を有するレーザビームを投射することが可能となる。
【0061】
加えて、回折次数mが角度βの絶対値を最小にとる整数となるように、角度βの値が決められているため、ミラーアレイは、集光レンズ3(図1参照)や対物レンズ4(図1参照)にほぼ正対する。ゆえに、ミラーアレイの像(第2の傾き姿勢にあるマイクロミラーのパターン)は、被加工物上にピントずれなく結ばれると言う利点がある。
【0062】
ここで、初期姿勢にあるマイクロミラー21aは、基準平面P3に対する傾き角度は0であるため、その反射回折光は光軸B11に沿って進み、光検出器6(図1参照)に向かい、レーザビームのモニタ等に供される。また、第1の傾き姿勢にあるマイクロミラー21bは、基準平面P3に対して時計回りに角度αだけ傾いているため、その反射回折光は光軸B12に沿って進み、集光レンズ3(図1参照)に向かい、CVDプロセスに供される。さらに、第2の傾き姿勢にあるマイクロミラー21cは、基準平面P3に対して反時計回りに角度αだけ傾いているため、その反射回折光は光軸B13に沿って進み、概ね光吸収器7に向うから、加工に利用しない光は光吸収器7で安全に熱に変換される。
【0063】
次に、以上説明したDMDを使用したレーザ投射装置における新規な調光制御について説明する。
【0064】
先に説明したように、従来、この種のDMDを使用したレーザ転写装置において、非加工物に投射されるレーザビームの強度を調整するためには、光の吸収を利用した減衰器が採用されていたため、耐久性の関係で使用できる光量が限られていた。また、減衰器としては、光の偏光を利用したタイプのものもあるが、そのような減衰器は、楕円偏光には対応できないという欠点があった。さらに、光の吸収を利用したタイプのもの、又は光の偏光を利用したタイプのもの、のいずれにあっても、レーザビームの直径を超える寸法の部品を機械的に動かさなければならないため、調光に時間がかかり、調光応答性が悪いと言う問題点があった。
【0065】
そこで、本発明者は、そのような光の吸収を利用する減衰器によるのではなく、DMDそれ自体に着目することにより、被加工物に転写したい形状の範囲に属するマイクロミラーを、右に傾けた状態(第1の傾き姿勢)と傾けない状態(初期姿勢)との間で高速に(DMDのほぼ最大駆動周波数で)遷移させることで、加工に使う光量を調整すると言う手法を提案する。
【0066】
このとき、減衰率は、「(右に傾けた状態の時間)÷{(右に傾けた状態の時間)+(傾けない時間)}」として設定することができ、実際の減衰率は、「(加工中に光検出器6で検出されるパワー)÷(休止中に光検出器6で検出されるパワー)」として求めることができる。
【0067】
このような調光手法によれば、光路に介在させた光吸収板をスライド制御したり、偏光特性を調整することなく、DMD上のミラーアレイを通過する光の減衰率を自由に制御できることから、レーザ光源が円偏光か楕円偏光かと言った偏光特性の相違に拘わらず、レーザビームを高応答に調光することが可能となり、レーザ投射による加工における加工精度を向上することできる。
【0068】
次に、第1実施形態におけるミラーアレイの第1動作態様を示す説明図が、図4に示されている。被加工物上の描画範囲に対応する輪郭線22で囲まれた領域のマイクロミラーがハッチングで塗りつぶされている。これらの加工に寄与するマイクロミラーを、第2の傾き姿勢にあるマイクロミラー21bとすると共に、これら以外のマイクロミラーを第3の傾き姿勢にあるマイクロミラー21cとすることで、対象となる被加工物を「コ」の字型にCVD処理することができる。
【0069】
次に、第1実施形態におけるミラーアレイの第2動作態様を示す説明図が、図5に示されている。同図(a)から同図(c)までは、それぞれある時間を隔てたある時刻における各マイクロミラーの動作状態を示している。この例にあっては、被加工物上の描画範囲に対応する輪郭線22で囲まれた領域(描画対象領域)のマイクロミラーを一括して同時に第2の傾き姿勢とするのではなく、図中に矢印23,24,25並びにハッチングで示されるように、輪郭線22で囲まれた領域のマイクロミラーを所定個数ずつ順番に傾けていくことで、対象となる被加工物を「コ」の字型にCVD処理するようにしている。
【0070】
つまり、ミラーアレイ上の描画対象領域内に存在するマイクロミラーを、複数のマイクロミラー塊に分けると共に、それらのマイクロミラー塊をその配列の順にかつ所定の遅れ時間をもって、塊単位で、初期姿勢、傾き姿勢、初期姿勢の如く姿勢変化させつつ全体として波状動作を生成することにより、描画対象領域内を前記傾き姿勢にあるマイクロミラー塊が所定速度で移動するようにしたのである。また、特にこの例にあって、描画対象領域は複数の小領域に区画されると共に、波状動作を個々の小領域毎に生成することにより、前記描画対象領域内を前記傾き姿勢にある複数のマイクロミラー塊が同時に移動するようにしている。
【0071】
このようなマイクロミラーの動作態様によれば、堆積物が面内方向に成長するため、均質な膜が得られる。膜を電気配線に使用する場合は、均質な膜であることが、抵抗値を低下させるために特に有効である。加えて、被加工物の複数の領域で同時に光を走査させることで、並列に加工を実行でき、これにより加工時間を短縮することができる。
【0072】
CVDプロセスにおいて金属の粒界が成長する様子を示す説明図が図10に、同金属の粒界の性質を示す説明図が図11にそれぞれ示されている。
【0073】
図10(a)に示されるように、気体金属の存在下において、基板上にレーザビームの照射が行われると、同図(b)に示されるように、紫外線で気体金属の分子間結合が切られ、基板上には金属の粉が降り注ぐこととなり、続いて、同図(c)に示されるように、基板に付着した金属の粉を殻にして、レーザの熱で分解した気体金属で粒界が成長することとなる。
【0074】
このとき、図11(a)に示されるように、レーザに対して基板を静止させた場合には、粒界は基板に直角に成長することとなって、成長される粒界は厚みの大なるものとなり、電気抵抗は高いものとなる。これに対して、同図(b)に示されるように、レーザに対して基板を移動させた場合には、粒界は基板に平行に成長することとなって、成長される粒界は厚みの小なるものとなり、電気抵抗は低いものとなる。
【0075】
そのため、先に説明したように、輪郭線22で囲まれた領域のマイクロミラーを所定個数ずつ順番に傾けていくことにより、堆積物が面内方向に成長するため、均質な膜が得られるのである。
【0076】
以上の第1実施形態にあっては、CVDに好適なレーザ投射装置を示したが、レーザ光源のパワー並びに波長を選ぶことで、被加工物に対して任意の形状で加熱、溶融、気化、切断、露光記録などの加工を施せることは勿論である。
【実施例】
【0077】
以上説明した第1実施形態の一実施例としては、次のような具体的態様を挙げることができる。すなわち、レーザ光源1としては、YLFレーザの第3高調波を使用し、ミラーアレイを有するDMD2としては、米国のテキサスインスツルメンツ社のDMD製品を使用することができる。DMD2の基準平面P4の光軸B12に正対する平面(水平面)P3に対する傾斜角度βについては、5度に選ぶことができる。
【0078】
このとき、次式に示されるように、回折次数は、第22次だけが励起されるため、1本の回折光線だけが発生し、対物レンズの瞳を効率よく通過し、光量は、そのほとんどが被加工物に到達する。

α=12°

β=5°

∴ m=22.0
【0079】
本発明に係るレーザ投射装置(レーザCVD装置)の第2実施形態の構成図が図6に示されている。この第2実施形態の特徴は、レーザ光源1とDMD2との間にガルバノミラー9a,9bを介在させることにより、小径なレーザビームを使用してビームパワーを節減しつつも、ミラーアレイ上の任意の領域を照明可能としたものである。
【0080】
すなわち、図6に示されるように、レーザ光源1から出射された光は、ガルバノミラー9a,9bを経ることにより任意の間隔だけ平行にシフトされ、DMD2上のミラーアレイに照射され、その任意の箇所を照明する。したがって、ガルバノミラー9a,9bを適宜に制御することで、ミラーアレイ上の任意の領域を照明することできる。
【0081】
次に、第2実施形態におけるミラーアレイの第1動作態様を示す説明図が図7に示されている。同図に示されるように、照明用レーザビームのスポット26は、その直径がミラーアレイの縦横長さよりも十分に小さな円形とされており、ガルバノミラー9a,9bの制御によって、ミラーアレイ上の任意の位置に移動可能とされている。図(a)の例では、ミラーアレイのほぼ中央部分がスポット26により照明されており、図(b)の例では、ミラーアレイの角部近傍が照明されている。なお、図において、21bは第2の傾き姿勢にあるマイクロミラー、21cは第3の傾き姿勢にあるマイクロミラーである。
【0082】
被加工物上の描画範囲に対応する輪郭線22で囲まれた領域のマイクロミラーを照明用レーザビームのスポット26で照らすことにより、図中ハッチングで示されるように、その輪郭線22で囲まれた領域に存在する第2の傾き姿勢にあるマイクロミラー21bを一括して同時に照明することができる。
【0083】
このとき、ビームスポット26の位置は、ガルバノメータ9a,9bに対する電気的な角度制御によって、図7(a)の状態と図7(b)の状態とに瞬時に移動させることができるから、この第2実施形態によれば、照明用ビームのパワーを節減しつつも、極めて高速に複数の箇所をCVD処理することができる。
【0084】
第2実施形態におけるミラーアレイの第2動作態様を示す説明図が図8に示されている。なお、図において、21bは第2の傾き姿勢にあるマイクロミラー、21cは第3の傾き姿勢にあるマイクロミラーである。
【0085】
図8(a)に示されるように、この例にあっては、被加工物上の描画範囲に対応する輪郭線22がミラーアレイの全域に及ぶようなサイズのコの字型であるような場合にあっても、同時には4個のマイクロミラー21しか照射できない程度の小径な照明用ビームスポット26aを用意し、そのコの字型領域22内にビームスポット26aを移動させることにより、図8(b)に示されるように、移動ビームスポットの包絡線27に示されるように、コの字型領域22の全体を塗りつぶすようにしたものである。
【0086】
この例にあっては、図8(c)に示されるように、ビームスポット走査速度に余裕があれば、走査ビームスポット26bに示されるように、より小さなビームスポットで走査すれば、さらに走査範囲を限定できるため、無駄になる光量を削減でき、また、高いエネルギー密度を要求する加工にも対応できる。
なお、以上説明した調光技術、波状動作によるCVD処理技術、ガルバノメータによるミラーアレイの局部照射技術は、波長λの推奨値を使用することで角度βの傾き制御を採用しない従前のレーザ照射装置にも適用可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
この発明によれば、DMDを使用したレーザ投射装置において、使用されるレーザビームの波長に制約を受けることなく、被加工物に対して十分な光量を有しかつ任意の断面形状を有するレーザビームを投射することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明に係るレーザ投射装置(レーザCVD装置)の第1実施形態の構成図である。
【図2】DMDの受光面側から見た正面図である。
【図3】DMD上のマイクロミラーの配列を説明する模式的断面図である。
【図4】第1実施形態におけるミラーアレイの第1動作態様を示す説明図である。
【図5】第1実施形態におけるミラーアレイの第2動作態様を示す説明図である。
【図6】本発明に係るレーザ投射装置(レーザCVD装置)の第2実施形態の構成図である。
【図7】第2実施形態におけるミラーアレイの第1動作態様を示す説明図である。
【図8】第2実施形態におけるミラーアレイの第2動作態様を示す説明図である。
【図9】DMDにレーザ照明したときに得られる回折ビームの説明図である。
【図10】CVDプロセスにおいて金属の粒界が成長する様子を示す説明図である。
【図11】CVDプロセスで成長させた金属の粒界の性質を示す説明図である。
【図12】従来のレーザ投射装置の一例を示す説明図である。
【図13】レーザ投射装置の1つである従来のレーザCVD装置の構成図である。
【符号の説明】
【0089】
1 レーザ光源
2 DMD
3 集光レンズ
4 対物レンズ
5 ガス供給器具
6 光検出器
7 光吸収器
8 被加工物テーブル
9a,9b ガルバノミラー
B1 DMDに対する照明光の光軸
B11 DMDからの第1反射光(モニタ光)の光軸
B12 DMDからの第2反射光(投射光)の光軸
B13 DMDからの第3反射光(不使用光)の光軸
21 マイクロミラー
21a 初期姿勢にあるマイクロミラー
21b 第1の傾き姿勢にあるマイクロミラー
21c 第2の傾き姿勢にあるマイクロミラー
22 ミラーアレイ上の照明領域の輪郭線
23,24,25 第1の傾き姿勢にあるマイクロミラーの移動方向を示す矢印
26 照明用レーザビームスポット
26a 照明用レーザビームスポット
26b 小径な照明用レーザビームスポット
27 ビームスポット走査による照射領域全体
100 レーザ照射装置
v マイクロミラーの縦方向のピッチ
w マイクロミラーの横方向のピッチ
Λ マイクロミラーの対角線方向のピッチ
P1 水平面(集光レンズに正対する面)に対して垂直な線
P2 マイクロミラーの反射面に対して垂直な線
P3 水平面(集光レンズに正対する面)を示す線
P4 水平面(集光レンズに正対する面)に対して角度βをなす面を示す線
P5 水平面に対して角度βをなす面に対して角度αをなす面を示す線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズと、
前記対物レンズと光軸を共有する集光レンズと、
多数のマイクロミラーで構成されるミラーアレイがピッチΛで配列され、かつ初期姿勢にある一連のミラーアレイの反射面により基準平面が定義されたDMDと、
前記DMDのミラーアレイを照明するレーザ光源とを包含し、
前記DMDは、
前記基準平面が、前記集光レンズと正対する面に対して角度βをなすように位置決めされ、さらに
前記ミラーアレイを構成する各マイクロミラーのそれぞれは、前記基準平面に対応する初期姿勢と、前記基準平面から前記角度βと同じ方向へとさらに角度αだけ傾けられた傾き姿勢とに、個別に切替制御可能とされており、
前記レーザ光源は、
前記光軸に対して、前記角度βと同じ方向へ角度(2α+2β)をなす方向から前記ミラーアレイを照明するように仕組まれており、さらに
前記レーザ光源から出射される光の波長をλとおいたとき、

Λ{sin(2α+β)−sinβ}=mλ

を満たす回折次数mが整数となるように、前記角度βの値が決められている、ことを特徴とするレーザ照射装置。
【請求項2】
前記回折次数mが前記角度βの絶対値を最小にとる整数となるように、前記角度βの値が決められている、ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ照射装置。
【請求項3】
前記ミラーアレイ上の描画対象領域内に存在するマイクロミラーを、前記初期姿勢と前記傾き姿勢との間で、前記DMDのほぼ最大駆動周波数で切り替えると共に、前記初期姿勢にある時間と前記傾き姿勢にある時間との比を操作することにより、前記DMDを通過する光の減衰率を制御する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ照射装置。
【請求項4】
前記ミラーアレイ上の描画対象領域内に存在するマイクロミラーを、複数のマイクロミラー塊に分けると共に、それらのマイクロミラー塊をその配列の順にかつ所定の遅れ時間をもって、塊単位で、初期姿勢、傾き姿勢、初期姿勢の如く姿勢変化させつつ全体として波状動作を生成することにより、前記描画対象領域内を前記傾き姿勢にあるマイクロミラー塊が所定速度で移動するようにした、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のレーザ照射装置。
【請求項5】
前記描画対象領域は複数の小領域に区画されると共に、前記波状動作を個々の小領域毎に生成することにより、前記描画対象領域内を前記傾き姿勢にある複数のマイクロミラー塊が同時に移動するようにした、ことを特徴とする請求項4に記載のレーザ照射装置。
【請求項6】
前記レーザ光源と前記DMDとの間にビーム走査機構を介在させることにより、前記ミラーアレイを構成するマイクロミラーのうちで、任意のマイクロミラー又はマイクロミラー群を選択的に照明可能とする、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のレーザ照射装置。
【請求項7】
対物レンズと、
前記対物レンズと光軸を共有する集光レンズと、
多数のマイクロミラーで構成されるミラーアレイがピッチΛで配列され、かつ初期姿勢にある一連のミラーアレイの反射面により基準平面が定義されたDMDと、
前記DMDのミラーアレイを照明するレーザ光源とを包含し、
前記ミラーアレイを構成する各マイクロミラーのそれぞれは、前記基準平面に対応する初期姿勢と前記基準平面に対して角度αだけ傾けられた傾き姿勢とに個別に切替制御可能とされており、
前記ミラーアレイ上の描画対象領域内に存在するマイクロミラーを、前記初期姿勢と前記傾き姿勢との間で、前記DMDのほぼ最大駆動周波数で切り替えると共に、前記初期姿勢にある時間と前記傾き姿勢にある時間との比を操作することにより、前記DMDを通過する光の減衰率を制御する、ことを特徴とするレーザ照射装置。
【請求項8】
前記ミラーアレイ上の描画対象領域内に存在するマイクロミラーを、複数のマイクロミラー塊に分けると共に、それらのマイクロミラー塊をその配列の順にかつ所定の遅れ時間をもって、塊単位で、初期姿勢、傾き姿勢、初期姿勢の如く姿勢変化させつつ全体として波状動作を生成することにより、前記描画対象領域内を前記傾き姿勢にあるマイクロミラー塊が所定速度で移動するようにした、ことを特徴とする請求項7に記載のレーザ照射装置。
【請求項9】
前記描画対象領域は複数の小領域に区画されると共に、前記波状動作を個々の小領域毎に生成することにより、前記描画対象領域内を前記傾き姿勢にある複数のマイクロミラー塊が同時に移動するようにした、ことを特徴とする請求項7又は8に記載のレーザ照射装置。
【請求項10】
対物レンズと、
前記対物レンズと光軸を共有する集光レンズと、
多数のマイクロミラーで構成されるミラーアレイがピッチΛで配列され、かつ初期姿勢にある一連のミラーアレイの反射面により基準平面が定義されたDMDと、
前記DMDのミラーアレイを照明するレーザ光源とを包含し、
前記ミラーアレイを構成する各マイクロミラーのそれぞれは、前記基準平面に対応する初期姿勢と前記基準平面に対して角度αだけ傾けられた傾き姿勢とに個別に切替制御可能とされており、
前記レーザ光源と前記DMDとの間にビーム走査機構を介在させることにより、前記ミラーアレイを構成するマイクロミラーのうちで、任意のマイクロミラー又はマイクロミラー群を選択的に照明可能とする、ことを特徴とするレーザ照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−44272(P2010−44272A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209082(P2008−209082)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】