説明

レーダ信号処理装置

【課題】 船舶などの目標を正確に検出することができるレーダ信号処理装置を得ることを目的とする。
【解決手段】 ASDEから出力されたレーダビデオのスレッショルドレベルを算出し、そのスレッショルドレベルより大きい振幅を有するレーダビデオを検知するヒット検定処理部6を設け、ヒット検定処理部6により検知されたレーダビデオに含まれているクラッタを縮小化する収縮処理を実施し、収縮処理後のレーダビデオに対する2次元移動平均処理を実施してノイズレベルを算出し、そのレーダビデオとノイズレベルを比較して目標とクラッタを区別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空港面探知レーダ装置(ASDE:Airport Surface Detection Equipment)から出力されたレーダビデオに含まれている目標(例えば、大型船舶)を検出するレーダ信号処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空港面地上走行管制システムは、空港面を走行している車両等を検知するASDEを搭載して、航空機の離着陸の安全を図るものである。
しかしながら、空港が港湾に面している場合、航空機の進入経路や離陸経路が、港湾内を航行する船舶経路の上空に位置する場合が多い。
大型船舶は、マストの高さが40m以上にも達するため、離陸又は着陸する航空機と大型船舶のマスト先端が接触する危険性がある。
そのため、港湾内を航行する船舶を検出するレーダ信号処理装置を空港面地上走行管制システムに実装する必要性がある。
【0003】
従来のレーダ信号処理装置であるASDE目標検出装置は、空間に放射されたレーダの電波が船舶等の目標に反射されて受信機に受信され、その受信機が当該電波を増幅して周波数変換し、周波数変換後の電波をレーダビデオ信号として出力すると、そのレーダビデオ信号を解析して船舶の位置を検出する(例えば、特許文献1参照)。
なお、ASDE目標検出装置は、船舶の位置を検出する際、レーダエコーを海面まで拡張して船舶の検出を行う。しかし、地表面と異なり海面には常時波が発生しており、シークラッタの中から船舶を検出する必要があるが、シークラッタを船舶と区別する機能を備えていない。
【0004】
【特許文献1】特開平8−146130号公報(段落番号[0017]から[0020]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のレーダ信号処理装置は以上のように構成されているので、海面にシークラッタが存在しなければ、船舶を正確に検出することができる。しかし、地表面と異なり海面には常時波が発生しており、海面にはシークラッタが存在しているため、船舶を正確に検出することができない課題があった。
【0006】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、船舶などの目標を正確に検出することができるレーダ信号処理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るレーダ信号処理装置は、空港面探知レーダ装置から出力されたレーダビデオのスレッショルドレベルを算出し、そのスレッショルドレベルより大きい振幅を有するレーダビデオを検知するレーダビデオ検知手段を設け、そのレーダビデオ検知手段により検知されたレーダビデオに含まれている目標とクラッタを区別し、そのレーダビデオからクラッタを除去するようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、空港面探知レーダ装置から出力されたレーダビデオのスレッショルドレベルを算出し、そのスレッショルドレベルより大きい振幅を有するレーダビデオを検知するレーダビデオ検知手段を設け、そのレーダビデオ検知手段により検知されたレーダビデオに含まれている目標とクラッタを区別し、そのレーダビデオからクラッタを除去するように構成したので、船舶などの目標を正確に検出することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるレーダ信号処理装置を示す構成図であり、図において、A/D変換部1はASDEにより観測されたレーダエコーであるレーダビデオの信号を受信すると、アナログのレーダビデオをディジタルのレーダビデオに変換するA/D変換を実施して、ディジタルのレーダビデオを出力する。
レーダタイミング変換部2はASDEからレーダアンテナが1回転する毎に出力するパルス信号ARP(Azimuth Reference Pulse)や、レーダアンテナが所定角度だけ回転する毎に出力するパルス信号ACP(Azimuth Count Pulse)や、トリガ信号などを受信すると、それらのパルス信号ARP等にしたがってタイミング信号を生成する。即ち、レーダタイミング変換部2はレンジ/アジマス積分処理部3の積分処理がレーダアンテナの回転タイミングや距離方向の測定単位に合わせて実施されるようなタイミング信号を生成する。
【0010】
レンジ/アジマス積分処理部3はレーダタイミング変換部2からタイミング信号を受けると、A/D変換部1から出力されたディジタルのレーダビデオをレンジ方向とアジマス方向に積分する。
レーダビデオバッファ部4はレンジ/アジマス積分処理部3により積分されたディジタルのレーダビデオを数スイープ分だけ蓄積する。
スレッショルドレベル算出部5はレーダビデオバッファ部4に蓄積されている数スイープ分のレーダビデオからスレッショルドレベルを算出する。
ヒット検定処理部6はスレッショルドレベル算出部5により算出されたスレッショルドレベルより大きい振幅を有するレーダビデオを検知し、そのレーダビデオの座標系を局座標から直交座標(X座標、Y座標)に変換する。
2次元メモリ7はヒット検定処理部6から出力された直交座標(X座標、Y座標)のレーダビデオを格納する。
なお、A/D変換部1、レーダタイミング変換部2、レンジ/アジマス積分処理部3、レーダビデオバッファ部4、スレッショルドレベル算出部5、ヒット検定処理部6及び2次元メモリ7からレーダビデオ検知手段が構成されている。
【0011】
収縮処理部8は2次元メモリ7に格納されているレーダビデオに含まれているクラッタを縮小化する収縮処理を実施する。
2次元移動平均処理部9は収縮処理部8による収縮処理後のレーダビデオに対する2次元移動平均処理を実施してノイズレベルを算出し、そのレーダビデオとノイズレベルを比較して目標とクラッタを区別し、そのレーダビデオからクラッタを除去する。
ブランクマップ10は例えばターミナルビルなど、目標検出の不要エリアがマッピングされ、目標検出の不要エリアには“0”値、目標検出の必要エリアには“1”値が設定されている。
2値化処理部11は2次元移動平均処理部9によりクラッタが除去されたレーダビデオとブランクマップ10のAND演算を実施し、その演算結果と所定の閾値を比較してレーダビデオを2値化する。
なお、収縮処理部8、2次元移動平均処理部9、ブランクマップ10及び2値化処理部11からクラッタ除去手段が構成されている。
【0012】
クラスタリング・ラベル付け処理部12は2値化処理部11により2値化されたレーダビデオに含まれている塊(船舶などの目標)にラベル付けを実施するとともに、目標追尾処理部14から出力される目標の移動速度や進行方向を参考にして、レーダビデオに含まれている塊を分別して、船舶などの目標を検出する。
重心位置算出処理部13はクラスタリング・ラベル付け処理部12により検出された目標の重心位置を算出する。
目標追尾処理部14は重心位置算出処理部13により今回算出された目標の重心位置と前回算出された目標の重心位置を比較して、目標の追尾処理を実施する。
データフォーマット生成処理部15は目標追尾処理部14から出力された追尾データのフォーマットを監視表示装置の表示用のデータフォーマットに変換し、変換後の追尾データを監視表示装置に出力する。
なお、クラスタリング・ラベル付け処理部12、重心位置算出処理部13、目標追尾処理部14及びデータフォーマット生成処理部15から目標検出手段が構成されている。
【0013】
次に動作について説明する。
ASDEは、レーダアンテナからレーダの電波を空間に放射し、そのレーダの電波が船舶等の目標に反射されてレーダアンテナに戻ってくると、その電波を受信して増幅する。
そして、ASDEは、増幅後の電波を周波数変換して、周波数変換後の電波をレーダビデオとしてレーダ信号処理装置に出力する。
A/D変換部1は、ASDEからレーダビデオの信号を受信すると、アナログのレーダビデオをディジタルのレーダビデオに変換するA/D変換を実施して、ディジタルのレーダビデオをレンジ/アジマス積分処理部3に出力する。
【0014】
また、レーダタイミング変換部2は、ASDEからレーダアンテナが1回転する毎に出力するパルス信号ARPや、レーダアンテナが所定角度だけ回転する毎に出力するパルス信号ACPや、トリガ信号などを受信すると、それらのパルス信号ARP等にしたがってタイミング信号を生成する。
即ち、レーダタイミング変換部2は、レンジ/アジマス積分処理部3の積分処理がレーダアンテナの回転タイミングや距離方向の測定単位に合わせて実施されるようなタイミング信号を生成する。
【0015】
レンジ/アジマス積分処理部3は、レーダタイミング変換部2からタイミング信号を受けると、A/D変換部1から出力されたディジタルのレーダビデオをレンジ方向とアジマス方向に積分する。
例えば、レーダアンテナが90度の方向を向いているタイミングで送受信される電波に係るレーダビデオをレンジ方向とアジマス方向に積分する。
レーダビデオバッファ部4は、レンジ/アジマス積分処理部3により積分されたディジタルのレーダビデオを数スイープ分だけ蓄積する。
【0016】
スレッショルドレベル算出部5は、レーダビデオバッファ部4に蓄積されている数スイープ分のレーダビデオからスレッショルドレベルを算出する。
例えば、30サンプリング目のレーダビデオのスレッショルドレベルを算出する場合、前10サンプリング分のレーダビデオ(20サンプリング目〜29サンプリング目のレーダビデオ)と、後10サンプリング分のレーダビデオ(31サンプリング目〜40サンプリング目のレーダビデオ)との振幅の平均値を算出し、その振幅の平均値を30サンプリング目のレーダビデオのスレッショルドレベルとしてヒット検定処理部6に出力する。
【0017】
ヒット検定処理部6は、スレッショルドレベル算出部5がスレッショルドレベルを算出すると、そのスレッショルドレベルとレーダビデオバッファ部4に蓄積されているレーダビデオの振幅を比較し、そのスレッショルドレベルより振幅が大きければ、当該レーダビデオの座標系を局座標から直交座標(X座標、Y座標)に変換し、直交座標(X座標、Y座標)のレーダビデオを2次元メモリ7に格納する。
ここで、図2はASDEから出力されるレーダビデオの一例を示しており、そのレーダビデオには、船舶のレーダエコーA、海運支援設備のレーダエコーC1,C2,C3,C4、クラッタのレーダエコーB1,B2,B3,B4が含まれている。
図3はヒット検定処理部6から出力されるレーダビデオの一例を示しており、例えば、クラッタのレーダエコーB1,B2,B3,B4のレーダエコーがスレッショルドレベルより低い場合、そのレーダビデオからクラッタのレーダエコーB1,B2,B3,B4が除去されて、船舶のレーダエコーAと海運支援設備のレーダエコーC1,C2,C3,C4が残される。
【0018】
収縮処理部8は、2次元メモリ7に格納されているレーダビデオに含まれているクラッタを縮小化する収縮処理を実施する。
例えば、図4に示すように、収縮処理用ウィンドを用いて、レーダビデオ内に点在している孤立点、即ち、微小クラッタを検出し、ある程度以上の大きさのレーダエコーのみを残して、小さなレーダエコーである微小クラッタを除去する。
【0019】
2次元移動平均処理部9は、収縮処理部8が収縮処理を実施すると、収縮処理後のレーダビデオに対する2次元移動平均処理を実施してノイズレベルを算出する。
具体的には、着目する2次元のセルを中心とするレーダビデオの単位面積当りの平均値をノイズレベルとして算出する。
例えば、着目する2次元のセルの座標が(X8,Y4)であれば、座標(X7,Y3)、(X8,Y3)、(X8,Y3)、(X7,Y4)、(X8,Y4)、(X9,Y4)、(X7,Y5)、(X8,Y5)、(X9,Y5)のセルの振幅の平均値を算出し、その平均値をノイズレベルとする。
2次元移動平均処理部9は、その算出したノイズレベルとレーダビデオの振幅を比較し、ノイズレベル以下の振幅を0値にして、そのレーダビデオからクラッタを除去する。
【0020】
2値化処理部11は、2次元移動平均処理部9からクラッタが除去されたレーダビデオを受けると、そのレーダビデオにおける目標検出の不要エリア(例えば、ターミナルビル)をブランクするため、目標検出の不要エリアがマッピング(目標検出の不要エリアには“0”値、目標検出の必要エリアには“1”値が設定されている)されているブランクマップ10と、2次元移動平均処理部9によりクラッタが除去されたレーダビデオのAND演算を実施する。
2値化処理部11は、AND演算を実施することにより、レーダビデオにおける目標検出の不要エリアをブランクすると、AND演算の結果と所定の閾値を比較してレーダビデオを2値化する。即ち、AND演算の結果が所定の閾値より大きければ、AND演算の結果を“1”に変更し、AND演算の結果が所定の閾値より小さければ、AND演算の結果を“0”に変更する。
【0021】
クラスタリング・ラベル付け処理部12は、2値化処理部11から2値化されたレーダビデオを受けると、そのレーダビデオに含まれている塊(船舶などの目標)にラベル付けを実施して、船舶などの目標を検出する。
即ち、クラスタリング・ラベル付け処理部12は、レーダビデオに含まれている塊毎に、異なるラベルを付加することにより、船舶などの目標を検出する。
ただし、船舶などの場合、レーダエコーが非常に大きくなるため、図5に示すように、船首の部分とデッキの部分が別々の塊として検出されることがある。
そこで、クラスタリング・ラベル付け処理部12は、目標追尾処理部14から出力される追尾データ(例えば、目標の移動速度、進行方向、位置)を参考にして、例えば、複数の塊が同一の移動速度で、同一の進行方向に移動しているか否かを判定する。
クラスタリング・ラベル付け処理部12は、複数の塊が同一の移動速度で、同一の進行方向に移動している場合には、複数の塊の隙間が例えば3ドット未満であれば、複数の塊を1つの塊と判別するようにする。
【0022】
重心位置算出処理部13は、クラスタリング・ラベル付け処理部12が船舶などの目標を検出すると、その目標の重心位置を算出する。
なお、図5の例では、塊が2個検出されているが、2個の塊がクラスタリング・ラベル付け処理部12により同一の目標のレーダエコーであるとして検出されているので、2個の塊の外接四角を想定して、その外接四角の中心位置を重心の位置として算出する。
目標追尾処理部14は、重心位置算出処理部13により今回算出された目標の重心位置と前回算出された目標の重心位置を比較して、目標の追尾処理を実施する。
目標追尾処理部14は、例えば、αβ追尾やカルマンフィルタ等の追尾フィルタによって追尾処理を実施する。
データフォーマット生成処理部15は、目標追尾処理部14から出力された追尾データ(例えば、目標の移動速度、進行方向、位置)のフォーマットを監視表示装置の表示用のデータフォーマットに変換し、変換後の追尾データを監視表示装置に出力する。
【0023】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、ASDEから出力されたレーダビデオのスレッショルドレベルを算出し、そのスレッショルドレベルより大きい振幅を有するレーダビデオを検知するヒット検定処理部6を設け、そのヒット検定処理部6により検知されたレーダビデオに含まれている目標とクラッタを区別し、そのレーダビデオからクラッタを除去するように構成したので、船舶などの目標を正確に検出することができる効果がある。
【0024】
また、この実施の形態1によれば、ヒット検定処理部6により検知されたレーダビデオに含まれているクラッタを縮小化する収縮処理を実施するように構成したので、微小クラッタを除去して、目標の検出精度を高めることができる効果を奏する。
また、この実施の形態1によれば、収縮処理後のレーダビデオに対する2次元移動平均処理を実施してノイズレベルを算出し、そのレーダビデオとノイズレベルを比較して目標とクラッタを区別するように構成したので、更に目標の検出精度を高めることができる効果を奏する。
【0025】
実施の形態2.
図6はこの発明の実施の形態2によるレーダ信号処理装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
上記実施の形態1では、収縮処理部8がヒット検定処理部6により検知されたレーダビデオに含まれているクラッタを縮小化する収縮処理を実施して、微小クラッタを除去するものについて示したが、例えば、空港内のクラッタの発生が少ない場合(港湾海面に発生したシークラッタが少ない場合)、2次元移動平均処理部9による2次元移動平均処理によってクラッタを十分に低減することができるため、収縮処理部8の収縮処理を省略しても、目標を正確に検出することができる。
このように、収縮処理部8の収縮処理を省略すると、装置構成の簡略化と処理速度の高速化を図ることができる効果を奏する。
【0026】
実施の形態3.
図7はこの発明の実施の形態3によるレーダ信号処理装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
カラー化変換部16は図1のヒット検定処理部6と同様に、スレッショルドレベル算出部5により算出されたスレッショルドレベルより大きい振幅を有するレーダビデオを検知して、そのレーダビデオの座標系を局座標から直交座標(X座標、Y座標)に変換するほか、そのレーダビデオを振幅に応じて擬似的にカラー化する。なお、カラー化変換部16はレーダビデオ検知手段を構成している。
【0027】
上記実施の形態1では、ヒット検定処理部6がスレッショルドレベル算出部5により算出されたスレッショルドレベルより大きい振幅を有するレーダビデオを検知して、そのレーダビデオの座標系を局座標から直交座標(X座標、Y座標)に変換し、直交座標(X座標、Y座標)のレーダビデオを2次元ビデオ7に格納する。
このため、収縮処理部8は、収縮処理用ウィンドを用いて、2次元メモリ7に格納されているレーダビデオ内に点在している孤立点、即ち、微小クラッタを検出するようにしている。
【0028】
これに対して、この実施の形態3では、カラー化変換部16がレーダビデオを振幅に応じて擬似的にカラー化し、カラー化したレーダビデオを2次元ビデオ7に格納する。図8はカラー化された船舶のレーダエコーAとクラッタのレーダエコーC1,C2,C3,C4を示している。
収縮処理部8は、船舶のレーダエコーAの色調と、クラッタのレーダエコーC1,C2,C3,C4の色調が異なるため、上記実施の形態1のように、収縮処理用ウィンドを用いて孤立点を検出しなくても、船舶とクラッタを容易に区別することができる。
【0029】
以上で明らかなように、この実施の形態3によれば、レーダビデオを振幅に応じて擬似的にカラー化するように構成したので、収縮処理部8における微小クラッタの検出処理が容易になり、目標の検出精度を高めることができる効果を奏する。
【0030】
実施の形態4.
図9はこの発明の実施の形態4によるレーダ信号処理装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
画像データA/D変換部17はASDEと同一の地域を撮像しているカメラから画像データを受けると、その画像データをA/D変換し、ディジタルの画像データとヒット検定処理部6により検知されたレーダビデオの相関を求め、その画像データと相関があるレーダビデオを2次元メモリ7に格納する。なお、画像データA/D変換部17は画像相関手段を構成している。
図10はASDE及びカメラの設置状況と、レーダビデオと画像データの相関を説明する説明図である。図10の例では、ASDE31の覆域33とカメラ32の撮像領域34が重なっており、ASDE31とカメラ32が同様の俯角で、共通の船舶と海運支援設備を監視するようにしている。ただし、この例では、ASDEのレーダビデオにはクラッタのレーダエコーB1,B2,B3,B4が含まれているが、カメラ32の画像データにはクラッタが含まれていないものとする。
【0031】
次に動作について説明する。
ヒット検定処理部6は、上記実施の形態1〜3と同様に、スレッショルドレベル算出部5により算出されたスレッショルドレベルより大きい振幅を有するレーダビデオを検知して、そのレーダビデオの座標系を局座標から直交座標(X座標、Y座標)に変換し、直交座標(X座標、Y座標)のレーダビデオを2次元ビデオ7に格納する。
【0032】
一方、カメラ32は、撮像領域34がASDE31の覆域33と重なるように設置されて、その撮像領域34を撮像する。
画像データA/D変換部17は、カメラ32から画像データを受けると、その画像データをA/D変換する。
そして、画像データA/D変換部17は、ディジタルの画像データとヒット検定処理部6により検知されたレーダビデオの相関を求め、その画像データと相関があるレーダビデオを2次元メモリ7に格納する。
【0033】
図10の例では、ASDE31の覆域33とカメラ32の撮像領域34には、船舶と海運支援設備が含まれているため、相関が有ると認定し、船舶と海運支援設備のレーダエコーA,C1,C2を2次元メモリ7に格納する。
しかし、ASDEのレーダビデオにはクラッタのレーダエコーB1,B2,B3,B4が含まれているが、カメラ32の画像データにはクラッタが含まれていないので、相関が無いと認定し、クラッタのレーダエコーB1,B2,B3,B4を2次元メモリ7に格納しないようにする。
【0034】
以上で明らかなように、この実施の形態4によれば、ASDEと同一の地域を撮像しているカメラから画像データを受けると、その画像データをA/D変換し、ディジタルの画像データとヒット検定処理部6により検知されたレーダビデオの相関を求め、その画像データと相関があるレーダビデオを2次元メモリ7に格納するように構成したので、スポットなどの複雑なエリアにクラッタが存在する場合でも、そのクラッタを確実に除去して、目標の検出精度を高めることができる効果を奏する。
【0035】
実施の形態5.
図11はこの発明の実施の形態5によるレーダ信号処理装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
差分処理部18は2次元メモリ7に格納されている現スキャン(Nスキャン)のレーダビデオと、1スキャン前(N−1スキャン)のレーダビデオの差分を求め、その差分結果であるレーダビデオを収縮処理部8に出力する。なお、差分処理部18は差分処理手段を構成している。
【0036】
次に動作について説明する。
2次元メモリ7には、ヒット検定処理部6から出力された現スキャン(Nスキャン)のレーダビデオが格納され、ヒット検定処理部6から出力された1スキャン前(N−1スキャン)のレーダビデオが格納される。
差分処理部18は2次元メモリ7に格納されている現スキャン(Nスキャン)のレーダビデオと、1スキャン前(N−1スキャン)のレーダビデオの差分を求め、その差分結果であるレーダビデオを収縮処理部8に出力する。
図12はN−1スキャン時のレーダビデオとNスキャン時のレーダビデオのほか、差分処理後のレーダビデオを示しており、海運支援設備のレーダエコーC1,C2,C3,C4とクラッタのレーダエコーB1,B2,B3,B4は、レーダエコーの変化がないために除去され、変化のある船舶のレーダエコーAのみが、差分として収縮処理部8に出力される。
収縮処理部8以降の処理は、上記実施の形態1等の処理と同様であるため説明を省略する。
【0037】
以上で明らかなように、この実施の形態5によれば、2次元メモリ7に格納されている現スキャン(Nスキャン)のレーダビデオと、1スキャン前(N−1スキャン)のレーダビデオの差分を求め、その差分結果であるレーダビデオを収縮処理部8に出力するように構成したので、動きがないクラッタなどを除去して、目標の検出精度を高めることができる効果を奏する。
【0038】
実施の形態6.
図13はこの発明の実施の形態6によるレーダ信号処理装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
クラッタマップ19は例えば海運支援設備のレーダエコーC1,C2,C3,C4など、固定の位置に設置されており、各スキャンにおいて同程度の振幅のレーダエコーを発生する設備や2次エコー等を発生するクラッタを、既知のクラッタとしてマッピングしている。
差分処理部20は2次元メモリ7に格納されているレーダビデオと、クラッタマップ19にマッピングされている既知のクラッタとの差分を求め、その差分結果であるレーダビデオを収縮処理部8に出力する。なお、クラッタマップ19及び差分処理部20からクラッタ除去手段が構成されている。
【0039】
次に動作について説明する。
例えば、海運支援設備は、固定の位置に設置されており、各スキャンにおいて同程度の振幅のレーダエコーを発生することが知られているので、既知のクラッタとしてクラッタマップ19にマッピングされている。
差分処理部20は、ヒット検定処理部6がレーダビデオを2次元メモリ7に格納すると、そのレーダビデオとクラッタマップ19にマッピングされている既知のクラッタとの差分を求め、その差分結果であるレーダビデオを収縮処理部8に出力する。
図14はヒット検定処理部6から出力されたレーダビデオと、既知のクラッタである海運支援設備のレーダエコーC1,C2,C3,C4の差分を求めた結果、既知のクラッタが除去されて、目標である船舶のレーダエコーAが収縮処理部8に出力されている様子を示している。
収縮処理部8以降の処理は、上記実施の形態1等の処理と同様であるため説明を省略する。
【0040】
以上で明らかなように、この実施の形態6によれば、2次元メモリ7に格納されているレーダビデオと、クラッタマップ19にマッピングされている既知のクラッタとの差分を求め、その差分結果であるレーダビデオを収縮処理部8に出力するように構成したので、既知のクラッタを除去して、目標の検出精度を高めることができる効果を奏する。
【0041】
実施の形態7.
図15はこの発明の実施の形態7によるレーダ信号処理装置を示す構成図であり、図において、図11と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
データベース21には目標である船舶等のモデル(例えば、船舶の形状や大きさ)が登録されている。
パターンマッチング処理部22はデータベース21に登録されている目標のモデルとクラスタリング・ラベル付け処理部12により検出された目標とのパターンマッチングを実施して、その目標の種類等を特定する。
なお、データベース21及びパターンマッチング処理部22は目標検出手段を構成している。
【0042】
次に動作について説明する。
データベース21には、例えば、複数種類の大型船舶のモデルが登録される。
パターンマッチング処理部22は、上記実施の形態1等と同様にして、クラスタリング・ラベル付け処理部12が目標である船舶を検出すると、その目標である船舶と、データベース21に登録されている複数種類の大型船舶のモデルとのパターンマッチングを実施して、クラスタリング・ラベル付け処理部12により検出された船舶の種類を特定する。
即ち、データベース21に登録されている船舶の中で、クラスタリング・ラベル付け処理部12により検出された船舶に最も類似している船舶を特定する。
【0043】
以上で明らかなように、この実施の形態7によれば、データベース21に登録されている目標のモデルとクラスタリング・ラベル付け処理部12により検出された目標とのパターンマッチングを実施して、その目標の種類等を特定するように構成したので、上記実施の形態1等よりも更に、航空機の離陸や着陸の安全性を高めることができる効果を奏する。
【0044】
実施の形態8.
図16はこの発明の実施の形態8によるレーダ信号処理装置を示す構成図であり、図において、図15と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
信頼性判定処理部23は目標追尾処理部14の追尾データの信頼性を判定し、その判定結果を出力する。なお、信頼性判定処理部23は信頼性判定手段を構成している。
【0045】
上記実施の形態1〜7では、クラッタを除去して、目標の検出精度を高めるものについて示したが、激しい降雨や降雪、あるいは、シークラッタ等の気象条件が極度に悪化すると、目標の検出精度が低下して、信頼できなくなることがある。
そこで、この実施の形態8では、レーダ信号処理装置の信頼性を判定して、その判定結果を出力することにより、レーダ信号処理装置から出力される追尾データを使用する航空管制における機材の信頼性を確保するものである。
【0046】
即ち、信頼性判定処理部23は、目標追尾処理部14の追尾データを入力し、誤目標の発生数をカウントする。
例えば、時間当りの誤目標の発生数が規定数を超えると、レーダ信号処理装置の信頼性が低いものと判定し、その旨を示す判定結果を出力するようにする。
【0047】
以上で明らかなように、この実施の形態8によれば、目標追尾処理部14の追尾データの信頼性を判定し、その判定結果を出力するように構成したので、気象条件が極度に悪化するなどにより、目標追尾処理部14の追尾データの信頼性が低下したとき、その追尾データの取り扱いを注意することができるようになり、航空管制における機材の信頼性を確保することができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明の実施の形態1によるレーダ信号処理装置を示す構成図である。
【図2】ASDEから出力されるレーダビデオの一例を示す説明図である。
【図3】ヒット検定処理部から出力されるレーダビデオの一例を示す説明図である。
【図4】レーダビデオに含まれているクラッタを縮小化する収縮処理を示す説明図である。
【図5】クラスタリング・ラベル付け処理を示す説明図である。
【図6】この発明の実施の形態2によるレーダ信号処理装置を示す構成図である。
【図7】この発明の実施の形態3によるレーダ信号処理装置を示す構成図である。
【図8】カラー化された船舶のレーダエコーとクラッタのレーダエコーを示す説明図である。
【図9】この発明の実施の形態4によるレーダ信号処理装置を示す構成図である。
【図10】ASDE及びカメラの設置状況と、レーダビデオと画像データの相関を説明する説明図である。
【図11】この発明の実施の形態5によるレーダ信号処理装置を示す構成図である。
【図12】N−1スキャン時のレーダビデオとNスキャン時のレーダビデオのほか、差分処理後のレーダビデオを示す説明図である。
【図13】この発明の実施の形態6によるレーダ信号処理装置を示す構成図である。
【図14】ヒット検定処理部から出力されたレーダビデオと、既知のクラッタである海運支援設備のレーダエコーの差分を求めた結果、既知のクラッタが除去されて、目標である船舶のレーダエコーが収縮処理部に出力されている様子を示す説明図である。
【図15】この発明の実施の形態7によるレーダ信号処理装置を示す構成図である。
【図16】この発明の実施の形態8によるレーダ信号処理装置を示す構成図である。
【符号の説明】
【0049】
1 A/D変換部(レーダビデオ検知手段)、2 レーダタイミング変換部(レーダビデオ検知手段)、3 レンジ/アジマス積分処理部(レーダビデオ検知手段)、4 レーダビデオバッファ部(レーダビデオ検知手段)、5 スレッショルドレベル算出部(レーダビデオ検知手段)、6 ヒット検定処理部(レーダビデオ検知手段)、7 2次元メモリ(レーダビデオ検知手段)、8 収縮処理部(クラッタ除去手段)、9 2次元移動平均処理部(クラッタ除去手段)、10 ブランクマップ(クラッタ除去手段)、11 2値化処理部(クラッタ除去手段)、12 クラスタリング・ラベル付け処理部(目標検出手段)、13 重心位置算出処理部(目標検出手段)、14 目標追尾処理部(目標検出手段)、15 データフォーマット生成処理部(目標検出手段)、16 カラー化変換部(レーダビデオ検知手段)、17 画像データA/D変換部(画像相関手段)、18 差分処理部(差分処理手段)、19 クラッタマップ(クラッタ除去手段)、20 差分処理部(クラッタ除去手段)、21 データベース(目標検出手段)、22 パターンマッチング処理部(目標検出手段)、23 信頼性判定処理部(信頼性判定手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空港面探知レーダ装置から出力されたレーダビデオのスレッショルドレベルを算出し、そのスレッショルドレベルより大きい振幅を有するレーダビデオを検知するレーダビデオ検知手段と、上記レーダビデオ検知手段により検知されたレーダビデオに含まれている目標とクラッタを区別し、そのレーダビデオからクラッタを除去するクラッタ除去手段と、上記クラッタ除去手段によりクラッタが除去されたレーダビデオを参照して目標を検出する目標検出手段とを備えたレーダ信号処理装置。
【請求項2】
クラッタ除去手段は、レーダビデオ検知手段により検知されたレーダビデオに対する2次元移動平均処理を実施してノイズレベルを求め、そのレーダビデオとノイズレベルを比較して目標とクラッタを区別することを特徴とする請求項1記載のレーダ信号処理装置。
【請求項3】
クラッタ除去手段は、レーダビデオ検知手段により検知されたレーダビデオに含まれているクラッタを縮小化する収縮処理を実施することを特徴とする請求項1または請求項2記載のレーダ信号処理装置。
【請求項4】
レーダビデオ検知手段は、スレッショルドレベルより大きい振幅を有するレーダビデオを振幅に応じて擬似的にカラー化することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載のレーダ信号処理装置。
【請求項5】
空港面探知レーダ装置と同一の地域を撮像しているカメラから画像データを受けると、その画像データとレーダビデオ検知手段により検知されたレーダビデオの相関を求め、その画像データと相関があるレーダビデオをクラッタ除去手段に出力する画像相関手段を設けたことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載のレーダ信号処理装置。
【請求項6】
レーダビデオ検知手段により今回検知されたレーダビデオと前回検知されたレーダビデオの差分を求め、その差分結果であるレーダビデオをクラッタ除去手段に出力する差分処理手段を設けたことを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載のレーダ信号処理装置。
【請求項7】
予め既知のクラッタがマッピングされているクラッタマップとレーダビデオ検知手段により検知されたレーダビデオの差分を求め、その差分結果であるレーダビデオをクラッタ除去手段に出力する差分処理手段を設けたことを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載のレーダ信号処理装置。
【請求項8】
目標検出手段は、予め登録されている目標のモデルとクラッタ除去手段によりクラッタが除去されたレーダビデオのパターンマッチングを実施して、検出した目標を特定することを特徴とする請求項1から請求項7のうちのいずれか1項記載のレーダ信号処理装置。
【請求項9】
目標検出手段により検出された目標の信頼性を判定し、その判定結果を出力する信頼性判定手段を設けたことを特徴とする請求項1から請求項8のうちのいずれか1項記載のレーダ信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−200932(P2006−200932A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−10558(P2005−10558)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】