説明

ロックアップ及びロックアップ解除を操作するための自動変速機の制御装置及び制御方法

ロックアップを実行するために、エンジン(4)の出力軸と自動変速機(7)の入力軸とを直結し、逆に、ロックアップ解除を実行するために、エンジンの出力軸と自動変速機の入力軸とを分離する、ロックアップ装置(6)を含むトルクコンバータ(5)を介してエンジン(4)へ連結され、さらに、エンジン(4)へトルク要求を含む指令を伝達するためのエンジンの操作装置(2)と、エンジンの操作装置(2)へトルク設定値を含む指令を伝達するための自動変速機の操作装置(3)を含む自動変速機の制御装置において、ロックアップまたはロックアップ解除の実行を可能にするために、自動変速機の操作装置は、エンジンの操作装置へ、エンジンの出力軸と自動変速機の入力軸との間のスリップと、運転者が要求するトルクの値に応じて、エンジンの回転数がトルクコンバータのタービンの回転数に到達することを可能にする、トルク設定値を伝達することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の動力装置の自動変速機の制御装置及び制御方法に関する。
【0002】
特に本発明は、流体トルクコンバータ及びロックアップ(トルクコンバータの入力部と出力部を直結すること)装置、エンジンの操作装置、自動変速機の操作装置を含む、ギヤ比変更が自動化された自動変速機を有する自動車に関する。これらのエンジンの操作装置と自動変速機の操作装置は、情報を交換することができ、特に、エンジンの操作装置は、自動変速機の操作装置へ、運転者のトルク要求を表す情報と、供給される実際のトルクの値を表す情報を伝達することができ、自動変速機の操作装置は、エンジンの操作装置へ、エンジンの操作の修正を可能にするトルク設定値を伝達することができる。
【0003】
本発明は、特に、ロックアップとロックアップ解除の際にアクセルペダルから足が上げられた(すなわち、アクセルペダルが弛緩された)、被駆動モード(すなわち、トルクコンバータのタービンの回転数がエンジンの回転数よりも高い)時に実行されるロックアップを可能にすることまたは改良することを提案する。
【背景技術】
【0004】
トルクコンバータを含む自動変速機は、一般に、エンジンの軸とトルクコンバータのタービンの軸を連結することを可能にする油圧ロックアップ装置を有する。ロックアップ技術は、ロックアップ室(ロックアップ装置)内の圧力の操作に基礎を置く。ロックに要する圧力は、エンジンから供給されるトルクと、エンジンの回転数と、トルクコンバータの特性に依存する。トルクコンバータの特性は、トルクコンバータが駆動モード(エンジンの回転数と等価なトルクコンバータの入力回転数が、タービンの回転数と呼ばれるトルクコンバータの出力回転数よりも大きい)にあるか、被駆動モード(エンジンの回転数がタービンの回転数よりも小さい)にあるかによって、同じではない。トルクコンバータが被駆動モードにあるときには、ロック装置をロックするのに要する圧力は、駆動モードにあるときよりも高く、一般にロックアップが不可能であるほどである。このことは、運転者がアクセルペダルを押していないとき、特に下降時または制動時に、ロックアップの実行を不可能にするという問題を呈する。ロックアップの実行が不可能であることは、エンジンブレーキの損失と燃料消費の悪化をもたらす。このことは、後に再ロックアップができないことを恐れるために、幾つかのギヤシフトの際に、ロックアップ解除の可能性を減少させる。
【0005】
一般に、自動変速機の操作装置は、ロックアップまたはロックアップ解除の際に、エンジンの操作装置へトルク設定値を伝達することはなく、伝達するとしても明確に定められた幾つかの場合にのみである。
【特許文献1】US 6 468 183 B1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、任意の動作点から、特にトルクコンバータが被駆動モード(トルクコンバータのタービンの回転数がエンジンの回転数よりも高い)にあるときに、ロックアップを実行することを可能にすることにある。本発明のもう1つの目的は、ロックアップ中に運転者要求トルク(運転者によって要求されるトルク)が大きく減少したときのロックアップの質及びロックアップ解除の質を改良することにある。
【0007】
本発明の主要な特徴は、ロックアップ装置のロックアップ及びロックアップ解除の際に、自動変速機の操作装置によって、エンジンのトルクの特殊な操作を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、ロックアップを実行するために、エンジンの出力軸と自動変速機の入力軸とを直結することを可能にし、逆に、ロックアップ解除を実行するために、上記エンジンの上記出力軸と上記自動変速機の上記入力軸との分離を可能にする、ロックアップ装置を含むトルクコンバータを介して自動車の上記エンジンへ連結された自動変速機の制御装置であって、上記制御装置は、上記エンジンへトルク要求を含む指令を伝達するように適合化された上記エンジンの操作装置と、上記エンジンの上記操作装置へトルク設定値を含む指令を伝達するように適応化された上記自動変速機の操作装置をさらに含み、上記トルク要求は、運転者によって要求される運転者要求トルクと上記トルク設定値に依存する、自動変速機の制御装置を対象とする。
【0009】
本発明によれば、上記制御装置は、上記ロックアップまたは上記ロックアップ解除の実行を可能にするために、上記自動変速機の上記操作装置が、上記エンジンの上記操作装置へ、上記エンジンの上記出力軸と上記自動変速機の上記入力軸との間のスリップと、上記自動車の上記運転者が要求するトルクのレベルとに応じて、上記エンジンの上記回転数が上記トルクコンバータの上記タービンの回転数に到達することを可能にする、トルク設定値を伝達するように適応化されたことを特徴とする。
【0010】
このようにして、本発明による上記制御装置によれば、上記ロックアップと上記ロックアップ解除は、上記運転者によって要求される上記トルクが、上記ロックアップと上記ロックアップ解除の際に急激に変化した場合を含む、あらゆる場合に可能になる。
【0011】
上記トルクコンバータの上記タービンの回転数が、上記エンジンの回転数よりも大きいときにロックアップを実行するために、上記自動変速機の上記操作装置は、上記エンジンの上記操作装置へ、上記エンジンの回転数が、上記トルクコンバータの上記タービンの回転数へ近づくように、上記自動車の上記運転者によって要求される上記運転者要求トルクよりも大きいトルク設定値を伝達するように適応化される。
【0012】
上記運転者がアクセルペダルを弛緩することによって、上記エンジンのトルクが急速に減少する際におけるロックアップを実行するために、上記自動変速機の上記操作装置は、上記エンジンの上記操作装置へ、上記トルクの減少速度を遅らせるためのトルク設定値を伝達する。
【0013】
上記エンジンが燃料噴射カットモードにあるときにロックアップ解除を実行するために、上記自動変速機の上記操作装置は、上記エンジンの上記操作装置へ、上記エンジンが燃料噴射カットモードにあるときに、上記ロックアップ解除が実行されないような、上記自動車の上記運転者によって要求される上記運転者要求トルクよりも大きいトルク設定値を伝達するように適応化される。
【0014】
上記運転者がアクセルペダルを弛緩することによって、上記エンジンのトルクが急速に減少する際におけるロックアップ解除を実行するために、上記自動変速機の上記操作装置は、上記エンジンの上記操作装置へ、上記トルクの減少速度を遅らせるためのトルク設定値を伝達するように適応化される。
【0015】
上記自動変速機の上記操作装置は、上記ロックアップ及び上記ロックアップ解除の実行時に、上記ロックアップ及び上記ロックアップ解除のために上記ロックアップ装置へ加えられる油圧の調整手段を含むことが望ましい。
【0016】
このような構成は、上記ロックアップ及び上記ロックアップ解除を、円滑かつ穏やかに実行することを可能にする。
【0017】
本発明の望ましい実施の形態においては、上記ロックアップまたは上記ロックアップ解除の際に、上記自動変速機の上記操作装置は、上記運転者要求トルクと目標トルクとを比較し、上記エンジンの回転数と上記トルクコンバータのタービンの回転数との間の差を閾値と比較し、上記エンジンの上記操作装置へ、上記エンジンのトルクが上記目標トルクに漸近的に到達し、上記エンジンの回転数が上記トルクコンバータの上記タービンの回転数に漸近的に到達するためのトルク設定値を伝達するように適応化される。
【0018】
上記自動変速機の上記操作装置は、上記タービンの回転数と、上記自動変速機の油温と、係合中のギヤ比の関数として、上記目標トルクと回転数の上記閾値を決定するように適応化される。この目標トルクは、上記運転者が、上記自動車の不適切な加速を感じないように充分低く、また、ロックアップ解除時に、上記エンジンの回転数が上記タービンの回転数に達し、この場合上記エンジンの新たな燃料噴射が生じるように、充分高く選択される必要がある。この目標トルクは、ロックアップが実行されるか、ロックアップ解除が実行されるかに応じて異なることができる。
【0019】
本発明の他の1つの局面によれば、ロックアップを実行するために、エンジンの出力軸と自動変速機の入力軸とを直結することを可能にし、逆に、ロックアップ解除を実行するために、上記エンジンの上記出力軸と上記自動変速機の上記入力軸との分離を可能にする、ロックアップ装置を含むトルクコンバータを介して自動車の上記エンジンへ連結された自動変速機におけるロックアップまたはロックアップ解除の操作方法であって、上記自動変速機の制御装置は、上記エンジンへトルク要求を含む指令を伝達するように適合化された上記エンジンの操作装置と、上記エンジンの上記操作装置へトルク設定値を含む指令を伝達するように適応化された上記自動変速機の操作装置をさらに含み、上記トルク要求は、運転者によって要求される運転者要求トルクと上記トルク設定値に依存する、自動変速機におけるロックアップまたはロックアップ解除の操作方法において、上記ロックアップまたは上記ロックアップ解除を実行可能にするために、上記自動変速機の上記操作装置が、上記エンジンの上記操作装置へ、上記エンジンの上記出力軸と上記自動変速機の上記入力軸との間のスリップと、上記自動車の上記運転者が要求するトルクのレベルに応じて、上記エンジンの上記回転数が上記トルクコンバータの上記タービンの回転数に到達することを可能にする、トルク設定値を伝達するように適応化されたことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の特徴及び利点は、以下の説明を通じて、より明らかとなるであろう。
【0021】
非限定的な例として示された添付図面において:
−図1は、本発明による自動変速機の制御装置の全般図であり;
−図2は、ロックアップの場合における自動変速機の制御装置の様々な動作ステップを示す流れ図であり;
−図3はロックアップ解除の場合における自動変速機の制御装置の様々な動作ステップを示す流れ図である。
【0022】
図1に示すように、エンジン4は、エンジンの操作装置2によって操作され、自動変速機7は、自動変速機の操作装置3によって操作される。自動車の運転者は、アクセルペダル1のような装置を使用することができ、運転者は、自動車の加速を得るためのトルクを供給するようにエンジンを制御するために、アクセルペダル1を操作する。アクセルペダル1は、エンジンの操作装置2へ、アクセルペダルの角度位置を表す電気信号を送る。アクセルペダルの角度位置は、エンジンの操作装置2によって、トルク要求(運転者要求トルク)へ変換される。エンジンの操作装置2は、エンジン4が期待されるトルクを供給するように、エンジン4に作用する。
【0023】
自動変速機の操作装置3は、トルク設定値のような、エンジンの操作指令を、エンジンの操作装置2へ伝達することができる。エンジンの操作装置2によってエンジンへ送られるトルク要求は、自動車の運転者によって要求されるトルクと、トルク設定値との関数である。エンジンの操作装置2によってエンジンへ送られるトルク要求は、トルク設定値が存在しない場合に自動車の運転者によって要求されるトルク、または自動変速機の操作装置3によって伝達されるトルク設定値のいずれかに相当する。
【0024】
エンジン4と自動変速機7の間に位置する連結装置は、ロックアップを実行するために、所定の動作状態においてエンジンの出力軸を自動変速機の入力軸と直結することを可能にする、ロックアップ装置6を有するトルクコンバータ5である。
【0025】
図2の流れ図は、ロックアップの場合における自動変速機の制御装置の様々な機能ステップを示す。この制御装置は、図2に示すようなロックアップの全持続時間にわたって、自動変速機の操作装置3が、エンジンの操作装置2へ、トルク設定値を伝達するように準備する。
【0026】
ステップAにおいては、自動変速機の操作装置3は、ロックアップを実行する理由があるか否かを決定する。ロックアップを実行する理由がないときには、特定のトルク設定値がエンジンの操作装置2へ伝達されることはない。ロックアップすることが決定されたときには、ステップBが実行される。
【0027】
ステップBにおいては、自動変速機の操作装置3は、エンジンの操作装置2によって供給される運転者の要求を表すトルク(運転者要求トルク)(Cc)が、ロックアップ目標トルクと呼ばれる最小トルクよりも小さいか否か、及び、エンジンの回転数が、タービンの回転数よりも小さくて離れているか否か(エンジンの回転数(Rm)−タービンの回転数(Rt)<閾値)、をテストする。ロックアップ目標トルク及び回転数の閾値は、自動変速機の操作装置3によって、タービンの回転数、油温、係合中のギヤ比のような、様々なパラメータの関数として決定される。ステップBにおけるテストの結果が否であれば、ステップCが直接適用され、否でなければステップIが適用される。
【0028】
ステップCにおいては、過程F1が適用される。すなわち、従来のロックアップの操作方法を用いて、ロックアップの油圧制御が始動される。これらの制御は、エンジンの操作装置2へ伝達されるトルク設定値と独立に続けられる。一旦ロックアップが始動されたら、ステップDが適用される。
【0029】
ステップDにおいては、過程F2が適用される。すなわち、自動変速機の操作装置3は、エンジンの操作装置2へ、トルク設定値(Cons)を送る。このトルク設定値(Cons)は、例えば、運転者がアクセルペダルから足を上げたときのエンジンのトルクの減少の動力学的な効果を遅らせるのに充分なフィルタリングを経た、運転者要求トルク(Cc)に到達する。過程F2は、ステップEとステップFのテスト結果に従って中断される。
【0030】
ステップEにおいては、自動変速機の操作装置3は、現在実行中の「油圧」ロックアップが終了したか否か、及び、自動変速機の操作装置3からエンジンの操作装置2へ伝達されたトルク設定値が、運転者要求トルクに充分接近して到達したか否かをテストする。テストの結果が肯定であれば、ロックアップは終了したとみなされ、自動変速機の操作装置3は、新たなロックアップが要求されるか否かをテストする(ステップAへ戻る)。テストの結果が否であれば、ステップFが適用される。
【0031】
ステップFにおいては、自動変速機の操作装置3は、運転者要求トルクがロックアップ目標トルクよりも小さいか否かをテストする。テストの結果が否であれば、ステップDが継続して実行される。テストの結果が肯定であれば、ステップGが適用される。
【0032】
ステップGにおいては、過程F3が適用される。すなわち、自動変速機の操作装置3は、エンジンの操作装置2へ、トルク設定値を送る。このトルク設定値は、例えば、運転者がアクセルペダルから足を上げたときのエンジンのトルクの減少の動力学的な効果を遅らせるのに充分なフィルタリングを経た、ロックアップ目標トルクに到達する。過程F3は、ステップHのテスト結果に従って中断される。
【0033】
ステップHにおいては、自動変速機の操作装置3は、運転者要求トルクがロックアップ目標トルク以上であるか否か、または、「油圧」ロックアップが終了したか否かをテストする。テストの結果が肯定であれば、トルク設定値が運転者要求トルクに到達するように、ステップDが再び適用される。テストの結果が否であれば、ステップGへ戻り、過程F3が継続されることを可能にする。
【0034】
ステップIにおいては、過程F4が適用される。すなわち、自動変速機の操作装置3は、エンジンの操作装置2へ、トルク設定値を送る。このトルク設定値は、漸進的に、フィルタリングまたは傾斜付けを経た、ロックアップ目標トルクに到達する。過程F4は、ステップJ、ステップK、ステップNのテスト結果に従って中断される。
【0035】
ステップJにおいては、自動変速機の操作装置3は、運転者要求トルクがロックアップ目標トルク以上であるか否か、または、「油圧」ロックアップが終了したか否かをテストする。テストの結果が肯定であれば、トルク設定値が運転者要求トルクに到達するように、ステップDが再び適用される。テストの結果が否であれば、ステップKが適用される。
【0036】
ステップKにおいては、自動変速機の操作装置3は、エンジンの回転数が、タービンの回転数よりも大きいかまたはタービンの回転数に接近しているか否か(エンジンの回転数−タービンの回転数≧閾値)をテストする。テストの結果が肯定であれば、ステップLが適用される。テストの結果が否であれば、ステップNが適用される。
【0037】
ステップLにおいては、過程F1が適用される。すなわち、従来のロックアップの操作方法を用いて、ロックアップの油圧制御が始動される。これらの制御は、エンジンの操作装置2へ伝達されるトルク設定値と独立に続けられる。一旦ロックアップが始動されたら、ステップMが適用される。
【0038】
ステップKのテストの結果が肯定で、現在のトルクが、エンジンの回転数がタービンの回転数よりも大きいかまたはタービンの回転数に接近するのに充分である、ステップMにおいては、過程F5が適用される。この過程によれば、ロックアップ目標トルクは、エンジンから供給される実際のトルクに固定され、トルク設定値は、漸進的に、フィルタリングまたは傾斜付けを経た、ロックアップ目標トルクに到達する。その後、ステップHが再び適用される。
【0039】
ステップNにおいては、自動変速機の操作装置3は、過程F4が終了したことを確認するために、適用されるエンジンのトルク設定値が、目標トルク以上であるか否かをテストする。テストの結果が否であれば、ステップIへ戻って、過程F4を続行する。テストの結果が肯定であれば、ステップOが適用される。
【0040】
ステップOにおいては、目標トルクは、エンジンの回転数をタービンの回転数のレベルにするのに不十分である(ステップKのテストの結果が否)。そこで、過程F6が適用される。すなわち、最初のロックアップ目標トルクが、自動変速機の操作装置3によって決定された増分だけ増加される。この増分は、例えばエンジンの回転数とタービンの回転数との間の差のような、複数のパラメータに依存する。ロックアップ目標トルクが一旦増加されたら、ステップIへ戻る。
【0041】
上述の説明は、ロックアップに適用される本発明の実施の形態を例示している。ロックアップの間の、エンジンの回転数とタービンの回転数との間のスリップを調整する、その他のあらゆる技術を適用することが可能である。
【0042】
同様に、この操作原理は、ロックアップ解除にも適用可能である。この場合、自動変速機の操作装置3は、エンジンの操作装置2へ、それに従ってロックアップ装置(ロック装置)6を開くことと整合してトルクがフィルターされる、操作指令を伝達することができる。また、自動変速機の操作装置3は、エンジンがロックアップ解除と競合しないようにエンジンの再連結を管理するために、運転者要求トルクよりも大きいトルク設定値を伝達することもできる。
【0043】
図3の流れ図は、ロックアップ解除の場合における自動変速機の制御装置の様々な機能ステップを示す。この制御装置は、図3に示すようなロックアップ解除の全持続時間にわたって、自動変速機の操作装置3が、エンジンの操作装置2へ、トルク設定値を伝達するように準備する。
【0044】
ステップaにおいては、自動変速機の操作装置3は、ロックアップ解除を実行する理由があるか否かを決定する。ロックアップを実行する理由がないときには、特定のトルク設定値がエンジンの操作装置2へ伝達されることはない。ロックアップすることが決定されたときには、ステップbが実行される。
【0045】
ステップbにおいては、過程f1が適用される。すなわち、従来のロックアップ解除の操作方法を用いて、ロックアップの油圧制御が始動される。これらの制御は、エンジンの操作装置2へ伝達されるトルク設定値と独立に続けられる。一旦ロックアップが始動されたら、ステップcが適用される。
【0046】
ステップcにおいては、自動変速機の操作装置3は、エンジンの操作装置2によって供給される運転者の要求を表すトルク(運転者要求トルク)(Cc)が、ロックアップ解除目標トルクと呼ばれる最小トルクよりも小さいか否かをテストする。ロックアップ解除目標トルクは、自動変速機の操作装置3によって、タービンの回転数、油温、係合中のギヤ比のような、様々なパラメータの関数として決定される。ステップcにおけるテストの結果が否であれば、ステップfが直接適用され、否でなければステップdが適用される。
【0047】
ステップdにおいては、過程f2が適用される。すなわち、自動変速機の操作装置3は、エンジンの操作装置2へ、エンジンのトルク設定値を送る。このトルク設定値は、漸進的に、フィルタリングまたは傾斜付けを経た、ロックアップ解除目標トルクに到達する。過程f2は、ステップeのテスト結果に従って中断される。
【0048】
ステップeにおいては、自動変速機の操作装置3は、運転者要求トルクがロックアップ解除目標トルク以上であるか否か、または、「油圧」ロックアップ解除が終了したか否かをテストする。テストの結果が肯定であれば、ステップfが直接適用され、テストの結果が肯定でなければ、ステップdが適用され、過程f2が継続して適用される。
【0049】
ステップfにおいては、過程f3が適用される。すなわち、自動変速機の操作装置3は、エンジンの操作装置2へ、トルク設定値を送る。このトルク設定値は、例えば、運転者がアクセルペダルから足を上げたときのエンジンのトルクの減少の動力学的な効果を遅らせるのに充分なフィルタリングを経た、運転者要求トルクに到達する。過程f3は、ステップgのテスト結果と、ステップeのテスト結果に従って中断される。
【0050】
ステップgにおいては、自動変速機の操作装置3は、「油圧」ロックアップ解除が終了したか否か、及び、自動変速機の操作装置3によってエンジンの操作装置2へ伝達されたトルク設定値が、運転者要求トルクに充分近く到達したか否かをテストする。テストの結果が肯定であれば、ロックアップ解除は終了したとみなされ、自動変速機の操作装置3は、新たなロックアップ解除が要求されるか否かをテストする(ステップaへ戻る)。テストの結果が否であれば、ステップeが適用される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明による自動変速機の制御装置の全般図である。
【図2】ロックアップの場合における自動変速機の制御装置の様々な動作ステップを示す流れ図である。
【図3】ロックアップ解除の場合における自動変速機の制御装置の様々な動作ステップを示す流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロックアップを実行するために、エンジン(4)の出力軸と自動変速機(7)の入力軸とを直結することを可能にし、逆に、ロックアップ解除を実行するために、上記エンジン(4)の上記出力軸と上記自動変速機(7)の上記入力軸との分離を可能にする、ロックアップ装置(6)を含むトルクコンバータ(5)を介して自動車の上記エンジン(4)へ連結された自動変速機の制御装置であって、
上記制御装置は、上記エンジン(4)へトルク要求を含む指令を伝達するように適合化された上記エンジンの操作装置(2)と、上記エンジンの上記操作装置(2)へトルク設定値を含む指令を伝達するように適応化された上記自動変速機(7)の操作装置(3)をさらに含み、上記トルク要求は、運転者によって要求される運転者要求トルクと上記トルク設定値に依存する、自動変速機の制御装置において、
上記ロックアップまたは上記ロックアップ解除の際に、上記自動変速機の上記操作装置(3)は、上記運転者要求トルクと目標トルクとを比較し、上記エンジン(4)の回転数と上記トルクコンバータのタービンの回転数との間の差を閾値と比較し、上記エンジン(4)の上記操作装置(2)へ、上記エンジンのトルクが上記目標トルクに漸近的に到達し、上記エンジン(4)の回転数が上記トルクコンバータの上記タービンの回転数に漸近的に到達するためのトルク設定値を伝達するように適応化されたことを特徴とする、自動変速機の制御装置。
【請求項2】
上記トルクコンバータ(5)の上記タービンの回転数が、上記エンジン(4)の回転数よりも大きいときに上記ロックアップを実行するために、上記自動変速機の上記操作装置(3)は、上記エンジンの上記操作装置(2)へ、上記エンジン(4)の回転数が、上記トルクコンバータ(5)の上記タービンの回転数へ近づくように、上記自動車の上記運転者によって要求される上記運転者要求トルクよりも大きいトルク設定値を伝達するように適応化されたことを特徴とする、請求項1に記載の自動変速機の制御装置。
【請求項3】
上記運転者がアクセルペダル(1)を弛緩することによって、上記エンジンのトルクが急速に減少する際における上記ロックアップを実行するために、上記自動変速機(7)の上記操作装置(3)は、上記エンジンの上記操作装置(2)へ、上記トルクの減少速度を遅らせるためのトルク設定値を伝達することを特徴とする、請求項1に記載の自動変速機の制御装置。
【請求項4】
上記エンジン(4)が燃料噴射カットモードにあるときに上記ロックアップ解除を実行するために、上記自動変速機の上記操作装置(3)は、上記エンジンの上記操作装置(2)へ、上記エンジン(4)が燃料噴射カットモードにあるときに、上記ロックアップ解除が実行されないような、上記自動車の上記運転者によって要求される上記運転者要求トルクよりも大きいトルク設定値を伝達するように適応化されたことを特徴とする、請求項1に記載の自動変速機の制御装置。
【請求項5】
上記運転者がアクセルペダル(1)を弛緩することによって、上記エンジンのトルクが急速に減少する際における上記ロックアップ解除を実行するために、上記自動変速機の上記操作装置(3)は、上記エンジンの上記操作装置(2)へ、上記トルクの減少速度を遅らせるためのトルク設定値を伝達するように適応化されたことを特徴とする、請求項1に記載の自動変速機の制御装置。
【請求項6】
上記自動変速機の上記操作装置(3)は、上記ロックアップ及び上記ロックアップ解除の実行時に、上記ロックアップ及び上記ロックアップ解除のために上記ロックアップ装置(6)へ加えられる油圧の調整手段を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載の自動変速機の制御装置。
【請求項7】
上記自動変速機の上記操作装置(3)は、上記タービンの回転数と、上記自動変速機(7)の油温と、係合中のギヤ比の関数として、上記目標トルクと回転数の上記閾値を決定するように適応化されたことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1つに記載の自動変速機の制御装置。
【請求項8】
ロックアップを実行するために、エンジン(4)の出力軸と自動変速機(7)の入力軸とを直結することを可能にし、逆に、ロックアップ解除を実行するために、上記エンジン(4)の上記出力軸と上記自動変速機(7)の上記入力軸との分離を可能にする、ロックアップ装置(6)を含むトルクコンバータ(5)を介して自動車の上記エンジン(4)へ連結された自動変速機におけるロックアップまたはロックアップ解除の操作方法であって、
上記自動変速機の制御装置は、上記エンジン(4)へトルク要求を含む指令を伝達するように適合化された上記エンジンの操作装置(2)と、上記エンジンの上記操作装置(2)へトルク設定値を含む指令を伝達するように適応化された上記自動変速機(7)の操作装置(3)をさらに含み、上記トルク要求は、運転者によって要求される運転者要求トルクと上記トルク設定値に依存する、自動変速機におけるロックアップまたはロックアップ解除の操作方法において、
上記ロックアップまたは上記ロックアップ解除を実行可能にするために、上記自動変速機の上記操作装置(3)は、上記運転者要求トルクと目標トルクとを比較し、上記エンジン(4)の回転数と上記トルクコンバータのタービンの回転数との間の差を閾値と比較し、上記エンジン(4)の上記操作装置(2)へ、上記エンジンのトルクが上記目標トルクに漸近的に到達し、上記エンジン(4)の回転数が上記トルクコンバータの上記タービンの回転数に漸近的に到達するためのトルク設定値を伝達することを特徴とする、自動変速機におけるロックアップまたはロックアップ解除の操作方法。
【請求項9】
以下のステップ:
ステップA:上記自動変速機の上記操作装置(3)は、上記ロックアップを実行する理由があるか否かを決定し、上記ロックアップの実行が決定されたときにはステップBが実行され、
ステップB:上記操作装置(3)は、上記エンジンの上記操作装置(2)によって供給される上記運転者の要求を表す上記運転者要求トルク(Cc)が、最小トルク(ロックアップ目標トルク)よりも小さいか否か、及び、上記エンジンの上記回転数が、上記タービンの上記回転数よりも小さくて離れているか否か(エンジンの回転数(Rm)−タービンの回転数(Rt)<閾値)、をテストし、上記テストの結果が否であれば、ステップCが直接適用され、否でなければステップIが適用され、
ステップC:ロックアップの油圧制御が始動され、
ステップD:上記自動変速機の上記操作装置(3)は、上記エンジンの上記操作装置(2)へ、上記運転者要求トルク(Cc)へ漸進的に到達するトルク設定値(Cons)を送り、
ステップE:上記自動変速機の上記操作装置(3)は、現在実行中の上記ロックアップが終了したか否か、及び、上記自動変速機の上記操作装置(3)から上記エンジンの上記操作装置(2)へ伝達された上記トルク設定値が、上記運転者要求トルクに充分接近して到達したか否かをテストし、上記テストの結果が肯定であれば、上記ロックアップは終了したとみなされ、上記自動変速機の上記操作装置(3)は、新たなロックアップが要求されるか否かをテストし(上記ステップAへ戻る)、上記テストの結果が否であれば、ステップFが適用され、
ステップF:上記自動変速機の上記操作装置(3)は、上記運転者要求トルクが上記ロックアップ目標トルクよりも小さいか否かをテストし、上記テストの結果が否であれば、上記ステップDが継続して実行され、上記テストの結果が肯定であれば、ステップGが適用され、
ステップG:上記自動変速機の上記操作装置(3)は、上記エンジンの上記操作装置(2)へ、上記ロックアップ目標トルクへ漸進的に到達するトルク設定値を送り、
ステップH:上記自動変速機の上記操作装置(3)は、上記運転者要求トルクが上記ロックアップ目標トルク以上であるか否か、または、上記ロックアップが終了したか否かをテストし、上記テストの結果が肯定であれば、上記トルク設定値が上記運転者要求トルクに到達するように、上記ステップDが再び適用され、上記テストの結果が否であれば、上記ステップGへ戻り
ステップI:上記自動変速機の上記操作装置(3)は、上記エンジンの上記操作装置(2)へ、上記ロックアップ目標トルクへ漸進的に到達するトルク設定値を送り、
ステップJ:上記自動変速機の上記操作装置(3)は、上記運転者要求トルクが上記ロックアップ目標トルク以上であるか否か、または、上記ロックアップが終了したか否かをテストし、上記テストの結果が肯定であれば、上記トルク設定値が上記運転者要求トルクに到達するように、上記ステップDが再び適用され、上記テストの結果が否であれば、ステップKが適用され、
ステップK:上記自動変速機の上記操作装置(3)は、上記エンジンの回転数が、タービンの回転数よりも大きいかまたは上記タービンの回転数に接近しているか否か(エンジンの回転数−タービンの回転数≧閾値)をテストし、上記テストの結果が肯定であれば、ステップLが適用され、上記テストの結果が否であれば、ステップNが適用され、
ステップL:上記ロックアップが始動され、
ステップM:上記ステップKのテストの結果が肯定で、現在のトルクが、上記エンジンの回転数が上記タービンの回転数よりも大きいかまたは上記タービンの回転数に接近するのに充分であり、上記ロックアップ目標トルクは、上記エンジンから供給される実際のトルクに固定され、上記トルク設定値は、漸進的に、上記ロックアップ目標トルクに到達し、
ステップN:上記自動変速機の上記操作装置(3)は、適用される上記エンジンの上記設定トルクが、上記目標トルク以上であるか否かをテストし、上記テストの結果が否であれば、上記ステップIへ戻り、上記テストの結果が肯定であれば、ステップOが適用され、
ステップO:上記トルクは、上記エンジンの回転数を上記タービンの回転数のレベルにするのに不十分であり(ステップKのテストの結果が否)、最初の上記ロックアップ目標トルクは、上記自動変速機の上記操作装置(3)によって、上記エンジンの回転数と上記タービンの回転数との間の差を含む複数のパラメータに依存して決定された増分だけ増加され、次いで、上記ステップIへ戻る、
を含むことを特徴とする、請求項8に記載の自動変速機におけるロックアップまたはロックアップ解除の操作方法。
【請求項10】
以下のステップ:
ステップa:上記自動変速機の上記操作装置(3)は、上記ロックアップ解除を実行する理由があるか否かを決定し、上記ロックアップ解除が決定されたときには、ステップbが実行され:
ステップb:上記ロックアップ解除の油圧操作が始動され、
ステップc:上記自動変速機の上記操作装置(3)は、上記エンジンの上記操作装置(2)によって供給される、運転者の要求を表す運転者の要求トルク(Cc)が、ロックアップ解除目標トルクと呼ばれる最小トルクよりも小さいか否かをテストし、上記テストの結果が否であれば、ステップfが直接適用され、否でなければ下記のステップdが適用され、
ステップd:上記自動変速機の上記操作装置(3)は、上記エンジンの上記操作装置(2)へ、上記ロックアップ解除目標トルクへ漸進的に到達するトルク設定値を送り、
ステップe:上記自動変速機の上記操作装置(3)は、上記運転者要求トルクが上記ロックアップ解除目標トルク以上であるか否か、または、上記ロックアップ解除が終了したか否かをテストし、上記テストの結果が肯定であれば、ステップfが直接適用され、上記テストの結果が肯定でなければ、上記ステップdが適用され、
ステップf:上記自動変速機の上記操作装置(3)は、上記エンジンの上記操作装置(2)へ、上記運転者要求トルクへ漸進的に到達するトルク設定値を送り、
ステップg:上記自動変速機の上記操作装置(3)は、上記ロックアップ解除が終了したか否か、及び、上記自動変速機の上記操作装置(3)によって上記エンジンの上記操作装置(2)へ伝達された上記トルク設定値が、上記運転者要求トルクに充分近く到達したか否かをテストし、上記テストの結果が肯定であれば、上記ロックアップ解除は終了したとみなされ、上記自動変速機の上記操作装置(3)は、新たなロックアップ解除が要求されるか否かをテスト(上記ステップaへ戻る)し、上記テストの結果が否であれば、上記ステップeが適用される、
を含むことを特徴とする、請求項8に記載の自動変速機におけるロックアップまたはロックアップ解除の操作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−501088(P2008−501088A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−514047(P2007−514047)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050379
【国際公開番号】WO2005/118328
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】