説明

ロボットナビゲーションシステム

【課題】ロボットを用い、そのロボットが有する腕部等の案内部の動きで所定の目的地への案内を行うロボットナビゲーションシステムを提供する。
【解決手段】ロボットナビゲーションシステム100は、目的地Tに信号発信装置12を設置し、信号発信装置12から発信される信号をユーザUが携行するロボット14に受信させて、そのロボット14の動作によりユーザUを目的地Tへ案内する。ロボット14は、本体部21と、2軸回りに回転自在な腕部23と、信号発信装置12から発信される信号を検知してその信号の発信元方向および信号発信装置12までの距離を検出するセンサ部22と、センサ部22が検出した信号の発信元方向を指し示し、検出した距離に応じて腕部23の動作を変化させ、その距離が予め設定された距離よりも短くなったときに腕部23の動作を停止するように腕部23の動作を制御する動作制御部24を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型ロボットを携行したユーザをそのロボットの動作を通して目的地に案内するためのロボットナビゲーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
人が所望の目的地へ到達するためのナビゲーションシステムとしては、携帯電話のウォークナビゲーションシステムのように、GPSを利用して現在地から目的地への進路を画面や音声で案内するものが広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、GPSは屋内では利用することができないので、大規模商業施設や病院、イベント会場等の面積の広い建造物内で、所望の部屋やブース等へ移動するためのナビゲーションには適していない。そのため、このような施設では地図の配布や案内係員による説明案内が主流となっているが、常に途中にある目印に注意を払いながら目的地を探さなければならず、労力を必要とする。また、ルートが複雑な場合には、途中で現在地やルートがわからなくなったりすることもある。
【0004】
そこで近時、ユーザを目的地に案内する手段として自走式ロボットを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献2)。しかしながら、このような自走式ロボットは高価であり、また、目的地までのルートが平坦である必要がある等の制限がある等、汎用性に乏しい。
【0005】
人が所望の目的地へ到達するためのナビゲーションシステムとしては、乗用車等に搭載されるカーナビゲーションシステムがある。このカーナビゲーションシステムもまたGPSを用いて現在地を特定し、目的地を設定して目的地までのルートを探索、決定し、そのルートにしたがって画像と音声でドライバーをナビゲーションするものである。
【0006】
しかしながら、例えば、五差路等の変則形状の交差点に差し掛かり、音声が「右斜め方向です」とガイドした場合に、右側に2つの道があって即座にどちらの道が正しいかをドライバーが判断しかねる場合がある。また、細い道に入る場合にも、この道でいいのかどうかをドライバーが判断しかねる場合もある。
【特許文献1】特開2001−27543号公報(段落[0022]、[0025]等)
【特許文献2】特開2003−340764号公報(段落[0002]〜[0005]等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものあり、ロボットを用い、そのロボットの動きの変化を利用してユーザを所定の目的地へ案内するためのロボットナビゲーションシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点に係るロボットナビゲーションシステムは、目的地に所定の信号を発信する信号発信装置を設置し、この信号発信装置から発信される信号をユーザが携行するロボットに受信させて、そのロボットを携行したユーザを信号発信装置が設置されている目的地へそのロボットの動作により案内するものであり、このロボットは、本体部と、この本体部に可動に設けられた案内部と、前記信号発信装置から発信される信号を検知してその信号の発信元方向を検出するセンサ部と、このセンサ部が検出した信号の発信元方向を案内し、その際にこのセンサ部が検出した信号内容に応じて前記案内部の動作を変化させ、その信号内容が予め設定された閾値以下のときに前記案内部の動作を停止するように前記案内部の動作を制御する動作制御部を有していることを特徴としている。
【0009】
また本発明の第2の観点に係るロボットナビゲーションシステムは、ユーザが指定した目的地へロボットの動きを通じてユーザを案内するものであり、現在地を把握するための位置検出部と、所定の目的地を設定するための目的地設定部と、現在地から目的地への到達ルートを検索するためのルート探索部と、このルート探索部が検索した複数のルートから1つのルートを決定するルート決定部と、決定されたルートにしたがった進路方向を指し示すロボットから構成されており、このロボットは、本体部と、少なくとも1軸回りに回転自在に設けられた方向指示部と、目的地に到達するまで進路方向を方向指示部が指し示すように方向指示部の動作を制御する動作制御部とを有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ロボットが有する腕部等の案内部の動きによりそのロボットを携行したユーザを的確に目的地へと案内することができる。また、ナビゲーション中はロボットの動きに興味や親しみを持つことができるので、利用していて楽しいと感じることができ、従来のように経路途中に余計な注意を払う必要もなくなるというメリットがある。さらに、ロボットの構成が簡単なので安価に構成することができる利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1に第1の実施形態に係るロボットナビゲーションシステム(以下「システム」と略す)の構成を示す。このシステム100は、目的地Tに信号発信装置12を設置し、この信号発信装置12から発信される信号をユーザUが携行するロボット14に受信させて、そのロボット14の動作によりユーザUを目的地Tへ案内するものである。
【0012】
信号発信装置12が発信する信号としては、赤外線、超音波、電波(無線電波)等が挙げられる。ロボット14に、ロボット14の現在位置から信号発信装置12までの距離とその方向を同時に検出させるためには、信号発信装置12から発信させる信号として赤外線を用いることが好ましく、これに対応させてロボット14には赤外線受信センサを装備すればよい。
【0013】
図2にロボット14の構成をより詳細に示す。ロボット14は、胴体部21aおよび頭部21bからなる本体部21と、信号発信装置12から発信される信号を検知するセンサヘッド22aおよびセンサヘッド22aが検知した信号を解析するための信号解析部(ICチップ)22bとからなるセンサ部22と、胴体部21aに設けられた2本の案内部たる腕部23と、腕部23を動作させるための駆動機構23aと、駆動機構23aを制御する動作制御部(ICチップ)24を有している。
【0014】
頭部21bは、胴体部21aに対して固定されていてもよいし、胴体部21aに対して回転可能に構成されていてもよい。図1および図2では、センサヘッド22aを頭部21bに設置した構造を示しているが、センサヘッド22aは、ユーザUがロボット14を手にしたときに通常の持ち方であればその手によって隠れない部位に設置することができる。
【0015】
信号解析部22b、腕部23を動かすための駆動機構23aおよび電源(図示せず)、動作制御部24は、本体部21の内部に設けられている。本体部21を構成する材料には特に制限はないが、軽量で生産性に優れる樹脂(例えば、ABS系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリイミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂等)が好適に用いられる。
【0016】
センサ部22は、信号発信装置12が設置されている場所の方向(信号の発信元方向)と、信号発信装置12までの距離を同時に検出することができるものが好ましい。また、センサ部22としては、ユーザUによるロボット14の保持状態(例えば、ユーザUがロボット14を寝かして保持しているか、立てて保持しているか等)に依存することなく信号を受信することができる全方位センサが好適に用いられる。
【0017】
このような全方位センサについては、例えば特開2005−45340号公報に開示されているように、回転自在な遮光部材の内部に受光素子を配置し、かつ、この遮光性部材の側面に光透過性窓を設け、遮光部材の回転位相を検出するとともに、受光素子が得た光信号を増幅してその増幅信号から強度の大きな信号を識別して周期信号を検出し、回転位相と周期信号の差から得られる光線飛来方向を検出するものがある。
【0018】
腕部23は、例えば2軸駆動により、ロボット14の腹面側(図1の紙面上側)のどの方向をも指し示すことができるようになっている。すなわち、図2に示すように、ロボット14の腹面と平行な面をX−Y平面(紙面)、このX−Y平面に垂直な方向をZ方向とすると、腕部23を動かすための第1回転軸はZ軸と平行(紙面に垂直)になるように胴体部21aに埋設されており、第2回転軸はこの第1回転軸と直交するようにこの第1回転軸の先端に設けられている。第1回転軸をその軸芯回りに回転させることで、腕部23はX−Y平面内の任意の方向を指し示すことができ、第2回転軸をその軸心回りに回転させることで、腕部23をX−Y平面に垂直な一面内で半円を描くように回動させることができる。これら2軸の回転を制御することにより、腕部23はロボット14の腹面側の任意の方向を指し示すことができる。
【0019】
なお、ロボット14では、腕部23はロボット14の背面側を直接的に指し示すことはできない構成となっているが、これは、ユーザUのロボット14の持ち方に自由度があること、また、ロボット14が反応しない場合にはユーザUはロボット14の向きを変えたりすることが容易にできること、さらにユーザUがロボット14を手にしてロボット14が指し示す方向へ歩いていく場合にはユーザUの視覚認識による判断が働くこと等から、腕部23はある程度の範囲を指し示すことができれば、十分にユーザUを目的地に向けてナビゲーションすることができることを考慮したものである。
【0020】
これに対して、腕部23がロボット14の腹面側を指していることを明らかにしたい場合には、例えば、腕部23または頭部21b等にLED等を埋設しておいて、腹面側を指しているときにはそのLEDを無灯火とし、背面側を指しているときにはそのLEDを点灯させる構成としたり、ロボット14の頭部21bを首回り(頭部21bと胴体部21aとを連結する枢軸部材を指す)に回転自在とし、腕部23が背面側を指す場合には頭部21bが背中側を向くように頭部21bを180度回転させるような構成とする等、すればよい。また、腕部23を関節数が3〜5の多関節構造として、最先端の腕部の長さ方向が指示方向になるという構成にすることもできる。
【0021】
さらに、腕部23を胴体部21aの側面に設けて、腕部23がY−Z面内で回転自在であり、かつ、X−Y平面内で半円を描くように回動させるように配置することによっても、ロボット14の背面側を指し示すことができる。但し、この場合にはY−Z面内の方向を除き、片腕のみの指示となる。これは、X−Y面内の動きでは、必ず一方の腕は本体部21を指すような動きを強いられるが、そのような動きはできないからである。しかしながら、腕部を多関節構造とすることで容易に両腕での指示を行うことができる構成とすることができる。
【0022】
動作制御部24は、センサ部22が検出した信号内容に応じて腕部23の動作を変化させ、その信号内容が予め設定された閾値以下のときに腕部23の動作を停止させる。ここでは、この「信号内容」はロボット14から信号発信装置12までの距離を表す受信信号強度であるとし、「閾値」はロボット14から信号発信装置12まで距離が予め設定された距離となったときの受信信号の強度し、これらの信号内容は信号解析部22bにより「ロボット14から信号発信装置12まで距離」へと変換される。
【0023】
したがって、動作制御部24は、センサヘッド22aが検出して信号解析部22bが解析した信号の発信元方向を腕部23が指し示すように、かつ、信号発信装置12までの距離に応じて腕部23の動作が変化していくように、腕部23の動作を制御する。
【0024】
その具体的な腕部23の動作例を図3に示す。センサ部22が信号発信装置12からの信号を受信していないときには、ロボット14は何ら反応を示さない(図3の信号未検知状態)。センサ部22が信号発信装置12からの信号を受信しているが、ロボット14から信号発信装置12までの距離が長いと判断しているとき(例えば、7m以上離れていると判断しているとき)には、腕部23は大まかな信号発信元方向を指し示し、ユーザUの移動に合わせてリアルタイムに、腕部23は指し示す方向を変化させる(図3の信号検知状態:弱)。
【0025】
さらにユーザUが移動することによって、ロボット14から信号発信装置12までの距離が近くなってくると(例えば、4m以内の距離に入った場合)、腕部23は信号の発信元方向を中心として一定角度(例えば、20°)の範囲内を往復運動(腕振り運動)し、信号発信装置12に近づいていることをユーザUに知らせる(図3の信号検知状態:強)。このとき、ロボット14から信号発信装置12までの距離が短くなるにつれて、腕部23の腕振り速度を速めるようにすることで、ユーザUは目的地に近いことを認識しやすくなる。
【0026】
さらにロボット14が信号発信装置12に近づいて、ロボット14と信号発信装置12との距離が予め設定された距離以下(例えば、50cm以下)となったときには、2本の腕部23の指す方向がクロスして静止した状態となり、目的地に到達していることをユーザUに知らせる(図3の目的地到着状態)。腕部23が静止する前に指し示した方向の50cm先が目的地であるので、ユーザUはその場所に信号発信装置12を認識することができる。
【0027】
腕部23の動作は、このような動作の逆でもよい。すなわち、目的地から離れているときには、腕部23を一定角度範囲内でゆっくり往復運動させ、ユーザUはその角度範囲の方向に移動する。そうすると、徐々に腕部23の腕振り角度の範囲が狭くなり、かつ、腕振り速度が速くなることで、ユーザUに進むべき方向をより明確に指示するとともに、目的地が近付いていることを示す。そして、目的地にかなり近付いたら、一点を指すような動作をさせる。さらに目的地から予め設定された距離の範囲内に到達したら、腕部23の動作が停止するようにしてもよい。
【0028】
上述したロボット14の変形例としては、センサ部22として、全方位センサに代えて、例えば円錐状に広がる一定の範囲から信号が飛来する場合にその信号を受信することができるものを用いたものを挙げることができる。この場合には、ユーザUがそのセンサヘッドをいろいろな方向に向けるようにロボット14の保持状態を変化させることが必要になる。検出する信号の強度変化をロボット14の腕部23の動きで示すように、動作制御部24は腕部23の動作を制御する。
【0029】
上述した、1台の信号発信装置12と1台のロボット14からなるシステム100は、例えば、宝探しゲームのような用途に用いることができるが、このシステム100を、複数台の信号発信装置を配置し、ロボットが各信号発信装置からの信号を区別して検出することができるシステムに発展させることで、その用途を拡げることができる。そこで次にシステム100をベースにした応用システムについて説明する。
【0030】
図4に本発明の第2の実施形態に係るシステム100Aの概略構成を示す。このシステム100Aでは、信号発信装置は複数の目的地にそれぞれ1個ずつ配置されている。図4に示されるように、ここでは4個の信号発信装置12a〜12dがそれぞれ目的地T〜Tに配置されているとする。但し、設定可能な目的地の数はこれに制限されるものではなく、2カ所以上で任意である。
【0031】
信号発信装置12a〜12dは個々に異なるID情報を有する赤外線信号(図4に信号1〜信号4で示す)を発信する。例えば、テレビリモコンで放送局を選択する場合と同様にして、各赤外線信号は異なるパターンコードをID情報として含んでいる。
【0032】
システム100Aでは、ロボットが複数の信号発信装置12a〜12dを識別することができるように、ロボットのセンサ部に信号コードの識別機能を付与する必要がある。図5にシステム100Aで用いるロボット14Aの構成を示す。ロボット14Aが先に示したロボット14と異なる点は、ロボット14Aは、複数の目的地T〜Tのうちの1つの目的地を設定するための目的地設定部26と、設定された目的地を解除するための目的地消去部27と、目的地の選択を制限する設定制限部28とを有している点である。
【0033】
例えば、ロボット14Aの腹部等に開閉パネルを設けて、その中に目的地T〜Tの選択ボタンを設ける。例えば、ユーザUがTのボタンを押下すると、そのボタンが点灯し、これによりユーザUは目的地Tに目的地が設定されたことを確認することができる。その他、液晶パネルを備え、目的地が選択されていない場合には「未設定」と表示され、所定の目的地ボタンを押下するとその目的地がその液晶パネルに表示されるようにしてもよい。
【0034】
システム100Aでは、ユーザUがロボット14Aに目的地T〜Tのうちの1カ所を目的地に設定すると、その後は、先に説明したシステム100の場合と同様に、腕部23による動作でユーザUを設定された目的地に案内する。システム100Aでは、設定されていた目的地にユーザUが到達してロボット14Aの動きが停止すると同時に、設定されていた目的地が目的地消去部27によって消去される。これにより新たな目的地を入力することができるようになる。
【0035】
設定制限部28は、目的地T〜Tの全てに到達するまでは既に到達した目的地を再設定することができないように、目的地設定部26の設定機能を制限することができる。そして設定制限部28は、目的地T〜Tの全てに到達した際にこの再設定制限を解除し、その後は目的地T〜Tのうちの1つの目的地の再設定を可能とする。このような構成とすることで、ユーザUは、目的地T〜Tの全てを所望の順番で回ることができ、一巡した後には、ロボット14Aを他のユーザの使用に供する等することができるようになる。
【0036】
システム100Aの構成は、例えば、システム100Aを住宅展示場やショールーム、イベント会場、テーマパーク等の来訪者を対象としたスタンプラリー等に用いる場合に好適である。例えば、システム100Aの適用場所が住宅展示場である場合、目的地T〜Tは、住宅展示場に設置された1展示家屋内の異なる部屋としたり、複数の家屋のそれぞれのリビングとすることができる。
【0037】
このシステム100Aの変形例としては、目的地設定部26が、ロボット14Aを携行したユーザUが目的地T〜Tを所定の順番で巡るために、その順番を自動設定する構成のものが挙げられる。この場合には、目的地設定のためのボタン等は特に必要ではない。
【0038】
このような変形システムは、例えば、イベント会場等でのルート案内に好適である。また、イベント会場において、来訪者がロボットの案内にしたがってチェックポイント(信号発信装置12a〜12dがそれぞれ設置された目的地T〜Tに同じ)を巡るというスタンプラリーにも好適である。
【0039】
次に本発明の第3の実施形態に係るシステムについて説明する。図6にそのシステム100Bの概略構成を示す。このシステム100Bでは、信号発信装置12が設けられた目的地Tへ到達するための経路に中継点t〜tが設けられており、これらの中継点t〜tにそれぞれ中継信号発信装置12a〜12cが配置されている。
【0040】
なお、中継点の数には制限はなく、1カ所以上であれば、何カ所でもよい。中継信号発信装置12a〜12cの機能は信号発信装置12と同じである。中継点の設置は、例えば、中継点tから目的地TへユーザUが直線的には移動することができないような障害物があるような場合に、その障害物を迂回することができるルートに中継点tを設ける。同様に、中継点tから直線的には目的地Tへ到達することもできない場合に中継点tが設けられる。この例では、中継点t3と目的地Tとの間には障害物はない。
【0041】
信号発信装置12と中継信号発信装置12a〜12cはそれぞれ異なるID情報(コード)を含ませた赤外線信号を発信し、かつ、これらのID情報に目的地Tからの距離に応じた序列情報を含ませる。
【0042】
図7にこのシステム100Bで用いるロボット14Bのブロック構成図を示す。このロボット14Bがロボット14と異なる点は、信号発信装置12および中継信号発信装置12a〜12cからの赤外線信号を受信したときに、その序列情報を解析し、最も目的地Tに近い序列情報を有する赤外線信号を特定して、逐次、目的地Tに近い序列情報を有する赤外線信号が受信されるように、腕部23の動作によるナビゲーションを動作制御部24との間での制御信号の送受信により実現させる序列解析部29を備えている点である。
【0043】
例えば、ユーザUが図6のP点にいる場合には、ロボット14Bのセンサ部22が仮に目的地Tおよび中継点t〜tからの全ての信号を受信したとしても、序列解析部29はもっとも距離的に近い地点を最初の到達目標として設定するので、中継点tがユーザUに最も近い中継点として認識される。この場合、序列解析部29はさらにユーザUが中継点t1,t2,t3の順番で経路案内されて目的地Tに到達できるように、受信可能な信号を逐次切り替える。この間のロボット14Bの腕部23の動きは、ロボット14と同じである。
【0044】
これに対して、ユーザUが図6のP点にいる場合、例えば、ロボット14Bの電源を誤って切ってしまい、再び電源投入を行った場合には、ロボット14Bは中継点tを最もユーザUに近い中継点として認識し、ユーザUは中継点tを経由して目的地Tに到達することができる。
【0045】
なお、システム100Bでは、目的地Tに設置された信号発信装置12からの信号発信は中継点t方向に指向性を持たせて行う構成とすることもできる。同様に、中継点tからは中継点t方向へ、中継点tからは中継点t方向へ、中継点tからは例えば、ユーザUがロボットを受け取る場所へそれぞれ指向性を持たせることができる。このようなシステムは、スーパーマーケットや商業施設における売り場案内、官公庁における訪問先案内、病院における診察室案内等に適用することができる。
【0046】
また、このシステム100Bでは目的地を1カ所のみ設定しているが、複数の目的地を設定し、各目的地への経路に必要な中継点を設け、これらの目的地を適宜ユーザUが選択してロボット14Bに案内させる構成とすることができる。この場合にさらに、ロボット14Bには予め目的地を巡るルートが設定されており、その設定にしたがってユーザUが目的地を回る構成とすることもできる。すなわち、システム100Bをシステム100Aの態様に変形することができる。
【0047】
次に本発明の第4の実施形態に係るシステムについて説明する。図8にそのシステム200の概略構成を示すブロック図を示す。このシステム200は、GPSを利用したカーナビゲーションシステムにロボットによる動作案内を付加したものである。
【0048】
システム200は、カーナビゲーションシステム30とロボット40から構成されており、カーナビゲーションシステム30は、広く知られているように、ユーザUの現在地を把握するための位置検出部31と、目的地を設定するための目的地設定部32と、現在地から目的地への到達ルートを検索するためのルート探索部33と、ルート探索部33が検索した複数のルートから1つのルートを決定するルート決定部34と、目的地を設定したり、地図情報等を表示したりするためのディスプレイ35等を備えている。
【0049】
ロボット40は、例えば、運転席前のダッシュボード上に配置される。ロボット40の大きさと配置位置は、運転の支障にならず、かつ、運転者がロボット40の動きを認識しやすい条件に設定される。ロボット40は車両の進行方向を指し示すことができればよいので、ここでは、ロボット40は、胴体部41と、頭部42と、頭部42に設けられた指針43から構成され、頭部42が胴体部41に対して首(図示せず)回りに回転自在となっている。
【0050】
ロボット40の動作を制御する動作制御部44は、カーナビゲーションシステム30に連動して、目的地に到達するまで決定されたルートにしたがった進路方向を指針43が指し示すように、頭部42の回転動作を制御する。
【0051】
システム200では、ユーザがカーナビゲーションシステム30を利用して目的地を設定し、その後にユーザが運転を開始すると、GPS機能により車両の現在地や進行方向等がディスプレイ35に表示されると同時に、ディスプレイ35に表示される方位情報がロボット40に送られて、ロボット40の指針43が進行方向を指し示すように、頭部42がリアルタイムに回動する。このロボット40の動作によってユーザは変則交差点や細い路地に入るとき等に進行方向をより容易に把握することができるようになる。
【0052】
このようなロボットによる方向指示機能は、カーナビゲーションシステムと同様にGPSを利用した携帯電話のウォークナビゲーション機能や、PHS中継局を利用したウォークナビゲーション機能と組み合わせることができる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。例えば、ロボット14,14A,14Bは動作のみでユーザUに方向指示を行ったが、これに加えて、目的地までの距離および方向を音声によりガイドすることができる構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1の実施形態に係るロボットナビゲーションシステムの構成を示す図。
【図2】図1のシステムで用いるロボットの構成を示す図。
【図3】図2のロボットの具体的な腕部の動作例を示す図。
【図4】第2の実施形態に係るロボットナビゲーションシステムの構成を示す図。
【図5】図4のシステムで用いるロボットの構成を示す図。
【図6】第3の実施形態に係るロボットナビゲーションシステムの構成を示す図。
【図7】図6のシステムで用いるロボットの構成を示す図。
【図8】第4の実施形態に係るロボットナビゲーションシステムの構成を示す図。
【符号の説明】
【0055】
12・12a〜12d…信号発信装置、14・14A・14B…ロボット、21…本体部、21a…胴体部、21b…頭部、22…センサ部、22a…センサヘッド、22b…信号解析部、23…腕部、23a…駆動機構、24…動作制御部、26…目的地設定部、27…目的地消去部、28…設定制限部、29…序列解析部、30…カーナビゲーションシステム、31…位置検出部、32…目的地設定部、33…ルート探索部、34…ルート決定部、35…ディスプレイ、40…ロボット、41…胴体部、42…頭部、43…指針、44…動作制御部、100・100A・100B・200…ロボットナビゲーションシステム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットを携行したユーザをそのロボットの動作によって所定の目的地へと案内するロボットナビゲーションシステムであって、
所定の目的地に設置され、所定の信号を発信する信号発信装置と、
本体部と、前記本体部に可動に設けられた案内部と、前記信号発信装置から発信される信号を検知してその信号の発信元方向を検出するセンサ部と、このセンサ部が検出した信号の発信元方向を案内し、その際に前記センサ部が検出した信号内容に応じて前記案内部の動作を変化させ、その信号内容が予め設定された閾値以下のときに前記案内部の動作を停止するように前記案内部の動作を制御する動作制御部とを有するロボットと、
を具備することを特徴とするロボットナビゲーションシステム。
【請求項2】
前記センサ部は前記信号発信装置までの距離をさらに検出し、
前記案内部は少なくとも2軸回りに回転自在に前記本体部に取り付けられ、
前記動作制御部は、前記センサ部が検出した前記信号発信装置までの距離を前記信号内容として用い、前記案内部に前記信号の発信元方向を指し示させることを特徴とする請求項1に記載のロボットナビゲーションシステム。
【請求項3】
前記信号発信装置は赤外線信号を発信し、前記センサ部は全方向から赤外線信号を受信することができる全方位センサであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロボットナビゲーションシステム。
【請求項4】
前記信号発信装置が複数の目的地にそれぞれ1個ずつ配置され、かつ、これらの信号発信装置は個々に異なるID情報を含む赤外線信号を発信するものであり、
前記ロボットは、前記複数の目的地のうちの1つの目的地を特定するためにその1つの目的地を設定する目的地設定部と、この目的地設定部で設定された目的地に到達した際にその目的地の設定条件を消去する目的地消去部とをさらに有することを特徴とする請求項3に記載のロボットナビゲーションシステム。
【請求項5】
前記ロボットは、前記複数の目的地の全てに到達するまでは既に到達した目的地を再設定することができず、前記複数の目的地の全てに到達した際にこの再設定制限を解除し、その後は前記複数の目的地のうちの1つの目的地を前記目的地設定部で設定可能にする設定制限部をさらに有することを特徴とする請求項4に記載のロボットナビゲーションシステム。
【請求項6】
前記信号発信装置が複数の目的地にそれぞれ1個ずつ配置され、かつ、これらの信号発信装置は個々に異なるID情報を含む赤外線信号を発信するものであり、
前記ロボットを携行したユーザが前記複数の目的地を所定の順番で巡るためにその順番を自動設定する目的地設定部をさらに有することを特徴とする請求項3に記載のロボットナビゲーションシステム。
【請求項7】
前記目的地へ到達するための中間経路に設けられた1または複数の中継点にそれぞれ1個ずつ配置された中継信号発信装置をさらに具備し、
前記信号発信装置と前記中継信号発信装置は個々に異なるID情報を含む赤外線信号を発信し、かつ、前記ID情報は目的地からの距離に応じた序列情報を有しており、
前記ロボットは、前記信号発信装置および中継信号発信装置からの赤外線信号を受信したときにその序列情報を解析し、最も目的地に近い序列情報を有する赤外線信号を特定して、逐次、目的地に近い序列情報を有する赤外線信号が受信されるように前記案内部の動作によるナビゲーションを実行させるために前記動作制御部との間で制御信号を授受する序列解析部をさらに有することを特徴とする請求項3に記載のロボットナビゲーションシステム。
【請求項8】
前記ロボットは、前記センサ部が検出した前記目的地までの距離および方向を音声によりガイドする音声ガイダンス部をさらに有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のロボットナビゲーションシステム。
【請求項9】
ロボットを携行したユーザをそのロボットの動作によって所定の目的地へと案内するロボットナビゲーションシステムであって、
現在地を把握するための位置検出部と、
所定の目的地を設定するための目的地設定部と、
現在地から目的地への到達ルートを検索するためのルート探索部と、
前記ルート探索部が検索した複数のルートから1つのルートを決定するルート決定部と、
本体部と、少なくとも1本の軸回りに回転自在に設けられた方向指示部と、前記目的地に到達するまで決定されたルートにしたがった進路方向を前記方向指示部が指し示すように前記方向指示部の動作を制御する動作制御部とを有するロボットと、
を具備することを特徴とするロボットナビゲーションシステム。
【請求項10】
前記ロボットの案内部が指し示す方向を音声でガイドする音声ガイダンス部をさらに具備することを特徴とする請求項9に記載のロボットナビゲーションシステム。

【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−58283(P2008−58283A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239087(P2006−239087)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(505466295)株式会社イクシスリサーチ (5)
【Fターム(参考)】