説明

ロボットハンド

【課題】簡単な構成でありながら物体の硬さを検知することができる小型のロボットハンドを提供する。
【解決手段】第1の指部F1と第2の指部F2で物体Sを挟んだ状態で、第1の超音波アクチュエータU1の振動体3により超音波を発生し、第1の超音波アクチュエータU1の振動体3から固定子5及び回転子6、第1の指部F1、物体S、第2の指部F2、第2の超音波アクチュエータU2の回転子6及び固定子5を介して振動体3へと超音波が至る所要時間を計測する。指部F1及びF2の位置から物体Sの厚さDを算出して超音波の伝搬経路の長さを算出し、計測された所要時間と算出された超音波の伝搬経路の長さとに基づいて物体S中の超音波の伝搬速度を算出し、この伝搬速度V1に基づいて物体Sの硬さを検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロボットハンドに係り、特に物体の硬さを検知する多指ハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットハンドにより物体を把持して持ち上げるためには、把持力が必要となるが、把持しようとする物体の硬さに対応した把持力が要求される。例えば、軟らかい物体を大きな把持力で把持した場合には、その物体を破壊したり変形するおそれを生じることとなる。そこで、物体を把持する前に、その物体に適した把持力を決定することが望まれる。
特許文献1には、物体を把持する一対の指のうち一方の指から超音波を発したときの反射超音波と透過超音波をそれぞれの指で受信することにより、物体の硬さや状態を検知して適正な把持力を決定するロボットが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平1−205993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のロボットでは、指を動かすための駆動手段とは別に、超音波送信器や超音波受信器を指に設置しなければならず、これら超音波送信器及び超音波受信器の設置スペースが必要になるために指が大型化するおそれがあると共に構成が複雑になるという問題がある。
この発明はこのような問題点を解消するためになされたもので、簡単な構成でありながら物体の硬さを検知することができる小型のロボットハンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係るロボットハンドは、少なくとも2つの指部と、各指部に対応して配置され且つそれぞれ圧電素子を振動体として用いて対応する指部を移動させる少なくとも2つの超音波アクチュエータと、各超音波アクチュエータを駆動させると共に、少なくとも2つの指部で物体を挟んだ状態でこれらの指部のうち1つの指部の超音波アクチュエータを駆動させることにより物体に超音波を与え、物体を挟んでいる少なくとも2つの指部のうちいずれかの指部の超音波アクチュエータにより物体を透過した超音波を検知して物体の硬さを検知する制御部とを備えたものである。
【0006】
制御部は、各指部の位置から物体を挟んでいる少なくとも2つの指部の間隔を算出することで超音波の伝搬経路の長さの算出が可能となる。また、制御部は、物体に超音波を与えてから物体を透過した超音波を検知するまでの所要時間に基づいて物体中の超音波の伝搬速度を算出し、算出された伝搬速度に基づいて物体の硬さを検知することができる。
なお、物体に超音波を与えるための指部とは異なる指部によって、物体を透過した超音波を検知することができる。
あるいは、物体に超音波を与えるための指部と同一の指部によって、物体を透過した超音波を検知してもよい。この場合、物体を透過して指部と物体との接触面に対向する面で反射した後、再び物体を透過して戻ってきた超音波が検知される。
また、各指部と前記物体との接触位置を検出するセンサを備えてもよい。
好ましくは、制御部が、少なくとも2つの指部の指先で物体を挟んだ状態で物体の硬さを検知する。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、指部を移動させる超音波アクチュエータを用いて、物体に超音波を与えると共に物体を透過した超音波を検知するので、簡単な構成で且つ小型のロボットハンドでありながら物体の硬さを検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係るロボットハンドを示す。共通の基部1に第1の超音波アクチュエータU1を介して第1の指部F1が連結されると共に第2の超音波アクチュエータU2を介して第2の指部F2が連結されている。第1の超音波アクチュエータU1は、基部1の上に配置された振動体3と、振動体3の上に配置され且つ振動体3に接する面とは反対側に凹部4が形成された固定子5と、固定子5の凹部4内にほぼ下半部が収容された略球体状の回転子6とを有している。そして、回転子6に、指部F1が固定されており、指部F1と固定子5とが可撓性の保持部材7で互いに移動自在に連結されている。第2の超音波アクチュエータU2は、第1の超音波アクチュエータU1と同一の構成を有している。なお、双方の超音波アクチュエータU1及びU2の振動体3がそれぞれ制御部8に電気的に接続されている。
【0009】
図2に超音波アクチュエータU1及びU2の構造を示す。ここで、説明の便宜上、基部1から回転子6に向かってZ軸が延び、Z軸に対して垂直方向にX軸が、Z軸及びX軸に対して垂直にY軸がそれぞれ延びているものとする。
基部1と固定子5とが振動体3内に通された連結ボルト9を介して互いに連結されている。固定子5の凹部4は、回転子6の直径より小さな内径を有する小径部10と、回転子6の直径より大きな内径を有する大径部11とからなり、これら小径部10及び大径部11との境界部にXY平面上に位置する環状の段差12が形成されている。回転子6はこの凹部4内の段差12に当接した状態で回転可能に支持されている。また、指部F1及びF2と固定子5とを連結する保持部材7によって回転子6が固定子5の段差12に対して加圧接触されている。
【0010】
振動体3は、固定子5に超音波振動を発生させて回転子6をX、Y、Zの3軸の回りにそれぞれ回転させるためのものであり、それぞれXY平面上に位置し且つ互いに重ね合わされた平板状の第1〜第3の圧電素子部31〜33を有している。これら第1〜第3の圧電素子部31〜33がそれぞれ制御部8に電気的に接続されている。
【0011】
具体的には、図3に示されるように、第1の圧電素子部31は、それぞれ円板形状を有する電極板31a、圧電素子板31b、電極板31c、圧電素子板31d及び電極板31eが順次重ね合わされた構造を有している。同様に、第2の圧電素子部32は、それぞれ円板形状を有する電極板32a、圧電素子板32b、電極板32c、圧電素子板32d及び電極板32eが順次重ね合わされた構造を有し、第3の圧電素子部33は、それぞれ円板形状を有する電極板33a、圧電素子板33b、電極板33c、圧電素子板33d及び電極板33eが順次重ね合わされた構造を有している。これらの圧電素子部31〜33が絶縁シート34〜37を介して固定子5及び基部1から、また互いに絶縁された状態で配置されている。
【0012】
図4に示されるように、第1の圧電素子部31の一対の圧電素子板31b及び31dは、Y軸方向に2分割された部分が互いに逆極性を有してそれぞれZ軸方向(厚み方向)に膨張と収縮の反対の変形挙動を行うように分極されており、圧電素子板31bと圧電素子板31dは互いに裏返しに配置されている。
第2の圧電素子部32の一対の圧電素子板32b及び32dは、2分割されることなく全体がZ軸方向(厚み方向)に膨張あるいは収縮の変形挙動を行うように分極されており、圧電素子板32bと圧電素子板32dは互いに裏返しに配置されている。
第3の圧電素子部33の一対の圧電素子板33b及び33dは、X軸方向に2分割された部分が互いに逆極性を有してそれぞれZ軸方向(厚み方向)に膨張と収縮の反対の変形挙動を行うように分極されており、圧電素子板33bと圧電素子板33dは互いに裏返しに配置されている。
【0013】
第1の圧電素子部31の両面部分に配置されている電極板31a及び電極板31eと、第2の圧電素子部32の両面部分に配置されている電極板32a及び電極板32eと、第3の圧電素子部33の両面部分に配置されている電極板33a及び電極板33eがそれぞれ電気的に接地されている。また、第1の圧電素子部31の一対の圧電素子板31b及び31dの間に配置されている電極板31cと、第2の圧電素子部32の一対の圧電素子板32b及び32dの間に配置されている電極板32cと、第3の圧電素子部33の一対の圧電素子板33b及び33dの間に配置されている電極板33cがそれぞれ制御部8に電気的に接続されている。
【0014】
次に、この実施の形態1に係るロボットハンドの動作について説明する。
第1の超音波アクチュエータU1の振動体3に対して、第1の圧電素子部31の電極板31cに超音波アクチュエータU1の固有振動数に近い周波数の交流電圧を印加すると、第1の圧電素子部31の一対の圧電素子板31b及び31dの2分割された部分がZ軸方向に膨張と収縮を交互に繰り返し、固定子5にY軸方向のたわみ振動を発生する。同様に、第2の圧電素子部32の電極板32cに交流電圧を印加すると、第2の圧電素子部32の一対の圧電素子板32b及び32dがZ軸方向に膨張と収縮を繰り返し、固定子5にZ軸方向の縦振動を発生する。さらに、第3の圧電素子部33の電極板33cに交流電圧を印加すると、第3の圧電素子部33の一対の圧電素子板33b及び33dの2分割された部分がZ軸方向に膨張と収縮を交互に繰り返し、固定子5にX軸方向のたわみ振動を発生する。
【0015】
そこで、例えば、制御部8から第2の圧電素子部32の電極板32cと第3の圧電素子部33の電極板33cとの双方に位相を90度シフトさせた交流電圧をそれぞれ印加すると、X軸方向のたわみ振動とZ軸方向の縦振動とが組み合わされて回転子6と接触する固定子5の段差12にXZ面内の楕円振動が発生し、摩擦力を介して回転子6がY軸回りに回転する。
同様に、制御部8から第1の圧電素子部31の電極板31cと第2の圧電素子部32の電極板32cとの双方に位相を90度シフトさせた交流電圧をそれぞれ印加すると、Y軸方向のたわみ振動とZ軸方向の縦振動とが組み合わされて回転子6と接触する固定子5の段差12にYZ面内の楕円振動が発生し、摩擦力を介して回転子6がX軸回りに回転する。
さらに、制御部8から第1の圧電素子部31の電極板31cと第3の圧電素子部33の電極板33cとの双方に位相を90度シフトさせた交流電圧をそれぞれ印加すると、X軸方向のたわみ振動とY軸方向のたわみ振動とが組み合わされて回転子6と接触する固定子5の段差12にXY面内の楕円振動が発生し、摩擦力を介して回転子6がZ軸回りに回転する。
【0016】
このようにして第1の超音波アクチュエータU1の振動体3を駆動することにより、回転子6がX、Y、Zの3軸の回りにそれぞれ回転し、これに伴って第1の指部F1が移動する。
同様にして、第2の超音波アクチュエータU2の振動体3を駆動することにより、第2の指部F2の移動が行われる。
制御部8は、各超音波アクチュエータU1及びU2の振動体3に印加する駆動電圧に基づいて、各指部F1及びF2の位置をそれぞれ把握すると共に、各指部F1及びF2のサイズ並びに各超音波アクチュエータU1及びU2のサイズを予め記憶しているものとする。
【0017】
ここで、把持対象となる物体Sの硬さを検知する方法について説明する。図5に示されるように、制御部8は、第1の指部F1と第2の指部F2を移動させて物体Sを挟み、このときの指部F1及びF2の位置と予め記憶している指部F1及びF2のサイズとから双方の指部F1及びF2の間隔すなわち物体Sの厚さDを算出する。さらに、算出された物体Sの厚さD、指部F1及びF2のサイズ並びに各超音波アクチュエータU1及びU2のサイズに基づき、第1の超音波アクチュエータU1の振動体3から第1の指部F1、物体S及び第2の指部F2を経て第2の超音波アクチュエータU2の振動体3に至る超音波の伝搬経路の長さL1を算出する。
【0018】
次に、第1の指部F1と第2の指部F2で物体Sを挟んだままの状態で、制御部8は、第1の超音波アクチュエータU1の振動体3に電圧を印加することにより、回転子6を回転させることなく超音波振動を発生させる。例えば、第1〜第3の圧電素子部31〜33のうちいずれか1つの圧電素子部にのみ交流電圧を印加する、あるいは、2つ以上の圧電素子部に同位相の交流電圧をそれぞれ印加する等により、回転子6を回転させずに超音波振動を発生させることができる。
第1の超音波アクチュエータU1の振動体3により発生した超音波は、図5に矢印で示すように、第1の超音波アクチュエータU1の振動体3から固定子5及び回転子6を介して第1の指部F1に伝わり、第1の指部F1から物体Sに入り込み、物体Sを透過した後、第2の指部F2へと伝わり、さらに第2の指部F2から第2の超音波アクチュエータU2の回転子6及び固定子5を介して振動体3へ伝搬される。
【0019】
このようにして超音波が第2の超音波アクチュエータU2の振動体3に到達すると、その超音波の振動モードに応じて、振動体3を構成する第1〜第3の圧電素子部31〜33のうち少なくとも1つの圧電素子部に電圧が発生する。そこで、制御部8は、第1の超音波アクチュエータU1の振動体3に電圧を印加して超音波振動を発生させた時点から第2の超音波アクチュエータU2の振動体3に超音波が到達して電圧が発生するまでの所要時間T1を計測する。
さらに、制御部8は、算出された超音波の伝搬経路の長さL1と計測された所要時間T1とに基づいて物体S中の超音波の伝搬速度V1を算出する。
一般に、物質の硬さが硬くなるほど超音波の伝搬速度は速くなることが知られている。このため、制御部8は、算出された伝搬速度V1に基づいて物体Sの硬さを検知することができる。
【0020】
このようにして物体Sの硬さを検知することにより、指部F1及びF2による把持力を物体Sの硬さに適した値に調整することができ、物体Sを破壊したり変形するおそれを生じることなく、確実に物体Sを把持することが可能となる。
指部F1及びF2を移動させる超音波アクチュエータU1及びU2を用いて、物体Sに超音波を与えると共に物体Sを透過した超音波を検知するので、専用のセンサを取り付けなくても物体Sの硬さを検知することができ、簡単な構成で且つ小型のロボットハンドが実現される。
【0021】
実施の形態2
図6に、この発明の実施の形態2に係るロボットハンドを示す。この実施の形態2は、図1に示した実施の形態1のロボットハンドと同じ構成を有しているが、物体Sに超音波振動を与えた指部で、物体Sを透過した超音波の検知をも行うようにしたものである。
実施の形態2における物体Sの硬さの検知方法について説明する。第1の指部F1と第2の指部F2で物体Sを挟んだままの状態で、制御部8は、第1の超音波アクチュエータU1の振動体3に電圧を印加することにより、回転子6を回転させることなく超音波振動を発生させる。超音波は、図6に実線矢印で示すように、第1の超音波アクチュエータU1の振動体3から固定子5及び回転子6を介して第1の指部F1に伝わり、第1の指部F1と物体Sとの接触面S1を通って物体Sに入り込み、物体Sを透過する。そして、接触面S1に対向する面すなわち第2の指部F2と物体Sとの接触面S2で反射した超音波が、図6に破線矢印で示すように、再び物体Sを透過して第1の指部F1へと伝わり、さらに第1の指部F1から第1の超音波アクチュエータU1の回転子6及び固定子5を介して振動体3へ伝搬される。
なお、物体Sが有する複数の面のうち、第1の指部F1に接触する接触面S1と第2の指部F2に接触する接触面S2は互いに平行である。
ただし、物体S中における超音波の伝搬経路の長さを把握することができれば、接触面S1と接触面S2は互いに平行でなくてもよい。
【0022】
このようにして戻ってきた超音波が第1の超音波アクチュエータU1の振動体3に到達すると、その超音波の振動モードに応じて、振動体3を構成する第1〜第3の圧電素子部31〜33のうち少なくとも1つの圧電素子部に電圧が発生する。そこで、制御部8は、第1の超音波アクチュエータU1の振動体3に電圧を印加して超音波振動を発生させた時点から、戻ってきた超音波がこの第1の超音波アクチュエータU1の振動体3に到達して電圧が発生するまでの所要時間T2を計測する。
【0023】
また、制御部8は、算出された物体Sの厚さD、第1の指部F1のサイズ並びに第1の超音波アクチュエータU1のサイズに基づき、第1の超音波アクチュエータU1の振動体3から第1の指部F1を経て物体Sを往復し、再び第1の指部F1を経て第1の超音波アクチュエータU1の振動体3に至る超音波の伝搬経路の長さL2を算出する。
制御部8は、算出された超音波の伝搬経路の長さL2と計測された所要時間T2とに基づいて物体S中の超音波の伝搬速度V2を算出し、さらに、算出された伝搬速度V2に基づいて物体Sの硬さを検知する。
【0024】
実施の形態3
図7に、この発明の実施の形態3に係るロボットハンドを示す。上記の実施の形態1及び2では、物体Sに対する指部F1及びF2の接触部の位置に応じて超音波の伝搬経路の長さL1及びL2が変化することとなる。そこで、この実施の形態3は、指先で物体Sに接触することにより、超音波の伝搬経路の長さを安定化しようとするものである。
【0025】
第1の超音波アクチュエータU1の回転子6に第1節F11を固定すると共に第1節F11の先端に第2節F12を連結し、これら第1節F11及び第2節F12により第1の指部F1を構成している。第1節F11と第2節F12は、図示しない連結機構を介して互いに連結され、回転子6の回転に応じてそれぞれ所定の動きをするように構成されている。同様に、第2の超音波アクチュエータU2の回転子6に第1節F21を固定すると共に第1節F21の先端に第2節F22を連結し、これら第1節F21及び第2節F22により第2の指部F2を構成している。第1節F21と第2節F22は、図示しない連結機構を介して互いに連結され、回転子6の回転に応じてそれぞれ所定の動きをするように構成されている。
【0026】
このように、各指部F1及びF2をそれぞれ第1節と第2節から形成したことにより、図7に示されるように、物体Sを双方の指部F1及びF2の第2節F12及びF22の指先で挟むことができる。このため、第1の超音波アクチュエータU1の振動体3から物体Sを介して第2の超音波アクチュエータU2の振動体3へと至る超音波の伝搬経路の長さ、あるいは、第1の超音波アクチュエータU1の振動体3から物体Sを往復して再び第1の超音波アクチュエータU1の振動体3へと戻る超音波の伝搬経路の長さが安定し、これにより、精度よく物体Sの硬さを検知することが可能となる。
【0027】
実施の形態4
図8に、この発明の実施の形態4に係るロボットハンドを示す。この実施の形態4は、図1に示した実施の形態1のロボットハンドにおいて、双方の指部F1及びF2の表面にそれぞれマトリクスセンサM1及びM2を配設し、物体Sに対する指部F1及びF2の接触部の位置を検知するように構成したものである。
【0028】
マトリクスセンサM1及びM2は、例えば、多数の微小圧電素子を配列したものから構成され、物体Sに接触した際に物体Sから受ける加圧力に起因して接触箇所の微小圧電素子から発生する電圧を検出することにより、物体Sに対する接触部の位置を検知することができる。あるいは、多数の微小光電センサを配列したマトリクスセンサを用いて、局部的な明るさの変化から接触部の位置を検知したり、多数の微小電極を配列したマトリクスセンサを用いて、局部的な静電容量の変化に基づいて接触部の位置を検知することもできる。
このようなマトリクスセンサM1及びM2により、物体Sに対する指部F1及びF2の接触部の位置を検知すれば、超音波の伝搬経路の長さを決定することができ、精度よく物体Sの硬さを検知することが可能となる。
【0029】
その他の実施の形態
上記の実施の形態1〜4では、超音波の伝搬速度に基づいて物体Sの硬さを検知したが、伝搬速度以外にも、物体を透過した超音波の振幅の減衰度、位相のズレ量等を検出して物体Sの硬さを検知することもできる。
厚さDが既知である物体Sに対しては、物体Sを挟んでいる指部の間隔の算出を省略してもよい。
物体Sを挟んでいる指部の間隔は、予め指部に取り付けられた距離センサによって検出することもできる。
上記の実施の形態1〜4では、2本の指部で物体Sを挟んだ状態で物体Sの硬さを検知したが、同様にして、3本以上の指部を有する多指ハンドを構成し、3本以上の指部を物体Sに接触させ、複数の異なる伝搬経路に基づいてそれぞれ物体Sの硬さを検知することもできる。このようにすれば、物体Sの内部が2種以上の異なる材質で構成されていること、物体Sの内部に内蔵物または中空部が存在すること等を検知することも可能となる。
上記の実施の形態1〜4では、制御部8が、各超音波アクチュエータU1及びU2の振動体3に印加する駆動電圧に基づいて、各指部F1及びF2の位置をそれぞれ把握したが、これに限るものではなく、専用の位置センサを用いて各指部F1及びF2の位置を検出することもできる。
上述した実施の形態1〜4のロボットハンドは、それぞれ自走式ロボットに搭載して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施の形態1に係るロボットハンドを示す斜視図である。
【図2】実施の形態1で用いられた超音波アクチュエータの構成を示す断面図である。
【図3】実施の形態1で用いられた振動体の構成を示す部分断面図である。
【図4】実施の形態1で用いられた振動体の3対の圧電素子板の分極方向を示す斜視図である。
【図5】実施の形態1のロボットハンドにより物体の硬さを検知する際の超音波の伝搬経路を示す正面図である。
【図6】実施の形態2に係るロボットハンドを示す正面図である。
【図7】実施の形態3に係るロボットハンドを示す斜視図である。
【図8】実施の形態4に係るロボットハンドを示す正面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 基部、3 振動体、4 凹部、5 固定子、6 回転子、7 保持部材、8 制御部、9 連結ボルト、10 小径部、11 大径部、12 段差、U1,U2 超音波アクチュエータ、S 物体、F1,F2 指部、F11,F21 第1節、F12,F22 第2節、M1,M2 マトリクスセンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの指部と、
各指部に対応して配置され且つそれぞれ圧電素子を振動体として用いて対応する指部を移動させる少なくとも2つの超音波アクチュエータと、
各超音波アクチュエータを駆動させると共に、少なくとも2つの指部で物体を挟んだ状態でこれらの指部のうち1つの指部の超音波アクチュエータを駆動させることにより前記物体に超音波を与え、前記物体を挟んでいる少なくとも2つの指部のうちいずれかの指部の超音波アクチュエータにより前記物体を透過した超音波を検知して前記物体の硬さを検知する制御部と
を備えたことを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
前記制御部は、各指部の位置から前記物体を挟んでいる少なくとも2つの指部の間隔を算出することで超音波の伝搬経路の長さを算出する請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記制御部は、前記物体に超音波を与えてから前記物体を透過した超音波を検知するまでの所要時間に基づいて前記物体中の超音波の伝搬速度を算出し、算出された伝搬速度に基づいて前記物体の硬さを検知する請求項1または2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記物体を透過した超音波を検知するための指部は、前記物体に超音波を与えるための指部とは異なるものである請求項1〜3のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項5】
前記物体を透過した超音波を検知するための指部は、前記物体に超音波を与えるための指部と同一のものであり、前記物体を透過して前記指部と前記物体との接触面に対向する面で反射した後、再び前記物体を透過して戻ってきた超音波を検知する請求項1〜3のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項6】
各指部と前記物体との接触位置を検出するセンサを備えた請求項1〜5のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項7】
前記制御部は、少なくとも2つの指部の指先で物体を挟んだ状態で前記物体の硬さを検知する請求項1〜6のいずれか一項に記載のロボットハンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−136939(P2009−136939A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313338(P2007−313338)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】