説明

ワークの搬送方法及びその搬送方法に用いられる搬送装置

【課題】 パレットに収容されたアウタパネルを取り出して治具まで搬送する際の時間を短縮してドアの生産効率を向上させる。
【解決手段】 2枚のアウタパネルを1組にしてパレットに収容しておく。搬送用ロボット5に装着した可動センサ45によりパレット内のアウタパネルの3次元位置を検出し、把持用マテハン25により2枚のアウタパネルをパレットから一度に取り出す。2枚のアウタパネルのうち、1枚のアウタパネルを仮保持装置6、7に仮保持させておき、他の1枚を治具Yまで搬送する。この搬送途中に、固定センサ63によりアウタパネルと把持用マテハン25との相対位置を検出する。この相対位置が正規の位置からずれている場合にはロボットアーム31の動きを補正してアウタパネルを治具Yの正確な位置に置くことができようにする。その後、仮保持装置6、7に保持されているアウタパネルを把持用マテハン25で把持し、同様に治具Yに置く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のワークの中から所定のワークを取り出して目標位置まで搬送するワークの搬送方法及びその搬送方法に用いられる搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば自動車に設けられるドアは、アウタパネルとインナパネルとを接合して構成されている。このような構造のドアを製造する場合には、まず、プレス加工装置によりワークとしてのアウタパネル及びインナパネルを成形した後、パレット等のワーク収容手段に一旦収容しておく。そして、このワーク収容手段をドアの組立装置がある場所まで運び、該ワーク収容手段に収容されている複数のワークの中から1つを取り出して組み立て用の治具まで搬送し、該治具に位置決めして保持させる。そして、治具に保持されたワークに対して後工程で各種組立加工等が行われる。
【特許文献1】特開平11−321735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1のようにワーク収容手段に収容されているワークを該ワーク収容手段から取り出して目標位置である治具まで搬送する場合には、作業者は、ワークを取り出す際や搬送する際に該ワークが他のワークやワーク収容手段、周辺の機器等に接触して変形しないように1つ1つ注意深く正確に搬送する必要がある。このため、ワークをワーク収容手段から目標位置まで搬送するのに要する時間を短縮するのには限界があり、生産効率を向上させるのが難しい。
【0004】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ワーク収容手段に収容されたワークを取り出して目標位置まで搬送する作業を自動化し、さらに、この自動化した場合のワークの搬送要領に工夫を凝らすことで、生産効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1の発明では、ワークの搬送方法の発明として、ワーク収容手段に収容された複数のワークの中から所定のワークを取り出して、該ワークを目標位置まで搬送するワークの搬送方法を対象とし、複数のワークで構成されたワークの組を上記ワーク収容手段に複数組収容する工程と、搬送用ロボットのロボットアーム先端に取り付けられたワーク把持手段により、上記ワーク収容手段に収容された所定の組のワークを把持して上記複数のワークを該ワーク収容手段から一度に取り出す工程と、所定の組の複数のワークのうち、1番目に目標位置まで搬送するワーク以外のワークをワーク仮保持手段に一時的に保持させる工程と、上記1番目に目標位置まで搬送するワークを上記搬送用ロボットにより目標位置まで搬送する工程と、上記1番目に搬送するワークを目標位置まで搬送した後に、上記ワーク仮保持手段に保持されているワークを上記ワーク把持手段により把持して目標位置まで搬送する工程とを備えている構成を採った。
【0006】
この構成によれば、搬送用ロボットのワーク把持手段により所定の組の複数のワークを把持してワーク収容手段から一度に取り出すことが可能になる。そして、この取り出した複数のワークのうち、1番目に目標位置まで搬送するワーク以外をワーク仮保持手段に一時的に保持しておき、その1番目に搬送するワークのみをワーク把持手段に把持したまま搬送用ロボットで目標位置まで搬送することが可能になる。その1番目のワークの搬送が終了した後に、搬送用ロボットは、ワーク把持手段をワーク収容手段まで移動させることなく、ワーク仮保持手段に保持されているワークを把持する位置まで移動させて該ワークを把持し、該ワークを目標位置まで搬送することが可能になる。
【0007】
つまり、本請求項1の発明では、ワーク収容手段に収容されたワークを作業者の手によらず搬送用ロボットにより目標位置まで搬送することが可能になる。その上、ワーク収容手段から複数のワークを一度に取り出すようにしたので、ワーク把持手段をワーク収容手段まで移動させてワークを取り出す工程を、1つのワークの搬送が終了する毎に行わなくもよくなり、全体としてワークの搬送時間が短縮される。
【0008】
また、ワーク収容手段には、複数のワークを1つの組にまとめて収容することが可能となるので、スペース効率が向上して1つのワーク収容手段に収容できるワークの数が増える。これにより、ワーク収容手段を搬入出する頻度を低くすることが可能になる。
【0009】
請求項2の発明では、ワークの搬送方法の発明として、ワーク収容手段に収容された複数のワークの中から所定のワークを取り出して、該ワークを目標位置まで搬送するワークの搬送方法を対象とし、対象物の3次元位置を検出可能に構成された可動センサがロボットアーム先端のワーク把持手段に装着された搬送用ロボットにより、該可動センサを移動させて上記ワーク収容手段に収容された所定のワークの3次元位置を検出する工程と、
上記可動センサで検出された所定のワークの3次元位置情報に基づいて、上記ワーク把持手段を上記搬送用ロボットにより所定のワークを把持する把持位置まで移動させ、該ワーク把持手段により所定のワークを把持する工程と、上記ワーク把持手段で把持したワークと該ワーク把持手段との相対位置を固定センサで検出し、その検出結果に基づいて上記ロボットアームの動きを補正し、ワークを目標位置まで搬送する工程とを備えている構成を採った。
【0010】
この構成によれば、可動センサでワークの3次元位置を検出してから該ワークをワーク把持手段により把持することが可能になるので、ワーク収容手段が置かれている位置や、ワークの収容位置が多少ずれていても、ワークをワーク把持手段で確実に把持することが可能になる。そして、上記可動センサのように動かない分、正確な検出が可能な固定センサにより、ワークとワーク把持手段との相対位置を検出するようにしたので、その相対位置が正規の位置からずれている場合にはロボットアームの動きを的確に補正してワークを搬送することが可能になる。
【0011】
つまり、本請求項2の発明では、ワーク把持手段で把持する前のワークの位置が所期の位置からずれていても、該ワークを作業者の手によらず搬送用ロボットにより目標位置まで正確に搬送することが可能になる。
【0012】
請求項3の発明では、ワークの搬送装置の発明として、ワーク収容手段に収容された複数のワークの中から所定のワークを取り出して、該ワークを目標位置まで搬送するワークの搬送装置を対象とし、複数のワークで構成されたワークの組が複数組収容されるワーク収容手段と、上記ワーク収容手段に収容された所定のワークの組を把持するワーク把持手段が取り付けられたロボットアームを有し、該ワーク把持手段が把持したワークを目標位置まで搬送するように構成された搬送用ロボットと、上記ワーク把持手段が把持した所定の組の複数のワークのうち、1番目に目標位置まで搬送するワーク以外のワークを一時的に保持するワーク仮保持手段とを備えている構成を採った。
【0013】
この構成によれば、ワーク収容手段に収容された所定の組の複数のワークをワーク把持手段で把持してワーク収容手段から一度に取り出すことが可能になる。そして、この取り出された複数のワークを搬送用ロボットで移動させて、1番目に目標位置まで搬送するワーク以外のワークをワーク仮保持手段に一時的に保持し、その1番目に搬送するワークのみをワーク把持手段に把持したまま目標位置まで搬送することが可能になる。この1番目のワークの搬送が終了した後に、搬送用ロボットは、ワーク把持手段をワーク収容手段まで移動させることなく、ワーク仮保持手段に保持されているワークを把持する位置まで移動させて該ワークを把持し、該ワークを目標位置まで搬送することが可能になる。
【0014】
つまり、本請求項3の発明では、請求項1の発明と同様に、ワークを搬送用ロボットにより目標位置まで搬送することが可能になり、その上、ワーク把持手段をワーク収容手段まで移動させてワークを取り出す工程を、1つのワークの搬送が終了する毎に行わなくもよくなり、全体としてワークの搬送時間が短縮される。また、ワーク収容手段には、複数のワークを1つの組にまとめて収容することが可能となるので、ワーク収容手段を搬入出する頻度を低くすることが可能になる。
【0015】
請求項4の発明では、ワークの搬送装置の発明として、ワーク収容手段に収容された複数のワークの中から所定のワークを取り出して、該ワークを目標位置まで搬送するワークの搬送装置を対象とし、ワーク把持手段が取り付けられたロボットアームを有する搬送用ロボットと、上記ワーク把持手段に装着され、上記ワーク収容手段に収容されている所定のワークの3次元位置を検出可能に構成された可動センサと、上記ワーク把持手段に把持したワークと該ワーク把持手段との相対位置を検出可能に構成された固定センサと、上記可動センサ及び固定センサが接続され、これら両センサの出力信号に基づいて上記搬送用ロボットを制御する制御装置とを備え、上記制御装置は、上記可動センサで検出された所定のワークの3次元位置情報に基づいて上記ワーク把持手段を所定のワークの把持位置まで移動させるとともに、上記固定センサで検出されたワークとワーク把持手段との相対位置情報に基づいてロボットアームの動きを補正してワークを目標位置まで搬送させるという構成を採った。
【0016】
この構成によれば、可動センサを搬送用ロボットにより移動させてワーク収容手段の所定のワークの位置を検出し、この検出結果に基づいてワーク把持手段でワークを把持することが可能になる。これにより、ワーク収容手段が置かれている位置や、ワークの収容位置が多少ずれていても、ワークをワーク把持手段で確実に把持することが可能になる。そして、上記可動センサのように動かない分、正確な検出が可能な固定センサにより、ワークとワーク把持手段との相対位置を検出するようにしたので、ロボットアームの動きを的確に補正してワークを搬送することが可能になる。
【0017】
つまり、本請求項4の発明では、請求項2の発明と同様に、ワーク収容手段に収容されたワークの位置が所期の位置からずれていても該ワークを搬送用ロボットにより目標位置まで正確に搬送することが可能になる。
【0018】
請求項5の発明では、請求項4の発明において、複数のワークで構成されたワークの組がワーク収容手段に複数組収容され、ワーク把持手段は、上記ワーク収容手段に収容された所定の組のワークを把持するように構成され、上記ワーク把持手段が把持した所定の組の複数のワークのうち、1番目に目標位置まで搬送するワーク以外のワークをワーク仮保持手段に一時的に保持するように構成されているものとする。
【0019】
この構成によれば、請求項3の発明と同様に、ワーク把持手段をワーク収容手段まで移動させてワークを取り出す工程を、1つのワークの搬送が終了する毎に行わなくもよくなり、全体としてワークの搬送時間が短縮される。さらに、ワーク収容手段には、複数のワークを1つの組にまとめて収容することが可能となるので、ワーク収容手段を搬入出する頻度を低くすることが可能になる。
【0020】
請求項6の発明では、請求項3または5の発明において、ワーク収容手段に収容されているワークの組は、パネル状の複数のワークを厚み方向に重ねて構成されており、ワーク把持手段は、所定の組の厚み方向一側に位置するワークを把持するように構成され、ワーク仮保持手段は、所定の組の厚み方向他側に位置するワークを把持するように構成されているものとした。
【0021】
この構成によれば、1組のワークのうち厚み方向一側に位置するワークをワーク把持手段で把持したまま、反対側に位置するワークをワーク仮保持手段に保持させることが可能になる。
【0022】
請求項7の発明では、請求項3から6のいずれか1つの発明において、ワーク把持手段には、作動流体の給排により伸縮動作するシリンダ装置と、該シリンダ装置のロッド先端に装着された吸盤とが設けられ、上記シリンダ装置は、作動流体の供給を停止した状態でロッドが外力により自由に伸縮するように構成されているものとした。
【0023】
この構成によれば、シリンダ装置に作動流体を供給していない状態で、ワーク収容手段のワークに吸盤を押し当てると、その押し当てたときの力を受けたロッドは容易に後退し、一方、ワークは吸盤に吸着されてワーク把持手段に把持される。これにより、ワークを吸盤に吸着させる際に吸盤がワークに強く接触するようになるのが回避される。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明によれば、複数のワークを1つの組にした状態でワーク収容手段に収容し、その後、搬送用ロボットにより所定の組の複数のワークをワーク収容手段から一度に取り出し、これら複数のワークを搬送用ロボットにより目標位置まで順次搬送するようにしたので、ワークの搬送を自動化でき、しかも、1つのワークの搬送が終了する毎にワークをワーク収容手段まで取り出しに行かなくてもよくなり、ワークの搬送時間を全体として短縮することができる。加えて、ワーク収容手段に複数のワークを1つの組にまとめて収容することが可能になって、1つのワーク収容手段に収容できるワークの数が増え、ワーク収容手段を搬入出する頻度を低くすることができる。これらのことにより、生産効率を向上させることができる。
【0025】
請求項2の発明によれば、ワーク収容手段に収容された所定のワークの3次元位置を検出してから該ワークをワーク把持手段により把持し、このワークを搬送する途中に、正確な位置検出が行える固定センサでワークとワーク把持手段との相対位置を検出してロボットアームの動きを的確に補正できるようにしたので、ワークの搬送を自動化してワークの搬送時間を短縮でき、この場合に、ワーク把持手段で把持する前のワークの位置が所期の位置からずれていても、ワークを目標位置に正確に搬送して搬送後のワークの位置修正を殆ど不要にでき、生産効率を向上させることができる。
【0026】
請求項3の発明によれば、請求項1の発明と同様に、ワークの搬送を自動化できるとともに、1つのワークの搬送が終了する毎にワークをワーク収容手段まで取り出しに行かなくてもよくなって、ワークの搬送時間を全体として短縮することができる。加えて、1つのワーク収容手段に収容できるワークの数を増やすことが可能になり、ワーク収容手段を搬入出する頻度を低くすることができる。これらのことにより、生産効率を向上させることができる。
【0027】
請求項4の発明によれば、請求項2の発明と同様に、ワークの搬送を自動化してワークの搬送時間を短縮することができ、この場合に、ワークの位置が所期の位置からずれていても、ワークを目標位置に正確に搬送して搬送後のワークの位置修正を不要にでき、生産効率を向上させることができる。
【0028】
請求項5の発明によれば、1つのワークの搬送が終了する毎にワークをワーク収容手段まで取り出しに行かなくてもよくなって、ワークの搬送時間を全体として短縮することができるとともに、ワーク収容手段に収容できるワークの数を増やすことができて、ワーク収容手段を搬入出する頻度を低くすることができる。これらのことにより、生産効率をより一層向上させることができる。
【0029】
請求項6の発明によれば、所定の組のワークのうち厚み方向一側に位置するワークをワーク把持手段で把持し、反対側に位置するワークをワーク仮保持手段で保持するようにしたので、1番目に目標位置まで搬送するワークをワーク把持手段から外すことなく他のワークをワーク仮保持手段に保持させることができて、ワークの搬送時間をより一層短縮することができる。
【0030】
請求項7の発明によれば、ワークを吸着する吸盤を、作動流体の供給を停止した状態でロッドが外力により自由に伸縮するシリンダ装置に装着したので、吸盤がワークに強く接触するようになるのを回避することができて、ワークの変形や傷つきを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0032】
図1は、本発明の実施形態に係るワークの搬送装置Aを示すものである。この搬送装置Aは、自動車用の側部に設けられるドア(図示せず)を組み立てる工場W内に設置されており、ドアのアウタパネルPをワークとしこのアウタパネルPを後工程用の治具Yの固定位置まで搬送するように構成されている。この実施形態の説明では、搬送装置Aの構造を説明する前に、上記アウタパネルPについて説明する。このアウタパネルPは、鋼板をプレス成形してなるものであり、図2及び図3に示すように、上下方向中間部が自動車への取付状態で車室外側へ大きく湾曲するように形成されている。アウタパネルPの上縁部及び下縁部は、該アウタパネルPの車室内側へ折り曲げられている。また、アウタパネルPの上部には、図4に示すように、車両後側に対応する位置に、アウターハンドル(図示せず)の取付部Tが設けられている。この取付部Tは、車室内側へ窪む凹部T1及び複数の開口部T2で構成されており、該開口部T2は車両前後方向に並んでいる。
【0033】
上記工場W内には、図1に示すように、右ドア用のアウタパネルPを収容する右ドア用パレット1が載置される右ドア用ラック2と、左ドア用のアウタパネルPを収容する左ドア用パレット(図示せず)が載置される左ドア用ラック4とが間隔をあけて設置されている。上記両ラック2、4と向かい合うように搬送用ロボット5が設置されるとともに、各ラック2、4から搬送用ロボット5側に離れた位置に右側仮保持装置6及び左側仮保持装置7がそれぞれ設置されている。搬送用ロボット5を挟んでラック2、4と反対側に上記治具Yが設置され、この治具Yと左側仮保持装置7との間にはアウタパネルPにシーリング剤(図示せず)を塗布するシーリング塗布用ロボット8が設置されている。治具Yの近傍には、該治具Yを跨ぐように形成された門型のセンサ支持台9が設置されている。また、各図における符号Fは、フェンスである。このフェンスFの外側に上記搬送用ロボット5の制御装置10が設置されている。
【0034】
上記右ドア用ラック2及び左ドア用ラック4はフェンスFの内側に配置されている。右ドア用パレット1及びラック2と、左ドア用パレット及びラック4とは同じ構造であるため、以下、右ドア用パレット1及びラック2についてのみ説明する。右ドア用パレット1は、図2及び図3に示すように、複数の棒材を直方体型の枠状に組み合わせてなるものである。右ドア用パレット1の内部には、図2に示すように、2枚のアウタパネルPが1組とされた状態で多数組がパレット1の幅方向に並ぶように収容されている。この収容された状態のアウタパネルPの向きは、該アウタパネルPの上側がパレット1の上側に位置し、かつ、アウタパネルPの車両後側がパレット1の搬送用ロボット5側に位置する向きとなっている。
【0035】
また、詳細は後述するが、1組のアウタパネルPは右ドア用パレット1から同時に取り出されて一方のアウタパネルP1(図2に示す)が先に治具Yまで搬送され、その後、他方のアウタパネルP2が治具Yまで搬送されるようになっている。一方のアウタパネルP1の車室外面が他方のアウタパネルP2の車室内面に重なっており、これら両パネルP1、P2は間の隙間は狭められている。このように、2枚のアウタパネルP1、P2を厚み方向に重ねかつ近接配置して1組にすることで、1つの右ドア用パレット1に収容可能なアウタパネルPの枚数を増やすことが可能になる。これにより、図示しないプレス装置がある場所と、上記搬送装置Aがある場所との間で上記ラック2、4を移動させる頻度を低くすることが可能になる。
【0036】
上記右ドア用パレット1の下部には、アウタパネルPの下縁部を下側から支持する下部サポート部材20がパレット1の幅方向に間隔をあけて設けられている。右ドア用パレット1の上部には、アウタパネルPの上縁部を該アウタパネルPの車室内外方向両側から支持する一対の上部サポート部材21が、上記下部サポート部材20と同様に設けられている。一対の上部サポート部材21の間には、上記1組のアウタパネルP1、P2が配置されるようになっている。2枚のアウタパネルP1、P2のうち、一方のアウタパネルP1の上縁部は他方のアウタパネルP2の上縁部の下側に当接して、これら上縁部同士が折り曲げ部分で係合している。
【0037】
上記1組のアウタパネルP1、P2の下縁部は共通の下部サポート部材20により支持されている。一方のアウタパネルP1の下縁部は他方のアウタパネルP2の下縁部の外側に位置していて、両アウタパネルPの下縁部が下部サポート部材20に接触した状態となっている。
【0038】
右ドア用パレット1内の幅方向一方には、上記搬送用ロボット5に取り付けられたアウタパネル把持用のマテリアルハンドリング、即ちワーク把持手段としての把持用マテハン25(詳細は後述する)が入り込むマテハン挿入用空間Rが形成されている。アウタパネルPの車室内側である凹面側は、上記マテハン挿入用空間Rに向いている。
【0039】
図3に示すように、上記右ドア用ラック2の上半部及び下半部には、それぞれ右ドア用パレット1を載置するための上側載置部26及び下側載置部27が設けられており、この右ドア用ラック2には右ドア用パレット1が上下2段に載置されるようになっている。上側載置部26に載置された右ドア用パレット1と、下側載置部27に載置された右ドア用パレット1とは、図示しないが、フォークリフト等を用いて別々に他の右ドア用パレットと交換することができるようになっている。つまり、上下一方の右ドア用パレット1内のアウタパネルPが無くなると、他方のパレット1からアウタパネルを取り出していき、その間に一方のパレット1をアウタパネルPが収容された別の右ドア用パレットと交換することが可能になり、パレット交換による時間のロスが抑制されるようになっている。尚、図1に示すように、右ドア用ラック2及び左ドア用ラック4の搬送用ロボット5と反対側には、光電管装置28が設置されている。この光電管装置28は、制御装置10に接続されており、パレット1の交換作業の際に、交換を行っている側のパレット1から搬送用ロボット5がアウタパネルPを取り出さないようにするためのものである。また、これら光電管装置28の間には扉29が設けられている。
【0040】
上記搬送用ロボット5は、一般に工場で用いられている多軸制御型のものであり、本体部30から延びるロボットアーム31を備えている。ロボットアーム31の先端部は、該ロボットアーム31のフレーム軸心周りに回転するように構成されている。上記把持用マテハン25は、図5に示すように、上記ロボットアーム31先端に取り付けられている。把持用マテハン25は、上記アウタパネルPを把持するように構成されており、ロボットアーム31のフレーム軸方向に延びるセンタ部材35と、該センタ部材35に略直交するように取り付けられた2本の支持棒材36と、該支持棒材36に支持された4つの把持部37とで構成されている。センタ部材35の長さは、図4に示すように、上記アウタパネルPの車両前後方向の長さと同じくらいに設定されている。また、支持棒材36は、センタ部材35に対しクランプ機構等の可動機構38を介して取り付けられている。この可動機構38によるセンタ部材35への固定状態を解除することで、各支持棒材36がセンタ部材35に対して長手方向に移動可能になるとともに、センタ部材35の周りを回動可能になる。この可動機構38により、支持棒材36をセンタ部材35に対し任意の位置で固定することができるようになっている。
【0041】
また、上記把持部37は、各支持棒材36の両端側にそれぞれ取り付けられている。これら把持部37は同じ構造である。各把持部37は、図6にも示すように、支持棒材36から延びるブラケット39と、該ブラケット39に取り付けられたシリンダ装置40と、該シリンダ装置40のロッド40a先端部に取り付けられたゴム製の吸盤41とを備えている。上記ブラケット39は、上記シリンダ装置40の支持棒材36に対する傾き角や位置を変更可能に構成された可動式のものである。上記シリンダ装置40は、例えば圧縮空気等の作動流体が外部から給排されることによりロッド40aを進退させるように構成された周知のものである。この実施形態のシリンダ装置40は、ロッド40aの摺動抵抗が極めて低い低摩擦タイプのものであり、作動流体が供給されていない状態ではロッド40aに軸方向の外力が作用した際に該ロッド40aが自由に進退するように構成されている。
【0042】
上記シリンダ装置40のロッド40aが後退した状態を図6に仮想線で示している。このシリンダ装置40のロッド40aのストロークは、例えば約30mmにしておく。シリンダ装置40は、図示しないシリンダ制御弁により制御されるようになっている。上記吸盤41は、従来よりパネル材を把持する際に用いられているものであり、その吸着面がロッド40aと反対側に向くように配置されている。吸盤41の吸着面には、図示しないが、負圧配管による負圧が作用するようになっている。尚、把持部37の吸盤41の代わりに、マグネットやクランプ等を用いてもよい。
【0043】
また、上記把持用マテハン25のロボットアーム31側の端部には、図5に示すように、可動センサ45がステー46を介して取り付けられている。この可動センサ45は、把持用マテハン25でパレット1内のアウタパネルPを把持する前に該アウタパネルPの3次元位置を検出するためのものである。この可動センサ45は、図示しないが、測距用の半導体レーザ光を照射する照射装置と、形状認識用のカメラとを備えた周知の立体センサであり、カメラで撮影した画像からアウタパネルPの開口部T1や凹部T2等の目印部を把握するとともに、このアウタパネルPと可動センサ45との距離を照射装置で3次元測定することにより、アウタパネルPの3次元位置を検出することができるようになっている。この可動センサ45により搬送用ロボット25には3次元視覚機能が備わることになる。上記可動センサ45は、図7に示すように、上記制御装置10に接続されている。
【0044】
上記右側仮保持装置6は、1組のアウタパネルP1、P2を右ドア用パレット1から取り出した後に、他方のアウタパネルP2を一時的に保持しておくためのものであり、本発明のワーク仮保持手段を構成している。この右側仮保持装置6は、図8及び図9に示すように、工場の地面に固定されるベース板47と、該ベース板47の中央部から上方へ延びる支柱48と、該支柱48の上側に取り付けられた横棒材49と、該横棒材49の両端側にそれぞれ取り付けられた2本の支持棒材50と、該各支持棒材50の両端側にそれぞれ支持された4つの保持部51とで構成されている。尚、符号52は、ベース板47の上面と支柱48の外面とを連結するように形成された補強板である。
【0045】
横棒材49は、支柱48に対しクランプ機構等の可動機構53を介して取り付けられている。この可動機構53による支柱48への固定状態を解除することで、横棒材49が上下方向に移動可能になるとともに、支柱48の周りを回動可能になる。この可動機構53により、横棒材49を支柱48に対し任意の位置で固定することができるようになっている。また、支持棒材50も、横棒材49に対し同様な可動機構53を介して取り付けられており、支持棒材50を横棒材49に対し任意の位置で固定することができるようになっている。保持部51には上記把持部37の吸盤41と同様な吸盤54が設けられており、該吸盤54は、上記把持用マテハン25の把持部37の吸盤41と向かい合わせたときに吸着面同士の少なくとも一部が重複するように配置されている。この保持部51の吸盤54の代わりに、マグネットやクランプ等を用いてもよい。尚、上記左側仮保持装置7は上記右側仮保持装置6と同様に構成されている。
【0046】
上記治具Yは、図1に示すように、略鉛直に延びる軸周りに回転する旋回台58の上面に固定されている。治具Yは、右ドア用のアウタパネルPが車室内面を上に向けた状態で固定される右ドア用固定部59と、左ドア用のアウタパネルPが車室内面を上に向けた状態で固定される左ドア用固定部60とで構成されている。
【0047】
上記シーリング塗布用ロボット8は、図示しない制御装置により制御されるようになっており、右ドア用及び左ドア用のアウタパネルPの周縁部にそれぞれシーリング剤の塗布を行うように構成されている。
【0048】
上記センサ支持台9は、治具Yの両側で上下方向に延び下端部が地面に固定された2本の側部構成部材61と、該側部構成部材61の上端部同士を連結するように延びる上部構成部材62とを備えている。上部構成部材62は、上記治具Yに固定された状態のアウタパネルPから上方に所定距離離れている。この上部構成部材62の長手方略中央部には、固定センサ63が取り付けられている。この固定センサ63は、下方に向いたカメラ(図示せず)を備えており、このカメラで撮影した画像からアウタパネルPの車両後縁部等の目印部と把持用マテハン25の任意の目印部とを認識し、アウタパネルPと把持用マテハン25との相対位置を検出するように構成されている。この固定センサ63は、図7に示すように、上記制御装置10に接続されている。
【0049】
上記制御装置10は、周知の演算装置や記憶装置、表示装置等を有しており、上記可動センサ45及び固定センサ63の出力信号に基づいてロボットアーム31とその周辺に配置されたツールやアウタパネルPとの位置関係を把握してロボットアーム31を制御するように構成されている。本発明の搬送装置Aは、上記ラック2、4、右側及び左側パレット1、搬送用ロボット5、可動センサ45、右側及び左側仮保持装置6、7、固定センサ63及び制御装置10で構成されている。
【0050】
次に、上記のように構成された搬送装置Aを用いて右ドア用のアウタパネルP及び左ドア用のアウタパネルPを右ドア用パレット1及び左ドア用パレットから取り出して治具Yまで搬送する場合について説明する。この実施形態では、まず、右ドア用のアウタパネルPを搬送する要領について説明する。この場合、上記治具Yの右ドア用固定部59を搬送用ロボット5側に向けておく。
【0051】
図2に示すように、右ドア用パレット1内にマテハン挿入用空間Rを残して収容部分全てにアウタパネルPが収容されている場合には、マテハン挿入用空間Rに臨んでいる1組のアウタパネルP1、P2を最初に取り出す。その後は、図2の右側へ向けて順にアウタパネルPを1組ずつ取り出していく。上記アウタパネルPを最初に取り出す際には、右ドア用パレット1やラック2が置かれている位置は大まかであるとともに、該パレット1内の下部サポート部材20及び上部サポート部材21の取付位置にも誤差が生じているものなので、取り出そうとするアウタパネルPが所定位置にあるとは限らない。そこで、右ドア用パレット1内のアウタパネルPを把持用マテハン25で把持する前に、該アウタパネルPの3次元位置を検出する。
【0052】
上記マテハン挿入用空間Rに臨んでいるアウタパネルPを取り出す場合には、図2(a)及び図10に示すように、搬送用ロボット5により把持用マテハン25を右ドア用パレット1の外方でかつ最初に取り出すアウタパネルPの車室内面と対向する位置まで移動させるとともに、ロボットアーム31の動きにより可動センサ45を回動させて該センサ45のレーザ照射方向、即ち検出方向がアウタパネルPに向くようにする。そして、可動センサ45をアウタパネルPの凹部T1及び開口部T2の真正面に位置付ける。このようにして配置した可動センサ45によりアウタパネルPの3次元位置を検出する。
【0053】
上記把持用マテハン25を右ドア用パレット1の外方に位置させるのは、可動センサ45の検出範囲Sが、該センサ45から所定距離離れた位置にあるためである。つまり、最初に取り出すアウタパネルPが可動センサ45の検出範囲Sに入るように可動センサ45を位置付けるようにしている。
【0054】
可動センサ45による検出後に、把持用マテハン25をロボットアーム31の動きにより約180゜回転させるとともに、シリンダ装置40のロッド40aを進出させた状態にしかつシリンダ装置40に圧縮空気を供給しないようにしてシリンダ装置40を大気開放状態にする。これにより、ロッド40aは後退する方向にフリーになり、ロッド40aを後退方向に僅かな力で押しただけで該ロッド40aが後退移動するようになる。
【0055】
そして、上記可動センサ45の検出結果に基づいて把持用マテハン25を移動させて、図11に示すように、アウタパネルPと接触しないように右ドア用パレット1のマテハン挿入用空間Rに挿入していく。マテハン挿入用空間Rに挿入した後、把持用マテハン25を一方のアウタパネルP1に近接させていき、吸盤41を一方のアウタパネルP1に接触させる。このとき、シリンダ装置40をフリーにしているので、吸盤41が一方のアウタパネルP1からの反力を受けて容易に後退して該アウタパネルP1に強く接触するのが回避されて、該アウタパネルP1の変形や傷つきが抑止される。このとき、アウタパネルP1が多少撓んで形状が所定形状から変化していても、4つのシリンダ装置40を設けていることにより、4つの吸盤41全てをアウタパネルP1に同じように接触させることが可能になる。上記一方のアウタパネルP1が吸盤41に吸着することにより把持用マテハン25に把持される。
【0056】
その後、把持用マテハン25を右ドア用パレット1のマテハン挿入用空間Rから引き出す。このとき、吸盤41に吸着した一方のアウタパネルP1に他方のアウタパネルP2が係合しているので、2枚のアウタパネルP1、P2を右ドア用パレット1から一度に取り出すことが可能である。また、把持用マテハン25を右ドア用パレット1のマテハン挿入用空間Rから引き出すときにもシリンダ装置40はフリーになっており、把持用マテハン25に対してアウタパネルPがロッド40aの進退方向に変位可能となっている。
【0057】
上記1組のアウタパネルP1、P2を右ドア用パレット1から完全に取り出した後、シリンダ装置40に圧縮空気を供給してロッド40aを進出状態にすることで、把持用マテハン25とアウタパネルPとが固定されて変位しなくなる。
【0058】
しかる後、取り出した2枚のアウタパネルP1、P2のうち、他方のアウタパネルP2を上記右側仮保持装置6に一時的に保持させておく。すなわち、搬送用ロボット5によりアウタパネルP1、P2を移動させて、図8(b)、図9及び図12に示すように、他方のアウタパネルP2の車室外面を右側仮保持装置6の吸盤54に接触させると、該他方のアウタパネルP2が吸盤54に吸着して右側仮保持装置6に保持される。他方のアウタパネルP2を右側仮保持装置6に保持してから、図8(b)に仮想線で示すように、一方のアウタパネルP1の上縁部を他方のアウタパネルP2の上縁部から離すように把持用マテハン25を斜め下方に移動させる。これにより、一方のアウタパネルP1と他方のアウタパネルP2との係合状態が解除されて、図13にも示すように、一方のアウタパネルP1のみが把持用マテハン25に把持された状態になる。
【0059】
次いで、図14に示すように、一方のアウタパネルP1と把持用マテハン25との相対位置を検出するために、搬送用ロボット5により該アウタパネルP1を上記固定センサ63の下方に移動させる。このとき、アウタパネルP1の車室内面を上方へ向けて固定センサ63とアウタパネルP1の車両後縁部とを対向させる。
【0060】
上記固定センサ63により一方のアウタパネルP1と把持用マテハン25との相対位置が検出されると、制御装置10は、この検出結果に基づいて、両者の相対位置が正規の位置からずれているときには、そのずれ量に応じてロボットアーム31の動きの補正度合いを演算する。このとき、固定センサ63は、可動センサ45のように動かない分、正確な検出が可能であり、この固定センサ63に基づいてロボットアーム31の動きを的確に補正することが可能である。これにより、一方のアウタパネルP1と把持用マテハン25との相対位置がアウタパネルP1を把持するときにずれていても、図15に示すように、一方のアウタパネルP1を治具Yの正確な位置に置くことが可能である。この一方のアウタパネルP1が1番目に搬送するアウタパネルPである。
【0061】
上記一方のアウタパネルP1を治具Yに置いた後、吸盤41の吸引力を低下させて把持用マテハン25から一方のアウタパネルP1を外す。このアウタパネルP1は治具Yに固定され、その後、後工程として、周縁部にシーリング塗布用ロボット8によりシーリング剤が塗布される。その後、旋回台58を180゜回転させて左ドア用固定部60を搬送用ロボット5側に位置付ける。
【0062】
次に、左ドア用アウタパネルPを上記右ドア用アウタパネルPと同様に左ドア用パレットから取り出して治具Yまで搬送する。上記左ドア用アウタパネルPを搬送して周縁部にシーリング剤を塗布した後には、旋回台58を180゜回転させる。このとき、治具Yの右ドア用固定部59からは上記一方のアウタパネルP1が外されている。そして、搬送用ロボット5により可動センサ45を移動させて該可動センサ45により右側仮保持装置6に保持されている他方のアウタパネルP2の3次元位置を検出する。この3次元位置情報に基づいて把持用マテハン25を移動させて、該マテハン25の吸盤41を他方のアウタパネルP2に接触させて該アウタパネルPを把持用マテハン25に把持させる。このアウタパネルP2を把持した後は、上記したように固定センサ63でアウタパネルP2と把持用マテハン25との相対位置を検出し、必要に応じてロボットアーム31の動きを補正して他方のアウタパネルP2を治具Yの左ドア用固定部60まで搬送する。この他方のアウタパネルP2を搬送する際には、該他方のアウタパネルP2は既に右ドア用パレット1から取り出されていて、治具Yに近い右側仮保持装置6に保持されているので、把持用マテハン25を右ドア用パレット1まで移動させて取り出し動作を行わなくてもよく、搬送時間の短縮が図られる。尚、左ドア用アウタパネルPも同様にして治具Yまで搬送する。
【0063】
以上説明したように、この実施形態によれば、2枚のアウタパネルP1、P2を1つの組にした状態でパレット1に収容しておき、その後、搬送用ロボット5により1つの組の2枚のアウタパネルP1、P2をパレット1から一度に取り出し、これら2枚のアウタパネルP1、P2を搬送用ロボット5により治具Yの固定位置まで順次搬送するようにしたので、アウタパネルPの搬送を自動化でき、しかも、1枚のアウタパネルP1の搬送が終了した後に次のアウタパネルP2をパレット1まで取り出しに行かなくてもよくなり、アウタパネルPの搬送時間を全体として短縮することができる。加えて、パレット1に2枚のアウタパネルPを1つの組にまとめて収容することで、1つのパレット1に収容できるアウタパネルPの数が増え、パレットPを組み立て現場に搬入出する頻度を低くすることができる。
【0064】
これらのことに加え、パレット1に収容されたアウタパネルPの3次元位置を可動センサ45で検出してから該アウタパネルPを把持用マテハン25で把持し、このアウタパネルPを治具Yまで搬送する途中に、正確な位置検出が行える固定センサ63でアウタパネルPと把持用マテハン25との相対位置を検出してロボットアーム31の動きを的確に補正できるようにしたので、把持用マテハン25で把持する前のアウタパネルPの位置が所期の位置からずれていたり、把持するときにずれたりしても、アウタパネルPを治具Yまで正確に搬送することできて、搬送後の位置修正を殆ど無くすことができる。これらのことにより、ドアの生産効率を向上させることができる。
【0065】
また、1組のアウタパネルP1、P2のうち厚み方向一側に位置する一方のアウタパネルP1を把持用マテハン25で把持し、その反対側に位置するアウタパネルP2を仮保持装置6で保持するようにしたので、一方のアウタパネルP1を把持用マテハン25から外すことなく他方のアウタパネルP2を仮保持装置6に保持させることができて、アウタパネルPの搬送時間をより一層短縮することができる。
【0066】
また、把持用マテハン25及び仮保持装置6に吸盤41、54を設けたので、各吸盤41、54にアウタパネルPを押し当てるだけで該アウタパネルPを把持用マテハン25及び仮保持装置6に容易に把持させることができる。さらに、このアウタパネルPを把持用マテハン25に把持させる際には、シリンダ装置40を大気開放状態にするので、吸盤41がアウタパネルPに強く接触するのを回避することができて、アウタパネルPの変形や傷つきを抑制することができる。
【0067】
また、把持用マテハン25でアウタパネルPの凹面側を把持するようにしているので、この凹面内のスペースをマテハン挿入用空間Rの一部として有効に利用することができて、パレット1をコンパクト化することができる。
【0068】
また、把持用マテハン25の吸盤41と仮保持装置6の吸盤54とは、向かい合わせたときに吸着面同士の少なくとも一部が重複するように配置されているので、仮保持装置6に保持されているアウタパネルPに把持用マテハン25の吸盤41を接触させた際に、アウタパネルPの略同じ部位を両吸盤41、54で厚み方向に挟む形になって該アウタパネルPの変形を抑制することができる。
【0069】
また、パレット1内のアウタパネルPが減ってきた場合には、アウタパネルPの位置を検出する際に、可動センサ45をパレット1内に位置付けることでアウタパネルPが可動センサ45の検出範囲S内に入るようにする。
【0070】
尚、この実施形態では、2枚のアウタパネルP1、P2を1組にしてパレット1から取り出すようにしているが、1枚のアウタパネルPをパレット1の各サポート部材20、21により支持しておき、パレット1から一度に取り出すアウタパネルPを1枚としてもよい。この場合には、可動センサ45でパレット1内のアウタパネルPの3次元位置を検出した後、該アウタパネルPを把持用マテハン25で把持し、そのまま、固定センサ63の下方へ移動させてアウタパネルPと把持用マテハン25との相対位置を検出してから治具Yまで搬送することができる。つまり、仮保持装置6、7を省略することができる。
【0071】
また、この実施形態では、可動センサ45でアウタパネルPの3次元位置を検出し、固定センサ63でアウタパネルPと把持用マテハン25との相対位置を検出するようにしているが、これらセンサ45、63を省略し、かつ、上述のように1組のアウタパネルP1、P2をパレット1から取り出し、他方のアウタパネルP2を仮保持装置6に保持させておき、一方のアウタパネルP1を治具Yに先に搬送するようにしてもよい。これは、把持する前のアウタパネルPを比較的正確な位置に置いておき、搬送用ロボット5にティーチングしておくことで実現可能である。このようにした場合にも、1枚のアウタパネルP1の搬送が終了した後に次のアウタパネルP2をパレット1まで取り出しに行かなくてもよくなり、アウタパネルPの搬送時間を全体として短縮することができる。
【0072】
また、上記実施形態では、可動センサ45でアウタパネルPのアウタハンドル取付用の凹部T1や開口部T2を認識させるようにしているが、可動センサ45で認識させる部位はこれらに限られるものではなく、アウタパネルPの周縁部等としてもよい。また、同様に、固定センサ63で認識させる部位も任意に設定することができる。また、可動センサ45及び固定センサ63の取付位置は、上記した位置に限られない。
【0073】
また、把持用マテハン25の吸盤41の数及び仮保持装置6の吸盤54の数は、3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよいが、アウタパネルPを安定して保持するためには複数が望ましい。
【0074】
また、この実施形態では、本発明を自動車の側部に設けられるドアの製造に適用した場合について説明したが、本発明は、例えば、自動車のスライドドア、バックドア、フード等のいわゆる蓋物を製造する場合に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上説明したように、本発明に係るワークの搬送方法及びワークの搬送装置は、例えば、自動車用のドアを製造する現場において、プレス成形後にパレットに収容された状態のアウタパネルを該パレットから取り出して治具まで搬送する場合に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施形態に係る搬送装置が設置されている工場の平面図である。
【図2】パレットの一部を示す正面図であり、(a)は可動センサでアウタパネルの3次元位置を検出している状態を示し、(b)は把持用マテハンをパレットのマテハン挿入用空間に挿入した状態を示す図である。
【図3】右ドア用ラックに2つのパレットを載置した状態の正面図である。
【図4】把持用マテハンで把持された状態のアウタパネルを把持用マテハン側から見た側面図である。
【図5】(a)は把持用マテハンを吸盤の吸着面と反対側から見た側面図であり、(b)は把持用マテハンの平面図である。
【図6】把持用マテハンの把持部近傍を拡大して示す図である。
【図7】搬送用ロボットのブロック図である。
【図8】(a)はアウタパネルを保持した状態の右側仮保持装置の平面図であり、(b)はアウタパネルを保持した状態の右側仮保持装置の側面図であり、
【図9】アウタパネルを保持した状態の右側仮保持装置の正面図である。
【図10】アウタパネルの3次元位置を検出している状態を示す図1相当図である。
【図11】アウタパネルを把持している状態を示す図1相当図である。
【図12】アウタパネルを右側仮保持装置に保持させた状態を示す図1相当図である。
【図13】一方のアウタパネルを他方のアウタパネルから外した状態を示す図1相当図である。
【図14】アウタパネルと搬送用マテハンとの相対位置を検出している状態を示す図1相当図である。
【図15】アウタパネルを治具に置いた状態を示す図1相当図である。
【符号の説明】
【0077】
1 右ドア用パレット(ワーク収容手段)
5 搬送用ロボット
6、7 仮保持装置
10 制御装置
25 把持用マテハン(ワーク把持手段)
31 ロボットアーム
41 吸盤
45 可動センサ
63 固定センサ
A 搬送装置
P アウタパネル(ワーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク収容手段に収容された複数のワークの中から所定のワークを取り出して、該ワークを目標位置まで搬送するワークの搬送方法であって、
複数のワークで構成されたワークの組を上記ワーク収容手段に複数組収容する工程と、
搬送用ロボットのロボットアーム先端に取り付けられたワーク把持手段により、上記ワーク収容手段に収容された所定の組のワークを把持して上記複数のワークを該ワーク収容手段から一度に取り出す工程と、
所定の組の複数のワークのうち、1番目に目標位置まで搬送するワーク以外のワークをワーク仮保持手段に一時的に保持させる工程と、
上記1番目に目標位置まで搬送するワークを上記搬送用ロボットにより目標位置まで搬送する工程と、
上記1番目に搬送するワークを目標位置まで搬送した後に、上記ワーク仮保持手段に保持されているワークを上記ワーク把持手段により把持して目標位置まで搬送する工程とを備えていることを特徴とするワークの搬送方法。
【請求項2】
ワーク収容手段に収容された複数のワークの中から所定のワークを取り出して、該ワークを目標位置まで搬送するワークの搬送方法であって、
対象物の3次元位置を検出可能に構成された可動センサがロボットアーム先端のワーク把持手段に装着された搬送用ロボットにより、該可動センサを移動させて上記ワーク収容手段に収容された所定のワークの3次元位置を検出する工程と、
上記可動センサで検出された所定のワークの3次元位置情報に基づいて、上記ワーク把持手段を上記搬送用ロボットにより所定のワークを把持する把持位置まで移動させ、該ワーク把持手段により所定のワークを把持する工程と、
上記ワーク把持手段で把持したワークと該ワーク把持手段との相対位置を固定センサで検出し、その検出結果に基づいて上記ロボットアームの動きを補正し、ワークを目標位置まで搬送する工程とを備えていることを特徴とするワークの搬送方法。
【請求項3】
ワーク収容手段に収容された複数のワークの中から所定のワークを取り出して、該ワークを目標位置まで搬送するワークの搬送装置であって、
複数のワークで構成されたワークの組が複数組収容されるワーク収容手段と、
上記ワーク収容手段に収容された所定のワークの組を把持するワーク把持手段が取り付けられたロボットアームを有し、該ワーク把持手段が把持したワークを目標位置まで搬送するように構成された搬送用ロボットと、
上記ワーク把持手段が把持した所定の組の複数のワークのうち、1番目に目標位置まで搬送するワーク以外のワークを一時的に保持するワーク仮保持手段とを備えていることを特徴とするワークの搬送装置。
【請求項4】
ワーク収容手段に収容された複数のワークの中から所定のワークを取り出して、該ワークを目標位置まで搬送するワークの搬送装置であって、
ワーク把持手段が取り付けられたロボットアームを有する搬送用ロボットと、
上記ワーク把持手段に装着され、上記ワーク収容手段に収容されている所定のワークの3次元位置を検出可能に構成された可動センサと、
上記ワーク把持手段に把持したワークと該ワーク把持手段との相対位置を検出可能に構成された固定センサと、
上記可動センサ及び固定センサが接続され、これら両センサの出力信号に基づいて上記搬送用ロボットを制御する制御装置とを備え、
上記制御装置は、上記可動センサで検出された所定のワークの3次元位置情報に基づいて上記ワーク把持手段を所定のワークの把持位置まで移動させるとともに、上記固定センサで検出されたワークとワーク把持手段との相対位置情報に基づいてロボットアームの動きを補正してワークを目標位置まで搬送させるように構成されていることを特徴とするワークの搬送装置。
【請求項5】
請求項4に記載のワークの搬送装置において、
複数のワークで構成されたワークの組がワーク収容手段に複数組収容され、
ワーク把持手段は、上記ワーク収容手段に収容された所定の組のワークを把持するように構成され、
上記ワーク把持手段が把持した所定の組の複数のワークのうち、1番目に目標位置まで搬送するワーク以外のワークをワーク仮保持手段に一時的に保持するように構成されていることを特徴とするワークの搬送装置。
【請求項6】
請求項3または5に記載のワークの搬送装置において、
ワーク収容手段に収容されているワークの組は、パネル状の複数のワークを厚み方向に重ねて構成されており、
ワーク把持手段は、所定の組の厚み方向一側に位置するワークを把持するように構成され、
ワーク仮保持手段は、所定の組の厚み方向他側に位置するワークを把持するように構成されていることを特徴とするワークの搬送装置。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1つに記載のワークの搬送装置において、
ワーク把持手段には、作動流体の給排により伸縮動作するシリンダ装置と、該シリンダ装置のロッド先端に装着された吸盤とが設けられ、
上記シリンダ装置は、作動流体の供給を停止した状態でロッドが外力により自由に伸縮するように構成されていることを特徴とするワークの搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−38370(P2007−38370A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227594(P2005−227594)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000135999)株式会社ヒロテック (62)
【Fターム(参考)】