説明

ワーク検査装置

【課題】搬送されるワークの外形を正確に検査する。
【解決手段】両側にガイド壁22を備えた直線状のワーク搬送路Pを設け、搬送されるワークWを上方からCCDカメラ4で撮像してワーク寸法の良否を検査するワーク検査装置であって、CCDカメラ4に中心を一致させて下方のワーク搬送路Pに向けて設けたリング状照明器3と、ガイド壁22の上方にこれに沿いワーク搬送路Pに向けて設けたライン状照明器5A,5Bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワーク検査装置に関し、特に、リング状ワークの外形検査を良好に行なうことができるワーク検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ベアリングの内輪や外輪(以下、ベアリングワークという)のような鍛造成形されるリング状ワークの内外径の検査は、従来、抜き取りでのゲージ測定が主である。しかし、異材品の流出を完全に防止するために、ラインを搬送されるワークの全数検査を行ないたいという要請が強い。そこで、ラインを搬送されるリング状ワークを、上方に設けたCCDカメラで撮像して、得られた画像を公知の画像処理法によって判定値と比較して外形の良否を判定することが考えられ、この場合の照明としては、CCDカメラと中心を一致させたリング状の照明器を設けて下方のリング状ワークを照明するのが一般的である。
【0003】
なお、特許文献1には、リングライトとラインライトを設けて、これらを、ワークの不良検出の種類やワーク上の不良検出領域に応じて選択点灯させるようにした外観検査装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−305075
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、直線状にワークを送るワーク搬送路の両側にガイド壁が設けられていると、リング状の照明器では図8に示すようにリング状ワークWの一部に影を生じることがあり、このため撮影画像が欠けて正確な外形の検査ができないという問題があった。特にワークが大小混在したロットで搬送される場合には、リング状照明器の外径を最も大きなワークの外径に合わせておくために、小径かつ高さの低いリング状ワークでは撮影画像の欠けが甚だしくなる。なお、図9中の符号1はレールである。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、搬送されるワークの外形を正確に検査することができるワーク検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本第1発明では、両側にガイド壁(22)を備えた直線状のワーク搬送路(P)を設け、搬送されるワーク(W)を上方から撮像手段(4)で撮像してワーク寸法の良否を検査するワーク検査装置であって、撮像手段(4)に中心を一致させて下方のワーク搬送路(P)に向けて設けたリング状の第1照明手段(3)と、ガイド壁(22)の上方にこれに沿いワーク搬送路(P)に向けて設けたライン状の第2照明手段(5A,5B)とを備える。
【0008】
本第1発明においては、リング状の第1照明手段に加えて、ガイド壁の上方にこれに沿いワーク搬送路に向けてライン状の第2照明手段を設けたので、ワークの一部にガイド壁の影を生じることが防止される。これにより欠けのない撮影画像が得られるからワーク外形の正確な検査を行なうことできる。
【0009】
本第2発明では、上記ワーク搬送路(P)は対向間隔を可変とした左右一対の送り機構(2A,2B)の間に位置しており、各送り機構(2A,2B)には対向面の上方にガイド壁(22)が設けられるとともに、各送り機構(2A,2B)には送りベルト(21)が架設されてこれら送りベルト(21)に挟持されてワーク(W)が搬送されるようになっており、第2照明手段(5A,5B)は各送り機構(2A,2B)にそれぞれ一体に設けられている。
【0010】
本第2発明においては、左右の送り機構はワークの大小に応じて対向間隔が変更されるが、第2照明手段は各送り機構の対向方向への移動に伴ってこれと一体に移動するから、送り機構の移動位置に無関係に常に欠けのない撮影画像を得ることができる。
【0011】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明のワーク検査装置によれば、搬送されるワークの外形を正確に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】照明器を設けたワーク検査装置の斜視図である。
【図2】ワーク検査装置における撮影画像の正面図である。
【図3】検査プログラムのフローチャートである。
【図4】検査プログラムのフローチャートである。
【図5】検査プログラムのフローチャートである。
【図6】検査プログラムのフローチャートである。
【図7】本実施形態のワーク検査装置における過検出率のグラフである。
【図8】ワーク検査装置における撮影画像の正面図である。
【図9】従来のワーク検出装置における過検出率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1において、リング状のワークとしての複数のベアリングワークWが、ワーク搬送路Pを構成する左右の直線平行レール1上に直列的に載置されており、これらベアリングWは、左右位置に設置されて互いの対向間隔を変更可能とされた送り機構2A,2Bによって図1の奥側から手前側へ直線的に搬送されている。
【0015】
すなわち、左右の送り機構2A,2Bは、その対向面が互いに平行に位置させられるとともに、対向面を含む送り機構2A,2Bの外周には送りベルト21が架設されている。送りベルト21は各送り機構2A,2Bの対向面上では図1の奥側から手前側へ、同速度で移動するように旋回駆動されており、搬送するベアリングワークWの大小に合わせて送り機構2A,2Bの対向間隔を適宜変更することによって、左右の送りベルト21が常にベアリングワークW外周の径方向対称位置に圧接してこれらベアリングワークWが左右のレール1上で直線的に搬送される。そして、送り機構2A,2Bには対向面の上方位置に一定高さのガイド壁が設けられている。
【0016】
左右のレール1の中央上方に中心を位置させて、第1照明手段としての円形のリング状照明器3が水平姿勢で設けてある。リング状照明器3は下方へ開放するU字断面のリング状ハウジング内に下方へ向けて多数の発光ダイオードを配設したものである。撮像手段としてのCCDカメラ4はそのレンズ41の中心をリング状照明器3の中心線L上の上方に位置させて設けられている。
【0017】
ここで、本実施形態では、各送り機構2A,2Bのガイド壁22の上方にはこれに沿ってそれぞれ第2照明手段としてのライン状照明器5A,5Bが、送り機構2A,2Bに設けたステー51で支持されて配置されている。ライン状照明器5A,5Bは下方へ開放するU字断面の一定長の長尺ハウジング内に、下方へ向けて多数の発光ダイオードを配設したもので、各ライン状照明器5A,5Bはそれぞれステー51によって斜め下方のワーク搬送路Pに向けて支持されている。
【0018】
CCDカメラ4はパソコン6に接続されており、レール1上を搬送されるベアリングワークWの撮影画像がパソコン6上の後述の検査プログラムで処理されてベアリングワークWの良否が判定される。
【0019】
ここで、リング状照明器3だけであると、従来技術の項で説明したように、特にベアリングワークWの外径が小さくその高さが低い場合には、接近させられた送り機構2A,2Bのガイド壁22の影がベアリングワークWの上面の、左右のガイド壁22に近い径方向の対象位置にそれぞれ生じて撮影画像が欠け、ベアリングワークWの正確な外形が検出できない。ここにおいて本実施形態では、各送り機構2A,2Bのガイド壁22上方にこれに沿ってライン状照明器5A,5Bが設けてあり、これらは送り機構2A,2Bと一体に互いに接近ないし離間移動して、常にベアリングワークWの、ガイド壁22近くに位置する上面を照明する。これにより、図2に示すように、ベアリングワークWの上面にガイド壁22の影を生じることが防止されて、CCDカメラ4にベアリングワークWの上面全体の、欠けの無い撮影画像が得られる。
【0020】
図3〜図6にはパソコン6で実行される検査プログラムの処理手順の一例を示す。検査プログラムは図3に示すように、ティーチング(ステップ301)、本検査(ステップ302)、判定(ステップ303)の各手順を含んでいる。ティーチングでは、図4に示すように、CCDカメラ4でベアリングワークWを撮像し(ステップ401)、続いてパターンマッチング(ステップ403)により、搬送路のレール1上を搬送されている一定ロットのベアリングワークWが例えば「大、中、小」のいずれであるかを判定してベストパターンを選択し(ステップ404)、ワーク中心を算出するとともに円エッジを検出して(ステップ405)、ベアリングワークWの外径および内径の基準値を算出しておく(ステップ406)。
【0021】
本検査では、図5に示すように、CCDカメラ4でベアリングワークWを撮像し、続いてパターンマッチング(ステップ501)を行なってワーク中心を算出する(ステップ503)とともに円エッジを検出して(ステップ504)、ベアリングワークWの外径および内径を算出する(ステップ505)。続いて、これまでの外径および内径の平均値も算出しておく(ステップ506)。
【0022】
判定においては、図6に示すように、上記本検査で算出されたベアリングワークWの外径および内径を、同じく本検査で算出されたそれぞれの平均値と比較して(ステップ601)、平均値から一定値以内であればベアリングワークWは良品であるとしてOK信号を出力し(ステップ602)、上記一定値を越えた値を示した場合にはベアリングワークWは不良品であるとしてNG信号を出力する(ステップ603)。
【0023】
CCDカメラ4により得られるベアリングワークWの撮影画像を以上のような検査プログラムで処理した場合、本実施形態においては前述したようにベアリングワークWの上面全体の、欠けの無い撮影画像が得られているから、外径ないし内径が平均値から例えば1mm以内に納まっている良品ワークであるにも拘らずその外径ないし内径が平均値から1mm以上外れているとして不良品と判定される率(過検出率)は、図7に示すように、製品No.1,2のものでそれぞれ1.3%、0.8%と小さい。これに対して同じ製品No.1,2のものを、従来の一部が欠けた撮影画像で処理すると、図9に示すように、過検出率はそれぞれ12.4%、3.8%と非常に大きい。
【0024】
上記実施形態では左右の送り機構2A,2Bに送りベルト21を設けてベアリングワークWを挟持して搬送するようにしたが、レール1を例えば搬送ベルトに代えて、搬送ベルト上にベアリングワークWを載せて搬送するとともに、左右のガイド壁で直線搬送を案内するような構造としても良い。また、上記実施形態では、ワークがベアリングワークである場合について説明したが、他のリング状ワークであっても良く、さらには必ずしもリング状に限られるものではない。
【符号の説明】
【0025】
1…レール、2A,2B…送り機構、21…送りベルト、22…ガイド壁、3…リング状照明器(第1照明手段)、4…CCDカメラ(撮像手段)、5A,5B…ライン状照明器(第2照明手段)、P…ワーク搬送路、W…ベアリングワーク(ワーク)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側にガイド壁を備えた直線状のワーク搬送路を設け、搬送されるワークを上方から撮像手段で撮像してワーク寸法の良否を検査するワーク検査装置であって、撮像手段に中心を一致させて下方のワーク搬送路に向けて設けたリング状の第1照明手段と、ガイド壁の上方にこれに沿いワーク搬送路に向けて設けたライン状の第2照明手段とを備えるワーク検査装置。
【請求項2】
上記ワーク搬送路は対向間隔を可変とした左右一対の送り機構の間に位置しており、各送り機構には対向面の上方にガイド壁が設けられるとともに、各送り機構には送りベルトが架設されてこれら送りベルトに挟持されてワークが搬送されるようになっており、第2照明手段は各送り機構にそれぞれ一体に設けられている請求項1に記載のワーク検査装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図2】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−42278(P2012−42278A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182333(P2010−182333)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】