説明

三座の窒素含有リガンドを有する遷移金属錯体

本発明は、窒素含有で、荷電されていないリガンド組成物を有する遷移金属錯体、少なくとも1種の遷移金属錯体を含む触媒組成物、触媒組成物をオレフィンの重合又は共重合に使用する方法、及び触媒組成物の存在下にオレフィンを重合又は共重合することによるポリオレフィンの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素含有で、荷電されていない三座リガンド組成物を有する遷移金属錯体及び少なくとも1種の遷移金属錯体を含む触媒組成物に関する。
【0002】
更に本発明は、触媒組成物をオレフィンの重合又は共重合に使用する方法、及び触媒組成物の存在下にオレフィンを重合又は共重合することによるポリオレフィンの製造方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
シングルサイト触媒として知られ、特有の活性中心を有する触媒組成物は、オレフィンの重合において益々重要性を増している。かかる触媒組成物により、分子量分布の狭いポリマーが得られ、その結果、特に好ましい機械的特性が得られる。シングルサイト触媒の中で、特にメタロセン触媒が工業的に重要となった。メタロセン触媒において、シクロペンタジエニルリガンドでの適当な置換基によってポリマーの性質に影響を与えることができる。しかしながら、多くのメタロセン触媒は、多段階合成を介してのみ得られるので、これは、オレフィンの重合で重要なコスト要因を意味する。
【0004】
複素環式化合物及びその種々の置換誘導体を製造するのは特に容易であるので、これらは、リガンド合成の出発材料として特に重要である。ピラゾールを基礎とする置換及び非置換の三座リガンド組成物は、シクロペンタジエニル置換型として屡々使用される。種々のトリスピラゾリルボレートを使用して特に大多数の錯体が調製され、且つこれらのリガンドは更にマイナスの電荷を有していている。例えば、Ti及びZrの(シクロペンタジエニル)(トリスピラゾリル)錯体がオレフィンの重合に好適な触媒である。
【0005】
複素環式化合物から作製され、非荷電の三座リガンドを基礎とする他の錯体については殆ど研究されてこなかった。多くのリガンド組成物は公知であり、そして製造が極めて簡単で且つ安価であるにも拘わらず、リガンド組成物をもって後周期遷移金属の錯体だけが今日まで合成されてきた。しかしながら、このような後周期遷移金属錯体の多くは、主として酵素のモデル物質として働き、そして前周期遷移金属の対応する錯体の適合性についてはよく知られていない。
【0006】
3個の(N−メチルイミダゾール)単位がCOCH3ブリッジを介して2位に結合したクロムの三座イミダゾール錯体は、Ruether, Thomas; Braussaud, Nathalie; Cavell, Kingsley等によって非特許文献1に開示された。しかしながら、このような錯体を用い、メチルアルミノキサンの存在下にエチレンのオリゴマーだけを得ることができる。
【0007】
【非特許文献1】Organometallics (2001), 20(6), 1247-1250頁
【発明の開示】
【0008】
従って、本発明の目的は、架橋された供与体を有するシクロペンタジエニルリガンドを基礎とし、オレフィンの重合に好適な他の遷移金属錯体を見出すことにある。
【0009】
本発明者等は、上記目的が以下の式(I):
(Z)M (I)
[但し、Mが元素周期表第3族、第4族、第5族又は第6族の遷移金属を表し、
Zが、以下の式(II):
【0010】
【化1】

【0011】
{但し、AがCR1、SiR1又はPを表し、
1が水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分の炭素原子数が1〜10個であり、アリール部分の炭素原子数が6〜20個のアルキルアリール、NR92、N(SiR932、OH、OSiR93、SiR93又はハロゲンを表し、
1〜L3が相互に独立して、それぞれ
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、E1〜E6がそれぞれ炭素又は窒素を表し、
1〜E6が窒素の場合にはpは0を表し、E1〜E6が炭素の場合にはpは1を表し、
2〜R8が相互に独立して、それぞれ水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分の炭素原子数が1〜10個であり、アリール部分の炭素原子数が6〜20個のアルキルアリール、NR92、N(SiR932、OR9、OSiR93、SiR93又はハロゲンを表し、且つ有機基R2〜R8が、ハロゲンで置換されていても良く、そして2個のビシナル基R2〜R8が相互に合体して、5又は6員環を形成するか及び/又は2個のビシナル基R2〜R8が相互に合体して、N、P、O及びSからなる群から選択される少なくとも1個の原子を含む複素環を形成しても良い。)を表し、
9が相互に独立して、それぞれ水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール又はアルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールを表し、そして2個のジェミナル基R9が相互に合体して、5又は6員環を形成しても良い。}
で表されるリガンドを表す。]
で表される構造的特徴を有する遷移金属錯体によって達成されることを見出した。
【0014】
更に、本発明者等は、本発明の遷移金属錯体を含む触媒組成物、遷移金属錯体又は触媒組成物をオレフィンの重合又は共重合に使用する方法、並びに遷移金属錯体又は触媒組成物の存在下にオレフィンを重合又は共重合することによるポリオレフィンの製造方法及びこのようにして得られるポリマーを見出した。
【0015】
本発明の遷移金属錯体は、式(Z)M(I)(但し、各記号は上述した通りである。)で表される構造要素を含んでいる。他の配位子(リガンド)は、金属原子Mに結合可能である。他の配位子の数は、例えば、金属原子の酸化状態に応じて異なる。使用可能な配位子は、シクロペンタジエニル組成物ではない配位子である。適当な配位子は、例えばXについて記載されているモノアニオン性及びジアニオン性の配位子である。更に、アミン、エーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、スルフィドまたはホスフィン等のルイス塩基を中心金属Mに結合させることも可能である。
【0016】
Mは、スカンジウム、イットリウム、ランタン、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン及びタングステンからなる群から選択される遷移金属である。チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム又はクロムが好ましく、バナジウム又はクロムが特に好ましい。遷移金属は、2、3及び4の酸化状態、特に3及び4の酸化状態で存在するのが好ましい。
【0017】
Zは、三座で、非荷電の配位子組成物であり、任意の置換基を有するか及び/又は1個以上の芳香族環、脂肪族環、複素環又はヘテロ芳香族環と縮合していても良い。C=N−L基の1個、2個又は3個の窒素原子は、遷移金属中心と結合していても良い。全ての3個のC=N基が窒素を介して遷移金属中心に結合しているのが好ましい。本発明の遷移金属錯体は、モノマー、ダイマー、トリマー又はオリゴマーであっても良い。モノマーの遷移金属錯体が好ましい。
【0018】
基−C=N−L1、−C=N−L2及び−C=N−L3は、5又は6員のヘテロ芳香族(ヘテロ芳香族化合物)である。5員のヘテロ芳香族の場合、少なくとも2個の窒素原子を含み、そして3個、4個又は5個の窒素原子を含んでいても良く、2個の窒素原子を含んでいるのが好ましい。6員のヘテロ芳香族の場合、少なくとも1個の窒素原子を含み、そして2個、3個、4個、5個又は6個の窒素原子を含んでいても良く、1個又は2個の窒素原子を含んでいるのが好ましい。5員のヘテロ芳香族の例は、イミダゾール、1,2,3−トリアゾール又は1,2,4−トリアゾールである。6員のヘテロ芳香族の例は、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン及び1,2,3−トリアジンである。
【0019】
5員及び6員のヘテロ芳香族は、それぞれ式(I)で表したようにAに結合している。結合箇所を示した5員のヘテロ芳香族の例は、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、4−1,2,3−トリアゾリル、3−1,2,4−トリアゾリル又は5−1,2,4−トリアゾリルである。結合箇所を示した6員のヘテロ芳香族の例は、2−ピリジニル、3−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、2−ピラジニル、1,3,5−トリアジン−2−イル、1,2,4−トリアジン−3−イル、1,2,4−トリアジン−5−イル及び1,2,4−トリアジン−6−イルである。
【0020】
置換基R2〜R8を変更することによって本発明の遷移金属錯体の重合特性に影響を与えることができる。置換基の数および種類により、重合されるべきオレフィンの、遷移金属原子Mへの接近に影響を与えるか、又は配位子Zの結合角を修正することができる。このようにして、種々のモノマー、特に嵩高いモノマーに対する触媒の活性および選択性を修正することができる。置換基は成長ポリマー鎖の停止反応の速度に影響を与えることができることから、これにより形成されるポリマーの分子量を変更させることもできる。したがって、置換基R2〜R8の化学的な構造を広範囲内で変更して、所望の結果を達成し且つ目的の触媒組成物を得ることができる。5員及び6員のヘテロ芳香族は、例えば、C1〜C20アルキル、C6〜C20アリール、アルキル部分の炭素原子数が1〜10個で、アリール部分の炭素原子数が6〜10個のアルキルアリール、トリアルキルシリル又はハロゲン(例:フッ素、塩素又は臭素)、ジアルキルアミド、アルキルアリールアミド、ジアリールアミド、アルコキシ又はアリールオキシで置換されているか、或いは1種以上の芳香族化合物又はヘテロ芳香族化合物と縮合されていても良い。
【0021】
使用可能な有機炭素置換基R2〜R8の例は以下の通りである:
直鎖でも、または分岐でも良いC1〜C20アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシルまたはn−ドデシル、
置換基としてC6〜C10アリール基を有していても良い5〜7員のシクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル又はシクロドデシル、
直鎖でも、環式でも、または分岐でも良く、そして内部または末端二重結合を有することができるC2〜C20アルケニル、例えばビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニルまたはシクロオクタジエニル、
置換基として更にアルキル基を有していても良いC6〜C20アリール、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−もしくは2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−もしくは3,4,5−トリメチルフェニル、または
置換基として更にアルキル基を有していても良いアリールアルキル、例えばベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−もしくは2−エチルフェニル、であり、且つ2個のR2〜R8が相互に合体して、5または6員環を形成しても良く、そして有機基R2〜R8は、ハロゲン、例えばフッ素、塩素または臭素で置換されていても良い。更に、R2〜R8はアミノ又はアルコキシであっても良く、例えばジメチルアミノ、N−ピロリジニル、ピコリニル、メトキシ、エトキシ又はイソプロポキシであっても良い。
【0022】
有機ケイ素置換基SiR93の基R9は、R2〜R8と同義である有機炭素基であり、且つ2個のR9が相互に合体して、5または6員環を形成しても良い。置換基SiR93の適例は、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ブチルジメチルシリル、トリブチルシリル、トリ−tert−ブチルシリル、トリアリルシリル、トリフェニルシリルまたはジメチルフェニルシリルである。基SiR93を、酸素原子又は窒素原子を介して結合させることも可能であり、例えば、トリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ、ブチルジメチルシリルオキシ、トリブチルシリルオキシ又はトリ−tert−ブチルシリルオキシである。好ましい基R2〜R8は、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビニル、アリル、ベンジル、フェニル、o−ジアルキル−もしくはo−ジクロロ−置換フェニル、トリアルキル−もしくはトリクロロ−置換フェニル、ナフチル、ビフェニルおよびアントラニルである。特に有用な有機ケイ素置換基は、アルキル基の炭素原子数が1〜10個であるトリアルキルシリル基、特にトリメチルシリル基である。
【0023】
2個のビシナル基R2〜R8が環式の縮合環組成物(縮合環式基)を形成する化合物、即ち、2個のビシナル基R2〜R8がE2〜E6と合体して、無置換又は置換のベンゾ芳香族又はヘテロ芳香族組成物を形成する化合物が好ましい。このようにして、2個のビシナル基R2〜R8は、−C=N−L1、−C=N−L2及び−C=N−L3と合体して、ヘテロ芳香族化合物又はベンゼンに縮合したヘテロ芳香族組成物を形成する。好適な5員のベンゾ縮合へテロ芳香族は、例えばベンゾイミダゾールである。好適な6員のベンゾ縮合へテロ芳香族は、キノリン、イソキノリン、フェナントリジン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン又はキノキサリンである。5員のヘテロ芳香族縮合のヘテロ芳香族化合物の適例は、プリンである。6員のヘテロ芳香族縮合のヘテロ芳香族化合物の適例は、1,8−ナフチリジン、1,5−ナフチリジン、プテリジン及び1,10−フェナントロリンである。ヘテロ環の命名および番号付与は、Lettau, Chemie der Heterocyclen, 第1版, VEB, Weinheim 1979から引用した。
【0024】
ヘテロ芳香族化合物は、C−C二重結合(E2〜E6がCである。)を介して5員又は6員のヘテロ芳香族化合物と縮合しているのが好ましい。結合箇所を示した5員のベンゾ縮合へテロ芳香族化合物は、例えば2−ベンゾイミダゾリルである。結合箇所を示した6員のベンゾ縮合へテロ芳香族化合物は、例えば2−キノリル、1−イソキノリル、3−イソキノリル、3−シンノリル、1−フタラジル、2−キナゾリル、4−キナゾリル、2−キノキサリル、1−フェナントリジル及び4−1,2,3−ベンゾトリアジニルである。縮合の芳香族環又はヘテロ芳香族環は、更に以下の置換基:C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分の炭素原子数が1〜10個であり、アリール部分の炭素原子数が6〜20個のアルキルアリール、NR92、N(SiR932、OR9、OSiR93又はSiR93を有していても良い。
【0025】
1〜L3は、相互に同一であっても、又は異なっていても良い。従って、相互に異なるL1〜L3を含む5員及び6員のヘテロ芳香族化合物がZに含まれていても良い。Zは、2個又は3個の異なる5員のヘテロ芳香族化合物、或いは2個又は3個の異なる6員のヘテロ芳香族化合物を含んでいても良い。3個のL1〜L3の全てが同一であるのが好ましい。L1〜L3が同一であり、それぞれC=Nと合体して5員のヘテロ芳香族環式基(ヘテロ芳香族組成物)を形成するのが特に好ましい。
【0026】
基−C=N−L1、−C=N−L2及び−C=N−L3は、Aを間に介して相互に結合する。Aは、CR1、SiR1又はPを表し、且つR1は水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分の炭素原子数が1〜10個であり、アリール部分の炭素原子数が6〜20個のアルキルアリール、NR92、N(SiR932、OH、OSiR93、SiR93又はハロゲンを表す。置換基R1を変更することによって本発明の遷移金属錯体の重合特性に影響を与えることができる。置換基の種類により、R1と平行して列挙された他の置換基の配列に影響を与え、これにより配位子Zの結合角を修正することができる。置換基R1の化学的な構造を広範囲内で変更することができる。R1は、例えば、水素、C1〜C20アルキル、C6〜C20アリール、アルキル部分の炭素原子数が1〜10個で、アリール部分の炭素原子数が6〜10個のアルキルアリール、トリアルキルシリル又はハロゲン(例:フッ素、塩素又は臭素)、ジアルキルアミド、アルキルアリールアミド、ジアリールアミド、ヒドロキシ、シロキシ又はシリルである。
【0027】
使用可能な有機炭素置換基R1の例は以下の通りである:
直鎖でも、または分岐でも良いC1〜C20アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシルまたはn−ドデシル、
置換基としてC6〜C10アリール基を有していても良い5〜7員のシクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル又はシクロドデシル、
直鎖でも、環式でも、または分岐でも良く、そして内部または末端二重結合を有することができるC2〜C20アルケニル、例えばビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニルまたはシクロオクタジエニル、
置換基として更にアルキル基を有していても良いC6〜C20アリール、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−もしくは2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−もしくは3,4,5−トリメチルフェニル、または
置換基として更にアルキル基を有していても良いアリールアルキル、例えばベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−もしくは2−エチルフェニル、であり、且つ有機基R1は、ハロゲン、例えばフッ素、塩素または臭素で置換されていても良い。更に、R1はアミノ又はシロキシであっても良く、例えばジメチルアミノ、N−ピロリジニル、ピコリニル、トリメチルシロキシ、トリエチルシロキシ又はトリイソプロピルシロキシであっても良い。
【0028】
有機ケイ素置換基SiR93の基R9は、R2〜R8と同義である有機炭素基であり、且つ2個のR9が相互に合体して、5または6員環を形成しても良い。置換基SiR93の適例は、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ブチルジメチルシリル、トリブチルシリル、トリ−tert−ブチルシリル、トリアリルシリル、トリフェニルシリルまたはジメチルフェニルシリルである。基SiR93を、酸素原子又は窒素原子を介して結合させることも可能であり、例えば、トリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ、ブチルジメチルシリルオキシ、トリブチルシリルオキシ又はトリ−tert−ブチルシリルオキシである。
【0029】
基R1は、比較的嵩高いのが好ましい。なぜなら、オリゴマー化での重合に有利だからである。そして好ましい基R1は、C2〜C20アルキル、特に分岐のC2〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分の炭素原子数が1〜10個で、アリール部分の炭素原子数が6〜20個のアルキルアリールであり、特にエチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビニル、アリル、ベンジル、フェニル、o−ジアルキル−もしくはo−ジクロロ−置換フェニル、トリアルキル−もしくはトリクロロ−置換フェニル、ナフチル、ビフェニルおよびアントラニルである。Aはリンを表すのが特に好ましい。
【0030】
好ましい遷移金属錯体は、MがMAを表し、ZがZAを表し、そして以下の式(III):
(Z)AA (III)
[但し、MAが元素周期表第3族、第4族、第5族又は第6族の遷移金属を表し、
Aが、以下の式(IV):
【0031】
【化3】

【0032】
{但し、AAがCR1A、SiR1A又はPを表し、
1Aが水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分の炭素原子数が1〜10個であり、アリール部分の炭素原子数が6〜20個のアルキルアリール、NR11A2、N(SiR11A32、OH、OSiR11A3、SiR11A3又はハロゲンを表し、
2A〜R10Aが相互に独立して、それぞれ水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分の炭素原子数が1〜10個であり、アリール部分の炭素原子数が6〜20個のアルキルアリール、NR11A2、N(SiR11A32、OR11A、OSiR11A3、SiR11A3又はハロゲンを表し、且つ有機基R2A〜R10Aが、ハロゲンで置換されていても良く、そして2個のビシナル基R2A〜R10Aが相互に合体して、5又は6員環を形成するか及び/又は2個のビシナル基R2A〜R10Aが相互に合体して、N、P、O及びSからなる群から選択される少なくとも1個の原子を含む複素環を形成しても良く、
11Aが相互に独立して、それぞれ水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール又はアルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールを表し、そして2個のジェミナル基R11Aが相互に合体して、5又は6員環を形成しても良い。}
で表されるリガンドを表す。]
で表される構造的特徴を有する遷移金属錯体である。
【0033】
好ましい遷移金属錯体は、式(Z)AA(III)(但し、各記号は上述した通りである。)で表される構造要素を含んでいる。他の配位子(リガンド)は、金属原子MAに結合可能である。他の配位子の数は、例えば、金属原子の酸化状態に応じて異なる。使用可能な配位子は、シクロペンタジエニル環式基(シクロペンタジエニル組成物)ではない配位子である。適当な配位子は、例えばXについて記載されているモノアニオン性及びジアニオン性の配位子である。更に、アミン、エーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、スルフィドまたはホスフィン等のルイス塩基を中心金属MAに結合させることも可能である。
【0034】
Aは、スカンジウム、イットリウム、ランタン、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン及びタングステンからなる群から選択される遷移金属である。チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム又はクロムが好ましく、チタン、バナジウム又はクロムが特に好ましい。遷移金属は、2、3及び4の酸化状態、特に3及び4の酸化状態で存在するのが好ましい。酸化状態3のクロムが特に好ましい。
【0035】
Aは、三座で、非荷電の、AAを介して2位で結合する3個のイミダゾール環式基を含む配位子組成物である。これらのイミダゾール環式基は、任意の置換基を有するか及び/又は1個以上の芳香族環、脂肪族環、複素環又はヘテロ芳香族環と縮合していても良い。Zは、3個のイミダゾール基(それぞれイミダゾールに対して1個のC=N基を有する)における1個、2個又は3個の窒素原子を介して遷移金属中心と結合していても良い。全ての3個のC=N基が窒素を介して遷移金属中心MAに結合しているのが好ましい。本発明の遷移金属錯体は、モノマー、ダイマー、トリマー又はオリゴマーであっても良い。モノマーの遷移金属錯体が好ましい。
【0036】
置換基R2A〜R10Aを変更することによって本発明の遷移金属錯体の重合特性に同様に影響を与えることができる。置換基の数および種類により、重合されるべきオレフィンの、金属原子Mへの接近に影響を与えることができる。このようにして、種々のモノマー、特に嵩高いモノマーに対する触媒の活性および選択性を修正することができる。置換基は成長ポリマー鎖の停止反応の速度に影響を与えることができることから、これにより形成されるポリマーの分子量を変更させることもできる。したがって、置換基R2A〜R10Aの化学的な構造を広範囲内で変更して、所望の結果を達成し且つ目的の触媒組成物を得ることができる。
【0037】
有機炭素置換基R2A〜R10Aの例は以下の通りである:
直鎖でも、または分岐でも良いC1〜C20アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシルまたはn−ドデシル、
置換基としてC6〜C10アリール基を有していても良い5〜7員のシクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル又はシクロドデシル、
直鎖でも、環式でも、または分岐でも良く、そして内部または末端二重結合を有することができるC2〜C20アルケニル、例えばビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニルまたはシクロオクタジエニル、
置換基として更にアルキル基を有していても良いC6〜C20アリール、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−もしくは2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−もしくは3,4,5−トリメチルフェニル、または
置換基として更にアルキル基を有していても良いアリールアルキル、例えばベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−もしくは2−エチルフェニル、であり、且つ2個のR2A〜R10Aが相互に合体して、5または6員環を形成しても良く、そして有機基R2A〜R10Aは、ハロゲン、例えばフッ素、塩素または臭素で置換されていても良い。更に、R2A〜R10Aはアミノ又はアルコキシルであっても良く、例えばジメチルアミノ、N−ピロリジニル、ピコリニル、メトキシ、エトキシ又はイソプロポキシであっても良い。
【0038】
有機ケイ素置換基SiR11A3の基R11Aは、R2A〜R10Aと同義である有機炭素基であり、且つ2個のR11Aが相互に合体して、5または6員環を形成しても良い。置換基SiR11A3の適例は、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ブチルジメチルシリル、トリブチルシリル、トリ−tert−ブチルシリル、トリアリルシリル、トリフェニルシリルまたはジメチルフェニルシリルである。基SiR11A3を、酸素原子又は窒素原子を介してシクロペンタジエニル基本骨格に結合させることも可能であり、例えば、トリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ、ブチルジメチルシリルオキシ、トリブチルシリルオキシ又はトリ−tert−ブチルシリルオキシである。
【0039】
基R2A、R5A及びR8Aは、同一でも又は異なっていても良い。基R2A、R5A及びR8Aは同一であるのが好ましい。基R2A、R5A及びR8Aは、それぞれ直鎖又は分岐のC1〜C20アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル又はn−オクチルを表すか、或いはアルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、例えばベンジル又はエチルフェニルを表すのが好ましい。基R3A、R6A及びR9Aは、同一でも又は異なっていても良い。基R3A、R6A及びR9Aは同一であるのが好ましい。
【0040】
基R3A、R6A及びR9Aは、それぞれ以下の基を表すのが好ましい:
直鎖でも、または分岐でも良いC1〜C20アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシルまたはn−ドデシル、
置換基としてC6〜C10アリール基を有していても良い5〜7員のシクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル又はシクロドデシル、
直鎖でも、環式でも、または分岐でも良く、そして内部または末端二重結合を有することができるC2〜C20アルケニル、例えばビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニルまたはシクロオクタジエニル、
置換基として更にアルキル基を有していても良いC6〜C20アリール、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−もしくは2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−もしくは3,4,5−トリメチルフェニル、または
置換基として更にアルキル基を有していても良いアリールアルキル、例えばベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−もしくは2−エチルフェニル、であり、且つ有機基R3A、R6A及びR9Aは、ハロゲン、例えばフッ素、塩素又は臭素で置換されていても良い。特に、基R3A、R6A及びR9Aは、それぞれ水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビニル、アリル、ベンジル、フェニル、o−ジアルキル−若しくはo−ジクロロ−置換フェニル、トリアルキル−若しくはトリクロロ−置換フェニル、ナフチル、ビフェニル又はアントラニルを表す。
【0041】
基R4A、R7A及びR10Aは同一でも又は異なっていても良い。基R4A、R7A及びR10Aは同一であるのが好ましい。基R4A、R7A及びR10Aの好ましい実施の形態は、上述の基R3A、R6A及びR9Aと同義である。好ましい実施の形態において、置換基R2A、R5A及びR8Aからなる群の構成員(各置換基R2A、R5A及びR8A)、置換基R3A、R6A及びR9Aからなる群の構成員(各置換基R3A、R6A及びR9A)、並びに置換基R4A、R7A及びR10Aからなる群の構成員(各置換基R4A、R7A及びR10A)がそれぞれ当該群の中で同一である。個々の群は、相互に同一であっても又は異なっていても良い。
【0042】
他の好ましい実施の形態において、以下のビシナル基の対:R3AとR4A、R6AとR7A及びR9AとR10Aは、これらに結合する炭素原子と合体して、不飽和又は部分的に不飽和で5又は6員の炭素環式環又はヘテロ環式環を形成する。この複素環式化合物、好ましくはヘテロ芳香族化合物は、窒素、リン、酸素及び硫黄、特に好ましくは窒素及び硫黄からなる群から選択される少なくとも1個の原子を含んでいる。これらの置換基対は、それぞれ置換又は無置換の6員芳香族であるのが特に好ましい。
【0043】
他の好ましい実施の形態において、置換基R4A、R7A及びR10Aの少なくとも1個は水素であり、3個の置換基R4A、R7A及びR10Aの全てが水素であるのが好ましい。この好ましい実施の形態は、M又はMAがクロムの場合に特に望ましい。この位置での置換基は、クロム触媒の活性を低減させるであろう。
【0044】
Aは、CR1A、SiR1A又はPを表し、且つR1Aは、水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分の炭素原子数が1〜10個であり、アリール部分の炭素原子数が6〜20個のアルキルアリール、NR11A2、N(SiR11A32、OH、OSiR11A3、SiR11A3又はハロゲンを表す。R1Aは、例えば水素、C1〜C20アルキル、C6〜C20アリール、アルキル部分の炭素原子数が1〜10個で、アリール部分の炭素原子数が6〜10個のアルキルアリール、トリアルキルシリル又はハロゲン(例:フッ素、塩素又は臭素)、ジアルキルアミド、アルキルアリールアミド、ジアリールアミド、ヒドロキシ、シロキシ又はシリルである。
【0045】
使用可能な有機炭素置換基R1Aの例は以下の通りである:
直鎖でも、または分岐でも良いC1〜C20アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシルまたはn−ドデシル、
置換基としてC6〜C10アリール基を有していても良い5〜7員のシクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル又はシクロドデシル、
直鎖でも、環式でも、または分岐でも良く、そして内部または末端二重結合を有することができるC2〜C20アルケニル、例えばビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニルまたはシクロオクタジエニル、
置換基として更にアルキル基を有していても良いC6〜C20アリール、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−もしくは2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−もしくは3,4,5−トリメチルフェニル、または
置換基として更にアルキル基を有していても良いアリールアルキル、例えばベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−もしくは2−エチルフェニル、であり、且つ有機基R1Aは、ハロゲン、例えばフッ素、塩素または臭素で置換されていても良い。更に、R1Aはアミノ又はシロキシであっても良く、例えばジメチルアミノ、N−ピロリジニル、ピコリニル、トリメチルシロキシ、トリエチルシロキシ又はトリイソプロピルシロキシであっても良い。
【0046】
有機ケイ素置換基SiR11A3の基R11Aは、R2A〜R10Aと同義である有機炭素基であり、且つ2個のR11Aが相互に合体して、5または6員環を形成しても良い。置換基SiR11A3の適例は、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ブチルジメチルシリル、トリブチルシリル、トリ−tert−ブチルシリル、トリアリルシリル、トリフェニルシリルまたはジメチルフェニルシリルである。基SiR11A3を、酸素原子又は窒素原子を介して結合させることも可能であり、例えば、トリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ、ブチルジメチルシリルオキシ、トリブチルシリルオキシ又はトリ−tert−ブチルシリルオキシである。好ましい基R1Aは、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビニル、アリル、ベンジル、フェニル、o−ジアルキル−もしくはo−ジクロロ−置換フェニル、トリアルキル−もしくはトリクロロ−置換フェニル、ナフチル、ビフェニルおよびアントラニルである。AAはリンであるのが特に好ましい。
【0047】
本発明の遷移金属錯体の中で、式(Z)MXk(V)及び(ZA)MAk(VI)(但し、式中のZ、M、ZA及びMAは上記と同義である。)で表される遷移金属錯体が好ましく、これらの好ましい実施の形態は、本発明の場合、以下の通りである:
Xが相互に独立して、それぞれフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、NR1X2X、OR1X、SR1X、SO31X、OC(O)R1X、CN、SCN、β−ジケトネート、CO、BF4-、PF6-又は嵩高い非配位アニオンを表し、
1X、R2Xが相互に独立して、それぞれ水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール又はSiR3X3を表し、且つ有機基R1X、R2Xがハロゲン又は窒素若しくは酸素含有基で置換されても良く、そして2個の基R1X、R2Xが相互に合体して、5又は6員環を形成しても良く、
3Xが相互に独立して、それぞれ水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール又はアルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールを表し、そして2個の基R3Xが相互に合体して、5又は6員環を形成しても良く、
kが1、2又は3を表す。
【0048】
上述のZ、M、ZA及びMAの実施の形態及び好ましい実施の形態は、個々に適用され、そして好ましい遷移金属錯体に組み合わせて適用される。
【0049】
配位子(リガンド)Xは、例えば、モノシクロペンタジエニル錯体の合成に用いられる出発金属化合物を選択することによって決定されるが、その後にこれを変更することも可能である。好適な配位子Xは、特に、ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素、特に塩素である。メチル、エチル、プロピル、ブチル、ビニル、アリル、フェニル又はベンジル等のアルキル基は、有利な配位子Xでもある。更に配位子Xとして、トリフルオロアセテート、BF4-、PF6-および弱配位もしくは非配位アニオン(例えば、S. Strauss in Chem. Rev. 1993, 93, 927-942頁参照乞う)、例えばB(C654-が特記に値するが、これらは単に例示されているだけであり、限定を意図するものではない。
【0050】
アミド、アルコキシド、スルホネート、カルボキシレートおよびβ−ジケトネートは特に有用な配位子Xである。基R1XおよびR2Xの変更により、例えば、溶解性等の物理的特性を良好に調整することができる。好適な有機炭素置換基R1XおよびR2Xの例は、以下の通りである:
直鎖でも、または分岐でも良いC1〜C20アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシルまたはn−ドデシル、
置換基としてC6〜C10アリール基を有していても良い5〜7員のシクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル又はシクロドデシル、
直鎖でも、環式でも、または分岐でも良く、そして内部または末端二重結合を有していても良いC2〜C20アルケニル、例えばビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニルまたはシクロオクタジエニル、
更にアルキル基及び/又はN−又はO−含有基で置換されていても良いC6〜C20アリール、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−もしくは2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−もしくは3,4,5−トリメチルフェニル、2−メトキシフェニル、2−N,N−ジメチルアミノフェニル、または
別のアルキル基で置換されていても良いアリールアルキル、例えばベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−もしくは2−エチルフェニル、であり、且つR1XをR2Xと合体させて、5または6員環を形成しても良く、そして有機基R1X〜R2Xは、ハロゲン、例えばフッ素、塩素または臭素で置換されていても良い。
【0051】
有機ケイ素置換基SiR3X3中の使用可能な基R3Xは、R1X〜R2Xについて上記に詳細に記載した基と同義であり、且つ2個のR3Xが相互に合体して、5または6員環を形成しても良い。置換基SiR3X3の適例は、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ブチルジメチルシリル、トリブチルシリル、トリアリルシリル、トリフェニルシリルまたはジメチルフェニルシリルである。基R1XおよびR2Xとして、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル等のC1〜C10アルキル、更にビニル、アリル、ベンジルおよびフェニルを使用するのが好ましい。置換された配位子Xの一部を使用するのが特に好ましい。なぜなら、この配位子Xは、安価で且つ容易に入手可能な出発材料から得ることができるからである。従って、特に好ましい実施の形態において、Xは、ジメチルアミド、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、フェノキシド、ナフトキシド、トリフレート、p−トルエンスルホネート、アセテートまたはアセチルアセトネートを表す。
【0052】
配位子Xの数kは、遷移金属M又はMAの酸化状態に応じて異なる。したがって、数kを、一般的に利用可能な数字として形成することができない。触媒活性錯体における遷移金属M又はMAの酸化状態は、当業者等に知られているのが一般的である。クロム、モリブデンおよびタングステンは、ほとんど+3の酸化状態であり、バナジウムの酸化状態は+3又は+4である。しかしながら、酸化状態が活性触媒の酸化状態に対応していない錯体を使用することも可能である。そこで、かかる錯体を、適当な活性化剤を用いて適当に還元又は酸化することができる。酸化状態が+3のクロム錯体および酸化状態が+3のチタン錯体を使用するのが好ましい。
【0053】
上記の配位子Z又はZAの合成法は、例えば、N. J. Curtis, R. S. Brown等によってJ. Org. Chem. 1980, 45, 4038-4040頁に記載され、そして、A. A. Tolmachev, A. A. Yurchenko, A. S. Merculov, M. G. Semenvoa, E. V. Zarudnitski, V. V. lvanov, A. M. Pinchuk等によってHeteroatom. Chem. 1999, 10(7), 585-597頁に記載されている。
【0054】
金属錯体、特にクロム錯体は、適当な配位子Z又はZAを金属塩、例えば金属塩化物、例えばクロムトリクロリド−トリス(テトラヒドロフラン)、チタントリクロリド−トリス(テトラヒドロフラン)又はバナジウムトリクロリド−トリス(テトラヒドロフラン)と反応させることによって簡易な方法で得ることができる。
【0055】
本発明の遷移金属錯体は、単独で、或いは他の成分と一緒に、オレフィン重合用の触媒組成物として使用することができる。本発明者等は、
A)本発明の少なくとも1種の遷移金属錯体、
B)必要により、有機又は無機担体、
C)必要により、1種以上の活性化合物、
D)必要により、1種以上の、オレフィンの重合に適当な触媒、及び
E)必要により、1種以上のの、周期表第1族、第2族又は第13族の金属を含む金属化合物、を含むオレフィン重合用の触媒組成物を見出した。
【0056】
従って、本発明による遷移金属錯体の2種以上をオレフィンまたは複数のオレフィンと同時に接触させて重合することができる。これにより、広範囲のポリマーを製造することができる点で有効である。例えば、このようにして二モードの生成物を製造することができる。
【0057】
本発明の遷移金属錯体を気相または懸濁液中での重合処理に用いることができるようにするため、錯体を固体の状態で使用する、すなわち錯体を固体の担体(B)に施すのが屡々有効である。更に、担持遷移金属錯体は、高い生産性を示す。したがって、本発明の遷移金属錯体を必要により、有機担体または無機担体(B)に固定して、重合中に担持状態で使用することも可能である。これにより、例えば、反応器中で析出物を回避し、そしてポリマーのモルホロジーを制御することができる。担体材料として、シリカゲル、塩化マグネシウム、酸化アルミニウム、中位の多孔性材料(mesoporous material)、アルミノシリケート、ヒドロタルサイトおよび有機ポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン又は官能化極性ポリマー、例えばエテンとアクリル酸エステル、アクロレイン又は酢酸ビニルの共重合体を使用するのが好ましい。
【0058】
本発明の遷移金属錯体と、少なくとも1種の活性化合物(C)及び担体成分(B)を含む触媒組成物が特に好ましい。
【0059】
かかる担持触媒組成物を得るために、担持触媒組成物を担体成分(B)と反応させることができる。担体成分(B)、本発明の遷移金属錯体(A)及び活性化合物(C)を組み合わせる順序は原則として重要ではない。本発明の遷移金属錯体A)と活性化合物C)は、相互に独立して、または同時に担体に固定することができる。各工程の後に固体を適当な不活性溶剤、例えば脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素で洗浄することができる。
【0060】
担持触媒組成物を製造する好ましい方法において、少なくとも1種の本発明の遷移金属錯体を少なくとも1種の活性化合物(C)と、好ましくは溶解性の反応生成物、付加物、または混合物を与える好適な溶剤中で接触させる。次いで、このようにして得られた生成物(調製物)を、脱水又は不動態化担体材料と混合し、溶剤を除去し、これにより得られた担持遷移金属錯体の触媒組成物を、全ての溶剤又は一部の溶剤が担体材料の細孔から除去されるまで乾燥する。担持触媒は、易流動性粉末として得られる。上述の処理の工業的な方法の例は、WO96/00243、WO98/40419またはWO00/05277に記載されている。別の好ましい形態は、まず担体成分B)に活性化合物C)を施し、次いで、この担持された化合物を本発明の遷移金属錯体A)と接触させる。
【0061】
担体成分B)として、有機固体又は無機固体であっても良い微分散担体(微粒子状の担体)を使用するのが好ましい。特に、担体成分B)は、多孔性担体、例えばタルク、シート状シリケート、例えばモンモリロナイト、ミカ、そして無機酸化物又は微粒子状のポリマー粉体(例えば、ポリオレフィン又は極性官能基を有するポリマー)であっても良い。
【0062】
比表面積が10〜1000m2/gであり、細孔容積が0.1〜5ml/gであり、平均粒径が1〜500μmの担体材料を使用するのが好ましい。比表面積が50〜700m2/g、細孔容積が0.4〜5ml/g、そして平均粒径が5〜350μmである担体が好ましい。比表面積が200〜550m2/gであり、細孔容積が0.5〜3.0ml/gであり、平均粒径が10〜150μmである担体が特に好ましい。
【0063】
無機担体は、例えば吸着した水分を除去するために熱処理することが可能である。かかる乾燥処理は、通常80℃〜300℃、好ましくは100℃〜200℃で行われる。100〜200℃での乾燥は、減圧下及び/又は不活性ガス(例えば、窒素)のブランケット下に行われるか、或いは無機担体を200〜1000℃でか焼して、所望の固体の構造及び/又は表面の所望のOH基濃度を生成するのが好ましい。担体は、慣用の乾燥剤、例えばアルキル金属、好ましくはアルキルアルミニウム、クロロシラン又はSiCl4、その他にメチルアルミノキサンを用いて化学的に処理することができる。好適な処理方法については、例えばWO00/31090に記載されている。
【0064】
無機担体材料は化学的に変性可能である。例えば、シリカゲルをNH4SiF6で処理するか、他のフッ素化剤で処理することにより、シリカゲル表面のフッ素化が行われ、或いは、シリカゲルを窒素−、フッ素−又は硫黄−含有基を含むシランで処理することにより、対応の変性を受けたシリカゲル表面が得られる
微粒子状のポリオレフィン粉体(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリスチレン)等の有機担体材料を使用可能であり、そして適当な精製及び使用前の乾燥処理により、吸着湿分、溶剤残留物又は他の不純物等を含まないものとすることが好ましい。更に、官能化したポリマー担体、例えばポリスチレン、ポリエチレン又はポリプロピレンを基本とし、これらの官能基、例えばアンモニウム又は水酸化物基を間に介している官能化したポリマー担体を用いることも可能であり、少なくとも1種類の触媒成分を固定することができる。
【0065】
担体成分B)として適当な無機酸化物は、元素周期表の第2、3、4、5、13、14、15及び16族の元素(単体)の酸化物の中から見出すことができる。担体として好まし酸化物の例は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム並びに単体のカルシウム、アルミニウム、珪素、マグネシウム又はチタンの混合酸化物、更に対応の酸化物混合物である。単独で、または上述の好ましい酸化物担体との組み合わせとして使用される他の無機酸化物は、例えば、MgO、CaO、AlPO4、ZrO2、TiO2又はB23又はこれらの混合物である。
【0066】
オレフィンの重合用触媒に用いる固体の担体成分B)として、シリカゲルを使用するのが好ましい。なぜなら、寸法および構造がオレフィン重合用の担体として適当である粒子をこの材料から製造することができるからである。一次粒子として知られている小さな顆粒状の粒子からなる球形の凝集物を含む噴霧乾燥シリカゲルが特に有用であると見出された。シリカゲルを使用前に乾燥及び/又はか焼(焼成)することができる。
【0067】
他の好ましい担体B)は、ヒドロタルサイトおよびか焼されたヒドロタルサイトである。鉱物学において、ヒドロタルサイトは、以下の理想式:
【0068】
【化4】

を有し、その構造がブルーサイトMg(OH)2の構造から誘導される天然材料である。ブルーサイトは、密集したヒドロキシルイオンからなる二層の間で金属イオンを八面体の孔隙に配置させている層構造で結晶化するが、その際、八面体の孔隙における全ての第二層のみが塞がれている。ヒドロタルサイトにおいて、マグネシウムイオンの一部をアルミニウムイオンに置き換え、これにより、層の包みにプラスの電荷がもたらされる。これは、結晶化による水と共に中間の層に配置されるアニオンによって補償される。
【0069】
かかる層構造は、マグネシウム−アルミニウムの水酸化物の場合ばかりでなく、一般に、層構造を有し、且つ下式:
【0070】
【化5】

【0071】
[但し、M(II)が2価の金属、例えばMg、Zn、Cu、Ni、Co、Mn、Ca及び/又はFeを表し、
M(III)が3価の金属、例えばAl、Fe、Co、Mn、La、Ce及び/又はCrを表し、
xが0.5間隔で0.5〜10までの数を表し、
Aが侵入型のアニオンを表し、
nが侵入型アニオンの電荷を表し、1〜8までの範囲であっても良く、通常1〜4までの範囲であり、そして
zが1〜6までの整数であり、特に2〜4までを表す。]
で表わされ混合状態の金属水酸化物の場合に見出された。使用可能な侵入型(間入型)アニオンは、有機アニオン、例えばアルコキシドアニオン、アルキルエーテルスルフェート、アリールエーテルスルフェートまたはグリコールエーテルスルフェート、無機アニオン、例えば特に炭酸塩、炭酸水素塩、硝酸塩、塩化物、硫酸塩またはB(OH)4-或いはポリオキソ金属アニオン、例えばMo7246-またはV10286-である。しかしながら、複数のかかるアニオンの混合物も含まれる場合がある。
【0072】
したがって、層構造を有するこのような混合金属水酸化物の全ては、本発明の場合、ヒドロタルサイトとして見なされる。
【0073】
ヒドロタルサイトから、か焼、すなわち加熱によってか焼ヒドロタルサイトに製造することができ、これを用いて、所望のヒドロキシル基含有量を設定することができる。更に、結晶構造も変化する。本発明によって使用されるか焼ヒドロタルサイトの製造は、通常、180℃を超える温度で行われる。250℃〜1000℃、特に400℃〜700℃の条件で3〜24時間に亘ってか焼するのが好ましい。か焼中に固体上を空気又は不活性ガスを通過させるか、或いは真空を用いることができる。
【0074】
加熱時に、天然または合成のヒドロタルサイトから最初に水を放出させ、すなわち乾燥が起こる。更に加熱時に、すなわち実際のか焼処理時に、金属水酸化物がヒドロキシル基および侵入型アニオンを取り除いて、金属酸化物に転換され、その際に、OH基または侵入型アニオン、例えば炭酸塩を依然としてか焼ヒドロタルサイト中に存在させることができる。これに対する基準は、強熱減量である。これは、2工程、すなわち最初に乾燥炉中で200℃にて30分間に亘って、その後にマッフル炉中で950℃にて1時間に亘って加熱されるサンプルによって経験される質量損失である。
【0075】
従って、成分(B)として使用されるか焼ヒドロタルサイトは、2価および3価の金属M(II)およびM(III)(但し、M(II)のM(III)に対するモル比は0.5〜10の範囲が一般的であり、0.75〜8の範囲が好ましく、特に1〜4の範囲である。)の混合酸化物である。更に、一般的な量の不純物、例えばSi、Fe、Na、CaまたはTi並びに塩化物および硫酸塩も含まれる場合がある。
【0076】
好ましいか焼ヒドロタルサイトB)は、M(II)がマグネシウムであり、M(III)がアルミニウムである混合酸化物である。かかるアルミニウム−マグネシウム混合酸化物は、Condea Chemie GmbH, Hamburgより商標名プラロックスMg(Puralox Mg)で得ることができる。
【0077】
構造的な変換が完全または実質的に完全であるか焼ヒドロタルサイトが好ましい。か焼、すなわち構造の変換を、例えばX線回折像によって確認することができる。
【0078】
使用されるヒドロタルサイト、か焼ヒドロタルサイトまたはシリカゲルは、5〜200μm、好ましくは10〜150μm、特に好ましくは15〜100μm、特に20〜70μmの平均粒径d50および一般に0.1〜10cm3/g、好ましくは0.2〜5cm3/gの細孔容積、そして30〜1000m2/g、好ましくは50〜800m2/g、特に100〜600m2/gの比表面積を有する微粒子状の粉末として用いられるのが一般的である。本発明の遷移金属錯体は、仕上げ処理された触媒組成物中の遷移金属錯体濃度が担体(B)1gあたりに、5〜200μモル、好ましくは20〜100μm、特に好ましくは25〜70μmとなるような量で用いられるのが好ましい。
【0079】
本発明による一部の遷移金属錯体は、それ自体殆ど重合活性を有していないので、良好な重合活性を示すことができるようにするために、錯体を活性化剤、すなわち成分C)と接触させる。このような理由から、触媒組成物は必要によりさらに成分C)として1種以上の活性化合物、好ましくは少なくとも1種のカチオン形成化合物C)(カチオン形成性化合物:cation-forming compound)を含む。
【0080】
遷移金属錯体A)と反応して、触媒活性、又はより活性な化合物に転化させることができる好適な化合物C)としては、例えば、アルミノキサン、非荷電の強ルイス酸、ルイス酸カチオンを有するイオン性化合物、またはカチオンとしてブレンステッド酸を有するイオン性化合物等の化合物である。
【0081】
アルミノキサンとして、例えば、WO00/31090に記載されている化合物を使用することができる。特に有用なアルミノキサンは、式(X)または(XI):
【0082】
【化6】

【0083】
[但し、基R1C〜R4Cが、相互に独立してそれぞれC1〜C6−アルキル基、好ましくは、メチル、エチル、ブチルまたはイソブチルを表わし、
lが1〜30、好ましくは5〜25の整数を表わす。]
で表わされる開鎖状(直鎖)または環状アルミノキサン化合物である。
【0084】
特に有用なアルミノキサン化合物は、メチルアルミノキサンである。
【0085】
これらのオリゴマーのアルミノキサン化合物は、トリアルキルアルミニウム溶液と水との制御された反応によって製造されるのが一般的である。このようにして得られたオリゴマーのアルミノキサン化合物は、様々な長さの直鎖状分子と環状分子の混合物の形で存在するのが一般的である。従って、上記のlの値は平均値として見なされる。アルミノキサン化合物は、他のアルキル金属、通常はアルキルアルミニウムとの混合物として存在することもある。成分C)として好適なアルミノキサン製品(調製物)は市販されている。
【0086】
更に、式(X)または(XI)におけるアルミノキサン化合物の代わりに、炭化水素基の一部を水素原子またはアルコキシ、アリールオキシ、シロキシまたはアミドの各基で置換した変性アルミノキサンを、成分C)として使用することができる。
【0087】
遷移金属錯体A)とアルミノキサン化合物を、依然として存在するアルキルアルミニウムを含むアルミノキサン化合物におけるアルミニウムの、遷移金属錯体A)における遷移金属に対する原子比が1:1〜1000:1、好ましくは10:1〜500:1、特に好ましくは20:1〜400:1の範囲になるような量で使用するのが有効であることが見出された。
【0088】
別の種類の好適な活性化合物C)は、ヒドロキシアルミノキサンである。このアルミノキサンは、例えば、1当量のアルミニウムに対して、0.5〜1.2当量の水、好ましくは0.8〜1.2当量の水をアルキルアルミニウム、特にトリイソブチルアルミニウムに、低温で、一般的には0℃未満で添加することによって製造可能である。かかる化合物及びオレフィン重合での使用法は、例えば、WO00/24787に記載されている。ヒドロキシアルミノキサン化合物におけるアルミニウムの、遷移金属錯体A)における遷移金属に対する原子比は、1:1〜100:1の範囲が一般的であり、1:1〜50:1の範囲が好ましく、特に20:1〜40:1の範囲である。ジアルキル遷移金属化合物A)を使用するのが好ましい。
【0089】
非荷電の強ルイス酸として、式(XII):
【0090】
【化7】

【0091】
[但し、M1Cが元素周期表の第13族の元素、好ましくはB、AlまたはGa、特に好ましくはBを表わし、
1C、X2CおよびX3Cがそれぞれ水素、C1〜C10−アルキル、C6〜C15−アリール、炭素原子数1〜10個のアルキル部分と炭素原子数6〜20個のアリール部分とを有するアルキルアリール、アリールアルキル、ハロアルキルまたはハロアリール、またはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくはハロアリール、特に好ましくはペンタフルオロフェニルを表わす。]
で表わされる化合物が好ましい。
【0092】
非荷電の強ルイス酸の他の例は、WO00/31090に記載されている。
【0093】
この種の成分C)として特に有用な化合物は、ボランおよびボロキシン、例えばトリアルキルボラン、トリアリールボラン、またはトリメチルボロキシンである。少なくとも2個の過フッ素化アリール基を有するボランを使用するのが特に好ましい。X1C、X2CおよびX3Cが同一である式(XII)で表わされる化合物が特に好ましく、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランが極めて好ましい。
【0094】
好適な化合物C)は、式(XII)で表されるアルミニウム又はホウ素化合物を水、アルコール、フェノール誘導体、チオフェノール誘導体又はアニリン誘導体と反応させることによって製造するのが好ましく、その際に、ハロゲン化、特に過フッ素化アルコール及びフェノールが特に重要である。特に有用な化合物の例は、ペンタフルオロフェノール、1,1−ビス(ペンタフルオロフェニル)メタノール及び4−ヒドロキシ−2,2’、3,3’、4,4’、5,5’、6,6’−ノナフルオロビフェニルである。式(XII)で表される化合物とブレンステッド酸の組み合わせ例は、特に、トリメチルアルミニウム/ペンタフルオロフェノール、トリメチルアルミニウム/1−ビス(ペンタフルオロフェニル)メタノール、トリメチルアルミニウム/4−ヒドロキシ−2,2’、3,3’、4,4’、5,5’、6,6’−ノナフルオロビフェニル、トリエチルアルミニウム/ペンタフルオロフェノール及びトリイソブチルアルミニウム/ペンタフルオロフェノール及びトリエチルアルミニウム/4,4’−ジヒドロキシ−2,2’、3,3’、5,5’、6,6’−オクタフルオロビフェニルヒドレートである。
【0095】
式(XII)で表される他の好適なアルミニウム及びホウ素化合物において、R1CがOH基を表す。この種の化合物の例は、ボロン酸及びボリン酸、特に過フッ素化アリール基を有するボリン酸、例えば(C652BOHである。
【0096】
活性化合物C)として適当な非荷電の強ルイス酸は、ボロン酸と2当量のトリアルキルアルミニウムとの反応生成物又はトリアルキルアルミニウムと2当量の酸性のフッ素化、特に過フッ素化炭化水素化合物、例えばペンタフルオロフェノール又はビス(ペンタフルオロフェニル)ボリン酸との反応生成物を含む。
【0097】
ルイス酸カチオンを有する好適なイオン性化合物には、式(XIII):
【0098】
【化8】

【0099】
[但し、M2Cが元素周期律表の第1〜16族の元素を表し、
1からQzがC1〜C28−アルキル、C6〜C15−アリール、炭素原子数1〜28個のアルキル部分と炭素原子数6〜20個のアリール部分とを有するアルキルアリール、アリールアルキル、ハロアルキルまたはハロアリール、置換基としてC1〜C10−アルキルを有していてもよいC3〜C10−シクロアルキル、ハロゲン、C1〜C28−アルコキシ、C6〜C15−アリールオキシ、シリルまたはメルカプチル基等の−1価に荷電された基を表わし、
aが1〜6の整数を表わし、
zが0〜5の整数を表わし、
dがа−zの差を表わすが、dは1以上である。]
で表わされるカチオンの塩様化合物が含まれる。
【0100】
特に有用なカチオンは、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、およびスルホニウムカチオン、更にカチオン性遷移金属錯体である。トリフェニルメチルカチオン、銀カチオンおよび1,1’−ジメチルフェロセニルカチオンが特に特記に値する。これらは、非配位の対イオンを有しているのが好ましく、特に、WO91/09882にも記載されているホウ素化合物、特にテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
【0101】
非配位アニオンを含む塩は、ホウ素またはアルミニウム化合物、例えばアルキルアルミニウムを、2個以上のホウ素またはアルミニウム原子に互いに結合させるように反応可能な第2の化合物、例えば水、および上記ホウ素またはアルミニウム化合物とイオン化したイオン性化合物を形成する第3の化合物、例えばトリフェニルクロロメタン、又は必要により塩基、好ましくは有機窒素含有塩基、例えばアミン、アニリン誘導体又は窒素の複素環式化合物と組み合わせることによって製造することもできる。更に、同様に上記のホウ素またはアルミニウム化合物と反応する第4の化合物,例えばペンタフルオロフェノールを添加することができる。
【0102】
カチオンとしてブレンステッド酸を含むイオン性化合物も同様に、非配位対イオンを有しているのが好ましい。ブレンステッド酸として、プロトン化アミンまたはアニリン誘導体が特に好ましい。好ましいカチオンは、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウム、N,N−ジメチルベンジルアンモニウム、および後の2つの誘導体である。
【0103】
WO97/36937に記載されているようなアニオン性ホウ素複素環式化合物を含む化合物、特にジメチルアニリニウムボラタベンゼンまたはトリチルボラタベンゼンも成分C)として適当である。
【0104】
好適なイオン性化合物C)は、少なくとも2個の過フッ素化アリール基を有するホウ酸塩(ボレート)を含む。N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、特にN,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートまたはトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが特に好ましい。
【0105】
2価のアニオン[(C652B−C64−B(C6522-の場合ように2個以上のボレートアニオン及び/又はボランを相互に結合させるか、又は一方のボレートをボランに結合させることも可能であり、或いはボレートアニオンを、架橋基(ブリッジ)を介して担体表面の好適な官能基に結合させることも可能である。
【0106】
他の好適な活性化合物C)は、WO00/31090に列挙されている。
【0107】
非荷電の強ルイス酸、ルイス酸カチオンを有するイオン性化合物、またはカチオンとしてブレンステッド酸を有するイオン性化合物の量は、遷移金属錯体A)に対して、0.1〜20当量が好ましく、1〜10当量が好ましい。
【0108】
好適な活性化合物C)は、ジ[ビス(ペンタフルオロフェニル)ボロキシ]メチルアランのようなホウ素−アルミニウム化合物である。この種のホウ素−アルミニウム化合物は、例えばWO99/06414に記載されている。
【0109】
上述の全ての活性化合物C)の混合物を使用することもできる。好ましい混合物は、アルミノキサン、特にメチルアルミノキサンと、イオン性化合物、特にテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンを含むイオン性化合物及び/又は非荷電の強ルイス酸、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとを含む。
【0110】
遷移金属錯体A)と活性化合物C)の両方を、溶剤、好ましくは炭素原子数6〜20個の芳香族炭化水素、特にキシレン、トルエン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンまたはこれらの混合物中で使用するのが好ましい。
【0111】
担体B)として同時に使用可能な活性化合物C)を使用することも可能である。かかる組成物は、例えば、無機酸化物をジルコニウムアルコキシドで処理し、次いで、例えば四塩化炭素を用いて塩素化することによって得られる。かかる組成物の製造法は、例えば、WO01/41920に記載されている。
【0112】
同様に広範囲の生成物は、本発明の遷移金属錯体A)を少なくとも1種の、オレフィンの重合に適当な他の触媒D)と組み合わせて用いることによって得ることもできる。従って、触媒組成物において必要により使用される成分D)としてオレフィンの重合に適当である1種以上の触媒を用いることができる。使用可能な触媒D)には、特に、チタンを基礎とする典型的なチーグラ−ナッタ触媒及び酸化クロムを基礎とする典型的なフィリップス触媒である。
【0113】
原則として、使用可能な成分D)は、有機基を含み且つA)及び必要によりB)及び/又はE)の存在下で成分C)との反応後にオレフィン重合用の活性触媒を形成する周期表第3族〜第12族の遷移金属又はランタニドの全ての化合物である。これは、通常、少なくとも1種の単座配位子(単座リガンド)又は多座配位子(多座リガンド)をシグマ結合又はパイ結合を間に介して中心原子に結合させている化合物である。好適な配位子には、シクロペンタジエニル基を含む配位子とシクロペンタジエニル基を含まない配位子の両方が含まれる。Chem. Rev. 2000, 第100巻, No 4には、オレフィンの重合に適当であるこのような化合物D)の多くを記載している。多核シクロペンタジエニル錯体もオレフィンの重合に適当である。
【0114】
別の適当な成分D)は、少なくとも1種のシクロペンタジエニル配位子を含み、一般にメタロセン錯体と称される化合物である。特に有用なメタロセン錯体は、式(XIV):
【0115】
【化9】

【0116】
[但し、M1Dがチタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン又はタングステン、又は周期表第3族の元素及びランタニドを表し、
Dがフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C15アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、−OR6D又は−NR6D7Dを表し、又は2個の基XDが置換又は無置換のジエン配位子、特に1,3−ジエン配位子を形成し、そしてXDが同一であっても又は異なっていても良く、相互に結合可能であり、
1D〜E5Dがそれぞれ炭素を表すか、又は1個を超えないE1D〜E5Dがリン又は窒素を表し、炭素を表すのが好ましく、
tがM1Dの原子価に応じて1、2又は3を表し、式(XIV)で表されるメタロセン錯体が非荷電状態となるように選択され、
6D、R7DがそれぞれC1〜C10−アルキル、C6〜C15−アリール、炭素原子数1〜10個のアルキル部分と炭素原子数6〜20個のアリール部分とを有するアルキルアリール、アリールアルキル、フルオロアルキルまたはフルオロアリールを表し、
1D〜R5Dが相互に独立して、それぞれ水素、C1〜C22−アルキル、置換基としてC1〜C10−アルキルを有していても良い5〜7員のシクロアルキルもしくはシクロアルケニル、C2〜C22アルケニル、C6〜C22アリール、炭素原子数1〜16個のアルキル部分と炭素原子数6〜21個のアリール部分とを有するアリールアルキル、NR8D2、N(SiR8D32、OR8D、OSiR8D3、SiR8D3を表し、且つ有機基R1D〜R5Dは、ハロゲンで置換されていても良く、及び/又は2個の基R1D〜R5D、特にビシナル基が相互に合体して、5員、6員又は7員環を形成しても良く、及び/又は2個のビシナル基R1D〜R5Dが相互に合体して、N、P、O及びSからなる群から選択される少なくとも1個の原子を含む5員、6員又は7員の複素環を形成しても良く、
8Dが同一であっても、異なっていても良く、それぞれC1〜C10アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C15アリール、C1〜C4アルコキシ又はC6〜C10アリールオキシを表し、
1DがXDと同義であるか、又は下式:
【0117】
【化10】

【0118】
{但し、R9D〜R13Dが相互に独立して、それぞれ水素、C1〜C22−アルキル、置換基としてC1〜C10−アルキルを有していても良い5〜7員のシクロアルキルもしくはシクロアルケニル、C2〜C22アルケニル、C6〜C22アリール、炭素原子数1〜16個のアルキル部分と炭素原子数6〜21個のアリール部分とを有するアリールアルキル、NR14D2、N(SiR14D32、OR14D、OSiR14D3、SiR14D3を表し、且つ有機基R9D〜R13Dは、ハロゲンで置換されていても良く、及び/又は2個の基R9D〜R13D、特にビシナル基が相互に合体して、5員、6員又は7員環を形成しても良く、及び/又は2個のビシナル基R9D〜R13Dが相互に合体して、N、P、O及びSからなる群から選択される少なくとも1個の原子を含む5員、6員又は7員の複素環を形成しても良く、
14Dが同一であっても又は異なっていても良く、それぞれC1〜C10アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C15アリール、C1〜C4アルコキシ又はC6〜C10アリールオキシをを表し、
6D〜E10Dがそれぞれ炭素を表すか、又は1個を超えないE6D〜E10Dがリン又は窒素を表し、炭素を表すのが好ましい。}
で表され、或いは
基R4D及びZ1Dが合体して、以下の基:
−R15Dv−A1D
{但し、R15Dが以下の
【0119】
【化11】

【0120】
(式中、R16D〜R21Dが同一であっても、異なっていても良く、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、トリメチルシリル基、C1〜C10アルキル基、C1〜C10フルオロアルキル基、C6〜C10フルオロアリール基、C6〜C10アリール基、C1〜C10アルコキシ基、C7〜C15アルキルアリールオキシ基、C2〜C10アルケニル基、C7〜C40アリールアルキル基、C8〜C40アリールアルケニル基又はC7〜C40アルキルアリール基を表し、又は2個の隣接基がこれらを含む原子と合体して、炭素原子数4〜15個の飽和又は不飽和環を形成し、
2D〜M4Dがケイ素、ゲルマニウム又はスズを表し、ケイ素を表すのが好ましい。)
を表し、
1Dが、
【0121】
【化12】

【0122】
又は無置換、置換もしくは縮合の複素環基を表し、且つ
22Dが相互に独立してそれぞれC1〜C10アルキル、C3〜C10シクロアルキル、C6〜C15アリール、C7〜C18アルキルアリール又はSi(R23D3を表し、
23Dが水素、C1〜C10−アルキル、置換基としてC1〜C4−アルキルを有していても良いC6〜C15アリール又はC3〜C10シクロアルキルを表し、
vが1、又はA1Dが無置換、置換又は縮合の複素環基の場合に0であっても良い。}
を形成し、又は
基R4D及びR12Dが相互に合体して、基−R15D−を形成する。]
で表されるメタロセン錯体である。
【0123】
1Dは、例えばブリッジR15Dと合体して、アミン、エーテル、チオエーテルまたはホスフィンを形成可能である。しかしながら、A1Dは、炭素環員の他に酸素、硫黄、窒素およびリンからなる群から選択されるヘテロ原子を含むことができる無置換、置換または縮合のヘテロ芳香族環基であっても良い。炭素の他に環原子として1〜4個の窒素原子及び/又は硫黄もしくは酸素原子を含む5員環のヘテロアリール基の例は、2−フリル、2−チエニル、2−ピロリル、3−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、3−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル、1−ピラゾリル、3−ピラゾリル、5−ピラゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、1,2,4−オキサジアゾール−3−イル、1,2,4−オキサジアゾール−5−イル、1,3,4−オキサジアゾール−2−イルまたは1,2,4−トリアゾール−3−イルである。1〜4個の窒素原子及び/又はリン原子を含むことができる6員のへテロアリール基の例は、2−ピリジニル、2−ホスファベンゾイル、3−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、2−ピラジニル、1,3,5−トリアジン−2−イル、1,2,4−トリアジン−3−イル、1,2,4−トリアジン−5−イルまたは1,2,4−トリアジン−6−イルである。5または6員環のヘテロアリール基は、C1〜C10アルキル、C6〜C10アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜10個の炭素原子を有するアルキルアリール、トリアルキルシリルまたはハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素)で置換されていても良く、または1個以上の芳香族化合物もしくはヘテロ芳香族化合物と縮合されていても良い。ベンゾ縮合の5員ヘテロアリール基の例は、2−インドリル、7−インドリル、2−クマロニル、7−クマロニル、2−チアナフテニル、7−チアナフテニル、3−インダゾリル、7−インダゾリル、2−ベンゾイミダゾリルおよび7−ベンゾイミダゾリルである。ベンゾ縮合の6員へテロアリール基の例は、2−キノリル、8−キノリル、3−シンノリル、8−シンノリル、1−フタラジル、2−キナゾリル、4−キナゾリル、8−キナゾリル、5−キノキサリル、4−アクリジル、1−フェナントリジルおよび1−フェナジルである。複素環の命名法及びナンバリング(数字付与)は、L. Fieser and M. Fieser, Lehrbuch der organischen Chemie, 第3版改訂版, Verlag Chemie, Weinheim 1957を利用する。
【0124】
式(XIV)における基XDは同一であり、好ましくはフッ素、塩素、臭素、C1〜C7アルキル、アリールアルキルを表し、特に塩素、メチル又はベンジルを表すのが好ましい。
【0125】
かかる錯体の合成は、それ自体公知の方法によって行うことができ、好ましくは適当な環式の置換炭化水素アニオンをチタン、ジルコニウム、ハフニウム又はクロムのハロゲン化物と反応させることによって行うことができる。
【0126】
式(XIV)で表されるメタロセン錯体の中で、以下の
【0127】
【化13】

【0128】
【化14】

が特に好ましい。
【0129】
式(XIVa)で表される化合物の中で、
1Dがチタン、バナジウム又はクロムを表し、
Dが塩素、C1〜C4アルキル、フェニル、アルコキシ又はアリールオキシを表し、
tが1又は2を表し、そして
1D〜R5Dがそれぞれ水素、C1〜C6−アルキルを表すか、又は2個の隣接基R1D〜R5Dが相互に合体して、置換又は無置換のベンゾ基を形成する、化合物が好ましい。
【0130】
式(XIVb)で表される化合物の中で、
1Dがチタン、ジルコニウム、バナジウム、ハフニウム又はクロムを表し、
Dがフッ素、塩素、C1〜C4アルキル又はベンジルを表すか、又は2個の基XDが置換又は無置換のブタジエン配位子を形成し、
tが、クロムの場合に0を表し、その他の場合に1又は2を表し、2を表すのが好ましく、
1D〜R5Dがそれぞれ水素、C1〜C8−アルキル、C6〜C8−アリール、NR8D2、OSiR8D3又はSi(R8D3を表し、そして
9D〜R13Dがそれぞれ水素、C1〜C8−アルキル、C6〜C8アリール、NR14D2、OSiR14D3又はSiR14D3を表し、或いは、
2個の基R1D〜R5D及び/又はR9D〜R13DをC5環と合体させて、インデニル又は置換インデニル環基を形成する、化合物が好ましい。
【0131】
シクロペンタジエニル基が同一である式(XIVb)の化合物が特に有用である。
【0132】
式(XIVb)で表される特に有用な化合物D)の例は、下記の化合物である:
ビス(シクロペンタジエニル)クロム、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1−n−ブチル−3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド及びビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、更に対応するジメチルジルコニウム化合物である。
【0133】
式(XIVc)で表される特に有用な化合物は、
15Dが、以下の
【0134】
【化15】

を表し、
1Dがチタン、ジルコニウム又はハフニウム、特にジルコニウムを表し、
Dが同一であっても又は異なっていても良く、それぞれ塩素、C1〜C4アルキル、ベンジル、フェニル又はC7〜C15アルキルアリールオキシを表す、化合物である。
【0135】
式(XIVc)で示される特に有用な化合物は、下式(XIVc’):
【0136】
【化16】

【0137】
[但し、基R’が同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、C1〜C10アルキル、C3〜C10シクロアルキル、好ましくはメチル、エチル、イソプロピル又はシクロヘキシル、C6〜C20アリール、好ましくはフェニル、ナフチル又はメシチル、C7〜C40アリールアルキル、C7〜C40アルキルアリール、好ましくは4−tert−ブチルフェニル、又は3,5−ジ−tert−ブチルフェニルまたはC8〜C40アリールアルケニルを表し、
5D及びR13Dが同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素、C1〜C6アルキル、好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、n−ヘキシル又はtert−ブチルを表し、そして
環(環基)S及びTが、同一であっても異なっていてもよく、飽和、不飽和又は部分的に飽和されている。]
で表される化合物である。
【0138】
式(XIVc’)で表されるメタロセンのインデニル又はテトラヒドロインデニル配位子は、2位、2位及び4位、4位及び7位、2位、4位及び7位、2位及び6位、2位、4位及び6位、2位、5位及び6位、2位、4位、5位及び6位、又は2位、4位、5位、6位及び7位に置換基を有すると好ましく、2位及び4位に置換基を有すると特に好ましい。置換位置を示すためには以下の命名法(番号付与)が用いられる。
【0139】
【化17】

【0140】
更に、成分D)として、ラセミ型又は擬ラセミ型の架橋ビスインデニル錯体を使用するのが好ましい。本発明の場合に「擬ラセミ型」なる用語は、2個のインデニル配位子が、錯体における他の全ての置換基を無視した場合に相互にラセミ配列状態である錯体を意味する。
【0141】
特に有用な触媒D)の(XIVc)及び(XIVc’)の例は以下の通りである:
ジメチルシランジイルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
テトラメチルエチレン−9−フルオレニル(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(3−tert−ブチル−5−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−tert−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジブロミド、
ジメチルシランジイルビス(3−メチル−5−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(3−エチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−エチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4,5−ベンズインデニル−)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4,5−ベンズインデニル)ジルコニウムジクロリド、
メチルフェニルシランジイルビス(2−メチル−4,5−ベンズインデニル)ジルコニウムジクロリド、
メチルフェニルシランジイルビス(2−エチル−4,5−ベンズインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルシランジイルビス(2−メチル−4,5−ベンズインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルシランジイルビス(2−エチル−4,5−ベンズインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルシランジイルビス(2−メチルインデニル)ハフニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4−(1−ナフチル)インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−プロピル−4−(1−ナフチル)インデニル)ジルコニウムジクロリド、
【0142】
ジメチルシランジイルビス(2−i−ブチル−4−(1−ナフチル)インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−プロピル−4−(9−フェナントリル)インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2,7−ジメチル−4−イソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4,6−ジイソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−[p−トリフルオロメチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−[3’,5’−ジメチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジエチルシランジイルビス(2−メチル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−プロピル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−イソプロピル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−n−ブチル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイルビス(2−へキシル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイル(2−イソプロピル−4−フェニルインデニル)(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイル(2−イソプロピル−4−(1−ナフチル)インデニル)(2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイル(2−イソプロピル)−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)(2−メチル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイル(2−イソプロピル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)(2−エチル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイル(2−イソプロピル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)(2−メチル−4−[3’,5’−ビス−tert−ブチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシランジイル(2−イソプロピル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)(2−メチル−4−[1’−ナフチル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、及び
エチレン(2−イソプロピル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)(2−メチル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ジルコニウムジクロリド、及び
対応のジメチルジルコニウム、ジルコニウムモノクロリドモノ(アルキルアリールオキシド)及びジルコニウムジ(アルキルアリールオキシド)化合物である。錯体は、ラセミ型で使用されるのが好ましい。
【0143】
かかる錯体の合成はそれ自体公知の方法により行われるが、好ましくは適当に置換された、環式炭化水素アニオンと、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、又はクロムのハロゲン化物との反応により行われると好ましい。適する製造法の例は、例えば、Journal of Organometallic Chemistry 369(1989), 359-370頁に記載されている。
【0144】
式(XIVd)で表される特に有用な化合物は、以下のような化合物である:
1Dがチタン又はジルコニウム、特にチタンを表し、
Dが塩素、C1〜C4アルキル又はフェニルを表すか、又は2個の基XDが置換又は無置換のブタジエン配位子を形成し、
15Dが、以下の
【0145】
【化18】

を表し、
1Dが、以下の
【0146】
【化19】

を表し、
tが1又は2を表し、2を表すのが好ましく、
1D〜R3D及びR5Dが、それぞれ水素、C1〜C10−アルキル、好ましくはメチル、C3〜C10−シクロアルキル、C6〜C15アリール、NR8D2、Si(R8D3を表し、又は2個の隣接基が炭素原子数4〜12個の環基を形成し、且つ全てのR1D〜R3D及びR5Dがメチルを表すのが特に好ましい。
【0147】
式(XIVd)で表される特に有用な錯体D)は、
ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(ベンジルアミノ)チタンジクロリド、
ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(tert−ブチルアミノ)チタンジクロリド、
ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(アダマンチル)チタンジクロリド、及び
ジメチルシランジイル(インデニル)(tert−ブチルアミノ)チタンジクロリドである。
【0148】
特に有用な式(XIVd)で表される化合物の別群は、以下のような化合物である:
1Dがチタン、バナジウム又はクロムを意味し、好ましくは酸化状態IIIであり、
Dが塩素、C1〜C4アルキル又はフェニルを意味するか、又は2個のXD基が置換又は無置換のブタジエン配位子を形成し、
15Dが、以下の
【0149】
【化20】

を表し、
1Dが、−OR22D、−NR22D2、−PR22D2を表すか、又は無置換、置換又は縮合の複素環基、特にヘテロ芳香族環基を表し、
vは1であるか、又はA1Dが無置換、置換又は縮合の複素環基を意味する場合に0又は1であっても良く、
1D〜R3D及びR5Dが、それぞれ水素、C1〜C10−アルキル、C3〜C10−シクロアルキル、C6〜C15アリール又はSi(R8D3を表し、又は2個の隣接基が炭素原子数4〜12個の環基を形成する。
【0150】
好ましい実施の形態において、A1Dは無置換、置換又は縮合のヘテロ芳香族環基であり、M1Dはクロムである。A1Dが無置換又は置換、例えばアルキル置換キノリル又はピリジル、特に8位又は2位で結合する置換、例えばアルキル置換のキノリル又はピリジルであり、そしてvが0であるのがと特に好ましく、例えば8−キノリル、8−(2−メチルキノリル)、8−(2,3,4−トリメチルキノリル)、8−(2,3,4,5,6,7−ヘキサメチルキノリル)であり、vが0であり、そしてM1Eがクロムである。
【0151】
この種の好ましい触媒D)は、
1−(8−キノリル)−2−メチル−4−メチルシクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)−3−イソプロピル−5−メチルシクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)−3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)テトラヒドロインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)インデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)−2−メチルインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)−2−イソプロピルインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)−2−エチルインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)−2−tert−ブチルインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)ベンゾインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−キノリル)−2−メチルベンゾインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−(2−メチルキノリル))−2−メチル−4−メチルシクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−(2−メチルキノリル))−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−(2−メチルキノリル))テトラヒドロインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−8−(2−メチルキノリル))インデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−(2−メチルキノリル))−2−メチルインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−(2−メチルキノリル))−2−イソプロピルインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−(2−メチルキノリル))−2−エチルインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−(2−メチルキノリル))−2−tert−ブチルインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(8−(2−メチルキノリル))ベンゾインデニルクロム(III)ジクロリド、
1−(2−ピリジルエチル)インデニルクロム(III)ジクロリド、又は
1−(8−(2−メチルキノリル))−2−メチルベンゾインデニルクロム(III)ジクロリドである。
【0152】
更に、製造が容易であることに起因して、R15DがCH=CH又は1,2−フェニレンを表し、A1Dが−NR22D2を表す化合物、及びR15DがCH2、C(CH32又はSi(CH32を表し、A1Dが無置換若しくは置換の2−若しくは8−キノリル又は無置換若しくは置換の2−ピリジルを表す化合物が好ましい。
【0153】
このような官能性のシクロペンタジエニル配位子の製造法は、以前から知られていた。これらの錯化配位子への種々の合成経路は、例えばM. Enders等によってChem. Ber. (1996), 129, 459-463頁又はP. Jutzi and U. Siemeling等によってJ. Orgmet. Chem. (1995), 500, 175-185頁に記載されている。
【0154】
金属錯体、特にクロム錯体は、適当な金属塩、例えば金属塩化物を配位子アニオンと反応させる(例えば、DE−A−19710615の実施例に類似の方法を用いる)ことによって簡易な方法で得ることができる。
【0155】
他の好適な触媒D)には、シクロペンタジエニル又はヘテロシクロペンタジエニルと縮合状態のヘテロシクリル(ヘテロシクリル(複素環式化合物)は芳香族であり、窒素及び/又は硫黄を含んでいる。)から形成される少なくとも1種の配位子を有するメタロセンが含まれる。かかる化合物は、例えばWO98/22486に記載されている。これは、特にジメチルシランジイル(2−メチル−4−フェニルインデニル)(2,5−ジメチル−N−フェニル−4−アザペンタレン)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2,5−ジメチル−N−フェニル−4−アザペンタアレン)ジルコニウムジクロリド又は(インデニル)(2,5−ジメチル−N−フェニル−4−アザペンタアレン)ジルコニウムジクロリドである。
【0156】
他の好適な触媒D)は、メタロセン化合物を、例えばジルコニウムアルコキシドで処理し、その後に例えば四塩化炭素で塩素化した無機酸化物と組み合わせた組成物である。かかる組成物の製造法は、例えばWO01/4920に記載されている。
【0157】
他の好適な触媒D)には、クロムが構造的な特徴として少なくとも1個のイミド基を有するイミドクロム化合物も含まれる。この化合物及びその製造法は、例えばWO91/09148に記載されている。
【0158】
別の好適な成分D)には、三座の巨視的な大環状配位子を含む遷移金属錯体、特に置換及び無置換の1,3,5−トリアザシクロヘキサン及び1,4,7−トリアザシクロノナンが含まれる。この種の触媒において、クロム錯体が同様に好ましい。この種の好ましい触媒は、[1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリアザシクロヘキサン]クロムトリクロリド、[1,3,5−トリエチル−1,3,5−トリアザシクロヘキサン]クロムトリクロリド、[1,3,5−トリオクチル−1,3,5−トリアザシクロヘキサン]クロムトリクロリド、[1,3,5−トリドデシル−1,3,5−トリアザシクロヘキサン]クロムトリクロリド及び[1,3,5−トリベンジル−1,3,5−トリアザシクロヘキサン]クロムトリクロリドである。
【0159】
別の好適な触媒D)は、例えば、下式XV〜XIX:
【0160】
【化21】

で表される少なくとも1種の配位子を含む遷移金属錯体であり、且つ遷移金属が、単体のTi、Zr、Hf、Sc、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Fe、Co、Ni、Pd、Pt及び希土類金属の元素から選択される。中心金属としてニッケル、鉄、コバルト又はパラジウムを有する化合物が好ましい。
【0161】
Fは、元素周期表第15族の元素、好ましくはN又はPを表し、Nが特に好ましい。分子中の2個又は3個の原子EFが同一であっても異なっていても良い。
【0162】
配位子組成物XV〜XIX内で同一であっても異なっていても良い基R1F〜R25Fは、下記の通りである:
1F及びR4Fが相互に独立して、それぞれ炭化水素基又は置換炭化水素基、好ましくは元素EFに隣接する炭素原子を少なくとも2個の炭素原子に結合させた炭化水素基を表し、
2F及びR3Fが相互に独立して、それぞれ水素、炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、R2F及びR3Fが相互に合体して、1個以上のヘテロ原子が含まれていても良い環基を形成しても良く、
6F及びR8Fが相互に独立して、それぞれ炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、
5F及びR9Fが相互に独立して、それぞれ水素、炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、
6F及びR5F又はR8F及びR9Fが相互に合体して、環基を形成しても良く、
7Fが相互に独立して、それぞれ水素、炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、2個のR7Fが相互に合体して、環基を形成しても良く、
10F及びR14Fが相互に独立して、それぞれ炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、
11F、R12F、R12F'及びR13Fが相互に独立して、それぞれ水素、炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、2個以上のジェミナル又はビシナル基R11F、R12F、R12F'及びR13Fが相互に合体して、環基を形成しても良く、
15F及びR18Fが相互に独立して、それぞれ水素、炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、
16F及びR17Fが相互に独立して、それぞれ水素、炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、
19F及びR25Fが相互に独立して、それぞれC2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分の炭素原子数1〜10個及びアリール部分の炭素原子数6〜20個のアルキルアリールを表し、且つ有機基R19F及びR25Fがハロゲンで置換されていても良く、
20F〜R24Fが相互に独立して、それぞれ水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分の炭素原子数1〜10個及びアリール部分の炭素原子数6〜20個のアルキルアリール又はSiR26F3を表し、且つ有機基R20F〜R24Fがハロゲンで置換されていても良く、そして2個のビシナル基R20F〜R24Fが相互に合体して、5〜6員環を形成しても良く、
26Fが相互に独立して、それぞれ水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分の炭素原子数1〜10個及びアリール部分の炭素原子数6〜20個のアルキルアリールを表し、そして2個の基R26Fが相互に合体して、5〜6員環を形成しても良く、
xが0又は1を表し、且つxが0である場合に式(XVI)の錯体がマイナスに荷電され、そして
yが1〜4までの整数を表し、2又は3を表すのが好ましい。
【0163】
中心金属としてFe、Co、Ni、Pd又はPtを有し、式(XV)で表される配位子を含む遷移金属錯体が特に有用である。Ni又はPdのジイミン錯体が特に好ましく、例えば以下の錯体である:
ジ(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンパラジウムジクロリド、
ジ(ジイソプロピルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンニッケルジクロリド、
ジ(2,6−ジイソプロピルフェニル)ジメチルジアザブタジエンジメチルパラジウム、
ジ(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンジメチルニッケル、
ジ(2,6−ジメチルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンパラジウムジクロリド、
ジ(2,6−ジメチルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンニッケルジクロリド、
ジ(2,6−ジメチルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンジメチルパラジウム、
ジ(2,6−ジメチルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンジメチルニッケル、
ジ(2−メチルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンパラジウムジクロリド、
ジ(2−メチルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンニッケルジクロリド、
ジ(2−メチルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンジメチルパラジウム、
ジ(2−メチルフェニル)−2,3−ジメチルジアザブタジエンジメチルニッケル、
ジフェニル−2,3−ジメチルジアザブタジエンパラジウムジクロリド、
ジフェニル−2,3−ジメチルジアザブタジエンニッケルジクロリド、
ジフェニル−2,3−ジメチルジアザブタジエンジメチルパラジウム、
ジフェニル−2,3−ジメチルジアザブタジエンジメチルニッケル、
ジ(2,6−ジメチルフェニル)アザナフテンパラジウムジクロリド、
ジ(2,6−ジメチルフェニル)アザナフテンニッケルジクロリド、
ジ(2,6−ジメチルフェニル)アザナフテンジメチルパラジウム、
ジ(2,6−ジメチルフェニル)アザナフテンジメチルニッケル、
1,1’−ビピリジルパラジウムジクロリド、
1,1’−ビピリジルニッケルジクロリド、
1,1’−ビピリジルジメチルパラジウム、
1,1’−ビピリジルジメチルニッケル。
【0164】
特に有用な化合物(XIX)には、J. Am. Chem. Soc. 120, 4049頁以降 (1998)、J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1998, 849及びWO98/27124に記載されている化合物も含まれる。EFは窒素を表すのが好ましく、(XIX)のR19F及びR25Fは、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−もしくは2,6−ジメチルフェニル、−ジクロロフェニルもしくは−ジブロモフェニル、2−クロロ−6−メチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−もしくは3,4,5−トリメチルフェニルを表すのが好ましく、特に2,3−もしくは2,6−ジメチルフェニル、−ジイソプロピルフェニル、−ジクロロフェニルもしくは−ジブロモフェニル及び2,4,6−トリメチルフェニルを表すのが好ましい。これと同時に、R20F及びR24Fが水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ベンジル又はフェニルを表すのが好ましく、特に水素又はメチルを表す。R21F及びR23Fが水素を表すのが好ましく、R22Fが水素、メチル、エチル又はフェニル、特に水素を表すのが好ましい。遷移金属Fe、Co又はNi、特にFeを有する配位子XIXの錯体が好ましい。
【0165】
以下の錯体が特に好ましい:
2,6−ジアセチルピリジンビス(2,4−ジメチルフェニルイミン)鉄ジクロリド、
2,6−ジアセチルピリジンビス(2,4,6−トリメチルフェニルイミン)鉄ジクロリド、
2,6−ジアセチルピリジンビス(2−クロロ−6−メチルフェニルイミン)鉄ジクロリド、
2,6−ジアセチルピリジンビス(2,6−ジイソプロピルフェニルイミン)鉄ジクロリド、
2,6−ジアセチルピリジンビス(2,6−ジクロロフェニルイミン)鉄ジクロリド、
2,6−ピリジンジカルボキシアルデヒドビス(2,6−ジイソプロピルフェニルイミン)鉄ジクロリド、
2,6−ジアセチルピリジンビス(2,4−ジメチルフェニルイミン)コバルトジクロリド、
2,6−ジアセチルピリジンビス(2,4,6−トリメチルフェニルイミン)コバルトジクロリド、
2,6−ジアセチルピリジンビス(2−クロロ−6−メチルフェニルイミン)コバルトジクロリド、
2,6−ジアセチルピリジンビス(2,6−ジイソプロピルフェニルイミン)コバルトジクロリド、
2,6−ジアセチルピリジンビス(2,6−ジクロロフェニルイミン)コバルトジクロリド、及び
2,6−ピリジンジカルボキシアルデヒドビス(2,6−ジイソプロピルフェニルイミン)コバルトジクロリド。
【0166】
触媒D)として、イミノフェノキシド錯体を使用することも可能である。この錯体の配位子を、例えば、置換又は無置換のサリチルアルデヒド及び第一級アミン、特に置換又は無置換のアリールアミンから製造することができる。pi系(pi環基)に1個以上のヘテロ原子を含むpi配位子、例えばボレートベンゼン配位子、ピロリルアニオン又はホスホリルアニオンを有する遷移金属錯体を、触媒D)として使用することも可能である。
【0167】
触媒D)として好適な他の錯体は、二座又は三座のキレート配位子を有する錯体である。かかる配位子において、例えば、エーテル官能基がアミン又はアミド官能基に結合し、アミドがピリジン等のヘテロ芳香族化合物に結合する。
【0168】
このような成分A)〜D)の組み合わせにより、例えば、二モードの生成物を製造するか、又はコモノマーをその場で生成することが可能となる。オレフィンの重合に一般的な少なくとも1種の他の触媒D)、必要により1種以上の活性化合物C)の存在下に少なくとも1種の遷移金属錯体A)を使用するのが好ましい。本実施の形態において、触媒A)及びD)の組み合わせに応じて、1種以上の活性化合物C)が有効なこともある。重合触媒D)も同様に担持されていても良く、そして本発明の錯体A)と同時に又は任意の順序で用いることができる。例えば、遷移金属錯体A)および重合触媒D)を一緒に担体B)又は種々の担体B)に施すことができる。種々の触媒の混合物を成分D)として使用することもできる。遷移金属錯体A)の重合触媒D)に対するモル比は、通常、1:100〜100:1の範囲であり、1:10〜20:1の範囲が好ましく、1:1〜10:1の範囲が特に好ましい。
【0169】
更に触媒組成物は、他の成分E)(追加成分E))として、式(XX):
【0170】
【化22】

【0171】
[但し、MGがLi、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、亜鉛を表し、Li、Na、K、Mg、ホウ素、アルミニウム又は亜鉛を表すのが好ましく、
1Gが水素、C1〜C10−アルキル、C6〜C15−アリール、炭素原子数1〜10個のアルキル部分と炭素原子数6〜20個のアリール部分とを有するアルキルアリールまたはアリールアルキルを表わし、
2GとR3Gがそれぞれ、水素、ハロゲン、C1〜C10−アルキル、C6〜C15−アリール、炭素原子数1〜20個のアルキル部分と炭素原子数6〜20個のアリール部分とを有するアルキルアリール、アリールアルキルまたはアルコキシを表わし、又はC1〜C10−アルキル若しくはC6〜C15−アリールを有するアルコキシを表し、
Gが1〜3の整数を表わし、
GおよびtGが0〜2の範囲の整数を表し、且つrG+sG+tGの合計がMGの原子価に対応する。]
で表される金属化合物を含んでいても良い。
【0172】
尚、成分E)は、成分C)と同一でない。式(XX)で表わされる種々の金属化合物の混合物を使用することも可能である。
【0173】
式(XX)で表わされる金属化合物の中で、MGがリチウム、マグネシウム、ホウ素又はアルミニウムを表し、R1GがC1〜C20−アルキルを表す金属化合物が好ましい。
【0174】
式(XX)で表わされる特に好ましい金属化合物は、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリド、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、n−ブチル−n−オクチルマグネシウム、n−ブチル−n−ヘプチルマグネシウム、特にn−ブチル−n−オクチルマグネシウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジメチルアルミニウム塩化物(クロリド)、ジメチルアルミニウムフッ化物(フロリド)、メチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、ジエチルアルミニウムクロリドおよびトリメチルアルミニウム、およびこれらの混合物である。アルキルアルミニウムとアルコールの部分加水分解生成物も使用することができる。
【0175】
金属化合物E)を使用する場合、触媒組成物中において、遷移金属錯体A)における遷移金属に対する式(XX)の化合物におけるMGのモル比が2000:1〜0.1:1、好ましくは800:1〜0.2:1、特に好ましくは100:1〜1:1になるような量で存在しているのが好ましい。
【0176】
一般に、固体触媒を式(XX)で表される他の金属化合物E)(固体触媒の調製で使用される金属化合物E)と異なっていてもよい。)を一緒に、オレフィンの重合又は共重合用触媒組成物の成分として使用する。特に固体触媒が所定の活性化合物C)を含んでいない場合、触媒組成物は、固体触媒に加えて、固体触媒に含まれる活性化合物C)と同一又は異なっていてもよい1種以上の活性化合物C)を更に含むことができる。
【0177】
本発明の触媒組成物を製造するために、少なくとも1種の成分A)及び/又は成分C)を担体B)上に物理吸着または化学反応、すなわち各成分の担体表面の反応基との共有結合によって固定させるのが好ましい。担体成分B)、成分A)および成分C)を組み合わせる順序は、重要ではない。成分A)とC)は、相互に独立して、または同時に、または予め混合した形で成分B)に添加することができる。各処理工程の後に固体を適当な不活性溶剤、例えば脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素で洗浄することができる。
【0178】
好ましい形態において、遷移金属錯体A)と活性化合物C)とを、通常は溶解性の反応生成物、付加物、または混合物を得る好適な溶剤中で接触させる。次いで、このようにして得られた生成物(調製物)を予備処理した担体B)と接触させ、そして溶剤を完全にまたは部分的に除去する。これにより、易流動性粉末の形の固体を得るのが好ましい。上述の処理を工業的に実施する場合の例は、WO96/00243、WO98/40419またはWO00/05277に記載されている。別の好ましい形態では、まず担体B)に活性化合物C)を施し、次いで、この担持された活性化合物に遷移金属錯体A)を接触させる。
【0179】
成分D)も同様に、成分A)及び必要によりB)、C)及びE)と任意の順序で反応させることができる。最初に、D)を成分C)と接触させ、その後、成分A)及びB)、更にC)と上述したように処理するのが好ましい。別の好ましい実施の形態において、固体触媒を上述したように成分A)、B)及びC)から調製して、これを重合中、重合の開始時又は重合の直前に成分E)と接触させる。最初にE)を重合すべきα−オレフィンと接触させ、次いで上述したように成分A)、B)およびC)を含む触媒固体を添加するのが好ましい。
【0180】
遷移金属錯体A)を、重合すべきオレフィンと接触させる前又は接触させた後、成分C)及び/又は成分D)と接触させることができる。オレフィンとの混合前に1種以上の成分C)を用いて予備活性化し、この混合物をオレフィンと接触させた後に同一であっても又は異なっていても良い成分C)及び/又はD)を更に添加することも可能である。予備活性化は、10〜100℃の範囲で行われるのが一般的であり、20〜80℃の範囲が好ましい。
【0181】
最初に触媒組成物をα−オレフィン、好ましくは直鎖状C2〜C10−1−アルケン、特にエチレンまたはプロピレンと予備重合させ、次いで得られた予備重合固体触媒を実際の重合で使用することもできる。予備重合で使用された固体触媒の、この固体触媒上に重合されたモノマーに対する質量比は、1:0.1〜1:1000の範囲が一般的であり、1:1〜1:200の範囲が好ましい。
【0182】
更に、変性成分としての少量のオレフィン、好ましくはα−オレフィン、例えばビニルシクロヘキサン、スチレンまたはフェニルジメチルビニルシラン、帯電防止化合物または好適な不活性化合物、例えばワックスまたはオイルを添加剤として触媒組成物の製造中または製造後に添加することができる。遷移金属化合物B)に対する添加剤のモル比は、通常、1:1000〜1000:1の範囲であり、1:5〜20:1の範囲が好ましい。
【0183】
本発明の触媒組成物は、オレフィンの重合、特にα−オレフィン、すなわち末端に二重結合を有する炭化水素の重合に適当である。好適なモノマーには、官能化オレフィン性不飽和化合物、例えばアクロレイン、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルまたはアミド誘導体、例えばアクリレート、メタクリレートまたはアクリロニトリル、またはビニルエステル、例えば酢酸ビニルも含まれる。アリール置換α−オレフィンを含むオレフィン性の非極性化合物を使用するのが好ましい。特に好ましいα−オレフィンは、直鎖状または分枝状のC2〜C12−1−アルケン、特に直鎖状のC2〜C10−1−アルケン、例えばエテン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、または分枝状のC2〜C10−1−アルケン、例えば4−メチル−1−ペンテン、共役または非共役のジエン、例えば1,3−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、または芳香族ビニル化合物、例えばスチレンまたは置換スチレンである。種々のα−オレフィンの混合物を重合することも可能である。エテン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンおよび1−デセンからなる群から選択される少なくとも1種のオレフィンを重合するのが好ましい。
【0184】
好適なオレフィンには、二重結合が、1個以上の環基を含むことができる環構造の一部であるオレフィンも含まれる。例としては、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、およびメチルノルボルネン、並びにジエン、例えば5−エチリデン−2−ノルボルネン、ノルボルナジエンまたはエチルノルボルナジエンが挙げられる。
【0185】
2種以上のオレフィンの混合物を重合することも可能である。公知の一部の鉄及びコバルト錯体と対照的に、本発明の遷移金属錯体は、高級α−オレフィンの場合であっても良好な重合活性を示すので、その共重合に対する適合性が特に重要なものとなる。特に、本発明の遷移金属錯体を、エテン又はプロペンの重合又は共重合に用いることができる。エテンの重合におけるコモノマーとして、C3〜C8−α−オレフィン又はノルボルネン、特に1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンおよび/または1−オクテンを使用するのが好ましい。少なくとも50モル%のエテンを含むモノマー混合物を使用するのが好ましい。プロピレンの重合における好ましいコモノマーは、エテンおよび/またはブテンである。
【0186】
重合は、オレフィンの重合に使用される慣用的な反応器内で、塊状(バルク)、懸濁、気相、または超臨界媒体中で公知の方法で行うことができる。重合は、回分法(バッチ式)により行なうことができ、または、好適には連続的に1段階以上の工程で行なうことができる。管状反応器またはオートクレーブでの高圧重合法、溶液法、懸濁法、撹拌気相法または気相流動層法の全てが可能である。
【0187】
重合は、通常、−60〜350℃の温度および0.5〜4000バールの圧力下で0.5〜5時間、好適には0.5〜3時間の平均滞留時間の条件で行なわれる。重合を行なうための有利な圧力および温度範囲は、重合法に依存するのが一般的である。通常、1000〜4000バール、特に2000〜3500バールの圧力下で行なわれる高圧重合法の場合、一般に、高い重合温度も設定する。高圧重合法における有利な温度範囲は、200〜320℃、特に220〜290℃である。低圧重合法の場合、ポリマーの軟化温度より少なくとも数℃低い温度に設定されるのが一般的である。この重合法は、特に、50〜180℃、好ましくは70〜120℃の温度で行われるのが好ましい。懸濁重合法の場合、重合は、通常、懸濁媒中で、好ましくはイソブタン等の不活性炭化水素又は炭化水素の混合物中で、或いはその他にモノマーそれ自体中で行なわれる。重合温度は、通常、−20〜115℃の範囲であり、圧力は、通常、1〜100バールの範囲である。懸濁液の固体含有量は、一般的には10〜80%の範囲である。重合は、例えば、撹拌器付きオートクレーブ中で回分法、または例えば管状反応器、好ましくはループ反応器中で連続的に行なうことができる。US−A−3242150およびUS-A-3248179に記載されているようなフィリップスPF法を用いるのが特に好ましい。気相重合は、30〜125℃の範囲で行なわれるのが一般的である。
【0188】
上述の重合法の中で、気相重合、特に気相流動床反応器内での気相重合、溶液重合、および懸濁重合、特にループ式反応器および撹拌器付きタンク反応器内での懸濁重合が特に好ましい。気相重合は、循環ガスの一部を露点未満に冷却して、2相混合物として反応器に戻すような凝縮形態または過凝縮形態で行われても良い。2領域の重合領域を相互に結合し、そしてポリマーをこれらの2領域に交互に何度も通過させる多領域反応器を用いることも可能である。2領域は、相互に異なる重合条件を有していてもよい。かかる反応器は、例えば、WO97/04015に記載されている。様々な重合方法、または同一の重合方法を、所望により直列に接続して、例えばHostalen法にて重合カスケードを形成して行なうこともできる。2種以上の同一又は異なっていてもよい方法を用いて反応器を平行に配置することも可能である。更に、モル質量調整剤、例えば水素、または帯電防止剤等の一般的な添加物を重合に使用することができる。
【0189】
本発明の遷移金属錯体及びこの錯体を含む触媒組成物は、組み合わせ法によって製造可能であり、或いはその重合活性は、組み合わせ法を用いて試験可能である。
【0190】
本発明の方法により、オレフィンのポリマーを製造することができる。本発明を説明するために本実施の形態で使用される“重合”なる用語は、ポリマー化およびオリゴマー化の両方を意味する。すなわち、本発明の方法により、約56〜10000000の範囲のモル質量Mwを有するオリゴマーおよびポリマーを製造することができる。
【0191】
本発明の触媒組成物を使用して製造されたオレフィンポリマーは、良好な機械的特性に起因して、フィルム、繊維および成形体の製造に特に有用である。
【0192】
本発明の触媒組成物により、極めて高いモル質量を有するポリマーが得られる。更に、本発明の触媒組成物は、アルミノキサンの、有機遷移金属化合物に対するモル比が比較的低い場合であっても良好な活性を示す。
【実施例】
【0193】
全ての合成及び重合を、窒素保護雰囲気下で行った。
【0194】
密度[g/cm3]を、ISO1183に準拠して測定した。
【0195】
モル質量分布及びこの分布から誘導される平均値Mn、Mw及びMw/Mnの測定を、ドイツ工業規格55672に基づく方法で高温ゲル透過クロマトグラフィによって、下記の条件下で行った(PE標準を用いる較正):
溶剤:1,2,4−トリクロロベンゼン、
流速:1ml/分、
温度:140℃。
【0196】
DSC融点を、ISO3146に準拠して測定した。
【0197】
シュタウジンガー(Staudinger)指数(η値)[dl/g]を、溶剤としてのデカリンを用い、130℃で自動ウッベローデ粘土計(Lauda PVS 1)によって測定した(ISO1628、130℃、0.001g/mlのデカリン)。
【0198】
ポリマー鎖における1000個の炭素原子あたりのメチル側鎖の数(CH3/1000C)を、IRによって測定した。
【0199】
NMRスペクトルは、Bruker DRX200(1H:200.13MHz;31P:81.01MHz)又はBruker AC300(1H:300.13MHz;31P:121.49MHz)で測定した。使用された溶剤の完全に重水素置換されていない部分のシグナルは、1H−NMRスペクトルの内部標準として働いた。D2O中の30%のH3PO4が、31P−NMRスペクトル測定用の外部標準として働いた。全てのシグナルを、対応する文献値に較正した。
【0200】
マススペクトルを、Finnigan MAT 8230機器に記録し、高分解マススペクトルを、Micromass CTD ZAB-2F VH分光計で測定した。
【0201】
結合GC/MSマススペクトルを、HP5971MSDを有するHP5890IIガスクロマトグラフ(HP−5カラム、5%のフェニルシリコーンを有するメチルシリコーン、30m×0.25mm×0.25μm)を使用して記録した。
【0202】
出発化合物のイミダゾールは市販されているものを使用し(Aldrich社)、ジアルコキシ保護誘導体を、N. J. Curtis, R. S. Brown等によりJ. Org. Chem. 1980, 45, 4038に記載されているように調製した。
【0203】
以下の表での略語は、下記の通りである:
cat.: 触媒
t(poly): 重合時間
polymer: 形成されたポリマーの量
Mw: 質量平均モル質量
Mn: 数平均モル質量
denstiy: ポリマーの密度
prod.: 1時間あたり、使用された触媒(遷移金属錯体)1ミリモルあたりに得られたポリマー(g単位)による触媒の生産性
DSC:DSCによって決定した融点。
【0204】
[実施例1]
1.1:トリス(1−ベンジルイミダゾール−2−イル)ホスフィンの調製(製造)
3.16g(20ミリモル)の1−ベンジルイミダゾールを250mlのジエチルエーテルに溶解させた溶液を−50℃に冷却し、そして8mlのn−BuLi溶液(ヘキサン中において2.5M、20ミリモル)を滴下した。−50℃で1時間撹拌した後、混合物を1時間で室温まで暖めた。次いで、溶液を−78℃まで冷却し、0.91g(6.6ミリモル)の三塩化リンを8mlのジエチルエーテルに溶解させた溶液をゆっくりと滴下した。滴下後、これにより得られた懸濁液を−78℃で更に2時間撹拌し、室温とし、その後、室温で更に14時間撹拌した。このようにして得られた反応混合物をろ過し、微粒子状の残留物を冷たいジエチルエーテルで数回に分けて洗浄し、高真空下で乾燥し、そしてエタノールから再結晶化させた。これにより得られた固体を100mlのジクロロメタンに懸濁させ、50mlの濃アンモニアと1時間撹拌した。有機相を、シリカゲルの薄層によってろ過し、その後、ジクロロメタンで数回に分けて洗浄した。溶剤を蒸留除去し、固体を高真空下で乾燥した。これにより、1.6g(3.2ミリモル)(48%)のトリス(1−ベンジルイミダゾール−2−イル)ホスフィンが得られた。
【0205】
【数1】

【0206】
1.2:トリクロロトリス(1−ベンジルイミダゾール−2−イル)ホスフィンチタン(III)の調製
0.06g(0.4ミリモル)の三塩化チタン(III)を20mlのジクロロメタンに溶解させた溶液を、室温条件下、0.3g(0.6ミリモル)のトリス(1−ベンジルイミダゾール−2−イル)ホスフィンを5mlのジクロロメタンに溶解させた溶液に撹拌しながらゆっくり添加した。このようにして得られた溶液を室温で12時間撹拌することにより、緑がかったオリーブ色の沈殿が形成し、これをろ過し、次いでヘキサンで洗浄し、そして高真空下で乾燥した。これにより、0.24g(90%)のトリクロロトリス(1−ベンジルイミダゾール−2−イル)ホスフィンチタン(III)を緑がかったオリーブ色の固体として得た。
【0207】
【数2】

【0208】
[実施例2]
2.1:トリス(1−エチルヘキシルイミダゾール−2−イル)ホスフィンの調製
10ミリモルのエチルヘキシルイミダゾールを100mlのジエチルエーテルに溶解させた溶液を−40℃に冷却し、4mlのn−BuLi溶液(ヘキサン中で2.5M、10ミリモル)を滴下した。−40℃で1時間撹拌した後、この溶液を−78℃に冷却し、3.33ミリモルの三塩化リンを10mlのジエチルエーテルに溶解させた溶液をゆっくりと滴下した。滴下後、これにより得られた懸濁液を−78℃で更に2時間撹拌し、室温にし、その後、室温条件下で更に14時間撹拌した。このようにして得られた反応混合物をろ過し、微粒子状の残留物を冷たいジエチルエーテルで数回に分けて洗浄し、高真空下で乾燥し、そしてエタノールから再結晶化させた。このようにして得られた固体を100mlのジクロロメタンに懸濁させ、50mlの濃アンモニアと1時間撹拌した。有機相を、シリカゲルの薄層によってろ過し、その後、ジクロロメタンで数回に分けて洗浄した。固体を蒸留除去し、固体を高真空下で乾燥した。これにより、トリス(1−エチルヘキシルイミダゾール−2−イル)ホスフィンを12%の収率で得た。
【0209】
【数3】

【0210】
2.2:トリクロロトリス(1−エチルヘキシルイミダゾール−2−イル)ホスフィンチタン(III)の調製
25mlのジクロロメタンを、0.158g(1.02ミリモル)の三塩化チタン(III)と0.682g(1.2ミリモル)のトリス(1−エチルヘキシルイミダゾール−2−イル)ホスフィンの混合物に室温で添加した。反応混合物を室温で12時間撹拌し、ろ過し、これにより得られた溶液を1mlの体積に蒸発させ、次いでヘキサンと混合した。これにより、緑がかったオリーブ色の沈殿が形成し、これをろ過し、次いでテトラヒドロフランとヘキサンの混合物で洗浄し、そして高真空下で乾燥した。これにより、0.72g(0.99ミリモル、97%)のトリクロロトリス(1−エチルヘキシルイミダゾール−2−イル)ホスフィンチタン(III)を緑がかったオリーブ色の固体として得た。
【0211】
【数4】

【0212】
[実施例3]
トリクロロトリス(1−ベンジルイミダゾール−2−イル)ホスフィンバナジウム(III)の調製
0.11g(0.3ミリモル)のバナジウム(III)トリクロリド−トリス(テトラヒドロフラン)を5mlのジクロロメタンに溶解させた溶液を、0.19g(0.38ミリモル)のトリス(1−ベンジルイミダゾール−2−イル)ホスフィン(実施例1.1)を5mlのジクロロメタンに溶解させた溶液に撹拌しながら室温でゆっくりと添加した。このようにして得られた溶液を室温で4時間撹拌し、ジクロロメタンを蒸留除去し、残留物をテトラヒドロフランで洗浄し、そして高真空下で乾燥した。これにより、0.16g(0.24ミリモル、80%)のトリクロロトリス(1−ベンジルイミダゾール−2−イル)ホスフィンバナジウム(III)をスミレ色の固体として得た。
【0213】
【数5】

【0214】
[実施例4]
トリクロロトリス(1−ベンジルイミダゾール−2−イル)ホスフィンクロム(III)の調製
0.31g(0.62ミリモル)のトリス(1−ベンジルイミダゾール−2−イル)ホスフィン(実施例1.1)を1.5mlのジクロロメタンに溶解させた溶液を、0.18g(0.48ミリモル)のクロム(III)トリクロリド−トリス(テトラヒドロフラン)を25mlのジクロロメタンに溶解させた溶液に撹拌しながら室温でゆっくりと添加した。このようにして得られた溶液を室温で14時間撹拌し、ジクロロメタンを蒸留除去し、残留物をテトラヒドロフランで洗浄し、そして高真空下で乾燥した。これにより、0.25g(0.38ミリモル、79%)のトリクロロトリス(1−ベンジルイミダゾール−2−イル)ホスフィンクロム(III)を緑色の固体として得た。
【0215】
【数6】

【0216】
[実施例5]
トリクロロトリス(1−エチルヘキシルイミダゾール−2−イル)ホスフィンクロム(III)の調製
0.038g(0.1ミリモル)のクロム(III)トリクロリド−トリス(テトラヒドロフラン)と0.2g(0.35ミリモル)のトリス(1−エチルヘキシルイミダゾール−2−イル)ホスフィン(実施例2.1を参照乞う)の混合物に10mlのテトラヒドロフランを室温で添加した。反応混合物を室温で12時間撹拌し、ろ過し、これにより得られた溶液を1mlの体積まで蒸発させ、次いで5mlのヘキサンと混合した。これにより、淡緑色の沈殿が形成し、これをろ過し、次いでヘキサンで洗浄し、そして高真空下で乾燥した。これにより、0.069g(95%)のトリクロロトリス(1−エチルヘキシルイミダゾール−2−イル)ホスフィンクロム(III)を緑色の固体として得た。
【0217】
【数7】

【0218】
[実施例6]
6.1:トリス(1−n−ブチルイミダゾール−2−イル)ホスフィンの調製
4.05g(40ミリモル)のトリエチルアミンと20mlのピリジンの混合物に4.97g(40ミリモル)の1−n−ブチルイミダゾールを溶解させた溶液を0℃まで冷却し、そして1.83g(13.3ミリモル)の三塩化リンを5mlのピリジンに溶解させた溶液をゆっくりと滴下した。滴下後、混合物を室温とし、その後、室温条件下で更に14時間撹拌した。溶剤を蒸留除去し、このようにして得られた固体を温かいベンゼンで抽出し、シリカゲルによりろ過し、次いで抽出剤を蒸留除去した。このようにして得られた油性の残留物を20mlのTHFに溶解させ、0.6g(14.1ミリモル)の塩化リチウムと混合し、そして混合物を数時間撹拌した。これにより形成したLiCl錯体をフリットでろ過し、冷たいテトラヒドロフランで洗浄し、高真空下で乾燥し、CH2Cl2に懸濁させ、そして濃アンモニアと1時間撹拌することによって複合体を形成した。有機相を、少量のシリカゲルによりろ過し、溶剤を蒸留除去し、そして固体を高真空下で乾燥した。これにより、3.99g(9.9ミリモル)(74%)のトリス(1−n−ブチルイミダゾール−2−イル)ホスフィンを無色の油の形で得た。
【0219】
【数8】

【0220】
6.2:トリクロロトリス(1−n−ブチルイミダゾール)ホスフィンクロム(III)の調製
0.62g(1.55ミリモル)のトリス(1−n−ブチルイミダゾール−2−イル)ホスフィンを5mlのジクロロメタンに溶解させた溶液を、0.46g(1.22ミリモル)のクロム(III)トリクロリド−トリス(テトラヒドロフラン)を10mlのジクロロメタンに溶解させた溶液に撹拌しながら室温でゆっくりと添加した。このようにして得られた溶液を室温で14時間撹拌し、ジクロロメタンを蒸留除去し、そして残留物をテトラヒドロフランで洗浄した。残留物を、ジクロロメタン/ヘキサンから再結晶化させた。これにより、0.52g(0.93ミリモル、76%)のトリクロロトリス(1−n−ブチルイミダゾール)ホスフィンクロム(III)を緑色の固体として得た。
【0221】
【数9】

【0222】
[実施例7]
7.1:トリス(1−n−ブチル−4−フェニルイミダゾール−2−イル)ホスフィンの調製
10ミリモルのエチルヘキシルイミダゾールを100mlのジエチルエーテルに溶解させた溶液を−40℃まで冷却し、4mlのn−BuLi溶液(ヘキサン中において2.5M、10ミリモル)を滴下した。−40℃で1時間撹拌した後、溶液を−78℃まで冷却し、そして3.33ミリモルの三塩化リンを10mlのジエチルエーテルに溶解させた溶液をゆっくりと滴下した。滴下後、これにより得られた懸濁液を−78℃で更に2時間撹拌し、室温とし、その後、室温で更に14時間撹拌した。このようにして得られた反応混合物をろ過し、微粒子状の残留物を、冷たいジエチルエーテルで数回に分けて洗浄し、高真空下で乾燥し、そしてエタノールから再結晶化させた。このようにして得られた固体を100mlのジクロロメタンに懸濁させ、50mlの濃アンモニアと1時間撹拌した。有機相を、シリカゲルの薄層によってろ過し、その後、ジクロロメタンで数回に分けて洗浄した。溶剤を蒸留除去し、固体を高真空下で乾燥した。これにより、トリス(1−n−ブチル−4−フェニルイミダゾール−2−イル)ホスフィンを72%の収率で得た。
【0223】
【数10】

【0224】
7.2:トリクロロトリス(1−n−ブチル−4−フェニルイミダゾール−2−イル)ホスフィンクロム(III)の調製
0.053g(0.14ミリモル)のクロム(III)トリクロリド−トリス(テトラヒドロフラン)を25mlのジクロロメタンに溶解させた溶液に、0.088g(0.14ミリモル)のトリス(1−n−ブチル−4−フェニルイミダゾール)ホスフィンを撹拌しながら室温で添加した。このようにして得られた溶液を室温で12時間撹拌し、ジクロロメタンを蒸留除去し、残留物をヘキサンで洗浄し、そして高真空下で乾燥した。トリクロロトリス(1−n−ブチル−4−フェニルイミダゾリル)ホスフィンクロム(III)を緑色の固体として定量的収率で得た。
【0225】
【数11】

【0226】
[実施例8]
8.1:トリス(4(5)−tert−ブチルイミダゾール−2−イル)ホスフィンの調製
9.18g(46.3ミリモル)の1−ジメトキシメチル−4−tert−ブチルイミダゾールを100mlのテトラヒドロフランに溶解させた溶液を−40℃まで冷却し、18.5mlのn−BuLi溶液(ヘキサン中において2.5M、46.3ミリモル)を滴下した。−40℃で1時間撹拌した後、溶液を−78℃まで冷却し、2.12g(15.4ミリモル)の三塩化リンを10mlのテトラヒドロフランに溶解させた溶液をゆっくりと滴下した。滴下後、これにより得られた懸濁液を、−78℃で更に2時間撹拌し、室温とし、その後、室温で更に14時間撹拌した。このようにして得られた反応混合物から溶剤を蒸留除去し、残留物を100mlのジクロロメタンと混合し、その後、50mlの濃アンモニアと混合し、そして相分離が生じるまで撹拌した。有機相をシリカゲルの薄層によってろ過し、その後、ジクロロメタンで数回に分けて洗浄した。固体を蒸留除去し、残留物を100mlのアセトン/水の50:50混合物と混合した。7日後、生成物が細かい白色固体として沈殿し、そしてこれをろ過し、減圧下に乾燥した。これにより、2.33g(5.8ミリモル)(37.8%)のトリス(4(5)−tert−ブチルイミダゾール−2−イル)ホスフィンを得た。
【0227】
【数12】

【0228】
8.2:トリクロロトリス(4(5)−tert−ブチルイミダゾール−2−イル)ホスフィンクロム(III)の調製
0.36g(0.8ミリモル)のトリス(4(5)−tert−ブチルイミダゾール−2−イル)ホスフィンを25mlのテトラヒドロフランに溶解させた溶液を、0.3g(0.79ミリモル)のクロム(III)トリクロリド−トリス(テトラヒドロフラン)を10mlのテトラヒドロフランに溶解させた溶液に撹拌しながら室温で添加した。このようにして得られた溶液を室温で12時間撹拌し、溶剤を蒸留除去し、残留物をヘキサンで洗浄し、そして高真空下で乾燥した。これにより、0.42g(94%)のトリクロロトリス(1−n−ブチル−4−フェニルイミダゾリル)ホスフィンクロム(III)を緑色の固体として得た。
【0229】
【数13】

【0230】
[実施例9〜16]
[重合]
表1に示された量(mg)の触媒を、焼き固め処理が施され且つ窒素が充填された250mlのシュレンクフラスコに計量導入し、そして触媒を、撹拌しながら室温で100mlのトルエンに懸濁させた。メチルアルミノキサンをトルエンに溶解させた1.0mlの10%溶液(約1.4ミリモルのAl)を添加し、そして混合物を数分間撹拌した。その後、この溶液にエテンを表1に示された時間に亘って通過させた。気体の導入が終了した後、シュレンクフラスコを窒素で短時間フラッシュし、そして反応混合物を、濃塩酸をメタノールに溶解させた溶液(1:2の割合)と混合して、加水分解させた。このようにして得られたポリマーをろ過し、塩酸のメタノール溶液で数回に分けて洗浄し、そして乾燥炉中で110℃にて12時間乾燥し、その後、計量した。生成物の特性を明らかにするために、融点、質量及びC/H比を測定した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、そしてガスクロマトグラフ/質量分光計で低分子量のポリマー成分について分析した。
【0231】
ポリマーのろ過により得られたろ液を、GC−MS測定器を用いて低分子量ポリマー成分に関して分析した。ろ液のGC−MS分析では、低分子量のポリマー生成物又はシクロヘキサン等の環式トリマーを示していなかった。
【0232】
【表1】

【0233】
a)融点は、Buechi機器を用いて測定された。
【0234】
[実施例17〜19]
[重合]
接触温度計、テフロン(登録商標)製ブレードを有する撹拌器、加熱マントル及び気体導入管を具備する1Lの四ッ口フラスコ中で、重合をアルゴン下に40℃にて行った。適量のMAO(トルエン中における10%濃度溶液、Cr:Alは表2に対応)を、表2に示された量の適当な錯体を250mlのトルエンに溶解させた溶液に添加し、そして混合物を水浴で40℃まで加熱した。実施例19での共重合の場合、3mlのヘキセンを、エチレンの導入直前に添加した。その後、この混合物に、大気圧下で約20〜40L/時の流速にてエチレンを通過させた。エチレンの一定の流速下で1時間後、HClのメタノール溶液(15mlの濃塩酸を50mlのメタノールに溶解)を添加することによって重合を停止させた。次いで、250mlのメタノールを添加し、これにより得られた白色のポリマーをろ過し、メタノールで洗浄し、そして70℃にて乾燥した。
【0235】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I):
(Z)M (I)
[但し、Mが元素周期表第3族、第4族、第5族又は第6族の遷移金属を表し、
Zが、以下の式(II):
【化1】

{但し、AがCR1、SiR1又はPを表し、
1が水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分の炭素原子数が1〜10個であり、アリール部分の炭素原子数が6〜20個のアルキルアリール、NR92、N(SiR932、OH、OSiR93、SiR93又はハロゲンを表し、
1〜L3が相互に独立して、それぞれ
【化2】

(式中、E1〜E6がそれぞれ炭素又は窒素を表し、
1〜E6が窒素の場合にはpは0を表し、E1〜E6が炭素の場合にはpは1を表し、
2〜R8が相互に独立して、それぞれ水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分の炭素原子数が1〜10個であり、アリール部分の炭素原子数が6〜20個のアルキルアリール、NR92、N(SiR932、OR9、OSiR93、SiR93又はハロゲンを表し、且つ有機基R2〜R8が、ハロゲンで置換されていても良く、そして2個のビシナル基R2〜R8が相互に合体して、5又は6員環を形成するか及び/又は2個のビシナル基R2〜R8が相互に合体して、N、P、O及びSからなる群から選択される少なくとも1個の原子を含む複素環を形成しても良い。)を表し、
9が相互に独立して、それぞれ水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール又はアルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールを表し、そして2個のジェミナル基R9が相互に合体して、5又は6員環を形成しても良い。}
で表されるリガンドを表す。]
で表される構造的特徴を有する遷移金属錯体。
【請求項2】
以下の式(V):
(Z)MXk (V)
[但し、Mが元素周期表第3族、第4族、第5族又は第6族の遷移金属を表し、
Zが、以下の式(II):
【化3】

{但し、AがCR1、SiR1又はPを表し、
1が水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分の炭素原子数が1〜10個であり、アリール部分の炭素原子数が6〜20個のアルキルアリール、NR92、N(SiR932、OH、OSiR93、SiR93又はハロゲンを表し、
1〜L3が相互に独立して、それぞれ
【化4】

(式中、E1〜E6がそれぞれ炭素又は窒素を表し、
1〜E6が窒素の場合にはpは0を表し、E1〜E6が炭素の場合にはpは1を表し、
2〜R8が相互に独立して、それぞれ水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分の炭素原子数が1〜10個であり、アリール部分の炭素原子数が6〜20個のアルキルアリール、NR92、N(SiR932、OR9、OSiR93、SiR93又はハロゲンを表し、且つ有機基R2〜R8が、ハロゲンで置換されていても良く、そして2個のビシナル基R2〜R8が相互に合体して、5又は6員環を形成するか及び/又は2個のビシナル基R2〜R8が相互に合体して、N、P、O及びSからなる群から選択される少なくとも1個の原子を含む複素環を形成しても良い。)を表し、
9が相互に独立して、それぞれ水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール又はアルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールを表し、そして2個のジェミナル基R9が相互に合体して、5又は6員環を形成しても良い。}
で表されるリガンドを表し、
Xが相互に独立して、それぞれフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、NR1X2X、OR1X、SR1X、SO31X、OC(O)R1X、CN、SCN、β−ジケトネート、CO、BF4-、PF6-又は嵩高い非配位アニオンを表し、
1X、R2Xが相互に独立して、それぞれ水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール又はSiR3X3を表し、且つ有機基R1X、R2Xがハロゲン又は窒素若しくは酸素含有基で置換されても良く、そして2個の基R1X、R2Xが相互に合体して、5又は6員環を形成しても良く、
3Xが相互に独立して、それぞれ水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール又はアルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールを表し、そして2個の基R3Xが相互に合体して、5又は6員環を形成しても良く、
kが1、2又は3を表す。]
を有する請求項1に記載の遷移金属錯体。
【請求項3】
MがMAを表し、ZがZAを表し、そして以下の式(III):
(Z)AA (III)
[但し、MAが元素周期表第3族、第4族、第5族又は第6族の遷移金属を表し、
Aが、以下の式(IV):
【化5】

{但し、AAがCR1A、SiR1A又はPを表し、
1Aが水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分の炭素原子数が1〜10個であり、アリール部分の炭素原子数が6〜20個のアルキルアリール、NR11A2、N(SiR11A32、OH、OSiR11A3、SiR11A3又はハロゲンを表し、
2A〜R10Aが相互に独立して、それぞれ水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール、アルキル部分の炭素原子数が1〜10個であり、アリール部分の炭素原子数が6〜20個のアルキルアリール、NR11A2、N(SiR11A32、OR11A、OSiR11A3、SiR11A3又はハロゲンを表し、且つ有機基R2A〜R10Aが、ハロゲンで置換されていても良く、そして2個のビシナル基R2A〜R10Aが相互に合体して、5又は6員環を形成するか及び/又は2個のビシナル基R2A〜R10Aが相互に合体して、N、P、O及びSからなる群から選択される少なくとも1個の原子を含む複素環を形成しても良く、
11Aが相互に独立して、それぞれ水素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルケニル、C6〜C20アリール又はアルキル部分に1〜10個の炭素原子を有し、アリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールを表し、そして2個のジェミナル基R11Aが相互に合体して、5又は6員環を形成しても良い。}
で表されるリガンドを表す。]
で表される構造的特徴を有する請求項1又は2に記載の遷移金属錯体。
【請求項4】
A又はAAがPを表す請求項1〜3のいずれか1項に記載の遷移金属錯体。
【請求項5】
M又はMAがチタン、ジルコニウム、バナジウム又はクロムを表す請求項1〜4のいずれか1項に記載の遷移金属錯体。
【請求項6】
置換基R2A、R5A及びR8Aがそれぞれ同一であり、置換基R3A、R6A及びR9Aがそれぞれ同一であり、置換基R4A、R7A及びR10Aがそれぞれ同一である請求項3〜5のいずれか1項に記載の遷移金属錯体。
【請求項7】
A)請求項1〜6のいずれか1項に記載の少なくとも1種の遷移金属錯体、
B)必要により、有機又は無機担体、
C)必要により、1種以上の活性化合物、
D)必要により、オレフィンの重合に適当な他の触媒、
E)必要により、1種以上の、周期表第1族、第2族又は第13族の金属化合物、を含むオレフィンの重合用の触媒組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の触媒組成物を含み、且つ該触媒組成物に、1種以上の直鎖のC2〜C10−1−アルケンを、触媒組成物に対して1:0.1〜1:1000のモル比で重合させた予備重合触媒組成物。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の触媒組成物をオレフィンの重合又は共重合に使用する方法。
【請求項10】
請求項7又は8に記載の触媒組成物の存在下にオレフィンを重合又は共重合することによるポリオレフィンの製造方法。

【公表番号】特表2006−528951(P2006−528951A)
【公表日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529870(P2006−529870)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005373
【国際公開番号】WO2004/104052
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(500585878)バーゼル、ポリオレフィン、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング (35)
【Fターム(参考)】