説明

三次元地図表示装置および三次元地図表示プログラム

【課題】 三次元地図を表示する場合、特に水平方向の視野角を大きく設定しても、歪みを抑制しつつ画面中心付近を相対的に大きく変形させることによってドライバーの現実の見え方に近づけ、三次元表示によって生じる視認性の低下を防止することができる三次元地図表示装置および三次元地図表示プログラムを提供する。
【解決手段】 道路地図情報を記憶する記憶手段4と、現在位置Pを検出する位置検出手段2と、現在位置Pを基準とする表示範囲内の道路地図情報を記憶手段4から取得して三次元画像に変換処理する画像変換処理手段72と、三次元化された道路画像を表示する画像表示手段5とを有しており、画像変換処理手段72は、道路地図情報から得られる三次元座標を、現在位置Pを中心とする仮想立体上に投影した後、さらに、描画平面上に平行投影することにより道路画像を変形して三次元化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の画面上に、三次元地図を表示する技術に関し、特に、水平方向の視野角を大きく確保して表示した場合であっても画面中心付近の視認性の低下を防ぐ三次元地図表示装置および三次元地図表示プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車走行の便宜を図る装置としてカーナビゲーション装置が知られている。このカーナビゲーション装置は、GPS(Global Positioning System)センサ等により自車の現在位置を検出し、CD−ROM等の記憶媒体に記録された地図データから目的地へ向かう経路を読み出し、画面上に道路や建物等が描画された地図を表示するものである。
【0003】
ところで、最近のカーナビゲーション装置等では、二次元地図だけでなく三次元地図で表示することも可能となり、必要に応じて画面を切り換えることにより三次元地図で表示し、現在地周辺を容易に把握できるようになってきた。例えば、描画する視点をドライバーの視点や上空からの視点に置き、ドライバーが実際に見る景観に近い三次元表示や遠方まで見渡せるような鳥瞰表示が採用されている。
【0004】
このような三次元地図の表示技術として、例えば、特開2003−263102号公報に記載の地図表示装置が提案されている(特許文献1)。この地図表示装置は、三次元地図を表示する場合、視線を斜めから眺めた風景となるため、建物、道路、地形等の地図構成物が他の地図構成物に陰影されて、それらの関連情報(名称、案内等の情報)の視認性が低下するという問題を解決することを目的とするものである。そして、このような目的を解決するために、透視変換処理や陰面消去処理を施したり、地図構成物の表示領域に基づいて、当該地図構成物の関連情報の表示領域を設定し、関連情報を地図構成物の変化に追随させて常に見やすい位置に表示して、視認性の低下を防止することが提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−263102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、カーナビゲーション装置に許容される画面の大きさには限度があるため、従来の三次元の描画に変換する手法では、逆にドライバーの見え方と相違する部分が生じ、視認性が低下してしまう場合がある。例えば、上記特許文献1に記載された発明を含め、従来の三次元地図表示においては、一般に、水平方向における視野角が約90°前後に設定されている。このため、約180°近くある人間の視野角に比べて表示範囲が狭く、ドライバーにはまだ見えている建物や施設が表示画面から次々に消えてしまうという問題がある。
【0007】
そこで、そのような違和感を解消するために、視野角を大きく設定することが考えられるが、通常の三次元表示は透視投影法により描画されているため、水平方向の視野角を大きく設定するほど、画面の中心部付近が小さく圧縮されてしまい描画が潰れた表示になってしまう。例えば、図5(a)に示すように、透視投影法による三次元地図は、左右近傍の建物は奥方向へ異常に長く表示され、その奥隣りの建物は小さすぎる。また、建物の間に存在する交差点はほとんど潰れて線状になってしまい、走行中のドライバーがチラッと見ても交差点の存在を把握することができない。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、三次元地図を表示する場合、特に水平方向の視野角を大きく設定しても、歪みを抑制しつつ画面中心付近を相対的に大きく変形させることによってドライバーの現実の見え方に近づけ、三次元表示によって生じる視認性の低下を防止することができる三次元地図表示装置および三次元地図表示プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る三次元地図表示装置の特徴は、道路地図情報を記憶する記憶手段と、現在位置を検出する位置検出手段と、前記現在位置を基準とする表示範囲内の前記道路地図情報を前記記憶手段から取得して三次元画像に変換処理する画像変換処理手段と、三次元化された道路画像を表示する画像表示手段とを有しており、前記画像変換処理手段は、前記道路地図情報から得られる三次元座標を、前記現在位置を中心とする仮想立体上に投影した後、さらに、描画平面上に平行投影することにより道路画像を変形して三次元化する点にある。
【0010】
また、本発明において、前記画像変換処理手段は、前記仮想立体が球体であるとき、前記描画平面上に平行投影される座標を(X,Y)、前記現在位置を原点とする前記三次元座標を(x,y,z)とすると、以下の式
X=x/√(x+y+z
Y=y/√(x+y+z
により、三次元画像に変換処理することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る三次元地図表示プログラムの特徴は、道路地図情報を記憶する記憶手段と、現在位置を検出する位置検出手段と、前記現在位置を基準とする表示範囲内の前記道路地図情報を前記記憶手段から取得して三次元画像に変換処理する画像変換処理手段と、三次元化された道路画像を表示する画像表示手段としてコンピュータを実行させるとともに、前記画像変換処理手段は、前記道路地図情報から得られる三次元座標を、前記現在位置を中心とする仮想立体上に投影した後、さらに、描画平面上に平行投影することにより道路画像を変形して三次元化するようにコンピュータを実行させる点にある。
【0012】
また、本発明において、前記画像変換処理手段は、前記仮想立体が球体であるとき、前記描画平面上に平行投影される座標を(X,Y)、前記現在位置を原点とする前記三次元座標を(x,y,z)とすると、以下の式
X=x/√(x+y+z
Y=y/√(x+y+z
により、三次元画像に変換処理するようにコンピュータを実行させることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、三次元地図を表示する場合、特に水平方向の視野角を大きく設定しても、歪みを抑制しつつ画面中心付近を相対的に大きく変形させることによってドライバーの現実の景観に近づけ、三次元表示によって生じる視認性の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る三次元地図表示装置1および三次元地図表示プログラムの一実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態における三次元地図表示装置1を示すブロック図である。なお、本実施形態ではカーナビゲーション装置を例に説明するが、ユーザが携行する携帯型ナビゲーション装置等、様々なナビゲーション装置に適用できる。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の三次元地図表示装置1は、主として、自車の現在位置Pを検出するための位置検出手段2と、目的地S等を入力するための入力手段3と、道路地図情報や各種のプログラムを記憶するための記憶手段4と、道路地図を表示するためのモニタ等の画像表示手段5と、この画像表示手段5に表示する画像データを格納するための画像メモリ6と、これら各構成部を制御するとともに、各種の演算処理を行う演算処理手段7とから構成されている。
【0016】
各構成手段についてより詳細に説明すると、位置検出手段2は、車両の現在位置Pを検出するものであり、車両の走行速度を検出する車速センサや車両の進行方向を検出する方位センサ、あるいはGPS(Global Positioning System)衛星から受信した緯度・経度情報に基づいて現在位置Pを特定するGPSセンサ等により構成されている。入力手段3は、プッシュボタンや表示画面上のタッチセンサ等により構成されており、目的地S等の入力や表示設定の変更等に使用される。
【0017】
記憶手段4は、DVD(Digital Versatile Disc)やハードディスク等から構成されており、道路情報の他、建物等の目標物情報や、右折・左折指示等の交通情報を含む道路地図情報が記憶されている。また、本実施形態の表示処理を実行するための三次元地図表示プログラムが格納されている。画像メモリ6は、RAM(Random Access Memory)等により構成されており、演算処理手段7により適宜加工処理された画像データを格納する。
【0018】
画像表示手段5は、LCD(Liquid Crystal Display)等から構成されており、画像メモリ6に格納された画像データに基づいて道路地図や目標物等を表示するものである。本実施形態の画像表示手段5は、図2に示すように、下方から順に、三次元表示エリア51と、二次元固定縮尺表示エリア52と、二次元可変縮尺表示エリア53とから構成されている。そして、現在位置Pから目的地Sまでの全経路を現在位置Pからの適当な距離に応じて分割し、各表示エリア内に表示するようになっている。各表示エリアの境界部分では、各道路の末端を連続的に繋ぎ合わせており、現在位置Pから目的地Sまでの誘導経路Uが左右中央線Oに沿うように連続的に表示される。
【0019】
ここで各表示エリアについて詳述しておくと、三次元表示エリア51は、現在位置Pから後述する描画範囲内にある第1通過地点Qまでの経路情報を三次元地図で表示するエリアである。二次元固定縮尺表示エリア52は、前記第1通過地点Qから数km先の第2通過地点Rまでの経路情報を固定縮尺で描画した二次元地図で表示するエリアである。また、二次元可変縮尺表示エリア53は、前記第2通過地点Rから目的地Sまでの経路情報を可変縮尺で描画した二次元地図で表示するエリアである。そして、本実施形態では、三次元表示エリア51内に、所定の変換手法によって描画処理を施した三次元地図を表示するようになっている。
【0020】
演算処理手段7は、CPU(Central Processing Unit)等により構成されており、記憶手段4に格納されている三次元地図表示プログラムに基づいて各構成部を制御するとともに、各種のデータや設定情報を取得して、画像データを適宜加工処理するものである。本実施形態の演算処理手段7は、図1に示すように、主として、経路探索部71と、画像変換処理部72と、二次元地図描画部73とを有している。
【0021】
各構成部について、より詳細に説明すると、経路探索部71は、位置検出手段2から自車の現在位置Pを取得するとともに、入力手段3により設定された目的地Sを取得し、現在位置Pから目的地Sまでの誘導経路Uを算出するものである。なお、目的地Sが設定されていない場合には、図示しない目的地予測部により目的地Sを予測し自動的に設定するようにしてもよい。この目的地予測部は、例えばドライバーの走行頻度が高いルートを記憶しておいたり、あるいは一般的な統計から走行頻度の高いルートを記憶しておき、現在の走行ルートと照合することにより自動的に目的地Sを予測設定するようになっている。
【0022】
画像変換処理部72は、現在位置Pから所定の描画範囲内に存在する道路地図情報を記憶手段4から取得し、三次元地図を描画するものである。また、二次元地図描画部73は、誘導経路Uに沿って第1通過地点Qから目的地Sまでの道路地図を作成するものである。具体的には、図2に示すように、経路探索部71によって算出された誘導経路Uのうち、第1通過地点Qから所定距離先の第2通過地点Rまでの道路地図情報を記憶手段4から取得し、固定縮尺により二次元地図を描画する。また、第2通過地点Rから目的地Sまでの誘導経路Uについては、道路地図情報を記憶手段4から取得し可変縮尺により二次元地図を描画する。
【0023】
以下、画像変換処理部72による三次元地図の具体的な描画方法について説明する。画像変換処理部72は、まず、位置検出手段2から車両の現在位置Pと進行方向を取得するとともに、描画範囲を設定するための描画範囲データを取得する。本実施形態では、図3に示すように、水平方向における視野角が約150°の描画範囲が設定されている。また、奥行きは、50〜100mに設定することで、ドライバーから見える景観に近い三次元地図が描画される。なお、描画範囲データは、図示しないメモリ手段に格納されており、ドライバーにより適宜設定・変更可能になっている。
【0024】
つぎに、画像変換処理部72は、現在位置P、進行方向および描画範囲データに基づいて描画範囲を決定し、この描画範囲内に存在する道路地図情報を記憶手段4から取得する。なお、本実施形態では、ユーザによって目的地Sが入力されて誘導経路Uが算出されている場合を想定している。しかしながら、目的地Sが設定されていない場合であっても、現在位置P、進行方向および描画範囲データさえあれば描画範囲が決定され得る。
【0025】
そして、画像変換処理部72は、取得した道路地図情報から得られる三次元空間上の各点を現在位置Pを中心とする仮想立体上、本実施形態では仮想球体上に投影する。具体的には、各点の三次元座標から現在位置Pを基準とする三次元ベクトルV(x,y,z)を算出し、この三次元ベクトルを以下の数式(1),(2)により二次元ベクトルv(θ,Φ)に極座標変換する。
θ=arctan(x/z) ・・・数式(1)
Φ=arctan(y/z) ・・・数式(2)
【0026】
ここで、図4に示すように、三次元空間上の点P,Q,Rを例に挙げて説明すると、各点P,Q,Rは、極座標変換されることにより、現在位置Pを中心とする半径rの仮想球体上に投影され、点P,Q,Rに変換される。これら各点P,Q,Rの二次元ベクトルv(θ,Φ)のうち、θ成分は水平方向の位置を表し、Φ成分は鉛直方向の位置を表している。
【0027】
そして、画像変換処理部72は、さらに、極座標変換後の各点P,Q,Rを、三次元地図を表示するための描画平面上に平行投影する。具体的には、極座標変換で得られた各点の二次元ベクトルv(θ,Φ)に対し、sinフィルタを適用することにより、描画平面上の点P,Q,Rの座標(X,Y)を算出する。なお、本実施形態において、描画平面は、描画視点から描画方向に延びる視線に垂直な平面であるため、各点P,Q,Rは、描画平面上に正射影される。したがって、描画平面上に正射影された各点の座標(X,Y)は、最終的に、以下の数式(3),(4)により算出される。
X=x/√(x+y+z) ・・・数式(3)
Y=y/√(x+y+z) ・・・数式(4)
【0028】
以上の画像変換処理により、画面の中心部が相対的に大きくデフォルメされた三次元地図が描画される。ここで、本実施形態の三次元地図における変形の効果を従来の三次元地図等と比較して説明する。図5(a)は、図3に示した描画範囲内を従来の透視投影法により描画した三次元地図であり、図5(b)は、極座標変換後に二次元平面に広げて描画した三次元地図であり、図5(c)は、本実施形態による画像変換処理を施して描画した三次元地図である。
【0029】
図5(a)に示すように、従来の透視投影法による描画では、視野角の正接に比例して描画平面が拡大するため、描画される三次元地図の中心部が非常に小さく圧縮されてしまうことがわかる。このため、両側の建物が異常に奥行きが長く表現されるとともに、奥側の建物が極端に小さくなる。さらに交差点が存在するにもかかわらずほとんど把握できない。
【0030】
また、図5(b)に示すように、極座標変換のみを施した三次元地図では、中心部の圧縮はやや解消されるものの、歪みが大きくなって直線部分が屈曲してしまう。また、交差点の表示や奥側の建物の景観等、ドライバーが実際に見るであろう景観との相違による違和感が解消されていない。さらに、描画処理において逆三角関数を使用するため、計算量が多くなり描画処理速度が遅くなるおそれがある。
【0031】
これに対し、本実施形態による三次元地図は、図5(c)に示すように、画像の歪みが効果的に抑制されている。画像の中心部の描画は大きくデフォルメされて見やすく、画像の左右端部の不要な情報が間引かれるように変形されている。このため、図5(a)や図5(b)と比較すれば、画面中心部に存在する交差点の状況が格段に把握し易くなっており、ほぼドライバーが見る実際の景観にも一致するものである。また、sinフィルタを適用することによって、計算式が上記数式(3),(4)のように簡素化されるため、極座標変換のみを施す場合と比べて描画処理速度が向上する。
【0032】
なお、上述した本実施形態では、三次元空間上の各点を仮想球体上に投影しているが、これに限られるものではない。例えば、投影する立体を球形に近い多面体や楕円体等の適当な仮想立体にしてもよい。例えば、多面体の場合、図6に示すように、画角を5つの部分視錐体V1〜V5に分割する。そして、各部分視錐体Vについてレンダリングを行うことで、三次元空間上の各点を対応する部分視錐体Vに投影する。そして、各部分視錐体Vに対応する描画平面上の部分領域A1〜A5に平行投影する。以上の描画処理により、広い画角であっても自然な三次元地図を描画することができる。ただし、この場合、各部分領域Aの境界が微分不能であるため、連結部分が不自然になってしまうおそれがあるし、1つの三次元地図を描画するのに部分視錐体Vの数だけレンダリング処理を行う必要があるため、描画処理速度が遅延してしまうおそれがある。このような問題を解消するためには、仮想球体正射影の変換処理を行う必要がある。
【0033】
また、本実施形態では、水平方向および鉛直方向のそれぞれに対して画像変換処理を施しているが、これに限られるものではなく、少なくとも水平方向成分に対して、画像変換処理を施せばよい。これにより、高さ方向成分はそのままでも、水平方向成分がデフォルメされるため、中心部が見易くなる。換言すれば、円柱状の仮想立体に投影することでもある。そして、鉛直方向の座標はsinフィルタを適用せずにそのまま極座標変換のみで描画平面に投影してもよい。これは鉛直方向、つまり高さ方向の視野角はそれ程大きく取られないので画像の中央部に与える影響が小さく、ドライバーの視認性の低下に与える影響もそれ程大きくはないとも考えられるからである。
【0034】
つぎに、本実施形態の三次元地図表示プログラムにより実行される三次元地図表示装置1の作用について、図7のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0035】
まず、ドライバーが本実施形態の三次元地図表示装置1を利用する場合、演算処理手段7により記憶手段4に格納されている三次元地図表示プログラムを起動する(ステップS1)。これにより、画像表示手段5に図示しないメニュー画面が表示されるので、ドライバーは入力手段3を用いて所望の目的地Sを入力する(ステップS2)。このとき、上述した描画範囲データ等の各種の設定を行うようにしてもよい。つづいて、演算処理手段7は、GPS信号に基づいて位置検出手段2が検出した車両の現在位置Pを取得する(ステップS3)。本実施形態では、位置検出手段2が所定時間毎に車両の位置を検出しているため、その周期に合わせて演算処理手段7によって車両が移動したかどうかが判定される(ステップS4)。
【0036】
ステップS4において、車両が移動していないものと演算処理手段7が判定すると(ステップS4:NO)、後述するステップS12へと進み、車両の移動が検出されるまで、同じ道路地図を画像表示手段5に表示する。一方、演算処理手段7が車両の移動を認識すると(ステップS4:YES)、ステップS5へと進み、経路探索部71が、ステップS2で入力された目的地Sと、ステップS3で検出された現在位置Pとを取得し、この現在位置Pから目的地Sまでの誘導経路Uを探索する(ステップS5)。
【0037】
つづいて、画像変換処理部72は、位置検出手段2が検出した車両の現在位置P、および方位センサが検出した車両の進行方向を取得するとともに、三次元で描画する範囲を定めるために描画範囲データを取得する(ステップS6)。そして、これら現在位置P、進行方向および描画範囲データに基づいて三次元画像の描画範囲を決定し、この描画範囲内の道路地図情報を取得する(ステップS7)。
【0038】
つづいて、画像変換処理部72は、取得した道路地図情報から描画対象各点の三次元座標を読み出し、これら各点に極座標変換を適用することにより、現在位置Pを中心とする仮想球体上に投影する(ステップS8)。そして、投影後の各点に水平方向および鉛直方向のそれぞれにsinフィルタを適用し、描画平面上に正射影することにより、三次元地図を描画する(ステップS9)。また、二次元地図描画部73は、第1通過地点Qから第2通過地点Rまでの誘導経路Uを固定縮尺の二次元地図で描画するとともに、第2通過地点Rから目的地Sまでの誘導経路Uを可変縮尺の二次元地図で描画する(ステップS10)。
【0039】
そして、演算処理手段7は、画像変換処理部72により描画された三次元地図を取得するとともに、二次元地図描画部73によって描画された固定縮尺二次元地図および可変縮尺二次元地図を取得し、これら各道路地図の経路末端が連続的に接続するように連結した道路地図を画像データとして画像メモリ6内に格納する(ステップS11)。
【0040】
なお、上記ステップS10は、本実施形態のように、画像表示手段5を三次元表示エリア51と、二次元固定縮尺表示エリア52と、二次元可変縮尺表示エリア53とから構成している場合にのみ行われる処理である。したがって、三次元地図のみを表示させる場合、ステップS10の処理は行われず、ステップS11では、画像変換処理部72により描画された三次元地図だけを画像データとして画像メモリ6内に格納する。
【0041】
つぎに、画像表示手段5は、画像メモリ6に格納された画像データに基づいて、道路地図を表示する(ステップS12)。これにより、三次元表示エリア51には、本実施形態による処理が施された描画範囲内の三次元地図が表示されるとともに、二次元固定縮尺表示エリア52には、第1通過地点Qから第2通過地点Rまでの二次元地図が表示され、二次元可変縮尺表示エリア53には、第2通過地点Rから目的地Sまでの二次元地図が表示される。
【0042】
そして、演算処理手段7は図示しない計時手段を有しており、三次元地図表示プログラムが実行されている間は、常に、所定時間を経過したか否か判別している(ステップS13)。そして、所定時間が経過していないときは(ステップS13:NO)、所定時間が経過するまで待機する。一方、所定時間が経過したことを判別すると(ステップS13:YES)、ステップS3へと戻り、再び位置検出手段2から車両の現在位置Pを取得する。画像表示手段5に表示される道路地図は、前記所定時間を短時間に設定するほど車両の移動に合わせて円滑に更新される。
【0043】
その後、演算処理手段7は、新たに取得した現在位置Pと前回の現在位置Pとを比較して、車両が移動したかどうか判定する(ステップS4)。この結果、車両が移動していないと判定されると(ステップS4:NO)、ステップS12へと進み、車両の移動が検出されるまで同じ道路地図を表示する。一方、車両の移動が検出されると(ステップS4:YES)、上述したステップS5〜ステップS12の処理が繰り返し実行され、新たな現在位置Pから描画範囲内の三次元地図および第1通過地点Qから目的地Sまでの二次元地図を表示するようになっている。これにより、画像表示手段5においては、車両の移動に合わせてリアルタイムで道路地図が更新される。
【0044】
以上のような本実施形態の三次元地図表示装置1によれば、
1.従来問題となっている三次元地図の中央付近の視認性不良を解消し、水平方向の視野角を大きく設定した三次元地図を描画したとしても、歪みを抑制しつつ、画像の中心部を相対的に大きく変形できてユーザの視認性の向上を図ることができる。
2.簡単な計算式で変換処理できるため、極座標変換のみを施す場合と比べて描画処理速度を向上することができる等の効果を奏する。
【0045】
なお、本発明に係る三次元地図表示装置1は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0046】
例えば、上述した実施形態では、本発明に係る三次元地図表示装置1をカーナビゲーション装置に適用した例について説明したが、これに限られるものではなく、携帯電話等の携帯端末に実装される歩行者用のナビゲーション装置に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る三次元地図表示装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本実施形態の画像表示手段を示す模式図である。
【図3】本実施形態における描画範囲を示す模式図である。
【図4】本実施形態の画像変換処理を説明するための図である。
【図5】図3の描画範囲内の三次元地図であって、(a)透視投影法で描画した三次元地図、(b)極座標変換を施した三次元地図、および(c)本実施形態による三次元地図を示す模式図である。
【図6】本実施形態において、多面体に投影した場合の描画方法を説明する模式図である。
【図7】本実施形態の三次元地図表示装置およびプログラムの動作を説明するフローチャート図である。
【符号の説明】
【0048】
1 三次元地図表示装置
2 位置検出手段
3 入力手段
4 記憶手段
5 画像表示手段
6 画像メモリ
7 演算処理手段
51 三次元表示エリア
52 二次元固定縮尺表示エリア
53 二次元可変縮尺表示エリア
71 経路探索部
72 画像変換処理部
73 二次元地図描画部
O 左右中央線
P 現在位置
Q 第1通過地点
R 第2通過地点
S 目的地
U 誘導経路
A 部分領域
V 部分視錐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路地図情報を記憶する記憶手段と、
現在位置を検出する位置検出手段と、
前記現在位置を基準とする表示範囲内の前記道路地図情報を前記記憶手段から取得して三次元画像に変換処理する画像変換処理手段と、
三次元化された道路画像を表示する画像表示手段と
を有しており、
前記画像変換処理手段は、前記道路地図情報から得られる三次元座標を、前記現在位置を中心とする仮想立体上に投影した後、さらに、描画平面上に平行投影することにより道路画像を変形して三次元化することを特徴とする三次元地図表示装置。
【請求項2】
請求項1において、前記画像変換処理手段は、前記仮想立体が球体であるとき、前記描画平面上に平行投影される座標を(X,Y)、前記現在位置を原点とする前記三次元座標を(x,y,z)とすると、以下の式
X=x/√(x+y+z
Y=y/√(x+y+z
により、三次元画像に変換処理することを特徴とする三次元地図表示装置。
【請求項3】
道路地図情報を記憶する記憶手段と、
現在位置を検出する位置検出手段と、
前記現在位置を基準とする表示範囲内の前記道路地図情報を前記記憶手段から取得して三次元画像に変換処理する画像変換処理手段と、
三次元化された道路画像を表示する画像表示手段と
してコンピュータを実行させるとともに、
前記画像変換処理手段は、前記道路地図情報から得られる三次元座標を、前記現在位置を中心とする仮想立体上に投影した後、さらに、描画平面上に平行投影することにより道路画像を変形して三次元化するようにコンピュータを実行させることを特徴とする三次元地図表示プログラム。
【請求項4】
請求項3において、前記画像変換処理手段は、前記仮想立体が球体であるとき、前記描画平面上に平行投影される座標を(X,Y)、前記現在位置を原点とする前記三次元座標を(x,y,z)とすると、以下の式
X=x/√(x+y+z
Y=y/√(x+y+z
により、三次元画像に変換処理するようにコンピュータを実行させることを特徴とする三次元地図表示プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−243458(P2006−243458A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−60304(P2005−60304)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(399063552)株式会社シーズ・ラボ (5)
【Fターム(参考)】