説明

両面蒸着膜の製造方法、両面蒸着膜中間体、両面蒸着膜及び磁気記録媒体用支持体

【課題】プラスチック基板フィルムの両面に高品位の金属含有蒸着膜を成膜する技術を提供する。
【解決手段】蒸着ドラム11を有する蒸着装置1aで、非磁性プラスチック基板フィルム16の両面に金属含有蒸着膜を形成する両面蒸着膜の製造方法であって、該基板フィルムの一方の面(A面)に金属含有蒸着膜を形成した後に、該金属含有蒸着膜上に有機物膜を形成し、次いで、該基板フィルムの他方の面(B面)に金属含有蒸着膜を形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面蒸着膜の製造方法、両面蒸着膜中間体及び両面蒸着膜に関し、生産性の優れた両面蒸着膜の製造方法、その中間体及び両面蒸着膜に関する。特に、磁気記録媒体用途として温湿度による変動やドライブ内テンションの変動による影響を抑えることができ寸法安定性に優れた磁気記録媒体用支持体を効率良く、かつ高品位に製造できる方法、磁気記録媒体用支持体中間体、該方法により製造され、又は該中間体より得られる磁気記録媒体用支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気テープの分野では、パーソナルコンピュータ、ワークステーション等の普及に伴って、外部記憶媒体としてコンピュータデータを記録するための磁気記録媒体の研究が盛んに行われている。このような用途の磁気記録媒体の実用化に際しては、特にコンピュータの小型化、情報処理能力の増大と相俟って、記録装置の大容量化、小型化を満足するために、記録容量の向上が強く要求される。
【0003】
より高い記録密度でかつより大きな記録容量を実現するために、磁気記録媒体の記録・再生時のトラック幅は狭くなる傾向にある。更に、磁気テープの分野では、高密度記録を可能とするために磁気テープの薄手化が進展しており、総厚さ10μm以下の磁気テープも数多く登場している。しかし、磁気記録媒体の厚さが薄くなると、保管時や走行時の温湿度、テンション変化等の影響を受けやすくなる。
【0004】
すなわち、例えばリニア記録方式を採用する磁気記録再生システムの記録・再生時には磁気ヘッドが磁気テープの幅方向に移動し、いずれかのトラックを選択しなければならないが、トラック幅が狭くなるに従い、磁気テープとヘッドとの相対位置を制御するために高い精度が必要になる。MRヘッド及び微粒子磁性体を使用しS/N比を向上させ狭トラック化を実現しても、使用される環境の温湿度やドライブ内テンションの変動により磁気記録媒体が変形し、記録されたトラックを再生ヘッドが読み出せなくなる場合が生じるため媒体の寸度安定性もこれまで以上のものが要求される。このような高密度の磁気記録媒体にあっては、安定な記録再生を維持するためには従来の媒体よりも更に高度な寸度安定性、機械的強度が要求される。
【0005】
上記のように、磁気記録媒体の高度な寸法安定性を得るためには、磁気記録媒体に使用される、プラスチック基板等の非磁性支持体の温湿度による変動やドライブ内テンションの変動による影響を抑えることが考えられる。該非磁性支持体の温湿度等による変動を抑えるためには、該支持体の両面に水蒸気バリア性が高い膜を設けることが考えられる。また、ドライブ内テンションの変動による影響を抑えるためには、ヤング率の高い膜を設けることが考えられる。
このように、水蒸気バリア性及びヤング率が高い膜としては、金属や金属の酸化物、窒化物等の金属化合物の金属含有蒸着膜が挙げられる。
【0006】
プラスチック基板フィルムの表面への金属含有蒸着膜の形成は、一般的に、蒸着ドラム(冷却キャンともいう)を有する蒸着装置で行なわれる(例えば特許文献1)。また、基板フィルムの両面に金属含有蒸着膜を形成するには、先ず一方の面(以後、A面という)の全面に該蒸着膜を形成した後、他方の面の全面に該蒸着膜を形成するのが一般的である。
【0007】
しかしながら、先ずA面に該蒸着膜を形成すると、B面蒸着時に蒸着装置の蒸着ドラムと基板フィルムとが十分に接触ができないという問題が生じた。これにより基板フィルムから蒸着ドラムへの熱伝達が悪化することになる。蒸着ドラムを有する蒸着装置を用いた基板フィルムへの蒸着膜の形成においては、蒸着による熱を蒸着ドラム(冷却キャン)に放熱することにより、蒸着時の蒸発源からの輻射熱・蒸着時の凝縮熱などの熱負荷により、プラスチック基板フィルムが熱ダメージを受けることがなく、品質の良い蒸着膜が得られるものである。よって、蒸着ドラムと基板フィルムとが十分な接触ができなくなると、蒸着による熱が蒸着ドラム(冷却キャン)に放熱されず、プラスチック基板フィルムが熱ダメージを受け、形成される蒸着膜も品質の悪いものとなる。
【0008】
この対応策としては、蒸着装置における基板フィルムの搬送速度を遅くして、蒸着ドラムと基板フィルムとの接触が十分でなくても、蒸着ドラムと基板フィルムの接触時間を長くすることにより、蒸着による熱を蒸着ドラム(冷却キャン)にある程度放熱することができる。しかしながら、基板フィルムの搬送速度を遅くするということは、目的とする両面蒸着膜の生産性を下げるという問題もある。
これに対して、特許文献1,2には、金属蒸着膜の蒸着前に基板フィルムを帯電させたり、金属蒸着膜の蒸着後に金属蒸着膜と冷却蒸着ローラ(蒸着ドラム)との間に電圧を印加することにより基板フィルムを冷却蒸着ローラに密着させる技術が記載されている。B面の蒸着時には蒸着ドラムの表面に誘電体などの絶縁膜を設け、基板フィルムのA面のみに蒸着膜を形成したものの該蒸着膜と蒸着ドラムとの間にバイアス電圧を印加して密着性を強める技術が知られている。
しかし、この蒸着ドラムの表面に誘電体などの絶縁膜を設けた場合、はじめの、A面側の蒸着膜の蒸着時の熱伝達は悪化し生産性を落すことになる。そのため、A面側の蒸着膜を形成する為の蒸着装置とB面側の蒸着膜を形成する為の蒸着装置は兼用が難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−17440号公報
【特許文献2】特開2005−146401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の従来の技術の問題点を克服し、プラスチック基板フィルムの両面に高品位の金属含有蒸着膜を成膜する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記の構成を採ることにより、上記の従来の技術の問題点を克服できることを見出した。
即ち、本発明の構成は、以下の通りである。
【0012】
(1)蒸着ドラムを有する蒸着装置で、非磁性プラスチック基板フィルムの両面に金属含有蒸着膜を形成する両面蒸着膜の製造方法であって、該基板フィルムの一方の面(以後、A面という)に金属含有蒸着膜を形成した後に、該金属含有蒸着膜上に有機物膜を形成し、次いで、該基板フィルムの他方の面(以後、B面という)に金属含有蒸着膜を形成することを特徴とする両面蒸着膜の製造方法。
(2)前記B面上に金属含有蒸着膜を形成する際に、前記A面上に形成した金属含有蒸着膜と蒸着ドラムとの間に電圧を印加することを特徴とする前記(1)の両面蒸着膜の製造方法。
(3)前記B面上に金属含有蒸着膜を形成する際に、該蒸着前に基板フィルムのB面上に
電子線照射を行い、かつ蒸着ドラムを正の電位にすることを特徴とする前記(1)の両面蒸着膜の製造方法。
(4)A面上の金属含有蒸着膜が、シート抵抗で10Ω以下の導電性を有することを特徴とする前記(2)又は(3)の両面蒸着膜の製造方法。
(5)金属含有蒸着膜が、金属又はその化合物からなる膜であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかの両面蒸着膜の製造方法。
(6)前記有機物膜の形成を、前記蒸着装置における基板フィルムの搬送経路上で、前記A面上の金属含有蒸着膜が蒸着ドラムに接する前に行なうことを特徴とする前記(1)の両面蒸着膜の製造方法。
(7)前記有機物膜の形成を、前記A面上の金属含有蒸着膜上に有機化合物を蒸着することにより行なうことを特徴とする前記(1)又は(6)の両面蒸着膜の製造方法。
(8)前記A面上の金属含有蒸着膜上に蒸着する有機化合物が紫外線又は電子線重合性有機化合物であり、該有機化合物を蒸着した後に紫外線又は電子線照射することを特徴とする前記(7)の両面蒸着膜の製造方法。
【0013】
(9)非磁性プラスチック基板フィルムの一方の面(A面)上に、金属含有蒸着膜と有機物膜とを該基板フィルム側からこの順に有する両面蒸着膜中間体。
(10)非磁性プラスチック基板フィルムの両面に金属含有蒸着膜を有し、一方の面(A面)側の金属含有蒸着膜上に、更に有機物膜を有する両面蒸着膜。
(11)前記(1)〜(8)のいずれかの方法で製造されたことを特徴とする両面蒸着膜。
(12)磁気記録媒体用支持体の製造方法であることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかの両面蒸着膜の方法。
(13)前記(1)〜(8)のいずれかの方法で製造されたことを特徴とする磁気記録媒体用支持体。
【0014】
本発明の方法によれば、基板フィルムの一方の面(A面)に金属含有蒸着膜を形成した後、他方の面(B面)に金属含有蒸着膜を形成する前に、該A面側の金属含有蒸着膜上に有機物膜を形成することにより、蒸着ドラムと基板フィルムとの接触が十分になり、基板フィルムを比較的高速で搬送させても、プラスチック基板フィルムが、蒸着時の蒸発源からの輻射熱・蒸着時の凝縮熱などの熱負荷により熱ダメージを受けることなく、形成される蒸着膜も品質の良いものとなる。
また、基板フィルムのB面上に金属含有蒸着膜を形成する際に、基板フィルムのA面側に形成した金属含有蒸着膜と蒸着ドラムとの間に電圧を印加したり、B面上への金属含有蒸着膜蒸着前に基板フィルムのB面上に電子線照射を行い、かつ蒸着ドラムを正の電位にすることにより、蒸着ドラムとA面側の金属含有蒸着膜が、前記有機物膜を介してコンデンサ様の静電状態が生じ、これにより、基板フィルムと蒸着ドラムの密着性・接触性が更に向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の両面蒸着膜の製造方法によれば、プラスチック基板フィルムの両面に高品位の金属含有蒸着膜を有する両面蒸着膜を効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の両面蒸着膜の製造方法に用いる蒸着装置の1例の概略を示す図である。
【図2】本発明の両面蒸着膜の製造方法に用いる蒸着装置の他の1例の概略を示す図である。
【図3】本発明の両面蒸着膜の製造方法に用いる蒸着装置の他の別の1例の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る両面蒸着膜の製造方法について詳細に説明する。
本発明の両面蒸着膜の製造方法に用いる蒸着装置としては、蒸着ドラムを有するものであればとくに限定されないが、例えば、図1〜3に示すように、筐体内部に蒸着室101及び被蒸着基板フィルム収容室(以下、単に収容室とも称す)102を有し、蒸着室101内部に蒸着源14及びガス導入孔18を有し、収容室102内部に蒸着ドラム11、基板フィルム送出ロール12及び基板フィルム巻取ロール13を有する。蒸着室101と収容室102は、蒸着成分が、収容室102内部に入り込まないように仕切15で仕切られている。蒸着ドラム11は、その一部分上で基板フィルム16に蒸着膜を成膜できるように、当該一部分が蒸着室101の内部に位置するように配置されている。上記の装置において、基板フィルム16を送出ロール12から、蒸着ドラム11の表面に巻きつけるように搬送し、巻取ロール13で巻取るものである。
【0018】
上記のような基本構造を有する蒸着装置を用いた、基板フィルム16の両面への金属含有蒸着膜の蒸着・形成は、例えば、以下の通りである。
先ず、基板フィルム16の一方の面(A面)に金属含有蒸着膜を蒸着・形成する。基板フィルム16のA面側に蒸着膜を蒸着・形成して、巻取ロール13で巻取った後、巻取ロール13から、A面側に金属含有蒸着膜を蒸着・形成した基板フィルム16巻取体を取外し、送出ロール12に装着し、A面側が蒸着ドラム11に当たりかつ蒸着ドラム11に巻きつけるように搬送し、巻取ロール13で巻取り、その際に、基板フィルム16の他方の面(B面)に金属含有蒸着膜を蒸着・形成する。
【0019】
そして、本発明の両面蒸着膜の製造方法は、基板フィルム16のA面側に金属含有蒸着膜を形成した後、該基板フィルム16のB面側に金属含有蒸着膜を形成する前に、A面側の金属含有蒸着膜上に有機物膜を形成する。
該有機物膜の形成の時期としては、基板フィルム16のA面側への金属含有蒸着膜の形成後、B面側への金属含有蒸着膜の形成前であれば、特に限定されず、A面側への金属含有蒸着膜を形成後、巻取ロール13に巻取る前に行なっても、金属含有蒸着膜を形成後巻取ロール13に巻取った後、別の手法、装置等で行なっても良いが、送出ロール12から送出した後、蒸着ドラム11の表面にA面側が接する前に行なうことが好ましい。
該有機物膜の形成の方法としては、特に限定されず、高分子化合物を溶媒に溶解させた塗布液を塗布又は噴霧・乾燥させる、高分子化合物を高温で蒸着する等の様々な方法を採ることができるが、蒸着装置内で、送出ロール12から送出した後、蒸着ドラム11の表面にA面側が接する前に行なう場合、紫外線又は電子線重合性有機化合物(モノマー)を蒸着した後に紫外線又は電子線照射するか、2種以上の重合性化合物(モノマー)を共蒸着することが、生産性の点から好ましい。
【0020】
図1は、蒸着装置内で、基板フィルム16を送出ロール12から送出した後、蒸着ドラム11の表面にA面側が接する前に、紫外線又は電子線重合性モノマーを蒸着し、その後に、紫外線又は電子線照射する場合の装置構造を示すものである。基板フィルム16の搬送経路において、送出ロール12から蒸着ドラム11までの間に、モノマー蒸着源21及び紫外線又は電子線照射手段22が設置されている。
また図2は、2種以上のモノマーを共蒸着する場合の装置構造を示すものである。基板フィルム16の搬送経路において、送出ロール12から蒸着ドラム11までの間に、2種以上のモノマーの各蒸着源(複数種モノマー蒸着源)23が設置される。
紫外線又は電子線重合性モノマー、共蒸着する2種以上のモノマーをとしては、特に限定されず、本発明の製造方法における、様々な製造適性、仕様に合わせて、公知、公用、周知のものから適宜選択し得るものである。
【0021】
本発明の両面蒸着膜の製造方法においては、上記の有機物膜を形成後、基板フィルム16のB面側に金属含有蒸着膜を形成する際に、該金属含有蒸着膜と蒸着ドラム11との間に電圧を印加することが好ましい。金属含有蒸着膜と蒸着ドラム11との間に電圧を印加する方法・装置構造としては、特に限定されないが、例えば、図1に示すようにガイドローラ17の1つを表面が導電性の材質のものとし、このガイドローラ17と蒸着ドラム11との間に電圧を印加する。
また、上記の電圧印加に代えて、B面上に金属含有蒸着膜を形成する前に、基板フィルムのB面上に電子線照射(エレクトロンビームシャワー EBシャワー)を行い、かつ蒸着ドラムを正の電位にすることもできる。この場合の方法・装置構造としては、特に限定されないが、例えば、図3に示すようにEBシャワー手段31を設けこれによりEBシャワーを行い、蒸着ドラム11には正の電位に印加する。
上記の場合、A面側の金属含有蒸着膜は導電性である必要があり、具体的には、シート抵抗で10Ω以下であることが好ましい。
【0022】
なお、非磁性プラスチック基板フィルムの一方の面(A面)上に、金属含有蒸着膜と有機物膜とを該基板フィルム側からこの順に有する両面蒸着膜中間体、及び、本発明の製造法により製造され、非磁性プラスチック基板フィルムの両面に金属含有蒸着膜を有し、一方の面(A面)上の金属含有蒸着膜上に、更に有機物膜を有する両面蒸着膜も本発明の概念に含まれるものである。
【実施例】
【0023】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明する。なお、ここに示す内容は本発明の精神から逸脱しない範囲で変更し得るものであり、下記の実施例に制限されるべきものではない。
【0024】
〔実施例1〕
図1に示す蒸着装置1aを使用して、基板フィルム16として5μm厚のポリエステルフィルムの一方の面(A面)上に50nm厚のAl膜を蒸着した。蒸着ドラム11を−20℃として蒸着したところ、フィルム搬送速度200m/min.で蒸着することができた。更に、図示しない、特開2005−146401の実施例に記載の方法で、Al膜と蒸着ドラム11の間に100Vのバイアスを印加するとフィルム搬送速度300m/min.でフィルムへの熱変形などがなく蒸着することできた。
続いてA面側のAl膜上に、モノマー蒸着源21からラウリルアクリレートモノマーを成膜後の厚さが100nmになるように蒸着後、UV光照射手段22によりUV光を照射して硬化させ有機物膜を形成し、−20℃とした冷却ドラム11に巻きつけながら他方の面(B面)に50nm厚のAl膜を蒸着したところ、フィルム搬送速度200m/min.で蒸着することができた。ラウリルアクリレートが硬化した面の表面粗さは、元のフィルムの面より平滑になっていた。
【0025】
〔実施例2〕
図2に示す蒸着装置1bを使用して、実施例1と同様に、基板フィルム16のA面側にAl膜を蒸着した。
続いてA面側のAl膜上に、2種以上のモノマーの各蒸着源23から無水ピロメリット酸(PMDA)とビス(4−アミノフェニル)エーテル(ODA)を成膜後の厚さが100nmになるように蒸着して重合層を設け、−20℃とした冷却ドラム11に巻きつけながらB面に50nm厚のAl膜を蒸着したところ、フィルム搬送速度200m/min.で蒸着することができた。
【0026】
〔実施例3〕
基板フィルム16のA面側のAl膜上に有機物膜を形成後、B面に50nm厚のAl膜
を蒸着する際に、ガイドローラ17と蒸着ドラム11との間に50Vのバイアスを印加した以外は、実施例1と同様に行なったところ、フィルム搬送速度250m/min.でB面にAl膜を蒸着することができた。ラウリルアクリレートが硬化した面の表面粗さは、元のフィルムの面より平滑になっていた。
【0027】
〔実施例4〕
EBシャワー手段31を使用して、基板フィルム16のA面側のAl膜上に有機物膜を形成後、B面に50nm厚のAl膜を蒸着する際に、EBシャワー手段31にてEBシャワー(加速電圧1500V 300mA)を照射し、蒸着ドラム11が正の電位になるように200Vのバイアス電圧を印加した以外は、実施例1と同様に行なったところ、フィルム搬送速度250m/min.で、基板フィルムへの熱変形などがなくB面にAl膜を蒸着することができた。
【0028】
〔比較例〕
基板フィルム16のA面側のAl膜上に有機物膜形成を行なわなかった以外は、実施例1と同様に行なったところ、B面にAl膜を蒸着する際に、フィルム搬送速度150m/min.では熱負けによる基板フィルムの変形がなかったものの、フィルム搬送速度170m/min.では熱負けによる基板フィルムの変形が見られた。
【符号の説明】
【0029】
1a,1b,1c 蒸着装置
11 蒸着ドラム
12 送出ロール
13 巻取ロール
14 蒸着源
15 仕切
16 基板フィルム
17 ガイドローラ
18 ガス導入孔
21 モノマー蒸着源
22 紫外線又は電子線照射手段
23 複数種モノマー蒸着源
31 EBシャワー手段
101 蒸着室
102 被蒸着基板フィルム収容室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着ドラムを有する蒸着装置で、非磁性プラスチック基板フィルムの両面に金属含有蒸着膜を形成する両面蒸着膜の製造方法であって、該基板フィルムの一方の面(以後、A面という)に金属含有蒸着膜を形成した後に、該金属含有蒸着膜上に有機物膜を形成し、次いで、該基板フィルムの他方の面(以後、B面という)に金属含有蒸着膜を形成することを特徴とする両面蒸着膜の製造方法。
【請求項2】
前記B面上に金属含有蒸着膜を形成する際に、前記A面上に形成した金属含有蒸着膜と蒸着ドラムとの間に電圧を印加することを特徴とする請求項1記載の両面蒸着膜の製造方法。
【請求項3】
前記B面上に金属含有蒸着膜を形成する際に、該蒸着前に基板フィルムのB面上に電子線照射を行い、かつ蒸着ドラムを正の電位にすることを特徴とする請求項1記載の両面蒸着膜の製造方法。
【請求項4】
A面上の金属含有蒸着膜が、シート抵抗で10Ω以下の導電性を有することを特徴とする請求項2又は3記載の両面蒸着膜の製造方法。
【請求項5】
金属含有蒸着膜が、金属又はその化合物からなる膜であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の両面蒸着膜の製造方法。
【請求項6】
前記有機物膜の形成を、前記蒸着装置における基板フィルムの搬送経路上で、前記A面上の金属含有蒸着膜が蒸着ドラムに接する前に行なうことを特徴とする請求項1記載の両面蒸着膜の製造方法。
【請求項7】
前記有機物膜の形成を、前記A面上の金属含有蒸着膜上に有機化合物を蒸着することにより行なうことを特徴とする請求項1又は6記載の両面蒸着膜の製造方法。
【請求項8】
前記A面上の金属含有蒸着膜上に蒸着する有機化合物が紫外線又は電子線重合性有機化合物であり、該有機化合物を蒸着した後に紫外線又は電子線照射することを特徴とする請求項7記載の両面蒸着膜の製造方法。
【請求項9】
非磁性プラスチック基板フィルムの一方の面(A面)上に、金属含有蒸着膜と有機物膜とを該基板フィルム側からこの順に有する両面蒸着膜中間体。
【請求項10】
非磁性プラスチック基板フィルムの両面に金属含有蒸着膜を有し、一方の面(A面)側の金属含有蒸着膜上に、更に有機物膜を有する両面蒸着膜。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法で製造されたことを特徴とする両面蒸着膜。
【請求項12】
磁気記録媒体用支持体の製造方法であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の両面蒸着膜の方法。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法で製造されたことを特徴とする磁気記録媒体用支持体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−255101(P2010−255101A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45988(P2010−45988)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】