説明

中空部にインサート部材を固定した樹脂成形品及びその成形方法

【課題】樹脂製のケース内に電子基板等のインサート部材を確実に固定でき、特に、このインサート部材を中空体の内側に緩みにくく固定でき、さらには同時に密封することも可能な樹脂成形品の製造方法及び、それによるインサート部材が固定された中空部を有する樹脂成形品の提供を目的とする。
【解決手段】第1ケース部材と第2ケース部材とインサート部材とを備え、インサート部材には、第1又は/及び第2ケース部材への固定用孔を備え、第1ケース部材及び第2ケース部材には、相互に突合せ部を備えるとともに、この突合せ部に溶着溝を形成してあり、第1又は/及び第2ケース部材には、インサート部材の固定用孔に対応した位置に固定用凹部を備え、射出成形にて突合せ部の溶着溝及び、第1又は/及び第2ケース部材の固定用凹部とインサート部材の固定用孔とに樹脂充填することで、中空部内側にインサート部材を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のケース部材間で中空部(開口部がある中空部を含む)を形成するとともに、この中空部にインサート部材を固定した樹脂成形品及び中空部にインサート部材を固定する固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケース内に電気・電子回路基板等のインサート部材を取り付ける場合には、インサート部材に取付誤差や熱変位吸収のためのクリアランスを備えたネジ穴を設け、ネジ等にて締結する方法が用いられている。
この締結方法では、この締結部にクリープによる緩み発生の恐れがあるという問題があった。
また、ネジ穴のクリアランスによりインサート部材ががたつく恐れもあった。
そして、ネジによる締め付けでは、そのままでは締め付け状態を目視確認出来ないことから、品質保障上ネジ締結のトルク管理を実施する必要があり、生産効率が悪かった。
一方、1組の射出成形金型で連続的に中空体を成形する技術が、特開平2−38377号公報、特開平5−84711号公報等に開示されている(ダイスライドインジェクション法)。
このダイスライドインジェクション法は、中空体の樹脂成形品を対向する1組の金型で連続的に成形できる点では優れているが、中空部に電子基板等を固定する技術的思想は無い。
そこで、同公報に開示されている二つ割りに分割した分割体を2次射出成形にて一体的にする際に同時に電子基板等のインサート部材を固定出来ないか詳細に検討した結果、本発明に至った。
【0003】
【特許文献1】特開平2−38377号公報
【特許文献2】特開平5−84711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、樹脂製のケース内に電子基板等のインサート部材を確実に固定でき、特に、このインサート部材を中空体(部分的に開口部を有する中空体を含む)の内側に緩みにくく固定でき、さらには開口部がない中空部の場合や、外部接続部を有するインサート部材を取り付けた中空部の場合に、インサート部材を固定すると同時に中空部を密封することも可能な樹脂成形品の製造方法及び、それによるインサート部材が固定された中空部を有する樹脂成形品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の技術的要旨は、第1ケース部材と第2ケース部材とインサート部材とを備え、インサート部材には、第1又は/及び第2ケース部材への固定用孔を備え、第1ケース部材及び第2ケース部材には、相互に突合せ部を備えるとともに、この突合せ部に溶着溝を形成してあり、第1又は/及び第2ケース部材には、インサート部材の固定用孔に対応した位置に固定用凹部を備え、射出成形にて突合せ部の溶着溝及び、第1又は/及び第2ケース部材の固定用凹部とインサート部材の固定用孔とに樹脂充填することで、中空部内側にインサート部材を固定した点である。
【0006】
ここで、第1ケース部材、第2ケース部材と表現したのは、中空部を有する樹脂成形品を成型するに当たり、少なくとも中空部を第1ケース部材と第2ケース部材に分割成型した後に突合わせて、中空部を形成する趣旨である。
従って、樹脂成形品に部分的に中空部を形成した場合には、その中空部部分が分割されていればよい。
なお、本発明にて中空部とは少なくとも二つ以上の分割体を突合わせて中空空間を形成する趣旨で一部開口した中空部及び密封中空部を含む。
また、第1又は/及び第2ケース部材には、インサート部材の固定用孔に対応した位置に固定用凹部を備える趣旨は、ケース部材の固定用凹部と、インサート部材の固定用孔とが連結するように、この空間部に溶融樹脂を射出する趣旨である。
従って、インサート部材は第1ケースと、第2ケース部材のどちらか一方に固定してもよく、インサート部材の固定用孔を両側から挟み込むように、両方のケース部材に固定用凹部を形成してもよい。
なお、インサート部材の固定用孔を両側から挟み込むように、両方のケース部材にそのインサート部材の固定用孔の径より大きい固定用凹部を形成すると、両方のケース部材の固定用凹部とインサート部材の固定用孔が射出樹脂(2次成形)で連結した際に、両ケース側の固定用樹脂がインサート部材を挟み込むように連結固定できる。
このように固定すると、インサート部材を固定する樹脂が、インサート部材の固定用孔に対してアンダーカットになるように成形されるために、両方のケース部材とインサート部材の固定部に隙間ができず、緩みにくくなり、より確実にインサート部材をケース側に固定できる。
【0007】
アンダーカット部形成による固定方法としては、インサート部材の固定用孔の内周に突起部を設け、例えば段付固定用孔とする方法が考えられる。
この場合は、両方のケース部材の固定用凹部とインサート部材の固定用孔を射出樹脂(2次成型)で連結した際に、固定用樹脂が段付固定用孔内側の突起部に係止されるように連結する。
固定用孔に設ける突起部の形状は固定用樹脂が係止出来ればよく、上記リング状の段付の他に部分的隆起状の突起でもよく、特に限定されない。
【0008】
インサート部材を固定する中空部は部分的に開口部を有していてもよいが、第1ケース部材と第2ケース部材とで形成する中空部に、インサート部材を固定すると同時に、このインサート部材を密封するように、第1ケース部材及び第2ケース部材の突合せ部に溶着溝を形成すると、中空部にインサート部材を固定するだけでなく、同時にシール密封することも可能になる。
【0009】
又、インサート部材に外部との外部接続部を有し、外部接続部の外周部と、第1ケース部材及び第2ケース部材との間に溶着溝を形成してあり、第1ケース部材と第2ケース部材との突合せ部の溶着溝と同時に射出成形にて樹脂充填した樹脂成形品とすると、中空部にインサート部材を固定するだけでなく、接続部をケース外へ接続可能にして中空部がシール密封される。
【0010】
例えば、インサート部材が基板に外部接続部としてのコネクタを有する場合に、第1ケース部材と第2ケース部材の縁部間を広げ開口して、このコネクタ外周部を嵌め込む嵌合部を設け、この嵌合部とコネクタ外周部の境界部分にコネクタ外周部を囲む溶着溝を形成する。
この外部接続部外周部を囲む溶着溝は、嵌合部側と外部接続部側のいずれに形成しても良く、外部接続部外周部を連続的に囲むことが出来れば嵌合部側と外部接続部側にそれぞれ部分的に形成しても良い。
外部接続部外周部を囲む溶着溝は突合せ部間に形成している溶着溝と連続させる。
溶着溝に樹脂射出すると、外部接続部外周部と第1ケース部材と第2ケース部材のそれぞれの合わせ目を一体化してシールし、中空部を密封する。
【0011】
第1ケース部材、又は、第2ケース部材の少なくともいずれかが透明樹脂製であり、インサート部材の固定用孔に充填した樹脂がケース部材と異なる有色であるものを採用すると、ケースの外部からインサート部材の固定状態を確認することができる。
又は、第1又は/及び第2ケース部材の固定用凹部を貫通孔にすると、この固定用凹部に樹脂充填した際に、固定用凹部のケース外側開口部分を通して充填樹脂が目視可能となり、ケースの外部からインサート部材の固定状態を確認することができる。
【0012】
このような中空部にインサート部材を固定あるいは密封した樹脂成形品を製造する方法は次のような方法が適している。
固定側と可動側から構成される射出成形用金型の固定側又は可動側にスライド部を備え、第1及び第2ケース部材の一方を可動側に、他方をスライド部にそれぞれキャビティ部を形成して溶融樹脂を注入することで同時に1次射出成形する工程と、スライド部側に保持されたケース部材をこのスライド部を移動させて可動側又は固定側に保持されているケース部材に対向させて相互の突合せ部を突合せる工程と、2次射出成形にて溶着溝及びインサート部材の固定用孔及び第1又は/及び第2ケース部材の固定用凹部に溶融樹脂を充填する工程とを有することを特徴とする。
ここで、キャビティ部とは型開時に製品を保持する雌型側を意味するが、可動側に例えば、第1ケース部材の雌型を形成した場合には、第2ケース部材は雄型になり、それに対向するようにスライド部に第1ケース部材の雄型、第2ケース部材の雌型を形成することになるので、便宜上、型開時に製品部を保持する側をキャビティ部とした。
【0013】
本発明においては、一次射出成形で第1ケース部材と第2ケース部材とを同時に成形するのがよい。
そして、第1ケース部材と第2ケース部材の間に形成した中空部にインサート部材を装着する。
次の、2次射出成形時に、第1ケース部材と第2ケース部材に形成した突合せ部の溶着溝に溶融樹脂を注入して、第1ケース部材と第2ケース部材を突合せ部において一体化するとともに中空部を形成し、加えて、ケース部材の固定用凹部と、インサート部材の固定用孔とで形成した空間部に溶融樹脂を注入し、インサート部材をケース側に固定する。
インサート部材が中空部の内外を中継するための外部接続部を備えている場合には、この2次射出成形時に突合せ部の溶着溝に加えて、外部接続部外周部を囲む溶着溝にも溶融樹脂を注入して外部接続部外周部を第1・第2ケース部材が形成する嵌合部と一体化する。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、ケース内に組み込むインサート部材に予め設けた固定用孔部分とケース部材側の固定用凹部に、2次射出成形時に樹脂を充填してインサート固定部を形成するため、インサート部材はケースと一体化する。
インサート固定部の成形は、2次射出成形時に第1ケース部材と第2ケース部材の突合せ部に形成している溶着溝に溶融樹脂を充填して、突合せ部を連結するのと同時に行うことができるため、インサート部材を内部に備えた中空体を、効率よく製造することが出来る。
これにより、インサート部材の固定用孔部分とケースとの間には隙間が出来ず、位置ずれや、がたつきの恐れがなくなる。
第1ケース部材と第2ケース部材とを合わせて形成する中空部は、少なくともいずれかのケース部材に溶着溝を形成した突合せ部を、中空部を環状に囲むように形成して、この溶着溝に溶融樹脂を充填して突合せ部を溶着することで密封出来、インサート部材を中空部内に密封した樹脂成形品も効率的に製造出来る。
インサート部材に樹脂成形品外部との接続を行うコネクタ等の外部接続部を設ける場合には、第1ケース部材と第2ケース部材の間に、外部接続部を嵌めるように開口する外部接続部の嵌合部を、外部接続部の外周部を第1ケース部材と第2ケース部材の縁部で取り囲むように形成する。
この嵌合部と外部接続部間に外部接続部外周部を周方向に連続的に囲むように溶着溝を形成する。
この外部接続部外周部を囲む溶着溝は、第1ケース部材と第2ケース部材の突合せ部に形成している溶着溝と嵌合部と突合せ部の境界で接続し連続させる。
これにより溶着溝へ樹脂充填することで、第1ケース部材と第2ケース部材と外部接続部外周部の境界部分を溶着部で密封した樹脂成形品が得られる。
ケースの少なくとも一部を透明樹脂製とすると、もしくは、ケースの固定用凹部貫通孔を通して目視可能とすると、インサート部材の固定状態を目視又は画像処理で容易に確認でき、ネジ又はボルト止め時におけるトルク管理が不要となる。
また、ネジ等の締結部材を用いないことからクリープによる緩みの恐れもない。
本発明における中空部にインサート部材を固定した樹脂成形品は、ケースとインサート部材の固定が確実であり、振動が大きい輸送機器や自動車部品への適用が効果的であり、中空部を密閉することも可能なために、埃や湿気の侵入を嫌う電子基板等の固定に優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る中空部にインサート部材を固定した樹脂成形品の成形方法については後で詳述することにして、本発明を適用した中空体の構造例を模式図に基づいて説明する。
図1(イ)は本発明に係るインサート部材を内部に固定した中空樹脂成形品の実施例の断面の模式図を示し、図1(ロ)は斜視図を示す。
また、図2(イ)は第1ケース部材と第2ケース部材とを一体化する前の断面の模式図を示し、図2(ロ)は分解斜視図を示す。
図2に示すように、分割体である第1ケース部材11と第2ケース部材12とは1次射出成形にて同時ではあるが別々に成形する。
この時、第1ケース部材11には凹部状の第1ケース部材側固定用凹部11aを成形し、第2ケース部材12にも凹部状の第2ケース部材側固定用凹部12aを成形する。
一方、インサート部材30には貫通孔である固定用孔33を予め設けておく。
第1ケース部材側固定用凹部11aと第2ケース部材側固定用凹部12aは、第1・第2ケース部材間13に配置したインサート部材30の固定用孔33を挟み対向する位置に成形する。
この上下の固定用凹部11a、12aは、図1(イ)に示すようにインサート部材30を装着した際にその開口縁部11b、12bが固定用孔33周囲のインサート部材30表面に、それぞれ固定用孔33を包むように密着している。
また、第1ケース部材11と第2ケース部材12のそれぞれの突合わせ部14、15の外縁部分には、図3に2次射出成形のために第1・第2ケース部材11、12を突合わせた状態を示すように、溶着溝16の形成壁11d、12dを突合わせ部14、15周方向にわたり設けている。
第1ケース部材11と第2ケース部材12とは、成形過程において図3に示すように、インサート部材30を第1ケース部材11と第2ケース部材12間の所定位置に仮取り付けしたうえで、互いの突合わせ部を合わせる。
そして、第2ケース部材固定用凹部12aに連通するように設けた2次射出成形用のスプル・ランナー8bから溶融樹脂51を注入することにより、図3(ロ)に示すように第2ケース部材側固定用凹部12aより固定用孔33と第1ケース部材側固定用凹部11aに溶融樹脂を充填して、インサート固定部20を形成し樹脂の融着によりケースの中空部19内にインサート部材30を固定する。
尚、図では参考のため1次射出成形用のスプル・ランナー7bを想像線で示してある。
また、別の2次射出成形用のスプル・ランナー8aにて溶着溝16に樹脂を周方向に充填することで図3(ロ)、図1(ロ)に示すように溶着部17を成形し、第1ケース部材11と第2ケース部材12とを融着により接合する。
【0016】
次に成形方法について説明する。
図4は本発明に係る中空部を有する樹脂成形品を成型するためのダイスライドインジェクション金型の縦断面の模式図を示す。
成形型は、可動側2と固定側3を配設して構成している。
可動側2の可動側型板部2aに入れ子型として第1ケース部材成形用雌型(キャビティ部)2bと第2ケース部材成形用雄型(コア部)2cを設けている。
固定側3はシリンダー5によりスライド部3bが上下方向にスライド可能に設ける。
スライド部3bを取り付けた固定側型板部3aは固定側取付板3eとの間を図面の左右方向に移動可能となっている。
固定側3には、固定側型板部3aにシリンダー駆動により駆動するスライド部3bを設け、それぞれ入れ子型として第1ケース部材成形用雄型(コア部)3cと第2ケース部材成型用雌型(キャビティ部)3dとを設ける。
このシリンダー駆動により駆動するスライド部は、固定側、可動側のいずれに設けてもよい。
第1ケース部材成型用雄型3cには1次射出成形用第1ケース部材用スプル・ランナー7aを設け、第2ケース部材成型用雌型3dには1次射出成形用第2ケース部材用スプル・ランナー7bを設ける。
尚、図では参考のため2次射出成形用のスプル・ランナー8a、8bを想像線で示してある。
固定側取付板3eは固定側取付板プレート部3fにストリッパープレート部3gを備える。
【0017】
型閉した状態を図5に示す。
この状態で成形機ノズル1aより溶融樹脂をスプル・ランナー7a、7bを通してキャビティ部11e、12eへ射出する。
図6に1次射出成形により第1ケース部材11と第2ケース部材12を同時に成形して型開した状態を示す。
型開きしたところで、第1ケース部材11へロボットアームなどでインサート部材30を仮取り付けする。
このインサート部材30の仮取り付けは、インサート部材30を軽い係止力でケースに位置決めして取り付けられればよく、その方法は特に限定されず、例えばケース側に位置決め用のガイドや突起を設ける方法が考えられる。
そして図7に示すように、インサート部材30を第1ケース部材11へ仮取り付けした状態で第2ケース部材12をスライド部3bをシリンダー5の駆動によりスライドすることで第1ケース部材11との対向位置へ移動する。
このインサート部材30の仮取り付けは、第1ケース部材11、第2ケース部材12のどちら側でもよく、限定されるものではない。
そして、図8に示すように型閉にて第1ケース部材11と第2ケース部材12とを突合わせる。
図3(イ)は図8の第1・第2ケース部材11、12部分を拡大して、第1・第2ケース部材が上下方向になるように回転した図を示してある。
この時第1ケース部材側固定用凹部11aの開口縁部11bは固定用孔33周りのインサート部材第1ケース部材側表面31に密着し、第2ケース部材側固定用凹部12aの開口縁部12bは固定用孔33周りのインサート部材第2ケース部材側表面32に密着する。
第2ケース部材側固定用凹部12a、固定用孔33、第1ケース部材側固定用凹部11aとは連通しているため、2次射出成形により図3(ロ)に示すように溶融樹脂51により充填されて、第1ケース部材側固定部21と、インサート固定部の連結部22と、第2ケース部材側固定部23とからなる固定部20を形成する。
この固定部20は、第1ケース部材11と第2ケース部材12に溶着により連結し、固定部21、23の径が固定用孔33の径より大きいことからインサート部材30の固定用孔33部分を挟持する。
一方、図3(イ)に示す溶着溝形成壁11d、12d間の溶着溝16には突合わせ部の縁部にわたり周状に図3(ロ)、図1(ロ)に示す溶着部17を成形する。
これにより第1ケース部材11と第2ケース部材12とを融着する。
図9に型開きしてエジェクタピン6により樹脂成形品10を取りだした状態を示す。
【0018】
完成した製品のインサート部材の固定状態の確認方法について図1にて説明する。
固定部20を形成する樹脂は固定用凹部11aの外側開口部11cより目視確認できるように外側開口部11cを満たすよう樹脂充填している。
このようにケース外側にその一部が露出するように固定部20を形成することで、インサート部材30の固定状態が目視で簡単に確認可能となる。
又は、例えば第1ケース部材11又は第2ケース部材12を透明樹脂製とし、ケース部材と異ならせた有色樹脂を、インサート部材30の固定用孔33に充填することで固定部20を形成すると、斜め方向から見た場合でも固定状態を目視確認できる。
【0019】
図10に他の実施例を示す。
樹脂成形品はインサート固定部付近のみを描いてある。
図10(イ)、図10(ロ)、図10(ハ)は溶着溝をケース内側に設けることで溶着部17aをケースの内側に設けた実施例を示す。
図10(イ)が縦断面図を示し、図10(ロ)が上面図を示し、図10(ハ)が2次射出成形のための型閉状態を示す。
2次射出成形では、溶融樹脂を図10(ハ)に示すスプル・ランナー8aから第1ケース部材11gと第2ケース部材12g間の溶着部ゲート18aを経て、図10(イ)に示す溶着溝壁18cと第1・第2ケース部材11g、12gにより形成されている溶着溝18に導き、ケース内側に溶着部17aを周状に形成する。
一方、図10(ニ)、図10(ホ)、図10(ヘ)は溶着部を形成する溶着溝18と第1ケース部材側固定用凹部11aと連通させて、溶着部と固定部を成形する場合を示す。
図10(ヘ)に示すように第1ケース部材側固定用凹部11aは溶着部成形用の溶着溝18と連通部18bで連通している。
これにより、溶着溝18から第1ケース部材側固定部用凹部11a、固定用孔33、第2ケース部材側固定用凹部12aへと溶融樹脂が流れ込むことで、図10(ニ)、図10(ホ)に示すように固定部20aを形成できる。
【0020】
図11にインサート部材の固定用孔内に突起部を設けた実施例を示す。
図11(イ)は断面の模式図を示し、図11(ロ)は第1ケース部材11h、第2ケース部材12h、インサート部材30aを一体化する前の断面の模式図を示す。
インサート部材30aの段付固定用孔33aの開口側はケースの固定用凹部(貫通孔)11f、12fの径より大きい径の凹部33b、33cとなっている。
この場合両ケース部材11h、12hとインサート部材30aは、射出樹脂で連結した際に、両ケース側の固定部20b、20cが互いに突起部33dを包み込むように連結する。
【0021】
図12にコネクタ(外部接続部)を設けたインサート部材を備える樹脂成型品の実施例の外観図を示す。
図12(イ)は溶着溝に2次射出により溶融樹脂を充填する前の樹脂成形品の斜視図を示し、図12(ロ)は溶着溝に2次射出により溶融樹脂を充填し、中空部19を封止した後の樹脂成形品の斜視図を示す。
又、2次射出前の樹脂成形品の分解図を図13に示し、A−A線断面図を図14(イ)に示し、B−B線断面図を図14(ロ)に示す。
図は説明の為に要部を簡略化して描き、コネクタ46は端子を図示省略している。
又、図12ではインサート部材を透視して描き、図12(ロ)では2次射出した溶融樹脂を透視して描いている。
図12において樹脂成形品40はカバー部材(第1ケース部材、以下カバー部材と称する)41とケース部材(第2ケース部材、以下ケース部材と称する)42で形成する中空部19内にコネクタ(外部接続部)46付きのインサート部材44を収納し、コネクタ46を中空部19内から樹脂成形品40外部へ延在させている。
このコネクタ46は端子等を設けて中空部19内の基板45と樹脂成形品40外部との中継接続を行う。
図13に示すようにコネクタ46は、上部46bと下部46cと脇部46dにわたる外周部46aに、周方向の溶着溝46eを形成している。
このコネクタ46は、ケース部材42の縁部42bを下向きに凹ませて形成したケース部材切り欠き部42eとカバー部材41の縁部41gとの間に形成されるコネクタ嵌合部43に図12(イ)に示すように嵌め込む。
コネクタ嵌合部43のケース部材42側にはケース部材切り欠き部底部42fから切り欠き部脇部42gにかけてケース部材嵌合部溶着溝42dを形成している。
図14(ロ)では、溶着溝42dは切り欠き部底部42fにおいてコネクタの溶着溝46eと対向するように配置され、コネクタ外周部下部46cと切り欠き部底部42fの両方に跨らせるように溶着溝41dに溶融樹脂を充填している。
コネクタ嵌合部43のカバー部材41側は、コネクタ嵌合時にコネクタの溶着溝46eと対向配置する嵌合部溶着溝41dとを設けて、コネクタ上部46bとカバー部材41との両方に跨らせるように溶融樹脂を充填している。
図12(イ)に示すようにカバー部材41の嵌合部溶着溝41dとケース部材42の嵌合部溶着溝42dは、カバー部材41とインサート部材44とケース部材42の組み立て状態では、互いに接続し、コネクタ溶着溝46eとの対向状態でコネクタ46外周部46aに沿って連続している。
また、カバー部材41とケース部材42との突合せ部分では、図14(イ)、図14(ロ)に示すように溶着溝41c、42cが突合せ部41e、42hの両方に跨らせるように溶融樹脂を充填している。
2次射出して溶融樹脂を充填すると、図12(ロ)に示すようにカバー部材41とケース部材42とコネクタ46の合わせ目に、それぞれ中空部19を囲む溶融樹脂が充填されて、それぞれの合わせ目を連結する溶着部50を形成し、中空部19を封止する。
【0022】
2次射出では、図14(イ)に示すカバー部材41とケース部材42の固定用凹部41a、42aと基板45の固定用孔45aにも開口部41bから溶融樹脂を充填し、インサート部材44の基板45をカバー部材41とケース部材42に対して固定する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るインサート部材を中空部内に固定した樹脂成形品の実施例を示す。
【図2】(イ)は第1ケース部材と第2ケース部材とを突合わせる前の断面の模式図を示し、(ロ)は分解斜視図を示す。
【図3】2次射出成形のために、ケース部材を突合わせた状態の断面の模式図を示す。
【図4】ダイスライドインジェクション金型の縦断面図を示す。
【図5】1次射出成形成形のため閉型状態を示す。
【図6】1次射出成形により第1ケース部材と第2ケース部材とを同時に成形した状態を示す。
【図7】スライド部をスライドさせて第1ケース部材と第2ケース部材を対向させた状態を示す。
【図8】2次射出成形した状態の縦断面図を示す。
【図9】型開きして製品を取りだした状態を示す。
【図10】別の構造の固定部と溶着部の例を示す。
【図11】インサート部材の固定用孔内に突起部を設けた樹脂成形品の実施例を示す。
【図12】インサート部材がコネクタを有する場合の樹脂成形品の実施例を示す。
【図13】インサート部材がコネクタを有する場合の樹脂成形品の分解図を示す。
【図14】(イ)はA−A線断面図を示し、(ロ)はB−B線断面図を示し、(ハ)はカバー部材を取り外した平面図を示す。
【符号の説明】
【0024】
1 ダイスライドインジェクション金型
1a 成形機ノズル
2 可動側
2a 可動側型板部
2b 可動側第1ケース部材成形用雌型
2c 可動側第2ケース部材成形用雄型
3 固定側
3a 固定側型板部
3b 固定側スライド部
3c 固定側第1ケース部材成形用雄型
3d 固定側第2ケース部材成型用雌型
3e 固定側取付板
3f 固定側取付板プレート部
3g 固定側ストリッパープレート部
5 シリンダー
6 エジェクターピン
7a、7b 1次射出成形スプル・ランナー
8a、8b 2次射出成形スプル・ランナー
10 樹脂成形品
11、11g、11h 第1ケース部材
11a 第1ケース部材側固定用凹部
11b 第1ケース部材側固定用凹部の開口部縁部
11c 第1ケース部材側固定用凹部の外側開口部
11d 第1ケース部材溶着溝形成壁
11e 第1ケース部材用キャビティ部
11f 第1ケース部材側固定用凹部(貫通孔)
12、12g、12h 第2ケース部材
12a 第2ケース部材側固定用凹部
12b 第2ケース部材側固定用凹部の開口部縁部
12c 第2ケース部材側固定用凹部の外側開口部
12d 第2ケース部材溶着溝形成壁
12e 第2ケース部材用キャビティ部
12f 第2ケース部材側固定用凹部(貫通孔)
13 第1・第2ケース部材間
14 第1ケース部材突合わせ部
15 第2ケース部材突合わせ部
16、16a、16b、16c、16d 溶着溝
17、17a 溶着部
18 溶着溝
18a 溶着部ゲート
18b 連通部
18c 溶着溝壁
19 中空部
20、20a、20b、20c インサート固定部
21 第1ケース部材側固定部
22 インサート固定部の連結部
23 第2ケース部材側固定部
30、30a インサート部材
31 インサート部材第1ケース部材側表面
32 インサート部材第2ケース部材側表面
33 固定用孔
33a 段付固定用孔
33b、33c 固定用孔の開口部に形成した凹部
33d 段付固定用孔内の突起部
40 コネクタ(外部接続部)を備えた樹脂成形品
41 カバー部材(第1ケース部材)
41a カバー部材側固定用凹部
41b 固定用凹部の外側開口部
41c カバー部材突合せ部溶着溝
41d カバー部材嵌合部溶着溝
41e カバー部材突合せ部
41f カバー部材縁部
42 ケース部材
42a ケース部材側固定用凹部
42b ケース部材縁部
42c ケース部材突合せ部溶着溝
42d ケース部材嵌合部溶着溝
42e ケース部材切り欠き部
42f 切り欠き部底部
42g 切り欠き部脇部
42h ケース部材突合せ部
43 コネクタ嵌合部
44 コネクタ(外部接続部)付きインサート部材
45 基板
45a 固定用孔
46 コネクタ(外部接続部)
46a コネクタ(外部接続部)外周部
46b コネクタ外周部上部
46c コネクタ外周部下部
46d コネクタ外周部脇部
46e コネクタ溶着溝
50 溶着部
51 溶融樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ケース部材と第2ケース部材とインサート部材とを備え、
インサート部材には、第1又は/及び第2ケース部材への固定用孔を備え、
第1ケース部材及び第2ケース部材には、相互に突合せ部を備えるとともに、
この突合せ部に溶着溝を形成してあり、第1又は/及び第2ケース部材には、インサート部材の固定用孔に対応した位置に固定用凹部を備え、
射出成形にて突合せ部の溶着溝及び、第1又は/及び第2ケース部材の固定用凹部とインサート部材の固定用孔とに樹脂充填することで、中空部内側にインサート部材を固定していることを特徴とする樹脂成形品。
【請求項2】
第1ケース部材と第2ケース部材とで形成する中空部に、インサート部材を固定すると同時に、このインサート部材を密封していることを特徴とする請求項1記載の樹脂成形品。
【請求項3】
インサート部材に外部との外部接続部を有し、外部接続部の外周部と、第1ケース部材及び第2ケース部材との間に溶着溝を形成してあり、第1ケース部材と第2ケース部材との突合せ部の溶着溝と同時に射出成形にて樹脂充填してあることを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂成形品。
【請求項4】
第1又は/及び第2ケース部材の固定用凹部は、貫通孔であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂成型品。
【請求項5】
第1ケース部材、又は、第2ケース部材の少なくともいずれかが透明樹脂製であり、インサート部材の固定用孔に充填した樹脂がケース部材と異なる有色であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂成形品。
【請求項6】
固定側と可動側から構成される射出成形用金型の固定側又は可動側にスライド部を備え、
第1及び第2ケース部材の一方を可動側に、他方をスライド部にそれぞれキャビティ部を形成して溶融樹脂を注入することで同時に1次射出成形する工程と、
スライド部側に保持されたケース部材をこのスライド部を移動させて可動側又は固定側に保持されているケース部材に対向させて相互の突合せ部を突合せる工程と、
2次射出成形にて溶着溝及びインサート部材の固定用孔及び第1又は/及び第2ケース部材の固定用凹部に溶融樹脂を充填する工程とを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂成形品の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−15738(P2006−15738A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151717(P2005−151717)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000132932)株式会社タカギセイコー (29)
【Fターム(参考)】