説明

中空部材又は半中空部材の連結構造

【課題】 構成部材の削減及び軽量化が図れると共に、取付を簡単で確実にした中空部材又は半中空部材(中空部材等)の連結構造を提供すること。
【解決手段】 互いに連結される中空部材等である補助サイドメンバ15とこれが連結される他の部材であるサイドメンバ11の、両部材を貫通する取付ボルト51にナット52を締結して両部材を連結する中空部材等の連結構造において、補助サイドメンバの中空部15b内に、カラー60をかしめにより仮止めすることにより、補助サイドメンバ15とこれが連結されるサイドメンバ11を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、中空部材又は半中空部材の連結構造に関するもので、更に詳細には、中空部材又は半中空部材を他の部材に固定するに際し、両部材を貫通するボルトとナットにより連結する中空部材又は半中空部材の連結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、中空部材ないし半中空部材を他の部材に固定する際に、中空部材又は半中空部材の間隔を有する2辺を貫通するボルトとナットにより他の部材に固定する場合、ボルトとナットの締め付け力により、この2辺間の間隔が変化しないように、両辺間にカラーを挟んで固定することが一般に行われていた。
【0003】
また、自動車関連の分野において、サスペンションを構成するサスペンションメンバには、サスペンションアームの車体側を支持する支持部材が設けられると共に、エンジンやトランスミッション等が搭載されているが、軽量化の観点よりアルミニウム材料を利用することが有効であると考えられている。
【0004】
本発明者等はサスペンションメンバのアルミニウム化に際し、複雑な形状を必要とする箇所は鋳造成形し、それ以外をアルミニウム合金製の押出形材を用いることにより、製造が容易になり、アルミニウム合金製押出形材を用いた場合、これを車体前後方向に配設することで、その軸圧壊特性を利用して衝突時等の衝撃エネルギ吸収機能を有効に利用できることを創意したものであるが、この発明は、この場合における中空部材又は半中空部材の他の部材への最適な連結構造を提案するものである。
【0005】
従来、中空部材を他の部材に連結する際に、中空部材にボルトを貫通し、ボルトの突出部にナットを締結して連結する構造が広く知られている。例えば、中空部材の所定箇所に貫通孔を設け、この貫通孔の位置にカラーを挿入して溶接により固定し、カラーにボルトを挿通して中空部材を他の部材に固定するか、あるいは、カラーを上下方向から挟んで中空部材に跨設される断面略凹形の一対のブラケットを介してボルトを挿通し、ナットを締結して中空部材を固定する構造が知られている。この場合、カラー自体の形状も単に円筒状のものに過ぎず1つのボルトを固定するのみのものであった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−238657号公報(特許請求の範囲、段落番号0003、図4,図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特開2000−238657号公報に記載のものにおいては、中空部材あるいは中空部材に跨設されるブラケットにカラーを挿入して溶接するため、カラーの取付に手間を要するという問題があった。また、中空部材を貫通するカラーにボルトを挿通して中空部材を他の部材に連結する構造においては、他の部材に接触する部分がカラーであるため、中空部材を強固に固定するためのもではなかった。また、カラーは単に円筒状のために、1つのボルトに利用できるのみであり、複数のボルトの利用に際しては複数個のカラーの溶接が必要であった。
【0007】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたのもので、カラーの固定を容易で確実にすると共に、構成部材の削減が図れるようにした中空部材又は半中空部材の連結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の中空部材又は半中空部材の連結構造は、間隔を持った2辺を有する中空部材又は半中空部材をこれら2辺を貫通するボルトで他の部材に連結する構造であって、上記2辺間に当接可能な当接面を両端に有し、かつ、上記ボルトが挿通する挿通孔を有するカラーを、上記2辺間に配置すると共に、上記当接面のうち少なくとも一方にはかしめ受部が形成され、上記2辺のうちの少なくとも一方より上記かしめ受部に向けてかしめ部を形成することにより、上記カラーは2辺間にかしめられていることを特徴とする(請求項1)。
【0009】
このように構成することにより、中空部材又は半中空部材部材にカラーをかしめにより仮止めし、カラーに設けられたボルト挿通孔を中空部材又は半中空部材に設けられたボルト連通孔に連通した状態で、ボルト挿通孔及びボルト連通孔にボルトを挿通し、ナットを締結することで、中空部材又は半中空部材が変形することなく中空部材又は半中空部材を強固に連結することができる。
【0010】
更に、カラーは事前に中空部材又は半中空部材に固定しておくことができるので、中空部材又は半中空部材にカラーを事前に組み合立てておき、別の箇所で他の部材にボルト締結する場合でも、カラーの設置忘れ等がなく、かしめ部の目視にてカラーが設置されていることが容易に判る。
【0011】
この発明において、上記カラーに、該カラーの回転を阻止すべく上記2辺を連結する連結辺に接触する回転阻止部を設ける方が好ましい(請求項2)。この場合、連結辺と回転阻止部の接触を、面接触又は2点の接触とする方が好ましい(請求項3)。
【0012】
このように構成することにより、カラーに設けられた回転阻止部が中空部材又は半中空部材の2辺を連結する連結辺に接触するので、カラーがかしめ部を中心に回転することがなく、ボルト締結に際し、カラーに設けられたボルト挿通孔と中空部材又は半中空部材の2辺に形成されるボルト連通孔の位置ずれを修正する必要がないので、ボルト締結が容易になる。
【0013】
また、上記カラーをアルミニウム合金製押出形材により形成し、かしめ受部をボルト挿通孔と共に押出成形された貫通孔により形成する方が好ましい(請求項4)。
【0014】
このように構成することにより、カラーはアルミニウム合金製の押出形材により形成され、ボルト挿通孔と共にかしめ受部も押出し成形に際して同時に形成されるので、かしめ受部の加工が不要となる。
【0015】
加えて、上記カラーには複数のボルト挿通孔を形成するか(請求項5)、あるいは、複数の長孔状のボルト挿通孔を形成する方が好ましい(請求項6)。この場合、上記複数の長孔状のボルト挿通孔は、該ボルト挿通孔の中心を中空部材又は半中空部材の長手方向及び該長手方向と直交する幅方向にずらして設ける方が好ましい(請求項7)。
【0016】
このように構成することにより、ボルトの使用本数が複数になった際にも、1つのカラーにて対応できる。また、ボルト挿通孔を長孔にすることにより、カラーの取付位置の誤差や、ボルト挿通孔の位置の誤差への対応が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような優れた効果が得られる。
【0018】
(1)請求項1記載の発明によれば、間隔を持った2辺を有する中空部材又は半中空部材(以下に単に中空部材等という)をこれら2辺を貫通するボルトで他の部材に連結する連結構造において、該2辺間にカラーを配設するに際して、カラーの2辺への対向面の少なくとも一方の対向面にはかしめ受部を形成し、該2辺のうちの少なくとも一方の辺よりかしめ受部に向けてかしめ部を形成することにより、カラーは仮止めされ、中空部材等 が連結される他の部材がボルトで締結されるので、中空部材等が変形することなく両者を強固に連結できる。
【0019】
また、この際、カラーは事前に中空部材等に固定しておくことができるので、中空部材等に予めカラーを仮止めすることができる。また、かしめ部は外部より目視することが可能なので、カラーの取付け忘れが生じない。
【0020】
(2)請求項2記載の発明によれば、カラーには中空部材等の上記2辺を連結する連結辺に接触する回転阻止部が設けられることにより、カラーが自由に回転してカラーに設けられたボルト挿通孔と中空部材等の2辺に形成されるボルト連通孔の位置ずれを生じることがないので、上記(1)に加えて、更に中空部材等の連結作業を容易にすることができる。この場合、連結辺と回転阻止部の接触を、面接触又は2点の接触とすることにより、カラーに設けられたボルト挿通孔と中空部材等の2辺に形成されるボルト連通孔の位置ずれを更に確実に防止することができる(請求項3)。
【0021】
(3)請求項4記載の発明によれば、カラーをアルミニウム合金製押出形材により形成し、かしめ受部は特段を加工をせずともボルト挿通孔と共に押出し成形により形成されるので、中空部材等の2辺間にカラーを挿入し、貫通孔により形成されるかしめ受部が位置する中空部材等の2辺のうち少なくとも何れか一方を例えばポンチ等の工具を用いてかしめによりかしめ受部側に変形してカラーを仮止めすることができるので、上記(1),(2)に加えて、更にカラーの仮止めを容易かつ確実にすることができる。
【0022】
また、カラーはアルミニウム合金よりなり押出し成形されることにより、上記(1),(2)に加えて、更にかしめ受部やボルト挿通孔が押出し成形により同時に形成することができるので、これらを別途加工する必要がなく、加工を容易にすることができる。
【0023】
(4)請求項5,6記載の発明によれば、カラーには複数のボルト挿通孔が形成されるので、ボルトの使用本数が複数になった際にも、1つのカラーにて対応できる。また、請求項6記載の発明によれば、ボルト挿通孔を長孔とすることにより、カラーの取付位置の誤差や、ボルト連通孔の位置への誤差への対応が可能となるので、上記(1)〜(3)に加えて、更に中空部材等の連結を可能にすることができる。この場合、複数の長孔状のボルト挿通孔は、該ボルト挿通孔の中心を中空部材等の長手方向及び該長手方向と直交する幅方向にずらして設けられることにより、対角位置にて中空部材等が複数のボルトにて固定されるので強固に固定されると共に、対角位置にて複数の固定ができるので比較的小さい中空部材等でも複数のボルトによる固定が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、この発明の最良の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1は、この発明に係る中空部材等の連結構造を適用した自動車のサスペンションメンバを示す平面図、図2は、図1の側面図、図3は、図1の底面図、図4は、この発明に係る中空部材等の連結構造を示す図1を部分拡大して示す部分断面図(a)及び(a)のI−I線に沿う断面図(b)である。なお、本実施形態においては、中空部材等としては断面四角の閉断面の部材を利用している。
【0026】
上記サスペンションメンバ1は、図1ないし図4に示すように、車体の前後方向に延在する一対のサイドメンバ11と、両サイドメンバ11の中間部を連結するセンタクロスメンバ12及び両サイドメンバ11の後端側を連結するリアクロスメンバ13とを一体に形成したアルミニウム合金製の鋳造品によって形成されるサスペンションメンバ本体10と、両サイドメンバ11の車体前方側の先端部に連結されて車体の前後方向に延在する中空部材である補助サイドメンバ15の先端部に架設されるファーストクロスメンバ14とで主に構成されている。なお、サスペンションメンバ本体10において、サイドメンバ11とセンタクロスメンバ12及びリアクロスメンバ13との連結部は応力集中を避けるように円弧状に形成されている。
【0027】
上記サイドメンバ11には、車体の前後方向の後端部と中間部よりやや先端側部に、車体のサイドフレーム2への連結部16,17(以下に後端連結部16,中間連結部17という)が設けられている。また、後端連結部16には、この後端連結部16より車体の前方向側部位にサスペンションアームを構成するロアアーム3の後端側アーム片3aの支持部21(以下に第1の支持部21という)が設けられると共に、衝突時に前方からの衝撃力を受けた際に、後端連結部16と第1の支持部21間でサスペンションメンバ本体10が破断されるように破断誘起部20が設けられている。この破断誘起部20は、この部分に段差を設ける等により応力集中を生じさせ、一定以上の応力で破断させるものである。また、サイドメンバ11の中間部には、ロアアーム3の先端側アーム片3bの支持部22(以下に第2の支持部22という)が設けられている。
【0028】
また、サイドメンバ11は、表面部11aの両側辺に側壁11bを垂下した断面略逆U字状に形成されると共に、少なくとも破断誘起部20の領域を含む前後方向における表面部11aの裏面にサイドメンバ11に沿う補強リブ30が突設されている。なお、図3に示すように、後端連結部16及び中間連結部17を構成する連結孔16a,17aを有するボス16b,17bにはそれぞれ補強リブ30が連設されて、強度の補強が図られている。また、第1の支持部21を構成する取付孔21aを有する2つのボス21bにもそれぞれ補強リブ30が連設されて、強度の補強が図られている(図3参照)。
【0029】
なお、第2の支持部22は、車体の前後方向に対峙する前方側ブラケット22aと後方側ブラケット22bとで構成されている。
【0030】
更に、サイドメンバ11は、図2に示すように、車体後方側が低位置となるように車体の前後方向に略クランク状に形成されると共に、低位置側に後端連結部16及び破断誘起部20が設けられている。この場合、サイドメンバ11のクランク状の段差部11cは、曲面状に形成され、また、平面視において、サイドメンバ11の後端側が互いに近接する方向に傾斜して設けられると共に、後端部から互いに離反する方向に向かって膨隆する後端連結部16が水平状に突設されている(図1参照)。この後端連結部16の連結孔16aを貫通するボルト,ナット等の固定部材(図示せず)によってサイドフレーム2に連結されている。また、後端連結部16の前方側近傍位置に第1の支持部21の取付孔21aが設けられ、更に、後端連結部16と第1の支持部21との間には上記破断誘起部20が形成されている。この場合、破断誘起部20は、サイドメンバ11のクランク部から後端連結部16に渡って設けられる補強リブ30の先端部に設けられる段部や切欠き等によって形成されている。
【0031】
なお、上記センタクロスメンバ12の左右両側には、エンジン4を固定するための取付孔12aが設けられており、これら取付孔12aを貫通する取付ボルト等の締結部材(図示せず)を介してエンジン4の後端部が固定されるようになっている。なお、エンジン4の前方側はサイドフレーム2に固定される。
【0032】
また、サイドメンバ11の先端側の対向する内面には、スタビライザ6を取り付けるブラケット19が突設されている。
【0033】
一方、上記補助サイドメンバ15(本発明における中空部材)は、断面略中空矩形状のアルミニウム合金製の押出形材によって形成されている。すなわち、補助サイドメンバ15は、断面形状において、間隔を持った2辺例えば上辺15c,下辺15dとこの2辺15c,15dを連結する一対の連結辺15e,15eとからなる中空部材である。この補助サイドメンバ15は、対向する上辺15cと下辺15dの2辺の面を利用して、ボルト51,ナット52により、補助サイドメンバ15が連結される他の部材であるサスペンションメンバ本体10の両サイドメンバ11の先端部に固定される(図4参照)。
【0034】
この補助サイドメンバ15の連結側の中空部15b内に仮止めされた後述するカラー60を介在させた状態で、サスペンションメンバ本体10の両サイドメンバ11の先端部に、それぞれアングル状の取付金具40及び取付ボルト51,ナット52をもってサイドメンバ11,補助サイドメンバ15の上辺15c及び下辺15d,取付金具40を締め付けて連結されている。なお、補助サイドメンバ15の2辺15c,15dには、それぞれ複数例えば2個の長孔状のボルト挿通孔15aが設けられている。このボルト挿通孔15aは、該ボルト挿通孔15aの中心を、補助サイドメンバ15の長手方向及び長手方向と直交する幅方向にずらした位置に設けられている。
【0035】
このように2個のボルト51で固定することにより、補助サイドメンバ15はサイドメンバ11に対してボルト部を中心に回転(図4中の矢印C方向)することなく、また強固に固定される。
【0036】
また、ボルト挿通孔15aの中心位置が補助サイドメンバ15の長手方向及び長手方向と直交する幅方向にずらした位置に設けられことにより、対角状にボルト51が配置されることになるの、で比較的狭い部分でも複数のボルト51とナット52が干渉することなく強固な連結が行える。
【0037】
両補助サイドメンバ15の先端部間にはファーストクロスメンバ14が連結されている。また、補助サイドメンバ15の先端部には、車体のサイドフレーム2への先端連結部18が設けられている。
【0038】
この場合、カラー60は、アルミニウム合金製の押出形材を補助サイドメンバ15の中空部15bの2辺15c,15d間の寸法に合わせて切断され、一方の端面に補助サイドメンバ15の円弧状の内面角部との干渉を避けるために面取り66を設けた当接面67を有するブロックにて形成されている。
【0039】
なお、この面取り66は必要に応じて設ければよく、補助サイドメンバ15の内面角部の形状、カラー60の寸法によっては不要になる。
【0040】
また、カラー60は、図4ないし図6に示すように、横断面形状において、2つの楕円形状部63,64を互いにずらして連結した形状とすると共に、楕円形状部63,64の連結部から外方に向かって略円弧状に突出する膨隆部65を有し、両楕円形状部63,64にそれぞれ長孔状のボルト挿通孔61が設けられる。また、膨隆部65にはボルト挿通孔61と平行に貫通孔62が設けられている。また、楕円形状部63,64の外側に補助サイドメンバ15の連結辺15eに接触する回転阻止部68が設けられている。
【0041】
上記のように形成されるカラー60は、補助サイドメンバ15の連結側端部における2辺(上辺15c,下辺15d)に設けられた2個の長孔状のボルト連通孔15aにボルト挿通孔61が合う方向で中空部15b内に挿入される。そして、図6に示すように、貫通孔62が位置する補助サイドメンバ15の2辺15c,15dの一方の面を、例えばポンチ等の工具を用いてかしめ70により貫通孔62内に変形することによってかしめ部を形成しカラー60がかしめられ仮止めされる。仮止めされたカラー60は、中空部15b内で上記かしめ部を中心とする回転に対して回転阻止部68が連結辺15eに接触し回転が阻止されるので、ボルト挿通孔61とボルト連通孔15aの位置がずれない。この際、回転阻止部68と連結辺15eの接触が一方の連結辺15eと面接触によりかしめ部の前後の箇所D,D’(図4(a)参照)で接触するか、又は両連結辺15e,15eの2点E,E’(図6参照)での接触となるので、カラー60がかしめ部を中心に回転することがなくボルト挿通孔61とボルト連通孔15aの位置ずれを確実に防止することができる。
【0042】
なお、カラー60がかしめ部を中心に多少回転してもボルト挿通孔61とボルト連通孔15aの位置ずれがボルト51とナット52の締結に支障ない程度であれば支障ないので上記面接触ないし、2点の接触は常時接触せずともカラー60が一定以上回転しない範囲で接触すればよい。
【0043】
これにより、予め補助サイドメンバ15にカラー60を具備することができるので、連結作業時に補助サイドメンバ15にカラー60を挿入して位置合せする必要がなく、また、カラー60の紛失の虞もない。また、カラーの付け忘れもかしめ部の有無で外部より判別できる。
【0044】
この補助サイドメンバ15をサスペンションメンバ本体10に取り付けるには、まず、予めカラー60を仮止めした補助サイドメンバ15の端部を、断面略逆U字状のサイドメンバ11の先端部内に挿入する。次に、取付金具40の取付片41を補助サイドメンバ15の下面に当接し、下方から取付ボルト51を取付片41に設けられた取付孔41a,補助サイドメンバ15に設けられたボルト連通孔15a,カラー60に設けられたボルト挿通孔60a及びサイドメンバ11の表面部11aに設けられた透孔11d内を貫通した状態で、取付ボルト51の突出部にナット52を締結する。この際、カラー60の当接面67が補助サイドメンバ15の対向する2辺15c,15dの内面に当接しているので、締結力によって補助サイドメンバ15は変形することがなく、サイドメンバ11の表面部11aと取付片41間に強固に挟持される。そして、取付金具40の固定片42に設けられた長孔42aを介して固定ボルト53を上記スタビライザ6を取り付けるブラケット19に貫通し、その突出部にナット54を螺合して、補助サイドメンバ15をサスペンションメンバ本体10に連結する。
【0045】
上記のように構成されるサスペンションメンバ1は、先端連結部18,中間連結部17及び後端連結部16に図示しないボルト,ナットをもって車体のサイドフレーム2に固定され、サイドメンバ11の第1の支持部21及び第2の支持部22にサスペンションアームのロアアーム3の後端側アーム片3a及び先端側アーム片3bが支持される。
【0046】
上記サスペンションメンバ1によれば、補助サイドメンバ15は、カラー60を介してをサスペンションメンバ本体10に連結されているので、衝突等によって前方から衝撃力を受けると、図7に示すように、補助サイドメンバ15における連結部以外の先端側が座屈変形してサイドフレーム2と共に衝撃エネルギを吸収することができる。
【0047】
なお、補助サイドメンバ15の座屈変形が完了し、それ以上の衝撃エネルギが加わると、破断誘起部20に応力集中が生じ、破断誘起部20が破断し、剛性の高いサスペンションメンバ1を介して衝突エネルギが直接車内に伝わらず、サイドフレーム2等の車体にて衝撃が吸収されることになる。
【0048】
なお、上記実施形態では、カラー60が2つのボルト挿通孔61を有する場合について説明したが、ボルト挿通孔61が1つであってもよい。例えば、図8に示すように、ボルト挿通孔61を有する断面略円形状の基部69と、この基部69の接線方向に沿う回転阻止部68Aと、ボルト挿通孔61と略平行に設けられるかしめ受部を形成する貫通孔62とを具備するカラー60Aを用いることができる。なお、カラー60Aの端面には、補助サイドメンバ15の上下辺15c,15dに当接可能な当接面67が形成されている。このように形成されるカラー60Aは、上記カラー60と同様に、補助サイドメンバ15の中空部15b内に挿入されて、貫通孔62が位置する補助サイドメンバ15の壁面をかしめ変形して仮止めされ、取付ボルト51及びナット52を用いて補助サイドメンバ15とサイドメンバ11とを連結することができる。
【0049】
また、上記実施形態では、中空部材である補助サイドメンバ15をサスペンションメンバ1のサイドメンバ11に取付金具40を用いて連結する場合について説明したが、この発明に係る連結構造は必ずしもこの構造に限定されるものではない。
【0050】
例えば、図9に示すように、上記補助サイドメンバ15と同様にアルミニウム合金製の断面略矩形状の中空部材15Aの連結側端部の中空部15b内に予めカラー60Aを仮止めしておき、この中空部材15Aを固定する相手となる他の部材80の取付面81に当接し、中空部材15Aに設けられたボルト連通孔15a、カラー60Aに設けられたボルト挿通孔61及び他の部材80に設けられた取付孔82に取付ボルト51を挿通し、取付ボルト51の突出部にナット52を締結して中空部材15Aと他の部材80とを連結することができる。なお、ここでは、1つのボルト挿通孔61を有するカラー60Aを用いた場合について説明したが、カラー60Aに代えて2つのボルト挿通孔61を有するカラー60を用いて中空部材15Aと他の部材80を連結することも可能である。
【0051】
なお、本実施形態にあってはカラー60Aには上記実施形態にあった面取り66は施さず、中空部材15Aの連結辺15eと接触しないようにカラー60Aの幅を連結辺15e間の間隔よりわずかに小さくしてある。
【0052】
次に、上記補助サイドメンバ15にカラー60をかしめる方法について、図11に示す概略分解斜視図を参照して説明する。なお、図11において、符号91a,91bは位置決めピンであり、図示しない下型上に起立状に設置されている。また、符号92はポンチであって、図示しない昇降可能な上型の下面に垂下状に固定され、下方に移動することによりかしめ加工を行うようになっている。
【0053】
上記位置決めピン91aは、補助サイドメンバ15の先端方向Aに向けて先端が傾斜しており、位置決めピン91bは、後端方向Bに向けて先端が傾斜している。また、位置決めピン91aはA,B方向に移動自在でA方向にばね等の弾性手段(図示せず)にて弾性力が付勢されている。また、位置決めピン91a,91bとポンチ92との位置関係はカラー60の長孔状ボルト挿通孔61のA方向端部とボルト挿通孔61のB方向端部並びに貫通孔62と同じ位置関係にある。
【0054】
かしめ加工に際しては、補助サイドメンバ15の端部にカラー60を差し込み、位置決めピン91a,91b上に補助サイドメンバ15を移動させると、位置決めピン91a,91bの上端(先端)に傾斜面が設けられているので、ボルト連通孔15a,15aとボルト挿通孔61,61は一致した位置に揃って、補助サイドメンバ15とカラー60は下型上にセットされる。この状態で、上型を下降すると、ポンチ92により補助サイドメンバ15の上辺15cは貫通孔62に向けて正確にかしめられる。
【0055】
なお、上記実施形態では、中空部材等として閉断面の矩形状の中空部材を示したが、図10に示すように、断面略コ字形部材のような半中空部材15Bの2辺15c,15dをこれが連結される他の部材80Aに固定する場合にも利用できる。なお、図10において、その他の部分は上記実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0056】
また、上記実施形態では、かしめ受部を貫通孔62により形成する場合について説明したが、かしめ受部を機械加工により形成した凹部としてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、この発明に係る連結構造をサスペンションメンバに適用した場合について説明したが、建築・土木等の他の構造材にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】この発明に係る中空部材又は半中空部材の連結構造を適用したサスペンションメンバを示す平面図である。
【図2】上記サスペンションメンバの側面図である。
【図3】上記サスペンションメンバの底面図である。
【図4】この発明に係る中空部材又は半中空部材の連結構造を示す断面図(a)及び(a)のI−I線に沿う断面図(b)である。
【図5】この発明における補助サイドメンバ、カラー、取付ボルト及びナットを示す分解斜視図である。
【図6】この発明におけるカラーの仮止め状態を示す斜視図(a)及び(a)のII−II線に沿う断面図(b)である。
【図7】上記補助サイドメンバの衝撃を受けた状態を示す概略断面図である。
【図8】この発明におけるカラーの変形例を示す斜視図である。
【図9】この発明に係る中空部材又は半中空部材の連結構造の第2実施形態を示す斜視図(a)及び(a)のIII−III線に沿う断面図(b)である。
【図10】この発明における補助サイドメンバを半中空部材にて形成した場合の連結構造を示す断面図である。
【図11】この発明における補助サイドメンバとカラーのかしめ加工を示す概略分解斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
11 サイドメンバ(他の部材)
11d 透孔
15 補助サイドメンバ(中空部材)
15A 中空部材
15B 半中空部材
15a ボルト連通孔
15b 中空部
15c 上辺
15d 下辺
15e 連結辺
40 取付金具
41a 取付孔
60,60A カラー
61 ボルト挿通孔
62 貫通孔
67 当接面
68,68A 回転阻止部
70 かしめ
80,80A 他の部材
82 取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を持った2辺を有する中空部材又は半中空部材をこれら2辺を貫通するボルトで他の部材に連結する構造であって、
上記2辺間に当接可能な当接面を両端に有し、かつ、上記ボルトが挿通する挿通孔を有するカラーを、上記2辺間に配置すると共に、上記当接面のうち少なくとも一方にはかしめ受部が形成され、上記2辺のうちの少なくとも一方より上記かしめ受部に向けてかしめ部を形成することにより、上記カラーは2辺間にかしめられていることを特徴とする中空部材又は半中空部材の連結構造。
【請求項2】
請求項1記載の中空部材又は半中空部材の連結構造において、
上記カラーに、該カラーの回転を阻止すべく上記2辺を連結する連結辺に接触する回転阻止部を設けた、ことを特徴とする中空部材又は半中空部材の連結構造。
【請求項3】
請求項2記載の中空部材又は半中空部材の連結構造において、
上記連結辺と回転阻止部の接触が面接触又は2点の接触である、ことを特徴とする中空部材又は半中空部材の連結構造。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の中空部材又は半中空部材の連結構造において、
上記カラーはアルミニウム合金製押出形材により形成され、かしめ受部はボルト挿通孔と共に押出成形された貫通孔により形成されてなる、ことを特徴とする中空部材又は半中空部材の連結構造。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の中空部材又は半中空部材の連結構造において、
上記カラーには複数のボルト挿通孔が形成されてなる、ことを特徴とする中空部材又は半中空部材の連結構造。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の中空部材又は半中空部材の連結構造において、
上記カラーには複数の長孔状のボルト挿通孔が形成されてなる、ことを特徴とする中空部材又は半中空部材の連結構造。
【請求項7】
請求項6記載の中空部材又は半中空部材の連結構造において、
上記複数の長孔状のボルト挿通孔は、該ボルト挿通孔の中心を中空部材又は半中空部材の長手方向及び該長手方向と直交する幅方向にずらして設けられる、ことを特徴とする中空部材又は半中空部材の連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−2857(P2007−2857A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−180121(P2005−180121)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】