説明

乗用型作業機

【課題】クローラ操向方式の乗用型農作業機において、走行機体の旋回に際して左右のクローラを同じ方向に周回させるノーマルモードと逆方向に周回させるスピンターンモードとの切り替えを行う構成を簡素化する。
【手段】操縦ケース24の内部に筒状の変速出力軸115が回転可能に配置されている。変速出力軸115の内部にはクラッチ軸149がスライド自在に嵌め込まれており、変速出力軸115の外側には、ノーマルモード用の減速出力軸とスピンターンモード用の直結出力軸とが相対回転可能に嵌まっている。クラッチ軸149には、変速出力軸115の窓穴155の箇所に位置する2条の環状凹所156,157が形成されており、変速出力軸115には、環状凹所156,157に嵌脱するストッパー部160を有する板ばね158が固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御操作用のクラッチ軸を有している乗用型作業機に関し、特に好適には、稲用コンバインのようなクローラ走行方式の乗用型農作業機に関するものである(なお、作業機は「作業車両」と呼んでもよい。)。
【背景技術】
【0002】
クローラで走行する乗用型作業機の一例として稲用のコンバインがある。このコンバインは走行手段として左右のクローラを備えており、操縦ハンドルを回転させると左右のクローラの相対的な周回速度が変わって操向(舵取り)されており、また、走行変速レバーを操作すると左右のクローラの周速度が同期して変わり、これによって走行速度(スピード)が変わる。そして、駆動速度を無段階に変更して車速を変え得ると共に、操縦ハンドルの操作によって左右クローラの駆動速度の差を無段階に変更して走行進路を変更させる技術がある。
【0003】
さて、走行機体の旋回は左右クローラの周速度を相対的に変えることで行われるが、この場合、左右クローラの周速度を相対的に変える態様としては、左右クローラを正転させつつ周速度を変える態様と、一方のクローラは正転させて他方のクローラは逆転させる態様とがある(理論的には、一方のクローラを停止させて他方のクローラを正転又は逆転させる場合もあり得る。)。
【0004】
そして、左右クローラが正転のみする態様は旋回半径が大きいため、例えばコンバインの場合であると、足場が悪い湿田での刈取り作業や荒れた路上での走行には適しているが、乾田において急旋回したい場合や良い路面で急旋回したいという要望に応えることができない。逆に、左右のクローラを逆方向に周回させる旋回態様はスピンターンの要請に応えることができるが、例えば湿田でスピンターンすると走行機体が不安定になったり圃場枕地を荒らしたりする虞がある。
【0005】
この点について例えば特許文献1には、左右のクローラが正転しつつ旋回する態様と逆方向に周回して旋回する態様とを切り替えできる機構が開示されている。
【特許文献1】特開2002−68006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された作業機は、走行速度の変速と走行機体の操向変更とを無段変速機を有する伝動機構にて行うものであり、基本的機能として、変速レバー(主変速レバー)の回動操作によって速度が無段階的に変化し、操縦ハンドルの操作量に比例して左右クローラの周速度が減速する。更に、特許文献1では、操縦ハンドルの回転操作で左右クローラの逆方向に周回させるスピンターン機能も備えており、操作伝達系に設けたクラッチ軸をスライドさせることにより、スピンターンができる状態とできない状態とに切り替えるようになっている。
【0007】
前記クラッチ軸はスピンターンできる状態とできない状態とのいずれかの位置(押した位置と引いた位置)とのいずれかに選択的に保持しておく必要があり、このための位置決め手段として特許文献1ではいわゆるボールキャッチ方式を採用している。すなわち、クラッチ軸の外周に若干の間隔を隔てて2条の環状凹所を形成しておく一方、クラッチ軸が嵌まっている筒にこれと直交した方向に延びる筒状ケースを固着し、この筒状ケースに、クラッチ軸の環状凹所に嵌脱し得るボールと、ボールをクラッチ軸に向けて押すばねとが設けられている。
【0008】
本願発明は、この特許文献1のように切り替え用のクラッチ軸を備えて作業機において、クラッチ軸の位置決め手段を、機能は的確に発揮しつつ構造が簡単で組立も容易な形態で提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は幾つかの曲面を有しており、その典型を請求項1〜4で明示している。このうち請求項1は最も上位概念に位置するのもので、「エンジンで駆動される走行機体に運転席を設け、運転席又はその近傍に、走行機体の走行又は操向の切り替え若しくは作業部の制御の切り替えを行うためのクラッチ軸が、軸方向のスライドによって制御状態が切り替わるように配置されており、前記クラッチ軸には操縦者が手又は足でスライド操作できる操作部が設けられており、更に、前記クラッチ軸は、位置決め手段により、一方の側にスライドした状態と他方の側にスライドした状態とに選択的に保持されるようになっている」という乗用型作業機を対象にしている。
【0010】
そしてこの請求項1では、上記の乗用型作業機において、前記位置決め手段は、クラッチ軸に形成した二つの凹所又は突起と、前記突起又は凹所の近傍に配置された帯板状又は線状の弾性体とから成っており、前記弾性体には、前記クラッチ軸における2つの凹所又は突起に選択的に嵌脱できるストッパー部が形成されており、前記弾性体がクラッチ軸の外周に対して離反・接近するように弾性変形することにより、クラッチ軸のスライドにて弾性体のストッパー部が凹所又は突起に嵌合・離反することを許容している。
【0011】
請求項2の発明は請求項1の発明を具体化したものであり、この発明は、「エンジンを搭載すると共に左右のクローラを備えた走行機体と、前記走行機体に設けた運転席と、前記運転席に設けた回転式の操縦ハンドルと、前記操縦ハンドルの回転操作によって走行機体の進行方向と車速とを変える制御機構とが備えられており、前記制御機構はその前部又は大部分が操縦ケースに内蔵されており、前記操縦ケースに、左右クローラを正転状態で周速度を変えることで緩く旋回するノーマルモードと左右クローラを逆方向に周回させて急旋回できるスピンターンモードとに切り替えるためのクラッチ軸が、軸方向にスライドするように筒体に嵌められた状態で配置されており、更に、前記するノーマルモード位置とスピンターンモード位置とに選択的に保持する位置決め手段が設けられている、」というクローラ走行方式の乗用型作業機を対象にしている。
【0012】
そして、請求項2では、上記の構成において、前記クラッチ軸の位置決め手段は、前記クラッチ軸の外周に形成した2つの凹所又は突起と、前記2つの凹所又は突起に選択的に嵌脱するストッパー部を有する弾性板とからなっており、前記2つの凹所はクラッチ軸の軸方向に離反している一方、前記弾性板は前記筒体又はその近傍の部材に固定されており、弾性板がクラッチ軸の外周に対して離反・接近するように弾性変形することにより、弾性板のストッパー部がクラッチ軸の2つの凹所又は突起に嵌脱することを許容している。
【0013】
請求項3の発明は請求項2を更に具体化したものであり、この発明では、前記操縦ケースは運転席の床から上向きに立ち上がる縦長姿勢になっている一方、前記クラッチ軸は略水平状の姿勢であり、前記クラッチ軸に操縦ケースの外側に露出した操作部を設けることにより、操縦者が手又は足でクラッチ軸をスライド操作できるようになっている。
【0014】
請求項4の発明は請求項2又は3をより好適な構成として展開したものであり、この発明では、前記クラッチ軸には軸方向に離間した2つの環状凹所が形成されている一方、前記弾性板は板ばね製であり、この弾性板を、ストッパー部が自由端となるように片持ち梁の状態で前記筒体の外面にボルトで固定しており、前記ストッパー部は凹所に向けて凸の山形に形成されている。
【発明の効果】
【0015】
本願発明は、クラッチ軸の位置決め手段として板状又は線状の弾性体を使用して弾性体自体にストッパーを形成した点に特徴を有している。そして、弾性体が従来のボールとばねとの機能を兼用していることと、弾性体はボルトやビスのみで簡単に固定できることとが相まって、ボールキャッチ方式に比べて構造を極めて簡単化であると共に組立作業も能率良く行えるのであり、このためコストダウンに資する。
【0016】
また、ボールキャッチ方式では筒状ケースの取付け位置を変えるのが難しいため、ボールの位置とクラッチ軸の凹所とがずれて組立精度が悪くなることが有り得たが、本願発明では、例えば弾性体のボルト挿通穴(ビス挿通穴)を長穴にしておくということにより、ストッパーがクラッチ軸の凹所に確実に嵌合するように位置を微調整でき、このため、高い精度で組立できてクラッチ軸の位置決めを的確に行うことができる。
【0017】
請求項4のようにクラッチ軸に環状凹所を形成すると、その全体が筒体に嵌め入れられている場合に好適である。また、請求項4のように弾性板を片持ち梁の状態に固定すると、弾性板はストッパー部がクラッチ軸に対して大きく離反・接近するように変形するため、全体をコンパクト化できる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本願発明は乗用型コンバインに適用している。なお、本実施形態で「前後」「左右」の文言を使用するが、この文言は、コンバインの前進方向を向いた姿勢を基準にしている。
【0019】
(1).コンバインの概略
まず、主として図1〜図3に基づいてコンバインの概略を説明する。図1は全体の側面図(右側面図)、図2は全体の平面図、図3のうち(A)は前部の側面図、(B)は(A)のB−B視概略図である。
【0020】
本実施形態のコンバインは二条刈り仕様であり、左右のクローラ2で支持された走行機体1と、その前端部に高さ変更可能に連結された刈取部3を大きな要素している。左右のクローラ2はそれぞれ一つの駆動輪と多数の従動輪とで周回するようになっており、駆動輪4は前部に配置されている。そして、左右の駆動輪4の相対的な回転数を変えることで舵取りされる。
【0021】
刈取部3は、圃場の穀桿を捌く分草体5、捌かれた穀桿を保持して掻き揚げる掻き揚げタイン装置6、穀桿の株元を切断するカッター、刈取られた穀桿を走行機体1に向けて送るチエン方式の搬送装置7、未刈り穀桿を捌く起倒式の左右のサイドデバイダ8、等を備えている。これらの装置はフレームに取付けられており、フレームは駆動軸が内蔵されたメインリンク9を介して走行機体1の前端部に連結されており、メインリンク9を油圧シリンダで回動させることにより、刈取部3が昇降する。穀桿は、株元を左にして横向きに寝た姿勢で、走行機体1の左側部分に搬送される。
【0022】
走行機体1は、クローラ2が取付けられたトラックフレーム(車台)とこれに固定された機体とを基本要素として構成されており、この走行機体1に、処理装置として、刈取部3から送られた穀桿を寝かせた状態で後方に向けて搬送するフィードチエン10、フィードチエン10で搬送された穀桿から籾を分離する脱穀部11、脱穀された籾を貯めるグレンタンク12、グレンタンク12から籾を機外に排出する旋回自在及び伸縮自在なオーガ13などが搭載されている。なお、脱穀後の排藁はカッターで裁断されて圃場に放散される。
【0023】
グレンタンク12は走行機体1の右後部に配置されており、走行機体1のうちグレンタンク12の前方の部分に運転席14を設けている。すなわち、運転席14は走行機体1の前右部に配置されている。運転席14には、操縦者Oが腰掛ける座席15、操縦者Oが足を載せる床板(ステップ板)16、操縦ハンドル17、座席15に座った操縦者Oの左側の部分に配置されたサイドコラム18等が設けられており、サイドコラム18に主変速レバー19や副変速レバー20等のレバー類やスイッチ類を設けている。
【0024】
主変速レバー19を中立姿勢から前に倒すと走行機体1は前進し、中立姿勢から後ろに引くと走行機体は後退する。また、主変速レバー19は路上走行時のアクセルの役目も持っており、前倒しの程度が大きくなるほど速度は増す。副変速レバー20は走行速度を2段階又は3段階に切り替えるためのもので、例えば、圃場作業モード用低速と路上走行モード用高速との2段階切り替えや、低速(例えば畦超え時に使用)と中速(圃場作業)と高速(路上走行)との3段階切り替えなどがある。
【0025】
座席15の下方はエンジンルーム21になっていてここにエンジン22が配置されている。エンジンルーム21は前後及び左は隔壁で囲われており、右は開閉式のサイドカバー23で覆われている。サイドカバー23はフィルターを兼用するもので、空気はサイドカバー23で藁屑等の塵埃を除去してからエンジンルームに入る。
【0026】
運転席14における床の前部には操縦ケース(ステアリングコラム)24が立設されており、操縦ケース24の上端部に前記操縦ハンドル17が取付けられている。操縦ケース24には、操縦ハンドル25や主変速レバー19の操作をクローラ2に伝達するための走行操作機構(直進機構及び旋回機構)が内蔵されている(詳細は後述する)。操縦ハンドル17を回転すると、操縦ケース24に内蔵した旋回機構を介して左右のクローラ2の周回速度が変わって走行機体1が舵取りされる。
【0027】
(2).走行制御・操向制御の概略
次に、図4の模式図に基づいて走行制御(変速制御)及び操向制御の系の概略を説明する。走行機体1には、ミッションケース26に内蔵された伝動装置が設けられており、伝動装置によって走行機体1が駆動される。ミッションケース26には、速度変更用の主変速機構27と、舵取り用の旋回機構(操向機構)28とが連結されている。主変速機構27は、第1油圧ポンプ29と第1油圧モータ30とを備えた油圧式無段変速機構で構成されており、同様に、旋回機構28も、第2油圧ポンプ31と第2油圧モータ32とを備えた旋回用の油圧式無段変速機構で構成されている。
【0028】
エンジン22の出力軸22aから、第1及び第2油圧ポンプ29,31の入力軸29a,31aに伝達ベルト33,34を介して動力が伝達されており、これによって両機構27,28の油圧ポンプ29,31が駆動される。
【0029】
また、第2油圧モータ30の出力軸35に、副変速機構36及び差動機構37を介して左右走行機体1の各駆動輪4が連動連結されている。差動機構37は左右対称の1対の遊星ギヤ機構40を有している。遊星ギヤ機構40は、1つのサンギヤ39と、該サンギヤ39の外周に噛合う3つのプラネタリギヤ41と、これらプラネタリギヤ41に噛合うリングギヤ42などで構成されている。
【0030】
プラネタリギヤ41は、サンギヤ39と同軸のキャリヤ軸43に設けたキャリヤ44に回転自在に軸支されており、左右のサンギヤ39を挾んで左右のキャリヤ44が対向する姿勢に配置されている。また、リングギヤ42は、各プラネタリギヤ41に噛み合う内歯42aを有していてサンギヤ39と同一軸芯上に配置されていると共に、キャリヤ軸43に回転自在に軸支されている。そして、キャリヤ軸43を長く伸ばすことで車軸が形成されており、その先端部に駆動輪4が連結されている。
【0031】
走行用の主変速機構27は、第1油圧ポンプ29の回転斜板の角度変更調節により第1油圧モータ30の正逆回転と回転数の制御を行うもので、第1油圧モータ30の回転出力は、出力軸46に設けた伝達ギヤ45からギヤ47,48,49の群と副変速機構36とを介して、サンギヤ軸50に固定されたセンタギヤ51に伝達され、これによってサンギヤ39が回転する。
【0032】
副変速機構36は、前記ギヤ48を有する副変速軸52と、前記ギヤ49を介してセンタギヤ51に噛合うギヤ53を有する駐車ブレーキ軸54とを備え、副変速軸52とブレーキ軸54との間に1対ずつの低速用ギヤ55,56、中速用ギヤ57,58、高速用ギヤ59,60が配置されている。そして、低中速スライダ61及び高速スライダ62のスライド操作により、副変速の低速・中速・高速の切換えが行われる。
【0033】
なお低速と中速との間、及び中速と高速との間ではそれぞれ中立になっている。また、ブレーキ軸54に駐車ブレーキ63を設けると共に、刈取部3に動力を伝達する刈取PTO軸64に、ギヤ65,66及び一方向クラッチ67を介して副変速軸52が連動連結されている。従って、刈取部3の部材は車速と同調して駆動される。
【0034】
上記のように、第1油圧モータ30から出力された駆動力は、センタギヤ51を介しサンギヤ39に伝達され、それから、左右の遊星ギヤ機構40を介して左右キャリヤ軸43に伝達され、左右キャリヤ軸43の回転トルクが左右の駆動輪4にそれぞれ伝えられ、これによって左右走行機体1が駆動される。
【0035】
旋回用の旋回機構28は、第2油圧ポンプ31の回転斜板の角度変更調節によって第2油圧モータ32の正逆回転と回転数の制御を行うもので、第2油圧モータ32は出力軸68を有している。そして、ミッションケース26に、操向出力ブレーキ69を有するブレーキ軸70と、操向出力クラッチ71を有するクラッチ軸72と、前記の左右遊星ギヤ40の外歯40bに常時噛合させる左右入力ギヤ73,74とが内蔵されており、第2油圧モータ32の出力軸74に前記ブレーキ軸70及び操向出力クラッチ71を介してクラッチ軸72が連結されている。
【0036】
クラッチ軸72には正転ギヤ75を介して右入力ギヤ74が連結されており、またクラッチ軸72には正転ギヤ75及び逆転ギヤ76を介して左入力ギヤ73が連結されている。
【0037】
副変速スライダ61,62を中立にして操向出力ブレーキ69を入にしかつ操向出力クラッチ71を切にすると、右側のリングギヤ40の外歯40bに正転ギヤ75を介して第2油圧モータ32の回転力が伝えられて、第2油圧モータ32の正転時、左リングギヤ40の逆転と右リングギヤ40の正転とが同一回転数で行われる。
【0038】
他方、中立以外の副変速出力時に操向出力ブレーキ69を切にしかつ操向出力クラッチ71を入にすると、左側のリングギヤ40の外歯40bに正転ギヤ75及び逆転ギヤ76を介して第2油圧モータ32の回転を伝えられて、第2油圧モータ32の逆転時、左リングギヤ40の正転と右リングギヤ40の逆転とが同一回転数で行われる。
【0039】
しかして、旋回用の第2油圧モータ32を停止させて左右リングギヤ40を静止固定させた状態で走行用の第2油圧モータ32を駆動すると、第2油圧モータ32からの回転出力はセンタギヤ51から左右のサンギヤ39に同一回転数で伝達され、従って、左右遊星ギヤ機構40のプラネタリギヤ41,キャリヤ44を介して左右の走行機体1が左右同一周回方向に同一周速度で駆動され、その結果、走行機体1は直進走行する。
【0040】
一方、走行用の第1油圧モータ30を停止させて左右のサンギヤ39を静止固定させた状態で、旋回用の第2油圧モータ32を正逆回転駆動すると、左側の遊星ギヤ機構40が正転或いは逆回転すると共に、右側の遊星ギヤ機構40が逆転又は正回転し、これによって左右走行機体1が逆方向に駆動されて走行機体1は左又は右に旋回する。
【0041】
また、走行用の第1油圧モータ30を駆動させながら旋回用の第2油圧モータ32を駆動することにより、走行機体1が左右に旋回して進路が修正される。その場合、機体の旋回半径は第2油圧モータ32の出力回転数によって決定される。
【0042】
(3).走行制御及び操向制御の構造
次に、図5以下の図面も参照して変速制御及び操向制御の態様を説明する。図5は制御系統の模式図、図6は操縦ケースの内部のうち略上半部の背面図で図3(A)の上半部のY−Y視断面図、図7は図6の右側断面図で図3(B)のZ−Z視断面図、図8は操縦ケースの内部のうち略下半部の背面図で図3(A)の下半部のY−Y視断面図、図9は図8の右側断面図で図3(B)の下半部のZ−Z視断面図、図10は図8の部分拡大図である。なお、図6〜10において紙面を基準にした前後・左右は運転者から見た前後・左右とは逆になっている。
【0043】
既述のように、運転台18の前部には操縦ケース24が立設固定されており、操縦ケース24の上方部に操縦ハンドル17が縦軸回りに自在に回転するように配置されている。前記したミッション26はサイドコラム18の下方に配置されている。操縦ケース24は、アルミニウム合金鋳物の成形加工品であり、左右に分割できる2パーツ構造になっている。左右のパーツは複数のボルト77で締結することにより、中空で上下に長い箱状の形態が形成されている。
【0044】
図6,7に示すように、操縦ケース24の上部にはチルト台79が一体形成されており、このチルト台79に支点ボルト80を介してチルトブラケット81が回転自在に取付けられている。チルトブラケット81は、チルトレバー85の回動操作によって角度調節可能に固定される。
【0045】
チルトブラケット81には軸ケース82の下部が固定されており、軸ケース82の内部に上ハンドル軸83が回転自在に軸支されており、上ハンドル軸83の上端に操縦ハンドル17が固定されている。他方、操縦ケース24の上面部に軸ケース82に向けて上向きに延びる上面カバー84が固定されており、上面カバー84にチルトレバー85が取付けられている。チルトレバー85を操作すると、支点ボルト80を中心にチルトブラケット81が前後に回動することにより、操縦ハンドル17が前後方向に移動してその移動させた位置に保持される。従って、操縦者は、ハンドル17を操作し易い位置に調節できる。
【0046】
上ハンドル軸83の下端部には自在継手86を介して下ハンドル軸87の上端側が連結されている。下ハンドル軸87は操縦ケース24の上部にベアリングを介して回転自在に軸支されている。操縦ケース24の上部には操向入力軸88の上端部が回転自在に軸支されており、下ハンドル軸87に設けたギヤ90と操向入力軸88のセクタギヤ90を噛合させることにより、両軸87,88を連動連結させている。操向入力軸87は、操縦ケース24の内部の略中央部において上下方向に延びている。
【0047】
操縦ケース24の内部のうち右内側面部でかつ上下幅略中間の部位に軸受け部材91がボルトで固定されており、この軸受け部材91に、変速入力軸92の一端部が軸受け筒91aを介して片持ちの状態で取付けられている。変速入力軸92は、ベアリング93により、左右横長の回転軸心回りに回転し得るように支持されている。
【0048】
操向入力軸88の下端には自在継手94を介して入力支点軸95の上端部が連結されており、入力支点軸95には操向入力部材96が固定されている。変速入力軸92に操向入力部材96がベアリング97を介して回転自在に嵌め込まれていると共に、操向入力部材96と入力連結体98とがボルト99で固定されている。操向入力部材96は、操向入力軸87の軸心回りに回転し得る。
【0049】
操向入力軸88を正逆回転させると、操向入力部材96は入力軸88の軸心回りに正逆回転する。また、変速入力軸92が左右横長の回転軸回りに正逆回転(回動)すると、入力支点軸95及び操向入力部材96は入力軸92の左右横長芯線回りに回動して前後方向に傾動する。そして、鉛直方向に延びる操向入力軸88の回転軸心と、変速入力軸92の左右横長の回転軸心とが交叉する交点部に自在継手94が取付けられており、操縦ハンドル17で操向入力軸88を正逆回転操作すると、操向入力部材96と入力連結体98とは操向入力軸87の軸心回りに正逆転する。
【0050】
図8,10に示すように、操縦ケース24の下部でかつ後側部には、左右横長の主変速軸100が回転自在に軸支されている。主変速軸100の右端部は操縦ケース24にベアリングを介して軸支されており、他方、左端部は操縦ケース24の左側に露出しており、この主変速軸100の左露出部には、サイドコラム18の下方の機台1aに回転自在に設けた中介軸(図示せず)が、リンク101,102並びに長さ調節ターンバックル103付きロッド104を介して連結されている。
【0051】
図5に概略を示すように、リンク101と主変速レバー19とは、ロッド104や他の部材(図示せず)を介して相対回動可能に連結されており、主変速レバー19を前後方向に揺動させると主変速軸100が正逆回転する。また、図5から用意に理解できるように、ロッド形主変速部材105を介して変速入力軸92と主変速軸100とが連動連結されており、主変速レバー19の前後回答によって主変速軸100が正逆回転すると、操向入力部材96が変速入力軸92の軸心回りに前後に傾動する。
【0052】
主変速軸100には筒軸形の操向出力軸108が相対回転自在に被嵌しており、操向出力軸108にはこれと直交した方向に延びるリンク形操向出力部材109が固定されている。操向出力部材109には、球関継手形操向出力連結部110を介して操向結合部材111が連結されており、ロッド形操向結合部材111は入力連結体98に自在継手形操向入力連結部112を介して連結されている。操向出力軸108,操向出力部材109,操向結合部材111,操向入力連結部112といった部材は操向系113を構成している。
【0053】
操向出力軸108の上方には変速出力軸115が配置されており、この変速出力軸115は操縦ケース24の内部に回転自在に軸支されている。変速出力軸115にはこれから前向きに延びるリンク形変速出力部材116が固定されている。変速出力軸120の後端には、球関継手形変速出力連結部117を介して上下長手の変速結合部材118の下端部が連結されており、ロッド形変速結合部材118の上端部は入力連結体98に自在継手形変速入力連結部119を介して連結されている。変速出力軸115,変速出力部材116,変速結合部材118,変速入力連結部119といった部材により、走行速度の変更並びに前後進の切換を行う変速系120が構成されている。
【0054】
操縦ケース24の下部後側でかつ左右中央部には上下長手の軸受部121が設けられており、この軸受部121に、内側の操向操作軸122と外側の変速操作軸123とが相対回転自在に嵌まり合った二重軸構造体が相対回転自在に軸支されている。変速操作軸123の上端部は、長さ調節自在な球関継手軸124及び変速リンク125,126を介して変速出力軸115に連結されている。更に、操向操作軸122の上端部は、長さ調節自在な球関継手軸127及び操向リンク128,129を介して操向出力軸108に連結されている。
【0055】
操作軸122,123の下端部は、操縦ケース24の底面下方に突出し、かつ、運転席14における作業者搭乗ステップ(床板)16の下方に露出している。前記主変速機構27の出力制御軸(図示せず)に車速制御アーム(図示せず)を固定し、ターンバックル(付き長さ調節自在車速ロッド130及び車速リンク131を介して前記変速操作軸123の下端部と車速制御アームに連結している。出力制御軸の正逆転操作によって第1油圧ポンプ29の斜板角調節を行うことで第1油圧モータ30の回転数制御及び正逆転切換が行われ、これにより、走行速度(車速)の無段階変更並びに前後進の切換が行われる。
【0056】
また、旋回機構28の出力制御軸(図示せず)に操向制御アームが固定されており、ターンバックル付きで長さ調節自在旋回ロッド132及び旋回リンク133を介して操向操作軸122の下端部と操向制御アームとが連結されている。そして、出力制御軸を正逆転操作して第2油圧ポンプ31の斜板角調節を行うことで第2油圧モータ32の回転数制御及び正逆転切換を行い、これにより、操向角度(旋回半径)の無段階変更並びに左右旋回方向の切替えが行われる。
【0057】
例えば図6に示すように、前記操縦ケース24の右側外面にはアクセルレバー134が前後回動自在に取付けられており、アクセルレバー134に設けたアーム134aとエンジン22とを繋ぐアクセルワイヤ135が操縦ケース24の前部内面に沿うように配置されている。アクセルレバー134を回動操作すると、エンジン22の回転数を手動調節できる。図9に示すように、操縦ケース24の後面にはメンテナンス窓136が開口しており、このメンテナンス窓136は着脱自在な蓋137で塞がれている。
【0058】
(4).走行制御及び操向制御の動き
既述のとおり、変速系120の動作量に比例して操向系113の操向量が変化するもので、高速側走行変速によって操向量が自動的に拡大し、かつ低速側走行変速によって操向量が自動的に縮少する。また、操縦ハンドル17の一定量の回転操作により、走行速度に関係なく左右走行機体1の旋回半径を略一定に維持される。
【0059】
従って、穀稈列に機体を沿わせる進路修正などが行える。また、操向操作によって操向入力軸88を回転させて操向入力部材96を作動させることにより、例えば旋回させ乍ら走行速度を減速させる動作が行われ、変速操作によって変速入力軸92を回転させて操向入力部材96を作動させることにより、走行変速による旋回半径の拡大縮少並びに走行変速中立による旋回出力の中止などの操作が行われる。
【0060】
また、操向入力部材96と操向結合部材111を連結させる操向入力連結部112を変速入力軸92の軸心上に配設して、変速入力部材96と変速結合部材118を連結する変速入力連結部119を、変速入力軸92の軸心と交叉する直線A上に配設しているため、操向入力軸88及び変速入力軸92を中心とする操向入力部材96の相対的な運動を容易に設定でき、設計及び組立及び構造の簡略化並びに動作の信頼性向上などを図れる。
【0061】
また、変速入力軸92の軸心と操向入力軸88の軸心とが交叉する軸芯交点Bを中心とする円周C上に、変速入力連結部119並びに操向入力連結部112を配設したため、操向入力部材96などの構造の簡略化及びコンパクト化などが図られる。
【0062】
更に、変速入力軸92と操向入力軸87との軸芯交点Bに対して、変速出力連結部117の距離と操向出力連結部110との距離を異ならせ、変速出力連結部117と操向出力連結部110を同一直線D上で離間させることにより、各連結部110,123の干渉防止並びに移動範囲の設定などを容易に行え、その結果、変速結合部材118及び操向結合部材111を狭少場所に設置できて装置をコンパクト化できる。
【0063】
また、変速入力連結部112と操向入力連結部119とが、変速入力軸92と操向入力軸88の軸芯交点Bを中心とする円周C上で約90度離間しているため、変速入力軸92の回転によって操向入力連結部112を一定位置に維持させながら変速入力連結部119の変位量を最大にして走行変速を行わせることができる。また、各入力連結部112,122を移動させる平面上に変速入力軸92を配置させる構造として各連結部112,122の移動量を容易に確保しつつ、コンパクトで機能的に操向入力部材96を配置できる。
【0064】
また、操向入力軸88の回りに約90度の範囲内で変速入力連結部119及び操向入力連結部112が移動するため、前後進切換による逆ハンドル現像の防止並びに各入力連結部112,122の移動量の確保ができると共に、操向入力軸88を回転させる操向角度に応じて変速入力連結部119を減速方向に移動させる動作と、旋回内側の走行機体1を逆転させるスピンターン動作を容易に行わせることができ、このため、コンパクトな構造でありながら高い機能を有している。
【0065】
また、スピンターン動作は、操向部材28の出力により差動機構37を介して左右クローラ2の一方を正転させて他方は逆転させることにより、左右走行機体1の前後及び左右中心点回りに旋回させる動作であるが、前後進走行と旋回とが同時に行われて前後進出力である変速部材25の回転と旋回出力である操向部材28の回転の割合により旋回半径が決定される。
【0066】
(5).切り替え機構の具体的構成
次に、左右クローラ2が同じ方向に周回して旋回するノーマルモードと左右クローラが互いに逆方向に周回して急旋回するスピンターンモードとの切り替え機構を説明する。この切り替え機構は図10に表されている。
【0067】
図8,10に示すように、前記変速出力軸115は、その左右両端部に嵌まったベアリング138を介して操縦ケース24の軸受け部139に回転可能に取付けられており、この変速出力軸115に、筒形の減速出力軸140と直結出力軸141とが相対回転自在に被嵌している。
【0068】
減速出力軸140には変速出力部材116が固定されており、また、変速出力軸115の右端部寄り部位には変速リンク125が固定されている。また、主変速軸100には筒体143を介して直結入力リンク144が固定されて、直結出力軸141には直結出力リンク145が固定されており、入力リンク144の軸146に設けたローラ147を出力リンク145の長穴148に摺動自在に嵌入させている。更に、各リンク144,145を介して主変速軸100に直結出力軸141が連結されており、従って、各軸99,141は連動して回転する。
【0069】
また、変速出力軸115は中空の筒状になっていてその内部にクラッチ軸149がスライド自在に挿入されており、クラッチ軸149のうち変速出力軸115の左右略中間部にとなる部分には、上下長手のクラッチピン150が嵌め込まれている。変速出力軸115には、クラッチピン150が左右スライド可能に嵌まる長穴115aが形成されており、更に、減速出力軸140及び直結出力軸141には、クラッチピン150がスライドすることで係脱(嵌脱)するノッチ151,152をそれぞれ形成している。本実施形態では、変速出力軸115が請求項に記載した「筒体」に該当する。
【0070】
従って、クラッチ軸149のスライド操作により、変速出力軸115は、クラッチピン150及びノッチ151,152を介して減速出力軸140と直結出力軸141のいずれか一方に選択的に連結させられる。
【0071】
クラッチ軸149の右端面には、操縦ケース24の右側面から外側に露出した操作部153がナット154で固定されている。従って、操縦ケース24には操作部153を貫通させるための穴が空いている。操作部153はフランジを有していて操縦者が手で摘んで引き出すことができるようになっている。なお、操作部153はクラッチ軸149に一体に形成することも可能である。
【0072】
変速出力軸119のうち減速出力軸140を挟んで直結出力軸141と反対側の部位には上向きに開口した窓穴155が開口している一方、クラッチ軸149の左端部は窓穴155の奥まで延びており、クラッチ軸149のうち窓穴155に露出し得る部位に、第1環状凹所156と第2環状凹所157との2条の環状凹所が形成されている。両環状凹所156,157は断面円弧状に形成されているが、断面V形や断面角形とすることも可能である。
【0073】
そして、変速出力軸119のうち窓穴155を挟んで減速出力軸140と反対側の部分の上面は平坦面になっており、この平坦面に、自由端が窓穴155まで入り込む板ばね製の弾性板158がボルト159で固定されており、弾性板158の自由端寄り部位に、当該弾性体158が撓み変形することでクラッチ軸149の環状凹所156,157に選択的に嵌合する山形のストッパー部160を折り曲げ形成している。なお、ボルト159はクラッチ軸149を押し込み位置を規制するストッパーに兼用させることも可能である。
【0074】
(6).まとめ
図8及び図10のようにクラッチ軸149が押し込まれている状態では、クラッチピン150が減速出力軸140のノッチ151に係合している。この状態はノーマルモードになっており、減速出力軸140を介して主変速レバー17に主変速機構27が連結された状態では、操縦ハンドル17の操作量に比例して車速が減速する。そして、弾性板158のストッパー部160がクラッチ軸149の第1環状凹所156に嵌まっていることにより、ノーマルモードが保持されている。
【0075】
他方、クラッチ軸149を外側に向けて引くと、クラッチピン150は直結出力軸141のノッチ152に係合し、直結出力軸141を介して主変速レバー19が主変速機構27に連結されたスピンターンモードになっており、この状態では、操縦ハンドル19を回転操作すると左右のクローラ2が逆方向に周回して走行機体1を急旋回させることができる。そして、そして、弾性板158のストッパー部160がクラッチ軸149の第2環状凹所157に嵌まっていることにより、スピンターンモードが維持されている。いうまでもないが、クラッチ軸149は弾性板158の弾性変形に抗して押し引きすることができる。
【0076】
クラッチ軸149の引き動作は一般には操縦者が手で行うが、押し動作は足で操作部153を蹴ることでも行える。また、クラッチ軸149のスライド操作はモータや電磁ソレノイドで行うことも可能であり、或いは、操縦者が座席に腰掛けた状態で手を伸ばして操作できるレバーを操縦ケース24等に設けることも可能である。
【0077】
また、クラッチ手段として実施形態のようなクラッチピンとノッチ(係合穴)との組み合わせを採用する必然性はないのであり、例えばクラッチ板の嵌め合わせといった他の構成を採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本願発明を適用したコンバインの全体の側面図である。
【図2】コンバインの全体の平面図である。
【図3】(A)コンバインの前部の側面図、(B)は(A)のB−B視断面図である。
【図4】走行制御及び操向制御の系統の概略を示す模式図である。
【図5】制御系統の模式図である。
【図6】図3(A)の略上半部のY−Y視断面図である。
【図7】図3(B)の略上半部のZ−Z視断面図である。
【図8】図3(A)の略下半部のY−Y視断面図である。
【図9】図3(B)の略下半部のZ−Z視断面図である。
【図10】図8の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0079】
1 走行機体
2 クローラ
4 駆動輪
17 操縦ハンドル
19 主変速レバー
24 操縦ケース
27 主変速機構
28 操向機構
115 変速出力軸
140 ノーマルモード用の減速出力軸
141 スピンターンモード用の直結出力軸
149 クラッチ軸
150 クラッチピン
153 クラッチ軸の操作部
156,157 位置決め手段を構成する環状凹所
158 位置決め手段を構成する弾性板
160 ストッパー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンで駆動される走行機体に運転席を設け、運転席又はその近傍に、走行機体の走行又は操向の切り替え若しくは作業部の制御の切り替えを行うためのクラッチ軸が、軸方向のスライドによって制御状態が切り替わるように配置されており、前記クラッチ軸には操縦者が手又は足でスライド操作できる操作部が設けられており、更に、前記クラッチ軸は、位置決め手段により、一方の側にスライドした状態と他方の側にスライドした状態とに選択的に保持されるようになっている、
という乗用型作業機であって、
前記位置決め手段は、クラッチ軸に形成した二つの凹所又は突起と、前記突起又は凹所の近傍に配置された帯板状又は線状の弾性体とから成っており、前記弾性体には、前記クラッチ軸における2つの凹所又は突起に選択的に嵌脱できるストッパー部が形成されており、前記弾性体がクラッチ軸の外周に対して離反・接近するように弾性変形することにより、クラッチ軸のスライドにて弾性体のストッパー部が凹所又は突起に嵌合・離反することを許容している、
乗用型作業機。
【請求項2】
エンジンを搭載すると共に左右のクローラを備えた走行機体と、前記走行機体に設けた運転席と、前記運転席に設けた回転式の操縦ハンドルと、前記操縦ハンドルの回転操作によって走行機体の進行方向と車速とを変える制御機構とが備えられており、前記制御機構はその前部又は大部分が操縦ケースに内蔵されており、前記操縦ケースに、左右クローラを正転状態で周速度を変えることで緩く旋回するノーマルモードと左右クローラを逆方向に周回させて急旋回できるスピンターンモードとに切り替えるためのクラッチ軸が、軸方向にスライドするように筒体に嵌められた状態で配置されており、更に、前記するノーマルモード位置とスピンターンモード位置とに選択的に保持する位置決め手段が設けられている、
というクローラ走行方式の乗用型作業機であって、
前記クラッチ軸の位置決め手段は、前記クラッチ軸の外周に形成した2つの凹所又は突起と、前記2つの凹所又は突起に選択的に嵌脱するストッパー部を有する弾性板とからなっており、前記2つの凹所はクラッチ軸の軸方向に離反している一方、前記弾性板は前記筒体又はその近傍の部材に固定されており、弾性板がクラッチ軸の外周に対して離反・接近するように弾性変形することにより、弾性板のストッパー部がクラッチ軸の2つの凹所又は突起に嵌脱することを許容している、
クローラ走行方式の乗用型作業機。
【請求項3】
前記操縦ケースは運転席の床から上向きに立ち上がる縦長姿勢になっている一方、前記クラッチ軸は略水平状の姿勢であり、前記クラッチ軸に操縦ケースの外側に露出した操作部を設けることにより、操縦者が手又は足でクラッチ軸をスライド操作できるようになっている、
請求項2に記載したクローラ走行方式の乗用型作業機。
【請求項4】
前記クラッチ軸には軸方向に離間した2つの環状凹所が形成されている一方、前記弾性板は板ばね製であり、この弾性板を、ストッパー部が自由端となるように片持ち梁の状態で前記筒体の外面にボルトで固定しており、前記ストッパー部は凹所に向けて凸の山形に形成されている、
請求項2又は3に記載したクローラ走行方式の乗用型作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−20615(P2009−20615A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181405(P2007−181405)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】