説明

二色成形品の成形方法並びに成形金型

【課題】射出成形工法を採用した二色成形品の成形方法並びに成形金型であって、見切りライン付近の絞流出を防ぎ、外観性能を高める。
【解決手段】成形金型40における成形上型50は、ドアトリムアッパー側上型51と、ドアトリムロア側上型52の分割構造とし、ドアトリムロア側上型52は、ガススプリング54を介して支持プレート53aに支持され、かつ外周シリンダ63の動作によりドアトリムアッパー側上型51に対してドアトリムロア側上型52を上方に押し上げて、両者間に段部56を形成し、この段部56における金型側面51aに成形下型60に配置した分割ブロック82のシール面83を摺接シールすることで、分割ブロック82が金型の製品面に触れることなく、第1のキャビティC1と第2のキャビティC2とを区画する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドアトリム、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、ラゲージトリム、トランクトリム、リヤサイドトリム等の自動車用内装部品に好適な二色成形品の成形方法並びに成形金型に係り、特に、見切りライン付近における製品表面の外観性能を高めることができる二色成形品の成形方法並びに成形金型に関する。
【背景技術】
【0002】
図10は、自動車用内装部品の代表的な部品である自動車用ドアトリムを示す正面図であり、この自動車用ドアトリム1は、その外観意匠性を高めるために、ドアトリムアッパー2とドアトリムロア3との間で色彩を相違させた二色成形品から構成されている。
【0003】
そして、このドアトリム1を成形する成形金型4の構成について図11,図12を基に説明する。まず、成形金型4は、可動側金型5と固定側金型6が相互に型締め、型開き可能に設けられており、ドアトリムアッパー2とドアトリムロア3とを区画する見切り部分には固定側金型6に分割バー7が設けられている。この分割バー7は、駆動シリンダ7aにより所定ストローク上下動作を行ない、ドアトリムアッパー2の成形時には、駆動シリンダ7aの駆動により、キャビティ8内に臨み、ドアトリムアッパー成形用キャビティ8aとドアトリムロア成形用キャビティ8bとを区画することで、ドアトリムアッパー2側の溶融樹脂M1がドアトリムロア成形用キャビティ8b内に侵入することを阻止し、ドアトリムロア3の成形時には分割バー7が後退して、ドアトリムアッパー2とドアトリムロア3との一体成形が行なわれる。
【0004】
すなわち、ドアトリムアッパー2の成形時には、図12(a)に示すように、分割バー7の上昇により、分割バー7の先端面7bが可動側金型5の型面に突き当たり、キャビティ8は、ドアトリムアッパー成形用キャビティ8aとドアトリムロア成形用キャビティ8bとに区画される。そして、ドアトリムアッパー成形用キャビティ8aに溶融樹脂M1が射出充填され、ドアトリムアッパー2がまず所要形状に成形される。
【0005】
次に、ドアトリムアッパー2の成形が完了すれば、図12(b)に示すように、駆動シリンダ7aの収縮動作により、分割バー7が下降して、キャビティ8から後退し、ドアトリムロア成形用キャビティ8b内に溶融樹脂M2が射出充填され、ドアトリムロア3がドアトリムアッパー2と一体に成形されて図10に示すドアトリム1の成形が完了する。二色成形品を同一の金型内で分割バーを使用して成形する従来例としては、特許文献1に詳細に示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平8−267479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来では、同一の成形金型4を使用して、二色成形品(ドアトリム1)を成形するには、キャビティ8を分割する分割バー7が通常使用されており、この分割バー7は、一方側のキャビティ8aに充填される溶融樹脂M1が他方側のキャビティ8b内に侵入しないように、図12(a)に示すように、可動側金型5の型面にその先端面7bを突き当てることにより、樹脂漏れを防止するという構成であるが、通常、製品表面に位置する可動側金型5には、外観性能を高める絞模様が刻設されているが、上述したように、分割バー7の先端面7bが可動側金型5の絞面に突き当たるため、成形を繰り返せば、絞模様が消失する傾向にあり、絞模様に艶ムラが生じ易く、見切りライン付近の外観性能を著しく低下させるという欠点が指摘されている。
【0008】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、キャビティを分割する分割機構部を備えた成形金型を使用して、二色成形品を成形する二色成形品の成形方法並びに成形金型において、見切りライン付近に艶ムラが発生することがなく、製品表面全体に亘り優れた外観見栄えが得られる二色成形品の成形方法並びに成形金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者は、成形上型を樹脂成形品の境界ラインに対応して分割構成し、一方側を固定側、他方側を可動側として両者間に段部を設定し、この段部側面に分割バーを摺接することで、分割バーが金型と突き当たることを回避できることに着目し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、成形金型内に少なくとも二つ以上のキャビティが設定され、各キャビティに対応する射出機から溶融樹脂を射出充填して、複数の樹脂成形品を接合一体化してなる二色成形品の成形方法において、前記成形金型における成形上型が樹脂成形品に対応して二つの分割金型に分割され、成形上下型を型締めした後、一方側の分割金型に対して他方側の分割金型を上昇させ、分割金型の境界部分に段部を設ける一方、上記境界部分に沿って成形下型に配設された分割機構部における分割ブロックを上昇させて、上記境界部分に沿う一方側の分割金型の側面と分割ブロックとを摺接シールすることで、二つのキャビティを区画した後、第1のキャビティ内に溶融樹脂を射出充填して、一方側の樹脂成形品を成形する一方側の樹脂成形品の成形工程と、成形上型における他方側の分割金型を下降操作するとともに、成形下型に配設された分割機構部における分割ブロックを下降操作して、一方側の樹脂成形品の端末に臨むように第2のキャビティを形成し、この第2のキャビティ内に溶融樹脂を射出充填して、一方側の樹脂成形品と他方側の樹脂成形品を一体化する他方側の樹脂成形品の成形工程とからなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明方法に使用する成形金型は、複数の樹脂成形品を接合一体化してなる二色成形品を成形する際に使用する成形金型であって、この成形金型は、相互に型締め、型開き可能な成形上下型からなり、成形上型は、複数の樹脂成形品に対応する分割金型から構成される分割構造が採用され、一方側の分割金型は、シリンダの支持プレートに連結され、他方側の分割金型は、支持プレートに対してガススプリングを介して上下動可能に支持され、該分割金型が成形下型の外周シリンダにより上方に持ち上げられることで、分割金型の境界部分に沿って段部が形成されるとともに、成形下型は、溶融樹脂の供給系としての射出機を備え、かつ樹脂成形品の見切りラインに沿って分割機構部が装備され、この分割機構部は、シリンダの駆動により分割ブロックが昇降駆動され、この分割ブロックは、成形上型における段部の側面に摺接シールして、成形上型のキャビティに臨む金型面と接触することなく複数のキャビティを区画可能としたことを特徴とする。
【0012】
ここで、二色成形品とは、単一の成形金型に少なくとも二つ以上の異なるキャビティを設定し、各キャビティに異種材料を射出充填することで、少なくとも外観の異なる複数の樹脂成形品を接合一体化して成形される成形品のことをいう。尚、一方側の樹脂成形品の表面には、表皮を積層一体化することもできる。この二色成形品は、例えば、ドアトリム、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、ラゲージトリム、トランクトリム、リヤサイドトリム等の自動車用内装部品全般に適用できる。
【0013】
上記樹脂成形品の樹脂材料としては、1種類の熱可塑性樹脂でも2種類以上の熱可塑性樹脂からなっても良い。好ましくは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等が使用でき、これらの熱可塑性樹脂中に各種充填剤を混入しても良い。使用できる充填剤としては、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機繊維、タルク、クレイ、シリカ、炭酸カルシウム等の無機粒子がある。また、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、低収縮剤等の各種の添加剤が配合されても良い。
【0014】
次いで、本発明方法に使用する成形金型は、所定ストローク上下動可能な成形上型と、この成形上型の下方側に位置する固定側である成形下型と、成形下型に連結され、複数のキャビティに異なる溶融樹脂を供給する複数の射出機と、成形下型に配置される分割機構部とから構成されている。更に、成形上型は、複数の樹脂成形品に対応して分割金型として分割構成され、一方側の分割金型は支持プレートに固定されるとともに、他方側の分割金型はガススプリングを介して支持プレートに上下動可能に支持されている。そして、この他方側の分割金型は、一体化された外周ブロックを成形下型の外周シリンダの押圧ブロックにより持ち上げることで上昇するとともに、外周シリンダからの押圧力が解除されれば、ガススプリングにより正規位置に押し下げられ、製品表面に位置する。尚、支持プレートには昇降シリンダが連結されており、特に、他方側の分割金型が上昇した際に一方側の分割金型と他方側の分割金型との間、すなわち境界ラインに沿って段部が形成され、この段部側面がシール面として有効に利用される。
【0015】
成形下型に配置される分割機構部は、シリンダにより分割ブロックが上下動可能に支持され、成形上型の分割金型同士の境界部に設けられる段部側面に分割ブロックが上昇して摺接シールすることで第1のキャビティと第2のキャビティとを区画する。そして、段部側面と分割ブロックによりシールした状態で第1のキャビティ内に溶融樹脂を射出充填することで第1の樹脂成形品を成形することができる。その後、分割機構部におけるシリンダが収縮動作して、分割ブロックが下降すると同時に外周シリンダからの押圧力が解除されることで、ガススプリングにより他方側の分割金型が下降して、第1の樹脂成形品と連通するように第2のキャビティが形成される。
【0016】
次に、本発明方法の各工程について説明する。まず、第1の樹脂成形品の成形工程としては、成形上型が下降すると同時に、他方側の分割金型の外周ブロックが成形下型の外周シリンダの伸長動作により上方に押し上げられることで成形上型には分割金型同士の境界部に沿って段部が形成されるとともに、成形下型に配置された分割機構部におけるシリンダが伸長動作して分割ブロックが上昇して、成形上型側の段部側面と分割ブロック内面との間でシールされ、第1のキャビティと第2のキャビティとが良好なシール性でもって区画された後、第1のキャビティ内に溶融樹脂が射出充填されて所要形状に第1の射出成形品が成形される。
【0017】
更に、分割機構部におけるシリンダが収縮することで分割ブロックが下降するとともに、他方側の分割金型の外周ブロックの応力が外周シリンダの収縮動作により解除されることでガススプリングの作用により分割金型は下方に押圧されて第1の樹脂成形品の製品表面と面一となる位置まで下降し、第1の樹脂成形品の端縁部に臨むように第2のキャビティが形成され、この第2のキャビティ内に射出機から溶融樹脂が射出充填されて第1の樹脂成形品と一体に第2の樹脂成形品が所要形状に成形される。
【0018】
このように、本発明方法によれば、分割ブロックを成形上型における分割金型間の段部側面に摺接シールして、第1のキャビティと第2のキャビティとを区画するというものであるため、分割機構部は、成形上型の製品面に突き当てる構成ではないことから、絞模様が損傷を受けることがなく、見切りラインに沿って外観見栄えを長期に亘り良好に維持できる。更に、成形金型や分割ブロックの損傷も未然に防止でき、金型の寿命を長期化することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明した通り、本発明に係る二色成形品の成形方法並びに成形金型は、成形上型の構成として製品の見切りラインに沿って分割した分割金型構造を採用し、一方側を固定式、他方側を上下可動式として、分割金型間に段部面を形成して、複数のキャビティを区画する際にはこの段部側面に成形下型の分割ブロック側面を摺接シールすることでキャビティを区画することができるため、成形上型の製品面に分割機構部のブロックが突き当たることがないことから、絞模様の消失等の不具合を有効に解決でき、外観性能を高めることができるとともに、成形上型及び分割ブロックの損傷も未然に防止でき、成形金型の寿命を長期化できるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る二色成形品の成形方法並びに成形金型の実施例について、上下二分割タイプの自動車用ドアトリムの成形方法を例示して説明する。尚、念のため付言すれば、本発明の要旨は特許請求の範囲に記載した通りであり、以下に説明する実施例の内容は、本発明の一例を単に示すものに過ぎない。
【実施例】
【0021】
図1乃至図9は本発明の一実施例を示すもので、図1は本発明に係る二色成形品の成形方法を適用して成形した自動車用ドアトリムを示す正面図、図2は同自動車用ドアトリムの構成を示す断面図、図3は本発明に係る二色成形品の成形金型の全体構成を示す概要図、図4,図5は同成形金型における分割金型間の境界部分の構成を示す各構成説明図、図6乃至図9は本発明方法に係る二色成形品の工程を示す各説明図である。
【0022】
図1,図2において、自動車用ドアトリム10は、ドアトリムアッパー20とドアトリムロア30との上下二分割体から構成されており、ドアトリムアッパー20とドアトリムロア30との間には、見切りライン11が設定されている。更に、外観上のアクセント効果を強調できるように、ドアトリムアッパー20とドアトリムロア30とは色彩を相違させた樹脂成形品で構成し、ドアトリムアッパー20及びドアトリムロア30のそれぞれ製品面20a,30aは、絞模様が後述する成形金型から転写されている。尚、ドアトリム10には、各種の付属部品、例えば、ドアトリムアッパー20にはインサイドハンドルエスカッション21が取り付けられており、見切りライン11の上方に乗員が肘を掛けて休めるアームレスト22が形成されている。一方ドアトリムロア30には、ドアポケット開口31が開設されており、このドアポケット開口31のフロント側にスピーカグリル32がドアトリムロア30と一体、あるいは別体に設けられている。尚、図2中符号33はポケットバックカバーを示し、符号34はドアパネルを示す。
【0023】
そして、本発明に係るドアトリム10においては、ドアトリムアッパー20とドアトリムロア30との間の見切りライン11付近の外観性能が向上しているとともに、ドアトリムアッパー20とドアトリムロア30との接合強度が強化されていることが特徴である。ドアトリム10の構成上の特徴については、本発明方法と密接に関係しているため、本発明方法を説明する際に併せて詳述する。
【0024】
次いで、図3乃至図5に基づいて、上記ドアトリム10を成形する成形金型40の構成について説明する。成形金型40の全体構成について図3を基に説明すると、成形金型40は、射出成形工法が採用され、成形上型50、成形下型60、溶融樹脂M1,M2を供給する射出機70,71及び成形下型60に配備される分割機構部80とから大略構成されている。
【0025】
そして、上記成形上型50は、ドアトリムアッパー20とドアトリムロア30のそれぞれの製品面に対応するドアトリムアッパー側上型51とドアトリムロア側上型52の分割金型構造であり、昇降シリンダ53を連結した支持プレート53aにドアトリムアッパー側上型51は直接固定され、ドアトリムロア側上型52はガススプリング54を介して取り付けられている。すなわち、支持プレート53aに対してドアトリムロア側上型52は、上下動可能に支持されることになる。また、ドアトリムロア側上型52の外周に沿って外周ブロック55が一体化されている。更に、成形上型50の4隅部には、ガイドブッシュ(図示せず)が設けられている。
【0026】
次いで、成形下型60には2基の射出機70,71が連設され、この射出機70,71から供給される溶融樹脂M1,M2の樹脂通路が成形下型60に設けられている。具体的には、第1の射出機70からマニホールド61a、ゲート62aを通じて第1の溶融樹脂M1が第1のキャビティC1に供給される。一方、第2の射出機71からマニホールド61b、ゲート62bを通じて第2の溶融樹脂M2が第2のキャビティC2に供給される。そして、成形下型60の4隅部には、成形上型50のガイドブッシュ内に嵌合するガイドポスト(図示せず)が設けられており、ガイドポスト内にガイドブッシュが案内されることでプレス時における成形上型50のプレス姿勢を適正に維持することができる。更に、成形下型60には、成形上型50におけるドアトリムロア側上型52の外周ブロック55に対応するように外周シリンダ63が配置され、外周シリンダ63の駆動により上下駆動される成形下型側の外周ブロック63aが成形上型50側の外周ブロック55を上方に持ち上げる。
【0027】
更に、成形下型60内に配置される分割機構部80は、図4,図5に示すように、成形上型50におけるドアトリムアッパー側上型51とドアトリムロア側上型52との境界ラインに沿って配設されており、シリンダ81のピストンロッド81aに長尺状の分割ブロック82が上下動可能に支持されている。この分割ブロック82にシール面83が段部状に形成されている。
【0028】
次いで、図4,図5を基に成形上型50における分割金型(ドアトリムアッパー側上型51、ドアトリムロア側上型52)の動作及び成形下型60側の分割機構部80の動作について説明すると、成形上型50は、支持プレート53aにドアトリムアッパー側上型51とドアトリムロア側上型52がそれぞれ支持されているが、ドアトリムロア側上型52は、ガススプリング54を介して支持されており、通常、外周ブロック55に成形下型60側の外周シリンダ63からの応力が作用していない場合は、ガススプリング54のスプリング圧により、ドアトリムアッパー側上型51の製品面とほぼ連続面を形成するようになっている(図4参照)。
【0029】
そして、成形下型60の外周シリンダ63が伸長動作した場合、図5に示すように、成形下型60側の外周ブロック63aにより成形上型50側の外周ブロック55が上方に持ち上げられることで、ドアトリムロア側上型52が上昇して、ドアトリムアッパー側上型51とドアトリムロア側上型52との間に段部56が形成され、一方側のドアトリムアッパー側上型51の縁部にシールシロが確保される(図5参照)。
【0030】
更に、この状態で分割機構部80のシリンダ81が伸長動作すれば、分割ブロック82が上昇して、分割ブロック82のシール面83が成形上型50の段部56、すなわちドアトリムアッパー側上型51の側面51aと摺接することで、良好なシールが行なわれ、この構造は、製品面を分割機構部80が突き当てることがないため、艶ムラがなく、良好な外観性能が得られる。
【0031】
次いで、ドアトリム10の成形方法について、図6乃至図9を基に説明する。まず、図3に示す成形金型40の型開き状態から成形上型50が所定ストローク下降動作して、図6に示すように、成形上下型50,60が型締めされる。そして、この状態において、第1の射出機70から溶融樹脂M1がマニホールド61a、ゲート62aを通じて第1のキャビティC1内に射出充填されて、第1のドアトリムアッパー20が所要形状に成形される。この時、図7に示すように、ドアトリムロア側上型52は、外周ブロック55が成形下型60側の外周シリンダ63の駆動により上方に押し上げられており、ドアトリムアッパー側上型51とドアトリムロア側上型52との間に段部56が形成され、この段部56における金型側面51aに対して分割機構部80における分割ブロック82のシール面83が摺接することで、第1のキャビティC1と第2のキャビティC2とが確実にシールされ、溶融樹脂M1が樹脂漏れすることがなく、精度の良い成形が可能となる。そして、この時、分割ブロック82は、ドアトリムアッパー側上型51及びドアトリムロア側上型52の製品面に突き当たることがないため、絞模様の消失や艶ムラの発生がなく、良好な外観性能を確保することができる。
【0032】
そして、図8に示すように、ドアトリムアッパー20の成形が完了すれば、第2の射出機71を通じて第2の溶融樹脂M2がマニホールド61b、ゲート62bを通じて第2のキャビティC2内に射出充填されてドアトリムアッパー20と一体にドアトリムロア30が所要形状に一体成形される。この時、図9に示すように、成形下型60に配置された外周シリンダ63が収縮動作することで、成形上型50の外周ブロック55は応力が解除されるため、ガススプリング54の応力によりドアトリムロア側上型52が下降して、製品表面位置まで下降する。この時、分割機構部80におけるシリンダ81が収縮動作して、分割ブロック82が下降することにより、ドアトリムアッパー20の端縁部分に新たなスペースが形成され、この新たなスペースは、第2のキャビティC2と連通する。
【0033】
尚、第1のキャビティC1内に射出充填する溶融樹脂M1は、本実施例においては、住友ノーブレンBUE81E6(住友化学工業製ポリプロピレン、メルトインデックス=65g/10分)にタルクが適宜割合で混入されているものが使用され、第2のキャビティC2内に供給される溶融樹脂M2についても、溶融樹脂M1と彩色を異にした同一素材を使用している。
【0034】
このように、本発明方法によれば、ツートンタイプの自動車用ドアトリム10を製造する際、成形下型60に2基の射出機70,71を連設して、ドアトリムアッパー20とドアトリムロア30とについて、各樹脂通路を通じて溶融樹脂M1,M2を射出充填するとともに、成形上型50として、分割金型構造を採用し、分割金型51,52間に段部56を形成する一方、この段部56の側面にシール可能に分割ブロック82を成形下型60内に上下動可能に配置するという構成を採用することで、ドアトリムアッパー20とドアトリムロア30とを一体化でき、単一の成形金型40を使用し、一連の工程でツートンタイプの自動車用ドアトリム10を簡単に製造することができるとともに、特に、分割機構部80における分割ブロック82を製品面となる成形金型面に突き当てることがないため、絞模様等の消失がなく、見切りライン11付近の外観性能を良好に維持できるという利点を備えている。更に、ドアトリムアッパー20とドアトリムロア30は、両者間に境界溝部が形成されることがなく、ドアトリムアッパー20とドアトリムロア30の一体感を強調することで良好な外観性能を付与することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上説明した実施例は、ドアトリムアッパー20とドアトリムロア30とからなる上下二分割構造のドアトリム10であるが、二色成形品であれば、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、ラゲージトリム、トランクトリム、リヤサイドトリム等、内装部品全般に適用することができる。更に、成形上型50における段部56面とシールする分割ブロック82のシール面83は、実施例のように段部面に設定する他、分割ブロック82の外側面をシール面として設定することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る二色成形品の成形方法を適用して製作したツートンタイプの自動車用ドアトリムを示す正面図である。
【図2】図1中II−II線断面図である。
【図3】図1に示す自動車用ドアトリムを成形する際に使用する成形金型の全体構成を示す説明図である。
【図4】図3に示す成形金型における分割金型間の境界部分の構成を示す説明図である。
【図5】図3に示す成形金型における分割金型間の境界部分の構成を示す説明図である。
【図6】図3に示す成形金型を使用するドアトリムの成形方法におけるドアトリムアッパーの成形工程を示す説明図である。
【図7】ドアトリムアッパーの成形工程における分割機構部の作用を示す説明図である。
【図8】図3に示す成形金型を使用するドアトリムの成形方法におけるドアトリムロアの成形工程を示す説明図である。
【図9】ドアトリムロアの成形工程における分割機構部の作用を示す説明図である。
【図10】従来のドアトリムを示す正面図である。
【図11】従来のドアトリムを成形する成形金型の構成を示す説明図である。
【図12】従来のドアトリムの成形に使用する分割バーの動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0037】
10 自動車用ドアトリム
11 見切りライン
20 ドアトリムアッパー
30 ドアトリムロア
40 成形金型
50 成形上型
51 ドアトリムアッパー側上型
52 ドアトリムロア側上型
53 昇降シリンダ
53a 支持プレート
54 ガススプリング
55 外周ブロック
56 段部
60 成形下型
61a,61b マニホールド
62a,62b ゲート
63 外周シリンダ
63a 外周ブロック
70 第1の射出機
71 第2の射出機
80 分割機構部
81 シリンダ
82 分割ブロック
83 シール面
C1 第1のキャビティ(ドアトリムアッパー成形用)
C2 第2のキャビティ(ドアトリムロア成形用)
M1,M2 溶融樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形金型(40)内に少なくとも二つ以上のキャビティ(C1,C2)が設定され、各キャビティ(C1,C2)に対応する射出機(70,71)から溶融樹脂(M1,M2)を射出充填して、複数の樹脂成形品(20,30)を接合一体化してなる二色成形品(10)の成形方法において、
前記成形金型(40)における成形上型(50)が樹脂成形品(20,30)に対応して二つの分割金型(51,52)に分割され、成形上下型(50,60)を型締めした後、一方側の分割金型(51)に対して他方側の分割金型(52)を上昇させ、分割金型(51,52)の境界部分に段部(56)を設ける一方、上記境界部分に沿って成形下型(60)に配設された分割機構部(80)における分割ブロック(82)を上昇させて、上記境界部分に沿う一方側の分割金型(51)の側面と分割ブロック(82)とを摺接シールすることで、二つのキャビティ(C1,C2)を区画した後、第1のキャビティ(C1)内に溶融樹脂(M1)を射出充填して、一方側の樹脂成形品(20)を成形する一方側の樹脂成形品(20)の成形工程と、
成形上型(50)における他方側の分割金型(52)を下降操作するとともに、成形下型(60)に配設された分割機構部(80)における分割ブロック(82)を下降操作して、一方側の樹脂成形品(20)の端末に臨むように第2のキャビティ(C2)を形成し、この第2のキャビティ(C2)内に溶融樹脂(M2)を射出充填して、一方側の樹脂成形品(20)と他方側の樹脂成形品(30)を一体化する他方側の樹脂成形品(30)の成形工程と、
からなることを特徴とする二色成形品の成形方法。
【請求項2】
複数の樹脂成形品(20,30)を接合一体化してなる二色成形品(10)を成形する際に使用する成形金型(40)であって、この成形金型(40)は、相互に型締め、型開き可能な成形上下型(50,60)からなり、成形上型(50)は、複数の樹脂成形品(20,30)に対応する分割金型(51,52)から構成される分割構造が採用され、一方側の分割金型(51)は、シリンダ(53)の支持プレート(53a)に連結され、他方側の分割金型(52)は、支持プレート(53a)に対してガススプリング(54)を介して上下動可能に支持され、該分割金型(52)が成形下型(60)の外周シリンダ(63)により上方に持ち上げられることで、分割金型(51,52)の境界部分に沿って段部(56)が形成されるとともに、成形下型(60)は、溶融樹脂(M1,M2)の供給系としての射出機(70,71)を備え、かつ樹脂成形品(20,30)の見切りライン(11)に沿って分割機構部(80)が装備され、この分割機構部(80)は、シリンダ(81)の駆動により分割ブロック(82)が昇降駆動され、この分割ブロック(82)は、成形上型(50)における段部(56)の側面に摺接シールして、成形上型(50)のキャビティに臨む金型面と接触することなく複数のキャビティ(C1,C2)を区画可能としたことを特徴とする二色成形品の成形金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−73112(P2009−73112A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245759(P2007−245759)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】