説明

二輪車走行支援装置

【課題】二輪車の安定性を確保しつつ、道路に設置した路側送信機から送信された当該道路における走行支援に関する情報を受信して二輪車の走行支援を行うことが可能な二輪車走行支援装置を提供する。
【解決手段】道路に設置したビーコンから送信されたISA及び停止制御に関する情報を受信して走行支援を行う二輪車走行支援装置において、ISA制御部43は、判定した二輪車の安定性に応じて、二輪車の走行支援の態様を変更するため、二輪車の安定性を確保しつつ、道路に設置したビーコンから送信された当該道路におけるISAに関する情報を受信して二輪車の走行支援を行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二輪車走行支援装置に関し、特に、道路に設置した路側送信機から送信された当該道路における走行支援に関する情報を受信して二輪車の走行支援を行う二輪車走行支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、道路に設置された光ビーコン等の路側送信機により、当該道路における走行支援に関する情報を車両に対して提供することが行われている。例えば、スクールゾーン等での走行速度の抑制を促す速度超過時情報提供システム(ISA:Intelligent Speed Adaptation又はIntelligent Speed Assistanceの略)等のシステムが提案されている。特許文献1には、道路に許容速度を示す信号を発信する装置を設置し、車両には受信機と車速センサとエンジン出力低下手段を設け、許容速度以上の車速が検出されるとエンジン出力を強制的に低下させることにより、道路状況からみて許容される車速以上の速度で車両が走行するのを禁止するシステムが開示されている。
【特許文献1】特開平7−57186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような技術では、上記のようなシステムが実施されているエリアに二輪車が進入した際、その上限速度が5〜15km/h程度の場合、単に当該二輪車に対して減速制御を実施することは容易であるが、二輪車が路面の轍等にハンドルをとられやすく、車両挙動が不安定になり易い。
【0004】
また、一時停止サービス等で交差点において停止を促す強制的な介入制御が行われた場合、停止までは二輪車の特性に応じた許容可能な減速Gで制御したとしても、四輪車と同様に停止直後の一定時間後に自動的に制御ブレーキが解除されると、逆にバランスを崩して不安定になり易い場合がある。これは、例えば、二輪車が坂道途中に停止してブレーキを保持していない場合や、二輪車の運転車がしっかりと足を付けておらず停止するための重心移動が完了していない場合等に生じ易い。
【0005】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、その目的は、二輪車の安定性を確保しつつ、道路に設置した路側送信機から送信された当該道路における走行支援に関する情報を受信して二輪車の走行支援を行うことが可能な二輪車走行支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、道路に設置した路側送信機から送信された道路における走行支援に関する情報である走行支援情報を受信する走行支援情報受信手段と、走行支援情報受信手段が受信した走行支援情報に基づいて、二輪車の走行支援を行う走行支援手段と、二輪車の安定性を判定する安定性判定手段と、を備え、走行支援手段は、安定性判定手段が判定した二輪車の安定性に応じて、二輪車の走行支援の態様を変更する、二輪車走行支援装置である。
【0007】
この構成によれば、道路に設置した路側送信機から送信された道路における走行支援に関する情報である走行支援情報を受信して走行支援を行う二輪車走行支援装置において、走行支援手段は、安定性判定手段が判定した二輪車の安定性に応じて、二輪車の走行支援の態様を変更するため、二輪車の安定性を確保しつつ、道路に設置した路側送信機から送信された当該道路における走行支援に関する情報を受信して二輪車の走行支援を行うことが可能となる。
【0008】
この場合、走行支援情報受信手段は、走行支援情報として道路における走行速度に関する情報を受信し、安定性判定手段は、二輪車の安定性が第1閾値以上となる最低走行速度を算出し、走行支援手段は、走行支援情報に係る走行速度が、安定性判定手段が算出した最低走行速度未満であるときは、最低走行速度に基づいて、二輪車の走行支援を行うことが好適である。
【0009】
この構成によれば、走行支援情報受信手段は、走行支援情報として道路における走行速度に関する情報を受信し、安定性判定手段は、二輪車の安定性が第1閾値以上となる最低走行速度を算出し、走行支援手段は、走行支援情報に係る走行速度が、安定性判定手段が算出した最低走行速度未満であるときは、最低走行速度に基づいて、二輪車の走行支援を行うため、たとえ路側送信機から送信された走行支援情報に係る走行速度が、二輪車が第1閾値未満の安定性で走行しなくてはならなくなる速度であるときであっても、二輪車に対しては、その安定性が第1閾値以上となる最低走行速度に基づいて走行支援がなされることになり、二輪車の安定性を確保することができる。
【0010】
一方、走行支援情報受信手段は、走行支援情報として二輪車を強制制動させた後、強制制動を解除するための情報を受信し、安定性判定手段は、走行支援情報に係る強制制動後における二輪車の安定性を判定し、走行支援手段は、安定性判定手段が判定した強制制動後における二輪車の安定性が第2閾値未満であるときは、走行支援情報に係る強制制動の解除の時期よりも遅く強制制動を解除するように、二輪車の走行支援を行うことが好適である。
【0011】
この構成によれば、走行支援情報受信手段は、走行支援情報として二輪車を強制制動させた後、強制制動を解除するための情報を受信し、安定性判定手段は、走行支援情報に係る強制制動後における二輪車の安定性を判定し、走行支援手段は、安定性判定手段が判定した強制制動後における二輪車の安定性が第2閾値未満であるときは、走行支援情報に係る強制制動の解除の時期よりも遅く強制制動を解除するように、二輪車の走行支援を行うため、たとえ、強制制動後における二輪車の安定性が第2閾値未満と低いときに、路側送信機から強制制動を解除するための情報を受信したとしても、当該強制制動の解除の時期を遅らすことにより、二輪車の安定性を確保することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の二輪車走行支援装置によれば、二輪車の安定性を確保しつつ、道路に設置した路側送信機から送信された当該道路における走行支援に関する情報を受信して二輪車の走行支援を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る二輪車走行支援装置について添付図面を参照して説明する。本実施形態の二輪車走行支援装置は自動二輪車に搭載され、ビーコン等の路側インフラ(路側送信機)による路車間通信によって、特定の走行区間において走行速度の抑制を促すISAや、特定の位置において一時停止を促す一時停止サービスや、信号機の信号の変遷等に関する情報を提供する等のシステムを利用することができるように構成されている。
【0014】
特に、本実施形態においては、対象となる自車両は自動二輪車であり、以下の説明では、主に以下の2種類のサービスについて説明する。
(1)ISA:特定のエリア内に自車両が進入した際に規定最高速度以上に車速が上がらないようにするシステム。
(2)停止制御:一時停止規制や信号制御に対して自車両が不停止で進入しそうな場合に限り、制御ブレーキを実行し、自車両を強制的に減速・停止させるシステム
【0015】
図1は実施形態に係る二輪車走行支援装置の機能ブロック図である。図1に示すように、本実施形態の二輪車走行支援装置10は、インフラ通信システム12、位置評定システム14、車速センサ16、アクセル開度センサ18、ブレーキSWセンサ20、ハンドル舵角センサ22、傾斜(ロール)センサ24、ピッチングセンサ26、及び乗員(積載)センサ28といった各種センサ類、並びに設定パラメータ記録部30がインフラ協調システム制御コントローラ40に接続されている。
【0016】
インフラ協調システム制御コントローラ40は、通信制御部41、位置・進行方向判定部42、ISA制御部43、一時停止サービス制御部44、信号情報サービス制御部45、表示制御部46、駆動系制御部47、及び制動系制御部48を有している。
【0017】
また、インフラ協調システム制御コントローラ40は、ディスプレイ・ブザー51、駆動系システム52、及び制動系システム53が接続されている。
【0018】
インフラ通信システム12は、道路に設置したビーコン(路側送信機)から赤外線通信の形態で送信された路車間通信データ、特に、特定の走行区間において走行速度の抑制を促すISA等のシステムに係るデータを受信するためのものである。インフラ通信システム12は、特許請求の範囲に記載の走行支援情報受信手段として機能する。
【0019】
位置評定システム14は、GPS(Global Positioning System)やビーコン等により、自車両の現在位置を算出するためのものである。車速センサ16は、車軸の回転数から自車両の車速を検出するセンサである。アクセル開度センサ18は、自車両のアクセル開度を検出するセンサである。ブレーキSWセンサ20は、自車両のブレーキ量を検出するセンサである。ハンドル舵角センサ22は、自車両のハンドル舵角を検出するセンサである。
【0020】
傾斜(ロール)センサ24は、自車両の左右への傾斜角を検出するセンサである。この場合、傾斜(ロール)センサ24は、車体の静的な傾きを検出する車体傾きセンサであり、車体のロールレート(車体が左右に傾く速度)を検出するロールレートセンサであり、車体の左右G(車体が左右に傾く加速度)を検出する左右Gセンサである。
【0021】
ピッチングセンサ26は、自車両の前後への傾斜角を検出するセンサである。乗員(積載)センサ28は、自車両の乗員数及び荷物等の積載量を検出するセンサである。
【0022】
設定パラメータ記録部30は、自車両の制御に必要なパラメータを記録するためのものであり、具体的には、自車両の安定性が所定の閾値以上となる最低速度等を記録する。設定パラメータ記録部30は、具体的には、自車両の特性に合わせた以下のパラメータが記録されているものとする。
(1)安定して走行可能な最低走行速度A:二輪車である自車両がバランスを保って安全に走行することができる安定性の度合い(第1閾値)となる最低車速であり、乗員数・積載時(1人乗り時、2人乗り時、貨物積載時等)に応じて数種類設定される。
(2)走行時の車両安定条件B:走行中に車両姿勢が安定しているか否かを判断する条件であり、ふらつき動向(ロールレート)、左右の静的な傾き量、ハンドル舵角と進行方向との差異(ハンドル修正量の傾向)、及びその判断に要する継続時間等。
(3)停止時の車両安定条件C(第2閾値):運転者(乗員)が路面に足を付いて車両姿勢が安定している事を判断する条件であり、ふらつき動向(ロールレート)、左右の静的な傾き量、前後の沈み込み量(ピッチ量)、及びその判断に要する継続時間等。
【0023】
インフラ協調システム制御コントローラ40の通信制御部41は、インフラ通信システム12による路車間通信を制御するためのものである。インフラ協調システム制御コントローラ40のインフラ協調システム制御コントローラ40の位置・進行方向判定部42は、位置評定システム14により得られた自車両の位置に関する情報と、当該自車両の位置の変遷とに関する情報とから、自車両の現在及び将来の位置と、進行方向とを判定するためのものである。
【0024】
インフラ協調システム制御コントローラ40のISA制御部43は、通信制御部41により得られた路車間通信データから、特定の走行区間において走行速度の抑制を促すISAに係るデータを抽出して、自車両の走行速度の制御を行うためのものである。
【0025】
インフラ協調システム制御コントローラ40の一時停止サービス制御部44は、通信制御部41により得られた路車間通信データから、特定の場所で一時停止を促す一時停止サービスに係るデータを抽出して、自車両の制動を制御するためのものである。
【0026】
以上のISA制御部43及び一時停止サービス制御部44は、特許請求の範囲に記載の走行支援手段及び安定性判定手段として機能する。
【0027】
インフラ協調システム制御コントローラ40の信号情報サービス制御部45は、通信制御部41により得られた信号機の信号の変遷に関する情報である信号サイクルデータを、自車両の運転者に提供するためのものである。
【0028】
インフラ協調システム制御コントローラ40の表示制御部46は、ディスプレイ・ブザー51を制御するためのものである。インフラ協調システム制御コントローラ40の駆動系制御部47は、駆動系システム52を制御するためのものである。制動系制御部48は、制御系システム53を制御するためのものである。
【0029】
ディスプレイ・ブザー51は、具体的にはナビゲーションシステムの液晶ディスプレイや、警報器や、音声スピーカであり、表示制御部46からの制御信号によって、自車両の運転者に情報の提示や注意の喚起を行うためのものである。
【0030】
駆動系システム52は、駆動系制御部47からの制御信号によって、自車両のエンジンのアクセル開度を調整するためのものである。
【0031】
制動系システム53は、制動系制御部48からの制御信号によって、自車両のブレーキ量を調整するためのものである。
【0032】
以下、本実施形態の二輪車走行支援装置の動作について説明する。
(ISAの場合)
図2は、実施形態に係る二輪車走行支援装置においてISAを実行する主動作を示すフロー図である。この動作においては、自車両の車両挙動を検知して、ISAによる規定速度を最適値に変更し、ISAを実施するものである。
【0033】
図2に示すように、インフラ通信システム12が、ビーコンとの路車間通信から、自車両がISAサービス区間に進入したことを検知し、路車間通信データを受信する(S101)。ISA制御部43は、インフラ通信システム12から、当該サービス区間の規制速度Vsを取得する(S102)。ISA制御部43は、設定パラメータ記録部30から、安定して走行可能な最低走行速度Aを取得する(S103)。また、ISA制御部43は、設定パラメータ記録部30から、走行時の車両安定条件Bを取得する(S104)。
【0034】
ISA制御部43は、最低走行速度Aと規制速度Vsとを比較し(S105)、A<Vsである場合は、ISA規制速度をVsに設定する(S106)。一方、ISA制御部43は、A≧Vsである場合は、ISA規制速度をAに設定する(S107)。
【0035】
ISA制御部43は、上記設定したISA規制速度によりISAの実行を開始するが(S108)、いずれの場合も、車両挙動や操作等から得られるふらつきレベルが、走行時の車両安定条件Bを越えた場合、走行不安定と判断して徐々にISA規制速度を緩和し(高速側に戻し)、ふらつきが収まり走行が安定する速度にISA規制速度を設定しなおす(S109)。
【0036】
図3は、実施形態に係る二輪車走行支援装置においてISAを実行中のふらつき判定及びISA規制速度調整の動作を示すフロー図である。ISA制御部43は、傾斜(ロール)センサ24から、車体の静的な傾き、ロールレート、及び左右Gといったふらつき動向を示すデータを取得する(109a)。
【0037】
ISA制御部43は、ハンドル舵角センサ22からハンドル舵角データを取得する(S109b)。ISA制御部43は、位置・進行判定部42から自車両の進行方向に関するデータを取得する(S109c)。
【0038】
ISA制御部43は、車体の静的な傾き、ロールレート、ハンドル舵角データによる小刻みなハンドル操作等の情報から、自車両のふらつきレベル値を演算する。ISA制御部43は、走行時の車両安定条件Bとふらつきレベル値とを比較し(S109e)、B<ふらつきレベル値であるときは、一定の刻み幅で徐々にISA規制速度を緩和(高速側に設定)する(S109f)。ISA制御部43は、自車両が一定距離走行後あるいは一定時間経過後は(S109g)、S109a〜S109fを繰り返す。
【0039】
ISA制御部43は、インフラ通信システム12から、ISAサービス区間が終了した旨の情報を受信した場合や、運転者がISAのサービスに関するスイッチをOFFにした場合には、ISAに関する制御を終了する(S109h)。
【0040】
図5は、ISA実行中の走行速度及びふらつきレベルと経過時間との関係を示すグラフ図である。この図5の例では、A<Vsが最初成立したため、最初はAをISA規制速度としたが、検出されたふらつきレベル値がBを超えたため、ふらつきが収まるまで、ISA規制速度を緩和してISAを実行した例を示す。
【0041】
図3に示すS109a〜S109hにより、運転者が初心者であるような場合や、道路の凹凸や轍が存在する場合等、事前に設定することが難しい運転技量や道路環境条件等による影響について補正を行うことが可能となる。
【0042】
なお、上記のふらつきレベルについて、二輪車が転倒しそうになる際の判断要素として車両のふらつきがあるが、車両のふらつきの判定には、単に車両の傾きや、その傾きの動向(ロールレート)だけではなく、ハンドルの微修正量、ハンドル舵角と進行方向との差異、左右Gの発生状況等とその経過時間を観測する必要がある。また、車両のふらつきの判定には、各センサ値以外にも、車両構成や車両の運動特性、乗員の運転技量なども考慮する必要がある。
【0043】
これらのセンサ値や車両特性等に対し、各々判定値と比較してふらつき度合いを判断するのは極めて効率が悪く、車両特性や運転技量などセンサ値で単純に比較することができないパラメータも考慮する必要がある。
【0044】
したがって、本実施形態におけるふらつきレベルとは、各センサ値に対して経験値等を参考にして何らかの係数(重み付け)を与えて加算し、さらに運転技量や車両の運動特性等もポイント化して加算するなどして、ふらつき度合いを判断しやすいように一元化した値を意味する。
【0045】
(停止制御の場合)
以下の動作においては、停止制御において、車両挙動を検知して姿勢が安定している場合に限り、介入ブレーキ制御を解除する。インフラ通信システム12より停止制御に関する情報を取得した一時停止サービス制御部44は、制動系制御部48及び制動系システム53によって、システムによる強制的なブレーキ制御を実行し、予定通り規定地点に車両が停止したことを確認する(S201)。
【0046】
一時停止サービス制御部44は、傾斜(ロール)センサ24から、車体の静的な傾き、ロールレート、及び左右Gといったふらつき動向を示すデータを取得する(S202)。一時停止サービス制御部44は、ピッチングセンサ26から、車体の前後沈み込み量、すなわち急減速による沈み込みが収束しているか否かに関するデータを取得する(S203)。一時停止サービス制御部44は、車体の静的な傾き、ロールレート、左右G、及び車体の前後沈み込み量によって、自車両のふらつきレベル値を演算する(S204)。
【0047】
一時停止サービス制御部44は、停止時の車両安定条件Cとふらつきレベル値とを比較し、ふらつきレベル値が停止時の車両安定条件Cを超えている場合(S206)、介入ブレーキ制御を継続する(S206)。一時停止サービス制御部44は、一定時間経過後は(S207)、S201〜S206を繰り返す。
【0048】
一時停止サービス制御部44は、ふらつきレベル値が停止時の車両安定条件C以下である場合(S206)、乗員の操作によるブレーキがONであることを確認する(S208)。乗員の操作によるブレーキがOFFである場合は(S208)、一時停止サービス制御部44は、S201〜S207を繰り返す。乗員の操作によるブレーキがONである場合は(S208)、一時停止サービス制御部44は、ブレーキ解除の規定時間が経過済みであることを確認して(S209)、当該規定時間経過後に、介入ブレーキ制御を解除する(S210)。一方、一時停止サービス制御部44は、ブレーキ解除の規定時間が経過していない場合、規定時間経過前にふらつきレベルが収束していたとしても、四輪車とのシステム整合のため、規定時間経過後までブレーキを解除しない(S209,S210)。
【0049】
図6は、停止制御実行中の走行速度、介入ブレーキのON/OFF及びふらつきレベルと経過時間との関係を示すグラフ図である。この図6の例では、介入ブレーキ制御により、停止直後はふらつきレベルが高く、ふらつきレベル値が停止時の車両安定条件Cを下回った時点で初めてブレーキ制御を解除した例を示す。すなわち、図6の例では、介入ブレーキ制御の規定時間は経過したものの、ふらつきが収まらなかったため、介入ブレーキ制御を解除しなかった例を示している。
【0050】
本実施形態によれば、道路に設置したビーコンから送信されたISA及び停止制御に関する情報を受信して走行支援を行う二輪車走行支援装置において、ISA制御部43は、判定した二輪車の安定性に応じて、二輪車の走行支援の態様を変更するため、二輪車の安定性を確保しつつ、道路に設置したビーコンから送信された当該道路におけるISAに関する情報を受信して二輪車の走行支援を行うことが可能となる。
【0051】
また本実施形態によれば、インフラ通信システム12は、ISAに関する情報として道路における走行速度に関する情報を受信し、ISA制御部43は、二輪車の安定性が所定値以上となる最低走行速度Aを算出し、ISAに係るISA規制速度Vsが、最低走行速度A未満であるときは、最低走行速度Aに基づいて、二輪車の走行支援を行うため、たとえビーコンから送信されたISA規制速度Vsが、二輪車が所定の安定性未満の安定性で走行しなくてはならなくなる速度であるときであっても、二輪車に対しては、その安定性が所定値以上となる最低走行速度Aに基づいて走行支援がなされることになり、二輪車の安定性を確保することができる。
【0052】
さらに、本実施形態によれば、インフラ通信システム12は停止制御に関する情報を受信し、一時停止サービス制御部44は、停止制御後における二輪車の安定性を判定し、判定した停止制御後における二輪車の安定性が停止時の車両安定条件C未満であるときは、停止制御に係る強制制動の解除の時期よりも遅く強制制動を解除するように、二輪車の走行支援を行うため、たとえ、強制制動後における二輪車の安定性が停止時の車両安定条件C未満と低いときに、ビーコンから強制制動を解除するための情報を受信したとしても、当該強制制動の解除の時期を遅らすことにより、二輪車の安定性を確保することができる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施形態に係る二輪車走行支援装置の機能ブロック図である。
【図2】実施形態に係る二輪車走行支援装置においてISAを実行する主動作を示すフロー図である。
【図3】実施形態に係る二輪車走行支援装置においてISAを実行中のふらつき判定及びISA規制速度調整の動作を示すフロー図である。
【図4】実施形態に係る二輪車走行支援装置において停止制御を実行する動作を示すフロー図である。
【図5】ISA実行中の走行速度及びふらつきレベルと経過時間との関係を示すグラフ図である。
【図6】停止制御実行中の走行速度、介入ブレーキのON/OFF及びふらつきレベルと経過時間との関係を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0055】
10…二輪車走行支援装置、12…インフラ通信システム、14…位置評定システム、16…車速センサ、18…アクセル開度センサ、20…ブレーキSWセンサ、22…ハンドル舵角センサ、24…傾斜(ロール)センサ、26…ピッチングセンサ、28…乗員(積載)センサ、30…設定パラメータ記録部、40…インフラ協調システム制御コントローラ、41…通信制御部、42…位置・進行方向判定部、43…ISA制御部、44…一時停止サービス制御部、45…信号情報サービス制御部、46…表示制御部、47…駆動系制御部、48…制動系制御部、51…ディスプレイ・ブザー、52…駆動系システム、53…制動系システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に設置した路側送信機から送信された前記道路における走行支援に関する情報である走行支援情報を受信する走行支援情報受信手段と、
前記走行支援情報受信手段が受信した前記走行支援情報に基づいて、二輪車の走行支援を行う走行支援手段と、
前記二輪車の安定性を判定する安定性判定手段と、
を備え、
前記走行支援手段は、前記安定性判定手段が判定した前記二輪車の安定性に応じて、前記二輪車の走行支援の態様を変更する、二輪車走行支援装置。
【請求項2】
前記走行支援情報受信手段は、前記走行支援情報として前記道路における走行速度に関する情報を受信し、
前記安定性判定手段は、前記二輪車の安定性が第1閾値以上となる最低走行速度を算出し、
前記走行支援手段は、前記走行支援情報に係る走行速度が、前記安定性判定手段が算出した最低走行速度未満であるときは、前記最低走行速度に基づいて、前記二輪車の走行支援を行う、請求項1に記載の二輪車走行支援装置。
【請求項3】
前記走行支援情報受信手段は、前記走行支援情報として前記二輪車を強制制動させた後、前記強制制動を解除するための情報を受信し、
前記安定性判定手段は、前記走行支援情報に係る前記強制制動後における前記二輪車の安定性を判定し、
前記走行支援手段は、前記安定性判定手段が判定した前記強制制動後における前記二輪車の安定性が第2閾値未満であるときは、前記走行支援情報に係る前記強制制動の解除の時期よりも遅く前記強制制動を解除するように、前記二輪車の走行支援を行う、請求項1又は2に記載の二輪車走行支援装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−166616(P2009−166616A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5985(P2008−5985)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】