説明

位相同期ループ回路の制御方法及び位相同期ループ回路

【課題】ロックアップ時間を短縮すること。
【解決手段】PLL回路20の位相比較器23は、基準信号frと比較信号fpの位相を比較し、両信号fr,fpの位相差に応じた信号を出力する。ループフィルタ25は強誘電体容量C1を含み、位相比較器23の出力信号に応じたチャージポンプ24から出力される位相差電流IPにより直流電圧を生成するとともに、その直流電圧を平滑化して制御電圧VCを生成する。VCO26は、制御電圧VCに応じた周波数の出力信号foを生成する。カウンタ31は、入力信号fiをカウントし、カウント値と第1の設定値,第2の設定値とを比較し、第1の期間、強誘電体容量C1を高電位電源VDDの電源線に接続し、第2の期間、強誘電体容量C1と低電位電源VSSの電源線を接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
位相同期ループ回路の制御方法及び位相同期ループ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図5に示すように、位相同期ループ(Phase Locked Loop:PLL)回路10の分周器11は、入力されるクロック信号(原振)fiを分周した基準信号frを生成し、分周器12は、出力信号foを分周した比較信号fpを生成する。位相比較器13は、基準信号frと比較信号fpを比較し、両信号の位相差に応じた位相差信号を出力する。チャージポンプ14は位相差信号に応じた電流を出力する。ループフィルタ15は直列接続された抵抗とコンデンサとから構成され、チャージポンプ14の出力電流を積分して制御電圧を生成する。VCO16は、制御電圧に応じた周波数の出力信号foを生成する。
【0003】
このように構成されたPLL回路10は、出力信号foの周波数と、所望の周波数との差に応じてチャージポンプ14から出力される電流量を変更する。VCO16は、この電流量に対応する制御電圧により出力信号foを生成する。従って、PLL回路10は、出力信号foの周波数と、所望の周波数との差に応じて、出力信号foの周波数を増減することで、出力信号foの周波数を所望の周波数に一致させる、所謂ロック状態とする。
【0004】
上記したように、PLL回路10は、制御電圧に応じた周波数の出力信号foを生成する。従って、安定した周波数の出力信号foを得るためには、制御電圧の変動を少なくする必用がある。このため、ループフィルタ15の時定数を大きく設定する、例えば、コンデンサの容量値を大きくする方法がある。このような容量の大きなコンデンサには、例えば強誘電体容量がある(例えば、特許文献1参照)。強誘電体容量を用いることにより、PLL回路10を形成したチップの面積増大を抑えつつ、ループフィルタ15に大きな値の時定数を設定することができる。
【特許文献1】特開2002−109883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ループフィルタ15の時定数を大きく設定すると、制御電圧の電圧値を変更するのに時間を要する。例えば、電源の投入時、即ち電源電圧の供給開始時に、VCO16の入力電圧(制御電圧)を、0ボルトから所望の周波数に応じた電圧まで上昇させる。この制御電圧を所定の周波数に応じた電圧まで上昇させるまでに要する時間、所謂ロックアップ時間は、チャージポンプ14の駆動能力を高くする、即ちチャージポンプ14の出力電流量を多くすることで、短縮することができる。しかし、チャージポンプ14の駆動能力を高くすると、出力信号foの周波数と所望の周波数の差が小さくなった場合においても電流量が大きい、即ち制御電圧の変化が大きいため過応答となり易い。
【0006】
この位相同期ループ回路で、ロックアップ時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この位相同期ループ回路は、基準信号と比較信号の位相を比較し、前記基準信号と前記比較信号の位相差に応じた信号を出力する位相比較部と、強誘電体容量により前記位相比較部の出力信号を平滑化して制御電圧を生成するループフィルタと、前記制御電圧に応じた周波数の出力信号を生成する電圧制御発振器と、を含む制御ループを有し、前記強誘電体容量と前記電圧制御発振器との間のノードと第1の電源線とを第1の期間電気的に接続した後、前記ノードと第2の電源線とを前記制御電圧に応じた第2の期間電気的に接続するものである。
【0008】
この構成によれば、前記強誘電体容量と前記電圧制御発振器との間のノードと第1の電源線とを第1の期間電気的に接続した後、前記ノードと第2の電源線とを第2の期間電気的に接続することで、そのノードの電位を前記制御電圧に応じた電位に設定する。電圧制御発振器は、この制御電圧に応じた周波数の出力信号を生成するため、所望の周波数の出力信号を生成するまでに要するロックアップ時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0009】
開示の位相同期ループ回路は、ロックアップ時間を短縮することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、一実施形態を図1〜図3に従って説明する。
図1に示すように、位相同期ループ(Phase Locked Loop:PLL)回路20の基準分周器21には、このPLL回路20のクロック信号(原振信号)としての入力信号fiが入力される。入力信号fiは、例えば、水晶振動子の発振に基づく固有周波数の水晶発振信号である。基準分周器21は、入力信号fiを設定値に従って分周した基準信号frを生成し、この基準信号frを位相比較器23に出力する。この位相比較器23には、比較分周器22から出力される比較信号fpが入力される。比較分周器22は、PLL回路20の出力信号foを設定値に従って分周した比較信号fpを生成する。
【0011】
位相比較器23は、基準信号frと比較信号fpの位相差を検出し、その位相差に応じたパルス幅の位相差信号UP、DNを生成する。例えば、位相比較器23は、位相差として、基準信号frの立ち上がりエッジと比較信号fpの立ち上がりエッジの時間差を検出する。そして、位相比較器23は、基準信号frよりも比較信号fpの立ち上りエッジが遅れる場合には、各立ち上りエッジの時間差に応じたパルス幅の位相差信号UPを出力する。また、この逆の場合には、各立ち上りエッジの時間差に応じたパルス幅の位相差信号DNを出力する。
【0012】
チャージポンプ24は、位相差信号UP、DNに応答して、ループフィルタ25に対して正または負の位相差電流IPを供給する。正の位相差電流IPは、チャージポンプ24からループフィルタ25に向かって流れる電流であり、負の位相差電流IPはループフィルタ25からチャージポンプ24に向かって流れる電流である。例えば、チャージポンプ24は、位相差信号UPのパルス幅に応じた期間、ループフィルタ25に正の位相差電流IPを供給し、位相差信号DNのパルス幅に応じた期間、ループフィルタ25に負の位相差電流IPを供給する。位相比較部は分周器21,22、位相比較器23、チャージポンプ24を含む。尚、チャージポンプ24を、位相差信号UP、DNに応答して、ループフィルタ25に対して正,負の位相差電流IPを供給するとともに、その電流量を変更するように構成してもよい。
【0013】
ループフィルタ25は、チャージポンプ24が出力する位相差電流IPに応じた制御電圧VCを生成する。その制御電圧VCは、電圧制御発振器(Voltage Controlled Oscillator :VCO)26に供給される。VCO26は、制御電圧VCに応じた周波数の出力信号foを生成する。従って、分周器22、位相比較器23、チャージポンプ24、ループフィルタ25、及びVCO26により制御ループが構成される。
【0014】
本実施形態において、ループフィルタ25は、抵抗R1と強誘電体容量C1とから構成されている。抵抗R1の第1端子はチャージポンプ24とVCO25との間のノードN1に接続され、抵抗R1の第2端子は強誘電体容量C1の第1端子に接続され、強誘電体容量C1の第2端子は低電位電源(例えばグランド)に接続されている。
【0015】
このように接続された抵抗R1及び強誘電体容量C1は積分回路を構成する。即ち、ループフィルタ25は、チャージポンプ24が出力する位相差電流IPを積分して制御電圧VCを生成する。この制御電圧VCは、抵抗R1の抵抗値と強誘電体容量C1の容量値とにより設定される時定数に応じて変化する。強誘電体容量C1の容量値は、通常の誘電体を有する通常の容量の容量値に比べて大きい。従って、ループフィルタ25の時定数は通常の容量を有したループフィルタに比べて大きいため、制御電圧VCの変動は緩やかになる、つまり、より平滑化される。
【0016】
強誘電体容量C1は、データを保持するレジスタなどに用いられ、電源電圧の供給を停止した後も電荷を保持する。このため、強誘電体容量C1は、強誘電体容量C1に蓄積する電荷量を初期化する初期化回路30を備えている。
【0017】
接続制御回路としての初期化回路30は、信号生成回路としてのカウンタ31とスイッチ回路32とを含む。
カウンタ31には、入力信号fiが入力される。また、カウンタ31は、スイッチ回路32、チャージポンプ24及びVCO26と接続されている。カウンタ31は、入力信号fiのパルスをカウントし、そのカウント値に応じて制御信号SC1〜SC3を生成する。そして、カウンタ31は、第1の制御信号SC1と第2の制御信号SC2をスイッチ回路32に出力し、第3の制御信号SC3をチャージポンプ24及びVCO26に出力する。スイッチ回路32は、第1及び第2の制御信号SC1,SC2に応答して動作する。チャージポンプ24及びVCO26は、第3の制御信号SC3に応答して動作/停止する。
【0018】
スイッチ回路32は、2つのスイッチSW1,SW2を含む。両スイッチSW1,SW2は、例えばMOSトランジスタにより構成される。両スイッチSW1,SW2は、高電位電源VDDの第1の電源線と低電位電源VSSの第2の電源線との間に直列に接続されている。即ち、第1のスイッチSW1の第1端子は高電位電源VDDに接続され、第1のスイッチSW1の第2端子は第2のスイッチSW2の第1端子に接続され、第2のスイッチSW2の第2端子は低電位電源VSSに接続されている。そして、第1のスイッチSW1及び第2のスイッチSW2との間のノードN2は、ループフィルタ25の抵抗R1と強誘電体容量C1の間のノードN3、つまり強誘電体容量C1の第1端子であって高電位側の電極に接続されている。
【0019】
第1のスイッチSW1は、カウンタ31から供給される第1の制御信号SC1に応答してオンオフし、第2のスイッチSW2はカウンタ31から供給される第2の制御信号SC2に応答してオンオフする。オンした第1のスイッチSW1は、強誘電体容量C1の第1端子を高電位電源VDDに接続する。従って、第1のスイッチSW1を介して、高電位電源VDDから強誘電体容量C1に向かって電流が流れる。強誘電体容量C1は、第1のスイッチSW1を介して高電位電源VDDから供給される充電電流によって電荷を蓄積する。一方、オンした第2のスイッチSW2は、強誘電体容量C1の第1端子を低電位電源VSSに接続する。従って、第2のスイッチSW2を介して、強誘電体容量C1から低電位電源VSSに向かって電流が流れる。従って、強誘電体容量C1に蓄積された電荷量は、第2のスイッチSW2を介して低電位電源VSSに向かって流れる放電電流によって減少する。従って、強誘電体容量C1が保持する電荷量は、充電電流と放電電流によって制御される、即ち第1のスイッチSW1と第2のスイッチSW2をそれぞれ制御する制御信号SC1,SC2、つまりカウンタ31により制御される。
【0020】
カウンタ31は、入力信号fiのパルスをカウントする。例えば、カウンタ31は、入力信号fiの立ち上がりエッジのタイミングで、カウント値をカウントアップ(+1)する。カウンタ31は、レジスタ31a,31bを有し、レジスタ31a,31bにはそれぞれ設定値が記憶されている。
【0021】
カウンタ31は、レジスタ31aに格納された第1の設定値とカウント値とを比較し、その比較結果に応じて第1の制御信号SC1を出力する。また、カウンタ31は、レジスタ31bに格納された第2の設定値とカウント値とを比較し、その比較結果に応じて第2の制御信号SC2を出力する。上記したように、スイッチ回路32のスイッチSW1,SW2は、制御信号SC1,SC2に応答してオンオフする。つまり、カウンタ31は、カウント値に応じてスイッチSW1,SW2のオンオフを制御する。
【0022】
カウンタ31の動作の一例を、図3に従って説明する。
高電位電源VDDが供給されて所定電圧になると、カウンタ31はカウント動作を開始し、Hレベルの制御信号SC1を出力し、Lレベルの制御信号SC2,SC3を出力する。図1の第1のスイッチSW1は、Hレベルの制御信号SC1に応答してオンする。
【0023】
次に、カウンタ31は、カウント値(m)が第1の設定値と等しくなると、Lレベルの制御信号SC1を出力し、第1のスイッチSW1はLレベルの制御信号SC1に応答してオフする。次に、カウンタ31は、カウントアップすると、Hレベルの第2の制御信号SC2を出力する。図1の第2のスイッチSW2は、Hレベルの制御信号SC2に応答してオンする。
【0024】
次に、カウンタ31は、カウント値が第2の設定値nと等しくなると、Lレベルの制御信号SC2を出力し、第2のスイッチSW2はLレベルの制御信号SC2に応答してオフする。次に、カウンタ31は、カウントアップすると、Hレベルの第3の制御信号SC3を出力する。図1のチャージポンプ24及びVCO26は、Lレベルの制御信号SC3に応答して動作を停止し、Hレベルの制御信号SC3に応答して動作を開始する。
【0025】
即ち、初期化回路30は、高電位電源VDDが供給されたPLL回路20の動作開始時において、第1のスイッチSW1をオンして強誘電体容量C1に充電電流を供給した後、第2のスイッチSW2をオンして強誘電体容量C1から放電電流を流す。本実施形態において、充電電流と放電電流の単位時間当たりの電流量は同じに設定されている。従って、強誘電体容量C1に蓄積される電荷量は、強誘電体容量C1のヒステリシス特性と、充電電流及び放電電流を流す時間、即ち第1及び第2のスイッチSW1,SW2をオンする時間によって制御される。
【0026】
第1のスイッチSW1をオンする時間は第1の設定値(=m)に対応し、第2のスイッチSW2がオンする時間は第2の設定値(=n)に対応する。そして、本実施形態において、第1の設定値は、強誘電体容量C1に蓄積された電荷による電位、つまりノードN3の電位が高電位電源VDDレベルとなるまでに十分な時間に対応して設定されている。十分な時間とは、PLL回路20を構成する素子における製造上のバラツキや、PLL回路20の使用環境の違いがあっても、ノードN3の電位を高電位電源VDDにするのに必用な時間である。そして、第1の設定値は、この時間に対して、入力信号fiの周波数に応じて設定されている。
【0027】
また、第2の設定値は、ノードN3の電位が出力信号foの周波数に対応する電位となるように設定されている。VCO26が接続されたノードN1の電位はVCO26の電気的特性により出力信号foの周波数に対応し、このノードN1の電位からノードN3の電位が決定される。そして、第2のスイッチSW2を介して流れる放電電流は、スイッチSW2のオン抵抗値により決まるため、入力信号fiの周波数からカウント値、つまり第2の設定値が決定される。
【0028】
上記のようにしてノードN3の電位を設定するのは、強誘電体容量C1が、図2に示すように、印加電圧Vに対する電荷量Pの特性がヒステリシス特性を持つためである。強誘電体容量C1の第1端子の電位を一定のレベル(高電位電源VDDレベル)とすることにより、毎回、ノードN3(ノードN1)の電位を所望の電位に設定することができる。
【0029】
そして、カウンタ31は、Lレベルの制御信号SC2を出力して第2のスイッチSW2をオフした後、Hレベルの第3の制御信号SC3を出力する。このHレベルの制御信号SC3に応答してチャージポンプ24及びVCO26は動作する。この時、ノードN3の電位は、強誘電体容量C1が保持する電荷の量に応じて設定され,ノードN3の電位によりノードN1の電位が決定される。そして、ノードN3の電位は、出力信号foの周波数に応じて設定されている。従って、VCO26は、その動作の開始時から、所望の周波数の出力信号foを生成する。
【0030】
初期化回路30は、強誘電体容量C1に対して、高電位電源VDDに接続された第1のスイッチSW1を介して充電電流を供給し、低電位電源VSSに接続された第2のスイッチSW2を介して放電電流を流す。従って、本実施形態において、ノードN1の電位を所望の周波数に応じた電位まで上昇させる時間は、チャージポンプ24により強誘電体容量C1を充放電する場合に比べて短い。また、チャージポンプ24は、位相比較器23から出力されるパルス波形の出力信号UP,DNにより、間欠的に強誘電体容量C1を充放電する。従って、スイッチSW1,SW2をオンして連続的に充電電流と放電電流を流す場合の方が、短い時間でノードN1の電位を所望の周波数に応じた電位まで上昇する。従って、本実施形態のPLL回路20は、初期化回路30を備えていないPLL回路と比べて、短い時間で出力信号foの周波数を所望の周波数とするロックアップ時間が短い。
【0031】
尚、スイッチSW1,SW2を構成するトランジスタの特性にバラツキが生じている場合、ノードN3(ノードN1)の電位は、出力信号foの周波数に応じた電位に近い電位に設定される。そして、VCO26は、その設定電位に応じた周波数の出力信号foを生成する。この時に生成される出力信号foの周波数は、ノードN1の電位がグランドレベルによる出力信号の周波数と比べて、極めて所望の周波数に近い。従って、出力信号foの周波数が所望の周波数となるまでのロックアップ時間は、極めて短くなる。
【0032】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)PLL回路20の位相比較器23は、基準信号frと比較信号fpの位相を比較し、両信号fr,fpの位相差に応じた信号を出力する。ループフィルタ25は強誘電体容量C1を含み、位相比較器23の出力信号に応じたチャージポンプ24から出力される位相差電流IPにより直流電圧を生成するとともに、その直流電圧を平滑化して制御電圧VCを生成する。VCO26は、制御電圧VCに応じた周波数の出力信号foを生成する。
【0033】
強誘電体容量C1に接続されたスイッチ回路32は、強誘電体容量C1と高電位電源VDDの電源線とを接離する第1のスイッチSW1と、強誘電体容量C1と低電位電源VSSの電源線とを接離する第2のスイッチSW2とを有する。カウンタ31は、入力信号fiをカウントし、カウント値と第1の設定値,第2の設定値とを比較し、第1の期間、強誘電体容量C1を高電位電源VDDの電源線に接続し、第2の期間、強誘電体容量C1と低電位電源VSSの電源線を接続するようにした。
【0034】
従って、強誘電体容量C1とVCO26との間のノードN3は、第1の期間接続された高電位電源VDDレベルとなった後、第2の期間、低電位電源VSSに接続されることで、その第2の期間に応じた電位となる。VCO26は、この電位の制御電圧VCに応じた周波数の出力信号foを生成する。つまり、VCO26の制御電圧VCを設定することで、出力信号foの周波数を所望の周波数にするまでに要するロックアップ時間を短縮することができる。
【0035】
(2)強誘電体容量C1を用いてループフィルタ25を構成した。強誘電体容量C1を安定した特性で使用するためには初期化動作が必用である。PLL回路20は、強誘電体容量C1の初期化動作において、容量C1の電位をVCO26の出力信号foの周波数に応じた制御電圧VCとなるようにした。従って、強誘電体容量C1の初期化動作を行うことによってVCO26に供給する制御電圧VCを設定する、つまりPLL回路20のロックアップ時間を短縮するために使用する。これにより、強誘電体容量C1を用いることにより初期化動作によって特性を安定化するとともにその初期化動作によってロックアップ時間の短縮を図ることができる。
【0036】
(3)スイッチ回路32は、ノードN3と高電位電源VDDの電源線とを接離する第1のスイッチSW1と、ノードN3と低電位電源VSSの電源線とを接離する第2のスイッチSW2とを有する。カウンタ31は、入力信号fiをカウントし、クロック信号をカウントし、第1の期間に応じた第1の設定値とカウント値とを比較して第1のスイッチを制御する第1の制御信号SC1と、第2の期間に応じた第2の設定値とカウント値とを比較して第2のスイッチを制御する第2の制御信号SC2とを生成する。
【0037】
従って、第1の設定値と第2の設定値とを設定することで、強誘電体容量C1が保持する電荷量を設定し、制御電圧VCの電位を設定することができる。
(4)第1の設定値と第2の設定値とを変更することにより、強誘電体容量C1が保持する電荷量を変更し、制御電圧VCの電位を変更することが可能となる。
【0038】
(5)カウンタ31は、第3の制御信号SC3を生成し、強誘電体容量C1の電位を設定する期間、チャージポンプ24の動作を停止するようにした。従って、チャージポンプ24から出力される負の位相差電流IPが強誘電体容量C1に加わらないので、短時間で強誘電体容量C1のノードN3の電位を設定することができる。
【0039】
(6)カウンタ31は、第3の制御信号SC3を生成し、強誘電体容量C1の電位を設定する期間、VCO26の動作を停止するようにした。VCO26を停止させない場合、強誘電体容量C1の電位を設定する電圧によって目的とする周波数よりも高い周波数の信号foが出力され、この信号foが供給されて動作する回路(IC)が誤動作等の影響を与えるおそれがある。従って、VCO26を停止させることにより、出力信号foが供給される回路の誤動作等の影響を防ぐことができる。また、VCO26を停止することにより、初期設定における消費電流を低減することができる。
【0040】
(7)カウンタ31は、分周器21に入力される入力信号fiをカウントして第1及び第2の制御信号SC1,SC2を生成する。入力信号fiは、PLL回路20が生成する出力信号foの基準となる信号である。従って、カウンタ31を動作させるためだけの余分な信号を供給する必用がない。
【0041】
(8)カウンタ31は、Lレベルの制御信号SC1を出力した後、カウントアップでHレベルの制御信号SC2を出力するようにした。つまり、カウンタ31(初期化回路30)は、強誘電体容量C1を充電する第1のスイッチSW1をオフした後、カウントアップしてから第2のスイッチSW2をオンするようにした。従って、第1のスイッチSW1と第2のスイッチSW2が同時にオンしないため、高電位電源VDDと低電位電源VSSとの間に直列にスイッチSW1,SW2を接続しても、両スイッチSW1,SW2を介して高電位電源VDDから低電位電源VSSに流れる所謂貫通電流が発生しないため、消費電流の増加を抑制することができる。
【0042】
尚、上記各実施の形態は、以下の態様で実施してもよい。
・上記実施形態におけるスイッチ回路32の構成を適宜変更してもよい。
例えば、図4(a)に示すスイッチ回路41を用いる。このスイッチ回路41は、第1のスイッチSW1と第2のスイッチSW2との間に抵抗R11が接続されている。そして、第1のスイッチSW1と抵抗R11との間のノードN11が図1のノードN3(強誘電体容量C1の第1端子)に接続されている。上記したように、オンした第2のスイッチSW2は、強誘電体容量C1の第1端子を低電位電源VSSに接続して放電電流を流す。従って、抵抗R11は、放電電流を流す経路に接続されている。このように接続された抵抗R11は、第2のスイッチSW2のオン抵抗のバラツキ(トランジスタのバラツキ)による放電電流の変化を低減する。この構成により、強誘電体容量C1が保持する電荷量、即ち、ノードN3の電位のバラツキを抑える、即ちループフィルタ25の電位を精度良く設定することができる。
【0043】
また、図4(b)に示すスイッチ回路42を用いる。このスイッチ回路42は、図4(b)に示すスイッチ回路41の抵抗R11を電流源43に変更したものである。電流源43が流す電流量は、抵抗R11に流れる電流量に比べて、製造バラツキの影響が少ない。従って、このスイッチ回路42を用いることにより、よりループフィルタ25の電位を精度良く設定することができる。
【0044】
・上記実施形態では、スイッチ回路32を抵抗R1と強誘電体容量C1との間のノードN3に接続したが、強誘電体容量C1が保持する電荷量を設定することによりVCO26の制御電圧VCの電位を設定可能であれば、接続箇所は適宜変更してもよい。
【0045】
・上記実施形態において、分周器21,22の分周比を変更するようにしてもよい。例えば、分周器21,22にレジスタを接続し、これらのレジスタに分周比を記憶する。そして、レジスタの分周比を変更する。レジスタとして強誘電体容量を用いたメモリを用いることもできる。
【0046】
・上記実施形態において、カウンタ31のレジスタ31a,31bに記憶した第1及び第2の設定値を変更可能としてもよい。例えば、複数の端子をカウンタに接続し、端子を高電位電源VDD又は低電位電源VSSに接続して各端子のレベルを設定する。カウンタは、各端子の状態に応じた設定値を選択し、選択した設定値によるタイミングで第1及び第2のスイッチSW1,SW2をオンオフする。また、レジスタの内容、即ち設定値を外部から書換え可能としてもよい。入力信号fiの周波数、分周器21,22の分周比、出力信号foの周波数、等に応じて設定値を変更する。
【0047】
・上記実施形態では、カウンタ31の設定値をレジスタ31a,31bに記憶するようにしたが、信号によりカウンタ31に与える構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】PLL回路の回路図である。
【図2】強誘電体容量の特性図である。
【図3】カウンタの動作波形図である。
【図4】(a)(b) 別のスイッチ回路の回路図である。
【図5】PLL回路の回路図である。
【符号の説明】
【0049】
21,22 分周器
23 位相比較器
25 ループフィルタ
26 電圧制御発振器(VCO)
C1 強誘電体容量
VC 制御電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準信号と比較信号の位相を比較し、前記基準信号と前記比較信号の位相差に応じた信号を出力する位相比較部と、強誘電体容量により前記位相比較部の出力信号を平滑化して制御電圧を生成するループフィルタと、前記制御電圧に応じた周波数の出力信号を生成する電圧制御発振器と、を含む制御ループを有し、
前記強誘電体容量と前記電圧制御発振器との間のノードと第1の電源線とを第1の期間電気的に接続した後、前記ノードと第2の電源線とを前記制御電圧に応じた第2の期間電気的に接続する、
ことを特徴とする位相同期ループ回路の制御方法。
【請求項2】
前記ノードと前記第1の電源線とを接離する第1のスイッチと、
前記ノードと前記第2の電源線とを接離する第2のスイッチと、
を有し、
クロック信号をカウントし、前記第1の期間に応じた第1の設定値とカウント値とを比較して前記第1のスイッチを制御する第1の制御信号と、前記第2の期間に応じた第2の設定値とカウント値とを比較して前記第2のスイッチを制御する第2の制御信号とを生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の位相同期ループ回路の制御方法。
【請求項3】
前記第1の期間と前記第2の期間、前記電圧制御発振器の動作を停止する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の位相同期ループ回路の制御方法。
【請求項4】
基準信号と比較信号の位相を比較し、前記基準信号と前記比較信号の位相差に応じた信号を出力する位相比較部と、強誘電体容量により前記位相比較部の出力信号を平滑化して制御電圧を生成するループフィルタと、前記制御電圧に応じた周波数の出力信号を生成する電圧制御発振器と、を含む制御ループと、
前記強誘電体容量と前記電圧制御発振器との間のノードと第1の電源線とを第1の期間電気的に接続した後、前記ノードと第2の電源線とを前記制御電圧に応じた第2の期間電気的に接続する接続制御回路と、
を有することを特徴とする位相同期ループ回路。
【請求項5】
前記接続制御回路は、
前記ノードと前記第1の電源線とを接離する第1のスイッチと、
前記ノードと前記第2の電源線とを接離する第2のスイッチと、
クロック信号をカウントし、前記第1の期間に応じた第1の設定値とカウント値とを比較して前記第1のスイッチを制御する第1の制御信号と、前記第2の期間に応じた第2の設定値とカウント値とを比較して前記第2のスイッチを制御する第2の制御信号とを生成する信号生成回路と、
を有することを特徴とする請求項4に記載の位相同期ループ回路。
【請求項6】
前記信号生成回路は、前記第1の期間と前記第2の期間、前記電圧制御発振器の動作を停止する第3の制御信号を生成する、ことを特徴とする請求項5に記載の位相同期ループ回路。
【請求項7】
前記制御ループは、前記クロック信号を分周して前記基準信号を生成する分周器を含む、ことを特徴とする請求項5又は6に記載の位相同期ループ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−284428(P2009−284428A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136927(P2008−136927)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】