説明

位置検出装置およびカメラ

【課題】 位置検出を精度良く行うことができる位置検出装置の提供。
【解決手段】 磁気抵抗素子が2対設けられた検出ヘッド2に対して、磁気スケール1が接触しながらは図示左右方向に移動すると、一方の磁気抵抗素子対からはA相出力が、他方の磁気抵抗素子対からはB相出力が出力される。各比較器5a,5bは、A相およびB相出力と基準電圧発生器7からの基準電圧値Vrとに基づいて矩形波Y1,Y2を出力する。矩形波処理回路8は各矩形波Y1,Y2に応じたパルス信号をマイクロコンピュータ9に出力し、マイクロコンピュータ9はそれらのパルス信号をカウントすることにより磁気シート1の移動距離を検出する。基準電圧発生器7は位相検出器6から出力される移動方向情報に基づいて、右方向移動時の基準電圧値または左方向移動時の基準電圧値を各比較器5a,5bに出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗素子を用いた位置検出装置、および、その位置検出装置を備えるカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気抵抗素子等の磁気センサを用いた位置検出装置は、光学式エンコーダを用いた位置検出装置と比べて安価に構成できることから、カメラ用交換レンズにおけるレンズ位置検出用など、さまざまな分野で使用されている(例えば、特許文献1および2参照)。それらの装置では、磁気抵抗素子が設けられたセンサ部を、N極、S極が交互に着磁されたガイドバーや磁気スケール等の磁気記録媒体との距離を一定に保ちながら相対移動させ、そのときに磁気抵抗素子から出力される信号に基づいて位置検出を行っている。
【0003】
信号処理回路では、磁気抵抗素子の出力信号を所定の閾値と比較して矩形波に変換し、その矩形波の立ち上がり・立ち下がり時にパルス信号を形成する。そして、そのパルス信号をカウントすることにより、センサ部の移動距離を求めるようにしている。位置検出精度は着磁ピッチに依存しており、近年、精度向上が求められ、磁気記録媒体の着磁ピッチがより狭ピッチ化している。
【0004】
ところで、磁気抵抗素子は磁界強度により抵抗値が変化するので、安定な出力を得るためには磁気抵抗素子と磁気記録媒体との距離を一定に保つ必要がある。さらに、狭ピッチ化すると、洩れ磁束の磁気強度が距離とともに急激に減少するため、磁気抵抗素子が設けられたセンサ部と磁気記録媒体とを接触させて使用する必要があった。そのため、一般的には、バネ等によりセンサ部を磁気記録媒体に付勢して、接触状態を保つようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−108485号公報
【特許文献2】特開平9−133523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、センサ部と磁気記録媒体とが接触しながら相対移動した際に、センサ部が摩擦力によって傾くなどして接触状態が変化し、それが出力値の変化を引き起こし位置検出精度が低下してしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、磁気抵抗素子が設けられた検出ヘッドを所定の磁気パターンが形成された磁気スケールに接触して相対移動させ、磁気抵抗素子からの出力値と予め設定された基準値とを比較して矩形波を生成し、その矩形波に基づいて磁気スケールと検出ヘッドとの相対的位置変化を検出する位置検出装置に適用され、相対移動の方向を検出する方向検出手段と、方向検出手段で検出された相対移動方向に基づいて、出力値をシフトするかまたは基準値を変更する変更手段とを備えたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の位置検出装置において、方向検出手段は、磁気抵抗素子からの出力値に基づいて相対移動方向を検出するようにしたものである。
請求項3の発明は、磁気抵抗素子が設けられた検出ヘッドを所定の磁気パターンが形成された磁気スケールに接触して相対移動させ、磁気抵抗素子からの出力値と予め設定された基準値とを比較して矩形波を生成し、その矩形波に基づいて磁気スケールと検出ヘッドとの相対的位置変化を検出する位置検出装置に適用され、検出ヘッドと磁気スケールとを相対移動させる駆動手段と、駆動手段に相対移動方向を指示する駆動制御手段と、駆動制御手段の指示する相対移動方向に基づいて、出力値をシフトするかまたは基準値を変更する変更手段とを備えたことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の位置検出装置において、相対移動の移動速度が予め定められた複数の速度範囲のいずれに含まれるかを判定する速度判定手段をさらに備え、変更手段は、相対移動方向および速度判定手段の判定結果に基づいて出力値のシフトまたは基準値の変更を行うようにしたものである。
請求項5の発明は、光軸方向に移動可能な合焦用レンズおよび/またはズーム用レンズを備えたカメラに適用され、合焦用レンズおよび/またはズーム用レンズのレンズ位置検出用に、請求項1〜4のいずれかに記載の位置検出装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、矩形波生成の際の基準値を相対移動方向に基づいて変更するようにしたので、相対移動時の磁気抵抗素子の出力変動の影響を低減することができ、位置検出を精度良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
−第1の実施の形態−
図1は本発明による位置検出装置の第1の実施の形態を示す図であり、位置検出装置の概略構成を示すブロック図である。1は磁気スケールを構成する磁気シートであり、2は磁気抵抗素子が設けられた検出ヘッドである。以下では、検出ヘッド2に対して磁気シート1が図示左右方向に移動する場合について説明するが、本発明は、磁気シート1に対して検出ヘッド2が移動する場合にも同様に適用することができる。
【0010】
図2は磁気スケール1および検出ヘッド2の概略図であり、(a)は平面図、(b)はC−C断面図である。磁気スケール1は左右に延在するシート状の磁性部材であり、所定のピッチλでN極およびS極が交互に形成されている。そのため、図2(b)の破線で示すように、各磁極からは磁気シート1の上方に洩れ磁束が出ている。磁気シート1上には検出ヘッド2が接触するように配設されている。検出ヘッド2はバネ等の付勢部材3によって磁気シート1方向に付勢されている。
【0011】
検出ヘッド2には4つの磁気抵抗素子MR1〜MR4が設けられている。磁気抵抗素子MR1〜MR4は磁気シート1の延在方向に順に配設されており、磁極ピッチλに対して、隣り合う磁気抵抗素子同士の間隔はλ/4に設定されている。各磁気抵抗素子MR1〜MR4は洩れ磁束の影響を受けて抵抗が変化する。この場合、磁気抵抗素子MR1〜MR4の抵抗変化は、洩れ磁束の水平成分(図示左右方向の成分)によって生じる。
【0012】
例えば、図2(b)に示す磁気抵抗素子MR1のようにN極の真上に位置する場合には、洩れ磁束の水平成分はほぼゼロなので抵抗変化は無い。一方、磁気抵抗素子MR2のようにN極とS極との中間に位置するの場合には、洩れ磁束の水平成分が最も大きくなり抵抗変化も最も大きくなる。図3は磁気抵抗素子の抵抗と磁界強度との関係を示す図であり、横軸は磁界強度を表し、縦軸は抵抗値を表している。なお、横軸のプラスとマイナスとでは、磁束の水平成分の方向が逆向きになっている。R0は磁界強度=0の場合の抵抗値であり、水平成分の向きに関係なく、磁界強度が大きくなるにつれて抵抗が小さくなる。
【0013】
磁気抵抗素子MR1と磁気抵抗素子R2とは対を成し、互いに直列接続されている。直列接続された磁気抵抗素子MR1,MR2の両端には所定の電圧Vcが印加され、接続部分から出力が取り出される。同様に、磁気抵抗素子MR3と磁気抵抗素子R4とは対を成し、互いに直列接続されている。図4は検出ヘッド2の等価回路を示す図であり、磁気抵抗素子MR3と磁気抵抗素子R4との接続部の電圧VaがA相出力として出力される。一方、磁気抵抗素子MR1と磁気抵抗素子R2との接続部の電圧VbがB相出力として出力される。
【0014】
図1に戻って、検出ヘッド2から出力されたA相出力は増幅器4aで増幅され、その後、比較器5aおよび位相検出器6にそれぞれ入力される。一方、検出ヘッド2から出力されたB相出力は増幅器4bで増幅され、その後、比較器5bおよび位相検出器6にそれぞれ入力される。
【0015】
図5の(a)は、検出ヘッド2から出力されるA相出力VaおよびB相出力Vbの変化を示したものであり、横軸は磁気スケール1の移動距離を表している。詳細は後述するが、出力Va,Vbは周期的な出力となり、1周期は磁極ピッチの間隔λと等しくなっている。また、A相出力VaとB相出力Vbとの位相差は、A相の磁気抵抗素子MR3,MR4とB相の磁気抵抗素子MR1,MR2とのずれ量λ/4と等しい。なお、検出ヘッド2と磁気スケール1とが図2に示すような位置関係にある場合を原点とし、磁気スケール1が図示左方向に移動する場合を正方向とし、右方向に移動する場合を逆方向とした。
【0016】
位相検出器6には、増幅器4a,4bからのA相出力VaおよびB相出力Vbの両方が入力される。位相検出器6は、2つの出力Va,Vbの位相状態から検出ヘッド2に対する磁気スケール1の移動方向を検出し、その結果を移動方向情報として基準電圧発生器7に入力する。
【0017】
図5(a)は正方向移動時の出力を示したものであり、A相出力Vaに対して位相λ/4だけ遅れている。一方、磁気スケール1が逆方向に移動している場合、すなわち図2(b)の右方向に移動している場合には、各出力Va,Vbの変化は図5(a)の右側から左側へと進行する。その場合、B相出力VbはA相出力Vaに対して位相差λ/4だけ進んでいることになる。位相検出器6では、このような位相の進みおよび遅れによって移動方向を検出する。
【0018】
図5(a)に示す出力Va,Vbでは、VminおよびVmaxの中間値は印加電圧Vcの中間値Vc/2と等しくなっている。このような場合、基準電圧発生器7は電圧値Vc/2を基準電圧Vrとして比較器5a,5bに出力する。比較器5a,5bは、増幅器4a,4bから入力された出力Va,Vbと基準電圧発生器7から入力された基準電圧値Vrとを比較し、それらの差に応じた矩形波を出力する。
【0019】
図5(b)は、比較器5aの出力Y1と比較器5bの出力Y2を示したものである。各比較器5a,5bは、入力された電圧値Va,Vbが基準電圧値Vr=Vc/2以上の場合には電圧値V1を出力し、電圧値Va,Vbが基準電圧値Vr=Vc/2よりも小さい場合には電圧値=0を出力する。そのため、比較器5a,5bからは1周期が磁極ピッチλに等しい矩形波Y1,Y2が出力される。また、矩形波Y2は矩形波Y1に対して位相λ/4だけ遅れている。
【0020】
比較器5a,5bから出力された矩形波Y1,Y2は、矩形波処理回路8に入力される。矩形波処理回路8では、図5(c)に示すような矩形波Y1と矩形波Y2との排他的論理和(XOR)を取った後、さらに得られた波形(図5(c))の立ち上がりおよび立ち下がりのいずれかが検出されるとパルス信号を生成し、それをマイクロコンピュータ(MCU)9に出力する。マイクロコンピュータ9では、入力されたパルスをカウントすることにより移動距離や移動速度を演算する。
【0021】
出力Y1,Y2の排他的論理和を取ると、得られる矩形波の周期はA相およびB相出力の周期の半分であるλ/2となる。さらに、図5(c)の波形の立ち上がりおよび立ち下がりのいずれかが検出されると、それと同期して図5(d)に示すようなパルス信号が生成される。その結果、パルス信号の周期はλ/4となる。すなわち、マイクロコンピュータ9で得られる移動距離の分解能はλ/4となる。
【0022】
《基準電圧Vrの変更動作の説明》
上述した図5(a)の出力波形は、検出ヘッド2と磁気シート1との接触が、図2(b)のように良好に保たれている場合を示したものである。まず、図5(a)の出力波形について説明すると、検出ヘッド2が図2(b)のように配置されている場合、磁気抵抗素子MR3,MR4の磁界強度は等しいので、それぞれの抵抗値は等しい。そのため、図4から分かるように、A相出力Vaは印加電圧Vcの1/2になる。
【0023】
一方、磁気抵抗素子MR1の位置における洩れ磁束の水平成分はゼロなので、磁気抵抗素子MR1の抵抗値は初期値R0(図3参照)から変化しない。逆に、磁気抵抗素子MR2の位置における洩れ磁束の水平成分は最も大きくなり、磁気抵抗素子MR2の抵抗値減少は最も大きくなる。そのため、B相出力は最低値Vminとなる。
【0024】
次に、図2(b)に示す状態から磁気スケール1が距離λ/4だけ左方向に移動した場合について考える。この場合、磁気抵抗素子MR4はS極の真上に位置し、磁気抵抗素子MR3の位置はN極とS極との中間位置となる。そのため、磁気抵抗素子MR4の抵抗値は変化せずR0で、磁気抵抗素子MR3の抵抗値減少は最も大きくなる。その結果、A相出力Vaは最大値Vmaxとなり、その大きさ(絶対値)はVminと等しい。一方、B相に関しては、磁気抵抗素子MR1,MR2は図2(b)に示した磁気抵抗素子MR3,MR4と同様の配置となるので、B相出力はVb=Vc/2となる。
【0025】
さらに、磁気スケール1が距離λ/4だけ左方向に移動して移動距離がλ/2となった場合、磁気抵抗素子MR4はS極の右側λ/4の距離に位置し、磁気抵抗素子MR3はS極の左側λ/4の距離に位置するので、A相出力はVa=Vc/2となる。一方、磁気抵抗素子MR1はN極とS極との中間に位置し、磁気抵抗素子MR2はS極の真上に位置するので、B相出力はVb=Vmaxとなる。
【0026】
以降も同様に考えると、A相出力VaおよびB相出力Vbは図5(a)に示すような周期的な出力となり、1周期は磁極ピッチの間隔と等しくλとなる。また、A相出力VaとB相出力Vbとの位相差は、A相の磁気抵抗素子MR3,MR4とB相の磁気抵抗素子MR1,MR2とのずれ量λ/4と等しくなる。検出ヘッド2と磁気シート1との接触が良好に保たれている状態では、VminおよびVmaxの中間値は印加電圧Vcの中間値Vc/2と等しくなる。このような場合、基準電圧発生器7は電圧値Vc/2を基準電圧Vrとして比較器5a,5bに出力する。
【0027】
ところで、磁気シート1の移動速度が大きくなると、摩擦力等によって検出ヘッド2が図6(b),(c)のように傾く。図6において、(a)は検出ヘッド2と磁気シート1とが密着している場合を示し、(a)は磁気シート1が図示左側の正方向に移動したときの傾きを、(b)は逆方向に移動した場合の傾きをそれぞれ示している。
【0028】
図6(b)のように検出ヘッド2の左側が浮くように傾いた場合、左側の磁気抵抗素子ほど検出する磁界強度が小さくなる。そのため、対になっている磁気抵抗素子の内の左側の方が抵抗値が相対的に大きくなり、右側の磁気抵抗素子MR2,MR4の分圧される電圧Vb,Vaは図6(a)の場合に比べて小さくなる。その結果、出力Va,Vbの波形全体が図5(a)に示す場合よりも下方にシフトすることになる。
【0029】
図7の(a)〜(b)は図6の各(a)〜(c)の場合の出力波形をそれぞれ示したものであり、上段の波形はA相出力を示し、下段の波形は矩形波Y1の波形を示している。以下ではA相出力および矩形波Y1について説明するが、B相出力およびY2相についても同様のことが言える。図6(b)の場合の出力波形を示す図7(b)では、出力Vaは電圧値ΔVだけ下方にシフトしている。そのため、図7(a)の場合と同様に印加電圧Vcの中間値Vc/2を基準電圧値Vrとして比較器5aで処理を行うと、矩形波Y1は電圧V1の部分の幅が破線で示すように狭くなってしまう。
【0030】
一方、図6(c)のように検出ヘッド2の右側が浮くように傾いた場合、右側の磁気抵抗素子ほど検出する磁界強度が小さくなる。そのため、図6(b)の場合とは逆に、出力Vaは電圧値ΔVだけ上方にシフトする(図7(c)参照)。その結果、基準電圧値Vr=Vc/2を用いて比較器5aで処理を行うと、矩形波Y1は電圧V1の部分の幅が破線で示すように広くなってしまう。矩形波Y2の場合も同様に変化するので、矩形波Y1,Y2の排他的論理和の結果も変化し、パルスの間隔が変化してしまうことになる。
【0031】
図8は矩形波Y1,Y2の電圧V1の部分の幅が極端に狭くなった場合の、矩形波Y1,Y2、排他的論理和およびエッジ出力であるパルス信号の各波形を示したものである。この場合、パルス信号は一定の間隔で出力されなくなり、移動距離の測定に支障が出る。
【0032】
そこで、本発明では、図7(b)に示す場合には比較器5a,5bにおける基準電圧値VrをΔVだけ下方にシフトさせ、図7(c)に示す場合には基準電圧値VrをΔVだけ上方にシフトさせるようにする。すなわち、基準電圧発生器7は、図6(b)のように磁気シート1が正方向に移動しているという移動方向情報を位相検出器6から受信したならば、基準電圧値Vr=Vc/2−ΔVを発生して比較器5a,5bに出力する。逆に、図6(c)のように磁気シート1が逆方向に移動しているという移動方向情報を位相検出器6から受信したならば、基準電圧値Vr=Vc/2+ΔVを発生して比較器5a,5bに出力する。
【0033】
そのため、比較器5a,5bから出力される矩形波Y1,Y2は、図7(b),(c)の下段の実線で示すような波形となり、傾きが生じない場合に得られる図7(a)の矩形波と同様となる。その結果、図8に示すような不都合は生じず、精度良く移動距離を検出することができる。なお、シフト量ΔVについては、例えば、実機毎に実際に移動動作をさせて最適なΔVを決定し、そのΔVで補正した上記基準電圧値Vrを予め記憶しておけば良い。
【0034】
また、図9に示すように、増幅器4a,4bの出力をA/D変換器11でデジタル信号に変換してマイクロコンピュータ9に入力し、図1の比較器5a,5b、位相検出器6、基準電圧発生器7および波形処理回路8で行っていたのと同様の処理を、マイクロコンピュータ9における演算処理によって行わせるようにしても良い。この場合、予め磁気抵抗素子MR1〜MR4からの出力値をテーブルとして用意することにより、より高分解能の位置検出を行うことができる。
【0035】
−第2の実施の形態−
図10は、本発明の第2の実施の形態を示す図であり、図1に示したものと同様のブロック図である。なお、図1と同様の部分には同一の符号を付し、以下では異なる部分を中心に説明する。20は磁気シート1を移動させるためのアクチュエータであり、ドライブ回路21によって駆動される。すなわち、アクチュエータ20で移動した磁気シート1の移動距離を、磁気抵抗素子MR1〜MR4が設けられた検出ヘッド2により検出している。
【0036】
マイクロコンピュータ9は、波形処理回路8から入力されたパルス信号に基づいて移動距離や移動速度を算出するとともに、ドライブ回路21に対して起動・停止、移動速度および移動方向の指示信号を出力する。また、マイクロコンピュータ9は、移動方向の指示信号を基準電圧発生器7にも出力する。上述した第1の実施の形態では、基準電圧発生器7は位相検出器6からの移動方向情報に基づいて基準電圧値Vrを変更したが、第2の実施の形態では、マイクロコンピュータ9から入力された移動方向指示信号に基づいて、基準電圧値Vrを変更する。
【0037】
第1の実施の形態の装置の場合には、磁気シート1が実際に移動開始しないと移動方向が検出できず、移動方向検出後に基準電圧値Vrが変更される。一方、第2の実施の形態の装置では、マイクロコンピュータ9からの移動方向指示信号に基づいて基準電圧値Vrが変更されるので、移動開始時から適切な基準電圧値vrが適用されることになる。なお、第2の実施の形態では検出ヘッド2の出力値に基づいて方向検出する必要がないので、検出ヘッド2に設けられる磁気抵抗素子対は1対であってもかまわない。
【0038】
ところで、上述した第1および第2の実施の形態では、磁気シート1の移動速度の大小にかかわらず基準電圧値Vrのシフト量を一定のΔVとしたが、検出ヘッド2の傾き角度は磁気シート1の移動速度によって異なる場合がある。そこで、そのような場合には、移動速度に応じて基準電圧値Vrのシフト量ΔVの大きさを変えるようにすることにより、移動距離の検出精度がより向上する。例えば、移動速度の範囲をR1:0〜va,R2:va〜vb,R3:vb〜vmaxのように3段階に分けて、範囲R1の場合には傾きが非常に小さいのでVr=Vc/2とし、範囲R2の場合にはVr=Vc/2+ΔV、範囲R3の場合にはVr=Vc/2+2ΔVのように設定する。このような移動速度の判定、および判定に基づく基準値設定の指示は、マイクロコンピュータ9によって行われる。
【0039】
図10に示した位置検出装置は、例えば、カメラのレンズ位置検出に用いることができる。また、ズームレンズのレンズ位置検出の場合にも、同様に適用することができる。一眼レフ式のカメラの場合、レンズ鏡筒の距離リングを手動で回転すると、カム機構等を介してフォーカスレンズが光軸方向に駆動される。オートフォーカスレンズの場合、手動ではなくモータ等によってカム筒を回転してフォーカスレンズを光軸方向に駆動する。
【0040】
上述した位置検出装置を適用する場合、例えば、カム筒の周方向に磁気シート1を貼り付け、その磁気シート1に接触するように検出ヘッド2を設ける。検出ヘッド2は上述した付勢部材3によって磁気シート1に付勢されているので、カム筒が回転した際にも検出ヘッド2と磁気シート1とが接触している。カム筒が回転すると、磁気シート1が検出ヘッド2と接触しながら相対移動する。そして、カム筒の回転を正回転と逆回転とに区別し、正回転させる場合には正回転用の基準電圧値Vrを使用し、逆回転の場合には逆回転用の基準電圧値Vrを使用する。
【0041】
上述した実施の形態では、磁気シート1の移動方向に応じて基準電圧値Vrを変更したが、基準電圧Vrを変更する代わりにA相出力およびB相出力の電圧値をシフトして、基準電圧値VrがA相出力およびB相出力の中間電圧値となるようにしても良い。例えば、図7(b)のようなA相出力であった場合には、A相出力の方をΔVだけ増加させるようにシフトし、逆に、図7(c)に示す場合には、A相出力の方をΔVだけ減少させるようにシフトすれば良い。
【0042】
なお、上述の説明では、位置検出装置のカメラへの適用について説明したが、本発明の位置検出装置はカメラに限らず様々な機器の位置検出に用いることができる。また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。
【0043】
以上説明した実施の形態と特許請求の範囲の要素との対応において、位相検出器6またはマイクロコンピュータ9は方向検出手段を、基準電圧発生器7は変更手段を、アクチュエータ20は駆動手段を、マイクロコンピュータ9は駆動制御手段および速度判定手段をそれぞれ構成する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明による位置検出装置の第1の実施の形態を示すブロック図である。
【図2】磁気スケール1および検出ヘッド2の概略図であり、(a)は平面図、(b)はC−C断面図である。
【図3】磁気抵抗素子の抵抗と磁界強度との関係を示す図である。
【図4】検出ヘッド2の等価回路を示す図である。
【図5】(a)〜(d)は、検出ヘッド2,比較回路5a,5bおよび矩形波処理回路8における各波形を示す図である。
【図6】検出ヘッド2と磁気シート1との関係を示す図であり、(a)は検出ヘッド2と磁気シート1とが密着している場合を示し、(a)は磁気シート1が図示左側の正方向に移動したときの傾きを、(b)は逆方向に移動した場合の傾きをそれぞれ示している。
【図7】(a)〜(b)は図6の各(a)〜(c)の場合の出力波形をそれぞれ示す図であり、上側の波形はA相出力を示し、下側の波形は矩形波Y1の波形を示している。
【図8】矩形波Y1,Y2の電圧V1の部分の幅が極端に狭くなった場合の、矩形波Y1,Y2、排他的論理和およびエッジ出力であるパルス信号の各波形を示す図である。
【図9】A相およびB相出力をA/D変換器11でデジタル変換して処理を行う場合の位置検出装置の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 磁気シート
2 検出ヘッド
3 付勢部材
4a,4b 増幅器
5a,5b 比較器
6 位相検出器
7 基準電圧発生器
8 矩形波処理回路
9 マイクロコンピュータ
11 A/D変換器
20 アクチュエータ
21 ドライブ回路
MR1〜MR4 磁気抵抗素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気抵抗素子が設けられた検出ヘッドを所定の磁気パターンが形成された磁気スケールに接触して相対移動させ、前記磁気抵抗素子からの出力値と予め設定された基準値とを比較して矩形波を生成し、その矩形波に基づいて前記磁気スケールと前記検出ヘッドとの相対的位置変化を検出する位置検出装置において、
前記相対移動の方向を検出する方向検出手段と、
前記方向検出手段で検出された相対移動方向に基づいて、前記出力値をシフトするかまたは前記基準値を変更する変更手段とを備えたことを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位置検出装置において、
前記方向検出手段は、前記磁気抵抗素子からの出力値に基づいて前記相対移動方向を検出することを特徴とする位置検出装置。
【請求項3】
磁気抵抗素子が設けられた検出ヘッドを所定の磁気パターンが形成された磁気スケールに接触して相対移動させ、前記磁気抵抗素子からの出力値と予め設定された基準値とを比較して矩形波を生成し、その矩形波に基づいて前記磁気スケールと前記検出ヘッドとの相対的位置変化を検出する位置検出装置において、
前記検出ヘッドと前記磁気スケールとを相対移動させる駆動手段と、
前記駆動手段に前記相対移動方向を指示する駆動制御手段と、
前記駆動制御手段の指示する相対移動方向に基づいて、前記出力値をシフトするかまたは前記基準値を変更する変更手段とを備えたことを特徴とする位置検出装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の位置検出装置において、
前記相対移動の移動速度が予め定められた複数の速度範囲のいずれに含まれるかを判定する速度判定手段をさらに備え、
前記変更手段は、前記相対移動方向および前記速度判定手段の判定結果に基づいて前記出力値のシフトまたは前記基準値の変更を行うことを特徴とする位置検出装置。
【請求項5】
光軸方向に移動可能な合焦用レンズおよび/またはズーム用レンズを備えたカメラにおいて、
前記合焦用レンズおよび/またはズーム用レンズのレンズ位置検出用に、請求項1〜4のいずれかに記載の位置検出装置を備えたことを特徴とするカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−90783(P2006−90783A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−275020(P2004−275020)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】