説明

低温タンク壁面の底部断熱施工法及び底部断熱施工装置

【課題】底部断熱層を非常に効率よく、低コストに施工できるととともに、作業環境の著しい改善を図ることができ、かつ、仕上がりのよい底部断熱層を施工できる低温タンク壁面の底部断熱施工法を提供する。
【解決手段】低温タンク7底部に、断熱施工対象となる壁面部分8Aとの間に所要厚さの硬質ウレタン注入空間17を形成する無端ベルト19とこの無端ベルト19表面に所要上下高さ以上の範囲に亘ってガラスメッシュ10を繰出し張設可能なガラスメッシュ供給装置20を備えた底部断熱施工装置12を据付け、この底部断熱施工装置12に装着されたウレタン原液注入ヘッド21を左右水平方向に往復移動させて注入空間17に硬質ウレタン原液を注入し発泡させることにより、PUF9とガラスメッシュ10とが一体成型された所定の底部断熱層11を底部壁面部分8Aに現場施工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)、液体窒素等の低温液化ガスを貯蔵する低温タンク壁面の底部断熱施工法に関する。詳しくは、低温タンクの壁面のうち、その最下部より所定の地上高さ位置までの底部壁面部分に、硬質ウレタンフォームとその表面を補強する表面補強材とからなる底部断熱層を現場施工する低温タンク壁面の底部断熱施工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の低温タンク壁面のうち、その最下部より所定の地上高さ位置(約1.4〜1.8m)から頂部までの壁面部分に、硬質ウレタンフォーム(以下、PUFと記載するものを含む)とこのPUFの表面を覆い補強するガラスメッシュ等の表面補強材とからなる断熱層を施工する手段として、硬質ウレタンの吹付け発泡によるPUFの形成、このPUF表面への接着剤の塗布、その接着剤塗布面への表面補強材の接着被覆、等々の膨大な工数及び費用を要する旧来の人為作業に代えて、専用の施工装置を用いて自動的、効率的に、かつ、PUFと表面補強材が一体成型された仕上がりのよい断熱層を施工可能とした技術が従来既に開発され実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3656011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に示された従来の断熱施工法に用いられる専用の施工装置は、その大きさや形態からみて、前記した最下部より所定の地上高さ位置までの底部壁面部分の断熱施工に用いることができない。そのため、前記した範囲の底部壁面部分の断熱施工に際しては、吹付けガンを用いて壁面部分に硬質ウレタンを吹付けてPUFを施工し、数日間に亘り養生したのち、吹付けPUFの表面を切削して平滑性をもたせる。その後、平滑化されたPUF表面に接着剤を塗布してガラスメッシュ等の表面補強材を貼付けるといった施工法が採用されていた。
しかし、上記したような従来の低温タンク壁面の底部断熱施工法は、吹付け、養生、表面切削、接着剤の塗布、表面補強材の貼付けといった具合に、前記特許文献1に示す自動一体注入施工に比べて複雑かつ多大な工程を要し、施工効率が非常に悪いばかりか施工コストも非常に高い。また、PUF表面の切削時に粉塵が狭いスペース内に飛散浮遊し、かつ、接着剤の使用に伴い作業環境の著しい悪化は避けられないという問題があった。
【0004】
本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、底部断熱層を非常に効率よく、低コストに施工できるととともに、作業環境の著しい改善を図ることができ、かつ、仕上がりのよい底部断熱層を施工することができる低温タンク壁面の底部断熱施工法及び底部断熱施工装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る低温タンク壁面の底部断熱施工法は、低温タンクの壁面のうち、その最下部より所定の地上高さ位置までの底部壁面部分に、硬質ウレタンフォームとその表面を補強する表面補強材とからなる底部断熱層を現場施工する低温タンク壁面の底部断熱施工法であって、前記低温タンクの底部に、断熱施工対象となる前記底部壁面部分との間に底部断熱層の所要厚さに相当する硬質ウレタン原液注入空間を形成する圧締用面部材と前記注入空間内の前記圧締用面部材側に前記底部断熱層の所要上下高さ以上の範囲に亘って表面補強材を繰出し張設可能な表面補強材供給装置を備えた底部断熱施工装置を据付け、この据付けられた底部断熱施工装置に装着または装着可能なウレタン原液注入ヘッドを前記底部断熱層の所要幅に亘り左右水平方向に往復移動させて前記張設された表面補強材と断熱施工対象となる前記底部壁面部分との間の注入空間に硬質ウレタン原液を注入し、この注入した硬質ウレタン原液を発泡させることにより硬質ウレタンフォームと表面補強材とが一体成型された所定の底部断熱層を前記底部壁面部分に形成することを特徴としている。
【0006】
この構成による低温タンク壁面の底部断熱施工法の作用・効果を説明する。低温タンクの底部に、断熱施工対象となる前記底部壁面部分との間に底部断熱層の所要厚さに相当する硬質ウレタン原液注入空間を形成する圧締用面部材と前記注入空間内の前記圧締用面部材側に前記底部断熱層の所要上下高さ以上の範囲に亘って表面補強材を繰出し張設可能な表面補強材供給装置を備えた底部断熱施工装置を据付ける。そして、この据付けられた底部断熱施工装置に装着または装着可能なウレタン原液注入ヘッドを前記底部断熱層の所要幅に亘り左右水平方向に往復移動させて前記張設された表面補強材と断熱施工対象となる前記底部壁面部分との間の注入空間に硬質ウレタン原液を注入し、この注入した硬質ウレタン原液を発泡させる。これにより、硬質ウレタンフォームと表面補強材とが一体成型された所定の底部断熱層を前記底部壁面部分に形成する。
【0007】
上記のような特徴を有する本発明によれば、低温タンクの底部に底部断熱施工装置を据付け、この装置に装着したウレタン原液注入ヘッドを左右水平方向に往復移動させて圧締用面部材と断熱施工対象となる底部壁面部分との間の注入空間に硬質ウレタン原液を注入することによって、前記圧締用面部材により表面平滑性並びに全面の厚さ均一性が確保された底部断熱層を非常に効率よく施工することができるとともに、工程数も非常に少なく施工コストを大幅に低減することができる。しかも、PUFの切削に伴う粉塵の飛散浮遊がないうえに、接着剤の使用も省けるので、作業環境の著しい改善を図ることができる。加えて、硬質ウレタンフォームと表面補強材とを一体成型できるので、接着剤を用いて表面補強材を貼付ける場合に比べて強度的、品質的にも外観的にも仕上がりのよい底部断熱層を施工できるという効果を奏する。
【0008】
本発明の底部断熱施工法において使用する圧締用面部材としては、例えば、平板であってもよいが、請求項2に記載のように、上下に循環回動可能な無端ベルトを用い、この無端ベルトに前記表面補強材供給装置に保持されている表面補強材の端部を止着した状態で該無端ベルトを回動させて前記注入空間内の所定位置に表面補強材を繰出し張設することが好ましい。これにより、硬質ウレタン原液注入前にその注入空間に表面補強材を張設するという狭いスペースでの事前作業を容易かつ楽に行うことができ、施工性の一層の向上が図れる。
【0009】
また、本発明の底部断熱施工法において、請求項3に記載のように、前記低温タンク底部に据付けた底部断熱施工装置を、当該装置フレームと前記低温タンクの壁面に対向して設けられている固定壁との間に介在された突張り部材を介して支持させることが好ましい。これにより、硬質ウレタンフォームの注入圧や発泡圧が作用するにもかかわらず底部断熱施工装置を所定位置に確実に位置保持させて、所定厚さで、かつ、表面平滑性に優れた底部断熱層を確実に形成することができる。
【0010】
さらに、本発明の底部断熱施工法においては、ウレタン原液注入ヘッドを装置フレームの上端部に沿って左右水平方向に往復移動させて硬質ウレタン原液を注入空間に注入しても、また、前記ウレタン原液注入ヘッドを前記底部断熱施工装置に上下複数段に設けられたガイドレールに付け替え可能に構成して、各ガイドレールに沿って左右水平方向に往復移動させることにより、硬質ウレタン原液を前記注入空間内に上下複数段に注入し発泡させてもよい。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る低温タンク壁面の底部断熱施工装置は、低温タンクの壁面のうち、その最下部より所定の地上高さ位置までの底部壁面部分に、硬質ウレタンフォームとその表面を補強する表面補強材とからなる底部断熱層を現場施工するための低温タンク壁面の底部断熱施工装置であって、前記低温タンクの底部に、断熱施工対象となる前記底部壁面部分との間に底部断熱層の所要厚さに相当する硬質ウレタン原液注入空間を形成する圧締用面部材と、前記注入空間内の前記圧締用面部材側に前記底部断熱層の所要上下高さ以上の範囲に亘って表面補強材を繰出し張設可能な表面補強材供給装置と、前記底部断熱層の所要幅に亘り左右水平方向に往復移動させて前記張設された表面補強材と断熱施工対象となる前記底部壁面部分との間の注入空間に硬質ウレタン原液を注入させるウレタン原液注入ヘッドとを備え、この注入した硬質ウレタン原液を発泡させることにより硬質ウレタンフォームと表面補強材とが一体成型された所定の底部断熱層を前記底部壁面部分に形成させるように構成したことを特徴としている。
【0012】
かかる構成によれば、前述のように、PUFの切削に伴う粉塵の飛散浮遊がないうえに、接着剤の使用も省けるので、作業環境の著しい改善を図ることができる。加えて、硬質ウレタンフォームと表面補強材とを一体成型できるので、接着剤を用いて表面補強材を貼付ける場合に比べて強度的、品質的にも外観的にも仕上がりのよい底部断熱層を施工できるという効果を奏する。
また、本発明の底部断熱施工装置を構成する圧締用面部材としては、上下に循環回動可能な無端ベルトにより構成され、この無端ベルトに前記表面補強材供給装置に保持されている表面補強材の端部を止着した状態で該無端ベルトを回動させて前記注入空間内の所定位置に表面補強材を繰出し張設するように構成することが好ましい。
【0013】
これにより、硬質ウレタン原液注入前にその注入空間に表面補強材を張設するという狭いスペースでの事前作業を容易かつ楽に行うことができ、施工性の一層の向上が図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る底部断熱施工法及び底部断熱施工装置の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。まず、底部断熱施工装置の構成を説明する。
【0015】
<底部断熱施工装置の構成>
図1は本発明の断熱施工法が実施されるところの低温タンク底部の構成の一例を説明する要部の拡大縦断面図である。図1に示すように、地盤上に構築されるコンクリート製基礎版1の上部に、コンクリートブロックからなる荷重支持部2、底部保冷層3及びコンクリートや合板などからなる緩衝材4を介してLNG等を貯蔵する低温タンク内槽5が支持されている。このタンク内槽5の外周を取り囲むように、前記基礎版1に一体に連ねて形成されたPC(プレストレスコンクリート)側壁6が設けられ、これにより、内外二重壁構造の低温タンク7が構成されている。このPC側壁6の内面で、その最下部から所定の地上高さ(約1.4〜1.8m)位置までの間の上下距離Hに対応する内面部分が、断熱施工対象となる底部壁面部分8Aに相当するものである。
【0016】
図2〜図4は、断熱施工対象となる前記の底部壁面部分8Aに、図1に示すように、硬質ウレタンフォーム(以下、PUFと記載する)9とこのPUF9の表面を覆い補強する表面補強材の一例となるガラスメッシュ10とが一体成型された底部断熱層11を現場施工するにあたって用いられる底部断熱施工装置12の構成を説明する側面図、正面図及び平面図である。この底部断熱施工装置12は、矩形状の板部材13と、この板部材13に繋ぎ部材14を介して固定連結された門型枠部材15とからなる、装置フレーム16を備えている。この装置フレーム16は、前記基礎版1上に据付け設置可能であり、この装置フレーム16に、前記底部断熱層11を注入施工するための設備が装備されている。
【0017】
矩形状の板部材13は上下方向に設置され、繋ぎ部材14は、水平方向になるように板部材13と固定連結される。門型枠部材15は、垂直に設置される左右枠部15bと、この左右枠部15bを連結する上部枠部15aとが固定連結されている。繋ぎ部材14は、左右枠部15bと板部材13とを連結して装置フレーム16としての強度を確保する。
【0018】
前記装置フレーム16に装備されている注入施工設備は、無端ベルト(圧締用面部材の一例)19と、ガラスメッシュ供給装置20と、ウレタン原液注入ヘッド21とを備えている。無端ベルト19は、前記底部壁面部分8Aとの間に底部断熱層11の所要厚さt(図1参照)に相当する硬質ウレタン注入空間17を形成するように、装置フレーム16の上下位置に回転可能に支承のローラ18,18間に亘り上下循環回動自在に掛架されている。この上下に配置される一対のローラ18,18の配置間隔は、前記上下距離Hに対応して決められるものである。一対のローラ18,18は、不図示の電動機により駆動される。
【0019】
ガラスメッシュ供給装置20(表面補強材供給装置の一例)は、前記板部材13の上部位置に配置されて前記ガラスメッシュ10をロール20aにロール状に巻回保持するとともに、前記注入空間17内の前記無端ベルト19表面側に底部断熱層11の所要上下高さ以上の範囲に亘って、つまり、前記上下距離Hよりも少し長目のガラスメッシュ部分10aを繰出し張設(張力を掛けた状態で設定)可能としている。図4に示すように、板部材13の左右両端部に繋ぎ部材14が位置しており、ガラスメッシュ供給装置20がその上に載置される。
【0020】
前記一対のローラ18のうち、上側に位置しているローラ18と、ガラスメッシュ10のロール20aとは、図2に示すように、同じ高さもしくはほぼ同じ高さ位置になるように設定される。このように配置することで、ガラスメッシュ10を無端ベルト19表面側に張設しやすくしている。
【0021】
また、ウレタン原液注入ヘッド21は、装置フレーム16を構成する前記門型枠部材15の上辺枠部15aには、該上辺枠部15aをガイドレールとして底部断熱層11の所要幅W(図3参照)に亘り左右水平方向に往復移動可能に装着されている。この注入ヘッド21には下向きに開口する注入ホース21aが付設されている。
【0022】
また、前記装置フレーム16の幅方向の両端開口部には、前記ウレタン原液注入ヘッド21から注入空間17内に注入されたウレタン原液の側方への漏れ出し防止用及び前記底部壁面部分8aと無端ベルト19の表面との間隔保持用の側板部22,22が取り付けられており、そのうち、一方の側板部22は取り外し可能に構成されている。その理由については後述する。
【0023】
<底部断熱施工法の施工手順>
次に、上記のように構成された底部断熱施工装置12を用いて断熱施工対象となる底部壁面部分8Aに、図1に示すような底部断熱層11を現場施工する手順について詳しく列記説明する。
【0024】
(1)前記底部断熱施工装置12を低温タンク7底部の基礎版1上に据付け設置するとともに、この底部断熱施工装置12における装置フレーム16の板部材13と前記タンク内槽5の外壁面(固定壁の一例)との間に、図5(a)に明示するように、突張り部材23を介在させることにより、該底部断熱施工装置12を所定位置に固定支持する。このとき、前記装置フレーム16の幅方向両端開口部には、図6の実線に示すように、漏れ出し防止兼間隔保持用の側板部22,22が取り付けられている。この突張り部材23は、例えば、金属製の棒部材を用いることができるが、長さを調節できるような機構を設けておけば、底部断熱施工装置12の設置場所に自由度が増すなど、柔軟に対応することができる。突張り部材23の配置個数は、適宜設定することができる。また、バネ部材を内蔵させて突っ張り力を付与するような構造にしてもよい。
【0025】
(2)次に、前記底部断熱施工装置12に装備されたガラスメッシュ供給装置20に巻回保持されているガラスメッシュ10の端部を前記無端ベルト19の表面にテープ止めなどして固定した状態で、該無端ベルト19を回動させることにより、図5(b)に示すように、底部壁面部分8Aと前記無端ベルト19との間に形成された注入空間17内に所要上下高さ範囲に亘ってガラスメッシュ部分10aを張設する。
【0026】
(3)この状態で、装置フレーム16における門型枠部材15の上辺枠部15aに装着しているウレタン原液注入ヘッド21を、作業者自身が前記上辺枠部15aをガイドレールとして左右水平方向に複数回にわたり往復移動させて図5(c)に示すように、硬質ウレタン原液を前記注入空間17に注入し、この注入した硬質ウレタン原液を順次発泡させることによって、図1に示したように、PUF9とガラスメッシュ部分10aとが一体成型された所要厚さtの底部断熱層11を施工する。
【0027】
なお、上記において、ウレタン原液注入ヘッド21を作業者自己診断が往復移動させているが、これに代えて往復移動させるための移動装置を設けてもよい。例えば、ネジ送り機構、ラック・ピニオン機構を用いて電動機による移動させることができる。また、注入ヘッド21からのウレタン原液の注入についても、機械により自動的に行うことができる。
【0028】
なお、上記のような手順を経て施工される底部断熱層11は、底部壁面部分8Aにおける第一列目の単位幅底部断熱層であり、この単位幅底部断熱層11に隣接する第二列目以降の単位幅底部断熱層11の施工にあたっては、前記底部断熱施工装置12を底部壁面部分8Aに沿って順次単位幅分だけ横移動させて据付け設置したうえ、上記と同様な手順を経て単位幅の底部断熱層11を繰り返し施工することにより、底部壁面部分8Aの全周全域に亘る底部断熱層を施工する。この第二列目以降の施工時には、図6の仮想線で示すように、注入空間17の一端開口部が施工済の底部断熱層11により閉鎖されることになるため、装置フレーム16の一方の側板部22は取り外し、他方の側板部22のみを取り付けて使用する。
【0029】
また、底部断熱層11の施工後、前記PC側壁6の内面で、上記した地上高さ位置よりも上部の内面部分(スチール面)8Bには、昇降自在に構成されたゴンドラ式の専用施工装置(これは、例えば特許文献1等に記載されているとおり周知であるため、その詳細については省略する。)を用いて、図1の仮想線に示すように、硬質ウレタンフォーム(PUF)9´とこのPUF9´の表面を覆い補強する表面補強材(ガラスメッシュ)10´とが一体成型された断熱層11´を自動的に現場施工し、さらに、PC側壁6と荷重支持部2との間の基礎版1の上面部分については、図1の仮想線に示すように、略三角形状のPUF成型品24と硬質ウレタンの吹付けによるPUFとにより底部断熱層25を形成して低温タンク7の全周全域を断熱施工する。
【0030】
上記の(1)〜(3)の手順によって底部断熱層11を現場施工する本発明の施工法によれば、低温タンク7の底部に据付け設置した底部断熱施工装置12に装着したウレタン原液注入ヘッド21を左右水平方向に往復移動させて無端ベルト19の表面と断熱施工対象となる底部壁面部分8Aとの間の注入空間17に硬質ウレタン原液を注入することによって、前記無端ベルト19により表面平滑性並びに全面厚さの均一性が確保された底部断熱層11を非常に効率よく施工することができるとともに、工程数も非常に少なく施工コストを大幅に低減することができる。
【0031】
また、PUF9の切削に伴う粉塵の飛散浮遊がないうえに、接着剤も全く使用しないので、作業環境を著しく改善することができる。さらに、PUF9とガラスメッシュ10とが一体成型されるので、接着剤を用いてガラスメッシュ10を貼付ける場合に比べて強度的、品質的にも外観的にも仕上がりのよい底部断熱層11を施工することができる。特に、圧締用面部材として無端ベルト19を用いることにより、狭いスペースでの事前作業であるところの、ガラスメッシュ10の注入空間17内所定位置への繰出し張設を容易かつ楽に行うことができ、施工性の一層の向上が図れる。
【0032】
なお、前記圧締用面部材として、無端ベルト19に代えて、一枚または複数枚に分割された平板を用いてもよい。また、図示省略するが、前記ウレタン原液注入ヘッド21を前記底部断熱施工装置12に上下複数段に設けられたガイドレールに付け替え可能に構成して、各ガイドレールに沿って左右水平方向に往復移動させることにより、硬質ウレタン原液を前記注入空間17内に上下複数段に注入し発泡させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の断熱施工法が実施されるところの低温タンク底部の構成の一例を説明する要部の拡大縦断面図である。
【図2】本発明の断熱施工法に用いられる底部断熱施工装置の構成を説明する概略側面図である。
【図3】同上底部断熱施工装置の構成を説明する概略正面図である。
【図4】同上底部断熱施工装置の構成を説明する概略平面図である。
【図5】(a)〜(c)は本発明の断熱施工法における施工手順を説明する要部の拡大概略側面図である。
【図6】同上施工手順を説明する要部の概略平面図である。
【符号の説明】
【0034】
6 PC側壁
7 低温タンク
8A 底部壁面部分
9 PUF(硬質ウレタンフォーム)
10 ガラスメッシュ(表面補強材の一例)
11 底部断熱層
12 底部断熱施工装置
16 装置フレーム
17 硬質ウレタン注入空間
20 ガラスメッシュ供給装置
21 ウレタン注入ヘッド
23 突張り部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温タンクの壁面のうち、その最下部より所定の地上高さ位置までの底部壁面部分に、硬質ウレタンフォームとその表面を補強する表面補強材とからなる底部断熱層を現場施工する低温タンク壁面の底部断熱施工法であって、
前記低温タンクの底部に、断熱施工対象となる前記底部壁面部分との間に底部断熱層の所要厚さに相当する硬質ウレタン原液注入空間を形成する圧締用面部材と、前記注入空間内の前記圧締用面部材側に前記底部断熱層の所要上下高さ以上の範囲に亘って表面補強材を繰出し張設可能な表面補強材供給装置と、を備えた底部断熱施工装置を据付け、
この据付けられた底部断熱施工装置に装着または装着可能なウレタン原液注入ヘッドを前記底部断熱層の所要幅に亘り左右水平方向に往復移動させて前記張設された表面補強材と断熱施工対象となる前記底部壁面部分との間の注入空間に硬質ウレタン原液を注入し、この注入した硬質ウレタン原液を発泡させることにより硬質ウレタンフォームと表面補強材とが一体成型された所定の底部断熱層を前記底部壁面部分に形成することを特徴とする低温タンク壁面の底部断熱施工法。
【請求項2】
前記圧締用面部材として上下に循環回動可能な無端ベルトを用い、この無端ベルトに前記表面補強材供給装置に保持されている表面補強材の端部を止着した状態で該無端ベルトを回動させて前記注入空間内の所定位置に表面補強材を繰出し張設するようにしている請求項1に記載の低温タンク壁面の底部断熱施工法。
【請求項3】
前記低温タンクの底部に据付けた底部断熱施工装置は、当該装置フレームと前記低温タンクの壁面に対向して設けられている固定壁との間に介在された突張り部材を介して支持されている請求項1または2に記載の低温タンク壁面の底部断熱施工法。
【請求項4】
低温タンクの壁面のうち、その最下部より所定の地上高さ位置までの底部壁面部分に、硬質ウレタンフォームとその表面を補強する表面補強材とからなる底部断熱層を現場施工するための低温タンク壁面の底部断熱施工装置であって、
前記低温タンクの底部に、断熱施工対象となる前記底部壁面部分との間に底部断熱層の所要厚さに相当する硬質ウレタン原液注入空間を形成する圧締用面部材と、
前記注入空間内の前記圧締用面部材側に前記底部断熱層の所要上下高さ以上の範囲に亘って表面補強材を繰出し張設可能な表面補強材供給装置と、
前記底部断熱層の所要幅に亘り左右水平方向に往復移動させて前記張設された表面補強材と断熱施工対象となる前記底部壁面部分との間の注入空間に硬質ウレタン原液を注入させるウレタン原液注入ヘッドとを備え、
この注入した硬質ウレタン原液を発泡させることにより硬質ウレタンフォームと表面補強材とが一体成型された所定の底部断熱層を前記底部壁面部分に形成させるように構成した低温タンク壁面の底部断熱施工装置。
【請求項5】
前記圧締用面部材は、上下に循環回動可能な無端ベルトにより構成され、この無端ベルトに前記表面補強材供給装置に保持されている表面補強材の端部を止着した状態で該無端ベルトを回動させて前記注入空間内の所定位置に表面補強材を繰出し張設するように構成した請求項4に記載の低温タンク壁面の底部断熱施工装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−240813(P2008−240813A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79617(P2007−79617)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】