説明

余剰溶射皮膜除去方法および装置ならびに該装置に使用する液体噴射ノズル

【課題】余剰溶射皮膜を除去した後の残留物の除去作業を不要とする。
【解決手段】シリンダブロック1のシリンダボア内面3aに溶射皮膜9を形成する際に、クランクケース5の内面5aに溶射材料が付着して余剰溶射皮膜15が形成される。この余剰溶射皮膜15を、水噴射ノズル19からの水噴射によって除去する。この際、水噴射ノズル19は、先端側に設けてある低圧噴射の第1の噴射口21と、高圧噴射の第2の噴射口23とをそれぞれ備え、第1の噴射口21からの低圧噴射によりウオータカーテンを形成し、第2の噴射口23からの高圧噴射により余剰溶射皮膜15を除去する。低圧噴射のウオータカーテンは、高圧噴射の水が溶射皮膜9に向かうのを阻止するように作用し、溶射皮膜9の剥離を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶射皮膜をワークへの溶射が必要な溶射部位に形成した後、溶射部位に隣接して溶射皮膜が不要な溶射不要部位に付着した余剰溶射皮膜を除去する余剰溶射皮膜除去方法および装置ならびに該装置に使用する液体噴射ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の出力・燃費・排気性能向上あるいは小型・軽量化といった観点から、アルミシリンダブロックのシリンダボア部に適用しているシリンダライナを廃止することへの設計要求は極めて高く、その代替技術の一つとして、アルミシリンダボア内面に鉄系材料からなる溶射皮膜を形成する溶射技術の適用が進められている。
【0003】
ところで、上記した溶射皮膜を形成する際には、溶射が必要なシリンダボア部以外の例えばクランクケース内面などの溶射が不要な部位への余剰溶射皮膜の付着を極力少なくすることが要求される。このような余剰溶射皮膜は、通常密着度を高めるべく溶射前処理を施しているシリンダボア部に比較して、溶射材料を噴出するノズルから離れた位置にあることもあって、密着度が低くて剥離が発生しやすく、剥離した余剰溶射皮膜がクランクケース内の潤滑油中に混入する虞がある。
【0004】
このため溶射皮膜を形成する際には、例えば下記特許文献1に記載されているような保護マスク装置を使用することが考えられる。ところがこの保護マスク装置は、溶射開始時におけるシリンダブロックの上端部分への余剰溶射皮膜の付着を防止するものであり、このような保護マスク装置を例えばクランクケース内面などの複雑な形状部分に装着するのは困難である上、保護マスク装置を取り付ける作業が必要となるので、品質およびコスト面を考慮すると量産化するには限界がある。
【0005】
これに対し、例えば下記特許文献2には、上記した余剰溶射皮膜を、溶射皮膜形成後の後工程で除去することが記載されている。これは、溶射皮膜を形成したシリンダボア内面をマスキング用円筒部材で覆った状態で、余剰溶射皮膜が付着した部位に対しブラスト処理またはショット処理を行って余剰溶射皮膜を除去している。
【特許文献1】特開2002−339053号公報
【特許文献2】特開2002−302755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、余剰溶射皮膜をブラスト処理やショット処理で除去する方法は、その処理に使用するブラスト材やショット材がシリンダブロック内に残留する虞があり、これら残留物をそのままにしておくと、エンジン稼動時にて不具合を誘発するものとなる。このため、この残留物をさらに除去するための洗浄作業が必要となり、余計な工数が必要となってコスト上昇を招く。
【0007】
そこで、本発明は、余剰溶射皮膜を除去した後の残留物の除去作業を不要とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ワークの溶射が必要な部位に溶射皮膜を形成した後、前記ワークの溶射が不要な部位に付着した余剰溶射皮膜を除去する余剰溶射皮膜除去方法において、前記溶射が必要な溶射部位と前記溶射が不要な溶射不要部位との境界部分の溶射不要部位に液体からなる保護部を設け、この保護部を境にして前記溶射不要部位側に液体を吹き付けて前記余剰溶射皮膜を除去することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液体の保護部を境にして溶射不要部位側に液体を吹き付けて余剰溶射皮膜を除去するようにしたので、皮膜除去作業自体が液体による洗浄をも兼ねることになり、その後の洗浄作業が不要であり、ブラスト処理などにおけるような残留物の除去作業が不要となって作業コストを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0011】
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる余剰溶射皮膜除去装置を示す断面図であり、図2に示すような自動車用エンジンのシリンダブロック1に対し、そのシリンダボア3が開口するシリンダヘッド取付側が下部となるよう上下を逆にした倒立状態で、余剰溶射被膜の除去作業を行う。
【0012】
なお、ここでのシリンダブロック1は、シリンダヘッド取付側と反対側のクランクケース5側の端部に、図示しないクランクシャフトのジャーナル部を回転支持する軸受部を備えたラダーフレームと呼ばれる梯子状の部材7を取り付けている。これにより、シリンダブロック1の剛性が高まり、シリンダボア3の内面3aに溶射皮膜9を形成する際には、溶射時の熱の影響によるシリンダブロック1の変形を防止できる。
【0013】
溶射皮膜9の形成は、図3に示すように図1とは逆にシリンダボア3の開口側が上部側となる正立状態で、溶射ノズル11を回転させつつシリンダボア3内に挿入することで行う。この際、溶射ノズル11から噴出される溶融した鉄系材料の噴霧13が、溶射部位であるシリンダボア内面3aに付着して溶射被膜9となる。
【0014】
このようにして溶射被膜9を形成する過程で、溶射ノズル11が特に図3中の二点鎖線で示すような最下端に位置した状態でクランクケース5の近傍のシリンダボア3に対して溶射被膜9を形成する際には、溶射材料の噴霧13の一部がクランクケース5の内面5aに向けて飛散し、この飛散もしくは浮遊粒子が該内面5aのみなら部材7の内面7aにも付着し、これらの溶射不要部位に余剰溶射被膜15となって形成されてしまう。
【0015】
そこで、本実施形態では、上記した余剰溶射被膜15を除去するのであるが、その前に、溶射被膜9の図3中でクランクケース5側の端部を、下地部分(シリンダブロック1)を含めて図4に拡大して示すように、テーパ面17となるよう面取加工を行う。この面取加工は、図示しないボーリングバーをシリンダボア3内に挿入して行う。なお、このような面取加工は、シリンダボア3の図3中で上端部についても実施する。
【0016】
上記した面取加工後は、特に図示しないが、外周部に砥石を備えたホーニング加工ヘッドをシリンダボア3内に挿入しながら回転させることで、溶射被膜9の表面を仕上げ加工する。この際溶射被膜9は、前記したテーパ面17となる面取加工を行っていることで、ホーニング加工時での剥離を防止することができる。
【0017】
そして、本実施形態では、ホーニング加工による仕上げ加工後に、図1に示すように、シリンダブロック1をクランクケース5側が上部となるよう図3とは逆の倒立状態で、余剰溶射皮膜15の除去を行う。
【0018】
余剰溶射皮膜15の除去は、液体として例えば水を噴射する液体噴射手段として水噴射ノズル19を使用する。水噴射ノズル19は、図1中で上部からクランクケース5内に回転させつつ挿入するもので、先端(図1中の下端)側部に、第1の噴射口21と第2の噴射口23とを設けている。このうち第1の噴射口21は先端側に設けてあって低圧の水24を噴射し、第2の噴射口23は第1の噴射口21に隣接してその基端側(図1中で上部側)に設けてあって高圧の水26を噴射する。
【0019】
第2の噴射口23から高圧の水26を噴射することで余剰溶射被膜15を除去し、その際低圧の水24を、前記したテーパ面17の上端部付近より上部側に噴射する。この低圧で噴射した水24により、液体からなる保護部としてのウオータカーテンを形成する。このウオータカーテンにより高圧の水26から溶射皮膜9を保護する。すなわち、本実施形態では、溶射部位と前記溶射不要部位との境界部分に、これら両部位相互を隔てる液体からなる保護部を設け、この保護部を境にして溶射不要部位側に液体を吹き付けて余剰溶射皮膜を除去する。
【0020】
図5は、上記した水噴射ノズル19の先端側の一部を示す断面図で、ノズル本体25の先端にノズル端部27を装着している。ノズル本体25は、中心部に軸方向に貫通する液体流路としての高圧通路25aを有し、この高圧通路25aに外部の図示しない高圧水供給源から高圧の水が矢印Bのように供給される。
【0021】
高圧通路25aの先端(図5中で下端)付近には、半径方向外側に向けて連通する高圧吐出口25bを設けており、この高圧吐出口25bが第2の噴射口23に連通する。すなわち、高圧通路25aに供給された高圧の水は、高圧吐出口25bを経て第2の噴射口23から外部に噴射される。
【0022】
上記した高圧吐出口25bより先端側における高圧通路25aの端部外周を覆うようにしてノズル本体25に装着されるノズル端部27は、高圧通路25aより通路径の小さい低圧通路27aを中心部に備えている。
【0023】
低圧通路27aの一端は高圧通路25aの中心に連通し、他端は先端側に設けてある容積拡大部27bに連通している。容積拡大部27bの外周側の一部は、第1の噴射口21に連通している。この容積拡大部27bは、低圧通路27aに対して容積が拡大しているので、流入する水の圧力が低下し、この低圧の水24を第1の噴射口21を経て外部に噴出する。
【0024】
このように構成した余剰溶射皮膜除去装置においては、図1に示すように、倒立状態のシリンダブロック1内に、クランクケース5側から水噴射ノズル19を回転させつつ挿入し、第1の噴射口21および第2の噴射口23から水を噴射する。
【0025】
その際、第2の噴射口23から噴出する高圧の水26によって余剰溶射皮膜15を除去するが、この余剰溶射皮膜15が形成されるクランクケース内面5aや部材7の内面7aは、図3に示すように、溶射ノズル11からはシリンダボア内面3aに比較して遠い位置にあって、噴射される溶射材料の浮遊粒子が主として付着するものであることから、密着力が弱く、したがって高圧の水26を吹き付けることで容易に除去することができる。
【0026】
そして、水噴射ノズル19が、図1に示すようにシリンダボア3の上端近傍の最下端に位置するときには、第1の噴射口21から噴射する低圧の水24によって形成されるウオータカーテンが、第2の噴射口23から噴射される高圧の水26がシリンダボア3側へ向かうのを阻止するように作用し、高圧の水26が溶射被膜9の特に図6に示す端部における下地との接合部29に吹き付けられることによる溶射被膜9の剥離を防止することができる。
【0027】
この際、第1の噴射口21から噴射する低圧の水24によっても、余剰溶射皮膜15の一部を除去することもでき、また、低圧の水24が例えシリンダボア3の溶射皮膜9に掛かったとしても、この水は低圧である上、溶射皮膜9は余剰溶射皮膜15に比べて密着度が高いので、剥離することはない。
【0028】
図7は、図1に示した水噴射ノズル19の変形例を示している。図7に示す水噴射ノズル19Aは、ウオータカーテンを形成する第1の噴射口21Aからの低圧の水24Aの噴射方向を、第2の噴射口23から離れる方向として、図1の水噴射ノズル19における第1の噴射口21の噴射方向に比べて下方となるようにしている。
【0029】
これにより、水噴射ノズル19Aを、図1の水噴射ノズル19に比較して、シリンダブロック1内のより深い位置まで挿入することなく、シリンダボア3から離れた位置で、図1と同様にしてウオータカーテンを形成することが可能である。この例では、図1の位置にある水噴射ノズル19の先端部付近が、シリンダブロック3の内壁部分に干渉する場合であっても、水噴射ノズル19Aを該干渉する位置よりも図1中で上方位置から低圧の水24Aを噴射してウオータカーテンを形成することができる。
【0030】
また、本実施形態によれば、液体からなる保護部は、水噴射ノズル19,19Aから噴射する水で構成されているので、シリンダブロック内面のような複雑な形状にも対応でき、汎用性が高いものとなっている。
【0031】
また、液体噴射手段である水噴射ノズル19,19Aは、保護部であるウオータカーテンを形成する水を噴射する第1の噴射口21,21Aを備えるとともに、溶射不要部位に付着している余剰溶射皮膜15側に水を吹き付けるための第2の噴射口23を備えているので、ウオータカーテンを形成するための専用の噴射ノズルを設ける必要がなく、設備全体の簡素化を達成することができる。
【0032】
さらに、保護部を構成する液体は、余剰溶射皮膜15が付着している溶射不要部位側に吹き付ける液体よりも低圧で噴射するので、溶射部位に形成した溶射皮膜9の剥離を防止することができる。
【0033】
また、水噴射ノズル19,19aは、外部から液体が供給される高圧通路25aに第2の噴射口23が連通して設けられ、この第2の噴射口23より先端側に、高圧通路25aに連通する容積拡大部27bを備え、この容積拡大部27bに第1の噴射口21が連通して設けられているので、1つの高圧通路25aから容積拡大部27bに流出する水の圧力が低下し、第1の噴射口21から低圧の水21を噴射することができる。
【0034】
図8は、本発明の第2の実施形態に係わる余剰溶射皮膜除去装置を示す、前記図1に対応する断面図である。この実施形態は、水噴射ノズル19Bを、その先端に余剰溶射皮膜15を除去するための高圧の水を噴射する噴射口31を設ける構成とした上で、図1と同様にシリンダヘッド取付側が下部となるよう上下を逆にした倒立状態のシリンダブロック1を、シリンダボア3の全域が水没するよう液体である水33の中に挿入した状態で、余剰溶射被膜の除去作業を行う。
【0035】
具体的には、シリンダブロック1は、シリンダボア3を含みそのクランクケース5側のテーパ面7も水没するように、水33の中に挿入する。この際、水33の液面33aが第1の実施形態におけるウオータカーテンに代わる保護部を構成する。
【0036】
この状態で、水噴射ノズル19Bを第1の実施形態における水噴射ノズル19,19Aと同様に、回転させつつシリンダブロック1内に挿入し、このとき噴射口31からは、第1の実施形態による水噴射ノズル19,19Aの第2の噴射口23と同様の高圧の水26を噴射することで、クランクケース5の内面5aおよび部材7の内面7aの余剰溶射皮膜15を除去する。
【0037】
この際、水33の液面33aが、噴射口31から噴射される高圧の水26から溶射皮膜9を保護し、該高圧の水26が溶射被膜9の特に前記図6に示す接合部29に吹き付けられることによる溶射被膜9の剥離を防止することができる。
【0038】
なお、上記図8の実施形態においては、水噴射ノズル19Bに代えて第1の実施形態で使用した水噴射ノズル19,19Aを使用してもよい。すなわち、この場合には、噴射口31から噴射される高圧の水26から溶射皮膜9を保護する保護部が、液面33aと第1の噴射口21,21Aから噴射されるウオータカーテンの二重構造となり、溶射被膜9の剥離の防止をより一層確実なものとすることができる。
【0039】
図9は、上記した第2の実施形態をより具体化した設備全体の構成を示す斜視図である。洗浄槽35は、上部が開放しかつ図9中で右側の側部開口においてシャッタ37が上下方向に移動して開閉可能となっている。
【0040】
この洗浄槽35内には、ワークであるシリンダブロック1を固定保持する治具39および治具39を設置固定するワーク反転機構43を設置するとともに、シャッタ37を閉じた状態で水を満たすための水投入ノズル41を設けている。治具39は、ワーク反転機構43によってシリンダブロック1とともに180度回転可能であり、治具39を固定する治具受け45と、該治具受け45を回転支持する一対の回転支持脚47を備えている。
【0041】
図10は、治具39上に固定したシリンダブロック1およびワーク反転機構43の側面図である。
【0042】
治具受け45は、治具39が載置される底板49と、底板49の両側縁から立ち上がる一対の側板51とを有し、側板51の外側に突出する回転支持軸部53が回転支持脚47に対して回転可能となっている。この回転支持軸部53の回転中心Pは、シリンダブロック1における図示しないクランクシャフトを回転支持するクランクシャフト支持孔55の中心と一致している。
【0043】
なお、図10中で右側の一方の回転支持脚47の回転支持軸部53と反対側の外部には、回転支持軸部53を回転駆動するための図示しない回転駆動機構を設けている。
【0044】
また、上記した治具受け45の底板49および治具39には、前述した水噴射ノズル19Bをシリンダブロック1内に挿入するための開口49aおよび39aをそれぞれ設けている。なお、ここでの水噴射ノズル19Bは、NC制御によって、前記したように回転可能かつ上下方向Zに移動可能であると同時に、シリンダブロック1の長手方向Xおよび該X方向に直交するY方向の3軸方向に移動可能とする。
【0045】
このような構成のワーク洗浄設備において、シャッタ37を開放して外した状態で、治具39上に、シリンダボア3が上部でクランクケース5が下部となる正立状態で固定してあるシリンダブロック1を、治具受け45の底板49上に固定する。
【0046】
上記図9,10の状態から図示しない回転駆動機構を作動させて、治具受け45をシリンダブロック1とともに180度回転させ、シリンダブロック1をシリンダボア3が下部でクランクケース5が上部となる前記図8に示す倒立状態とする。
【0047】
そして、シャッタ37を閉じた状態で水投入ノズル41から洗浄槽35内に水を供給し、その液面33aが図8に示す位置となるよう、例えば図示しない水位センサで検知して制御する。その後は、前述したとおり、水噴射ノズル19Bを、シリンダブロック1内に回転させつつ挿入することで、余剰溶射皮膜15の除去を行う。この際、NC制御によって水噴射ノズル19Bを適宜移動させることで、4つのシリンダボア3に対して順次挿入して余剰溶射皮膜15の除去を行う。
【0048】
このようにシリンダブロック1を倒立状態で余剰溶射皮膜15の除去を行った後は、図9に示す正立状態に戻し、クランクケース5や部材7の各内面5a,7aに対して水噴射ノズル19Bから再度水を噴射して洗浄を行う。
【0049】
上記図9の正立状態でのシリンダブロック1は、図8の水面33aが変化なくそのままだとすると、回転中心がクランクシャフト支持孔55であることから水33に接触しない状態となるが、この状態で、噴射口31がクランクケース5や部材7の各内面5a,7aに対向する位置まで水噴射ノズル19Bを挿入し、倒立状態で除去しきれなかった隅部などについて洗浄(余剰皮膜除去)を行う。
【0050】
なお、上記した各実施形態では、余剰溶射皮膜15の除去を、溶射皮膜9に対するホーニング加工後に行うものとしているが、ホーニング加工前に行っても構わない。その場合には、ホーニング加工後にシリンダブロック1内を別途洗浄する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施形態に係わる余剰溶射皮膜除去装置により余剰溶射皮膜を除去している状態を示す断面図である。
【図2】図1の余剰溶射皮膜除去装置によって余剰溶射皮膜除去を行う自動車用エンジンのシリンダブロックの斜視図である。
【図3】シリンダブロックのシリンダボア内面に対して溶射皮膜を形成する状態を示す断面図である。
【図4】図3の溶射皮膜形成後の溶射皮膜の端部に対する面取加工部位を拡大して示す断面図である。
【図5】余剰溶射皮膜除去を行う水噴射ノズルの先端側の一部を示す断面図である。
【図6】図1の面取加工し部位を拡大して示す断面図である。
【図7】図1の水噴射ノズルの変形例を示す要部の断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係わる余剰溶射皮膜除去装置を示す、図1に対応する断面図である。
【図9】第2の実施形態をより具体化した設備全体の構成を示す斜視図である。
【図10】図9のシリンダブロックおよびワーク反転機構の側面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 シリンダブロック(ワーク)
3a シリンダボア内面(溶射部位)
5a クランクケースの内面(溶射不要部位)
7a 部材の内面(溶射不要部位)
9 溶射皮膜
19,19A,19B 水噴射ノズル(液体噴射手段)
21,21A 水噴射ノズルの第1の噴射口
23 水噴射ノズルの第2の噴射口
24 低圧の水(液体からなる保護部)
25a 高圧通路(液体流路)
27a 容積拡大部
33a 水面(液体からなる保護部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの溶射が必要な部位に溶射皮膜を形成した後、前記ワークの溶射が不要な部位に付着した余剰溶射皮膜を除去する余剰溶射皮膜除去方法において、前記溶射が必要な溶射部位と前記溶射が不要な溶射不要部位との境界部分の溶射不要部位に液体からなる保護部を設け、この保護部を境にして前記溶射不要部位側に液体を吹き付けて前記余剰溶射皮膜を除去することを特徴とする余剰溶射皮膜除去方法。
【請求項2】
前記液体からなる保護部は、液体噴射手段から噴射した液体で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の余剰溶射皮膜除去方法。
【請求項3】
前記液体噴射手段は、第1の噴射口から前記保護部を構成する液体を噴射するとともに、第2の噴射口から前記溶射不要部位側に液体を吹き付けることを特徴とする請求項2に記載の余剰溶射皮膜除去方法。
【請求項4】
前記保護部を構成する液体は、前記溶射不要部位側に吹き付ける液体よりも低圧で噴射することを特徴とする請求項2または3に記載の余剰溶射皮膜除去方法。
【請求項5】
前記液体からなる保護部は、この保護部を境にして前記溶射部位側を液体中に浸した状態での該液体の液面で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の余剰溶射皮膜除去方法。
【請求項6】
ワークの溶射が必要な部位に溶射皮膜を形成し、前記ワークの溶射が不要な部位に付着した余剰溶射皮膜を除去する余剰溶射皮膜除去装置において、前記溶射が必要な溶射部位と前記溶射が不要な溶射不要部位との境界部分の溶射不要部位に液体からなる保護部を設け、この保護部を境にして前記溶射不要部位側に液体を吹き付けて前記余剰皮膜を除去する液体噴射手段を設けたことを特徴とする余剰溶射皮膜除去装置。
【請求項7】
前記液体噴射手段は、前記保護部を構成する液体を噴射する第1の噴射口と、前記保護部を境にして前記溶射不要部位側に液体を吹き付ける第2の噴射口とを備えていることを特徴とする請求項6に記載の余剰溶射皮膜除去装置。
【請求項8】
前記液体噴射手段は、外部から液体が供給される液体流路に前記第2の噴射口が連通して設けられ、この第2の噴射口より先端側に、前記液体流路に連通する容積拡大部を備え、この容積拡大部に前記第1の噴射口が連通して設けられていることを特徴とする請求項7に記載の余剰溶射皮膜除去装置。
【請求項9】
ワークの溶射が必要な部位に溶射皮膜を形成し、前記ワークの溶射が不要な部位に付着した余剰溶射皮膜を除去する余剰溶射皮膜除去装置に使用する液体噴射ノズルであって、前記溶射が必要な溶射部位と前記溶射が不要な溶射不要部位との境界部分の溶射不要部位に液体からなる保護部を設け、前記保護部を構成する液体を噴射する第1の噴射口と、前記保護部を境にして前記溶射不要部位側に液体を吹き付けて前記余剰皮膜を除去する第2の噴射口とを備え、外部から液体が供給される液体流路に前記第2の噴射口が連通して設けられ、この第2の噴射口より先端側に、前記液体流路に連通する容積拡大部を備え、この容積拡大部に前記第1の噴射口が連通して設けられていることを特徴とする液体噴射ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−303439(P2008−303439A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−152863(P2007−152863)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】