説明

余所見判定装置

【課題】車両の運転者の体格等の個人差を考慮した判定を行うことにより、判定精度を向上させた余所見判定装置を提供することを課題とする。
【解決手段】
運転支援ECU10は、ドライバモニタカメラ12より得られる画像データを画像分析することにより、アウターミラー16が調節されているときの運転者の顔向角度を検知し、これを内部メモリに保持する。また、運転支援ECU10は、運転中に運転者の顔向角度を検知し、内部メモリに格納した顔向角度と比較することにより、運転者の余所見を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者の余所見を判定するための余所見判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、運転者の脇見状態を判定するために運転者の顔向きを検出し、顔向角度が所定の閾値以上である状態が所定時間継続すると、運転者が脇見をしていると判定する脇見判定装置があった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−308375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような従来の脇見判定装置では、画一的に決められた閾値を用いて運転者の顔向角度の判定を行っていた。すなわち、この判定に用いられる閾値は、不特定多数の運転者を対象として画一的に導出された値であった。
【0004】
車両を運転すると想定される運転者の体格やシート位置等には個人差があるため、上述のように画一的に導出された閾値を用いる判定では、脇見状態の判定精度の向上を図ることが困難であった。
【0005】
人間の顔は左右で特徴の個人差(輪郭や目又は鼻の位置等の差)があるため、上述のような閾値を用いて顔の左右の対称性に基づいて顔向きを検出する手法では、検出精度の確保が困難であった。
【0006】
また、このような閾値を用いる判定手法を視線方向の検出に適用する場合においても、目の形状に個人差があるため、検出精度の確保が困難であった。
【0007】
そこで、本発明は、車両の運転者の体格等の個人差を考慮した判定を行うことにより、判定精度を向上させた余所見判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面の余所見判定装置は、運転者が正面前方に対して角度を有する方向を向いて操作する所定装置を備える車両に搭載される余所見判定装置であって、運転者の顔向角度を検知する顔向検知手段と、運転者による前記所定装置の操作を検出する操作検出手段と、前記操作検出手段によって前記所定装置の操作が検出されると、前記顔向検知手段により検知される当該所定装置の操作時における顔向角度を保持する顔向角度保持手段と車両の運転中に前記顔向検知手段により検知される運転者の顔向角度と、前記顔向角度保持手段に保持される顔向角度とに基づいて、運転者の余所見を判定する余所見判定手段とを含む。
【0009】
また、前記所定装置は電動調節式のアウターミラーであるとともに、前記操作検出手段は当該電動調節式のアウターミラーの調節装置であり、前記顔向角度保持手段は、右側アウターミラーの操作時の顔向角度と、左側アウターミラーの操作時の顔向角度とを保持しており、余所見判定手段は、車両の運転中の顔向角度と、前記顔向角度保持手段によって保持される右側アウターミラーの操作時の顔向角度、又は、左側アウターミラーの操作時の顔向角度とに基づいて、運転者の右方向及び左方向における余所見を判定してもよい。
【0010】
また、前記所定装置は電動調節式のルームミラーであるとともに、前記操作検出手段は当該電動調節式のルームミラーの調節装置であり、前記顔向角度保持手段は、電動調節式のルームミラーの操作時の顔向角度を保持しており、余所見判定手段は、車両の運転中の顔向角度と、前記顔向角度保持手段によって保持される前記電動調節式のルームミラーの操作時の顔向角度とに基づいて、運転者の上方向における余所見を判定してもよい。
【0011】
また、前記所定装置はメータパネル内に表示部を有するとともに、前記操作検出手段は運転者が当該表示部の表示内容を視認しながら当該表示部を有する所定装置を操作するための操作装置であり、前記顔向角度保持手段は、前記表示部を有する所定装置の操作時の顔向角度を保持しており、余所見判定手段は、車両の運転中の顔向角度と、前記顔向角度保持手段によって保持される前記表示部を有する所定装置の操作時の顔向角度とに基づいて、運転者の下方向における余所見を判定してもよい。
【0012】
また、前記所定装置はナビゲーション装置又はエアコンの操作装置であるとともに、前記操作検出手段は当該ナビゲーション装置又は当該エアコンの操作装置であり、前記顔向角度保持手段は、前記ナビゲーション装置又は前記エアコンの操作装置の操作時の顔向角度を保持しており、余所見判定手段は、車両の運転中の顔向角度と、前記顔向角度保持手段によって保持される前記ナビゲーション装置又はエアコンの操作装置の操作時の顔向角度とに基づいて、運転者の左斜下方向における余所見をしてもよい。
【0013】
また、運転席の位置を検知する位置検知手段と、前記位置検知手段によって運転席の位置の変更が検知されると、前記所定装置の設定を初期状態にリセットする、リセット手段とをさらに備え、前記顔向角度保持手段は、前記リセット手段によって初期状態にリセットされた後に所定装置の操作が検出されると、当該操作時に前記顔向検知手段により検知される顔向角度を保持してもよい。
【0014】
また、前記運転者の視線方向を検知する視線方向検知手段をさらに備え、前記余所見判定手段は、前記顔向角度保持手段に保持される顔向角度と、前記顔向検知手段によって検知される運転者の顔向角度と、視線方向とに基づいて運転者の余所見を判定してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、個人差を考慮した閾値を用いることにより余所見判定の判定精度を向上させた余所見判定装置を提供できるという特有の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の余所見判定装置を適用した実施の形態について説明する。
【0017】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1の余所見判定装置の構成を示す図である。本実施の形態の余所見判定装置は、運転支援ECU(Electronic Control Unit)10に含まれており、余所見の判定処理は、運転支援ECU10によって実現される。
【0018】
この運転支援ECU10には、運転者の余所見に対する警報(警報音の発報又は警報灯の点灯等)を発報する警報装置11が接続されており、本実施の形態の余所見判定装置によって運転者の余所見が判定されると、この警報装置11から運転者に警報が発報されるように構成されている。この警報装置11は、例えば、周知のブザーや警報灯等で構成される。
【0019】
運転支援ECU10には、警報装置11に加えて、ドライバモニタカメラ12、アウターミラースイッチ13、アウターミラーECU14、及びシート位置検出部15が接続されている。
【0020】
運転支援ECU10、及びアウターミラーECU14は、図示しないバスを介してCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等からなるマイクロコンピュータを中心として構成される。
【0021】
この運転支援ECU10は、本実施の形態のドライバー支援装置専用のECUであってもよいし、例えば、ドライバーの居眠り状態を検知して警報を発報するための運転支援を行うECU、あるいはプリクラッシュセーフティシステム用のECUであってもよく、少なくとも本実施の形態では、図2及び図3に示す処理を実行できるように構成されていればよい。なお、運転支援ECU10は、後述する余所見判定処理で用いる閾値を保持するための内部メモリを有する。この内部メモリは、例えば、上述のRAMによって構成される。
【0022】
ドライバモニタカメラ12は、例えば、車室内のステアリングコラム上に配設され、運転者の顔画像を撮影するCCD(Charge Coupled Device)カメラで構成される。運転支援ECU10は、ドライバモニタカメラ12によって撮影された顔画像を画像分析することにより、運転者の顔向きを検出できるように構成される。この顔向きの検出は、例えば、顔画像を表す画像データに対してパターン認識を行うことにより、運転者の鼻、目、顔の輪郭全体から顔向きを表す角度(以下、顔向角度という)を求めることによって実現される。なお、ここでは、顔向角度は、運転者が正面前方の水平方向を向いているときに零、右方向を向いているときに正の値、左方向を向いているときに負の値で表されるものとする。
【0023】
アウターミラースイッチ13は、電動調節式のアウターミラー16を調節するためのスイッチで構成される。本実施の形態では、アウターミラースイッチ13は、左右のどちらかのアウターミラーを選択するための選択スイッチと、選択したアウターミラーを上下左右に調節するための調節スイッチとを含む。
【0024】
アウターミラーECU14は、アウターミラースイッチ13から送られる制御指令に基づき、アウターミラー16を調節するためのECUによって構成される。
【0025】
シート位置検出部15は、図示しない電動調節式のドライバーズシートの位置を検出できるように構成されていればよく、例えば、電動調節式のドライバーズシート用のECUで用いられるシート位置調節用の制御指令を検出するように構成される。
【0026】
次に、図2を用いて本実施の形態の余所見判定装置による閾値の設定処理について説明する。この処理は、運転支援ECU10によって実行される。
【0027】
運転支援ECU10は、アウターミラースイッチ13の操作があったか否かを判定する(ステップS1)。この処理は、アウターミラースイッチ13の操作があるまで繰り返し実行される。
【0028】
運転支援ECU10は、アウターミラースイッチ13の操作があったと判定したときは、ドライバモニタカメラ12によって得られる画像データを画像分析し、顔向角度を導出する(ステップS2)。この判定は、例えば、左右いずれかのアウターミラーが上下左右に調節されていることを運転支援ECU10が検知したときに、アウターミラースイッチ13の操作があったと判定する処理で実現されればよい。
【0029】
次いで、運転支援ECU10は、顔向角度が右向きを表すか、左向きを表すかを判定する(ステップS3)。ここでは、顔向きが右向きの場合に正の値で顔向角度を表し、顔向きが左側の場合に負の値で顔向角度を表し、顔向きが正面の場合に顔向角度を0度とすることにしているので、顔向角度が正の値であるか負の値であるかによって判定を行うようにすればよい。
【0030】
運転支援ECU10は、顔向角度が正の値である場合は、その顔向角度を右方向における余所見判定の閾値として内部メモリに格納する(ステップS4)。これは、運転者がアウターミラースイッチ13を操作することによって右側のアウターミラー16を調節しているときは、右側のアウターミラー16を見ていると考えられるため、そのときの顔向角度を右方向の余所見を判定するための閾値として保持することにより、余所見判定の判定精度を向上させるためである。
【0031】
一方、運転支援ECU10は、顔向角度が負の値である場合は、その顔向角度を左方向における余所見判定の閾値として内部メモリに格納する(ステップS5)。ステップS4と同様に、左側のアウターミラー16を見ているときの運転者の顔向角度を左方向の余所見を判定するための閾値として保持することにより、余所見判定の判定精度を向上させるためである。
【0032】
このように、本実施の形態の余所見判定装置では、車両の運転者が実際に左右のアウターミラーを調節している際の顔向角度の値を左右方向の余所見判定に用いる閾値として設定するため、左右方向の余所見判定における判定精度を向上させることができる。
【0033】
運転者の体格やシート位置には個人差があり、また、運転者が右側のアウターミラー16を見るときと、左側のアウターミラー16を見るときとでは顔向角度の絶対値が異なるため、実際に車両を運転する人がアウターミラーを調節する際の顔向きを判定処理における閾値として用いることは、不特定多数の運転者を対象として画一的に導出される閾値を用いる場合に比べて、左右方向の余所見判定における判定精度を大幅に向上させることができる。
【0034】
なお、ここでは、運転者が左右のアウターミラー16を見ている際の顔向角度(実測値)を余所見判定の閾値としてそのまま用いる形態について説明したが、このように実測値をそのまま閾値として用いるのではなく、実測値に所定のマージン(例えば、2〜3度)を付加して得る値を閾値として用いるように構成してもよい。
【0035】
次に、図3を用いて本実施の形態の変形例の余所見判定装置による閾値の設定処理について説明する。この処理は、運転支援ECU10によって実行される。なお、ステップS12、及びS14乃至S17は、図2に示すステップS1乃至S5と同一の処理である。
【0036】
運転支援ECU10は、シート位置検出部15によって検出されるシート位置が所定の割合以上変更されたか否かを判定する(ステップS10)。これは、シート位置を最も前にした位置を前後方向の零点とし、この零点から(後ろ方向)の距離の変化割合に基づいて行う判定処理であり、例えば、所定の割合は2割に設定される。上下方向のシート位置及びシートバックの傾斜角度についても同様に判定が行われる。このステップS10の処理は、シート位置が所定の割合以上変更されることが検出されるまで繰り返し実行される。
【0037】
運転支援ECU10は、シート位置が所定の割合以上変更されたと判定した場合は、アウターミラー16の位置をデフォルトの位置に調節するための制御指令をアウターミラーECU14に送る(ステップS11)。この結果、アウターミラーECU14により、アウターミラー16は、デフォルトの位置に調節される。
【0038】
ここで、デフォルトの位置とは、例えば、工場出荷時における初期状態の位置であればよい。このようにデフォルトの位置に調節するのは、その運転者によって調節される位置からずらすことにより、運転者に調節を促すためである。
【0039】
次いで、運転支援ECU10は、アウターミラー16の操作があったか否かを判定する(ステップS12)。これは、図2に示すステップS1と同一の処理であり、アウターミラースイッチ13の操作の有無に基づいて判定する処理である。この変形例では、運転者の操作を所定時間(例えば、30秒程度)待つように構成してもよい。
【0040】
運転支援ECU10は、アウターミラースイッチ13の操作がないと判定した場合は、アウターミラー16の位置を標準位置に調節するための制御指令をアウターミラーECU14に送る(ステップS13)。これは、アウターミラー16の位置が運転者によって調節されずにデフォルトの位置のままであるため、不特定多数の運転者を対象とした位置(標準位置)に調節することにより、車両の運行が始まった場合に後方視界を確保するためである。
【0041】
なお、この場合において、それまでに一度もアウターミラー16の操作時における顔向角度が検出されずに、運転支援ECU10の内部メモリに余所見判定用の閾値が格納されていない場合は、従来同様に不特定多数の運転者を対象として導出される閾値を用いて余所見判定が行われるように構成されてもよい。
【0042】
運転支援ECU10は、ステップS3による処理を終えると、すべての処理を終了する。
【0043】
なお、運転支援ECU10は、ステップS12において、アウターミラースイッチ13の操作があったと判定した場合は、図2に示すステップS2乃至S5と同一のステップS14乃至S17による処理を実行する。これにより、処理は終了する。
【0044】
このように、本実施の形態の変形例の余所見判定装置によれば、シート位置が所定の割合以上変更された場合でも、車両の運転者が実際に左右のアウターミラーを調節している際の顔向角度を左右方向の余所見判定に用いる閾値とするため、左右方向の余所見判定における判定精度を向上させることができる。
【0045】
また、シート位置が所定の割合以上変更されたのにアウターミラー16が調節されない場合は、アウターミラー16の位置をデフォルトの位置に調節するので、運転者に調節を催促することにより、新たなシート位置での運転者に対応した余所見判定処理用の閾値を得ることができる。
【0046】
なお、以上では、シート位置検出部15によって検出されるシート位置が所定の割合以上変更された場合に、運転者に再調節を促すためにアウターミラー16の位置をデフォルトの位置に調節する形態について説明したが、シート位置の変更に限らず、ドライバーズシートに重量センサを設け、運転者の体重が所定の割合以上変化した場合や、シートベルトの引出量を検出するセンサを設け、シートベルトの引出量が所定の割合以上変化した場合に、アウターミラー16の位置をデフォルトの位置に調節するように構成してもよい。
【0047】
また、以上では、ドライバモニタカメラ12より得られる画像データを分析して得る運転者の顔向角度に基づいて余所見判定を行う形態について説明したが、顔向角度に代えて、あるいは、顔向角度に加えて、この画像データを分析して得る運転者の視線の角度(以下、視線角度と称す)を用いて余所見判定を行うように構成されてもよい。例えば、運転者の目の画像データを画像認識することによって視線角度を求め、得られた視線角度と顔向角度とに基づいて運転者が視認している方向(以下、視認方向)を特定し、この視認方向と余所見判定用の閾値とを比較することによって余所見判定を行うように構成してもよい。
【0048】
また、以上では、顔向きが右向きの場合に正の値で顔向角度を表し、顔向きが左側の場合に負の値で顔向角度を表し、顔向きが正面の場合に顔向角度を0度とする形態について説明したが、運転者が右側又は左側のアウターミラー16を調整している際の顔向角度を0度とし、この0度を基準として余所見判定を行うように構成してもよい。この場合、右側と左側とにそれぞれ0度の基準点を作ることができる。正面方向の顔向きを0度とする場合は、右側又は左側のアウターミラー16を調整しているときの顔向角度に基づいて正面方向における0度(基準点)を導出するため、アウターミラー16の方向を向いている際の誤差(実際のアウターミラー16の角度と、検出される顔向角度との誤差)が正面方向における0度を導出する際に含まれるが、右側又は左側のアウターミラー16を調整している際の顔向角度を0度とすれば、このような誤差を排除することができ、判定精度をさらに向上させることができる。また、右側又は左側のいずれかのアウターミラー16しか調整されなかった場合には、少なくとも調整が行われた側における良好な判定精度を維持することができる。
【0049】
[実施の形態2]
図4は、実施の形態2の余所見判定装置の構成を示す図である。実施の形態2の余所見判定装置は、運転者の上下方向の顔向角度における閾値を実測値に基づいて設定する点が、左右方向の顔向角度における閾値を設定する実施の形態1の余所見判定装置と異なる。
【0050】
本実施の形態の余所見判定装置は、運転支援ECU20に含まれており、余所見の判定処理は、運転支援ECU20によって実現される。また、この運転支援ECU20には、警報装置21が接続されている。この警報装置21は、実施の形態1の警報装置11と同一のもので構成されてよい。
【0051】
運転支援ECU20には、警報装置21に加えて、ドライバモニタカメラ22、インナーミラースイッチ23、インナーミラーECU24、及びクルーズコントロールスイッチ25が接続されている。
【0052】
運転支援ECU20、及びインナーミラーECU24は、図示しないバスを介してCPU、ROM、及びRAM等からなるマイクロコンピュータを中心として構成される。
【0053】
この運転支援ECU20は、実施の形態1の運転支援ECU10と同様に、本実施の形態のドライバー支援装置専用のECUであってもよいし、例えば、ドライバーの居眠り状態を検知して警報を発報するための運転支援を行うECU、あるいはプリクラッシュセーフティシステム用のECUであってもよく、少なくとも本実施の形態では、図5に示す処理を実行できるように構成されていればよい。なお、運転支援ECU20は、後述する余所見判定処理で用いる閾値を保持するための内部メモリを有する。この内部メモリは、例えば、上述のRAMによって構成される。
【0054】
ドライバモニタカメラ22は、実施の形態1のドライバモニタカメラ12と同様に、例えば、車室内のステアリングコラム上に配設され、運転者の顔画像を撮影するCCDカメラで構成される。運転支援ECU20は、ドライバモニタカメラ22によって撮影された顔画像を画像分析することにより、運転者の上下方向の顔向きを検出できるように構成される。なお、本実施の形態では、上下方向の余所見判定を行うための閾値を設定するため、顔向きを表す角度は、運転者が正面を向いているときに零とされ、上方を向いているときに正の値、下方を向いているときに負の値で表されるものとする。
【0055】
インナーミラースイッチ23は、電動調節式のインナーミラー26を調節するためのスイッチで構成される。この電動調節式のインナーミラー26は、例えば、インナーミラーECU24を介して、上下左右への角度調節を電動式に行えるものであればよい。このような電動調節式のインナーミラー26を調節するためのインナーミラースイッチ23は、上下左右に調節するための調節スイッチを含んでいればよく、実施の形態1におけるアウターミラースイッチ13と兼用で構成されてもよい。
【0056】
インナーミラーECU24は、インナーミラースイッチ23から送られる制御指令に基づき、インナーミラー26を調節するためのECUによって構成される。
【0057】
クルーズコントロールスイッチ25は、車両のステアリングコラムの上方(すなわち、運転者の視界における正面下方)に配設されるメータパネル内に配設され、同じくメータパネル内に配設される表示部に表示されるクルーズコントロール用の設定車速を調節するためのスイッチであればよい。ここでは、少なくとも、運転者がクルーズコントロールスイッチ25を操作するときに、メータパネルを見る状態が生じればよい。
【0058】
次に、図5を用いて本実施の形態の余所見判定装置による閾値の設定処理について説明する。この処理は、運転支援ECU20によって実行される。
【0059】
運転支援ECU20は、インナーミラースイッチ23の操作があったか否かを判定する(ステップS21)。
【0060】
運転支援ECU20は、インナーミラースイッチ23の操作があったと判定したときは、ドライバモニタカメラ22によって得られる画像データを画像分析し、顔向角度を導出する(ステップS22)。
【0061】
次いで、運転支援ECU20は、その顔向角度を上方向における余所見判定の閾値として内部メモリに格納する(ステップS23)。これは、運転者がインナーミラースイッチ23を操作することによってインナーミラー26を調節しているときは、インナーミラー26を見ていると考えられるため、そのときの顔向角度を上方向の余所見を判定するための閾値として保持することにより、余所見判定の判定精度を向上させるためである。
【0062】
一方、運転支援ECU20は、インナーミラースイッチ23の操作がないと判定した場合は、手順をステップS24に進行させ、クルーズコントロールスイッチ25の操作があったか否かを判定する(ステップS24)。
【0063】
運転支援ECU20は、クルーズコントロールスイッチ25の操作があったと判定したときは、ドライバモニタカメラ22によって得られる画像データを画像分析し、顔向角度を導出する(ステップS25)。
【0064】
次いで、運転支援ECU20は、その顔向角度を下方向における余所見判定の閾値として内部メモリに格納する(ステップS26)。これは、運転者がクルーズコントロールスイッチ25を操作することによってクルーズコントロールを設定しているときは、メータパネル内の表示部を見ていると考えられるため、そのときの顔向角度を下方向の余所見を判定するための閾値として保持することにより、余所見判定の判定精度を向上させるためである。
【0065】
このように、本実施の形態の余所見判定装置では、車両の運転者が実際にインナーミラーを調節している際、又は、クルーズコントロールを設定している際の顔向角度を上下方向の余所見判定に用いる閾値とするため、上下方向の余所見判定における判定精度を向上させることができる。
【0066】
運転者の体格やシート位置には個人差があるため、実際に車両を運転する人がインナーミラー又はクルーズコントロールを調節する際の顔向きを判定処理における閾値として用いることは、不特定多数の運転者を対象として画一的に導出される閾値を用いる場合に比べて上下方向の余所見判定における判定精度を大幅に向上させることができる。
【0067】
なお、ここでは、運転者がインナーミラーを見ている際、又はクルーズコントロールを設定している際の顔向角度を余所見判定の閾値として用いる形態について説明したが、このように実測値をそのまま閾値として用いるのではなく、実測値に所定の値を付加して得る値を閾値として用いるように構成されてもよい。
【0068】
この実施の形態2では、上下方向の余所見判定の閾値を設定する余所見判定装置について説明したが、左右方向の余所見判定の閾値を設定する実施の形態1の余所見判定装置と組み合わせれば、上下左右方向の余所見判定の閾値を運転者の実測値に基づいて設定することのできる余所見判定装置を提供することができる。この場合において、運転者が正面前方の水平方向を向いているときの顔向角度に対する上下方向の角度と、左右方向の角度とを組み合わせて余所見判定を行うように構成してもよい。例えば、インストルメントパネル中央部に配設されるナビゲーション装置又はエアコン操作パネルの操作を運転支援ECU20が検出し、ドライバモニタカメラ22によって得られる画像データを画像分析し、そのときの顔向角度を用いて左斜下方向の余所見判定を行うように構成してもよい。
【0069】
以上、本発明の例示的な実施の形態の余所見判定装置について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の余所見判定装置は、車両の運転支援装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】実施の形態1の余所見判定装置の構成を示す図である。
【図2】実施の形態1の余所見判定装置による閾値の設定処理を示す処理手順図である。
【図3】実施の形態1の変形例の余所見判定装置による閾値の設定処理を示す処理手順図である。
【図4】実施の形態2の余所見判定装置の構成を示す図である。
【図5】実施の形態2の余所見判定装置による閾値の設定処理を示す処理手順図である。
【符号の説明】
【0072】
10、20 運転支援ECU
12、22 ドライバモニタカメラ
13 アウターミラースイッチ
14 アウターミラーECU
15 シート位置検出部
16 アウターミラー
23 インナーミラースイッチ
24 インナーミラーECU
25 クルーズコントロールスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が正面前方に対して角度を有する方向を向いて操作する所定装置を備える車両に搭載される余所見判定装置であって、
運転者の顔向角度を検知する顔向検知手段と、
運転者による前記所定装置の操作を検出する操作検出手段と、
前記操作検出手段によって前記所定装置の操作が検出されると、前記顔向検知手段により検知される当該所定装置の操作時における顔向角度を保持する顔向角度保持手段と
車両の運転中に前記顔向検知手段により検知される運転者の顔向角度と、前記顔向角度保持手段に保持される顔向角度とに基づいて、運転者の余所見を判定する余所見判定手段と
を含む余所見判定装置。
【請求項2】
前記所定装置は電動調節式のアウターミラーであるとともに、前記操作検出手段は当該電動調節式のアウターミラーの調節装置であり、
前記顔向角度保持手段は、右側アウターミラーの操作時の顔向角度と、左側アウターミラーの操作時の顔向角度とを保持しており、
余所見判定手段は、車両の運転中の顔向角度と、前記顔向角度保持手段によって保持される右側アウターミラーの操作時の顔向角度、又は、左側アウターミラーの操作時の顔向角度とに基づいて、運転者の右方向及び左方向における余所見を判定する、請求項1に記載の余所見判定装置。
【請求項3】
前記所定装置は電動調節式のルームミラーであるとともに、前記操作検出手段は当該電動調節式のルームミラーの調節装置であり、
前記顔向角度保持手段は、電動調節式のルームミラーの操作時の顔向角度を保持しており、
余所見判定手段は、車両の運転中の顔向角度と、前記顔向角度保持手段によって保持される前記電動調節式のルームミラーの操作時の顔向角度とに基づいて、運転者の上方向における余所見を判定する、請求項1に記載の余所見判定装置。
【請求項4】
前記所定装置はメータパネル内に表示部を有するとともに、前記操作検出手段は運転者が当該表示部の表示内容を視認しながら当該表示部を有する所定装置を操作するための操作装置であり、
前記顔向角度保持手段は、前記表示部を有する所定装置の操作時の顔向角度を保持しており、
余所見判定手段は、車両の運転中の顔向角度と、前記顔向角度保持手段によって保持される前記表示部を有する所定装置の操作時の顔向角度とに基づいて、運転者の下方向における余所見を判定する、請求項1に記載の余所見判定装置。
【請求項5】
前記所定装置はナビゲーション装置又はエアコンの操作装置であるとともに、前記操作検出手段は当該ナビゲーション装置又は当該エアコンの操作装置であり、
前記顔向角度保持手段は、前記ナビゲーション装置又は前記エアコンの操作装置の操作時の顔向角度を保持しており、
余所見判定手段は、車両の運転中の顔向角度と、前記顔向角度保持手段によって保持される前記ナビゲーション装置又はエアコンの操作装置の操作時の顔向角度とに基づいて、運転者の左斜下方向における余所見を判定する、請求項1に記載の余所見判定装置。
【請求項6】
運転席の位置を検知する位置検知手段と、
前記位置検知手段によって運転席の位置の変更が検知されると、前記所定装置の設定を初期状態にリセットする、リセット手段と
をさらに備え、前記顔向角度保持手段は、前記リセット手段によって初期状態にリセットされた後に所定装置の操作が検出されると、当該操作時に前記顔向検知手段により検知される顔向角度を保持する、請求項1に記載の余所見判定装置。
【請求項7】
前記運転者の視線方向を検知する視線方向検知手段をさらに備え、
前記余所見判定手段は、前記顔向角度保持手段に保持される顔向角度と、前記顔向検知手段によって検知される運転者の顔向角度と、視線方向とに基づいて運転者の余所見を判定する、請求項1乃至6のいずれかの項に記載の余所見判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−9244(P2009−9244A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168124(P2007−168124)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】