説明

作業機械における油圧制御システム

【課題】昇降動する作業部の有する位置エネルギーを、確実に回収できるようにすると共に、回収されたエネルギーを損失の少ない状態で再利用できるようにする。
【解決手段】 ブームの下降時にブームシリンダ8のヘッド側油室8aから排出される油を蓄圧するアキュムレータ35と、該アキュムレータ35の蓄圧油がヘッド側油室17aに供給されることでロッド側油室17bの油圧を増圧して出力する増圧シリンダ17とを設けて、ブームの上昇時に、前記増圧シリンダ17により増圧された圧油を、メインポンプ9の吐出油に合流させる構成にすると共に、増圧シリンダ17のロッド側油室17bから出力された圧油をロッド側油室17aに還流させる還流油路41、42、40、39を設けて、増圧シリンダ17からメインポンプ9の吐出油への合流時に合流バルブ49を通過する際の圧力損失を低減できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降する作業部を備えた作業機械において、作業部の有する位置エネルギーを回収、再利用することができる作業機械における油圧制御システムの技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベルやクレーン等の作業機械は、昇降自在な作業部を備えると共に、該作業部の昇降は、油圧ポンプから圧油供給される昇降用油圧シリンダの伸縮作動に基づいて行うように構成されているが、このものにおいて、従来、作業部の下降時に昇降用油圧シリンダの重量保持側油室から油タンクに排出される油は、作業部の自重による急激な落下を防止するため、昇降用油圧シリンダの油供給排出制御を行うコントロールバルブに設けられた絞りによってメータアウト制御されるように構成されている。つまり、地面より上方に位置している作業部は位置エネルギーを有しているが、該位置エネルギーは、前記コントロールバルブの絞りを通過するときに熱エネルギーに変換され、さらに該熱エネルギーはオイルクーラーによって大気中に放出されることになって、無駄なエネルギー損失となる。
そこで、作業部の有する位置エネルギーを回収、再利用するために、従来設けられている昇降用油圧シリンダに加えてアシストシリンダを設け、作業部の下降時に、アシストシリンダの重量保持側油室から排出される油をアキュムレータに蓄圧すると共に、作業部の上昇時に、アキュムレータに蓄圧された圧油をアシストシリンダの重量保持側油室に供給するようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかるに、前記特許文献1のものは、作業部の下降時に、アシストシリンダからの排出油はアキュムレータに蓄圧されるものの、作業部を昇降するために従来から設けられている昇降用油圧シリンダからの排出油は、コントロールバルブを経由して油タンクに排出されるようになっており、作業機の有する位置エネルギーのうちの一部しか回収されていないことになる。しかも、作業部の上昇時にアキュムレータに充分に蓄圧されていない場合には、油圧ポンプからコントロールバルブを介して昇降用油圧シリンダに供給される圧油の一部が、アシストシリンダに供給されると共にアキュムレータ蓄圧用に用いられるように構成されているため、作業部の上昇速度が遅くなって、作業効率が低下するという問題がある。
これに対し、アシストシリンダを設けることなく、作業部の下降時に昇降用油圧シリンダから排出された油をアキュムレータに蓄圧すると共に、作業部の上昇時に該アキュムレータに蓄圧された圧油を昇降用油圧シリンダに供給するように構成すれば、作業機の有する位置エネルギーを確実に回収できることになるが、この場合、アキュムレータの蓄圧油の圧力では、高負荷作業時に作業部を上昇させるべく昇降用油圧シリンダに供給される圧油の圧力としては不足する場合がある。そこでアキュムレータの蓄圧油を、エンジン動力で駆動する専用のポンプで高圧にして、昇降用油圧シリンダに供給することが提唱されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特許第2582310号公報
【特許文献2】特開2008−14468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかるに、特許文献2のものでは、アキュムレータの蓄圧油を高圧にするための専用のポンプや、該ポンプにエンジン動力を伝達するための動力伝達機器(ギア装置等)が必要になって、コストアップの要因となるうえ、動力伝達機器におけるトルク低下や、ポンプ自体の慣性質量などによる空転トルク等のエネルギー損失の問題があって、更なる省エネルギー化が求められ、ここに本発明が解決しようとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、作業部を昇降せしめる昇降用油圧シリンダを備えた作業機械において、該作業機械の油圧制御システムは、前記昇降用油圧シリンダの油圧供給源になる油圧ポンプと、作業部の下降時に昇降用油圧シリンダの重量保持側油室から排出される油を蓄圧するアキュムレータと、該アキュムレータの蓄圧油が入力側油室に供給されることで出力側油室の油圧を増圧して出力する増圧シリンダと、該増圧シリンダの入力側油室への油供給を制御する増圧シリンダ入力側油室用制御バルブと、増圧シリンダの出力側油室から出力される圧油を油圧ポンプの吐出油に合流させる合流油路と、該増圧シリンダの出力側油室から油圧ポンプの吐出油への合流を制御する合流バルブと、増圧シリンダの出力側油室から出力される圧油を入力側油室に還流させる増圧シリンダ還流油路と、該増圧シリンダの出力側油室から入力側油室への還流を制御する増圧シリンダ出力側油室用制御バルブとを備えて構成されることを特徴とする作業機械における油圧制御システムである。
請求項2の発明は、増圧シリンダ出力側油室用制御バルブは、増圧シリンダの出力側油室の圧力と油圧ポンプの吐出圧との差圧が大きいほど、増圧シリンダの出力側油室から入力側油室への還流流量が多くなるように制御されることを特徴とする請求項1に記載の作業機械における油圧制御システムである。
請求項3の発明は、油圧制御システムは、さらに、作業部の下降時に昇降用油圧シリンダの重量保持側油室から排出される油を、アキュムレータおよび増圧シリンダの出力側油室に供給する回収油路を備えると共に、前記増圧シリンダ出力側油室用制御バルブは、前記回収油路から増圧シリンダの出力側油室への油供給の制御を行なう構成であることを特徴とする請求項1または2に記載の作業機械における油圧制御システムである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明とすることにより、作業部の下降時に、昇降用油圧シリンダの重量保持側油室から排出された油がアキュムレータに蓄圧される一方、増圧シリンダは、前記アキュムレータの蓄圧油が入力側油室に供給されることで出力側油室から増圧された圧油を出力し、そして該増圧シリンダにより増圧された圧油は、油圧ポンプの吐出油に合流されることになる。而して、作業部の下降時に回収された位置エネルギーを再利用できることになって、省エネルギー化に大きく貢献できると共に、増圧シリンダにより増圧することで、高負荷作業時にも対応できる高圧の圧油を供給できることになる。しかも、エンジン動力で駆動するポンプを用いて増圧する場合のように、エンジンからポンプへの動力伝達経路におけるトルク低下やポンプ自体の慣性質量などによる空転トルクの損失等がなく、回収したエネルギーを可及的に損失の少ない状態で利用できると共に、コスト的にも有利となる。さらに、増圧シリンダから油圧ポンプの吐出油への合流時に、増圧シリンダの出力側油室から出力された圧油の一部を還流油路を経由して入力側油室に還流させることができ、而して、増圧シリンダの出力側油室の圧力とメインポンプの吐出圧との差圧を小さくできて、増圧シリンダから出力された圧油が合流バルブを通過する際の圧力損失を低減させることができる。さらに、前記還流分、アキュムレータから増圧シリンダの入力側油室への供給流量を減少させることができて、アキュムレータの蓄圧油の消費を抑えることができ、この点でも省エネルギー化を達成できる。
請求項2の発明とすることにより、合流バルブの通過時における圧力損失をできるだけ低減させるべく、増圧シリンダの出力側油室の圧力と油圧ポンプの吐出圧との差圧に応じた適切な還流流量制御を行えることになる。
請求項3の発明とすることにより、増圧シリンダ出力側油室用制御バルブは、増圧シリンダの出力側油室から入力側油室への還流の制御と、回収油路から増圧シリンダの出力側油室への油供給の制御との二つの機能を有することになり、もって、部材の兼用化が図れて、コストダウンに寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1は作業機械の一例である油圧ショベルであって、該油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2、該下部走行体2の上方に旋回自在に支持される上部旋回体3、該上部旋回体3のフロントに装着される作業部4等の各部から構成され、さらに該作業部4は、基端部が上部旋回体3に上下揺動自在に支持されるブーム5、該ブーム5の先端部に前後揺動自在に支持されるアーム6、該アーム6の先端部に取付けられるバケット7等から構成されている。
【0007】
8は前記ブーム5を上下揺動せしめるべく伸縮作動する左右一対のブームシリンダ(本発明の昇降用油圧シリンダに相当する)であって、該ブームシリンダ8は、ヘッド側油室8a(本発明の重量保持側油室に相当する)の圧力によって作業部4の重量を保持すると共に、該ヘッド側油室8aへの圧油供給およびロッド側油室8bからの油排出により伸長してブーム5を上昇せしめ、また、ロッド側油室8bへの圧油供給およびヘッド側油室8aからの油排出により縮小してブーム5を下降せしめるように構成されている。そして、該ブーム5の昇降によって作業部4全体が昇降すると共に、ブーム5の上昇に伴い作業部4の有する位置エネルギーが増加するが、該位置エネルギーは、後述する油圧制御システムによってブーム5の下降時に回収される一方、該回収されたエネルギーは、ブーム5の上昇時に利用されるようになっている。
【0008】
次いで、前記油圧制御システムについて、図2の回路図に基づいて説明するが、これらの図面において、9は油圧ショベル1に搭載のエンジンEにより駆動される可変容量型のメインポンプ(本発明の油圧ポンプに相当する)、10はパイロット油圧源となるパイロットポンプ、11は油タンクである。尚、前記メインポンプ9は、ブームシリンダ8だけでなく、油圧ショベル1に設けられる他の複数の油圧アクチュエータ(図示しないが、走行モータ、旋回モータ、アームシリンダ、バケットシリンダ等)の油圧供給源になる油圧ポンプである。
【0009】
さらに、12は前記メインポンプ9の吐出流量制御を行うレギュレータであって、該レギュレータ12は、メインポンプ出力制御用電磁比例減圧弁14からの制御信号圧を受けて、エンジン回転数と作業負荷に対応したポンプ出力にするべく作動すると共に、メインポンプ9の吐出圧力を受けて定馬力制御を行う。さらにレギュレータ12は、ネガティブコントロール信号圧Pn或いは流量制御信号圧Pcに基づいた流量制御も行うが、該流量制御については後述する。
【0010】
一方、15は前記メインポンプ9の吐出側に接続される圧油供給油路であって、該圧油供給油路15には、ブームシリンダ8に対する油給排制御を行うブームシリンダ用コントロールバルブ16が接続されている。尚、圧油供給油路15には、メインポンプ9の吐出油だけでなく、後述するように、増圧シリンダ17からの圧油も供給されるようになっている。また、圧油供給油路15には、前記ブームシリンダ用コントロールバルブ16だけでなく、他の複数の油圧アクチュエータ(走行モータ、旋回モータ、アームシリンダ、バケットシリンダ等)に対する油給排制御をそれぞれ行なう各油圧アクチュエータ用コントロールバルブも接続されるが、図2においては省略する。
【0011】
前記ブームシリンダ用コントロールバルブ16は、上昇側、下降側パイロットポート16a、16bを備えたスプール弁で構成されており、そして、両パイロットポート16a、16bにパイロット圧が入力されていない状態では、ブームシリンダ8に対する油給排を行なわない中立位置Nに位置しているが、上昇側パイロットポート16aにパイロット圧が入力されることによりスプールが移動して、圧油供給油路15の圧油をブームシリンダヘッド側油路18を経由してブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給する一方、ロッド側油室8bからブームシリンダロッド側油路19に排出された油を油タンク11に流す上昇側位置Xに切換わる。また、下降側パイロットポート16bにパイロット圧が入力されることにより、前記上昇側位置Xとは反対側にスプールが移動して、圧油供給油路15の圧油を絞り16cを介してブームシリンダロッド側油路19からロッド側油室8bに供給すると共に、ヘッド側油室8aからブームシリンダヘッド側油路18に排出された油の一部を、再生用弁路16dを介してブームシリンダロッド側油路19からロッド側油室8bに供給する下降側位置Yに切換るように構成されている。尚、前記ブームシリンダヘッド側油路18は、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aに油を給排するべくヘッド側油室8aに接続される油路であり、ブームシリンダロッド側油路19は、ブームシリンダ8のロッド側油室8bに油を給排するべくロッド側油室8bに接続される油路である。
【0012】
ここで、前記下降側位置Yのブームシリンダ用コントロールバルブ16に設けられる再生用弁路16dは、ブームシリンダヘッド側油路18とブームシリンダロッド側油路19とを連通する弁路であって、該再生用弁路16dには、ブームシリンダヘッド側油路18からブームシリンダロッド側油路19への油の流れは許容するが逆方向の流れは阻止するチェック弁16eと絞り16fとが配されている。而して、ヘッド側油室8aがロッド側油室8bよりも高圧のあいだは、ヘッド側油室8aから排出される油の一部が上記再生用弁路16dを経由してロッド側油室8bに供給されるようになっている。
【0013】
また、20、21は上昇側、下降側電磁比例減圧弁であって、これら各電磁比例減圧弁20、21は、後述するコントローラ13からの励磁信号に基づいて、前記ブームシリンダ用コントロールバルブ16の上昇側パイロットポート16a、下降側パイロットポート16bにそれぞれパイロット圧を出力するべく作動する。これら上昇側、下降側電磁比例減圧弁20、21から出力されるパイロット圧は、ブーム用操作レバー(図示せず)の操作量に応じて増減するように制御されると共に、該パイロット圧の増減に対応してブームシリンダ用コントロールバルブ16のスプールの移動ストロークが増減するようになっており、これによって、ブームシリンダ用コントロールバルブ16からブームシリンダ8への給排流量の増減制御がなされるように構成されている。
【0014】
さらに、前記ブームシリンダ用コントロールバルブ16には、圧油供給油路15の圧油をネガティブコントロールバルブ22を経由して油タンク11に流すセンタバイパス弁路16gが形成されている。該センタバイパス弁路16gの通過流量は、ブームシリンダ用コントロールバルブ16が中立位置Nのときに最も大きく、スプールの移動ストロークが大きくなるほど小さくなる、つまり、ブーム用操作レバーの操作量が増加するほどセンタバイパス弁路16gの通過流量が減少するように制御されるが、下降側位置Yのコントロールバルブ16のセンタバイパス弁路16gは、スプールが最大ストロークのときも絞り16hを介して開いている。そして、該センタバイパス弁路16gの通過流量は、ネガティブコントロール信号圧Pnとして後述するシャトル弁23の一方の入力ポート23aに出力される。
【0015】
一方、24はコントローラ13からの励磁信号に基づいて流量制御信号圧Pcを出力するメインポンプ流量制御用電磁比例減圧弁であって、該メインポンプ流量制御用電磁比例減圧弁24から出力された流量制御信号圧Pcは、前記シャトル弁23の他方の入力ポート23bに入力される。
【0016】
前記シャトル弁23は、入力ポート23a、23bから入力されるネガティブコントロール信号圧Pn、流量制御信号圧Pcのうち高圧側を選択して、前記メインポンプ9のレギュレータ12に出力する。そして、該レギュレータ12は、入力された信号圧が高いほどポンプ流量を減少せしめるように、メインポンプ9の流量を制御する。つまり、ネガティブコントロール信号圧Pnとメインポンプ流量制御用電磁比例減圧弁24から出力される流量制御信号圧Pcとのうち、メインポンプ9の吐出流量を少なくする方の信号圧がシャトル弁23により選択されてレギュレータ12に入力され、そして、該レギュレータ12は、ネガティブコントロール信号圧Pnが入力された場合には、ブーム用操作レバーの操作量の増減に対応してポンプ流量を増減せしめるネガティブコントロール流量制御を行なう一方、流量制御信号圧Pcが入力された場合には、該流量制御信号圧Pcに基づく流量制御を行なうが、この流量制御信号圧Pcについては後述する。
【0017】
また、25は前記ブームシリンダヘッド側油路18に配されるドリフト低減弁、26はコントローラ13からの励磁信号に基づいてOFF位置NからON位置Xに切換わるドリフト低減弁用電磁切換弁であって、上記ドリフト低減弁25は、前記ブームシリンダ用コントロールバルブ16からブームシリンダ8のヘッド側油室8aへの油の流れは常時許容するが、逆方向の流れは、ドリフト低減弁用電磁切換弁26がOFF位置Nのときには阻止し、ON位置Xのときのみ許容するように構成されている。尚、27はシリンダヘッド側油路18に接続されるリリーフ弁であって、該リリーフ弁27によって、ブームシリンダヘッド側油路18の最高圧力が制限されている。
【0018】
さらに、28は前記ブームシリンダ用コントロールバルブ16とドリフト低減弁25との間のブームシリンダヘッド側油路18から分岐形成される回収油路であって、該回収油路28には、回収バルブ29が配されていると共に、該回収バルブ29の下流側で、後述するアキュムレータ油路30と増圧シリンダ用供給油路31とに接続されている。さらに、前記回収バルブ29には、ブームシリンダヘッド側油路18からアキュムレータ油路30および増圧シリンダ用供給油路31への油の流れは許容するが、逆方向の流れは阻止するチェック弁32が内蔵されている。而して、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからブームシリンダヘッド側油路18に排出された油を、回収油路28を経由して、アキュムレータ油路30および増圧シリンダ用供給油路31に供給することができるようになっている。
【0019】
前記回収バルブ29は、コントローラ13からの励磁信号が入力される回収バルブ用電油変換弁33の作動に基づいてスプールが移動する開閉弁であって、回収バルブ用電油変換弁33が非励磁の状態では、回収油路28を閉じる閉位置Nに位置しているが、回収バルブ用電油変換弁33に励磁信号が入力されることによりスプールが移動して、回収油路28を開く開位置Xに切換わるように構成されている。
【0020】
前記回収バルブ29の開口面積は、コントローラ13から回収バルブ用電油変換弁33に入力される励磁信号の信号値によって増減制御されるようになっており、そして、該回収バルブ29の開口面積の増減制御によって、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aから排出された油が回収油路28を経由してアキュムレータ油路30および増圧シリンダ用供給油路31に流れる流量の増減制御がなされるように構成されている。
【0021】
一方、アキュムレータ油路30は、前記回収油路28からアキュムレータチェックバルブ34を経由してアキュムレータ35に至る油路であって、該アキュムレータ油路30の最高圧力は、アキュムレータ油路30に接続されるリリーフ弁36によって制限されている。尚、本実施の形態において、アキュムレータ35は、油圧エネルギー蓄積用として最適なブラダ型のものが用いられているが、これに限定されることなく、例えばピストン型のものであっても良い。
【0022】
前記アキュムレータチェックバルブ34は、アキュムレータ35に対する油の給排制御を行なうバルブであって、ポペット弁37と、コントローラ13から出力される励磁信号に基づいてOFF位置NからON位置Xに切換わるアキュムレータチェックバルブ用電磁切換弁38とを用いて構成されている。そして、上記ポペット弁37は、回収油路28からアキュムレータ35への油の流れは、アキュムレータチェックバルブ用電磁切換弁38がOFF位置N、ON位置Xの何れであっても許容するが、アキュムレータ35から増圧シリンダ用供給油路31への油の流れは、アキュムレータチェックバルブ用電磁切換弁38がOFF位置Nに位置しているときには阻止し、ON位置Xに位置しているときのみ許容するように構成されている。尚、回収油路28からアキュムレータ35への油の流れは、前述したようにアキュムレータチェックバルブ用電磁切換弁38がOFF位置N、ON位置Xの何れであっても許容されるが、アキュムレータチェックバルブ用電磁切換弁38がON位置Xに位置している状態では、アキュムレータ油路30の圧力がポペット弁37のバネ室37aに導入されないため、殆ど圧力損失のない状態で回収油路28からアキュムレータ油路30に油を流すことができる。
【0023】
一方、前記増圧シリンダ用供給油路31は、増圧シリンダヘッド側油路39に連結されるヘッド側連結油路40と、増圧シリンダロッド側油路41に連結されるロッド側連結油路42とに分岐されると共に、上記ヘッド側連結油路40、ロッド側連結油路42には、それぞれ増圧シリンダヘッド側制御バルブ43、増圧シリンダロッド側制御バルブ44が配設されている。ここで、前記増圧シリンダヘッド側油路39は、増圧シリンダ17のヘッド側油室17aに油を給排するべくヘッド側油室17aに接続される油路であり、増圧シリンダロッド側油路41は、増圧シリンダ17のロッド側油室17bに油を給排するべくロッド側油室17bに接続される油路である。
【0024】
前記増圧シリンダヘッド側制御バルブ(本発明の増圧シリンダ入力側油室用制御バルブに相当する)43は、コントローラ13からの励磁信号が入力される増圧シリンダヘッド側制御バルブ用電油変換弁45の作動に基づいてスプールが移動する開閉弁であって、増圧シリンダヘッド側制御バルブ用電油変換弁45が非励磁の状態では、ヘッド側連結油路40を閉じる閉位置Nに位置しているが、増圧シリンダヘッド側制御バルブ用電油変換弁45に励磁信号が入力されることによりスプールが移動して、ヘッド側連結油路40を開く開位置Xに切換わるように構成されている。さらに、増圧シリンダヘッド側制御バルブ43には、増圧シリンダ用供給油路31から増圧シリンダヘッド側油路39への油の流れは許容するが、逆方向の流れは阻止するチェック弁46が内蔵されている。而して、増圧シリンダヘッド側制御バルブ43が開位置Xに切換わることによって、増圧シリンダ用供給油路31の油を、ヘッド側連結油路40および増圧シリンダヘッド側油路39を経由して、増圧シリンダ17のヘッド側油室17aに供給することができるようになっている。
【0025】
前記増圧シリンダヘッド側制御バルブ43の開口面積は、コントローラ13から増圧シリンダヘッド側制御バルブ用電油変換弁45に入力される励磁信号の信号値によって増減制御されるようになっており、そして該増圧シリンダヘッド側制御バルブ43の開口面積の増減制御によって、増圧シリンダ17のヘッド側油室17aへの供給流量の増減制御がなされるように構成されている。
【0026】
一方、前記増圧シリンダロッド側制御バルブ(本発明の増圧シリンダ出力側油室用制御バルブに相当する)44は、コントローラ13からの励磁信号が入力される増圧シリンダロッド側制御バルブ用電油変換弁47の作動に基づいてスプールが移動する開閉弁であって、増圧シリンダロッド側制御バルブ用電油変換弁47が非励磁の状態では、ロッド側連結油路42を閉じる閉位置Nに位置しているが、増圧シリンダロッド側制御バルブ用電油変換弁47に励磁信号が入力されることによりスプールが移動して、ロッド側連結油路42を開く開位置Xに切換わるように構成されている。而して、増圧シリンダロッド側制御バルブ44が開位置Xに切換わることによって、増圧シリンダ用供給油路31の油を、ロッド側連結油路42および増圧シリンダロッド側油路41を経由して、増圧シリンダ17のロッド側油室17bに供給することができるようになっている。さらに、該増圧シリンダロッド側制御バルブ44および前述の増圧シリンダヘッド側制御バルブ43が共に開位置Xに切換わることによって、増圧シリンダ17のロッド側油室17bの圧油を、増圧シリンダロッド側油路41、ロッド側連結油路42、ヘッド側連結油路40、増圧シリンダヘッド側油路39を経由して、増圧シリンダ17のヘッド側油室17aに還流させることができるようになっている。尚、本実施の形態において、本発明の増圧シリンダ還流油路は、前記増圧シリンダロッド側油路41と、ロッド側連結油路42と、ヘッド側連結油路40と、増圧シリンダヘッド側油路39とにより形成される。
【0027】
前記増圧シリンダロッド側制御バルブ44の開口面積は、コントローラ13から増圧シリンダロッド側制御バルブ用電油変換弁47に入力される励磁信号の信号値によって増減制御されるようになっており、そして該増圧シリンダロッド側制御バルブ44の開口面積の増減制御によって、増圧シリンダ17のロッド側油室17bへの供給流量、或いはロッド側油室17bからヘッド側油室17aへの還流流量の増減制御がなされるように構成されている。
【0028】
ここで、前記増圧シリンダ17は、ヘッド側油室(本発明の入力側油室に相当する)17aに圧油供給されることによって、ロッド側油室(本発明の出力側油室に相当する)17bの油圧をヘッド側室17aへの入力圧力よりも増圧して出力するものである。その増圧比は、ピストン17cに作用するロッド側油室17bの受圧面積とヘッド側油室17aの受圧面積との比に等しくなるが、ロッド側油室17bからの出力圧力は、高負荷作業時におけるメインポンプ9の吐出圧よりも高くなるように設定されており、これによって、後述するように、ロッド側油室17bから出力された圧油をメインポンプ9の吐出油に合流させることができるようになっている。
【0029】
一方、48は前記増圧シリンダロッド側油路41から分岐されて前記圧油供給油路15に合流するように形成される合流油路であって、該合流油路48には、合流バルブ49が配されている。
【0030】
前記合流バルブ49は、コントローラ13からの励磁信号が入力される合流バルブ用電油変換弁50の作動に基づいてスプールが移動する開閉弁であって、合流バルブ用電油変換弁50が非励磁の状態では、合流油路48を閉じる閉位置Nに位置しているが、合流バルブ用電油変換弁50に励磁信号が入力されることによりスプールが移動して、合流油路48を開く開位置Xに切換わるように構成されている。さらに、該合流バルブ49には、増圧シリンダロッド側油路41から圧油供給油路15への油の流れは許容するが、逆方向の流れは阻止するチェック弁51が内蔵されている。而して、合流バルブ49が開位置Xに切換わることによって、増圧シリンダ17のロッド側油室17bの圧油を、増圧シリンダロッド側油路41および合流油路48を経由して、圧油供給油路15に合流させることができるようになっている。
【0031】
前記合流バルブ49の開口面積は、コントローラ13から合流バルブ用電油変換弁50に入力される励磁信号の信号値によって増減制御されるようになっており、そして、該合流バルブ49の開口面積の増減制御によって、前記増圧シリンダ17のロッド側油室17bから合流油路48を経由して圧油供給油路15に合流する流量の増減制御がなされるように構成されている。
【0032】
さらに、52は前記増圧シリンダヘッド側油路39から分岐形成されて油タンク11に至る排出油路であって、該排出油路52にはアンロード弁53が配されている。
【0033】
前記アンロード弁53は、ポペット弁54と、コントローラ13から出力されるON信号に基づいてOFF位置NからON位置Xに切換わるアンロード弁用電磁切換弁55とを用いて構成されている。上記ポペット弁54は、増圧シリンダヘッド側油路39から油タンク11への油の流れを、アンロード弁用電磁切換弁55がON位置Xに位置しているときのみ許容し、OFF位置Nに位置しているときには阻止するようになっている。而して、上記アンロード弁用電磁切換弁55をON位置Xに切換えることによって、増圧シリンダ17のヘッド側油室17aの圧油を、増圧シリンダヘッド側油路39および排出油路52を経由して油タンク11に排出することができるようになっている。
【0034】
一方、前記コントローラ13は、マイクロコンピュータ等を用いて構成されるものであって、図3のブロック図に示すごとく、ブーム用操作レバーの操作方向および操作量を検出するブーム操作検出手段56、メインポンプ9の吐出圧を検出するポンプ用圧力センサ57、増圧シリンダ17のロッド側油室17bの圧力を検出する増圧シリンダ用圧力センサ58等からの信号を入力し、これら入力信号に基づいて、前述の上昇側電磁比例減圧弁20、下降側電磁比例減圧弁21、メインポンプ流量制御用電磁比例減圧弁24、ドリフト低減弁用電磁切換弁26、回収バルブ用電油変換弁33、アキュムレータチェックバルブ用電磁切換弁38、増圧シリンダヘッド側制御バルブ用電油変換弁45、増圧シリンダロッド側制御バルブ用電油変換弁47、合流バルブ用電油変換弁50、アンロード弁用電磁切換弁55等に制御信号を出力する。
【0035】
次いで、ブーム用操作レバーの操作に基づくコントローラ13の制御について説明する。
まず、ブーム用操作レバーがブーム下降側、上昇側の何れにも操作されていない場合、コントローラ13は、上昇側電磁比例減圧弁20、下降側電磁比例減圧弁21、メインポンプ流量制御用電磁比例減圧弁24、ドリフト低減弁用電磁切換弁26、回収バルブ用電油変換弁33、アキュムレータチェックバルブ用電磁切換弁38、増圧シリンダヘッド側制御バルブ用電油変換弁45、増圧シリンダロッド側制御バルブ用電油変換弁47、合流バルブ用電油変換弁50、アンロード弁用電磁切換弁55の全てが非励磁となるように制御する。
【0036】
一方、ブーム用操作レバーがブーム下降側に操作された場合、つまりブーム操作検出手段56からブーム下降側操作の検出信号が入力された場合、コントローラ13は、下降側電磁比例減圧弁21に対し、ブームシリンダ用コントロールバルブ16の下降側パイロットポート16bに、ブーム用操作レバーの操作量に対応したパイロット圧を出力するように励磁信号を出力する。これによりブームシリンダ用コントロールバルブ16が下降側位置Yに切換わり、而して、圧油供給油路15の圧油が、前記下降側位置Yのブームシリンダ用コントロールバルブ16の絞り16cを経由してブームシリンダ8のロッド側油室8bに供給されると共に、ヘッド側油室8aからの排出油の一部が、再生用弁路16dを介してロッド側油室8bに供給されるが、その流量は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量となるように制御される。尚、後述するように、ブーム用操作レバーがブーム下降側に操作された場合、圧油供給油15にはメインポンプ9の吐出油のみが供給されるようになっている。
【0037】
さらに、ブーム下降側に操作された場合、コントローラ13は、メインポンプ流量制御用電磁比例減圧弁24に対して励磁信号を出力しない。これにより、メインポンプ流量制御用電磁比例減圧弁24からシャトル弁23の他方のポート23aに入力される圧力はタンク圧となり、而して、シャトル弁23によりネガティブコントロール信号圧Pnが選択されて、メインポンプ9のレギュレータ12に入力される。これによりメインポンプ9の吐出流量は、ブーム用操作レバーの操作量の増減に対応してメインポンプ9の流量が増減するネガティブコントロール流量制御が行なわれるが、前述したように、下降側位置Yのブームシリンダ用コントロールバルブ16のセンタバイパス弁路16gは、スプールが最大ストロークのとき絞り16hを介して開いており、これにより、ブーム用操作レバーの操作量が最大のときでもメインポンプ9の吐出流量は最大流量よりも少なくなるように制御される。
【0038】
さらに、ブーム下降側に操作された場合、コントローラ13は、ドリフト低減弁用電磁切換弁26に対し、ON位置Xに切換わるよう励磁信号を出力する。これにより、ドリフト低減弁25は、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aからの油排出を許容する状態になる。
【0039】
さらに、ブーム下降側に操作された場合、コントローラ13は、回収バルブ用電油変換弁33に対し、ブーム操作レバーの操作量に対応した信号値の励磁信号を出力する。これにより回収バルブ29が回収油路28を開く開位置Xに切換わり、而して、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aから排出された油が、回収油路28を経由してアキュムレータ油路30および増圧シリンダ用供給油路31に流れるが、該回収油路28の流量は、ブーム用操作レバーの操作量に応じて要求される流量となるように制御される。尚、ヘッド側油室8aからの排出油の一部は、前述したように、下降側位置Yの第一コントロールバルブ16を経由してロッド側油室8bに供給される。
【0040】
さらにこのとき、コントローラ13は、アキュムレータチェックバルブ用電磁切換弁38に対し、ON位置Xに切換るよう励磁信号を出力する。これにより、殆ど圧力損失のない状態で回収油路28からアキュムレータ油路30に油が供給され、そして該アキュムレータ油路30に供給された油がアキュムレータ35に蓄圧される。
【0041】
さらに、ブーム下降側に操作された場合、コントローラ13は、増圧シリンダロッド側制御バルブ用電油変換弁47に対し、ブーム用操作レバーの操作量に対応した信号値の励磁信号を出力する。これにより増圧シリンダロッド側制御バルブ44がロッド側連結油路42を開く開位置Xに切換わり、而して、前記回収油路28から増圧シリンダ用供給油路31に流れた油が、ロッド側連結油路42および増圧シリンダロッド側油路41を経由して、増圧シリンダ17のロッド側油室17bに供給される。
【0042】
さらにこのとき、コントローラ13は、アンロード弁用電磁切換弁55に対し、ON位置Xに切換るよう励磁信号を出力する。これによりアンロード弁53は、増圧シリンダ17のヘッド側油室17aから油タンク11への油の流れを許容する状態になる。これにより、ヘッド側油室17aの圧力が低下して、前述したロッド側油室17bへの油供給を殆ど抵抗のない状態で行なえるようになっている。
【0043】
さらにこのとき、コントローラ13は、増圧シリンダヘッド側制御バルブ用電油変換弁45に対して励磁指令を出力しない。これにより、増圧シリンダヘッド側制御バルブ43はヘッド側連結油路40を閉じる閉位置Nに位置しており、而して、前記回収油路28を経由して増圧シリンダ用供給油路31に流れた油が、ヘッド側連結油路40を経由して増圧シリンダ17のヘッド側油室17aに流れてしまうことがないようになっている。
【0044】
さらに、ブーム下降側に操作された場合、コントローラ13は、合流バルブ用電油変換弁50に対して励磁信号を出力しない。これにより合流バルブ49は、合流油路48を閉じる閉位置Nに位置しており、而して、合流油路48から圧油供給油路15に圧油供給されることなく、圧油供給油路15にはメインポンプ9の吐出油のみが供給されるようになっている。
【0045】
つまり、ブーム5の下降時に、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aから排出される油は、作業部4の有する位置エネルギーにより高圧となっていると共に、ピストン8cに作用する受圧面積の関係からロッド側油室8bへの供給量に対して略2倍の排出量となるが、該ヘッド側油室8aからの排出油は、回収油路28を経由してアキュムレータ油路30および増圧シリンダ用供給油路31に流れる。そして、アキュムレータ油路30に流れた圧油はアキュムレータ35に蓄圧される一方、増圧シリンダ用供給油路31に流れた油は、増圧シリンダ17のロッド側油室17bに供給されることになる。また、ヘッド側油室8aからの排出油の一部は、前述したようにブームシリンダ用コントロールバルブ16の再生用弁路16dを経由してロッド側油室8bに供給されることになる。而して、作業部4の有する位置エネルギーを、無駄にすることなく回収、再利用できるようになっている。
【0046】
次に、ブーム用操作レバーがブーム上昇側に操作された場合、つまり、ブーム操作検出手段56からブーム上昇側操作の検出信号が入力された場合のコントローラ13の制御について説明する。
【0047】
ブーム上昇側に操作された場合、コントローラ13は、ドリフト低減弁用電磁切換弁26に対して励磁信号を出力しない。これにより、ドリフト低減弁25は、ブームシリンダ用コントロールバルブ16からブームシリンダ8のヘッド側油室8aへの油の流れは許容するが、逆方向の流れは阻止する状態になっている。
【0048】
さらに、ブーム上昇側に操作された場合、コントローラ13は、上昇側電磁比例減圧弁20に対し、ブームシリンダ用コントロールバルブ16の上降側パイロットポート16aに、ブーム用操作レバーの操作量に対応したパイロット圧を出力するように励磁信号を出力する。これによりブームシリンダ用コントロールバルブ16が上昇側位置Xに切換わり、而して、圧油供給油路15の圧油が、前記上昇側位置Xのブームシリンダ用コントロールバルブ16を経由してブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給されると共に、ロッド側油室8bからの排出油が油タンク11に排出される。尚、後述するように、ブーム上昇側に操作された場合、圧油供給油路15には、メインポンプ9の吐出油だけでなく、増圧シリンダ17からの圧油も供給されるようになっている。
【0049】
さらに、ブーム上昇側に操作された場合、コントローラ13は、回収バルブ用電油変換弁33に対して励磁信号を出力しない。これにより、回収バルブ29は回収油路28を閉じる閉位置Nに位置しており、而して、前記上昇側位置Xのブームシリンダ用コントロールバルブ16を経由してブームシリンダヘッド側油路18に供給された圧油が、回収油路28を経由してアキュムレータ油路30や増圧シリンダ用供給油路31に流れてしまうことなく、ブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給されるようになっている。
【0050】
さらに、ブーム上昇側に操作された場合、コントローラ13は、アキュムレータチェックバルブ用電磁切換弁38に対し、ON位置Xに切換わるよう励磁信号を出力する。これにより、アキュムレータチェックバルブ34は、アキュムレータ油路30から増圧シリンダ用供給油路31への油の流れを許容する状態になる。而して、アキュムレータ35に蓄圧された圧油が増圧シリンダ用供給油路31に供給される。
【0051】
さらに、ブーム上昇側に操作された場合、コントローラ13は、増圧シリンダヘッド側制御バルブ用電油変換弁45に対し、ブーム用操作レバーの操作量に対応した信号値の励磁信号を出力する。これにより増圧シリンダヘッド側制御バルブ43がヘッド側連結油路40を開く開位置Xに切換わり、而して、前記増圧シリンダ用供給油路31に供給されたアキュムレータ35の蓄圧油が、ヘッド側連結油路40および増圧シリンダヘット側油路39を経由して増圧シリンダ17のヘッド側油室17aに供給される。
【0052】
さらにこのとき、コントローラ13は、アンロード弁用電磁切換弁55に対して励磁信号を出力しない。これによりアンロード弁53は、増圧シリンダ17のヘッド側油室17aから油タンク11への油の流れを阻止する状態になっており、而して、前記開位置Xの増圧シリンダヘッド側制御バルブ43を経由したアキュムレータ35の蓄圧油は、油タンク11に流れることなく、増圧シリンダ17のヘッド側油室17aに供給されるようになっている。
【0053】
前記増圧シリンダ17は、アキュムレータ35の蓄圧油がヘッド側油室17aに供給されることによって、ロッド側油室17bの油圧を増圧して増圧シリンダロッド側油路41に出力する。
【0054】
さらに、ブーム上昇側に操作された場合、コントローラ13は、合流バルブ用電油変換弁50に対し、ブーム操作レバーの操作量に対応した信号値の励磁信号を出力する。これにより合流バルブ49が合流油路48を開く開位置Xに切換わり、而して、前記増圧シリンダ17のロッド側油室17bから増圧シリンダロッド側油路41に出力された圧油が、合流油路48を経由して圧油供給油路15に供給される。そして、該圧油供給油路15に供給された増圧シリンダ17からの圧油は、メインポンプ9の吐出油と合流して、前述したように、上昇側位置Xのブームシリンダ用コントロールバルブ16を経由してブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給される。
【0055】
さらに、ブーム上昇側に操作された場合、コントローラ13は、増圧シリンダ用圧力センサ58から入力される増圧シリンダロッド側油室17bの圧力Pbとポンプ用圧力センサ57から入力されるメインポンプ9の吐出圧Ppとの差圧(Pb−Pp)に応じて、増圧シリンダロッド側制御バルブ用電油変換弁47に対して励磁信号を出力する。これにより、増圧シリンダロッド側制御バルブ44は、ロッド側連結油路42を開く開位置Xに切換わるが、ブーム上昇側に操作された場合には、前述したように、増圧シリンダヘッド側制御バルブ43もヘッド側連結油路40を開く開位置Xに切換わっている。而して、増圧シリンダ17のロッド側油室17bから増圧シリンダロッド側油路41に出力された圧油は、前述したように合流油路48を経由してメインポンプ9の吐出油に合流する一方で、ロッド側連結油路42、ヘッド側連結油路40、増圧シリンダヘッド側油路39を経由して、増圧シリンダ17のヘッド側油室17aに還流されるようにようになっている。この場合、増圧シリンダロッド側制御バルブ44は、増圧シリンダロッド側油室17bの圧力Pbとメインポンプ9の吐出圧Ppとの差圧(Pb−Pp)が大きいほど、開口面積が大きくなるように制御される。つまり、増圧シリンダ17のロッド側油室17bからヘッド側油室17aへの還流流量は、増圧シリンダロッド側油室17bの圧力Pbとメインポンプ9の吐出圧Ppとの差圧が大きくなるほど多くなるように制御される。
【0056】
さらに、ブーム上昇側に操作された場合、コントローラ13は、メインポンプ流量制御用電磁比例減圧弁24に対して、流量制御信号圧Pcを出力するように制御信号を出力する。この場合、コントローラ13は、増圧シリンダ用圧力センサ58から入力される増圧シリンダロッド側油室17bの圧力Pbとポンプ用圧力センサ57から入力されるメインポンプ9の吐出圧Ppとの差圧(Pb−Pp)、および合流バルブ用電油変換弁50への制御信号から求められる合流バルブ49の開口面積によって、増圧シリンダ17から圧油供給油路15への合流量を演算する。そして、メインポンプ9の吐出流量を、ブーム用操作レバーの操作量によって要求されるポンプ流量から、前記増圧シリンダ17からの合流量分を減じた流量にするべく、コントローラ13からメインポンプ流量制御用電磁比例減圧弁24に対して流量制御信号圧Pcが出力される。
【0057】
前記メインポンプ流量制御用電磁比例減圧弁24から出力された流量制御信号圧Pcは、シャトル弁23の他方の入力ポート23bに入力される。一方、シャトル弁23の一方の入力ポート23aにはネガティブコントロール信号圧Pnが入力されるが、増圧シリンダ17からの圧油が圧油供給油路15に合流している状態では、流量制御信号圧Pcの方がネガティブコントロール信号圧Pnよりもポンプ流量を少なくする信号圧、つまり、流量制御信号圧Pcの方がネガティブコントロール信号圧Pnよりも高圧になるから、該流量制御信号圧Pcがシャトル弁23により選択されて、メインポンプ9のレギュレータ12に入力される。而して、メインポンプ9の吐出流量は、増圧シリンダ17からの合流量分だけ低減した流量となるように制御されることになる。
【0058】
つまり、ブーム5の上昇時には、アキュムレータ35の蓄圧油が増圧シリンダ17のヘッド側油室17aに供給され、これにより増圧シリンダ17のロッド側油室17bの圧油が増圧される。そして、該増圧シリンダ17により増圧された圧油は、合流油路48を経由して圧油供給油路15に供給されてメインポンプ9の吐出油と合流し、ブームシリンダ用コントロールバルブ16を介してブームシリンダ8のヘッド側室8aに供給される。さらにこのとき、メインポンプ9の吐出流量は、増圧シリンダ17からの合流量分低減した流量となるように制御される。而して、ブーム5の下降時にアキュムレータ35および増圧シリンダ17のロッド側油室17bに回収された位置エネルギーをブーム5の上昇時に再利用できると共に、その分メインポンプ9の吐出流量を低減することができるようになっている。
【0059】
さらに、ブーム5の上昇時に、増圧シリンダ17のロッド側油室17bから出力された圧油の一部は、増圧シリンダロッド側制御バルブ44および増圧シリンダヘッド側制御バルブ43を経由して、増圧シリンダ17のヘッド側油室17aに還流される。この場合、増圧シリンダロッド側制御バルブ44は、増圧シリンダ17のロッド側油室17bの圧力Pbとメインポンプ9の吐出圧Ppとの差圧(Pb−Pp)が大きくなるほど開口面積が大きくなるように制御される。而して、増圧シリンダ17のロッド側油室17bの圧力Pbとメインポンプ9の吐出圧Ppの差圧が小さくなって、増圧シリンダ17から出力される圧油が合流バルブ49を通過する際の圧力損失を低減できると共に、アキュムレータ35から増圧シリンダ17のヘッド側油室17aへの供給流量が前記還流分減少することになって、アキュムレータ35の蓄圧油の消費を抑えることができるようになっている。
【0060】
叙述の如く構成された本形態において、油圧ショベル1の油圧制御システムは、ブームシリンダ8および他の油圧アクチュエータの油圧供給源になるメインポンプ9と、作業部4の下降時にブームシリンダ8のヘッド側油室8aから排出される油を蓄圧するアキュムレータ35と、該アキュムレータ35の蓄圧油がヘッド側油室17aに供給されることでロッド側油室17bの油圧を増圧して出力する増圧シリンダ17と、該増圧シリンダ17のヘッド側油室17aへの油供給を制御する増圧シリンダヘッド側制御バルブ43と、増圧シリンダ17のロッド側油室17bから出力される圧油をメインポンプ9の吐出油に合流させる合流油路48と、該増圧シリンダ17のロッド側油室17bからメインポンプ9の吐出油への合流を制御する合流バルブ49と、増圧シリンダ17のロッド側油室17bから出力される圧油をヘッド側油室17aに還流させる増圧シリンダ還流油路(増圧シリンダロッド側油路41、ロッド側連結油路42、ヘッド側連結油路40、増圧シリンダヘッド側油路39)と、該増圧シリンダ17のロッド側油室17bからヘッド側油室17aへの還流を制御する増圧シリンダロッド側制御バルブ44とを備えて構成されている。
【0061】
そして、ブーム5の下降時にブームシリンダ8のヘッド側油室8aから排出される油は、作業部4の有する位置エネルギーによって高圧になっているが、該位置エネルギーはアキュムレータ35の蓄圧油として回収される一方、該アキュムレータ35に蓄積された圧力は増圧シリンダ17により増圧されて、ブーム5の上昇時にメインポンプ9の吐出油に合流してブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給されることになる。この結果、ブーム5の下降時に回収された位置エネルギーをブーム5の上昇時に再利用できることになって、省エネルギー化に大きく貢献できることになるが、この場合、アキュムレータ35に蓄圧された圧力は増圧シリンダ17により増圧されることになるから、高負荷作業時にも対応できる高圧の圧油を、メインポンプ9の吐出油に合流させることができることになる。しかも、増圧シリンダ17を用いて増圧しているから、エンジン動力で駆動するポンプを用いて増圧する場合のように、エンジンからポンプへの動力伝達経路におけるトルク低下やポンプ自体の慣性質量などによる空転トルクの損失等がなく、回収したエネルギーを可及的に損失の少ない状態で利用できると共に、コスト的にも有利となる。
【0062】
さらにこのものでは、増圧シリンダ17からメインポンプ9の吐出油への合流時に、増圧シリンダロッド側制御バルブ44を開くことによって、増圧シリンダ17のロッド側油室17bから出力された圧油の一部が還流油路を経由してヘッド側油室17aに還流されることになる。これにより、増圧シリンダ17のロッド側油室17bの圧力Pbとメインポンプ9の吐出圧Ppとの差圧(Pb−Pp)が小さくなって、増圧シリンダ17から出力された圧油が合流バルブ49を通過する際の圧力損失を低減させることができ、而して、合流バルブ49の圧力損失によるエネルギー損失を抑えることができる。さらに、前記還流分、アキュムレータ35から増圧シリンダ17のヘッド側油室17aへの供給流量を減少させることができることになって、アキュムレータ35の蓄圧油の消費を抑えることができ、この点においても省エネルギー化を達成できる。
【0063】
しかも、前記増圧シリンダロッド側制御バルブ44は、増圧シリンダ17のロッド側油室17bの圧力Pbとメインポンプ9の吐出圧Ppとの差圧(Pb−Pp)が大きいほど、増圧シリンダ17のロッド側油室17bからヘッド側油室17aへの還流流量が多くなるように制御されることになるから、合流バルブ49の通過時における圧力損失をできるだけ低減させるべく、前記差圧に応じた適切な還流流量制御を行えることになる。
【0064】
またこのものにおいて、ブーム5の下降時にブームシリンダ8のヘッド側油室8aから排出された油は、回収油路28を経由して、アキュムレータ35に蓄圧されると共に、増圧シリンダ17のロッド側油室17bに供給されることになる。而して、増圧シリンダ17の出力側油室であるロッド側油室17bへの圧油供給を、別途圧油供給手段を設けることなく、ブーム5の下降時にブームシリンダ8のヘッド側油室8aからの排出油を用いて行なえることになって、システムの簡略化に寄与できると共に、ここにおいても、作業部4の位置エネルギーを回収できることになるが、この場合に、前記回収油路28から増圧シリンダ17のロッド側油室17bへの油供給の制御は、前記増圧シリンダロッド側制御バルブ44によって行なわれることになる。而して、増圧シリンダロッド側制御バルブ44は、回収油路28から増圧シリンダ17のロッド側油室17bへの油供給の制御と、増圧シリンダ17のロッド側油室17bからヘッド側油室17aへの還流制御との二つの機能を有することになり、もって、部材の兼用化が図れて、コストダウンに寄与できる。
【0065】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されないことは勿論であって、上記実施の形態では、増圧シリンダ17により増圧された圧油を、ブーム5の上昇時にブームシリンダ8のヘッド側油室8aに供給する構成になっているが、これに限定されることなく、増圧シリンダ17により増圧された圧油を、作業機械に設けられる他の複数の油圧アクチュエータ(作業機械が油圧ショベルの場合には、走行モータ、旋回モータ、アームシリンダ、バケットシリンダ等)への供給圧油として用いることもできる。この場合には、作業部の下降時に回収された位置エネルギーを、他の油圧アクチュエータの動作にも利用できることになる。
さらに、本発明は、油圧ショベルだけでなく、作業部を昇降せしめる昇降用油圧シリンダが設けられた各種作業機械の油圧制御システムに実施することができる。
また、図2の回路図では、複数の油圧アクチュエータに圧油供給する油圧ポンプとして一つのメインポンプを示したが、二つ以上のメインポンプが設けられていても良いことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】油圧ショベルの側面図である。
【図2】油圧制御システムの回路図である。
【図3】コントローラの入出力を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0067】
4 作業部
8 ブームシリンダ
8a ヘッド側油室
9 メインポンプ
15 圧油供給油路
17 増圧シリンダ
17a ヘッド側油室
17b ロッド側油室
28 回収油路
29 回収バルブ
35 アキュムレータ
39 増圧シリンダヘッド側油路
40 ヘッド側連結油路
41 増圧シリンダロッド側油路
42 ロッド側連結油路
43 増圧シリンダヘッド側制御バルブ
44 増圧シリンダロッド側制御バルブ
48 合流油路
49 合流バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業部を昇降せしめる昇降用油圧シリンダを備えた作業機械において、該作業機械の油圧制御システムは、前記昇降用油圧シリンダの油圧供給源になる油圧ポンプと、作業部の下降時に昇降用油圧シリンダの重量保持側油室から排出される油を蓄圧するアキュムレータと、該アキュムレータの蓄圧油が入力側油室に供給されることで出力側油室の油圧を増圧して出力する増圧シリンダと、該増圧シリンダの入力側油室への油供給を制御する増圧シリンダ入力側油室用制御バルブと、増圧シリンダの出力側油室から出力される圧油を油圧ポンプの吐出油に合流させる合流油路と、該増圧シリンダの出力側油室から油圧ポンプの吐出油への合流を制御する合流バルブと、増圧シリンダの出力側油室から出力される圧油を入力側油室に還流させる増圧シリンダ還流油路と、該増圧シリンダの出力側油室から入力側油室への還流を制御する増圧シリンダ出力側油室用制御バルブとを備えて構成されることを特徴とする作業機械における油圧制御システム。
【請求項2】
増圧シリンダ出力側油室用制御バルブは、増圧シリンダの出力側油室の圧力と油圧ポンプの吐出圧との差圧が大きいほど、増圧シリンダの出力側油室から入力側油室への還流流量が多くなるように制御されることを特徴とする請求項1に記載の作業機械における油圧制御システム。
【請求項3】
油圧制御システムは、さらに、作業部の下降時に昇降用油圧シリンダの重量保持側油室から排出される油を、アキュムレータおよび増圧シリンダの出力側油室に供給する回収油路を備えると共に、前記増圧シリンダ出力側油室用制御バルブは、前記回収油路から増圧シリンダの出力側油室への油供給の制御を行なう構成であることを特徴とする請求項1または2に記載の作業機械における油圧制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−270660(P2009−270660A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123045(P2008−123045)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】