説明

作業機械

【課題】DPFに捕集された粒子状物質を除去する。
【解決手段】DPF4の前後差圧△Pgが所定差圧△Phを超えた際に、エンジン1の出力を増加させて排気温度を上昇させることでDPF4の再生処理を行うように構成した。また、DPF4の再生処理中に増加させたエンジン出力を圧油のエネルギーとして、アキュムレータ14で蓄圧するように構成した。これにより、DPF4で捕集されたPMをDPF4から除去できる。また、PM除去のために増加させたエンジン出力を、油圧で各部が駆動される作業機械にとって後に有効に利用しやすい形態で回収できるので、回収したエネルギーの利用のための機器構成が簡略化でき、コスト増を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガスの浄化装置を備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガス中に含まれる粒子状物資をフィルタで捕集する排気ガスの浄化装置が知られている。この浄化装置を搭載した車両では、粒子状物資を捕集するフィルタの前後の圧力差が所定値に達すると、フィルタに捕集された粒子状物資を除去するのに必要な温度まで排気ガス温度が上昇するようにエンジンを制御している(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−269135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献の車両では、エンジンの回転数を低下させると同時に出力トルクを増加させることで出力(仕事率)一定のまま排気温度を上昇させている。しかし、油圧ショベルのような作業機械の場合には、エンジンは設定された一定の回転数で稼働し、また、掘削負荷などの作業負荷を増加させることができないため、このようなエンジン制御を行えない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1) 請求項1の発明による作業機械は、エンジンによって駆動されて圧油を吐出する油圧ポンプと、エンジンの排気ガスの排出経路に設けられて、排気ガスに含まれる捕集対象物を捕集する捕集手段と、排出経路中の捕集手段前後の排気ガスの圧力差を検出する排ガス通過抵抗検出手段と、排ガス通過抵抗検出手段で検出した排気ガスの差圧が所定の差圧以上である場合には、エンジン出力を増加させるエンジン制御手段と、エンジン制御手段により増加させたエンジン出力を油圧ポンプからの圧油のエネルギーとして蓄圧する蓄圧手段とを備えることを特徴とする。
(2) 請求項2の発明は、請求項1に記載の作業機械において、蓄圧手段で蓄圧した圧油により油圧ポンプを駆動する油圧回路を有することを特徴とする。
(3) 請求項3の発明は、請求項1に記載の作業機械において、エンジン制御手段は、エンジンの出力トルクを増加させることで、エンジン出力を増加させることを特徴とする。
(4) 請求項4の発明による作業機械は、エンジンによって駆動される発電機と、エンジンの排気ガスの排出経路に設けられて、排気ガスに含まれる捕集対象物を捕集する捕集手段と、排出経路中の捕集手段前後の排気ガスの圧力差を検出する排ガス通過抵抗検出手段と、排ガス通過抵抗検出手段で検出した排気ガスの差圧が所定の差圧以上である場合には、エンジン出力を増加させるエンジン制御手段と、エンジン制御手段により増加させたエンジン出力を発電機で発電された電気エネルギーとして蓄電する蓄電手段とを備えることを特徴とする。
(5) 請求項5の発明は、請求項4に記載の作業機械において、蓄電手段で蓄電した電力により油圧ポンプを駆動するモータをさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、捕集手段で捕集された捕集対象物を捕集手段から除去できるように排気温度を上昇できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
−−−第1の実施の形態−−−
図1〜4を参照して、本発明による作業機械の第1の実施の形態を説明する。図1は本発明による作業機械の一例としての油圧ショベルの外観を示す図である。この油圧ショベル100は、無限軌道式の下部走行体101上に、旋回輪110を介して上部旋回体102が旋回自由に装架されている。上部旋回体102は、構造体をなす旋回フレーム103、旋回フレーム103の前部左側には運転室104が、旋回フレーム103の前部中央にはフロント作業腕105が、旋回フレーム103の後部側には、フロント作業腕105とのバランスをとるためのカウンタウエイト106が設置されている。
【0008】
旋回フレーム103上の運転室104とカウンタウエイト106との間には、機械室を画成した建屋カバー107が設置されている。機械室にはエンジン1や、エンジン1によって駆動される油圧ポンプ(メインポンプ)7などが設置されている。
【0009】
フロント作業腕105は、ブームシリンダ114により上下方向に揺動自在に上部旋回体102に取り付けられたブーム113と、ブーム113に連結されてアームシリンダ116により上下方向に揺動自在に取り付けられたアーム115と、アーム115の先端部分に連結されてバケットシリンダ118により上下方向に回動自在に取り付けられた作業具(バケット)117とを有する。
【0010】
図2は、作業機械100の油圧回路を示す図である。なお、図2では、ブームシリンダ114以外の各シリンダ116,118、および、各シリンダ116,118のコントロール弁や操作レバーの記載を省略している。この油圧回路には、メインポンプ7と、コントロール弁9と、メインリリーフ弁11と、作動油タンク8と、動力吸収回路200とが設けられている。また、この油圧回路には、コントロール弁9を制御するための不図示のパイロットポンプ、および、操作レバー30と、動力吸収回路200を制御する制御回路13とが設けられている。
【0011】
メインポンプ7を駆動するエンジン1に対して、マニホールド2と、排気管3と、Diesel Particulate Filter(以下DPF)4とが直列に接続されている。排気管3には排気圧センサ5a,5bと、排気温度センサ6とが設けられている。
【0012】
メインポンプ7は作業機械100の各アクチュエータに圧油を供給する可変容量型のポンプであり、エンジン1により駆動されると作動油タンク8の作動油をコントロール弁9を介してブームシリンダ114に供給する。メインポンプ7から供給される圧油は、不図示の各コントロール弁を介してアームシリンダ116、バケットシリンダ118などにも供給される。メインリリーフ弁11は、この油圧回路の最高圧力を規定する。コントロール弁9は、ブームシリンダ114のボトム室またはロッド室への圧油の流れを制御する油圧パイロット式のコントロール弁であり、操作レバー30の操作量に応じたパイロット圧油の圧力によってスプールの位置が制御される。操作レバー30によって制御される、コントロール弁9に供給されるパイロット圧油の圧力は、圧力センサ31,32によって検出される。
【0013】
動力吸収回路200には、蓄圧弁12と、アキュムレータ14と、油圧モータ15と、アシスト弁16と、圧力センサ17とが設けられている。蓄圧弁12は、メインポンプ7とコントロール弁9とを接続する油路41の途中に設けられた比例電磁弁である。蓄圧弁12は、制御回路13からの制御信号によってメインポンプ7からの圧油をコントロール弁9およびアキュムレータ14に適宜供給(分配)する。具体的には、蓄圧弁12は、操作レバー30の操作量が大きいときには圧油をコントロール弁9側へ多く供給し、操作レバー30の操作量が小さい場合には圧油をアキュムレータ14側へ多く供給するように圧油を分配する。基本的には、蓄圧弁12は、圧油をコントロール弁9側へ優先して供給するように圧油を分配する。なお、複数の操作レバー30が操作されたときには、コントロール弁9側での要求流量の合計分の圧油がコントロール弁9側へ供給されるように蓄圧弁12は圧油を分配する。このとき、コントロール弁9側での要求流量の合計がメインポンプ7の最大流量であれば、アキュムレータ14側への圧油の供給量はゼロとなる。
【0014】
油路41のうち、蓄圧弁12の上流の油路を油路41aとし、蓄圧弁12の下流の油路を油路41bとする。アキュムレータ14は、メインポンプ7からの圧油を蓄圧する蓄圧手段であり、油路43を介して蓄圧弁12と接続されている。
【0015】
油圧モータ15は、可変容量型の油圧モータであり、その出力軸がメインポンプ7の入力軸と直結されている。油圧モータ15は、後述するように、アキュムレータ14に蓄圧された圧油によって駆動される。アシスト弁16は、アキュムレータ14と油圧モータ15とを接続する油路44に設けられた切替弁である。アシスト弁16は、制御回路13からの制御信号によってアキュムレータ14に蓄積された圧油を油圧モータ15に供給するか否かを切り替える。油路44のうち、アシスト弁16の上流の油路を油路44aとし、アシスト弁16の下流の油路を油路44bとする。圧力センサ17は、油路43の途中に設けられて、アキュムレータ14に蓄圧される圧油の圧力を検出する。
【0016】
制御回路13は、蓄圧弁12およびアシスト弁16を制御する制御装置であり、圧力センサ17,31,32と、排気圧センサ5a,5bと、排気温度センサ6とが接続されている。また、制御回路13は、エンジン1を制御するエンジン制御回路1aと接続されて、エンジン1についての情報を授受する。制御回路13による蓄圧弁12およびアシスト弁16の制御については後に詳述する。
【0017】
DPF4は、エンジン1の排気ガス中に含まれる捕集対象物である、粒子状物質(PM)を捕集するフィルタであり、エンジン1の排気ガスの排出経路である排気管3の途中に設けられている。DPF4には、排気ガスの温度が上昇すると捕集されたPMを燃焼させてDPF4から除去するように自己再生機能が備えられている。排気圧センサ5a,5bは、排気管3内の排気ガスの圧力を検出する圧力センサである。排気圧センサ5aは、DPF4の直前位置の排気管3に配設され、排気圧センサ5bは、DPF4の直後位置の排気管3に配設されている。以下、排気圧センサ5aで検出された圧力をP5aと表し、排気圧センサ5bで検出された圧力をP5bと表す。排気温度センサ6は、排気管3内の排気ガスの温度を検出する温度センサであり、DPF4の直前位置の排気管3に配設されている。
【0018】
このように構成される作業機械100では、各操作レバーが操作されると各油圧シリンダに対応する各コントロール弁のスプールが駆動され、各操作レバーの操作量に応じた速度で各油圧シリンダが駆動される。たとえば、ブームシリンダ114は、操作レバー30が操作されると、不図示のパイロットポンプからのパイロット圧油が操作レバー30の操作量に応じた圧力でコントロール弁9のスプールを駆動させる。その結果、ブームシリンダ114が操作レバー30の操作量に応じた速度で駆動される。
【0019】
ブームシリンダ114のボトム側油室に圧油が供給されると、ブーム113は上部旋回体102に対して上方向に揺動駆動され、ロッド側油室14bに圧油が供給されると、ブーム113は上部旋回体102に対して下方向に揺動駆動される。アームシリンダ116の図示しないボトム側油室に圧油が供給されると、アーム115はブーム113に対して下方向に揺動駆動され、図示しないロッド側油室に圧油が供給されると、アーム115はブーム113に対して上方向に揺動駆動される。
【0020】
バケットシリンダ118のボトム側油室に圧油が供給されると、バケット117はアーム115に対して下方向に揺動駆動され、ロッド側油室に圧油が供給されると、バケット117はアーム115に対して上方向に揺動駆動される。
【0021】
−−−DPF4の再生処理と動力吸収回路200による動力の回収について−−−
エンジン始動直後には、動力吸収回路200では、蓄圧弁12は、油路41aと油路41bとを連通し、油路41aと油路43とを遮断する。したがって、メインポンプ7から吐出された圧油は、全量が油路41aから油路41bへ供給される。アシスト弁16は、油路44aと油路44bとを遮断している。エンジン1が起動されると、排気ガスがマニホールド2から排気管3およびDPF4を経由して外界(大気中)に排出される。排気ガスに含まれるPMは、DPF4で捕集される。
【0022】
排気ガスの温度が高い状態であれば、DPF4に捕集されたPMは、DPF4の自己再生機能によって燃焼されるのでDPF4がPMで目詰まりすることはない。しかし、排気ガスの温度が低い状態が継続すると、DPF4に捕集されたPMが燃焼されないので、DPF4はPMで次第に目詰まりする。
【0023】
そこで、本実施の形態の作業機械100では、排気圧センサ5a,5bで各々検出した圧力値P5a,P5bより算出されたDPF4の前後差圧△Pg(=P5a−P5b)に基づいて、DPF4の目詰まりを検出する。そして、前後差圧△Pgが所定差圧△Phを超え、かつ、排気温度センサ6で検出した排気ガスの温度Tgが所定温度Tlow未満であれば、制御回路13が次のように各部を制御することで、以下に述べるDPF4の再生処理を行う。なお、排気温度センサ6で検出した排気ガスの温度Tgが所定温度Tlow以上であれば、DPF4に捕集されたPMがDPF4の自己再生機能によって燃焼されるので、次に述べるDPF4の再生処理を行う必要がない。
【0024】
制御回路13は、DPF4の前後差圧△Pgが所定差圧△Phを超え、かつ、排気温度センサ6で検出した排気ガスの温度Tgが所定温度Tlow未満であると判断すると、油路41aと油路43とを連通するように蓄圧弁12を制御する。これにより、メインポンプ7の圧油が、コントロール弁9(ブームシリンダ114)だけではなく、アキュムレータ14にも供給されることになる。また、制御回路13は、アキュムレータ14に供給されることで、コントロール弁9側に供給される圧油が減らないよう、吐出量を増加させるようにメインポンプ7の傾転角度を制御する。
【0025】
吐出量を増加させるようにメインポンプ7の傾転角度が制御されると、メインポンプ7の駆動負荷が増加する。そこで、制御回路13は、増加した駆動負荷に見合うだけのエンジントルクを増大させるように、エンジン制御回路1aに制御信号を出力する。エンジン制御回路1aは、エンジン1に対する燃料噴射量を増量して、エンジン1の回転数を一定に保ったまま、出力トルクを増加させるようエンジン1を制御する。
【0026】
エンジン1の回転数が一定であっても、出力トルクが増加すれば排気ガスの温度Tgが上昇する。そのため、DPF4の自己再生機能によって、DPF4に捕集されたPMの燃焼が促進されるので、DPF4の目詰まりが解消する。エンジン出力の増加分のエネルギーは、アキュムレータ14に圧油のエネルギーとして蓄積される。すなわち、排気ガスの温度Tgを上昇させるために余分に出力されたエンジン1の動力は、動力吸収回路200によって回収されることになる。
【0027】
アキュムレータ14の容量は、上述したようにエンジン1の出力トルクを増加させている間の余剰の圧油を蓄積できるように適宜設定されている。なお、DPF4の目詰まりが進行すると再生に要する時間が長くなり、アキュムレータ14に蓄積させる圧油量が増えてしまう。そこで、上述した再生動作をこまめに行うことで、アキュムレータ14の容量を必要以上に多くならないように、所定差圧△Phをおよび所定温度Tlowが設定されている。上述した再生動作をこまめに行うことで、再生中のDPF4の温度が上がりすぎるのを防止できるので、DPF4の寿命を延命化できる。後述するように、アキュムレータ14に蓄積された圧油は、メインポンプ7の駆動に用いられるため、有効に利用できる。
【0028】
ここで、制御回路13は、蓄圧弁12を次のように制御する。アキュムレータ14への圧油の供給開始当初は、アキュムレータ14の圧力が低く、油路41aと油路43との圧力差が大きい。そこで、制御回路13は、アキュムレータ14への圧油の流入量が多くなりすぎないように、すなわち、ブームシリンダ114の動作に影響を与えないように、蓄圧弁12のスプール位置を制御する。アキュムレータ14へ圧油が蓄積されると、アキュムレータ14の圧力が徐々に上昇するので、油路41aと油路43との圧力差が小さくなる。したがって、蓄圧弁12でアキュムレータ14への圧油の流入を絞る必要性が少なくなる。そこで、アキュムレータ14へ圧油が蓄積されると、アキュムレータ14への圧油の流入量が減らないように、制御回路13は蓄圧弁12のスプール位置を制御する。
【0029】
また、制御回路13は、圧力センサ31,32の圧力から操作レバー30の操作量を検出し、ブームシリンダ114の動作に影響を与えないように、かつ、排気ガスの温度が上昇するように、蓄圧弁12のスプール位置を制御する。すなわち、制御回路13は、圧力センサ31,32の圧力から操作レバー30の操作量が少ないと判断すると、アキュムレータ14に流入する圧油が多くなるように蓄圧弁12のスプール位置を制御する。また、制御回路13は、圧力センサ31,32の圧力から操作レバー30の操作量が多いと判断すると、アキュムレータ14に流入する圧油が少なくなるように蓄圧弁12のスプール位置を制御する。
【0030】
このように蓄圧弁12のスプール位置を制御することで、ブームシリンダ114の動作に影響を与えることなく、エンジン1のエンジン出力増加分のエネルギーをアキュムレータ14に圧油として蓄積できる。なお、アキュムレータ14への圧油の蓄積状態、すなわちアキュムレータ14の圧力は、上述したように、圧力センサ17で検出される。
【0031】
上述したようにエンジン1の出力トルクを増加させて排気ガスの温度Tgを上昇させると、DPF4に捕集されたPMの燃焼が促進されてDPF4の目詰まりが解消し、DPF4の前後差圧△Pgが低下する。そこで、DPF4の前後差圧△Pgが所定値△Pl以下となると、制御回路13は、DPF4の再生処理を終了する。すなわち、制御回路13は、DPF4の前後差圧△Pgが所定値△Pl以下となると、アキュムレータ14への圧油の流入を禁止するように油路41aと油路43とを遮断する。また、制御回路13は、アキュムレータ14に供給されなくなったことで、コントロール弁9側に供給される圧油が不必要に増えないよう、吐出量を減少させるようにメインポンプ7の傾転角度を制御する。
【0032】
吐出量を減少させるようにメインポンプ7の傾転角度が制御されると、メインポンプ7の駆動負荷が軽減される。そこで、制御回路13は、軽減された負荷に見合うだけのエンジントルクを減少させるように、エンジン制御回路1aに制御信号を出力する。すなわち、制御回路13は、上述したエンジン1の出力トルクの増加を中止するようエンジン制御回路1aに制御信号を出力する。エンジン制御回路1aは、エンジン1に対する燃料噴射量の増量を中止して、エンジン1の回転数を一定に保ったまま出力トルクを減少させるようにエンジン1を制御する。
【0033】
なお、制御回路13は、DPF4の前後差圧△Pgが所定値△Pl以下とならなくても、圧力センサ17で検出されるアキュムレータ14の圧力Paqが所定圧力Paqhを超えると、アキュムレータ14を保護するため、上述したようにDPF4の再生処理を終了する。
【0034】
−−−動力吸収回路200によって回収された動力の利用について−−−
上述したように動力吸収回路200で回収された動力、すなわち、アキュムレータ14に蓄積された圧油は、油圧モータ15の駆動に利用される。制御回路13は、圧力センサ17で検出したアキュムレータ14の圧力Paqが所定値P1以上であり、かつ、上述したDPF4の再生処理が行われていないと判断すると、圧力センサ31,32の圧力から操作レバー30の操作量を算出する。そして制御回路13は、算出した操作レバー30が所定の操作量以上であると判断すると、算出した操作量に応じて、油圧モータ15の傾転量を調整するとともに、油路44aと油路44bとを連通するようにアシスト弁16を制御する。
【0035】
その結果、アキュムレータ14に蓄積されていた圧油が油圧モータ15を駆動する。上述したように油圧モータ15の出力軸がメインポンプ7の入力軸と直結されているので、油圧モータ15はエンジン1によるメインポンプ7の駆動を補助することになる。すなわち、動力吸収回路200によって回収された動力がメインポンプ7の駆動力として利用される。なお、油圧モータ15によってメインポンプ7の駆動が補助されると、エンジン1の負荷が少なくなる。これにより、エンジン1の燃料消費を低減できる。
【0036】
メインポンプ7の駆動補助を開始した後、操作レバー30の操作量が少なくなれば、メインポンプ7の駆動を補助する必要性は低くなる。そこで、制御回路13は、圧力センサ31,32の圧力から操作レバー30の操作量を算出して、操作レバー30が所定の操作量未満であると判断すると、油路44aと油路44bとを遮断するようにアシスト弁16を制御する。
【0037】
メインポンプ7の駆動補助を中止した後、操作レバー30の操作量が多くなれば、メインポンプ7の駆動を補助する必要性が高くなる。そこで、制御回路13は、圧力センサ31,32の圧力から操作レバー30の操作量を算出して、操作レバー30が所定の操作量以上であると判断すると、油路44aと油路44bとを遮断するようにアシスト弁16を制御する。
【0038】
なお、制御回路13は、圧力センサ17で検出したアキュムレータ14の圧力Paqが所定圧力P2以下となると、すなわち、アキュムレータ14に蓄積されていた圧油が十分ではなくなると、油路44aと油路44bとを遮断するようにアシスト弁16を制御する。これにより、動力吸収回路200によって回収された動力の利用が終了する。
【0039】
−−−フローチャート−−−
図3は、上述したDPF4の再生処理に関する動作についての処理内容を示すフローチャートである。油圧ショベルの不図示のイグニッションスイッチがオンされると、この処理を行うプログラムが起動されて、制御回路13で実行される。ステップS1において、排気圧センサ5a,5bで各々検出した圧力値P5a,P5bよりDPF4の前後差圧△Pgを算出してステップS3へ進む。
【0040】
ステップS3において、ステップS1で算出したDPF4の前後差圧△Pgが所定差圧△Phを超えているか否かを判断する。ステップS3が肯定判断されるとステップS5へ進み、排気温度センサ6で検出した排気ガスの温度Tgを読み込んでステップS7へ進む。ステップS7において、ステップS5で読み込んだ排気ガスの温度Tgが所定温度Tlow未満であるか否かを判断する。
【0041】
ステップS7が肯定判断されるとステップS9へ進み、DPF4の再生処理を開始するよう各部を制御する。すなわち、上述したように、油路41aと油路43とを連通するように蓄圧弁12を制御し、吐出量を増加させるようにメインポンプ7の傾転角度を制御し、エンジントルクを増大させるように、エンジン制御回路1aに制御信号を出力する。
【0042】
DPF4の再生処理を開始するとステップS11に進み、排気圧センサ5a,5bで各々検出した圧力値P5a,P5bよりDPF4の前後差圧△Pgを算出してステップS13へ進む。ステップS13において、ステップS11で算出したDPF4の前後差圧△Pgが所定値△Plを超えているか否かを判断する。ステップS13が肯定判断されるとステップS15へ進み、圧力センサ17で検出されるアキュムレータ14の圧力Paqを読み込んでステップS17へ進む。
【0043】
ステップS17において、ステップS15で読み込んだアキュムレータ14の圧力Paqが所定圧力Paqhを超えているか否かを判断する。ステップS17が肯定判断されるとステップS19へ進み、DPF4の再生処理を終了するよう各部を制御する。すなわち、上述したように、油路41aと油路43とを遮断するよう蓄圧弁12を制御し、吐出量を減少させるようにメインポンプ7の傾転角度を制御し、エンジントルクを減少させるように、エンジン制御回路1aに制御信号を出力する。DPF4の再生処理を終了するとリターンする。
【0044】
ステップS17が否定判断されるとステップS11へ戻る。ステップS13が否定判断されるとステップS19へ進む。ステップS3が否定判断されるか、ステップS7が否定判断されるとステップS1へ戻る。
【0045】
図4は、上述した動力吸収回路200によって回収された動力の利用に関する動作についての処理内容を示すフローチャートである。油圧ショベルの不図示のイグニッションスイッチがオンされると、この処理を行うプログラムが起動されて、制御回路13で実行される。ステップS31において、圧力センサ17で検出されるアキュムレータ14の圧力Paqを読み込んでステップS33へ進む。
【0046】
ステップS33において、ステップS31で読み込んだアキュムレータ14の圧力Paqが所定値P1以上になるまで待機する。ステップS33が肯定判断されるとステップS35へ進み、上述したDPF4の再生処理が終了するまで待機する。ステップS35が肯定判断されるとステップS37へ進み、圧力センサ31,32の検出圧力を読み込んでステップS39へ進む。ステップS39において、ステップS37で読み込んだ圧力センサ31,32の検出圧力に基づいて、操作レバー30の操作量を算出してステップS41へ進む。
【0047】
ステップS41において、ステップS39で算出した操作レバー30の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断する。ステップS41が肯定判断されるとステップS43へ進み、ステップS39で算出した操作レバー30の操作量に応じて、油圧モータ15の傾転角度を調整してステップS45へ進む。ステップS45において、油路44aと油路44bとを連通するようにアシスト弁16を制御してステップS47へ進む。
【0048】
ステップS47において、圧力センサ17で検出されるアキュムレータ14の圧力Paqを読み込んでステップS49へ進む。ステップS49において、ステップS47で読み込んだアキュムレータ14の圧力Paqが所定値P2以下であるか否かを判断する。ステップS49が肯定判断されるとステップS51へ進み、油路44aと油路44bとを遮断するようにアシスト弁16を制御してリターンする。
【0049】
ステップS41が否定判断されるとステップS53へ進み、油路44aと油路44bとを遮断するようにアシスト弁16を制御してステップS35へ戻る。
【0050】
ステップS49が否定判断されるとステップS35へ戻る。
【0051】
上述した第1の実施の形態の作業機械100では、次の作用効果を奏する。
(1) DPF4の前後差圧△Pgが所定差圧△Phを超えた際に、エンジン1の出力を増加させて排気温度を上昇させることでDPF4の再生処理を行うように構成した。また、DPF4の再生処理中に増加させたエンジン出力を圧油のエネルギーとして、アキュムレータ14で蓄圧するように構成した。これにより、DPF4で捕集されたPMをDPF4から除去できる。また、PM除去のために増加させたエンジン出力を、油圧で各部が駆動される作業機械にとって後に有効に利用しやすい形態で回収できるので、回収したエネルギーの利用のための機器構成が簡略化でき、コスト増を低減できる。
【0052】
(2) PM除去のために増加させたエンジン出力の回収にアキュムレータ14を用いるように構成した。これにより、簡単な油圧回路の構成で、PM除去のために増加させたエンジン出力を回収できるので、エネルギー回収のための機器構成が簡略化できる。したがって、コスト増を低減できるとともに、故障を少なくでき、信頼性が高い。
【0053】
(3) アキュムレータ14で蓄圧した圧油によって油圧モータ15を駆動することで、エンジン1によるメインポンプ7の駆動を補助するように構成した。これにより、DPF4の再生のために増加させたエンジン出力を一時的に蓄積しておいて、後にメインポンプ7の駆動力として有効利用できるので、DPF4の再生に伴う燃費の悪化を抑制できる。
【0054】
(4) エンジン回転数を略一定に保ち、出力トルクを増やすことでエンジン出力を増加させて、排気ガスの温度を上昇させるように構成した。これにより、メインポンプ7の回転数が変化しないので、傾転角度の変更のみでメインポンプ7からの圧油の吐出量を制御でき、ブームシリンダ114に対する圧油の供給量を制御しやすい。すなわち、操作レバー30の操作量に対するブームシリンダ114の駆動速度を、DPF4の再生処理の開始前後で、変動が少なくなるように制御しやすくなる。
【0055】
−−−第2の実施の形態−−−
図5〜7を参照して、本発明による作業機械の第2の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、PM除去のために増加させたエンジン出力を圧油のエネルギーとして回収する代わりに、電気エネルギーとして回収する点で、第1の実施の形態と異なる。
【0056】
図5は、本実施の形態の作業機械100の油圧回路を示す図である。この油圧回路には、第1の実施の形態における動力吸収回路200の代わりに動力吸収装置300が設けられている。
【0057】
動力吸収装置300には、電磁クラッチ140と、発電機/電動機141と、インバータ/コンバータ142と、バッテリ43とが設けられている。電磁クラッチ140は、入力軸でもあり出力軸でもある発電機/電動機141の回転軸と、メインポンプ7の入力軸とを接続または切断する電磁クラッチである。電磁クラッチ140は、制御回路13からの制御信号によってその断続が制御される。発電機/電動機141は、交流発電機としても機能し、交流電動機としても機能する。発電機/電動機141は、インバータ/コンバータ142に接続されている。
【0058】
インバータ/コンバータ142は、発電機/電動機141で発電された交流電力を所定電圧の直流電力に変換してバッテリ143に供給する。また、インバータ/コンバータ142は、バッテリ143に蓄電された直流電力を所定電圧、所定周波数の交流電力に変換して発電機/電動機141に供給する。インバータ/コンバータ142は、制御回路13によって制御される。バッテリ143は、たとえば鉛蓄電池や、リチウムイオンバッテリのように、直流電力を蓄電する2次電池である。
【0059】
−−−DPF4の再生処理と動力吸収装置300による動力の回収について−−−
エンジン始動直後には、動力吸収装置300では、電磁クラッチ140は、発電機/電動機141の回転軸と、メインポンプ7の入力軸とを切断している。エンジン1が起動されると、排気ガスがマニホールド2から排気管3およびDPF4を経由して外界(大気中)に排出される。排気ガスに含まれるPMは、DPF4で捕集される。
【0060】
作業機械100では、上述したようにDPF4の前後差圧△Pgに基づいて、DPF4の目詰まりを検出する。そして、DPF4の前後差圧△Pgが所定差圧△Phを超え、かつ、排気温度センサ6で検出した排気ガスの温度Tgが所定温度Tlow未満であれば、制御回路13が次のように各部を制御することで、以下に述べるDPF4の再生処理を行う。
【0061】
制御回路13は、DPF4の前後差圧△Pgが所定差圧△Phを超え、かつ、排気温度センサ6で検出した排気ガスの温度Tgが所定温度Tlow未満であると判断すると、発電機/電動機141の回転軸と、メインポンプ7の入力軸とを接続するように電磁クラッチ140を制御する。これにより、エンジン1の動力が、発電機/電動機141にも伝達されることになる。発電機/電動機141はエンジン1によって駆動されることで発電する。制御回路13は、発電機/電動機141で発電された電力をバッテリ143に供給するようインバータ/コンバータ142を制御する。
【0062】
発電機/電動機141で発電を開始すると、発電機/電動機141がエンジン1の負荷となる。そこで、制御回路13は、発電機/電動機141の負荷に見合うだけエンジントルクを増大させるように、エンジン制御回路1aに制御信号を出力する。エンジン制御回路1aは、エンジン1に対する燃料噴射量を増量して、エンジン1の回転数を一定に保ったまま、出力トルクを増加させるようエンジン1を制御する。
【0063】
エンジン1の回転数が一定であっても、出力トルクが増加すれば排気ガスの温度Tgが上昇する。そのため、DPF4の自己再生機能によって、DPF4に捕集されたPMの燃焼が促進されるので、DPF4の目詰まりが解消する。エンジン出力の増加分のエネルギーは、バッテリ143に電気エネルギーとして蓄積される。すなわち、排気ガスの温度Tgを上昇させるために余分に出力されたエンジン1の動力は、動力吸収装置300によって回収されることになる。
【0064】
上述したようにエンジン1の出力トルクを増加させて排気ガスの温度Tgを上昇させると、DPF4に捕集されたPMの燃焼が促進されてDPF4の目詰まりが解消し、DPF4の前後差圧△Pgが低下する。そこで、DPF4の前後差圧△Pgが所定値△Pl以下となると、制御回路13は、DPF4の再生処理を終了する。すなわち、制御回路13は、DPF4の前後差圧△Pgが所定値△Pl以下となると、発電機/電動機141の回転軸と、メインポンプ7の入力軸とを切断するように電磁クラッチ140を制御する。
【0065】
さらに、制御回路13は、発電機/電動機141で発電しなくなったことで減少した負荷に見合うだけエンジントルクを減少させるように、エンジン制御回路1aに制御信号を出力する。すなわち、制御回路13は、上述したエンジン1の出力トルクの増加を中止するようエンジン制御回路1aに制御信号を出力する。エンジン制御回路1aは、エンジン1に対する燃料噴射量の増量を中止して、エンジン1の回転数を一定に保ったまま出力トルクを減少させるようにエンジン1を制御する。
【0066】
なお、制御回路13は、DPF4の前後差圧△Pgが所定値△Pl以下とならなくても、バッテリ143の電圧Vbが所定電圧Vbhを超えると、バッテリ143を過充電から保護するため、上述したようにDPF4の再生処理を終了する。
【0067】
−−−動力吸収装置300によって回収された動力の利用について−−−
上述したように動力吸収装置300で回収された動力、すなわち、バッテリ143に蓄電された電力は、発電機/電動機141の駆動に利用される。制御回路13は、バッテリ143の電圧Vbが所定電圧V1以上であり、かつ、上述したDPF4の再生処理が行われていないと判断すると、圧力センサ31,32の圧力から操作レバー30の操作量を算出する。そして制御回路13は、算出した操作レバー30が所定の操作量以上であると判断すると、算出した操作量に応じて発電機/電動機141を駆動するように、インバータ/コンバータ142を制御する。すなわち、制御回路13は、算出した操作量に応じて、発電機/電動機141に印加する電圧や周波数などを変更するようにインバータ/コンバータ142を制御する。また、制御回路13は、発電機/電動機141の回転軸と、メインポンプ7の入力軸とを接続するように電磁クラッチ140を制御する。
【0068】
その結果、バッテリ143に蓄電されていた電力が発電機/電動機141を駆動する。また、発電機/電動機141の回転軸がメインポンプ7の入力軸と電磁クラッチ140で接続されるので、発電機/電動機141はエンジン1によるメインポンプ7の駆動を補助することになる。すなわち、動力吸収装置300によって回収された動力がメインポンプ7の駆動力として利用される。なお、発電機/電動機141によってメインポンプ7の駆動が補助されると、エンジン1の負荷が少なくなる。エンジン1の回転数は、制御回路13からの指令によって発電機/電動機141による補助の前後で略一定に保たれる。
【0069】
メインポンプ7の駆動補助を開始した後、操作レバー30の操作量が少なくなれば、メインポンプ7の駆動を補助する必要性は低くなる。そこで、制御回路13は、圧力センサ31,32の圧力から操作レバー30の操作量を算出して、操作レバー30が所定の操作量未満であると判断すると、発電機/電動機141の回転軸と、メインポンプ7の入力軸とを切断するように電磁クラッチ140を制御する。また、制御回路13は、発電機/電動機141に対するバッテリ143からの電力供給を中止するよう、インバータ/コンバータ142を制御する。
【0070】
メインポンプ7の駆動の補助を中止した後、操作レバー30の操作量が多くなれば、メインポンプ7の駆動を補助する必要性が高くなる。そこで、制御回路13は、圧力センサ31,32の圧力から操作レバー30の操作量を算出して、操作レバー30が所定の操作量以上であると判断すると、上述した発電機/電動機141によるメインポンプ7の駆動の補助を再開する。
【0071】
なお、制御回路13は、バッテリ143の電圧Vbが所定電圧V2以下となると、すなわち、バッテリ143の残量が少なくなると、バッテリ143の過放電を防止するために、発電機/電動機141に対するバッテリ143からの電力供給を中止するよう、インバータ/コンバータ142を制御する。また、制御回路13は、発電機/電動機141の回転軸と、メインポンプ7の入力軸とを切断するように電磁クラッチ140を制御する。これにより、動力吸収装置300によって回収された動力の利用が終了する。
【0072】
−−−フローチャート−−−
図6は、上述したDPF4の再生処理に関する動作についての処理内容を示すフローチャートである。油圧ショベルの不図示のイグニッションスイッチがオンされると、この処理を行うプログラムが起動されて、制御回路13で実行される。ステップS1からステップS7までの処理は、第1の実施の形態と同じであるので、説明を省略する。
【0073】
ステップS7が肯定判断されるとステップS109へ進み、DPF4の再生処理を開始するよう各部を制御する。すなわち、上述したように、発電機/電動機141の回転軸と、メインポンプ7の入力軸とを接続するように電磁クラッチ140を制御し、発電機/電動機141で発電された電力をバッテリ143に供給するようインバータ/コンバータ142を制御し、エンジントルクを増大させるように、エンジン制御回路1aに制御信号を出力する。
【0074】
DPF4の再生処理を開始するとステップS11に進む。ステップS11,S13における処理は、第1の実施の形態と同じであるので、説明を省略する。ステップS13が肯定判断されるとステップS115へ進み、バッテリ143の電圧Vbを読み込んでステップS117へ進む。
【0075】
ステップS117において、ステップS115で読み込んだバッテリ143の電圧Vbが所定電圧Vbhを超えているか否かを判断する。ステップS117が肯定判断されるとステップS119へ進み、DPF4の再生処理を終了するよう各部を制御する。すなわち、上述したように、発電機/電動機141の回転軸と、メインポンプ7の入力軸とを切断するように電磁クラッチ140を制御し、エンジントルクを減少させるように、エンジン制御回路1aに制御信号を出力する。DPF4の再生処理を終了するとリターンする。
【0076】
ステップS117が否定判断されるとステップS11へ戻る。ステップS13が否定判断されるとステップS119へ進む。
【0077】
図7は、上述した動力吸収装置300によって回収された動力の利用に関する動作についての処理内容を示すフローチャートである。油圧ショベルの不図示のイグニッションスイッチがオンされると、この処理を行うプログラムが起動されて、制御回路13で実行される。ステップS131において、バッテリ143の電圧Vbを読み込んでステップS133へ進む。
【0078】
ステップS133において、ステップS131で読み込んだバッテリ143の電圧Vbが所定電圧V1以上になるまで待機する。ステップS133が肯定判断されるとステップS35へ進む。ステップS35からステップS41までの処理は、第1の実施の形態と同じであるので、説明を省略する。
【0079】
ステップS41が肯定判断されるとステップS143へ進み、発電機/電動機141の回転軸と、メインポンプ7の入力軸とを接続するように電磁クラッチ140を制御してステップS145へ進む。ステップS145において、ステップS39で算出した操作レバー30の操作量に応じて、発電機/電動機141に印加する電圧や周波数などを変更するようにインバータ/コンバータ142を制御してステップS147へ進む。
【0080】
ステップS147において、バッテリ143の電圧Vbを読み込んでステップS49へ進む。ステップS149において、ステップS147で読み込んだバッテリ143の電圧Vbが所定電圧V2以下であるか否かを判断する。ステップS149が肯定判断されるとステップS151へ進み、発電機/電動機141に対するバッテリ143からの電力供給を中止するよう、すなわち、発電機/電動機141の駆動を中止するようインバータ/コンバータ142を制御してステップS153へ進む。ステップS153において、発電機/電動機141の回転軸と、メインポンプ7の入力軸とを切断するように電磁クラッチ140を制御してリターンする。
【0081】
ステップS41が否定判断されるとステップS155へ進み、発電機/電動機141に対するバッテリ143からの電力供給を中止するよう、インバータ/コンバータ142を制御してステップS157へ進む。ステップS157において、発電機/電動機141の回転軸と、メインポンプ7の入力軸とを切断するように電磁クラッチ140を制御してステップS35へ戻る。
【0082】
ステップS149が否定判断されるとステップS35へ戻る。
【0083】
上述した第2の実施の形態の作業機械100では、第1の実施の形態の次の作用効果を奏する。
(1) DPF4の再生処理中に増加させたエンジン出力を電気エネルギーとして、バッテリ143で蓄電するように構成した。これにより、PM除去のために増加させたエンジン出力を、簡単な構成で蓄積できるので、機器構成が簡略化でき、コスト増を低減できる。
【0084】
(2) バッテリ143で蓄電した電力によって発電機/電動機141を駆動することで、エンジン1によるメインポンプ7の駆動を補助するように構成した。これにより、DPF4の再生のために増加させたエンジン出力を一時的に貯蔵しておいて、後にメインポンプ7の駆動力として有効利用できるので、DPF4の再生に伴う燃費の悪化を抑制できる。また、DPF4の再生処理中に増加させたエンジン出力の電気エネルギーへの変換、および、バッテリ143で蓄電した電力の動力への変換を発電機/電動機141で行うように構成したので、構成機器数を減らすことができ、コスト増を抑制できる。
【0085】
−−−変形例−−−
(1) 上述の説明では、図3,5に示す油圧回路において、ブームシリンダ114を図示して説明しているが、動力吸収回路200や動力吸収装置300による動力の回収、および動力吸収回路200や動力吸収装置300によって回収された動力の利用に関して、ブームシリンダ114以外の各シリンダ116,118との動作の連係を排除するものではない。
【0086】
(2) 上述の説明では、エンジン回転数を略一定に保ち、出力トルクを増大させることでエンジン出力を増やして排気ガスの温度Tgを上昇させているが、本発明はこれに限定されない。エンジン1の回転数を上げることでエンジン出力を増やしてもよく、エンジン1の回転数および出力トルクの双方を変更することでエンジン出力を増加させてもよい。
【0087】
(3) 上述の説明では、DPF4の目詰まりの状況、すなわちDPF4の再生の要否をDPF4の前後差圧△Pgで判断するように構成しているが、DPF4の直前の排気ガスの圧力(すなわち排気圧センサ5aで検出した圧力P5a)で判断するようにしてもよい。
【0088】
(4) 上述した第1の実施の形態では、油圧モータ15は、その出力軸がメインポンプ7の入力軸と直結されているが、第2の実施の形態と同様に、電磁クラッチによって、油圧モータ15の出力軸と、メインポンプ7の入力軸とを断続可能にしてもよい。
(5) 上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0089】
上述の実施の形態およびその変形例において、たとえば、油圧ポンプはメインポンプ7に、捕集手段はDPF4に、排ガス通過抵抗検出手段は排気圧センサ5a,5bに、蓄圧手段はアキュムレータ14に、発電機およびモータは発電機/電動機141に、蓄電手段はバッテリ143にそれぞれ対応する。エンジン制御手段は、制御回路13と、エンジン制御回路1aと制御回路13およびエンジン制御回路1aで実行される制御プログラムとによって実現される。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する際、上記の実施形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係になんら限定も拘束もされない。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明による作業機械の一例としての油圧ショベルの外観を示す図である。
【図2】第1の実施の形態の作業機械100の油圧回路を示す図である。
【図3】第1の実施の形態のDPF4の再生処理に関する動作について、処理内容を示すフローチャートである。
【図4】動力吸収回路200によって回収された動力の利用に関する動作についての処理内容を示すフローチャートである。
【図5】第2の実施の形態の作業機械100の油圧回路を示す図である。
【図6】第2の実施の形態のDPF4の再生処理に関する動作について、処理内容を示すフローチャートである。
【図7】動力吸収装置300によって回収された動力の利用に関する動作についての処理内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0091】
1 エンジン 1a エンジン制御回路
4 DPF 5 排気圧センサ
6 排気温度センサ 7 油圧ポンプ(メインポンプ)
9 コントロール弁 12 蓄圧弁
13 制御回路 14 アキュムレータ
15 油圧モータ 16 アシスト弁
30 操作レバー 100 作業機械
114 ブームシリンダ 140 電磁クラッチ
141 発電機/電動機 142 インバータ/コンバータ
143 バッテリ 200 動力吸収回路
300 動力吸収装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンによって駆動されて圧油を吐出する油圧ポンプと、
前記エンジンの排気ガスの排出経路に設けられて、前記排気ガスに含まれる捕集対象物を捕集する捕集手段と、
前記排出経路中の前記捕集手段前後の前記排気ガスの圧力差を検出する排ガス通過抵抗検出手段と、
前記排ガス通過抵抗検出手段で検出した前記排気ガスの差圧が所定の差圧以上である場合には、エンジン出力を増加させるエンジン制御手段と、
前記エンジン制御手段により増加させたエンジン出力を前記油圧ポンプからの圧油のエネルギーとして蓄圧する蓄圧手段とを備えることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記蓄圧手段で蓄圧した圧油により前記油圧ポンプを駆動する油圧回路を有することを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記エンジン制御手段は、前記エンジンの出力トルクを増加させることで、前記エンジン出力を増加させることを特徴とする作業機械。
【請求項4】
エンジンによって駆動される発電機と、
前記エンジンの排気ガスの排出経路に設けられて、前記排気ガスに含まれる捕集対象物を捕集する捕集手段と、
前記排出経路中の前記捕集手段前後の前記排気ガスの圧力差を検出する排ガス通過抵抗検出手段と、
前記排ガス通過抵抗検出手段で検出した前記排気ガスの差圧が所定の差圧以上である場合には、エンジン出力を増加させるエンジン制御手段と、
前記エンジン制御手段により増加させたエンジン出力を前記発電機で発電された電気エネルギーとして蓄電する蓄電手段とを備えることを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項4に記載の作業機械において、
前記蓄電手段で蓄電した電力により前記油圧ポンプを駆動するモータをさらに備えることを特徴とする作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−46998(P2009−46998A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−211022(P2007−211022)
【出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】