説明

作業車の前部構造

【課題】バッテリ、他のエンジン補機及びロック手段を集中的に配備するアセンブリ(組立体)を構成して製造ラインでの作業効率の向上を図る。
【解決手段】ラジエータ34の前部に配備されたフレーム50は、前車軸ケース11に支持されていてバッテリ35を載置する台板51と、該台板51に立設されて他のエンジン補機を支持する支持体52とを備え、該台板51と支持体52との間にバッテリ35を固定するバッテリ固定手段63を設けると共に、該支持体52の上部に閉じ状態とした上カバー43の前部を係止するロック手段75を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタやTLB(トラクタ・ローダ・バックホー)等の作業車の前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラクタやTLB等の作業車においては、車体に搭載しているエンジンの前方側にボンネットに覆われたエンジンルームを備え、該エンジンルーム内に吸込み型のラジエータを配置し、このラジエータの前方側にバッテリやオイルクーラ等のエンジン補機を配備している。この種の作業車として、前車軸フレーム上にバッテリ台を架設し、該バッテリ台上に引掛けボルト等を介してバッテリを取付支持しているものが公知である。
【0003】
また、バッテリ台にクーラ取付部を立設し、該クーラ取付部にオイルクーラを垂直姿勢で組み付けたトラクタの前部構造が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−219950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記トラクタの前部構造によれば、ボンネットの天板を形成する上カバーを開閉自在に枢支する場合、上カバーを閉じ状態に係止するロック手段がエンジンルーム内に別構造として配備されると、バッテリ及びオイルクーラの取付けに加えてロック手段をエンジンルームに組み付けなければならず、製造ライン上での組立効率が非常に悪いものとなっていた。
【0005】
そこで、本発明は、バッテリ、他のエンジン補機及びロック手段を集中的に配備するアセンブリ(組立体)を構成して製造ラインでの作業効率の向上を図ることができる作業車の前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
即ち、本発明における課題解決のための技術的手段は、エンジン6から前方へ突出した前車軸フレーム11上に、エンジン6の前方のラジエータ34と、該ラジエータ34の前方のフレーム50とが配備され、該フレーム50にバッテリ35及び他のエンジン補機36、37が支持され、ラジエータ34及びフレーム50を覆うボンネット40がフロントグリル41と、左右一対のサイドカバー42と、後部が枢支された上カバー43とを有して形成されている作業車の前部構造において、
前記フレーム50は、前車軸ケース11に支持されていてバッテリ35を載置する台板51と、該台板51に立設された支持体52とを備え、該台板51と支持体52との間にバッテリ35を固定するバッテリ固定手段63が設けられると共に、該支持体52の上部に閉じ状態とした上カバー43の前部を係止するロック手段75が設けられていることを特徴としている。
【0007】
これによれば、台板51と支持体52の間にバッテリ35が支持されると共に該台板51に立設された支持体52に他のエンジン補機が配備され、さらに、該支持体52の上部にロック手段75が配備されることとなり、これらバッテリ35、他のエンジン補機及びロック手段75をフレーム50に集中配備したアセンブリ(組立体)が構成され、これらの前車軸ケース11上への取付及び取り外しを容易且つ迅速に行うことができる。
【0008】
また、前記支持体52は、台板51上のバッテリ35に跨って配備され、その後上部にオイルクーラ36が支持されていることが好ましい。
これによれば、バッテリ35とラジエータ34の間隔を狭小なものとすることができ、前記ボンネット40によって覆われる空間の省スペース化又は該空間の小型化が図られることとなる。
【0009】
また、前記支持体52には、フロントグリル41の上部を取り付けるグリル取付部82と、左右一対のサイドカバー42の前部を取り付けるサイドカバー取付部83とが形成されていることが好ましい。
これによれば、フロントグリル41及び左右一対のサイドカバー42の着脱を容易に行うことができる。また、フレーム50を前車軸ケース11上に配備した状態を保ちながらこれらフロントグリル及び左右一対のサイドカバーを取り外すことができ、これによって、前記バッテリ35及び他のエンジン補機を前車軸ケース11上に位置させた状態で露出させることができ、これらの機器の整備点検作業を行うのに至便となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の作業車の前部構造によれば、バッテリ、他のエンジン補機及びロック手段を集中的に配備するアセンブリ(組立体)を構成して製造ラインでの作業効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明していく。
図12に示すように、1はTLBと呼称される作業機であり、該作業機1はトラクタ2の前部にフロントローダ3を、後部にバックホー4を装着して構成されている。
トラクタ2の車体(走行車体)5は、前車軸フレーム11と、該前車軸フレーム11を前方突出状に支持するエンジン6と、該エンジン6の後部に配備されたハウジング7と、該ハウジング7の後部側で連結されたミッションケース8とを備えて構成されている。また、車体5は、左右一対の前輪9及び後輪10によって走行可能に支持されている。
【0012】
車体5の後部には運転席12が設けられ、該運転席12は、トラクタ2やフロントローダ3を操作する前向き姿勢と、バックホー4を操作する後向き姿勢とに姿勢変更自在に支持されている。運転席12とエンジン6の間には、ステアリングハンドル13を備えたトラクタ操縦部14が設けられている。
車体5の下部には、トラクタ2にフロントローダ3とバックホー4を装着する作業機装着フレーム16が配備されている。該作業機装着フレーム16の前側にフロントローダ3が支持され、作業機装着フレーム16の後側にバックホー4が支持されている。
【0013】
バックホー4は、左右の作業機装着フレーム16の後部に着脱自在に取り付けられる基台24と、該基台24に左右揺動自在に支持されたスイングブラケット25と、該スイングブラケット25に上下揺動自在に支持されたブーム26と、該ブーム26に上下揺動自在に支持されたアーム27と、該アーム27に回動自在に枢支連結されたバケット28とを有している。スイングブラケット25、ブーム26、アーム27及びバケット28は、それぞれの間に配備された油圧シリンダによって揺動可能とされている。
【0014】
フロントローダ3は、作業機装着フレーム16の前部に固定された左右一対のマスト30と、該マスト30に着脱自在なブーム31と、該ブーム31に回動自在に枢支連結されたバケット32とを有している。ブーム31及びバケット32は、それぞれの間に配備された油圧シリンダによって揺動可能とされている。
前車軸フレーム11の上方はボンネット40によって覆われており、これにより、トラクタ2の前部にボンネット40及び前車軸フレーム11によって覆われたエンジンルームRが形成されている。
【0015】
図5に示す如く、エンジンルームRにはエンジン6が収容され、該エンジン6の前部にラジエータ34及びその他のエンジン補機が配備されている。
ラジエータ34は、背部にラジエータファンを備え、前側から空気を取り込んで後方のエンジン6へ冷却風を送る吸込み型が採用されている。
図1、図5〜図7に示す如く、ラジエータ34の前部には、バッテリ35と、オイルクーラ36と、リザーブタンク37とからなるエンジン補機がフレーム50に支持された状態で配備されている。
【0016】
図2〜図4に示す如く、フレーム50は、前車軸フレーム11に支持された台板51と、該台板51上に立設された支持体52とを備えている。
台板51は、前端部が凸円弧状に形成された底板部54と、該底板部54の後端部から略直角に立ち上がる立上り部55と、該立上り部55の上端部から略直角に屈曲して底板部54とは反対側となる方向に延設された上板部56とを備えている。図1及び図5に示す如く、前車軸フレーム11の上端部には、前端部を後端部より低位とした段差が形成されており、該段差の低位とれた位置に底板部54が突片54aを介して左右一対の前車軸フレーム11に支持されるている。また、上板部56はシール部材を介してラジエータ34の下端部に連結されており、これによって上板部56はシャッタプレートとして機能する。
【0017】
また、図3及び図4に示す如く、立上り部55と上板部56の間には、左右一対のブレース材57が取り付けられており、これによって立上り部55の撓みや局部座くつが防止されている。
図2に示す如く、支持体52は、台板51の底板部54に立設された左右一対の支柱59と、該左右一対の支柱59の上下方向中途部を連結する中間連結部材60と、左右一対の支柱59の上端部を連結する梁材61とを備えている。
【0018】
左右一対の支柱59は板状に形成され、互いの板面を対向させた状態で台板51上に溶接等により固着されている。また、図4に示す如く、該左右一対の支柱59の下端部後端側の小口面は台板51の立上り部55に当接しており、これによっても立上り部55の補強がなされている。
図2に示す如く、中間連結部材60は、板状に形成され、左右一対の支柱59に架け渡されて配備されている。
【0019】
梁材61は、断面L字型のアングル状に形成され、左右一対の支柱59の上端部及び上端部前端側の小口面に当接した状態でこれら左右一対の支柱59に固着されている。また、該梁材61の左右両端部は左右一対の支柱59よりも外側方に突出している。
図1、図6及び図7に示す如く、バッテリ35は、支持体52の左右一対の支柱59の間となる位置にて台板51上に載置されており、該バッテリ35の左右側面は、支柱59と僅かな隙間を介して対向している。また、バッテリ35の背面の下端部は、台板51の立上り部55と僅かな隙間を介して対向している。これにより、バッテリ35とラジエータ34は互いに近接して配備されることとなる。
【0020】
また、該バッテリ35は、バッテリ支持手段63を介して台板51及び支持体52に取付支持されている。図1及び図6に示す如く、バッテリ支持手段63は、バッテリ35の前方であって該バッテリ35の左右方向中央となる位置を上下方向に伸びる固定具64と、該固定具64と左右一対の支柱59との間に配備された連結具65と、該固定具64と台板51の底板部54とを連結する支持片66と、該連結具65を支持すべく左右一対の支柱59に形成された支持部67とを備えている。
【0021】
前記固定具64は、棒材によって形成されており、下端部がフック状に屈曲形成されていると共に、上端部は蝶ナット64aを螺合可能に形成されている。
連結具65は、棒材を屈曲させて形成されており、左右一対の脚部68と該脚部68を連結する連結部69とを備えている。左右一対の脚部68の先端部は、支柱59の支持部67に着脱自在に枢支されている。また、連結部69は、バッテリ35の上面に当接する座部69aを備えると共に、180度屈曲する屈曲部69bを有しており、脚部68の先端を支持部67に支持させると屈曲部69bがバッテリ35の前方に向けて突出する。
【0022】
支持片66は、台板51の底板部54に立設されており、前記固定具64の下端部を引掛け可能な孔66aが開設されている。
バッテリ支持手段63によってバッテリ35を支持するには、固定具64の下端部を支持片66の孔66aに引掛けると共に固定具64の上端部を連結具65の屈曲部69bに挿通させた状態で該連結具65の上方に突出させる。そして、該固定具64の上端部に蝶ナット64aを螺合させるのである。これにより、連結具65の座部69aと台板51の底板部54とによってバッテリ35は狭持され、支持されることとなる。
【0023】
図7に示す如く、リザーブタンク37は、バッテリ35の一側方(本実施の形態においては左側方)に配備されており、ブラケット71を介して左側の支柱59に支持されている。
図6に示す如く、オイルクーラ36は、フィン式のコアを備えており、該コアは、管継ぎ手によって接続されている。これによってオイルクーラ36は、背圧が高くなった場合にも継ぎ手部から油漏れする虞はない。
【0024】
また、オイルクーラ36は、コアの下端部がブラケット72を介して支持体52の中間連結部材60の背面に支持されている。これにより、オイルクーラ36は、バッテリ35よりも上方に位置した状態でフレーム50に支持されることとなり、正面視にてコアが支持体52の中間連結部材60と梁材61の間から露出する。また、ラジエータ34とバッテリ35の間の狭小空間にオイルクーラ36が配備されることにより、エンジンルームRの省スペース化が図られている。また、フレーム50の上端部の高さ位置はラジエータ34の上端部の高さ位置よりも低位とされており、これによってエンジンルームR前部の高さが可及的低位に構成されている。
【0025】
また、図6〜図8に示す如く、フレーム50の梁材61には、ブラケット73を介してホーン38が支持されている。
図5に示す如く、ボンネット40は、エンジンルームRの前壁を形成するフロントグリル41と、エンジンルームRの左右両壁を形成する左右一対のサイドカバー42と、エンジンルームRの天板を形成する上カバー43とを備えている。
【0026】
図5、図7及び図8に示す如く、フロントグリル41は、フレーム50の両側方及び前方と対向する凸円弧状に形成されており、バッテリ35の全面と対向するグリル部41aと、該グリル部41aを包囲する枠部41bとを備えている。
図5に示す如く、サイドカバー42は、フレーム50の後方からエンジン6の側方に亘って配備されており、ラジエータ34とエンジン6の間となる位置に設けられたグリル部42aと、該グリル部42aを包囲するカバー部42bとを備えている。また、カバー部42bの上縁部はフロントグリル41の後端部と滑らかに連接されており、前端部を後端部よりも低位として凸円弧状に湾曲形成されている。また、左右一対のサイドカバー42の後端部は、センターピラー44と対向している。
【0027】
上カバー43は、フロントグリル41及び左右一対のサイドカバー42の上縁部と対向可能な逆さ椀状に形成されている。また、上カバー43の後端部は左右方向に軸心を有するヒンジ機構45を介してセンターピラー44に連結されている。これにより、上カバー43は、下縁部をフロントグリル41及び左右一対のサイドカバー42の上縁部に当接させてラジエータ34、フレーム50及び前記他のエンジン補機を覆う閉じ状態と、下縁部をフロントグリル41及び左右一対のサイドカバー42の上縁部から離間させてラジエータ34、フレーム50及び前記他のエンジン補機を露出させる開き状態との間で揺動自在とされている。
【0028】
また、上カバー43は、閉じ位置とした状態で前端部を後端部よりも低位とする前下り形状(スラントノーズ形状)に形成されている。これにより、運転席12に着座した運転者の車体5前方への視界が確保され、ローダ作業の作業性が向上することとなる。
また、図1に示す如く、上カバー43の前端部には、閉じ状態でフレーム50と対向する位置に、該上カバー43の開閉をサポートするサポート装置46が配備されている。
【0029】
サポート装置46は、上カバー43を閉じ状態に係止するための係止ピン47と、係止ピン47の係止状態を解除したときに上カバー43の前端部にフロントグリル41の上縁部から離間させる左右一対の付勢具48とを有している。
係止ピン47は、上カバー43の左右方向中央部に配備されており、ブラケットを介して上カバー43に取り付けられている。
【0030】
左右一対の付勢具48は、係止ピン47の左右両側に配備されており、ブラケットを介して上カバー43に配備されたばね部材48aと、該ばね部材48aの先端に配備された当接部材48bとから構成されている。
上カバー43を閉じると、サポート装置46の各付勢具48の当接部材48bがフレーム50の支持体52の上端である梁材61の上面に当接する。このとき、上カバー43の下縁部はフロントグリル41の上縁部との間には僅かな隙間を有して対向している。
【0031】
そして、この状態でさらに上カバー43を押し込むと、各付勢具48のばね部材48aが収縮し、該ばね部材48aを収縮させた状態で係止ピン47が係止されることにより、各付勢具48のばね部材48aが弾性復帰力を蓄えた状態で上カバー43が閉じ状態に設定される。このため、係止ピン47の係止状態を解除することにより、各付勢具48のばね部材48aの弾性復帰力が解放され、これによって上カバー43はフロントグリル41から勢いよく離間する。これにより、上カバー43とフロントグリル41の間に前記隙間が生じ、該隙間に手を差し入れることにより、容易に上カバー43を持ち上げることができる。
【0032】
上述の如く上カバー43の係止ピン47を係止すべく、フレーム50には、係止ピン47を係止するロック手段75が設けられている。
ロック手段75は、フレーム50の支持体52に配備された受けブラケット76と、ロック部材77、ロック解除レバー78とを備えている。
受けブラケット76は、支持体52の梁材61の左右方向略中央位置に上方突出状に設けられている。また、受けブラケット76には、上カバー43に配備された係止ピン47を受ける受け溝76aが設けられている。
【0033】
ロック部材77は、受けブラケット76に前後軸34廻りに揺動自在に支持されると共に、下端部が梁材61との間に介装されたばね部材79により引張られている。これによってロック部材77は、前後軸34廻りに矢印A方向に回動するようにばね部材79により付勢されている。
また、ロック部材77は、上端から中途部に向けて傾斜する傾斜案内部(カム面)77aを有し、該傾斜案内部77aの下端側は切欠き状に形成された係止部77bに連接されている。係止部77bは、受けブラケット76の受け溝76aに受けられた係止ピン47に上側から係合して、前記付勢具48の弾性復帰力に伴う係止ピン47の上方移動を規制する。傾斜案内部77aは、上カバー43と共に係止ピン47が受けブラケット76に向けて下降してきたとき、係止ピン47が傾斜案内部77aに接当して下方に押圧がされることにより、ロック部材77をばね部材79に抗して前後軸34廻りに矢印B方向に揺動させて、係止ピン47を受けブラケット76の受け溝76aに案内する。
【0034】
また、ロック部材77には、前記係止部77bとは反対側となる位置に切欠き凹部77cが設けられ、該切欠き凹部77cに受けブラケット76に突設したストッパー76bが挿通されている。これにより、ロック部材77の揺動範囲は、切欠き凹部77c内をストッパー76bが相対移動できる範囲に規制されていて、係止部77bが受け溝76a内の係止ピン47に上側から係合するロック位置(図1に実線で示す)と、係止部77bが受け溝76a内の係止ピン47から左側に外れるロック解除位置(図1に2点鎖線で示す)とにロック部材77は揺動するようになっている。
【0035】
ロック解除レバー78は、金属等の1本の丸棒材により構成され、上端部がロック部材77に揺動可能に枢支されると共に、下端部はフレーム50の台板51に形成された切欠き部51aに挿通されて該フレーム50の下方に位置している(図3参照)。また、該下端部には円形に湾曲したつまみ部80が形成されている。
係止ピン47の係止状態を解除するには、つまみ部80を手で摘んで(又は指を引っ掛けて)ロック解除レバー78を下方に引張る。これにより、ロック部材77がばね部材79の付勢力に抗して揺動し、これによって係止部77bが揺動することとなって係止ピン47の係止状態が解除される。
【0036】
このとき、係止ピン47は前記付勢具48の弾性復帰力によって上方に移動して受け溝76aから離脱することとなり、これによって、ロック解除レバー78の引張りを解除した場合にも係止ピン47はロック部材77の傾斜案内部77a上に位置することとなり、係止解除状態が維持されることとなるのである。これにより、ロック解除レバー78から手を放した状態でもボンネット40を上方に開放することができる。
【0037】
また、図2〜図4及び図7に示す如く、フレーム50には、フロントグリル41を取り付けるグリル取付部82と、左右一対のサイドカバー42の前部を取り付けるサイドカバー取付部83とが設けられている。
グリル取付部82は、支持体52の梁材61の左右両端部にて前方に延設された左右一対のステー84と、フレーム50の台板51の底板部54に形成された左右一対の係合孔85とを備えている。一方、フロントグリル41には、枠部41bの上端部に左右一対の切欠き部41cが形成されると共に、下端部に左右一対の凸部41dが形成されている。
【0038】
かかる構成により、フロントグリル41の左右一対の切欠き部41cが連結具86を介して支持体52の左右一対のステー84に支持されると共に、図6に示す如くフロントグリル41の左右一対の凸部41dがフレーム50の底板部54の左右一対に開設された係合孔85に係合することにより、図8に示す如く、フロントグリル41はフレーム50を介して車体5の前部に取り付けられることとなる。
【0039】
また、サイドカバー取付部83は、支持体52の梁材61の左右両端縁に形成されている。一方、サイドカバー42の前部にはステー42cが延設されており、該ステー42cがボルト等の締結具を介してサイドカバー取付部83に支持されることにより、左右一対のサイドカバー42はフレーム50を介して車体5の前側部に配備されることとなる。
なお、各サイドカバー42は、後端部がボルト等の締結具を介してセンターピラー44にも支持されている。
【0040】
本実施の形態によれば、図9に示す如く、フレーム50にバッテリ35、オイルクーラ36、リザーブタンク37からなるエンジン補機が支持されると共に、ホーン38、ロック手段75及びフロントグリル41も支持されている。したがって、これらエンジン補機35〜37、ホーン38、ロック手段75及びフロントグリル41をフレーム50に集中的に配備するアセンブリ(組立体)が構成され、これらを前車軸フレーム11上に配備する組立作業が簡便なものとなる。これにより、製造ラインでの作業効率が図られるばかりでなく、これらエンジン補機35〜37、ホーン38、ロック手段75及びフロントグリル41の整備点検作業や交換作業も容易に行うことができる。
【0041】
また、フレーム50にロック手段75が配備されると共に、ロック手段75はフロントグリル41よりも僅かに突出する位置に配備されているため、上カバー43の前端部に上記サポート装置46を配備するだけで上カバー43を開閉自在とすることができ、これによって上カバー43の前端部の高さが可及的低く形成されている。したがって、本実施の形態のTLBにおいては、前下り形状とした上カバー43を急勾配に設定して運転席12に着座した運転者の車体5前方への視界が良好に保たれている。また、上カバー43の軽量化も図られる。
【0042】
また、ホーン38、ロック手段75、グリル取付部82のステー84を備えたフレーム50の上端部をラジエータ34の上端部よりも低位に設定していることにより、エンジンルームR前部の高さは後部よりも低く形成されている。これによって、上カバー43の前端部の勾配を特に急勾配に形成し、トラクタ2前部の視界を十分に確保しているのである。
【0043】
また、フレームに前記エンジン補機35〜37及びホーン38を支持させた状態でフロントグリル41及び左右一対のサイドカバー42を取り外すことができ、これによってもこれらエンジン補機35〜37の整備点検作業を容易に行うことが可能となっている。
ところで、図10に示す如く、フライホイール90、プロペラシャフト91を介してミッションケース8に伝達されたエンジン6からの動力は、前輪駆動機構92及び前車軸ケース93を介して前輪9にも伝達される。
【0044】
該前輪駆動機構92は、リアドライブ軸94と、中間連結機構95と、フロントドライブ軸96と、ベベルピニオン軸97とを備えている。
中間連結機構95は、ベアリングを介してハウジング7の下端部に支持されたユニバーサルジョイント99と、該ユニバーサルジョイント99を覆うジョイントカバー100とを備えている。
【0045】
また、また、ベベルピニオン軸97は、前車軸フレーム11に支持されて前車軸ケース93を受ける前車軸受け101に支持されており、該ベベルピニオン軸97の先端部は前車軸ケース93のデファレンシャル機構に接続されている。
該リアドライブ軸94は、後端部がユニバーサルジョイント102を介してミッションケース8に配備された前輪出力軸に接続されると共に、前端部が中間連結機構95のユニバーサルジョイント99を介してフロントドライブ軸96の後端部に接続されている。
【0046】
また、フロントドライブ軸96の前端部は、間隔Sを有してベベルピニオン軸97の後端部と対向しており、これらフロントドライブ軸96の前端部とベベルピニオン軸97の後端部は共にカップリング103にスプライン嵌合している。これによってフロントドライブ軸96がベベルピニオン軸97に接続される。
また、カップリング103には、フロントドライブ軸96の前端部に当接するスプリングピン104と、ベベルピニオン軸97の後端部に当接するスプリングピン104とが配備されている。
【0047】
フロントドライブ軸96は、後端部から前後方向中途部までを第1シャフトカバー106に覆われており、該第1シャフトカバー106の前端部、フロントドライブ軸96の前端部、カップリング103及びベベルピニオン軸97の後端部は第2シャフトカバー107に覆われている。
また、第1シャフトカバー106と第2シャフトカバー107とが重なり合っている位置には、ホースクランプ108が配備されており、これによって両シャフトカバー106、107が互いに軸方向に移動不能に支持される。
【0048】
フロントドライブ軸96を交換する場合には、先ず、ホースクランプ108を取り外す。
次に、図11(a)に示す如く、第2シャフトカバー107を中間連結機構95に向けて軸方向に移動させ、第1シャフトカバー106と重ね合わせると共に、カップリング103を露出させる。
【0049】
次に、図11(b)に示す如く、一対のスプリングピン104を取り外し、カップリング103を中間連結機構95に向けて軸方向に移動させ、フロントドライブ軸96に重ね合わせる。これにより、フロントドライブ軸96の前端部とベベルピニオン軸97の後端部とが互いの間に間隔Sを有した状態で露出する。
この状態でフロントドライブ軸96の後端部と中間連結機構95のユニバーサルジョイント99との連結を解除することにより、フロントドライブ軸96は軸方向の移動自在となる。そして、図11(c)に示す如く、該フロントドライブ軸96をベベルピニオン軸97に近接させる方向に移動させることにより、該フロントドライブ軸96の後端部が中間連結機構95から離脱し、これによってフロントドライブ軸96が取り外されることとなる。
【0050】
即ち、前記間隔Sがフロントドライブ軸96を取り外すためのストロークとなり、これによって、前車軸ケース93、前車軸受け101、中間連結機構95等を取り外すことなくフロントドライブ軸96を取り外すことができ、フロントドライブ軸96の交換を容易に行うことができる。
上記の実施の形態では、TLBとする作業機の前部構造について説明したが、本発明はTLBとした作業機に限らず、トラクタであっても、トラクタ以外の走行車両であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】エンジンルームの正面図である。
【図2】フレームの正面図である。
【図3】フレームの平面図である。
【図4】フレームの左側面図である。
【図5】エンジンルームの左側面図である。
【図6】エンジンルームの前方の左側面図である。
【図7】フロントグリル及びサイドカバーを取り外して示す車体前部の平面図である。
【図8】エンジンルームの平面図である。
【図9】車体前部の構成を分解して示す左側面図である。
【図10】車体の下部の左側面図である。
【図11】フロントドライブ軸の取り外す工程を示す左側面図である。
【図12】作業機の左側面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 作業機
2 トラクタ
3 フロントローダ
4 バックホー
6 エンジン
11 前車軸ケース
34 ラジエータ
35 バッテリ
36 オイルクーラ
40 ボンネット
41 フロントグリル
42 サイドカバー
43 上カバー
47 係止ピン
50 フレーム
51 台板
52 支持体
63 バッテリ支持手段
75 ロック手段
82 グリル取付部
83 サイドカバー取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(6)から前方へ突出した前車軸フレーム(11)上に、エンジン(6)の前方のラジエータ(34)と、該ラジエータ(34)の前方のフレーム(50)とが配備され、該フレーム(50)にバッテリ(35)及び他のエンジン補機(36、37)が支持され、ラジエータ(34)及びフレーム(50)を覆うボンネット(40)がフロントグリル(41)と、左右一対のサイドカバー(42)と、後部が枢支された上カバー(43)とを有して形成されている作業車の前部構造において、
前記フレーム(50)は、前車軸ケース(11)に支持されていてバッテリ(35)を載置する台板(51)と、該台板(51)に立設された支持体(52)とを備え、該台板(51)と支持体(52)との間にバッテリ(35)を固定するバッテリ固定手段(63)が設けられると共に、該支持体(52)の上部に閉じ状態とした上カバー(43)の前部を係止するロック手段(75)が設けられていることを特徴とする作業車の前部構造。
【請求項2】
前記支持体(52)は、台板(51)上のバッテリ(35)に跨って配備され、その後上部にオイルクーラ(36)が支持されていることを特徴とする請求項1に記載の作業車の前部構造。
【請求項3】
前記支持体(52)には、フロントグリル(41)の上部を取り付けるグリル取付部(82)と、左右一対のサイドカバー(42)の前部を取り付けるサイドカバー取付部(83)とが形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の作業車の前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−253741(P2007−253741A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−79264(P2006−79264)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】