説明

作業車

【課題】エンジンの停止を防止して作業の効率化を図った作業車を提供する。
【解決手段】本発明に係る作業車は、電子制御ユニットECUから排気ガス浄化装置警告信号が出力された状態で上部操作装置40aの操作が行われたとき、電子制御ユニットECUは、排気ガス浄化装置警告信号が出力されていない状態で作業装置が作動するときよりもエンジンEの回転数が高くなるようにエンジンEの回転数を制御するとともに、ブーム作動制御部61は、電子制御ユニットECUによりエンジンEの回転数が高くなるのに伴って油圧ポンプPからの作動油の供給量が増加するにも拘わらず、排気ガス浄化装置警告信号が出力されてないときと同等の作動速度で作業装置が作動するように、上部操作装置40aの操作に応じて第1〜第4油圧制御バルブV1〜V4の作動を制御するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に作業装置および排気ガス浄化装置を備えて構成された作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
車体に作業装置を備えて構成された作業車として、穴掘り建柱車や高所作業車等が知られている。例えば高所作業車は、走行可能な車体上に昇降装置(例えば、ブーム装置等)および作業台を備えて構成されており、昇降装置を作動させて作業台を所望の位置へ移動させることにより、作業台に搭乗した作業者が高所作業を行うことができるようになっている。このような高所作業車においては、車体に搭載されたエンジンの駆動力をパワーテイクオフ機構により取り出して油圧ポンプを駆動させ、この油圧ポンプから吐出される作動油の油圧により、昇降装置等に備えられた油圧アクチュエータ(油圧シリンダ等)を作動させて、昇降装置等を作動させるようになっている。
【0003】
ところで、近年、排気ガス規制が強化されており、例えばディーゼルエンジンを搭載した作業車においても、エンジンから排出される排気ガス中のパティキュレート(可燃性微粒子)を捕集することで、大気中へ排出されるパティキュレート量の低減を図った排気ガス浄化装置が設けられている。このような排気ガス浄化装置では、フィルタにより捕集されたパティキュレートが一定量堆積すると、堆積したパティキュレートを燃焼除去して自動的にフィルタの再生を行うようになっている。ところが、走行条件によっては再生が完了しない場合等があり、このときには再生警告灯が点灯し、作業者が手動再生操作を行うことでパティキュレートを燃焼除去することができる。
【特許文献1】特開2005−139944号公報
【特許文献2】特開2004−150417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、警告灯が点灯したのにも拘わらず作業者が昇降装置等の作動を継続し、排気ガス浄化装置のフィルタが目詰まりを起こしてエンジンが燃焼不能(エンスト)の状態になるという不具合が増加しつつある。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、エンジンの停止を防止して作業の効率化を図った作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的達成のため、本発明に係る作業車は、エンジンを有する車体と、前記車体に配設された油圧作動式の作業装置(例えば、実施形態における旋回台20、ブーム30、および作業台40)と、前記エンジンの駆動力を利用して前記作業装置を作動させるための作動油を供給する油圧ポンプと、前記作業装置を作動させるための操作を行う操作手段(例えば、実施形態における上部操作装置40aおよび下部操作装置10a)と、前記油圧ポンプから前記作業装置への作動油の供給を制御する油圧制御バルブと、前記操作手段の操作に応じて前記油圧制御バルブの作動を制御するバルブ制御手段(例えば、実施形態におけるブーム作動制御部61)と、前記エンジンの回転数を制御するエンジン制御手段(例えば、実施形態における電子制御ユニットECU)と、前記エンジンから排出される排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置とを備えて構成される。
【0007】
そして、前記排気ガス浄化装置は、前記エンジンに繋がる排気管の途中に配設されて前記排気ガスに含まれる可燃性微粒子を捕集するフィルタと、前記排気管における前記フィルタよりも上流側の前記排気ガスを所定温度以上に昇温させる排気昇温手段(例えば、実施形態における燃料噴射装置I)と、前記排気昇温手段を作動させるための昇温指示信号(例えば、実施形態における排気ガス浄化装置警告信号)を出力する昇温制御手段(例えば、実施形態における電子制御ユニットECU)とを有し、前記排気昇温手段により前記排気ガスを所定温度以上に昇温させることで、前記フィルタに捕集された前記可燃性微粒子を燃焼除去し前記フィルタを再生可能に構成されており、前記昇温制御手段から前記昇温指示信号が出力されたとき、前記エンジン制御手段は、前記昇温指示信号が出力されていない状態で前記作業装置が作動するときよりも前記エンジンの回転数が高くなるように前記エンジンの回転数を制御するとともに、前記操作手段の操作が行われたとき前記バルブ制御手段は、前記エンジン制御手段により前記エンジンの回転数が高くなるのに伴って前記油圧ポンプからの作動油の供給量が増加するにも拘わらず、前記昇温指示信号が出力されてないときと同等の作動速度で前記作業装置が作動するように、前記操作手段の操作に応じて前記油圧制御バルブの作動を制御するようになっている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、昇温制御手段から昇温指示信号が出力されたとき、操作手段の操作が行われるとバルブ制御手段が、エンジン制御手段によりエンジンの回転数が高くなるに伴って油圧ポンプからの作動油の供給量が増加するにも拘わらず、昇温指示信号が出力されてないときと同等の作動速度で作業装置が作動するように、操作手段の操作に応じて油圧制御バルブの作動を制御するため、作業装置の作動を継続しながらパティキュレート(可燃性微粒子)を自動的に燃焼除去することが可能となり、排気ガス浄化装置でのフィルタの目詰まりによるエンジンの停止を防止して作業の効率化が可能になる。また、作業装置の作動を継続しながらパティキュレートを自動的に燃焼除去することが可能になるため、フィルタの目詰まりによる排気ガス浄化装置の破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。図2は本発明に係る作業車の一例である高所作業車1を示している。この高所作業車1は、走行用車輪11,11,…を備えて運転キャビン12から走行運転が可能なトラック式車両の車体10と、車体10上に設けられた旋回台20と、この旋回台20から上方に延びて設けられた支柱21の上部にフートピン22を介して基端部が支持されたブーム(伸縮ブーム)30と、このブーム30の先端部に取り付けられた作業者搭乗用の作業台40とを有して構成される。
【0010】
旋回台20は、車体10の後部に上下軸まわり360度回動自在に取り付けられている。車体10の内部には旋回モータ(油圧モータ)23が設けられており、この旋回モータ23を回転作動させることにより、図示しないギヤを介して旋回台20を水平旋回動させるこができる。ブーム30は、基端ブーム30a、中間ブーム30b、および先端ブーム30cが入れ子式に構成されており、内部に設けられた伸縮シリンダ(油圧シリンダ)31の伸縮作動により各ブーム30a,30b,30cを相対的に移動させてブーム30全体を軸方向に伸縮動させることができる。また、基端ブーム30aと旋回台20の支柱21との間には起伏シリンダ(油圧シリンダ)24が跨設されており、この起伏シリンダ24を伸縮作動させることによりブーム30全体を上下面内で起伏動させることができる。
【0011】
先端ブーム30cの先端部には、ブームヘッド32が取り付けられており、このブームヘッド32により垂直ポスト33の下端部が枢支されている。この垂直ポスト33は、ブーム30内に設けられた図示しないレベリング装置により、ブーム30の起伏角度によらず常時垂直姿勢が保持される構成となっている。
【0012】
作業台40は箱形状を有しており、外部に突出して設けられた作業台保持ブラケット41を介して垂直ポスト33の上端部に回動自在に取り付けられている。作業台保持ブラケット41の内部には首振りモータ(油圧モータ)42が設けられており、この首振りモータを回転作動させることにより、作業台40全体を垂直ポスト33まわりに首振り動(水平旋回動)させることができる。ここで、垂直ポスト33は上述のように常時垂直姿勢が保たれるため、結果として作業台40の底面はブーム30の起伏角度によらず常時水平に保持される。
【0013】
作業台40には上部操作装置40aが設けられており、この上部操作装置40aには、ブーム30の旋回、起伏、伸縮操作を行うためのブーム操作レバー(図示せず)および、作業台40の首振り操作を行うための作業台操作レバー(図示せず)が設けられている。そして、作業台40に搭乗した作業者は、上部操作装置40aの各操作レバーの操作により作業台40を移動させて、任意の高所位置で作業を行うことが可能である。なお、旋回台20にも、作業台40に設けられた上部操作装置40aとほぼ同様の機能を有する下部操作装置10aが設けられている。
【0014】
また、車体10の前後左右4箇所には、下方に張り出して(伸長作動して)車体10を安定的に支持するジャッキ50,50,…が設けられている。各ジャッキ50は、車体10の側方に下方に延びて設けられたアウタジャッキ(シリンダチューブ)51と、このアウタジャッキ51内に収容されて上下方向に移動自在に設けられたインナジャッキ(ピストンロッド)52と、このインナジャッキ52の下端部に取り付けられた設置板53とを有して構成される。アウタジャッキ51とインナジャッキ52とは油圧シリンダ(これをジャッキシリンダ54と称する)を構成しており、当該ジャッキシリンダ54を伸長作動させることでジャッキ50の張り出し作動を行うことができ、ジャッキシリンダ54を収縮作動させることでジャッキ50の格納作動を行うことができるようになっている。なお、車体10の後部にはジャッキ操作装置57が設けられており、ジャッキ操作装置57の操作に応じて、ジャッキ50が張り出し若しくは格納作動するようになっている。
【0015】
ところで、車体10に備えられたディーゼルエンジン(以下、エンジンと称する)Eの動力は、図1に示すように、トランスミッションTMにより変速され、図示しないプロペラシャフトを介して車輪11に伝達される。トランスミッションTMには、パワーテイクオフ機構PTOが組み込まれており、運転キャビン12内にあるパワーテイクオフ切換レバー15を手動操作(オン操作)して、パワーテイクオフ機構PTOの機構部を作動させることにより、エンジンEによる駆動対象を車輪11から油圧ポンプPに切り換えることができる。エンジンEからパワーテイクオフ機構PTOを介して駆動される油圧ポンプPは、旋回台20、ブーム30、および作業台40の各アクチュエータ(旋回モータ23、起伏シリンダ24、伸縮シリンダ31、および首振りモータ42)に作動油を供給する。なお、ジャッキ50を構成するジャッキシリンダ54にも油圧ポンプPからの作動油が供給される。
【0016】
エンジンEの排気管19の後部には、図3に示すように、排気ガス浄化装置70が設けられている。排気ガス浄化装置70は、中央が排気管19より大径に形成された筒型のケーシング71を有しており、ケーシング71は排気管19と連通され、エンジンEの排気ガスがケーシング71内を通過するようになっている。ケーシング71内にはパティキュレートフィルタ71aが内蔵されており、エンジンEから排出された排気ガスがケーシング71内を通過するとき、排気ガスに含まれるパティキュレート(可燃性微粒子)がパティキュレートフィルタ71aで捕集されるようになっている。
【0017】
このような排気ガス浄化装置70は、後述する電子制御ユニットECUにより所定時間毎または所定走行距離毎に自動再生するように制御されて、パティキュレートフィルタ71aに堆積したパティキュレートを燃焼除去し、パティキュレートフィルタ71aを再生する。ところが、長時間の高所作業やアイドリング等の走行条件によっては、パティキュレートフィルタ71aの自動再生が完了せず、パティキュレートフィルタ71aにより過度のパティキュレートが捕集される場合がある。この場合には、電子制御ユニットECUが所定量以上のパティキュレートが捕集されたことを検出して、運転キャビン12内に設けられた再生警告灯74を点灯させる。なお、このようなパティキュレートフィルタ71aを備え、自動再生もしくは後述する手動再生を行うことでフィルタ再生する排気ガス浄化装置は周知なものである。
【0018】
パティキュレートフィルタ71aの上下流側には、上流側の排気ガスの圧力を検出する上流側圧力センサ72と、下流側の排気ガスの圧力を検出する下流側圧力センサ73とが設けられており、これらの圧力センサ72,73は電子制御ユニットECUと電気的に接続されている。電子制御ユニットECUは、エンジンEの燃料噴射装置I等、エンジン各部を制御するもので、例えばマイクロコンピュータを中心に構成されている。電子制御ユニットECUには、エンジン各部に設けられた各種センサからの信号が入力されており、この中には、上述した圧力センサ73,74からの信号も含まれる。
【0019】
このような電子制御ユニットECUは、各圧力センサ73,74からの信号を入力してパティキュレートフィルタ71aの上流側圧力と下流側圧力とを検出し、この上流側と下流側との圧力差からパティキュレートフィルタ71aでのパティキュレートの捕集量を算出する。そして、予め設定した所定量以上の(過度の)パティキュレートが捕集された場合には、フィルタ目詰まりを解消するために、捕集されたパティキュレートを燃焼除去してパティキュレートフィルタ71aを再生する必要がある。このため、電子制御ユニットECUは、所定量以上のパティキュレートの堆積が生じたことを検出した場合、再生警告灯74に排気ガスの昇温指示信号である排気ガス浄化装置警告信号を出力する。
【0020】
再生警告灯74は、電子制御ユニットECUから排気ガス浄化装置警告信号が入力されると点灯し、パティキュレートを燃焼除去してパティキュレートフィルタ71aを再生する必要がある旨を作業者に報知する。これにより、運転キャビン12内に設けられた手動再生操作スイッチ75の操作が促される。そして、手動再生操作スイッチ75がオン操作されると、パティキュレートフィルタ71aに堆積したパティキュレートが燃焼除去されて、パティキュレートフィルタ71aが再生されパティキュレートの捕集能力が回復することとなる。これにより、エンジンEの出力低下によりエンジン停止(エンスト)が発生するのを防止できる。なおこのように、電子制御ユニットECUが、パティキュレートフィルタ上下流の圧力差から、パティキュレートが所定量以上堆積したか否かを検出する手法は周知のものである。
【0021】
また、パティキュレートフィルタ71aの再生は、パティキュレートフィルタ71aよりも上流側の排気ガスをパティキュレートの燃焼可能温度以上に昇温し、捕集されたパティキュレートを燃焼除去することにより行われる。本実施形態においては、排気ガスを昇温する排気昇温手段としてエンジンEの各気筒に燃料を噴射する燃料噴射装置Iを採用している。燃料噴射装置Iは、エンジンEの各気筒毎に装備される複数のインジェクタ(図示せず)から構成されており、各インジェクタの電磁弁が電子制御ユニットECUから出力される燃料噴射信号により開弁制御されて、燃料の噴射タイミングおよび噴射量が適切に制御されるようになっている。
【0022】
そして、電子制御ユニットECUは、所定時間毎または所定走行距離毎に、通常の燃焼モードから昇温モードへの切り替えを行い、昇温モードに切り替わったときには、通常のアイドリング時(例えば450rpm程度)およびパワーテイクオフ機構PTO作動時(例えば1000rpm程度)よりエンジン回転数を上げる(例えば1200rpm程度にする)制御を実行するべく、圧縮上死点付近で行われていたメイン噴射の一回当たりの噴射量を増やすとともに、当該メイン噴射直後の燃焼可能なタイミングでアフタ噴射を追加するような噴射パターンの燃料噴射信号を出力する。これにより、パティキュレートフィルタ71aよりも上流側の排気ガスが昇温され、捕集されたパティキュレートが燃焼除去される。また、電子制御ユニットECUは、手動再生操作スイッチ75がオン操作されて排気ガス浄化装置燃焼信号が入力されたときにも、同様の燃料噴射信号を出力するようになっている。
【0023】
前述したように、エンジンEからパワーテイクオフ機構PTOを介して駆動される油圧ポンプPは、図1に示すように、第1油圧制御バルブV1を介して旋回モータ23に作動油を供給し、第2油圧制御バルブV2を介して起伏シリンダ24に作動油を供給し、第3油圧制御バルブV3を介して伸縮シリンダ31に作動油を供給し、第4油圧制御バルブV4を介して首振りモータ42に作動油を供給する。これら第1〜第4油圧制御バルブV1〜V4は、油圧ポンプPから各アクチュエータへの作動油の供給を制御する電磁弁であり、車体10内に設置されたコントローラ60のブーム作動制御部61と電気的に接続される。
【0024】
ブーム作動制御部61は、上部操作装置40aおよび下部操作装置10aと電気的に接続されており、各操作装置の操作レバーの傾動操作に応じて出力された操作信号が入力されると、入力された操作信号に基づき、例えばデータマップとして予め登録された図4の実線で示すような操作レバーの操作量とバルブ開度との関係を利用して、第1〜第4油圧制御バルブV1〜V4にそれぞれ駆動信号を出力しバルブ開度を制御するようになっている。また、ブーム作動制御部61には、前述したパワーテイクオフ切換レバー15や、電子制御ユニットECUが電気的に接続されている。
【0025】
そして、ブーム作動制御部61は、電子制御ユニットECUから出力された排気ガス浄化装置警告信号が入力され、かつ、パワーテイクオフ切換レバー15のオン操作信号が入力されると、通常の燃焼モードから昇温モードへ切り替えるように電子制御ユニットECUへ排気ガス浄化装置燃焼信号を出力する。これにより、昇温モードに切り替わって、通常のパワーテイクオフ機構PTO作動時よりもエンジンEの回転数が上昇し、エンジン回転数の上昇とともに油圧ポンプPからの作動油の供給量も増加することとなる。またこの状態で、上部操作装置40aもしくは下部操作装置10aから操作信号が入力されると、ブーム作動制御部61は、入力された操作信号に基づき、例えば図4の破線で示すような操作レバーの操作量とバルブ開度との関係を利用して、第1〜第4油圧制御バルブV1〜V4にそれぞれ駆動信号を出力しバルブ開度を制御する。またこのとき、ブーム作動制御部61は、表示灯76に点灯信号を出力して点灯させ、パティキュレートを燃焼除去しながら各作業装置が作動している旨を報知する。
【0026】
ここで、図4の破線で示す操作レバーの操作量とバルブ開度との関係は、昇温モードに切り替わって油圧ポンプPからの作動油の供給量が増加したときの関係で、図4の実線で示す通常のパワーテイクオフ機構PTO作動時と比較して、いずれの場合でも同等の作動速度で各アクチュエータが作動するようにバルブ開度が絞られている。すなわち、ブーム作動制御部61は、昇温モードに切り替わって油圧ポンプPからの作動油の供給量が増加するにも拘わらず、排気ガス浄化装置警告信号や排気ガス浄化装置燃焼信号が出力されてない通常のパワーテイクオフ機構PTO作動時と同等の作動速度で、旋回台20、ブーム30、および作業台40が作動するように、各操作レバーの操作に応じて第1〜第4油圧制御バルブV1〜V4の作動を制御する。
【0027】
以上のように構成される高所作業車1において、高所作業を行う場合には、まず、車体10を安定支持するため、パワーテイクオフ切換レバー15をオン操作するとともに、ジャッキ操作装置57の操作レバーを操作して各ジャッキ50を接地状態まで張り出し作動させる。このとき、パワーテイクオフ切換レバー15のオン操作信号がブーム作動制御部61に入力される。
【0028】
続いて、作業台40に搭乗した作業者は、上部操作装置40a(もしくは下部操作装置10a)の各操作レバーの操作により作業台40を移動させて、任意の高所位置で作業を行う。このとき、上部操作装置40a(もしくは下部操作装置10a)の操作レバーの傾動操作に応じた操作信号がブーム作動制御部61に入力され、ブーム作動制御部61は、入力された操作信号に基づき、第1〜第4油圧制御バルブV1〜V4にそれぞれ駆動信号を出力しバルブ開度を制御する。そうすると、エンジンEによりパワーテイクオフ機構PTOを介して駆動される油圧ポンプPから、第1〜第4油圧制御バルブV1〜V4を介して各アクチュエータ(旋回モータ23、起伏シリンダ24、伸縮シリンダ31、および首振りモータ42)に作動油が供給され、上部操作装置40aの操作に応じて旋回台20、ブーム30、および作業台40が作動することになる。
【0029】
高所作業を行う際、排気ガス浄化装置70のパティキュレートフィルタ71aに所定量以上のパティキュレートが堆積したことを電子制御ユニットECUが検出した場合には、電子制御ユニットECUから再生警告灯74に排気ガス浄化装置警告信号が出力され、再生警告灯74が点灯して手動再生操作スイッチ75の操作が促される。このとき、作業者が再生警告灯74の点灯に気づいていた場合には、作業者はパティキュレートフィルタ71aの手動再生を行うべく、手動再生操作スイッチ75をオン操作する。そうすると、手動再生操作スイッチ75から電子制御ユニットECUに排気ガス浄化装置燃焼信号が入力されて昇温モードとなり、パティキュレートフィルタ71aに堆積したパティキュレートが燃焼除去され、パティキュレートフィルタ71aが再生されたことを電子制御ユニットECUが検出した場合には、排気ガス浄化装置警告信号の出力が解除され、再生警告灯74も消灯される。
【0030】
一方、作業者が再生警告灯74の点灯に気づかなかった場合には、作業者はパティキュレートフィルタ71aの手動再生を行うことなく、上部操作装置40a(もしくは下部操作装置10a)の操作を行おうとする。この場合、ブーム作動制御部61は、パワーテイクオフ切換レバー15のオン操作信号に加え、電子制御ユニットECUから出力された排気ガス浄化装置警告信号が入力されるため、通常の燃焼モードから昇温モードへ切り替えるように電子制御ユニットECUへ排気ガス浄化装置燃焼信号を出力する。これにより、昇温モードに切り替わってパティキュレートフィルタ71aに堆積したパティキュレートが燃焼除去されるが、この際、通常のパワーテイクオフ機構PTO作動時よりもエンジンEの回転数が上昇し、エンジン回転数の上昇とともに油圧ポンプPからの作動油の供給量も増加することとなる。
【0031】
そしてこの状態で、上部操作装置40a(もしくは下部操作装置10a)からブーム作動制御部61に操作信号が入力されると、ブーム作動制御部61は、前述したように、昇温モードに切り替わって油圧ポンプPからの作動油の供給量が増加するにも拘わらず、排気ガス浄化装置警告信号や排気ガス浄化装置燃焼信号が出力されてない通常のパワーテイクオフ機構PTO作動時と同等の作動速度で、旋回台20、ブーム30、および作業台40が作動するように、各操作レバーの操作に応じて第1〜第4油圧制御バルブV1〜V4の作動を制御する。またこのとき、ブーム作動制御部61は、表示灯76に点灯信号を出力して点灯させ、パティキュレートを燃焼除去しながら各作業装置が作動している旨を報知する。
【0032】
そのため、以上のような構成の高所作業車1によれば、作業装置(旋回台20、ブーム30、および作業台40)の作動を継続しながらパティキュレート(可燃性微粒子)を自動的に燃焼除去することが可能となり、排気ガス浄化装置70でのパティキュレートフィルタ71aの目詰まりによるエンジンEの停止を防止して作業の効率化が可能になる。また、作業装置の作動を継続しながらパティキュレートを自動的に燃焼除去することが可能になるため、フィルタ71aの目詰まりによる排気ガス浄化装置70の破損を防止することができる。
【0033】
なお、上述の実施形態において、コントローラ60(ブーム作動制御部61)は、昇温モードのときに、通常のパワーテイクオフ機構PTO作動時と同等の作動速度で、旋回台20、ブーム30、および作業台40が作動するように、各操作レバーの操作に応じて第1〜第4油圧制御バルブV1〜V4の作動を制御しているが、これに限られるものではなく、例えばジャッキ50が自動張り出しジャッキであって、ジャッキシリンダ54への作動油の供給を制御するバルブが電磁弁式のバルブである場合には、昇温モードのときに、通常のパワーテイクオフ機構PTO作動時と同等の作動速度でジャッキ50が作動するように、バルブの作動を制御するようにしてもよい。
【0034】
また、上述の実施形態において、本発明に係る作業車として高所作業車1を例に説明したが、これに限られるものではなく、例えば、穴掘り建柱車や軌陸車等であってもよく、車体に油圧作動式の作業装置および排気ガス浄化装置を備えて構成された作業車であれば、本発明を適用可能である。さらに、パワーテイクオフ機構PTOを備えた高所作業車1に限らず、パワーテイクオフ機構を用いずにエンジンにより油圧ポンプを直接駆動する自走式高所作業車であってもよく、油圧ポンプを直接駆動するエンジンユニットを備えた作業車であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る作業車の一例である高所作業車の制御系を示すブロック図である。
【図2】高所作業車の側面図である。
【図3】排気ガス浄化装置の概略構成図である。
【図4】操作レバーの操作量とバルブ開度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0036】
1 高所作業車(作業車)
10 車体
10a 下部操作装置(操作手段)
20 旋回台(作業装置)
30 ブーム(作業装置)
40 作業台(作業装置)
40a 上部操作装置(操作手段)
60 コントローラ
61 ブーム作動制御部(バルブ制御手段)
70 排気ガス浄化装置
71a パティキュレートフィルタ
E エンジン
I 燃料噴射装置(排気昇温手段)
P 油圧ポンプ
V1 第1油圧制御バルブ
V2 第2油圧制御バルブ
V3 第3油圧制御バルブ
V4 第4油圧制御バルブ
ECU 電子制御ユニット(エンジン制御手段,昇温制御手段)
PTO パワーテイクオフ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを有する車体と、
前記車体に配設された油圧作動式の作業装置と、
前記エンジンの駆動力を利用して前記作業装置を作動させるための作動油を供給する油圧ポンプと、
前記作業装置を作動させるための操作を行う操作手段と、
前記油圧ポンプから前記作業装置への作動油の供給を制御する油圧制御バルブと、
前記操作手段の操作に応じて前記油圧制御バルブの作動を制御するバルブ制御手段と、
前記エンジンの回転数を制御するエンジン制御手段と、
前記エンジンから排出される排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置とを備え、
前記排気ガス浄化装置は、前記エンジンに繋がる排気管の途中に配設されて前記排気ガスに含まれる可燃性微粒子を捕集するフィルタと、前記排気管における前記フィルタよりも上流側の前記排気ガスを所定温度以上に昇温させる排気昇温手段と、前記排気昇温手段を作動させるための昇温指示信号を出力する昇温制御手段とを有し、前記排気昇温手段により前記排気ガスを所定温度以上に昇温させることで、前記フィルタに捕集された前記可燃性微粒子を燃焼除去し前記フィルタを再生可能に構成されており、
前記昇温制御手段から前記昇温指示信号が出力されたとき、前記エンジン制御手段は、前記昇温指示信号が出力されていない状態で前記作業装置が作動するときよりも前記エンジンの回転数が高くなるように前記エンジンの回転数を制御するとともに、前記操作手段の操作が行われたとき前記バルブ制御手段は、前記エンジン制御手段により前記エンジンの回転数が高くなるのに伴って前記油圧ポンプからの作動油の供給量が増加するにも拘わらず、前記昇温指示信号が出力されてないときと同等の作動速度で前記作業装置が作動するように、前記操作手段の操作に応じて前記油圧制御バルブの作動を制御することを特徴とする作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−108833(P2009−108833A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284498(P2007−284498)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000116644)株式会社アイチコーポレーション (168)
【Fターム(参考)】