信号処理装置、及びレーダ装置
【課題】 レーダ軸のずれを精度よく検出する。
【解決手段】
車両に搭載されるとともに静止物標に反射されたレーダ信号を受信するレーダ送受信機の信号処理装置は、前記静止物標における前記レーダ信号の反射点を前記受信したレーダ信号に基づき検出する物標検出手段と、前記車両に搭載された画像認識装置が前記静止物標の近傍に他の物標が存在しないことを前記静止物標を含む撮像画像に基づき検出したときに、前記反射点の分布方向と基準方向との差が基準値以上か否かを検出する軸ずれ検出手段とを有するので、軸ずれ検出に適した状況で軸ずれ検出を行い、適さない状況での軸ずれ検出を回避できる。よって、軸ずれを精度よく検出できる。
【解決手段】
車両に搭載されるとともに静止物標に反射されたレーダ信号を受信するレーダ送受信機の信号処理装置は、前記静止物標における前記レーダ信号の反射点を前記受信したレーダ信号に基づき検出する物標検出手段と、前記車両に搭載された画像認識装置が前記静止物標の近傍に他の物標が存在しないことを前記静止物標を含む撮像画像に基づき検出したときに、前記反射点の分布方向と基準方向との差が基準値以上か否かを検出する軸ずれ検出手段とを有するので、軸ずれ検出に適した状況で軸ずれ検出を行い、適さない状況での軸ずれ検出を回避できる。よって、軸ずれを精度よく検出できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるレーダ装置の軸ずれを検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置により車両周囲の物標を検出し、車両の動作を自動制御する車両制御システムが知られている。レーダ装置は、車両周囲をレーダ信号により走査して、物標の相対距離、相対速度、及び方位角を検出する。ここで物標は、先行車両や対向車両、路側の設置物などである。また方位角は、自車両の進行方向正面(0度)に対する方位角である。車両制御システムは、物標の相対速度、相対距離、方位角に基づいて、先行車両に対する追従走行制御や、他の車両や障害物に対する衝突回避・対応制御を行う。
【0003】
レーダ装置は、レーダ軸に対する反射信号の到来角度を検出する。ここでレーダ軸は、走査領域の中心であり、たとえば、アンテナの回動範囲の中心や、送信信号の利得が最大となるアンテナパターンの中心である。レーダ装置は、レーダ軸が自車両の進行方向正面に一致するように取り付けられる。よって、レーダ装置は、自車両の進行方向正面に対する反射信号の到来角度を物標の方位角として検出する。
【0004】
ところで、車両の走行中には、路面からの振動や予期せぬ軽衝突による衝撃がレーダ装置に加わる場合がある。すると、レーダ装置の取付け位置や角度が変化して、レーダ軸が自車両の進行方向正面からずれること(以下、軸ずれという)がある。
【0005】
軸ずれが発生すると、レーダ装置は物標の方位角を正確に検出できなくなる。このとき検出された方位角に基づいて車両制御システムが車両制御を行うと、安全性が損なわれるおそれがある。かかる事態を回避するためには、軸ずれが発生したときにこれを迅速に検出することが求められる。よって、レーダ装置において定期的に軸ずれ検出を行う方法が提案されている。特許文献1には、軸ずれ検出を行うレーダ装置の例が記載されている。
【0006】
従来の軸ずれ検出方法のひとつによれば、レーダ装置は自車両の進行方向に延在する路側の静止物標、たとえばガードレールを利用して軸ずれを検出する。具体的には、レーダ装置は、自車両が直線道路を走行しているときに、ガードレールにおける反射点を検出し、その分布方向に基づきガードレールの延在方向を検出する。ここで一般的に、直線道路におけるガードレールの延在方向は、自車両の進行方向である方位角0度方向、つまりレーダ軸方向と一致している。よって、軸ずれが発生していない状態で検出した延在方向は、方位角0度方向と一致する。このことからレーダ装置は、検出したガードレールの延在方向が方位角0度方向からずれているときに、軸ずれを検出する。そして、このとき車両制御システムは車両制御を一時停止し、レーダ装置が検出した誤った方位角に基づく車両制御を回避する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願2004−198159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ガードレールの近傍に建築物や停車中の車両といった静止物標が存在する場合がある。そして、これら近傍の静止物標から得られる受信信号レベルは、一般的にガードレールにおける反射点から得られる受信信号レベルより大きい。すると、レーダ装置が、ガードレール近傍の静止物標からの受信信号を、ガードレールからの受信信号として誤検出する場合がある。
【0009】
かかる場合に上記の方法を実行すれば、レーダ装置がガードレールの延在方向を誤って検出することになる。このため、軸ずれの検出精度が低下する。すると、車両制御システムが不適切な車両制御を行うおそれがある。たとえば、レーダ装置が物標の方位角を正確に検出しているにもかかわらず軸ずれを検出し、車両制御システムが車両制御を停止する。あるいは反対に、レーダ装置が物標の方位角を誤って検出しているにもかかわらず軸ずれを検出せず、車両制御システムが誤った方位角に基づく車両制御を行ったりする。
【0010】
そこで、上記に鑑みてなされた本発明の目的は、軸ずれを精度よく検出できるレーダ装置とその信号処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明によれば、車両に搭載されるとともに静止物標に反射されたレーダ信号を受信するレーダ送受信機の信号処理装置であって、前記静止物標における前記レーダ信号の反射点を前記受信したレーダ信号に基づき検出する物標検出手段と、前記車両に搭載された画像認識装置が前記静止物標の近傍に他の物標が存在しないことを前記静止物標を含む撮像画像に基づき検出したときに、前記反射点の分布方向と基準方向との差分が基準値以上か否かを検出する軸ずれ検出手段とを有する信号処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、レーダ装置における軸ずれを精度よく検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態におけるレーダ装置の使用状況を説明する図である。
【図2】レーダ装置10を中心とする車両制御システムのブロック図である。
【図3】送受信信号とビート信号の関係を説明する図である。
【図4】車両制御システムの基本的な動作手順を説明するフローチャート図である。
【図5】軸ずれ検出を行う際の状況について説明する図である。
【図6】図5で示した状況に対応する撮像画像を模式的に示す図である。
【図7】静止物標の延在方向を画像認識する方法について説明する図である。
【図8】画像認識装置の軸ずれ検出方法を説明する図である。
【図9】軸ずれ検出手順を説明するためのフローチャート図である。
【図10】変形例における軸ずれ検出手順を説明するフローチャート図である。
【図11】さらに好適な態様における軸ずれ検出手順を説明するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0015】
図1は、本実施形態におけるレーダ装置の使用状況を説明する図である。ここでは、車両1周囲の状況に応じて車両1の動作を自動制御する車両制御システムが示される。この車両制御システムは、車両1周囲の物標を検出するレーダ装置10、物標や路面のセンターラインを画像認識する画像認識装置50、及び車両1の各種アクチュエータを制御する車両制御装置100とを有する。この車両制御システムは、先行車両への追従走行制御、他の車両や障害物との衝突回避・対応制御や、車両1の適切な走行車線を維持する車線維持制御を行う。
【0016】
レーダ装置10は、レーダ軸を中心とする走査領域をレーダ信号により走査する。すなわち、レーダ軸はレーダ装置10の走査領域の中心である。レーダ装置10は、車両1の前部バンパー内部やフロントグリル内部に搭載される。レーダ装置10は、そのレーダ軸が車両1の進行方向正面(方位角0度)方向に一致するようにして車両1に取り付けられる。よってレーダ装置10の走査領域は、方位角0度を中心とする角度範囲に対応する。この角度範囲は、たとえば±5〜10度程度の角度範囲である。
【0017】
レーダ装置10は、走査領域内の物標を検出する。具体的には、レーダ装置10は物標の相対距離や相対速度、方位角といった物標情報を検出し、物標情報を車両制御装置100に出力する。ここで、物標はたとえば、先行車両や他の車両といった移動物標や、路側の設置物などの静止物標である。また物標の方位角は、方位角0度を基準とする方位角である。
【0018】
画像認識装置50は、車両1のフロントガラス上部近傍の車室内に搭載される。画像認識装置50は車両1の進行方向における撮像領域を撮像し、撮像画像データに基づき被写体を画像認識する。被写体は、たとえば走行路面のセンターラインである。画像認識装置50は、画像認識したセンターラインの位置を車両制御装置100に出力する。センターラインの位置は、たとえば車両1の進行方向と直角方向(以下、横方向という)における車両1の中心からの距離である。
【0019】
車両制御装置100は、レーダ装置10から入力される物標情報に基づき、追従走行制御や衝突回避・対応制御を行う。追従走行制御では、車両制御装置100は先行車両に対し一定の車間距離を保つように車両1の走行速度を制御する。また、衝突回避・対応制御では、車両制御装置100は衝突を回避するために車両1の進路や走行速度を制御したり、乗員保護のための安全装置を駆動したりする。また、車両制御装置100は、画像認識装置50から入力されるセンターラインの位置に基づき車線維持制御を行う。車線維持制御では、適正な車線内での走行を維持するように車両1の進路を調整する。
【0020】
さらに本実施形態では、レーダ装置10は自らの軸ずれを検出する。レーダ装置10は、軸ずれ検出を行う際に、画像認識装置50による画像認識結果を用いる。画像認識装置50は、その撮像領域がレーダ装置10による走査領域と重複するように設けられる。よって、画像認識装置50は、レーダ装置10が検出する物標を画像認識してその画像認識結果をレーダ装置10に提供する。軸ずれ検出方法については、後に詳述する。
【0021】
レーダ装置10は、軸ずれを検出すると車両制御装置100に通知する。軸ずれが発生すると、物標の方位角が誤って検出される。よってこのとき、車両制御装置100はレーダ装置10からの物標情報に基づく車両1の制御を中止する。このようにして車両制御装置100は、不適切な車両制御を回避する。よって、車両制御システムとして適切な制御が確保される。
【0022】
図2は、レーダ装置10を中心とする車両制御システムのブロック図である。まず、レーダ装置10の構成について説明する。
【0023】
レーダ装置10は、たとえばFM−CW(Frequency Modulated-Continuous Wave)方式のレーダ装置である。レーダ送受信機12は、周波数変調した連続波(電磁波)をレーダ信号として生成し、これをアンテナ11から送出する。ここでレーダ信号の周波数は、76〜77GHz帯のミリ波帯に含まれる。これは、車載用のレーダ装置が電波法上使用可能な電波帯域がかかる帯域に制限されていることによる。
【0024】
送信されるレーダ信号(送信信号)の周波数は、たとえば三角波状のベースバンド信号に基づいて、三角波の上昇区間で漸増し、三角波の下降区間で漸減する。よって、ベースバンド信号の周期に応じて周波数の漸増期間と漸減期間が反復される。あるいは、レーダ送受信機12が任意の一定周期ごとに周波数変調を休止する期間を有するようにしてもよい。かかる期間では、送信信号の周波数が一定に保たれる。
【0025】
レーダ送受信機12は、送信信号の指向方向を順次変化させることにより、走査領域を走査する。走査の方式は、たとえば機械走査方式や電子走査方式である。レーダ送受信機12は、走査方式に応じた構成を有する。機械走査方式の場合、アンテナ11が往復回動可能に構成される。レーダ送受信機12は、アンテナ11を回動させることにより送信信号の指向方向を変化させる。この場合、レーダ軸は、アンテナ11の回動角度範囲の中心に対応する。また、電子走査方式の場合、アンテナ11には複数のアンテナ素子が所定間隔で配置される。レーダ送受信機12は、アンテナ11を回動させることなく、アンテナ素子における送信位相差(あるいは受信位相差)を制御して、送信信号(あるいは受信信号)の指向方向を変化させる。この場合、レーダ軸は、送信信号の利得が最大となるアンテナパターンの中心に対応する。
【0026】
レーダ送受信機12は、物標に反射されたレーダ信号をアンテナ11により受信すると、受信したレーダ信号(受信信号)と送信信号とを混合して、ビート信号を生成する。そして、レーダ送受信機12は、ビート信号をA/D変換して信号処理装置14に出力する。ここでビート信号の周波数は、周波数変調された送信信号と物標により反射された受信信号の周波数差に対応する。送受信信号の周波数差はたとえば数百KHzである。送受信信号の周波数差は、受信信号の周波数が偏移することにより発生する。これは、受信信号の周波数は、物標の相対速度によるドップラ周波数と相対距離による時間的遅延の影響を受けることによる。
【0027】
ここで、送受信信号とビート信号の関係を図3に示す。図3(A)には、送受信信号それぞれの時間(横軸)に対する周波数(縦軸)の変化が示される。送信信号の周波数は、実線で示すように、周波数漸増期間UPで漸増し、周波数漸減期間DNで漸減する。これに対し、受信信号の周波数は、破線で示すように周波数偏移を受ける。ここでは、目標物体との相対距離による時間的遅延ΔTと、相対速度に応じたドップラシフトΔDとが示される。その結果、送信信号の周波数漸増期間UPでは送受信信号に周波数差fuが生じ、送信信号の周波数漸減期間DNでは送受信信号に周波数差fdが生じる。
【0028】
図3(B)には、ビート信号の時間(横軸)に対する周波数(縦軸)の変化が示される。ビート信号の周波数は、上記した送受信信号の周波数差fu、fdに対応する。ビート信号の周波数fu、fdは、次式により目標物体の相対速度V、対距離Rと対応する。ここで、Cは光速、fmはベースバンド信号における三角波の周波数、f0は送信信号の中心周波数、ΔFは周波数偏移幅である。
【0029】
R=C・(fu+fd)/(8・ΔF・fm) ・・・式(1)
V=C・(fd−fu)/(4・f0) ・・・式(2)
図2に説明を戻す。信号処理装置14では、送受信制御手段16が、レーダ信号の送信動作を制御する制御信号をレーダ送受信機12に出力する。制御信号は、レーダ信号の指向方向とこれを変化させるタイミングとを規定する。たとえばレーダ送受信機12が機械走査方式の場合には、制御信号はアンテナ11の回動角度と回動タイミングを規定する。また、レーダ送受信機12が電子走査方式の場合には、制御信号は、アンテナ素子の送信位相差(あるいは受信位相差)とこれを変化させるタイミングを規定する。
【0030】
また、FFT(Fast Fourier Transform: 高速フーリエ変換)手段18は、ビート信号をFFT処理してその周波数スペクトルを検出する。ビート信号にはもともと、物標の反射により得られたものと、路面の乱反射やマルチパス現象により得られたものが含まれる。しかし、ビート信号の周波数は、上述したように反射物の相対距離と相対速度に対応する。よって、FFT手段18は、FFT処理によってビート信号を相対距離と相対速度に対応した周波数スペクトルに分離する。
【0031】
ピーク信号検出手段20は、ビート信号の周波数スペクトルからピーク信号を検出する。物標の反射により得られたビート信号は、路面の乱反射やマルチパス現象により得られたビート信号よりレベルが大きい。これは、物標がある程度の反射断面積を有することによる。このことからピーク信号検出手段20は、周波数スペクトルでピーク(極大値)を形成するピーク信号を検出する。すなわちピーク信号検出手段20は、物標の反射により得られたビート信号を検出する。
【0032】
ピーク信号検出手段20は、このようなピーク信号を周波数漸増期間、周波数漸減期間ごとに検出する。すると、周波数漸増期間におけるピーク信号は上述した周波数fuを有し、周波数漸減期間におけるピーク信号は上述した周波数fdを有する。
【0033】
物標検出手段22は、物標の相対距離、相対速度、および方位角といった物標情報を検出する。まず物標検出手段22は、ピーク信号が得られたときのレーダ信号の指向方向に基づき、物標の方位角を検出する。レーダ信号の指向方向は、送受信制御手段16から与えられる。そして物標検出手段22は、ピーク信号の周波数fu、fdに基づき、上述した式(1)、(2)に従って物標の相対速度と相対距離を導出する。
【0034】
そして物標検出手段22は、物標の相対距離、相対速度、および方位角といった物標情報を車両制御装置100に出力する。
【0035】
軸ずれ検出手段24は、レーダ送受信機12の軸ずれ検出を定期的に実行する。このとき、軸ずれ検出手段24は、画像認識装置50から物標の画像認識結果を取得する。さらに好ましくは、軸ずれ検出手段24は、車両制御装置100から車両1の走行速度や旋回半径を取得する。軸ずれ検出手段24は、これらの情報に基づき軸ずれを検出すると、軸ずれの発生を通知する通知信号を車両制御装置100に出力する。
【0036】
上記のような信号処理装置14は、DSP(Digital Signal Processor)やマイクロコンピュータを有する。FFT手段18は、FFT処理を実装したDSPにより構成される。送受信制御手段16、ピーク信号検出手段20、物標検出手段22、軸ずれ検出手段24は、各動作に対応する演算処理を実行する不図示のCPU(Central Processing Unit)と、その手順を記述したプログラムにより構成される。かかるプログラムは、不図示のROM(Read Only Memory、不揮発性のものを含む)に格納される。またROMには、基準レベルデータ26が予め格納される。なおCPUは演算処理の際、データを不図示のRAM(Random Access Memory)に一時的に保持させる。
【0037】
画像認識装置50では、撮像装置52が撮像領域を撮像し、撮像画像データを画像処理部54に出力する。撮像装置52は、たとえば光学式のデジタルスチルカメラで構成される。撮像装置52はこのほかに、赤外線カメラにより構成されてもよい。
【0038】
また、撮像装置52は複眼式のカメラで構成されてもよいし、単眼式のカメラで構成されてもよい。単眼式のカメラは複眼式のカメラより廉価であるので、撮像装置52を単眼式のカメラで構成することにより低コスト化が可能となる。
【0039】
画像処理部54では、撮像制御手段56が、撮像動作を制御する制御信号を撮像装置52に出力する。制御信号は、撮像のタイミングを規定する。また、二値化手段58は撮像画像が有する画素の濃度階調を二値化する。そして、エッジ検出手段60が、二値化された画素の分布に基づき、被写体画像のエッジを検出する。そして、画像認識手段62が、エッジの形状に基づき、被写体を認識する。画像認識手段62は、エッジ形状のパターンマッチングを行い、被写体を認識する。エッジ形状データ64は、予め画像処理部54に格納される。ここで被写体は、走行路面のセンターラインや、レーダ装置10により検出される物標などである。
【0040】
また、画像認識手段62は、撮像画像内でのエッジの位置に基づき、被写体の位置を検出する。具体的には、画像認識手段62は、撮像画像から路面のセンターラインの位置を検出する。センターラインの位置は、車両1の横方向における車両1の中心からの距離である。画像認識装置50は車両1に対し固定されているので、画像認識手段62は、撮像画像内の横方向におけるエッジの位置から、横方向の位置を導出できる。画像認識手段62は、このようにして検出したセンターラインの位置を、車両制御装置100に出力する。
【0041】
さらに画像認識手段62は、軸ずれ検出に用いる静止物標の状態や延在方向を検出する。ここで、軸ずれ検出に用いる静止物標は、車両1の進行方向に延在する静止物標であり、たとえば路側のガードレール、中央分離帯、あるい路側の看板などの設置物である。そして、画像認識手段62は、静止物標の状態や延在方向をレーダ装置10に出力する。
【0042】
このように構成される画像処理部54は、上記処理を実装したDSPやASIC(Application Specific Integrated Circuit)を有する。また、エッジ形状データ64は、不図示のROMに予め格納される。
【0043】
車両制御装置100は、制御目的に応じて車両1の各種アクチュエータを制御する。具体的には、車両制御装置100は各種アクチュエータの制御装置に対し、アクチュエータの制御を指示する指示信号を出力する。たとえば車両制御装置100は、追従走行制御を行う場合には、レーダ装置10から入力される物標情報に基づいて、スロットルやブレーキの制御装置に走行速度の加減を指示する。また車両制御装置100は、衝突回避制御を行う場合には、物標情報に基づいてスロットルやブレーキ、あるいはステアリング制御装置に走行速度の加減や進路変更を指示する。また車両制御装置100は、衝突対応制御を行う場合には、物標情報に基づいて車両1の安全装置や警報装置を作動させる。さらに車両制御装置100は、車線維持制御を行う場合には、画像認識装置50から入力されるセンターラインの位置に基づいて、ステアリング制御装置に進路の調整を指示する。
【0044】
ここで、車両制御装置100は、レーダ装置10に軸ずれが発生したときには、軸ずれ検出手段24からの通知によりこれを検出する。その場合、車両制御装置100は、レーダ装置10から与えられる物標情報に基づく制御を中止する。そうすることにより、車両制御システムとして適切な制御が確保される。
【0045】
また車両制御装置100は、不図示の車速センサなどから車両1の走行速度を取得する。また、車両制御装置100は、不図示のステアリング制御装置などから、車両1の旋回半径を取得する。これらは上述したように、レーダ装置10の軸ずれ検出手段24に出力される。
【0046】
このような車両制御装置100は、公知のマイクロコンピュータで構成される。マイクロコンピュータでは、CPUが、ROMに格納された制御プログラムに従って、RAMに演算データを保持させながら上記の制御動作を実行する。
【0047】
図4は、車両制御システムの基本的な動作手順を説明するフローチャート図である。手順S12〜S20はレーダ装置10の動作手順を示す。手順S42〜S50は、画像認識装置50の動作手順を示す。手順S32〜S36は、車両制御装置100の動作手順を示す。そして、手順S60は、レーダ装置10と画像認識装置50の動作手順を示す。
【0048】
レーダ装置10は、走査周期ごとに次の手順を実行する。ここでは、走査領域の1つの端部から他の端部までをレーダ信号により一回走査する時間を、走査周期とする。まず、レーダ送受信機12と送受信制御手段16が、レーダ信号の指向方向を変化させながらレーダ信号を送受信する(S12)。次に、FFT手段18が、ビート信号をFFT処理する(S14)そして、ピーク信号検出手段20が、ビート信号の周波数スペクトルからピーク信号を検出する(S16)。そして、物標検出手段22が、物標の相対距離、相対速度、方位角といった物標情報を検出する(S18)。そして、物標検出手段22が、物標情報を車両制御装置100に出力する(S20)。なお、物標情報の出力前に、物標検出手段22が、たとえば物標情報が過去複数回の走査において連続性を有するかを判定する手順を追加してもよい。
【0049】
画像認識装置50は、任意に設定される周期(たとえば100ミリ秒)ごとに、次の手順を実行する。まず撮像装置52が撮像領域を撮像する(S42)。次に、二値化手段58が、撮像画像データの二値化処理を行う(S44)。そして、エッジ検出手段60が、撮像画像データから被写体画像のエッジを検出する(S46)。そして、画像認識手段62が、エッジの形状や位置に基づき被写体を認識する画像認識を行う(S48)。そして、画像認識手段62が画像認識結果を車両制御装置100に出力する(S50)。具体的には、センターラインの位置を出力する。
【0050】
車両制御装置100は、レーダ装置10から物標情報が入力されたときに、レーダ装置10の軸ずれが発生していなければ(S32のNO)、物標情報に基づき車両制御を行う。一方車両制御装置100は、軸ずれが発生していれば(S32のYES)、物標情報に基づく処理を中止する。軸ずれ発生は、後述する手順S60でレーダ装置10から通知される。
【0051】
また、車両制御装置100は、画像認識装置50からセンターラインの位置が入力されると、これに基づき車両1の車線維持制御を行う(S36)。
【0052】
さらにレーダ装置10と画像認識装置50は、任意に設定される周期ごとにレーダ装置10の軸ずれ検出を行う(S60)。このとき軸ずれ検出が実行される周期は、レーダ装置10の走査周期ごとでもよいし、画像認識装置50の処理周期でもよい。あるいは、これらと異なる任意の周期、たとえば数秒〜数十秒ごとであってもよい。またたとえば、レーダ信号の周波数変調を休止するタイミングに実行してもよい。なお、軸ずれが検出されたときには、レーダ装置10は車両制御装置100に軸ずれを通知する。
【0053】
次に、本実施形態における軸ずれ検出方法について説明する。軸ずれ検出手段24は、まず直線道路において静止物標の延在方向を検出する。ここで静止物標は、車両1の進行方向に延在するたとえば路側のガードレール、中央分離帯、あるいは進行方向に長手形状を有する看板などの設置物である。これらの静止物標の延在方向は、一般的に、直線道路では車両1の進行方向、つまり方位角0度方向と一致する。また、レーダ軸は方位角0度方向に初期設定される。よって、軸ずれ検出手段24は、方位角0度方向を基準方向として、静止物標の延在方向と基準方向とが平行であるか否かを検出する。ここで、平行であれば、静止物標の延在方向が正確に検出されているので軸ずれは発生していない。一方、平行でなければ、静止物標の延在方向が誤って検出されているので、軸ずれ検出手段24が軸ずれを検出する。
【0054】
このとき軸ずれ検出手段24は、更に画像認識結果を用いて軸ずれ検出の精度を向上させる。すなわち、軸ずれ検出手段24は、静止物標の延在方向が精度よく検出できる状況を画像認識結果に基づいて選択し、かかる状況のときに軸ずれ検出を行う。あるいは、軸ずれ検出手段24は、画像認識装置50が画像認識した静止物標の延在方向を基準方向として用いる。
【0055】
ここで、まず方位角0度方向を基準方向とする場合について説明する。その次に変形例として、静止物標の画像認識された延在方向を基準方向とする場合について説明する。
【0056】
図5は、軸ずれ検出を行う際の状況について説明する図である。図5(A)、(B)はともに、直線道路における静止物標と車両1との位置関係を模式的に示す平面図である。ここで図5(A)は軸ずれ検出に適した状況を示し、図5(B)は、軸ずれ検出に適さない状況を示す。
【0057】
まず図5(A)では、静止物標の例としてガードレールが示される。ガードレールがレーダ信号を反射するときには、表面の形状や材質により反射信号のレベルに強弱が生じる。ここで、ガードレールにおいて反射強度が他の部分より強い点を反射点P1、P2、P3、…とする。
【0058】
ガードレールにおける反射点P1、P2、P3、…は、物標検出手段22によりそれぞれ1つの物標として検出される。よって、まず軸ずれ検出手段24は、検出された物標のうち、静止しているものを抽出する。具体的には、軸ずれ検出手段24は、車両1の走行速度と同じ大きさで、かつ正負が反転した相対速度を有する物標を抽出する。ここで走行速度は、車両制御装置100から与えられる。このようにして軸ずれ検出手段24は、反射点P1、P2、P3、…を検出する。ここで、反射点P1、P2、P3、…の相対距離はそれぞれR1、R2、R3、…、方位角はそれぞれθ1、θ2、θ3、…である。
【0059】
次に、軸ずれ検出手段24は、反射点P1、P2、P3、…の分布方向を検出する。この分布方向が、ガードレールの延在方向である。反射点の分布方向は、少なくとも2つの反射点を結ぶ直線の方向(方位角0度方向に対する角度)に対応する。よって、軸ずれ検出手段24は、たとえば反射点P1、P2を用いて次式の演算により分布方向αを導出する。
α=(車両1の横方向におけるP1、P2の位置の差分)/
(車両1の進行方向におけるP1、P2の位置の差分)
=(R2・sinθ2−R1・sinθ1)/(R2・cosθ2−R1・cosθ1)
あるいは、軸ずれ検出手段24は、反射点P1、P2、P3、…を通る直線を最小二乗法により導出し、その直線の方位角0度方向に対する角度を導出してもよい。
【0060】
軸ずれ検出手段24は、上記のようにして導出した反射点の分布方向αと方位角0度方向との差分を導出する。そして、軸ずれ検出手段24は、差分が許容範囲より大きければ軸ずれを検出し、車両制御装置100に軸ずれを通知する。ここで許容範囲は、軸ずれとして認めうる角度差であって予め任意に設定される。許容範囲はたとえば、0.5度〜1度である。一方、軸ずれ検出手段24は、差分が許容範囲内であれば軸ずれを検出せず、したがって車両制御装置100に軸ずれを通知しない。
【0061】
ここで、ガードレールの近傍に建築物や停車中の車両といった他の静止物標が存在する状況が生じる場合がある。図5(B)は、かかる状況を示す。
【0062】
ガードレール近傍の他の静止物標から得られる受信信号レベルは、一般的にガードレールにおける反射点から得られる受信信号レベルより大きい。これは、他の静止物標の反射断面積がガードレールの反射点の部分の面積より大きいことによる。よって、このような状況では、ガードレールにおける反射点P2、P3、…の代わりに、建築物における反射点P12が検出される場合がある。すると、反射点P1、P12に基づいてガードレールの延在方向が誤って検出されるおそれがある。
【0063】
ここで、軸ずれ検出手段24は、画像認識結果を併用することにより、上記のような軸ずれ検出に適した状況と適さない状況を判断する。次に、かかる判断方法について説明する。
【0064】
図6は、図5で示した状況に対応する撮像画像を模式的に示す図である。図6(A)には、図5(A)の状況に対応する撮像画像が示される。ここでは、撮像画像を点線で図示し、検出されたエッジを実線で示す。この撮像画像には、背景として空と走行路面が、被写体としてガードレール、センターライン、および車両1のボンネット部分が写っている。そして、ガードレール、センターラインなどのエッジが認識される。ここでは、図示するように、ガードレールの周囲や背後には他の被写体画像は存在しない。
【0065】
一方、図6(B)には、図5(B)の状況に対応する撮像画像が示される。この場合、ガードレール近傍に建築物が存在するので、撮像画像ではガードレールの背後に建築物が映っている。よって、ガードレールのエッジと建築物のエッジとが重複している。
【0066】
画像認識手段62は、画像認識したときのガードレールの状態を画像認識結果として軸ずれ検出手段24に通知する。すなわち、ガードレールのエッジと重複する建築物などのエッジが存在するか否かを検出して、軸ずれ検出手段24に通知する。すると、軸ずれ検出手段24は、ガードレールのエッジと重複する建築物などのエッジが存在しなければ軸ずれ検出に適した状況であると判断し、軸ずれ検出を実行する。一方、ガードレールのエッジと重複する建築物などのエッジが存在するときには軸ずれ検出に適さない状況であると判断し、軸ずれ検出を中止する。
【0067】
ここで、ガードレールなどの静止物標の近傍に他の静止物標が存在する状況をレーダ装置10単独で検出するのは困難である。あるいは、一定時間にわたって受信信号レベルの推移を観察する必要があるので、時間を要する。この点、画像認識はエッジの有無により他の静止物標の有無を検出できるので、他の静止物標が存在する状況をより確実かつ迅速に検出することができる。
【0068】
このように、軸ずれ検出手段24は、画像認識結果を併用することにより軸ずれ検出に適した状況のときに軸ずれ検出を行い、そうでないときには軸ずれ検出を中止するので、軸ずれ検出の精度を向上させることができる。
【0069】
ところで、静止物標の延在方向が車両の進行方向と一致しない場合がある。たとえば、車線の合流地点に向かっているときや道幅が徐々に狭くなっているような場合には、ガードレールの延在方向が車両の進行方向と平行にならない。あるいは、路側の看板が車両から見易いように車両の進行方向に対し角度をつけて設置されているような場合もある。
【0070】
このような場合に、本実施形態における変形例では、画像認識手段62は、静止物標の延在方向を画像認識する。そして、軸ずれ検出手段24は、画像認識された延在方向を基準方向とする。そうすることにより、静止物標の延在方向が車両1の進行方向と平行でない場合であっても、精度よく軸ずれを検出できる。
【0071】
図7は、静止物標の延在方向を画像認識する方法を説明する図である。図7(A)には、図6(A)で示した撮像画像が示される。画像認識手段62は、ガードレールのエッジ形状を認識すると、路面に接触する下端エッジの延在方向を導出する。具体的には、画像認識手段62は、下端エッジの撮像画像における傾き角度(撮像画像の横方向に対する角度)α´を導出する。そして、傾き角度α´に対応する延在方向を導出する。
【0072】
ここで、画像認識装置50は車両1に固定されているので、走行路面前方の傾斜を一定としたときに、被写体の下端エッジの延在方向は撮像画像内におけるエッジの傾き角度に対応している。よって、かかる傾き角度と延在方向との対応関係を、予めマップデータとして画像認識装置50内のROMに格納しておく。そうすることにより、画像認識手段62は、かかるマップデータを参照して、エッジの傾き角度に対応するガードレールの延在方向を導出できる。
【0073】
図7(B)は、ガードレールの代わりに看板が静止物標として認識されたときの延在方向を示す。ここでも、図7(A)の説明と同様に、画像認識手段62は、看板のエッジ形状を認識すると、下端エッジの撮像画像における傾き角度α´を導出する。そして、傾き角度α´に対応する延在方向を導出する。
【0074】
なお、上記のようにして静止物標の延在方向を画像認識により検出する場合、画像認識装置50自体の取付け位置や角度が変化し、画像認識装置50に軸ずれが発生していると、静止物標の延在方向を誤って検出してしまう。よって、画像認識装置50の軸ずれが発生していないことを更に検出することにより、基準方向の正確性を担保できる。なお、画像認識装置50の軸は、撮像範囲の中心に対応し、たとえば車両1進行方向の正面に一致するように初期設定される。そして、画像認識装置50では、画像認識手段62が次のようにして軸ずれを検出する。
【0075】
図8は、画像認識装置50の軸ずれ検出方法を説明する図である。図8(A)、(B)には、模式的な撮像画像が示される。
【0076】
図8(A)は、軸ずれが発生していない状態での、撮像画像の例である。ここでは、車両1の車体の一部が写されている。ここでは、たとえば車両1のボンネット上のエンブレムEBやフロントガラスの四隅に設けられるマーカMKが示される。
【0077】
画像認識装置50は車両1に対し固定されるので、軸ずれが発生していない状態では、エンブレムEBやマーカMKは撮像画像内で常に定位置にある。たとえば、エンブレムEBは撮像画像の左下を原点とするXY座標系で座標(x1,y1)に位置する。また、マーカMKは撮像画像の四隅に位置する。かかる定位置は、予め画像処理部54のROMに格納される。
【0078】
ところが、軸ずれが発生すると、エンブレムEBやマーカMKの撮像画像内での位置がずれる。図8(B)は、軸ずれが発生した状態での、エンブレムEBやマーカMKの撮像画像における位置を示す。ここでは、エンブレムEB、マーカMKともに、図8(A)で示した定位置からずれている。
【0079】
このように、画像認識手段62は、車体の一部を指標として、その位置が撮像画像内の定位置にあるか否かを検出し、定位置にあれば軸ずれが発生しておらず、定位置からずれていれば軸ずれが発生していることを検出する。なおここでは複数の指標を用いているが、1つの指標を用いてもよい。このように画像認識手段62が画像認識装置50の軸ずれが発生していないことを検出することにより、基準方向の正確性を担保できる。よって、基準方向に基づくレーダ装置10の軸ずれ検出の精度が向上する。
【0080】
図9は、軸ずれ検出手順を説明するためのフローチャート図である。図9の手順は、図4における手順S60を詳述するサブルーチンである。
【0081】
説明の便宜上、画像認識装置50の動作手順から説明する。画像認識手段62は、まず直線走行中であることを確認する(S122)。このとき画像認識手段62は、過去の処理周期で検出したセンターラインのエッジ形状に基づき、直線走行中であることを検出する。センターラインのエッジ形状が直線を形成していれば、直線走行中であると判断できる。
【0082】
そして、画像認識手段62は、直線走行中であるときには(S122のYES)、直線走行フラグをONに設定する(S124)。ここで直線走行フラグは、プログラム上の変数である。一方、直線走行中でないときには、画像認識手段62は直線走行フラグをOFFに設定する(S125)。
【0083】
画像認識手段62は、直線走行中であることを検出すると、物標を認識する(S126)。そして画像認識手段62は、ガードレールなど、車両1進行方向に延在する静止物標を認識したときには(S128のYES)、画像認識フラグをONに設定して(S132)、処理を終了する。ここで画像認識フラグは、プログラム上の変数である。一方、かかる静止物標を認識しないとき、あるいは、静止物標のエッジが他の静止物標のエッジと重複しているときには(S128のNO)、画像認識手段62は画像認識フラグをOFFに設定する(S131)。そして画像認識手段62は、直線走行フラグ、画像認識フラグをレーダ装置10に出力して(S133)、処理を終了する。
【0084】
レーダ装置10では、軸ずれ検出手段24が、直線走行中であることを確認する(S104)。このとき軸ずれ検出手段24は、画像認識装置50から与えられる直線走行フラグに基づき直線走行中であるか否かを検出する。あるいは軸ずれ検出手段24は、車両制御装置100から与えられる車両1の旋回半径に基づき直線走行中であるか否かを検出する。たとえば軸ずれ検出手段24は、旋回半径が基準値以上であれば直線走行中であることを検出する。ここで軸ずれ検出手段24は、直線走行とみなされる任意の値(たとえば1万メートル)を基準値として用いる。なお、旋回半径を用いる場合には、画像認識装置50による手順S122を省略することが可能である。
【0085】
そして、軸ずれ検出手段24は、直線走行中のときには(S104のYES)、過去の走査周期で検出された物標情報から、静止物標の反射点を抽出する(S106)。そして軸ずれ検出手段24は、反射点の分布方向を導出する(S108)。
【0086】
そして、軸ずれ検出手段24は、画像認識装置50から与えられる画像認識フラグがONのときには(S110のON)、反射点の分布方向と基準方向との差分を導出する(S112)。ここで、基準方向は方位角0度方向である。そして軸ずれ検出手段24は、差分が基準値以上のときには(S114のYES)、軸ずれ通知を車両制御装置100に出力する。一方、画像認識フラグがOFFのときには(S110のOFF)、軸ずれ検出手段24は処理を終了する。
【0087】
このように、直線走行中にガードレールの近傍に他の静止物標がなく、したがって軸ずれ検出に適した状況のときに軸ずれ検出を行うことにより、軸ずれ検出精度を向上させることができる。
【0088】
図10は、変形例における軸ずれ検出手順を説明するフローチャート図である。図10では、画像認識手段62が静止物標を認識した際(S128のYES)、その下端エッジの延在方向を検出する(S130)。そして、画像認識手段62は、延在方向と直線走行フラグ、画像認識フラグをレーダ装置10に出力する(S134)。
【0089】
よって、レーダ装置10では、軸ずれ検出手段24は画像認識された下端エッジの延在方向を基準方向として手順S112を実行する。
【0090】
このような手順によれば、静止物標の延在方向が車両の進行方向と平行でない場合であっても、レーダ装置10の軸ずれを精度よく検出することができる。なお、車両1が旋回しているときには軸ずれ検出の精度が相対的に低下するが、手順S104、S122で直線走行中であることを判断することにより、旋回中に軸ずれ検出を行うことを回避できる。よって、軸ずれ検出精度の低下を防止できる。
【0091】
図11は、さらに好適な態様における軸ずれ検出手順を説明するフローチャート図である。図11は、図10の手順に更に手順S102、S120を追加したものである。ただしこれらの手順は、いずれか1つのみを追加してもよい。
【0092】
手順S120では、画像認識手段62は、画像認識装置50の軸ずれの有無を検出する。そして、軸ずれが発生していないときに(S120のNO)、上述した手順S122以降を実行する。一方、軸ずれが発生しているときには(S120のYES)、処理を終了する。かかる手順を追加することにより、静止物標の延在方向を検出したときにその正確さが担保される。すなわち、基準方向の正確さが担保される。
【0093】
また、手順S102では、軸ずれ検出手段24は、車両1の走行速度が基準速度以上であることを確認する。走行速度は、車両制御装置100から与えられる。ここで、基準速度は例えば時速40kmである。車両がある程度以上の速度で走行していれば、路側にガードレールや看板などの静止物標が存在する状況が発生する蓋然性が高くなる。よって、軸ずれ検出に更に適した状況であることが担保される。
【0094】
よって、走行速度が基準速度以上のときに(S102のYES)、軸ずれ検出手段24は、上述した手順S104以降を実行する。一方、走行速度が基準速度未満のときには(S102のNO)、軸ずれ検出手段24は、処理を終了する。
【0095】
上述の説明では、FM−CW方式のレーダ装置を例としたが、物標の相対速度、相対距離を別々に検出可能なレーダ装置であれば、FM−CW方式に限らなくてもよい。たとえば、一定周波数のレーダ信号により物標の相対速度を検出するドップラレーダと、パルス信号の往復時間により物標との相対距離を検出するパルスレーダとを組み合わせることにより、かかる構成が可能となる。
【0096】
また、車両の前方監視用レーダ装置を例として説明したが、車両の後方を監視するためのレーダ装置であってもよい。この場合、車両の後方の撮像画像に基づき画像認識を行う画像認識装置を併用することで、上述した実施形態を適用できる。
【0097】
また、上述の説明では、軸ずれが発生したときには車両制御装置100が制御を中止した。しかし、レーダ装置10における物標検出手段22が、軸ずれを補正した物標情報を車両制御装置100に出力するようにしてもよい。そうすることにより、車両制御装置100は正確な物標情報に基づいて車両を制御できる。
【0098】
以上説明したように、本実施形態によれば、車載レーダ装置の軸ずれを精度よく検出することが可能となる。
【符号の説明】
【0099】
10:レーダ装置、12:レーダ送受信機、14:信号処理装置、24:軸ずれ検出手段、50:画像認識装置、62:画像認識手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるレーダ装置の軸ずれを検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置により車両周囲の物標を検出し、車両の動作を自動制御する車両制御システムが知られている。レーダ装置は、車両周囲をレーダ信号により走査して、物標の相対距離、相対速度、及び方位角を検出する。ここで物標は、先行車両や対向車両、路側の設置物などである。また方位角は、自車両の進行方向正面(0度)に対する方位角である。車両制御システムは、物標の相対速度、相対距離、方位角に基づいて、先行車両に対する追従走行制御や、他の車両や障害物に対する衝突回避・対応制御を行う。
【0003】
レーダ装置は、レーダ軸に対する反射信号の到来角度を検出する。ここでレーダ軸は、走査領域の中心であり、たとえば、アンテナの回動範囲の中心や、送信信号の利得が最大となるアンテナパターンの中心である。レーダ装置は、レーダ軸が自車両の進行方向正面に一致するように取り付けられる。よって、レーダ装置は、自車両の進行方向正面に対する反射信号の到来角度を物標の方位角として検出する。
【0004】
ところで、車両の走行中には、路面からの振動や予期せぬ軽衝突による衝撃がレーダ装置に加わる場合がある。すると、レーダ装置の取付け位置や角度が変化して、レーダ軸が自車両の進行方向正面からずれること(以下、軸ずれという)がある。
【0005】
軸ずれが発生すると、レーダ装置は物標の方位角を正確に検出できなくなる。このとき検出された方位角に基づいて車両制御システムが車両制御を行うと、安全性が損なわれるおそれがある。かかる事態を回避するためには、軸ずれが発生したときにこれを迅速に検出することが求められる。よって、レーダ装置において定期的に軸ずれ検出を行う方法が提案されている。特許文献1には、軸ずれ検出を行うレーダ装置の例が記載されている。
【0006】
従来の軸ずれ検出方法のひとつによれば、レーダ装置は自車両の進行方向に延在する路側の静止物標、たとえばガードレールを利用して軸ずれを検出する。具体的には、レーダ装置は、自車両が直線道路を走行しているときに、ガードレールにおける反射点を検出し、その分布方向に基づきガードレールの延在方向を検出する。ここで一般的に、直線道路におけるガードレールの延在方向は、自車両の進行方向である方位角0度方向、つまりレーダ軸方向と一致している。よって、軸ずれが発生していない状態で検出した延在方向は、方位角0度方向と一致する。このことからレーダ装置は、検出したガードレールの延在方向が方位角0度方向からずれているときに、軸ずれを検出する。そして、このとき車両制御システムは車両制御を一時停止し、レーダ装置が検出した誤った方位角に基づく車両制御を回避する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願2004−198159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ガードレールの近傍に建築物や停車中の車両といった静止物標が存在する場合がある。そして、これら近傍の静止物標から得られる受信信号レベルは、一般的にガードレールにおける反射点から得られる受信信号レベルより大きい。すると、レーダ装置が、ガードレール近傍の静止物標からの受信信号を、ガードレールからの受信信号として誤検出する場合がある。
【0009】
かかる場合に上記の方法を実行すれば、レーダ装置がガードレールの延在方向を誤って検出することになる。このため、軸ずれの検出精度が低下する。すると、車両制御システムが不適切な車両制御を行うおそれがある。たとえば、レーダ装置が物標の方位角を正確に検出しているにもかかわらず軸ずれを検出し、車両制御システムが車両制御を停止する。あるいは反対に、レーダ装置が物標の方位角を誤って検出しているにもかかわらず軸ずれを検出せず、車両制御システムが誤った方位角に基づく車両制御を行ったりする。
【0010】
そこで、上記に鑑みてなされた本発明の目的は、軸ずれを精度よく検出できるレーダ装置とその信号処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明によれば、車両に搭載されるとともに静止物標に反射されたレーダ信号を受信するレーダ送受信機の信号処理装置であって、前記静止物標における前記レーダ信号の反射点を前記受信したレーダ信号に基づき検出する物標検出手段と、前記車両に搭載された画像認識装置が前記静止物標の近傍に他の物標が存在しないことを前記静止物標を含む撮像画像に基づき検出したときに、前記反射点の分布方向と基準方向との差分が基準値以上か否かを検出する軸ずれ検出手段とを有する信号処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、レーダ装置における軸ずれを精度よく検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態におけるレーダ装置の使用状況を説明する図である。
【図2】レーダ装置10を中心とする車両制御システムのブロック図である。
【図3】送受信信号とビート信号の関係を説明する図である。
【図4】車両制御システムの基本的な動作手順を説明するフローチャート図である。
【図5】軸ずれ検出を行う際の状況について説明する図である。
【図6】図5で示した状況に対応する撮像画像を模式的に示す図である。
【図7】静止物標の延在方向を画像認識する方法について説明する図である。
【図8】画像認識装置の軸ずれ検出方法を説明する図である。
【図9】軸ずれ検出手順を説明するためのフローチャート図である。
【図10】変形例における軸ずれ検出手順を説明するフローチャート図である。
【図11】さらに好適な態様における軸ずれ検出手順を説明するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0015】
図1は、本実施形態におけるレーダ装置の使用状況を説明する図である。ここでは、車両1周囲の状況に応じて車両1の動作を自動制御する車両制御システムが示される。この車両制御システムは、車両1周囲の物標を検出するレーダ装置10、物標や路面のセンターラインを画像認識する画像認識装置50、及び車両1の各種アクチュエータを制御する車両制御装置100とを有する。この車両制御システムは、先行車両への追従走行制御、他の車両や障害物との衝突回避・対応制御や、車両1の適切な走行車線を維持する車線維持制御を行う。
【0016】
レーダ装置10は、レーダ軸を中心とする走査領域をレーダ信号により走査する。すなわち、レーダ軸はレーダ装置10の走査領域の中心である。レーダ装置10は、車両1の前部バンパー内部やフロントグリル内部に搭載される。レーダ装置10は、そのレーダ軸が車両1の進行方向正面(方位角0度)方向に一致するようにして車両1に取り付けられる。よってレーダ装置10の走査領域は、方位角0度を中心とする角度範囲に対応する。この角度範囲は、たとえば±5〜10度程度の角度範囲である。
【0017】
レーダ装置10は、走査領域内の物標を検出する。具体的には、レーダ装置10は物標の相対距離や相対速度、方位角といった物標情報を検出し、物標情報を車両制御装置100に出力する。ここで、物標はたとえば、先行車両や他の車両といった移動物標や、路側の設置物などの静止物標である。また物標の方位角は、方位角0度を基準とする方位角である。
【0018】
画像認識装置50は、車両1のフロントガラス上部近傍の車室内に搭載される。画像認識装置50は車両1の進行方向における撮像領域を撮像し、撮像画像データに基づき被写体を画像認識する。被写体は、たとえば走行路面のセンターラインである。画像認識装置50は、画像認識したセンターラインの位置を車両制御装置100に出力する。センターラインの位置は、たとえば車両1の進行方向と直角方向(以下、横方向という)における車両1の中心からの距離である。
【0019】
車両制御装置100は、レーダ装置10から入力される物標情報に基づき、追従走行制御や衝突回避・対応制御を行う。追従走行制御では、車両制御装置100は先行車両に対し一定の車間距離を保つように車両1の走行速度を制御する。また、衝突回避・対応制御では、車両制御装置100は衝突を回避するために車両1の進路や走行速度を制御したり、乗員保護のための安全装置を駆動したりする。また、車両制御装置100は、画像認識装置50から入力されるセンターラインの位置に基づき車線維持制御を行う。車線維持制御では、適正な車線内での走行を維持するように車両1の進路を調整する。
【0020】
さらに本実施形態では、レーダ装置10は自らの軸ずれを検出する。レーダ装置10は、軸ずれ検出を行う際に、画像認識装置50による画像認識結果を用いる。画像認識装置50は、その撮像領域がレーダ装置10による走査領域と重複するように設けられる。よって、画像認識装置50は、レーダ装置10が検出する物標を画像認識してその画像認識結果をレーダ装置10に提供する。軸ずれ検出方法については、後に詳述する。
【0021】
レーダ装置10は、軸ずれを検出すると車両制御装置100に通知する。軸ずれが発生すると、物標の方位角が誤って検出される。よってこのとき、車両制御装置100はレーダ装置10からの物標情報に基づく車両1の制御を中止する。このようにして車両制御装置100は、不適切な車両制御を回避する。よって、車両制御システムとして適切な制御が確保される。
【0022】
図2は、レーダ装置10を中心とする車両制御システムのブロック図である。まず、レーダ装置10の構成について説明する。
【0023】
レーダ装置10は、たとえばFM−CW(Frequency Modulated-Continuous Wave)方式のレーダ装置である。レーダ送受信機12は、周波数変調した連続波(電磁波)をレーダ信号として生成し、これをアンテナ11から送出する。ここでレーダ信号の周波数は、76〜77GHz帯のミリ波帯に含まれる。これは、車載用のレーダ装置が電波法上使用可能な電波帯域がかかる帯域に制限されていることによる。
【0024】
送信されるレーダ信号(送信信号)の周波数は、たとえば三角波状のベースバンド信号に基づいて、三角波の上昇区間で漸増し、三角波の下降区間で漸減する。よって、ベースバンド信号の周期に応じて周波数の漸増期間と漸減期間が反復される。あるいは、レーダ送受信機12が任意の一定周期ごとに周波数変調を休止する期間を有するようにしてもよい。かかる期間では、送信信号の周波数が一定に保たれる。
【0025】
レーダ送受信機12は、送信信号の指向方向を順次変化させることにより、走査領域を走査する。走査の方式は、たとえば機械走査方式や電子走査方式である。レーダ送受信機12は、走査方式に応じた構成を有する。機械走査方式の場合、アンテナ11が往復回動可能に構成される。レーダ送受信機12は、アンテナ11を回動させることにより送信信号の指向方向を変化させる。この場合、レーダ軸は、アンテナ11の回動角度範囲の中心に対応する。また、電子走査方式の場合、アンテナ11には複数のアンテナ素子が所定間隔で配置される。レーダ送受信機12は、アンテナ11を回動させることなく、アンテナ素子における送信位相差(あるいは受信位相差)を制御して、送信信号(あるいは受信信号)の指向方向を変化させる。この場合、レーダ軸は、送信信号の利得が最大となるアンテナパターンの中心に対応する。
【0026】
レーダ送受信機12は、物標に反射されたレーダ信号をアンテナ11により受信すると、受信したレーダ信号(受信信号)と送信信号とを混合して、ビート信号を生成する。そして、レーダ送受信機12は、ビート信号をA/D変換して信号処理装置14に出力する。ここでビート信号の周波数は、周波数変調された送信信号と物標により反射された受信信号の周波数差に対応する。送受信信号の周波数差はたとえば数百KHzである。送受信信号の周波数差は、受信信号の周波数が偏移することにより発生する。これは、受信信号の周波数は、物標の相対速度によるドップラ周波数と相対距離による時間的遅延の影響を受けることによる。
【0027】
ここで、送受信信号とビート信号の関係を図3に示す。図3(A)には、送受信信号それぞれの時間(横軸)に対する周波数(縦軸)の変化が示される。送信信号の周波数は、実線で示すように、周波数漸増期間UPで漸増し、周波数漸減期間DNで漸減する。これに対し、受信信号の周波数は、破線で示すように周波数偏移を受ける。ここでは、目標物体との相対距離による時間的遅延ΔTと、相対速度に応じたドップラシフトΔDとが示される。その結果、送信信号の周波数漸増期間UPでは送受信信号に周波数差fuが生じ、送信信号の周波数漸減期間DNでは送受信信号に周波数差fdが生じる。
【0028】
図3(B)には、ビート信号の時間(横軸)に対する周波数(縦軸)の変化が示される。ビート信号の周波数は、上記した送受信信号の周波数差fu、fdに対応する。ビート信号の周波数fu、fdは、次式により目標物体の相対速度V、対距離Rと対応する。ここで、Cは光速、fmはベースバンド信号における三角波の周波数、f0は送信信号の中心周波数、ΔFは周波数偏移幅である。
【0029】
R=C・(fu+fd)/(8・ΔF・fm) ・・・式(1)
V=C・(fd−fu)/(4・f0) ・・・式(2)
図2に説明を戻す。信号処理装置14では、送受信制御手段16が、レーダ信号の送信動作を制御する制御信号をレーダ送受信機12に出力する。制御信号は、レーダ信号の指向方向とこれを変化させるタイミングとを規定する。たとえばレーダ送受信機12が機械走査方式の場合には、制御信号はアンテナ11の回動角度と回動タイミングを規定する。また、レーダ送受信機12が電子走査方式の場合には、制御信号は、アンテナ素子の送信位相差(あるいは受信位相差)とこれを変化させるタイミングを規定する。
【0030】
また、FFT(Fast Fourier Transform: 高速フーリエ変換)手段18は、ビート信号をFFT処理してその周波数スペクトルを検出する。ビート信号にはもともと、物標の反射により得られたものと、路面の乱反射やマルチパス現象により得られたものが含まれる。しかし、ビート信号の周波数は、上述したように反射物の相対距離と相対速度に対応する。よって、FFT手段18は、FFT処理によってビート信号を相対距離と相対速度に対応した周波数スペクトルに分離する。
【0031】
ピーク信号検出手段20は、ビート信号の周波数スペクトルからピーク信号を検出する。物標の反射により得られたビート信号は、路面の乱反射やマルチパス現象により得られたビート信号よりレベルが大きい。これは、物標がある程度の反射断面積を有することによる。このことからピーク信号検出手段20は、周波数スペクトルでピーク(極大値)を形成するピーク信号を検出する。すなわちピーク信号検出手段20は、物標の反射により得られたビート信号を検出する。
【0032】
ピーク信号検出手段20は、このようなピーク信号を周波数漸増期間、周波数漸減期間ごとに検出する。すると、周波数漸増期間におけるピーク信号は上述した周波数fuを有し、周波数漸減期間におけるピーク信号は上述した周波数fdを有する。
【0033】
物標検出手段22は、物標の相対距離、相対速度、および方位角といった物標情報を検出する。まず物標検出手段22は、ピーク信号が得られたときのレーダ信号の指向方向に基づき、物標の方位角を検出する。レーダ信号の指向方向は、送受信制御手段16から与えられる。そして物標検出手段22は、ピーク信号の周波数fu、fdに基づき、上述した式(1)、(2)に従って物標の相対速度と相対距離を導出する。
【0034】
そして物標検出手段22は、物標の相対距離、相対速度、および方位角といった物標情報を車両制御装置100に出力する。
【0035】
軸ずれ検出手段24は、レーダ送受信機12の軸ずれ検出を定期的に実行する。このとき、軸ずれ検出手段24は、画像認識装置50から物標の画像認識結果を取得する。さらに好ましくは、軸ずれ検出手段24は、車両制御装置100から車両1の走行速度や旋回半径を取得する。軸ずれ検出手段24は、これらの情報に基づき軸ずれを検出すると、軸ずれの発生を通知する通知信号を車両制御装置100に出力する。
【0036】
上記のような信号処理装置14は、DSP(Digital Signal Processor)やマイクロコンピュータを有する。FFT手段18は、FFT処理を実装したDSPにより構成される。送受信制御手段16、ピーク信号検出手段20、物標検出手段22、軸ずれ検出手段24は、各動作に対応する演算処理を実行する不図示のCPU(Central Processing Unit)と、その手順を記述したプログラムにより構成される。かかるプログラムは、不図示のROM(Read Only Memory、不揮発性のものを含む)に格納される。またROMには、基準レベルデータ26が予め格納される。なおCPUは演算処理の際、データを不図示のRAM(Random Access Memory)に一時的に保持させる。
【0037】
画像認識装置50では、撮像装置52が撮像領域を撮像し、撮像画像データを画像処理部54に出力する。撮像装置52は、たとえば光学式のデジタルスチルカメラで構成される。撮像装置52はこのほかに、赤外線カメラにより構成されてもよい。
【0038】
また、撮像装置52は複眼式のカメラで構成されてもよいし、単眼式のカメラで構成されてもよい。単眼式のカメラは複眼式のカメラより廉価であるので、撮像装置52を単眼式のカメラで構成することにより低コスト化が可能となる。
【0039】
画像処理部54では、撮像制御手段56が、撮像動作を制御する制御信号を撮像装置52に出力する。制御信号は、撮像のタイミングを規定する。また、二値化手段58は撮像画像が有する画素の濃度階調を二値化する。そして、エッジ検出手段60が、二値化された画素の分布に基づき、被写体画像のエッジを検出する。そして、画像認識手段62が、エッジの形状に基づき、被写体を認識する。画像認識手段62は、エッジ形状のパターンマッチングを行い、被写体を認識する。エッジ形状データ64は、予め画像処理部54に格納される。ここで被写体は、走行路面のセンターラインや、レーダ装置10により検出される物標などである。
【0040】
また、画像認識手段62は、撮像画像内でのエッジの位置に基づき、被写体の位置を検出する。具体的には、画像認識手段62は、撮像画像から路面のセンターラインの位置を検出する。センターラインの位置は、車両1の横方向における車両1の中心からの距離である。画像認識装置50は車両1に対し固定されているので、画像認識手段62は、撮像画像内の横方向におけるエッジの位置から、横方向の位置を導出できる。画像認識手段62は、このようにして検出したセンターラインの位置を、車両制御装置100に出力する。
【0041】
さらに画像認識手段62は、軸ずれ検出に用いる静止物標の状態や延在方向を検出する。ここで、軸ずれ検出に用いる静止物標は、車両1の進行方向に延在する静止物標であり、たとえば路側のガードレール、中央分離帯、あるい路側の看板などの設置物である。そして、画像認識手段62は、静止物標の状態や延在方向をレーダ装置10に出力する。
【0042】
このように構成される画像処理部54は、上記処理を実装したDSPやASIC(Application Specific Integrated Circuit)を有する。また、エッジ形状データ64は、不図示のROMに予め格納される。
【0043】
車両制御装置100は、制御目的に応じて車両1の各種アクチュエータを制御する。具体的には、車両制御装置100は各種アクチュエータの制御装置に対し、アクチュエータの制御を指示する指示信号を出力する。たとえば車両制御装置100は、追従走行制御を行う場合には、レーダ装置10から入力される物標情報に基づいて、スロットルやブレーキの制御装置に走行速度の加減を指示する。また車両制御装置100は、衝突回避制御を行う場合には、物標情報に基づいてスロットルやブレーキ、あるいはステアリング制御装置に走行速度の加減や進路変更を指示する。また車両制御装置100は、衝突対応制御を行う場合には、物標情報に基づいて車両1の安全装置や警報装置を作動させる。さらに車両制御装置100は、車線維持制御を行う場合には、画像認識装置50から入力されるセンターラインの位置に基づいて、ステアリング制御装置に進路の調整を指示する。
【0044】
ここで、車両制御装置100は、レーダ装置10に軸ずれが発生したときには、軸ずれ検出手段24からの通知によりこれを検出する。その場合、車両制御装置100は、レーダ装置10から与えられる物標情報に基づく制御を中止する。そうすることにより、車両制御システムとして適切な制御が確保される。
【0045】
また車両制御装置100は、不図示の車速センサなどから車両1の走行速度を取得する。また、車両制御装置100は、不図示のステアリング制御装置などから、車両1の旋回半径を取得する。これらは上述したように、レーダ装置10の軸ずれ検出手段24に出力される。
【0046】
このような車両制御装置100は、公知のマイクロコンピュータで構成される。マイクロコンピュータでは、CPUが、ROMに格納された制御プログラムに従って、RAMに演算データを保持させながら上記の制御動作を実行する。
【0047】
図4は、車両制御システムの基本的な動作手順を説明するフローチャート図である。手順S12〜S20はレーダ装置10の動作手順を示す。手順S42〜S50は、画像認識装置50の動作手順を示す。手順S32〜S36は、車両制御装置100の動作手順を示す。そして、手順S60は、レーダ装置10と画像認識装置50の動作手順を示す。
【0048】
レーダ装置10は、走査周期ごとに次の手順を実行する。ここでは、走査領域の1つの端部から他の端部までをレーダ信号により一回走査する時間を、走査周期とする。まず、レーダ送受信機12と送受信制御手段16が、レーダ信号の指向方向を変化させながらレーダ信号を送受信する(S12)。次に、FFT手段18が、ビート信号をFFT処理する(S14)そして、ピーク信号検出手段20が、ビート信号の周波数スペクトルからピーク信号を検出する(S16)。そして、物標検出手段22が、物標の相対距離、相対速度、方位角といった物標情報を検出する(S18)。そして、物標検出手段22が、物標情報を車両制御装置100に出力する(S20)。なお、物標情報の出力前に、物標検出手段22が、たとえば物標情報が過去複数回の走査において連続性を有するかを判定する手順を追加してもよい。
【0049】
画像認識装置50は、任意に設定される周期(たとえば100ミリ秒)ごとに、次の手順を実行する。まず撮像装置52が撮像領域を撮像する(S42)。次に、二値化手段58が、撮像画像データの二値化処理を行う(S44)。そして、エッジ検出手段60が、撮像画像データから被写体画像のエッジを検出する(S46)。そして、画像認識手段62が、エッジの形状や位置に基づき被写体を認識する画像認識を行う(S48)。そして、画像認識手段62が画像認識結果を車両制御装置100に出力する(S50)。具体的には、センターラインの位置を出力する。
【0050】
車両制御装置100は、レーダ装置10から物標情報が入力されたときに、レーダ装置10の軸ずれが発生していなければ(S32のNO)、物標情報に基づき車両制御を行う。一方車両制御装置100は、軸ずれが発生していれば(S32のYES)、物標情報に基づく処理を中止する。軸ずれ発生は、後述する手順S60でレーダ装置10から通知される。
【0051】
また、車両制御装置100は、画像認識装置50からセンターラインの位置が入力されると、これに基づき車両1の車線維持制御を行う(S36)。
【0052】
さらにレーダ装置10と画像認識装置50は、任意に設定される周期ごとにレーダ装置10の軸ずれ検出を行う(S60)。このとき軸ずれ検出が実行される周期は、レーダ装置10の走査周期ごとでもよいし、画像認識装置50の処理周期でもよい。あるいは、これらと異なる任意の周期、たとえば数秒〜数十秒ごとであってもよい。またたとえば、レーダ信号の周波数変調を休止するタイミングに実行してもよい。なお、軸ずれが検出されたときには、レーダ装置10は車両制御装置100に軸ずれを通知する。
【0053】
次に、本実施形態における軸ずれ検出方法について説明する。軸ずれ検出手段24は、まず直線道路において静止物標の延在方向を検出する。ここで静止物標は、車両1の進行方向に延在するたとえば路側のガードレール、中央分離帯、あるいは進行方向に長手形状を有する看板などの設置物である。これらの静止物標の延在方向は、一般的に、直線道路では車両1の進行方向、つまり方位角0度方向と一致する。また、レーダ軸は方位角0度方向に初期設定される。よって、軸ずれ検出手段24は、方位角0度方向を基準方向として、静止物標の延在方向と基準方向とが平行であるか否かを検出する。ここで、平行であれば、静止物標の延在方向が正確に検出されているので軸ずれは発生していない。一方、平行でなければ、静止物標の延在方向が誤って検出されているので、軸ずれ検出手段24が軸ずれを検出する。
【0054】
このとき軸ずれ検出手段24は、更に画像認識結果を用いて軸ずれ検出の精度を向上させる。すなわち、軸ずれ検出手段24は、静止物標の延在方向が精度よく検出できる状況を画像認識結果に基づいて選択し、かかる状況のときに軸ずれ検出を行う。あるいは、軸ずれ検出手段24は、画像認識装置50が画像認識した静止物標の延在方向を基準方向として用いる。
【0055】
ここで、まず方位角0度方向を基準方向とする場合について説明する。その次に変形例として、静止物標の画像認識された延在方向を基準方向とする場合について説明する。
【0056】
図5は、軸ずれ検出を行う際の状況について説明する図である。図5(A)、(B)はともに、直線道路における静止物標と車両1との位置関係を模式的に示す平面図である。ここで図5(A)は軸ずれ検出に適した状況を示し、図5(B)は、軸ずれ検出に適さない状況を示す。
【0057】
まず図5(A)では、静止物標の例としてガードレールが示される。ガードレールがレーダ信号を反射するときには、表面の形状や材質により反射信号のレベルに強弱が生じる。ここで、ガードレールにおいて反射強度が他の部分より強い点を反射点P1、P2、P3、…とする。
【0058】
ガードレールにおける反射点P1、P2、P3、…は、物標検出手段22によりそれぞれ1つの物標として検出される。よって、まず軸ずれ検出手段24は、検出された物標のうち、静止しているものを抽出する。具体的には、軸ずれ検出手段24は、車両1の走行速度と同じ大きさで、かつ正負が反転した相対速度を有する物標を抽出する。ここで走行速度は、車両制御装置100から与えられる。このようにして軸ずれ検出手段24は、反射点P1、P2、P3、…を検出する。ここで、反射点P1、P2、P3、…の相対距離はそれぞれR1、R2、R3、…、方位角はそれぞれθ1、θ2、θ3、…である。
【0059】
次に、軸ずれ検出手段24は、反射点P1、P2、P3、…の分布方向を検出する。この分布方向が、ガードレールの延在方向である。反射点の分布方向は、少なくとも2つの反射点を結ぶ直線の方向(方位角0度方向に対する角度)に対応する。よって、軸ずれ検出手段24は、たとえば反射点P1、P2を用いて次式の演算により分布方向αを導出する。
α=(車両1の横方向におけるP1、P2の位置の差分)/
(車両1の進行方向におけるP1、P2の位置の差分)
=(R2・sinθ2−R1・sinθ1)/(R2・cosθ2−R1・cosθ1)
あるいは、軸ずれ検出手段24は、反射点P1、P2、P3、…を通る直線を最小二乗法により導出し、その直線の方位角0度方向に対する角度を導出してもよい。
【0060】
軸ずれ検出手段24は、上記のようにして導出した反射点の分布方向αと方位角0度方向との差分を導出する。そして、軸ずれ検出手段24は、差分が許容範囲より大きければ軸ずれを検出し、車両制御装置100に軸ずれを通知する。ここで許容範囲は、軸ずれとして認めうる角度差であって予め任意に設定される。許容範囲はたとえば、0.5度〜1度である。一方、軸ずれ検出手段24は、差分が許容範囲内であれば軸ずれを検出せず、したがって車両制御装置100に軸ずれを通知しない。
【0061】
ここで、ガードレールの近傍に建築物や停車中の車両といった他の静止物標が存在する状況が生じる場合がある。図5(B)は、かかる状況を示す。
【0062】
ガードレール近傍の他の静止物標から得られる受信信号レベルは、一般的にガードレールにおける反射点から得られる受信信号レベルより大きい。これは、他の静止物標の反射断面積がガードレールの反射点の部分の面積より大きいことによる。よって、このような状況では、ガードレールにおける反射点P2、P3、…の代わりに、建築物における反射点P12が検出される場合がある。すると、反射点P1、P12に基づいてガードレールの延在方向が誤って検出されるおそれがある。
【0063】
ここで、軸ずれ検出手段24は、画像認識結果を併用することにより、上記のような軸ずれ検出に適した状況と適さない状況を判断する。次に、かかる判断方法について説明する。
【0064】
図6は、図5で示した状況に対応する撮像画像を模式的に示す図である。図6(A)には、図5(A)の状況に対応する撮像画像が示される。ここでは、撮像画像を点線で図示し、検出されたエッジを実線で示す。この撮像画像には、背景として空と走行路面が、被写体としてガードレール、センターライン、および車両1のボンネット部分が写っている。そして、ガードレール、センターラインなどのエッジが認識される。ここでは、図示するように、ガードレールの周囲や背後には他の被写体画像は存在しない。
【0065】
一方、図6(B)には、図5(B)の状況に対応する撮像画像が示される。この場合、ガードレール近傍に建築物が存在するので、撮像画像ではガードレールの背後に建築物が映っている。よって、ガードレールのエッジと建築物のエッジとが重複している。
【0066】
画像認識手段62は、画像認識したときのガードレールの状態を画像認識結果として軸ずれ検出手段24に通知する。すなわち、ガードレールのエッジと重複する建築物などのエッジが存在するか否かを検出して、軸ずれ検出手段24に通知する。すると、軸ずれ検出手段24は、ガードレールのエッジと重複する建築物などのエッジが存在しなければ軸ずれ検出に適した状況であると判断し、軸ずれ検出を実行する。一方、ガードレールのエッジと重複する建築物などのエッジが存在するときには軸ずれ検出に適さない状況であると判断し、軸ずれ検出を中止する。
【0067】
ここで、ガードレールなどの静止物標の近傍に他の静止物標が存在する状況をレーダ装置10単独で検出するのは困難である。あるいは、一定時間にわたって受信信号レベルの推移を観察する必要があるので、時間を要する。この点、画像認識はエッジの有無により他の静止物標の有無を検出できるので、他の静止物標が存在する状況をより確実かつ迅速に検出することができる。
【0068】
このように、軸ずれ検出手段24は、画像認識結果を併用することにより軸ずれ検出に適した状況のときに軸ずれ検出を行い、そうでないときには軸ずれ検出を中止するので、軸ずれ検出の精度を向上させることができる。
【0069】
ところで、静止物標の延在方向が車両の進行方向と一致しない場合がある。たとえば、車線の合流地点に向かっているときや道幅が徐々に狭くなっているような場合には、ガードレールの延在方向が車両の進行方向と平行にならない。あるいは、路側の看板が車両から見易いように車両の進行方向に対し角度をつけて設置されているような場合もある。
【0070】
このような場合に、本実施形態における変形例では、画像認識手段62は、静止物標の延在方向を画像認識する。そして、軸ずれ検出手段24は、画像認識された延在方向を基準方向とする。そうすることにより、静止物標の延在方向が車両1の進行方向と平行でない場合であっても、精度よく軸ずれを検出できる。
【0071】
図7は、静止物標の延在方向を画像認識する方法を説明する図である。図7(A)には、図6(A)で示した撮像画像が示される。画像認識手段62は、ガードレールのエッジ形状を認識すると、路面に接触する下端エッジの延在方向を導出する。具体的には、画像認識手段62は、下端エッジの撮像画像における傾き角度(撮像画像の横方向に対する角度)α´を導出する。そして、傾き角度α´に対応する延在方向を導出する。
【0072】
ここで、画像認識装置50は車両1に固定されているので、走行路面前方の傾斜を一定としたときに、被写体の下端エッジの延在方向は撮像画像内におけるエッジの傾き角度に対応している。よって、かかる傾き角度と延在方向との対応関係を、予めマップデータとして画像認識装置50内のROMに格納しておく。そうすることにより、画像認識手段62は、かかるマップデータを参照して、エッジの傾き角度に対応するガードレールの延在方向を導出できる。
【0073】
図7(B)は、ガードレールの代わりに看板が静止物標として認識されたときの延在方向を示す。ここでも、図7(A)の説明と同様に、画像認識手段62は、看板のエッジ形状を認識すると、下端エッジの撮像画像における傾き角度α´を導出する。そして、傾き角度α´に対応する延在方向を導出する。
【0074】
なお、上記のようにして静止物標の延在方向を画像認識により検出する場合、画像認識装置50自体の取付け位置や角度が変化し、画像認識装置50に軸ずれが発生していると、静止物標の延在方向を誤って検出してしまう。よって、画像認識装置50の軸ずれが発生していないことを更に検出することにより、基準方向の正確性を担保できる。なお、画像認識装置50の軸は、撮像範囲の中心に対応し、たとえば車両1進行方向の正面に一致するように初期設定される。そして、画像認識装置50では、画像認識手段62が次のようにして軸ずれを検出する。
【0075】
図8は、画像認識装置50の軸ずれ検出方法を説明する図である。図8(A)、(B)には、模式的な撮像画像が示される。
【0076】
図8(A)は、軸ずれが発生していない状態での、撮像画像の例である。ここでは、車両1の車体の一部が写されている。ここでは、たとえば車両1のボンネット上のエンブレムEBやフロントガラスの四隅に設けられるマーカMKが示される。
【0077】
画像認識装置50は車両1に対し固定されるので、軸ずれが発生していない状態では、エンブレムEBやマーカMKは撮像画像内で常に定位置にある。たとえば、エンブレムEBは撮像画像の左下を原点とするXY座標系で座標(x1,y1)に位置する。また、マーカMKは撮像画像の四隅に位置する。かかる定位置は、予め画像処理部54のROMに格納される。
【0078】
ところが、軸ずれが発生すると、エンブレムEBやマーカMKの撮像画像内での位置がずれる。図8(B)は、軸ずれが発生した状態での、エンブレムEBやマーカMKの撮像画像における位置を示す。ここでは、エンブレムEB、マーカMKともに、図8(A)で示した定位置からずれている。
【0079】
このように、画像認識手段62は、車体の一部を指標として、その位置が撮像画像内の定位置にあるか否かを検出し、定位置にあれば軸ずれが発生しておらず、定位置からずれていれば軸ずれが発生していることを検出する。なおここでは複数の指標を用いているが、1つの指標を用いてもよい。このように画像認識手段62が画像認識装置50の軸ずれが発生していないことを検出することにより、基準方向の正確性を担保できる。よって、基準方向に基づくレーダ装置10の軸ずれ検出の精度が向上する。
【0080】
図9は、軸ずれ検出手順を説明するためのフローチャート図である。図9の手順は、図4における手順S60を詳述するサブルーチンである。
【0081】
説明の便宜上、画像認識装置50の動作手順から説明する。画像認識手段62は、まず直線走行中であることを確認する(S122)。このとき画像認識手段62は、過去の処理周期で検出したセンターラインのエッジ形状に基づき、直線走行中であることを検出する。センターラインのエッジ形状が直線を形成していれば、直線走行中であると判断できる。
【0082】
そして、画像認識手段62は、直線走行中であるときには(S122のYES)、直線走行フラグをONに設定する(S124)。ここで直線走行フラグは、プログラム上の変数である。一方、直線走行中でないときには、画像認識手段62は直線走行フラグをOFFに設定する(S125)。
【0083】
画像認識手段62は、直線走行中であることを検出すると、物標を認識する(S126)。そして画像認識手段62は、ガードレールなど、車両1進行方向に延在する静止物標を認識したときには(S128のYES)、画像認識フラグをONに設定して(S132)、処理を終了する。ここで画像認識フラグは、プログラム上の変数である。一方、かかる静止物標を認識しないとき、あるいは、静止物標のエッジが他の静止物標のエッジと重複しているときには(S128のNO)、画像認識手段62は画像認識フラグをOFFに設定する(S131)。そして画像認識手段62は、直線走行フラグ、画像認識フラグをレーダ装置10に出力して(S133)、処理を終了する。
【0084】
レーダ装置10では、軸ずれ検出手段24が、直線走行中であることを確認する(S104)。このとき軸ずれ検出手段24は、画像認識装置50から与えられる直線走行フラグに基づき直線走行中であるか否かを検出する。あるいは軸ずれ検出手段24は、車両制御装置100から与えられる車両1の旋回半径に基づき直線走行中であるか否かを検出する。たとえば軸ずれ検出手段24は、旋回半径が基準値以上であれば直線走行中であることを検出する。ここで軸ずれ検出手段24は、直線走行とみなされる任意の値(たとえば1万メートル)を基準値として用いる。なお、旋回半径を用いる場合には、画像認識装置50による手順S122を省略することが可能である。
【0085】
そして、軸ずれ検出手段24は、直線走行中のときには(S104のYES)、過去の走査周期で検出された物標情報から、静止物標の反射点を抽出する(S106)。そして軸ずれ検出手段24は、反射点の分布方向を導出する(S108)。
【0086】
そして、軸ずれ検出手段24は、画像認識装置50から与えられる画像認識フラグがONのときには(S110のON)、反射点の分布方向と基準方向との差分を導出する(S112)。ここで、基準方向は方位角0度方向である。そして軸ずれ検出手段24は、差分が基準値以上のときには(S114のYES)、軸ずれ通知を車両制御装置100に出力する。一方、画像認識フラグがOFFのときには(S110のOFF)、軸ずれ検出手段24は処理を終了する。
【0087】
このように、直線走行中にガードレールの近傍に他の静止物標がなく、したがって軸ずれ検出に適した状況のときに軸ずれ検出を行うことにより、軸ずれ検出精度を向上させることができる。
【0088】
図10は、変形例における軸ずれ検出手順を説明するフローチャート図である。図10では、画像認識手段62が静止物標を認識した際(S128のYES)、その下端エッジの延在方向を検出する(S130)。そして、画像認識手段62は、延在方向と直線走行フラグ、画像認識フラグをレーダ装置10に出力する(S134)。
【0089】
よって、レーダ装置10では、軸ずれ検出手段24は画像認識された下端エッジの延在方向を基準方向として手順S112を実行する。
【0090】
このような手順によれば、静止物標の延在方向が車両の進行方向と平行でない場合であっても、レーダ装置10の軸ずれを精度よく検出することができる。なお、車両1が旋回しているときには軸ずれ検出の精度が相対的に低下するが、手順S104、S122で直線走行中であることを判断することにより、旋回中に軸ずれ検出を行うことを回避できる。よって、軸ずれ検出精度の低下を防止できる。
【0091】
図11は、さらに好適な態様における軸ずれ検出手順を説明するフローチャート図である。図11は、図10の手順に更に手順S102、S120を追加したものである。ただしこれらの手順は、いずれか1つのみを追加してもよい。
【0092】
手順S120では、画像認識手段62は、画像認識装置50の軸ずれの有無を検出する。そして、軸ずれが発生していないときに(S120のNO)、上述した手順S122以降を実行する。一方、軸ずれが発生しているときには(S120のYES)、処理を終了する。かかる手順を追加することにより、静止物標の延在方向を検出したときにその正確さが担保される。すなわち、基準方向の正確さが担保される。
【0093】
また、手順S102では、軸ずれ検出手段24は、車両1の走行速度が基準速度以上であることを確認する。走行速度は、車両制御装置100から与えられる。ここで、基準速度は例えば時速40kmである。車両がある程度以上の速度で走行していれば、路側にガードレールや看板などの静止物標が存在する状況が発生する蓋然性が高くなる。よって、軸ずれ検出に更に適した状況であることが担保される。
【0094】
よって、走行速度が基準速度以上のときに(S102のYES)、軸ずれ検出手段24は、上述した手順S104以降を実行する。一方、走行速度が基準速度未満のときには(S102のNO)、軸ずれ検出手段24は、処理を終了する。
【0095】
上述の説明では、FM−CW方式のレーダ装置を例としたが、物標の相対速度、相対距離を別々に検出可能なレーダ装置であれば、FM−CW方式に限らなくてもよい。たとえば、一定周波数のレーダ信号により物標の相対速度を検出するドップラレーダと、パルス信号の往復時間により物標との相対距離を検出するパルスレーダとを組み合わせることにより、かかる構成が可能となる。
【0096】
また、車両の前方監視用レーダ装置を例として説明したが、車両の後方を監視するためのレーダ装置であってもよい。この場合、車両の後方の撮像画像に基づき画像認識を行う画像認識装置を併用することで、上述した実施形態を適用できる。
【0097】
また、上述の説明では、軸ずれが発生したときには車両制御装置100が制御を中止した。しかし、レーダ装置10における物標検出手段22が、軸ずれを補正した物標情報を車両制御装置100に出力するようにしてもよい。そうすることにより、車両制御装置100は正確な物標情報に基づいて車両を制御できる。
【0098】
以上説明したように、本実施形態によれば、車載レーダ装置の軸ずれを精度よく検出することが可能となる。
【符号の説明】
【0099】
10:レーダ装置、12:レーダ送受信機、14:信号処理装置、24:軸ずれ検出手段、50:画像認識装置、62:画像認識手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるとともに静止物標に反射されたレーダ信号を受信するレーダ送受信機の信号処理装置であって、
前記静止物標における前記レーダ信号の反射点を前記受信したレーダ信号に基づき検出する物標検出手段と、
前記車両に搭載された画像認識装置が前記静止物標の近傍に他の物標が存在しないことを前記静止物標を含む撮像画像に基づき検出したときに、前記反射点の分布方向と基準方向との差分が基準値以上か否かを検出する軸ずれ検出手段とを有することを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記基準方向は、前記レーダ装置のレーダ軸が設定される方向であることを特徴とする信号処理装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記基準方向は、前記画像認識装置が前記撮像画像に基づき検出する前記静止物標の延在方向であることを特徴とする信号処理装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記軸ずれ検出手段は、前記車両が直進するときに前記反射点の分布方向と前記基準方向との差分が前記基準値以上か否かを検出することを特徴とする信号処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のレーダ送受信機と信号処理装置とを有するレーダ装置。
【請求項1】
車両に搭載されるとともに静止物標に反射されたレーダ信号を受信するレーダ送受信機の信号処理装置であって、
前記静止物標における前記レーダ信号の反射点を前記受信したレーダ信号に基づき検出する物標検出手段と、
前記車両に搭載された画像認識装置が前記静止物標の近傍に他の物標が存在しないことを前記静止物標を含む撮像画像に基づき検出したときに、前記反射点の分布方向と基準方向との差分が基準値以上か否かを検出する軸ずれ検出手段とを有することを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記基準方向は、前記レーダ装置のレーダ軸が設定される方向であることを特徴とする信号処理装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記基準方向は、前記画像認識装置が前記撮像画像に基づき検出する前記静止物標の延在方向であることを特徴とする信号処理装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記軸ずれ検出手段は、前記車両が直進するときに前記反射点の分布方向と前記基準方向との差分が前記基準値以上か否かを検出することを特徴とする信号処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のレーダ送受信機と信号処理装置とを有するレーダ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−2346(P2011−2346A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145940(P2009−145940)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
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