説明

偏肉樹脂シートの製造方法および製造装置

【課題】成形時の幅方向の厚さ分布が大きい樹脂シートを製造した際に、反りや歪みのない樹脂シートの製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】溶融した樹脂をダイ12からシート状に押し出す押出工程112と、押し出した樹脂シート14を型ローラ16とニップローラ18とでニップして偏肉成形しながら冷却して固化する成形冷却工程と、型ローラ16から剥離した樹脂シートを徐冷する徐冷工程116と、を備え、成形冷却工程112及び徐冷工程116前の少なくとも一方において、樹脂シート14の幅方向の温度分布が均一となるように、噴霧ノズル30が設けられた液体噴霧手段で液体を吹き付けて樹脂シートを冷却する噴霧冷却工程を有するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂シートの製造方法および製造装置に係り、特に、液晶表示装置のバックライトを構成する導光板のように幅方向で厚みの異なる偏肉樹脂シートにおいて、反りのないフラットなシートを製造する製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種光学素子に使用される樹脂シートとして、フレネルレンズやレンチキュラーレンズ等が様々な分野で使用されている。このような樹脂シートの表面には、規則的な凹凸形状が形成されており、この凹凸形状により、フレネルレンズやレンチキュラーレンズとしての光学的性能を発揮している。このような樹脂シートを製造する方法として、これまでに各種の提案がなされている(特許文献1〜7参照)。これらの提案においては、いずれも、生産性向上の観点よりローラ成形方式が採用されている。
【0003】
たとえば、特許文献1は、樹脂シートをローラから剥離するまでの間の冷却手段に工夫を施すことにより、転写性の向上を図っている。特許文献2は、ローラに金型を巻き付けてフレネルレンズを製造する方法を開示している。特許文献3は、成形ローラの内部に熱緩衝部材を配して、生産性及び転写性の向上を図っている。特許文献4は、コロナ放電処理を採用することにより、転写性の向上、欠陥の低減を図っている。
【0004】
また、特許文献5〜7は、樹脂シートの歪みを低減して、高精度な板厚を実現するために、ダイより押出した後の樹脂シートの両端部分や中央部を加熱もしくは冷却することで、板厚精度の優れた樹脂シートを製造することを図っている。
【0005】
これら従来技術の代表的なローラ成形方式は、図10に示される構成のようになっている。この装置構成は、押出機(図示略)によって溶融された樹脂シート101をシート状に賦形するためのシート用のダイ102と、表面に凹凸形状が形成されたスタンパーローラ103と、スタンパーローラ103に対向配置される鏡面ローラ104と、スタンパーローラ103に対向するとともに、鏡面ローラ104の反対側に配置される剥離用鏡面ローラ105よりなる。そして、ダイ102より押し出したシート状の樹脂シート101を、スタンパーローラ103と鏡面ローラ104とで挟圧し、スタンパーローラ103表面の凹凸形状を樹脂シート101に転写し、樹脂シート101を剥離用鏡面ローラ105に巻き掛けることによりスタンパーローラ103より剥離する。
【特許文献1】特開平8−31025号公報
【特許文献2】特開平7−314567号公報
【特許文献3】特開2003−53834号公報
【特許文献4】特開平8−287530号公報
【特許文献5】特開2002−120248号公報
【特許文献6】特開2002−67124号公報
【特許文献7】特開2005−349600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献に記載の方法は、いずれも、幅方向厚みが均一な樹脂シートを製造する方法に関するものであり、例えば、液晶表示装置のバックライトを構成する導光板の樹脂シートのように成形時の幅方向の厚さ分布が大きい(偏肉となる)偏肉樹脂シートの製造に従来の方法を適用しても反りや歪みのない偏肉樹脂シートを製造することが困難である。
【0007】
たとえば、PMMA(ポリメチルメタクリレート樹脂)を押出し後にローラ成形する際に、幅方向に厚さ分布を付け、最厚肉部と最薄肉部との厚さの差を0.5mm以上とする。この場合、表面又は裏面に凹凸(樹脂の硬化時の収縮による引け、弾性回復量分布)を生じたり、全体的に表面形状転写率が低下して成形が上手くいかなかったり、シャープエッジ形状が転写できなかったり、各種の問題があった。中でも、幅方向に大きな厚み差(偏肉)がある場合、ダイからシート状に押出された直後の、樹脂膜の温度は、幅方向で均一に制御が可能である。しかし、ロール面や外気接触面から、次第に冷却される場合、膜厚の厚い部分の温度低下は、薄い部分の温度低下に比べて遅くなり、幅方向に温度分布が生じる。そして、当然のことながら、収縮差のために、結果として、シートは、反りや歪みが発生することは避けられなかった。このために、全体としてゆっくり冷却したり、引っ張ったりすることによって、反りや歪みを低減する試みが考えられるものの、高精度な偏肉形状を得ることは極めて困難であった。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、成形時の幅方向の厚さ分布が大きい偏肉樹脂シートを製造した際に、反りや歪みのない、所望の断面形状を得ることができ、特に、各種表示装置の背面に配される導光板や各種光学素子に使用するのに好適な偏肉樹脂シートの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1は、上記目的を達成するために、溶融した樹脂をダイからシート状に押し出す押出工程と、押し出した樹脂シートを型ローラとニップローラとでニップして偏肉成形しながら冷却して固化する成形冷却工程と、前記型ローラから剥離した樹脂シートを徐冷する徐冷工程と、を備え、前記成形冷却工程及び前記徐冷工程前の少なくとも一方において、前記樹脂シートの幅方向の温度分布が均一となるように、噴霧ノズルが設けられた液体噴霧手段で液体を吹き付けて樹脂シートを冷却する噴霧冷却工程を有することを特徴とする偏肉樹脂シートの製造方法を提供する。
【0010】
請求項1によれば、偏肉樹脂シートの製造方法において、噴霧ノズルが設けられた液体噴霧手段で液体を吹き付けて樹脂シートを冷却することで、樹脂シートの幅方向の温度分布が均一となるように製造を行っている。したがって、幅方向の温度分布がなくなるため、歪みや反りなどの変形を抑制することが所望のシート形状を得ることができる。
【0011】
請求項2は請求項1において、前記液体噴霧手段は、前記樹脂シートの両面に設置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2によれば、液体噴霧手段が樹脂シートの両面に設置されているため、高精度の温度制御すなわち歪みや反りなどの変形をさらに抑制することが可能となる。尚、液体の噴霧は、必ずしも同時に行うものとは限らない。
【0013】
請求項3は請求項1または2において、前記液体噴霧手段は、前記樹脂シートの厚みが厚い部分ほど、高次関数的に、より多くの液体を噴霧することを特徴とする。
【0014】
樹脂シートの厚みが厚い部分は、薄い部分に比べて極めて冷却が遅いので、冷却分布を抑制するには、噴霧量を十分に大きくする必要がある。
【0015】
請求項3によれば、液体噴霧手段により樹脂シートの厚みが厚い部分ほど高次関数的に、より多くの液体を噴霧することで、幅方向の温度分布がなくなり、歪みや反りなどの変形を抑制することが所望のシート形状を得ることができる。
【0016】
請求項4は請求項3において、前記液体噴霧手段は、前記樹脂シートの厚みが厚い部分ほど噴霧ノズルの数が多いことを特徴とする。
【0017】
請求項4によれば、樹脂シートの厚みが厚い部分ほど噴霧ノズルの数が多いことで、樹脂シートの厚みが厚い部分ほど、高次関数的に、より多くの液体を噴霧することができる。
【0018】
請求項5は請求項3において、前記噴霧ノズルは、前記樹脂シートの進行方向に、液体を噴霧する噴霧面積を変えたものを複数個直列に配置していることを特徴とする。
【0019】
請求項5によれば、噴霧ノズルを、樹脂シートの進行方向に、液体を噴霧する噴霧面積を変えたものを複数個直列に配置することで、樹脂シートの厚みが厚い部分ほど、高次関数的に、より多くの液体を噴霧することができる。
【0020】
請求項6は請求項4または5において、前記噴霧ノズルが前記液体を噴霧する領域は円形であり、前記円形が一部重なり合うように前記噴霧ノズルが配置されていることを特徴とする。
【0021】
請求項6によれば、噴霧ノズルが前記液体を噴霧する領域は円形であり、この円形が一部重なり合うように噴霧ノズルが複数個配置されていることで、噴霧ノズルから噴射される領域に当らない継ぎ目の箇所が無くなるので、効果的に樹脂シートの幅方向の温度分布が均一になるようにすることができる。
【0022】
請求項7は請求項1〜6の何れか1において、前記噴霧ノズルは、回転または揺動していることを特徴とする。
【0023】
請求項7によれば、噴霧ノズルが回転または揺動していることで、液体の噴霧ムラを抑制することができるので、更に効果的に樹脂シートの幅方向の温度分布が均一になるようにすることができる。
【0024】
請求項8は請求項1〜7の何れか1において、前記液体は、水またはアルコールを少なくとも含むことを特徴とする。
【0025】
請求項8によれば、噴霧する液体が水またはアルコールを少なくとも含むことで、好適に樹脂シートを冷却することができる。
【0026】
請求項9は請求項1〜8の何れか1において、前記液体噴霧手段は、液体を1μm〜100μmの粒径にして前記樹脂シートに吹き付けることを特徴とする。
【0027】
請求項9によれば、液体を1μm〜100μmの粒径にして樹脂シートに吹き付けることで、樹脂シート表面の平滑性を維持することができる。
【0028】
請求項10は請求項1〜9の何れか1において、前記偏肉樹脂シートは、シート幅方向における最厚肉部と最薄肉部との厚さの差が、0.5mm以上となることを特徴とする。
【0029】
請求項11は請求項1〜10の何れか1において、前記偏肉樹脂シートは、最薄肉部の厚さが5mm以下であることを特徴とする。
【0030】
請求項10および11は、本発明の製造方法により製造される樹脂シートの厚さを規定したものである。本発明の製造方法によれば、樹脂シートの温度を制御することができるため、最厚肉部と最薄肉部との差が大きい樹脂シート、または、膜厚の厚い樹脂シートにおいても、歪みおよび反りなど成形が抑制された樹脂シートを形成することができる。このように、従来、成形が困難であった断面形状の樹脂シートの成形において、本発明の効果を発揮することができる。
【0031】
本発明の請求項12は、上記目的を達成するために、溶融した樹脂をダイからシート状に押し出す押出手段と、押し出した樹脂シートを型ローラとニップローラとでニップして偏肉成形しながら冷却して固化する成形冷却手段と、前記型ローラから剥離した樹脂シートを徐冷する徐冷手段と、を備え、前記成形冷却手段及び前記徐冷手段前の少なくとも一方に、前記樹脂シートの幅方向の温度分布が均一となるように液体を吹き付ける噴霧ノズルが設けられた液体噴霧手段を備えることを特徴とする偏肉樹脂シートの製造装置を提供する。
【0032】
請求項12は本発明を装置として構成したものである。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、幅方向の厚さ分布が大きい偏肉樹脂シートを製造した際に、反りや歪みのない、所望の断面形状を得ることができ、特に、各種表示装置の背面に配される導光板や各種光学素子に使用するのに好適な偏肉樹脂シートの製造方法および製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、添付図面に従って、本発明に係る偏肉樹脂シートの製造方法及び製造装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0035】
図1は、偏肉樹脂シートの製造方法の全体工程図であり、図2は各工程における装置構成である。
【0036】
図1に示すように、偏肉樹脂シートの製造方法は、主として、原料の計量や混合を行う原料工程100と、溶融した樹脂を連続してシート状(帯状)に押し出す押出工程112と、押し出した樹脂シート14を偏肉成形しながら冷却して固化する成形冷却工程114と、固化した樹脂シート14を徐冷する徐冷工程116と、徐冷した樹脂シート14の反りに関して所定基準に対する合否を測定する反り測定工程118と、樹脂シート14の表裏面に表面保護用のフィルムをラミネートするラミネート工程122と、樹脂シート14を所定サイズ(長さ・幅)に裁切断する裁断・切断工程124と、裁切断された樹脂シート14を積載する積載工程126とで構成される。
【0037】
図2に示すように、原料工程100では、原料サイロ128(又は原料タンク)及び添加物サイロ130(又は添加物タンク)から自動計量機132に送られた原料樹脂及び添加物が自動計量され、混合器134で原料樹脂と添加物が所定比率になるように混合される。原料樹脂に添加物として拡散粒子を添加する場合には、原料樹脂に拡散粒子を所定濃度よりも高濃度に添加したマスターペレットを造粒機(図示せず)で製造しておき、拡散粒子が添加されていないベースペレットとを混合器134で所定比率混合するマスターバッチ方式を好適に採用できる。拡散粒子以外の添加物を添加する場合も同様である。
【0038】
原料工程100で適切に計量・混合された原料樹脂は押出工程112に送られる。
【0039】
押出工程112では、混合器134で混合された原料樹脂がホッパー136を介して押出機138に投入され、この押出機138により混練りされながら溶融される。押出機138は単軸式押出機及び多軸式押出機の何れでもよく、押出機138の内部を真空にするベント機能を含むものが好ましい。押出機138で溶融された原料樹脂は、スクリューポンプ又はギアポンプ等の定量ポンプ140により供給管142を介してダイ12(例えばTダイ)に送られる。そして、ダイ12からシート状に押し出された樹脂シート14は次に成形冷却工程114に送られる。
【0040】
成形冷却工程114では、ダイ12から押し出された樹脂シート14を、型ローラ16とニップローラ18とでニップして偏肉成形しながら冷却して固化し、固化した樹脂シート14を剥離ローラ20で剥離する。
【0041】
成形冷却工程114を経た樹脂シート14は次に徐冷工程116に送られる。
【0042】
徐冷工程(又はアニーリング工程)116は、剥離ローラ20の下流における樹脂シート14の急激な温度変化を防止するために設けられたものである。樹脂シート14に急激な温度変化を生じた場合、例えば樹脂シート14の表面近傍が塑性状態になっているのに、樹脂シート14の内部が弾性状態であり、この部分の硬化による収縮で樹脂シート14の表面形状が悪化する。また、樹脂シート14の表裏面に温度差を生じ、樹脂シート14に反りを生じ易い。特に、偏肉樹脂シートのように樹脂シート幅方向において肉厚分布がある場合に反りを生じ易い。
【0043】
徐冷工程116で冷却された樹脂シート14は、ニップタイプのフィードローラ76により引き取られて、反り測定工程118に送られる。
【0044】
反り測定工程118では、反り測定器78により樹脂シート14の反りの所定基準に対する合否を測定する。ここで反りを、蒲鉾形状の樹脂シート14の例で説明すると、図3に示すように、縦600mm×横1100mmに切り出した樹脂シート14の裏面(平坦面側)を平面な測定基盤80の上面に載置したときに、樹脂シート14と測定基盤80との最大距離Hを反り量という。反り量の所定基準(規格値)は、樹脂シート14の用途及びユーザ側の規格により設定されるので、反り測定器78は所定基準に対する合否を測定する。反り測定器78としては、例えば、徐冷ゾーン36後の偏肉樹脂シートの表面(外周)を静電センサなどでスキャンさせ、偏肉樹脂シートと静電センサとの距離(形状)を計測して、反り量を換算する方式を好適に使用することができる。
【0045】
反り測定工程118の下流には、ラミネート工程122、裁断・切断工程124、及びストッカー79を備えた積載工程126が順に設けられる。このうち、ラミネート工程122は、樹脂シート14の表裏面に保護フィルム(ポリエチレン等のフィルム)を貼り付ける工程であり、一対のリール82から巻き戻された保護フィルム84が樹脂シート14を挟み込むように合流され、ニップローラ86を通過することによりラミネートされる。
【0046】
裁断・切断工程124は樹脂シート14の幅方向両端部分(耳部)を切除すると共に樹脂シート14を所定長さに切り揃える工程である。切断機88としては、図2に示すように、受け刃88Aと押し当て刃88Bとからなるギロチンタイプの切断機を好適に使用できるが、これに限定するものではない。また、裁断機90としては、図2に示すように、レーザーカッターあるいは電子ビーム切断を好適に使用できるが、これに限定するものではない。
【0047】
以上の工程によって樹脂シートを製造する場合において、幅方向の厚さ分布が大きい偏肉樹脂シートを製造した際に、膜厚の厚い部分の温度低下は、薄い部分の温度低下に比べて遅くなり、幅方向に温度分布が生じてしまう。そして、その幅方向の温度分布に起因して、シートに収縮差が生じ、結果として、反りや歪みが発生するという問題が生じた。
【0048】
そこで、本発明では、溶融した樹脂をダイからシート状に押し出す押出工程と、押し出した樹脂シートを型ローラとニップローラとでニップして偏肉成形しながら冷却して固化する成形冷却工程と、前記型ローラから剥離した樹脂シートを徐冷する徐冷工程と、を備え、前記樹脂シート幅方向のシート厚みに偏りのある偏肉樹脂シートを製造する方法であって、前記成形冷却工程及び前記徐冷工程の少なくとも一方の工程において、前記樹脂シートの幅方向の温度分布が均一となるように、噴霧ノズルが設けられた液体噴霧手段で液体を吹き付けて樹脂シートを冷却する噴霧冷却工程を有するようにした。
【0049】
以下、上記の各工程のうち、成形冷却工程114の詳細と、本発明の特徴をなす、成形冷却工程114と徐冷工程116前の少なくとも一方において実施する噴霧冷却工程について詳説する。
【0050】
偏肉樹脂シートの製造ライン10は、図4に示すように、押出機138(図2参照)によって溶融された原料樹脂をシート状に賦形するためのダイ12と、表面に偏肉形状が形成された型ローラ16と、型ローラ16に対向配置されるニップローラ18と、型ローラ16に対向配置される剥離ローラ20と、で構成される。そして、樹脂シートの幅方向の温度分布が均一となるように液体を吹き付ける噴霧ノズルが設けられた液体噴霧手段は、図4に示す22、24、26、28、29の位置の少なくとも1箇所に設けられる。
【0051】
型ローラ16の表面には、例えば、図5(a)〜(c)に示される偏肉樹脂シートを成形するための反転形状が形成されている。図5は、成形後の樹脂シート14の断面図である。すなわち、樹脂シート14の裏面は平面であり、樹脂シート14の表面には、走行方向に平行な直線状の偏肉形状面が形成されている。したがって、型ローラ16の表面には、図5(a)〜(c)に示す成形後の樹脂シート14の反転形状のエンドレス溝を形成すればよい。なお、樹脂シート14表面の偏肉形状の詳細については後述する。
【0052】
型ローラ16の材質としては、各種鉄鋼部材、ステンレス鋼、銅、亜鉛、真鍮、これらの金属材料を芯金として、表面にゴムライニングしたもの、これらの金属材料にHCrメッキ、Cuメッキ、Niメッキ等のメッキを施したもの、セラミックス、及び各種の複合材料が採用できる。
【0053】
型ローラ表面の逆蒲鉾形状の形成は、ローラ表面の材質にもよるが、一般的にはNC旋盤による切削加工と仕上げバフ加工との組み合わせが好ましく採用できる。また、他の公知の加工方法(研削加工、超音波加工、放電加工、等)も採用できる。型ローラ表面の表面粗さは、中心線平均粗さRaで0.5μm以下とするのが好ましく、0.2μm以下とするのがより好ましい。型ローラ16は、図示しない駆動手段により、所定の周速度で回転駆動される。
【0054】
ニップローラ18は、型ローラ16に対向配置され、型ローラ16とで樹脂シート14を挟圧するためのローラである。ニップローラ18の材質としては、各種鉄鋼部材、ステンレス鋼、銅、亜鉛、真鍮、これらの金属材料を芯金として、表面にゴムライニングしたもの、これらの金属材料にHCrメッキ、Cuメッキ、Niメッキ等のメッキを施したもの、セラミックス、及び各種の複合材料が採用できる。
【0055】
ニップローラ18の表面は鏡面状に加工されていることが好ましく、中心線平均粗さRaで0.5μm以下とするのが好ましく、0.2μm以下とするのがより好ましい。このような平滑な表面とすることにより、成形後の樹脂シート14の裏面を良好な状態にできる。また、ニップローラ18は、図示しない駆動手段により、所定の周速度で回転駆動される。尚、ニップローラ18に駆動手段を設けない構成も可能であるが、樹脂シート14の裏面を良好な状態にできる点より、駆動手段を設けることが好ましい。
【0056】
ニップローラ18には、図示しない加圧手段が設けられており、型ローラ16との間の樹脂シート14を所定の圧力で挟圧できるようになっている。この加圧手段は、いずれも、ニップローラ18と型ローラ16との接触点における法線方向に圧力を印加する構成のもので、モータ駆動手段、エアシリンダ、油圧シリンダ等の公知の各種手段が採用できる。
【0057】
ニップローラ18には、挟圧力の反力による撓みが生じにくくなるような構成を採用することもできる。このような構成としては、ニップローラ18の背面側(型ローラ16の反対側)に図示しないバックアップローラを設ける構成、クラウン形状(中高形状とする)を採用する構成、ローラの軸方向中央部の剛性が大きくなるような強度分布を付けたローラの構成、及びこれらを組み合わせた構成等が採用できる。
【0058】
また、剥離ローラ20は、型ローラ16に対向配置され、樹脂シート14を巻き掛けることにより樹脂シート14を型ローラ16より剥離するためのローラで、型ローラ16の180度下流側に配置される。剥離ローラ20の表面は鏡面状に加工されていることが好ましい。このような表面とすることにより、成形後の樹脂シート14の裏面を良好な状態にできる。そして、剥離ローラ表面の表面粗さは、中心線平均粗さRaで0.5μm以下とするのが好ましく、0.2μm以下とするのがより好ましい。剥離ローラ20の材質としては、各種鉄鋼部材、ステンレス鋼、銅、亜鉛、真鍮、これらの金属材料を芯金として、表面にゴムライニングしたもの、これらの金属材料にHCrメッキ、Cuメッキ、Niメッキ等のメッキを施したもの、セラミックス、及び各種の複合材料が採用できる。剥離ローラ20は、図示しない駆動手段により、所定の周速度で矢印方向に回転駆動される。尚、剥離ローラ20に駆動手段を設けない構成も可能であるが、樹脂シート14の裏面を良好な状態にできる点より、駆動手段を設けることが好ましい。
【0059】
本発明の偏肉樹脂シートの製造装置は、成形冷却手段及び徐冷手段前の少なくとも一方に、前記樹脂シートの幅方向の温度分布が均一となるように液体を吹き付ける噴霧ノズルが設けられた液体噴霧手段を備える。即ち、図4の22、24、26、28、29の位置の少なくとも1箇所に液体噴霧手段を備えることを特徴とする。この液体噴霧手段の噴霧ノズルで液体を吹き付けて樹脂シートを冷却することで、樹脂シートの幅方向の温度分布が均一となるように製造を行っている。したがって、幅方向の温度分布がなくなるため、歪みや反りなどの変形を抑制することが所望のシート形状を得ることができる。
【0060】
以下、図4の22の位置に液体噴霧手段を備えた例で説明する。そして、図5の(a)のように断面が形成される樹脂シートの場合について説明する。
【0061】
図6は、偏肉樹脂シートの製造ライン10の型ローラ16部分を下方から見た図であり、液体噴霧手段の噴霧ノズル30の配置例を示す。噴霧ノズル30は、図6に示すように、樹脂シート14の厚みが厚い部分ほど噴霧ノズルの数が多いように設定する。樹脂シートの厚みが厚い部分ほど噴霧ノズルの数が多いことで、樹脂シートの厚みが厚い部分ほど、より多くの液体を噴霧することができる。
【0062】
そして、図7に示すように、噴霧ノズル30が樹脂シート14に液体を噴霧する領域30aが円形であり、噴霧ノズル30が樹脂シート幅方向に複数個配置されている場合には、その円形が一部重なり合うように噴霧ノズルを配置することが好ましい(図6の上流側の噴霧ノズル)。このように、液体を噴霧する領域30a(円形)が一部重なり合うように噴霧ノズルが複数個配置されていることで、噴霧ノズルから噴射される領域に当らない継ぎ目の箇所が無くなるので、樹脂シート幅方向の噴霧ムラを抑制することができる。
【0063】
また、図8(a)は、噴霧ノズルを、樹脂シート14の進行方向に、液体を噴霧する噴霧面積を変えたものを複数個直列に配置して、樹脂シートに液体を吹き付けた例を示したものである。噴霧ノズルを、樹脂シートの進行方向に、液体を噴霧する噴霧面積を変えたものを複数個直列に配置することで、図8(b)に示すように、樹脂シートの厚みが厚い部分ほど、高次関数的に、より多くの液体を噴霧することができる。尚、このように、噴霧面積を変えるには、樹脂シートと噴霧ノズルとの間隔を調整しても良いし、噴霧ノズルの構造を調整しても良い。また、図8(a)に示したように、この場合においても、液体を噴霧する領域31a、31b、31c、31d(円形)が一部重なり合うように噴霧ノズルを配置することが好ましい。
【0064】
尚、本発明において、噴霧ノズルの数や噴霧ノズル同士の距離については、適宜、設定することできる。
【0065】
ここで、図9(a)のような偏肉樹脂シート断面のとき、厚肉部は薄肉部に比べ極めて冷却が遅いので、温度分布を抑制するには、厚肉部への液体の噴霧量は十分に多くする必要がある。例えば、厚肉部と薄肉部の厚み差が1.5倍とすると、熱容量だけで考えれば、厚肉部の必要噴霧量は薄肉部の1.5倍となるが、実際には、厚肉部の内部は極めて冷却が遅いので数倍以上の噴霧量が必要となる。好ましい幅方向の噴霧量は図9(b)のような、高次関数的な分布となる。
【0066】
尚、噴霧ノズル30については、図6を用いて型ローラ16に配置されている例について説明したが、他の箇所についても同様に配置することができる。
【0067】
また、噴霧ノズルが設けられた液体噴霧手段は、樹脂シート14の表面側と裏面側に備えることが好ましい。樹脂シート14の表面側と裏面側から液体の噴霧を行うことにより、膜厚の厚い偏肉樹脂シートの製造においても、樹脂シート14の深さ方向に均一の温度分布を形成することができるため、高精度の冷却が可能となる。図4においては、型ローラ部への配置には、樹脂シートの片面しか配置できないが、徐冷ゾーン36前においては樹脂シート14の両面に配置することができる。また、剥離ローラ部は、樹脂シート14の裏面側には配置できないが、剥離ローラ20に液体を噴霧することにより、対応することも可能である。したがって、液体の噴霧は、必ずしも樹脂シートの両面(表面側と裏面側)を同時に行うものに限られない。
【0068】
本明細書において、「樹脂シートの表面側」とは、型ローラ16により偏肉形状が形成される面のことをいい、「樹脂シートの裏面側」とは、ニップローラ18により挟圧される側のことをいう。
【0069】
型ローラ16およびニップローラ18は、温度調節手段を備えることもできる。型ローラ16、ニップローラ18のローラ設定温度は、樹脂シート14の材質、樹脂シート14の溶融時(たとえば、ダイ12のスリット出口)の温度、樹脂シート14の搬送速度、型ローラ16の外径、型ローラ16の凹凸パターン形状等によって最適な値を選択することができる。
【0070】
この型ローラ16およびニップローラ18の温度調節手段としては、ローラ内部に温度調節したオイルを循環させる構成が好ましく採用できる。このオイルの供給と排出は、ローラの端部にロータリージョイントを設ける構成により実現できる。他の温度調節手段としては、たとえば、ローラの内部にシースヒータを埋め込む構成、ローラの近傍に誘電加熱手段を配する構成等、公知の各種手段を採用することができる。このような温度調節手段を備えることにより、高温状態の樹脂シート14による型ローラ16およびニップローラ18の温度上昇や急激な温度低下を抑制することができる。
【0071】
また、偏肉樹脂シートの製造ライン10には、上記したように反りの量を測定する反り測定器を備えることもできる。例えば、徐冷ゾーン36後の偏肉樹脂シートの表面(外周)を静電センサなどでスキャンさせ、偏肉樹脂シートと静電センサとの距離(形状)を計測して、反り量を換算する。そして、この数値をフィードバックし、噴霧量及び/又は噴霧箇所を制御することにより、より最適な形状とすることが可能である。
【0072】
尚、噴霧する液体は、通常(不純物を含まない)水を使用できるが、より迅速に蒸発するアルコールを使用してもよい。さらに、噴霧ムラを抑制するために、ノズルを回転もしくは揺動(振動)させることもできる。このとき、樹脂シート表面の平滑性を維持するために、液体粒子の粒径は1μm以上100μm以下、好ましくは1μm以上50μm以下とする。このため、圧搾空気の高速流を利用して液体を微細噴霧する二流体ノズルが好ましい。また、噴霧量は、0〜1000cc/m2 、液温は、10〜70℃の範囲で調整することが好ましい。
【0073】
本発明に適用される樹脂シート14としては、熱可塑性樹脂を用いることができ、たとえば、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、MS樹脂、AS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、熱可塑性エラストマー、又はこれらの共重合体、シクロオレフィンポリマー等が挙げられる。
【0074】
また、樹脂シート中に拡散粒子を含ませることが可能である。拡散粒子を加えることにより、各種表示装置の背面に配される導光板や各種光学素子に好適に用いることができる。さらに、拡散粒子を添加することにより、シートの反りが発生しやすくなるが、本発明の製造方法によれば、樹脂シートの温度を均一にすることができるので、安定した形状でシートの製造が可能である。
【0075】
拡散粒子としては、粒子径が10μm以下であることが好ましい。拡散粒子の種類としては、金属粒子、無機粒子、有機粒子、半導体粒子、高分子粒子等を使用でき、より具体的には、二酸化珪素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化チタン(IV)(TiO)、酸化イットリウム(Y)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化亜鉛(ZnO)、炭素(C)、シリコン(Si)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、銀(Ag)、白金(Pt)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ガリウム砒素(GaAs)、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)、ジルコニア(ZrO)、炭化珪素(SiC)、窒化珪素(Si)、ゼオライト、ナノダイヤモンド、ナノクリスタル、スクメタイト、マイカ、デンドリマー、スターポリマー、ハイパーブランチドポリマー、マイクロポーラスメチルホスホン酸アルミニウム、などを挙げることができる。
【0076】
また、製造される粒子含有樹脂シートに含有される拡散粒子の濃度としては、0.005〜0.5質量%の範囲であることが好ましく、0.03〜0.08質量%の範囲であることがより好ましい。
【0077】
ダイ12より押し出したシート状の樹脂シート14を、型ローラ16と型ローラ16に対向配置されるニップローラ18とで挟圧し、型ローラ16表面の偏肉形状の反転型を樹脂シート14に転写して成形し、樹脂シート14を型ローラ16に対向配置される剥離ローラ20に巻き掛けることにより型ローラ16より剥離する。
【0078】
型ローラ16より剥離した樹脂シート14を、水平方向に搬送し、徐冷ゾーン36を通過することにより徐冷し、歪みが除去された状態で、下流の製品取り部において所定長さに切断し、樹脂シートの製品として収容する。
【0079】
この樹脂シートの製造において、ダイ12よりの樹脂シート14の押し出し速度は、0.1〜50m/分、好ましくは0.3〜30m/分の値が採用できる。したがって、型ローラ16の周速も略これに一致させる。なお、各ローラの速度ムラは、設定値に対して1%以内に制御することが好ましい。
【0080】
ニップローラ18の型ローラ16への押し付け圧は、線圧換算(各ニップローラの弾性変形による面接触を線接触と仮定して換算した値)で、0〜200kN/m(kgf/cm)とするのが好ましく、0〜100kN/m(kgf/cm)とするのがより好ましい。
【0081】
ニップローラ18及び剥離ローラ20の温度制御は、個々のローラ毎に行うことが好ましい。そして、剥離ローラ20の箇所における樹脂シート14の表面温度が樹脂シートのガラス転移温度以上となっていることが好ましい。この際、樹脂シート14にポリメチルメタクリレート樹脂を採用した場合、剥離ローラ20の設定温度は、50〜110℃とすることができる。
【0082】
次に、樹脂シート表面の凹凸パターン形状について説明する。図5(a)〜(c)は、成形後の偏肉樹脂シートの端面を直線上に切り取った状態の断面図の一例である。樹脂シートの裏面は平面であるが、本発明の製造方法および製造装置により製造される偏肉樹脂シートは、最薄肉部の厚さは、5mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましい。また、偏肉樹脂シートの最厚肉部と最薄肉部との厚さの差は、0.5mm以上であることが好ましく、1.0mm以上であることがより好ましい。このような寸法とすることにより、各種表示装置の背面に配される導光板や各種光学素子に好適に使用できる。
【0083】
上記のような形状の場合、ダイ12から押出された樹脂シート14が、型ローラ16に巻きつけられて、型つけされた後、樹脂膜の厚い部分と薄い部分に分かれる。したがって、樹脂膜の厚い部分は熱容量が大きいので冷却が遅く、一方、薄い部分は冷却が速くなる。そこで、この温度分布を抑制するために、本発明では、樹脂シートの幅方向の温度分布が均一となるように、噴霧ノズルが設けられた液体噴霧手段で液体を吹き付けて樹脂シートを冷却し、樹脂膜の厚い部分ほど多くの量の液体噴霧を行なう。このとき、液体の潜熱による冷却効果を利用して、厚肉部の冷却を促進し、樹脂膜巾方向の温度分布をなくすことで、歪みや反り等の変形を抑制して、所望のシート形状を得ることができる。このように、従来、成形が困難であった偏肉形状の樹脂材料の成形において、本発明の効果が発揮できる。
【実施例】
【0084】
図4の偏肉樹脂シートの製造ライン10を用い、樹脂材料としてPMMA、押出し速度を3m/分、図4の偏肉樹脂シートの製造ライン10の22及び24の位置に図6のように噴霧ノズル(二流体ノズル)を配置し、各ノズルの噴霧量を100cc/m2 として偏肉樹脂シートの製造を行った。偏肉樹脂シートは、図5(a)の形状を製造した。ここで、最厚肉部は8mm、最薄肉部は4mmとした。噴霧する液体としては、液温25℃の純水を用いた。
【0085】
このように液体を噴霧して製造することにより、歪みや反りのない高精度の形状を持つ偏肉樹脂シートを得ることができた。
【0086】
尚、このように液体の噴霧を全くしなかったときの製品は、歪みや反りが甚だしく、反り量として10mm以上発生した。また、冷却が遅いことにより、剥離不良も発生した。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】偏肉樹脂シートの製造の全体工程図
【図2】各工程での装置構成を示す概念図
【図3】樹脂シートの反りを説明する説明図
【図4】偏肉樹脂シートの製造装置のうち成形冷却工程と徐冷工程前を示す構成図
【図5】成形後の偏肉樹脂シートの一例を示す断面図
【図6】偏肉樹脂シートの製造ラインの型ローラ部分を下方から見た図であり、液体噴霧手段の噴霧ノズルの配置例を示す図
【図7】噴霧ノズルが樹脂シート幅方向に複数個配置されている場合の液体の噴霧領域を示す図
【図8】樹脂シートの進行方向に、液体を噴霧する噴霧面積を変えたものを複数個直列に配置した例を示した図
【図9】偏肉樹脂シートの断面と、その形状の場合の噴霧量を示した図
【図10】従来例の樹脂シートの製造ラインを示す構成図
【符号の説明】
【0088】
10…偏肉樹脂シートの製造ライン、12…ダイ、14…樹脂シート、16…型ローラ、18…ニップローラ、20…剥離ローラ、22、24、26、28、29…液体噴霧手段を備える位置、30…噴霧ノズル、30a、31a、31b、31c、31d…液体を噴霧する領域、36…徐冷ゾーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融した樹脂をダイからシート状に押し出す押出工程と、押し出した樹脂シートを型ローラとニップローラとでニップして偏肉成形しながら冷却して固化する成形冷却工程と、前記型ローラから剥離した樹脂シートを徐冷する徐冷工程と、を備え、
前記成形冷却工程及び前記徐冷工程前の少なくとも一方において、前記樹脂シートの幅方向の温度分布が均一となるように、噴霧ノズルが設けられた液体噴霧手段で液体を吹き付けて樹脂シートを冷却する噴霧冷却工程を有することを特徴とする偏肉樹脂シートの製造方法。
【請求項2】
前記液体噴霧手段は、前記樹脂シートの両面に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の偏肉樹脂シートの製造方法。
【請求項3】
前記液体噴霧手段は、前記樹脂シートの厚みが厚い部分ほど、高次関数的に、より多くの液体を噴霧することを特徴とする請求項1または2に記載の偏肉樹脂シートの製造方法。
【請求項4】
前記液体噴霧手段は、前記樹脂シートの厚みが厚い部分ほど噴霧ノズルの数が多いことを特徴とする請求項3に記載の偏肉樹脂シートの製造方法。
【請求項5】
前記噴霧ノズルは、前記樹脂シートの進行方向に、液体を噴霧する噴霧面積を変えたものを複数個直列に配置していることを特徴とする請求項3に記載の偏肉樹脂シートの製造方法。
【請求項6】
前記噴霧ノズルが前記液体を噴霧する領域は円形であり、
前記円形が一部重なり合うように前記噴霧ノズルが配置されていることを特徴とする請求項4または5に記載の偏肉樹脂シートの製造方法。
【請求項7】
前記噴霧ノズルは、回転または揺動していることを特徴とする請求項1〜6の何れか1に記載の偏肉樹脂シートの製造方法。
【請求項8】
前記液体は、水またはアルコールを少なくとも含むことを特徴とする請求項1〜7の何れか1に記載の偏肉樹脂シートの製造方法。
【請求項9】
前記液体噴霧手段は、液体を1μm〜100μmの粒径にして前記樹脂シートに吹き付けることを特徴とする請求項1〜8の何れか1に記載の偏肉樹脂シートの製造方法。
【請求項10】
前記偏肉樹脂シートは、シート幅方向における最厚肉部と最薄肉部との厚さの差が、0.5mm以上となることを特徴とする請求項1〜9の何れか1に記載の偏肉樹脂シートの製造方法。
【請求項11】
前記偏肉樹脂シートは、最薄肉部の厚さが5mm以下であることを特徴とする請求項1〜10の何れか1に記載の偏肉樹脂シートの製造方法。
【請求項12】
溶融した樹脂をダイからシート状に押し出す押出手段と、押し出した樹脂シートを型ローラとニップローラとでニップして偏肉成形しながら冷却して固化する成形冷却手段と、前記型ローラから剥離した樹脂シートを徐冷する徐冷手段と、を備え、
前記成形冷却手段及び前記徐冷手段前の少なくとも一方に、前記樹脂シートの幅方向の温度分布が均一となるように液体を吹き付ける噴霧ノズルが設けられた液体噴霧手段を備えることを特徴とする偏肉樹脂シートの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−274389(P2009−274389A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129845(P2008−129845)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】