説明

偽信号化された周波数上の位相ロック

位相ロックループ(200)は、サンプラー(202)、位相検出器(210)、ループフィルタ(212)、VCO(214)を含む。ループは、ループのフィードバックパス中に分割器を必要とすることなく周波数逓倍を達成する。VCO(214)は、サンプラーのナイキストレートより上で動作され、ループが偽信号化された信号上にロックすることを引き起こす。VCO出力周波数中のあらゆる変動(即ち、ジッターまたは位相ノイズ)は、周波数分割器に通常関連付けられる減衰無しで、1対1で位相検出器(210)にフィードバックされる。ループゲインは従って、高い閉ループ周波数逓倍を提供するループにおいてでも、高く保つことができる。一変形によると、高調波発生器(540)がVCOとサンプラーの間に置かれ、よってループがVCO周波数の高調波上にロックすることを引き起こす。開ループゲインと精度はよって更に向上される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般にエレクトロニクスのための自動テスト設備に関し、より特定には、電子デバイスをテストするための周期信号を生成するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス製造業者は通例、半導体部品および電子アッセンブリをテストするための自動テスト設備(ATE)を使用する。ATEは製品が製造工程の初期にテストされることを許容することによって製造業者へのコストを削減する。初期のテストは、
相当な追加のコストを招く前に欠陥ユニットが同定されて廃棄されることを許容する。加えて、ATEは異なるユニットをそれらのテストされた性能レベルに応じて格付けすることを製造業者に許容する。より性能の良いユニットは一般により高い価格で販売することができる。
【0003】
ATEの基本機能の一つは、所定の周波数の信号を生成することである。これらの信号は、例えば、デジタルクロック、アナログ波形およびRF波形を含み得る。しばしば、特定のテストシナリオは、異なる周波数の複数信号を作成することをテストシステムに要求する。一般に、異なる信号間の周波数および位相の差は正確に制御されなければならない。正確に制御された周波数と位相を持つ信号を作成するのに、位相ロックループがATEシステムで一般的に使用される。
【0004】
図1は、従来の位相ロックループ(PLL)100のブロック図を示す。PLL100は入力信号FINを受け取り、出力信号FOUTを生成する。PLL100は、位相検出器110、ループフィルタ112、および電圧制御発振器(VCO)114を含む。それはまた、出力周波数分割器118とフィードバック周波数分割器116も含む。入力信号FINは、クリスタル発振器のようなあらゆる好適なソースによって供給され得る。
【0005】
従来のPLL100は、本質的に以下のように動作する閉ループフィードバックシステムである。位相検出器110は、入力信号FINをフィードバック信号FFBと比較してFINとFFBの間の位相の差に関係して変動するエラー信号を生成する。ループフィルタ112はエラー信号を平滑化し、一般にフィードバックループを安定化することを助ける。VCO114はフィルタの出力信号をフィルタの出力信号との関係で変動する周波数を有する振動信号FVCOに変換する。フィードバック分割器116(一般にカウンター)は、FVCOの周波数を整数Mで分割して、フィードバック信号FFBを作成する。ループ外では、出力分割器118がFVCOの周波数を整数Nで分割して、FOUTを作成する。フィードバックはFINとFFBの間の差をゼロに追いやる傾向があるので、それは従ってFVCOの周波数をFIN*Mの周波数に等しい値に追いやり、よって出力信号FOUTの周波数をFIN*M/Nの周波数に等しい値に追いやる傾向がある。
【0006】
従来のPLL100は多くの利益を提供する。例えば、出力周波数FOUTは、NとMの適当な選択を通して、幅広い範囲の値の渡って変動させることができる。加えて、PPL中の位相ノイズは一般に、ループフィルタ112の帯域幅を任意の低い値に設定することによって削減することができる。
【0007】
それにも拘らず、我々は、多くのATE応用におけるそれの有用性を制限するようなPLL100のいくつかの欠点を認識している。RF信号生成のような高周波数応用は、高周波数VCOを要求する。これらの応用でのVCOの速度はしばしば位相検出器の速度を大きく上回る。この問題は従来は、フィードバック分割器116中のMの値を非常に大きくすることによって対処される。
【0008】
しかしながら、Mの値を大きくすることはいくつかの欠点を含む。例えば、Mの値が大きい程、PLL100の開ループゲインの低減がより大きくなる。知られているように、開ループゲインの低減はループトラッキングエラーを増加する。それはまたループのノイズを却下する能力を損なう。この効果を描写するには、フィードバック分割器116がFVCOの周波数をMで分割するだけでなく、あらゆる変形(即ち、位相ノイズ、または等価的にタイミングジッター)も同じ値のMで分割すると考える。感度は従って低減される。
【0009】
周波数分割器16はまたノイズを直接的に追加もする。周波数分割器は一般的にカウンターとして実装され、それはその出力においてスプリアスノイズを作り出すことが知られている。このノイズはループフィルタ112によって減衰することができるが、分割器116の害のあるノイズ成分よりもかなり低い周波数にループフィルタの帯域幅を設定することなしには、減衰は一般的に達成することができない。この程度まで帯域幅を削減することは、しかしながら、PLL100のプログラミング速度を低減する効果を持ち、それはATEシステム性能およびスループットに負のインパクトを与え得る。
【0010】
望まれているのは、プログラミング速度を犠牲にすることなく低位相ノイズを持つ高周波数信号を作成することができる位相ロック回路である。
【発明の概要】
【0011】
本発明に従って、位相ロック回路は、偽信号化(エイリアシング)されたフィードバック信号を作成するサンプラーを採用し、回路はその上にロックするようにされる。
【0012】
続く記載は添付の図面を参照することによってより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、広い範囲の周波数を作成するように動作可能な従来の位相ロックループのブロック図である。
【図2】図2は、発明の描写的実施形態に従った位相ロック回路のブロック図である。
【図3】図3は、図2の回路中でどのようにナイキストレートより高い周波数がナイキストレートより低い周波数に偽信号化できるかを示す周波数プロットである。
【図4】図4は、図2の回路中でどのようにナイキストレートより高い周波数バンドがナイキストレートより低い周波数バンドに偽信号化できるかを示す周波数プロットである。
【図5】図5は、精度を向上するのにVCO出力信号の高調波が採用された、位相ロック回路の描写的実施形態の簡略化された概要である。
【図6】図6は、図5の回路中でどのように様々な高調波バンドが作り出されるかを示す周波数プロットであり、そこでは一つ以上の高調波バンドがナイキストレートより低い周波数に偽信号化されている。
【図7】図7は、デジタル位相検出器とデジタルループフィルタを採用した位相ロック回路の描写的実施形態を示すブロック図である。
【図8】図8は、発明の一つ以上の実施形態に従った位相ロック回路を含んだ自動テスト設備の簡略化されたブロック図である。
【図9】図9は、図7の位相ロック回路と共に使用されるのに好適なデジタル位相検出器のブロック図である。
【図10】図10は、図7の位相ロック回路と共に使用されるのに好適な別のデジタル位相検出器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図2は、位相ロック回路200の描写的実施形態を示す。位相ロック回路200は、入力信号FINを受け取り、出力信号FOUTを作成する。回路200は、サンプラー202、位相検出器210、ループフィルタ212、およびVCO(電圧制御発振器)214のような制御可能発振器を含む。サンプラー202は、フィードバック信号FFBをその入力として受け取り、サンプルフィードバック信号SFFBをその出力として提供する。位相検出器210は2つの入力と1つの出力を有する。第一の入力は入力信号FINを受け取り、第二の入力はサンプルフィードバック信号SFFBを受け取る。ループフィルタ212とVCO214は各々1つの入力と1つの出力を有する。
【0015】
回路200はまた、VCO214の出力からサンプラー202の入力まで結合された、フィードバック信号FFBを提供する回路パス220を含む。バンドパスフィルタ230a−230nが好ましくは回路パス220中に設けられている。これらのバンドパスフィルタは好ましくはスイッチ240a−240nを介して個別に選択可能である。各フィルタは好ましくは異なる中心周波数を有する。
【0016】
動作中には、サンプラー202はフィードバック信号FFBをサンプリングレートFでサンプリングするようにされる。位相検出器210は、サンプルフィードバック信号SFFBを受け取り、エラー信号Φ−Errを出力する。エラー信号はSFFBとFINの間の差に応じて変動する。ループフィルタ212はエラー信号をフィルタリングし、ループを安定化するのを助ける。VCO214はフィルタリングされたエラー信号を振動波形FVCOに変換する。FVCOの周波数はフィルタリングされたエラー信号のレベルに応じて変動する。
【0017】
バンドパスフィルタ230a−230nの一つが、FVCOからのノイズをフィルタリングするために選択される。選択されたフィルタは、好ましくはFVCOの期待された周波数に最も近い中心周波数を有するものである。望ましいフィルタは、その関連付けられたスイッチ(240a−240nの一つ)を閉じて残りのスイッチを開くことによって選択される。
【0018】
回路200は、FVCOの周波数がサンプラーのナイキストレート(F/2)よりも小さい時には本質的に通常のやり方で振舞う。しかし、FVCOの周波数がナイキストレートよりも大きい時には重大な違いが生じる。
【0019】
知られているように、レートFでサンプリングされている信号がF/2よりも大きな周波数成分を含む時には、「偽信号化」と呼ばれる現象が離散時間システムに生じる。偽信号化は、バンド外周波数、例えばナイキストレートより上のものが、システムの帯域幅内の画像として現れることを引き起こす。これらの画像は通常エラーとして見做される。しかし、我々はこれらの偽信号化画像が性能を向上するのに使われることができることを認識した。
【0020】
図3は、レートFでサンプリングされた離散時間システムの周波数プロットを示す。水平ラインは周波数を表し、ゼロ周波数(DC)が左に現れており、増加する周波数が右へと伸びている。周波数はナイキストレートF/2の倍数で表されている。示されるように、ナイキストレートより上の周波数は、システム帯域幅(即ち、ナイキストレートの下)内に偽信号化画像を作成する。特に、ナイキストレートのあらゆる倍数よりも増分δだけ大きいあらゆる成分は、システム帯域幅内で周波数δにおいて偽信号化画像を作成する。
【0021】
偽信号化画像の作成は、図2の位相ロック回路中で重大な帰結を持つ。FVCOの周波数がF/2を超える時、その周波数の偽信号化画像がサンプラーの帯域幅内に現れ、回路はその画像上にロックするようにされる。これは位相ロック回路200が、そのフィードバックパス中に周波数分割器を要求することなく、実質的なゲインを持って動作することができることを意味する。回路200は、そのアナログ特性のみによって制限される、任意の高周波数を作成するようにされることができる。
【0022】
もしVCO214が大きすぎる周波数レンジに渡って動作すれば、出力周波数の曖昧さを生じることができる。例えば、もし出力レンジ(最大周波数マイナス最小周波数)がF/2を超えれば、位相ロック回路は2つ以上の異なるVCO周波数においてそのフィードバック条件を満たすことができ得る。好ましくは、この条件は、バンドパスフィルタ230a−230nの各々の帯域幅をF/2より小さいものに制限することによって回避される。代替的に、それはF/2よりも小さい出力レンジを有するVCO214を選択することによって回避されても良い。
【0023】
位相ロック回路200中で偽信号化画像を使用することから重大な性能の利益が生じる。これらは図4を参照して最も良く理解される。
【0024】
図4は、周波数バンド上での偽信号化の効果を示す周波数プロットである。示されるように、ナイキストレートより上の周波数バンドまたはレンジ410が、システム帯域幅内に鏡像412を作り出すように偽信号化される。重要なことに、バンド410と412の幅は同一である。もしバンド410が1kHz幅であれば、バンド412は1kHz幅であろう。もしバンド410がVCO214によって作成された周波数を表すと仮定すれば、バンド410の幅はFVCO中の位相ノイズ(または等価的にタイミングジッター)として見做されることができる。図1の従来の位相ロックループでは、フィードバック分割器がバンド410の幅を低減して、実効的にループゲインと感度を低減していたであろう。図2の位相ロック回路では、しかし、ループゲインと感度は保持される。FVCOの周りの位相ノイズは、圧縮または減衰無しでシステムの帯域幅中に偽信号化されて戻る。
【0025】
偽信号化信号の使用は従って、フィードバック分割器を必要とすることなしに高ゲイン(そこではFOUTがFINよりもはるかに大きい)で動作させられることを位相ロック回路200に許容する。それは開ループゲインと従って精度が高く保たれることを許容する。フィードバック分割器は要求されないので、これらのデバイスによって通常導入されるノイズスパーは避けられる。従って、ループフィルタを遅くしてその帰結としてプログラミング速度の低減に苦しむことの必要も避けられる。
【0026】
図5は、位相ロック回路の他の描写的実施形態を示す。位相ロック回路500は、サンプラー502、位相検出器510、ループフィルタ512、VCO514のような制御可能発振器、およびバンドパスフィルタのバンク530を含む。これらは図2のサンプラー202、位相検出器210、ループフィルタ212、VCO214、およびバンドパスバンクと同様である。しかしながら、回路500はまた、高調波発生器540も含む。
【0027】
高調波発生器540は、FVCOのフィルタリングされたバージョンを受け取り、その信号の一つ以上の高調波を生成する。これらの高調波または倍音は、FVCOの周波数、即ち基本周波数、の整数倍の周波数を有する。
【0028】
第二のバンドパスバンク550がオプションで高調波発生器540の出力に結合される。第二のバンドパスバンク550は、サンプラー502に提示されるべき一つ以上の特定の高調波を選択するのに使われても良い。しかしながら、特定の高調波の選択は要求されてはいない。
【0029】
高調波発生器540は実効的にサンプラー502にフィードバックされるノイズバンドの幅を逓倍する。それは従って、位相ループ回路500の開ループゲインと感度を更に増加させる。
【0030】
図6は、位相ノイズが逓倍されるメカニズムを示す周波数プロットである。示されるように、FVCOとその高調波は、システムの帯域幅内に偽信号化画像を作り出す。重要なことに、FVCOの各高調波の周りの位相ノイズのバンドの幅は、高調波の次数に比例して変動することを見ることができる。例えば、3FVCOの周りのノイズのバンドは、FVCOの周りのバンドの3倍幅広い。これらのバンドの各々はシステムの帯域幅に偽信号化されて戻る。バンドパスバンク550が無ければ、これらの偽信号化バンドは全てサンプラー502の入力において同時に現れる。
【0031】
位相ロック回路200/500の要素は、幅広い様々なやり方で実装することができる。位相検出器210/510は、アナログ位相検出器かまたはデジタル位相検出器であることができる。同様にループフィルタ212/512は、アナログループフィルタかまたはデジタルループフィルタであることができる。アナログおよびデジタルの位相検出器とループフィルタは当該分野で周知である。
【0032】
もしアナログ位相検出器が使用されれば、サンプラー202/502は、サンプルアンドホールド回路またはトラックアンドホールド回路のようなアナログサンプリング回路として実装される。これらのデバイスは周知であり、在庫から容易に入手可能である。この配置では、入力信号FINは好ましくは、クリスタル発振器の出力のようなアナログ信号である。
【0033】
もしデジタル位相検出器が使用されれば、サンプラー202/502は好ましくは、アナログ−デジタル変換器(ADC)に結合された(上述の)アナログサンプリング回路を含む。アナログサンプリング回路とADCは両方ともFでクロックされる。好ましくは、サンプリングADC、即ちアナログサンプリング回路とADCの両方が単独のデバイスパッケージ中に含まれたもの、が使われる。デジタル値はよってレートFで位相検出器に提供される。この配置では、FINは好ましくはデジタル信号である。
【0034】
VCO214/514は好ましくは従来型のものである。VCOは周知であり、在庫から商業的に入手可能である。
【0035】
高調波発生器540は好ましくは、クリップ回路または商業的に入手可能なRF櫛発生器のような非線形アナログ回路として実装される。知られているように、クリップ回路は正弦波の正と負のピークを平坦化し、よって正弦波の基本周波数の高調波を導入する。オプションで、高調波発生器540は低振幅の高調波をブーストするための増幅器を備えていても良い。
【0036】
図7は、要素の特定の配置を持った位相ロック回路700の主としてデジタルな実施形態を示す。回路は、デジタル位相検出器710とサンプリングADC712を含む。
【0037】
デジタル位相検出器710は、参照周波数と参照位相を示している入力データFREF,ΦREFを受け取る。デジタル位相検出器710は、この参照周波数および位相をサンプリングADC712からのサンプルフィードバック信号と比較して、デジタル位相エラーを作成する。デジタルループフィルタ714は、デジタル位相エラーをフィルタリングし、デジタル−アナログ変換器(DAC)がフィルタリングされた位相エラーをアナログ信号に変換する。アナログフィルタがDAC716の出力を平滑化し、VCO720が平滑化されたDAC出力を振動信号に変換する。第一のバンドパスフィルタバンク722、高調波発生器730、およびオプションの第二のバンドパスバンク740は、図5の第一のバンドパスバンク530、高調波発生器540、およびオプションの第二のバンドパスバンク550との関連で上述したのと本質的に同じように動作する。
【0038】
デジタルループフィルタ714は、回路700中で特定の利点を供する。もしADC712またはDAC716のような回路要素のいずれかが知られた周波数でノイズを繰り返し可能に生成することが見つけられれば、またはもし或る知られた周波数におけるノイズが回路にその環境から注入されれば、デジタルループフィルタ714は、各害のあるノイズ周波数において低ゲインまたは「ゼロ」を有するようにプログラムされることができる。この様式にループフィルタ714を設計することは、出力信号FOUT中のノイズを低減し、回路の全体的精度に貢献する。
【0039】
図9は、位相ロック回路700に特に好適なデジタル位相検出器の例を示す。図9に示されるように。デジタル位相検出器の第一の入力はデジタル発振器914に結合され、デジタル位相検出器の第二の入力はダウンコンバータ910に結合されている。入力データ(FREF,φREF)に基づいて、デジタル発振器914は、周波数FOSCと位相φOSCを有するデジタル参照信号を合成する。FOSCは好ましくはFREFに等しく、φOSCは好ましくはφREFに等しい。
【0040】
デジタル参照信号は好ましくは直角位相参照信号である、即ち、それは90度の位相差によって分離された2つの正弦波を表す2つの部分で提供されている。従来は、直角位相参照信号の第一の部分はコサインと称され、第二の部分はサインと称される。従って、直行位相参照信号の第一の部分はCos(2πFOSCt+φOSC)の形を有し、第二の部分はSin(2πFOSCt+φOSC)の形を有する。
【0041】
直行位相参照信号はダウンコンバータ910に提供され、そこでそれはフィードバック信号を混合される。デジタル位相検出器を位相ロック回路700の文脈から取り出すと、フィードバック信号はより一般的にはCos(2πFINt+φIN)の形を有するサンプル周期信号と見做すことができる。
【0042】
ダウンコンバータ910は、サンプル周期信号と直角位相参照信号に応じて差分信号を作成する。差分信号は好ましくは2つの部分を有する直角位相信号であり、一つの部分は実質的にCos[2π(FIN−FOSC)t+φIN−φOSC]の形を有し、他の部分は実質的にSin[2π(FIN−FOSC)t+φIN−φOSC]の形を有する。従って、直角位相差分信号の周波数は、入力と発振器周波数の間の差FIN−FOSCに等しく、直角位相差分信号の位相は、入力と発振器位相の間の差φIN−φOSCに等しい。
【0043】
直角位相差分信号は位相抽出器916に提供される。位相抽出器916は直角位相差分信号によって表される累積位相差を生成する。好ましい実施形態では、位相抽出器916はATAN2機能を行う。知られているように、ATAN2は2つの入力の商の4象限逆タンジェントを生成する。ATAN2への2つの入力が同じ角度θのサインとコサインのときには、ATAN2[sin(θ),cos(θ)]は単純に角度θである。従って、直角位相差分信号の2つの部分のATAN2は[2π(FIN−FOSC)t+φIN−φOSC]と評価される。この値はデジタル発振器914とサンプル周期信号の間の累積位相差に対応する。もし、FIN,FOSCINおよびφOSCが定数であれば、累積位相差によって記述される値は、時間に渡る直線の形をとる。
【0044】
位相ロック回路700の文脈では、位相抽出器916によって作成された累積位相差はデジタル位相エラーを提供する。オプションで、加算器920を介して位相φADJが累積位相差に付け足されるかそれから差し引かれて、位相ロック回路700の他の部品に渡された位相エラーを調整する。加算器920を介して位相を足すまたは引くことは、シンセサイザーの出力信号FOUTの位相をシフトする効果を持つ。
【0045】
図9のデジタル位相検出器が適正に性能するためには、デジタル発振器914は精度のある直角位相参照信号を生成することができるべきである。例えば、FOSCはFREFによって指定される周波数に実質的に等しくあるべきであり(名目上FOSCとFREFは等しい)、φOSCはφREFによって指定される位相に実質的に等しくなければならない(名目上φOSCとφREFは等しい)。この要求は、直角位相参照信号の正確な値を急いで必要なサンプリングレートで作成することが要求されるので、デジタル発振器914にかなりの要求を課す。
【0046】
この要求は、もしK/FOSC=L/F、ここでKとLは両方整数、となるようにFOSCとFが関連していれば、比較的容易に達成することができる。この場合には、デジタル発振器914は直角位相参照信号を生成するためのルックアップテーブルを採用することができる。ルックアップテーブルは、直角位相参照信号の予め格納された値をサンプルクロックの連続するサイクルに関連付ける。デジタル発振器はよって、単にそのルックアップテーブルに格納された値を循環するだけで直角位相参照信号を生成することができる。
【0047】
しかしながら、もしK/FOSCがL/Fに等しくなければ、状況はもっと複雑になる。この状況の下では、ルックアップテーブルの一回の繰り返しについて適切な値が他の繰り返しについては不適切になるので、単純なルックアップテーブルは使用できない。異なる解決策が要求される。一つの解決策は、デジタル発振器914に、直角位相参照信号の値を急いで速く計算するための計算エンジンを設けることである。但し、この解決策は複雑である。
【0048】
別の解決策が図10に示されており、それは好適なデジタル位相検出器710の別の例を示す。図10のダウンコンバータ1010、位相抽出器1016および加算器1020は、実質的に図9のダウンコンバータ910、位相抽出器916および加算器920と同じである。但し、図10はまた、計算ユニット1012、累積器1018、および第二の加算器1022も含む。
【0049】
計算ユニット1012は入力データ(FREF,φREF)を一次部分と二次部分の2つの部分に分割する。一次部分(FOSCOSC)は、デジタル発振器1014がルックアップテーブルを使うことによるように容易に生成することができる参照信号(FREFREF)の近似を表す。二次部分(φRES)は、剰余位相値、即ち、上記近似中のエラーを表す。一次部分は好ましくは、K/FOSC=L/Fの要求を満たす。もしFOSCがFREFに等しくなければ、取り決め事項としてFOSCがFREFより僅かに大きくなるようにKとLが好ましくは選択される。従って、二次部分φRESは、Fの各サイクル上で発生するFOSCとFREFの間の位相差を表す。
【0050】
累積器1018はFの各サイクル上のφRESを蓄積する(即ち、それ自身の内容に付け足す)。累積器1018によって保持された値はよって、時間に渡って見ると、直線の形をとる。
【0051】
位相抽出器1016の出力は、入力データの二次部分を考慮に入れていない。加算器1022は、位相抽出器1016の出力から累積器1018の出力を差し引くことによってこの出力を修正する。加算器1022の出力はよって、入力データの一次及び二次部分の両方を考慮に入れて、サンプル周期信号と参照(即ち、FREF,φREF)の間の位相エラーの正確な表現を作成する。
【0052】
ATAN2機能や累積器1020のような図9および10のデジタル位相検出器のいくつかの要素は、商業的に入手可能な論理定義を有する。これらの定義は、購入されても、ダウンロードされても、殆ど独自設計作業なしでFPGAまたはASICに埋め込まれても良い。
【0053】
参照データ(FREF,φREF)は好ましくは可変である。図9および10のデジタル位相検出器がシンセサイザー中で使用されるときには、参照データは異なる出力周波数を確立するために好ましくはプログラム可能である。整数KとLの値は、好ましくは参照データの新たな値がプログラムされる毎に更新される。剰余のサイズを最小にするためには、Kは好ましくは実施可能なかぎり大きくされる。KとLは、手動で計算されても良いし、または所望の出力周波数およびサンプリングレートに基づいてソフトウェア、ファームウェア、またはハードウェアによって生成されても良い。
【0054】
それらは要求されてはいないが、図9および10のデジタル位相検出器は位相ロック回路700中において多くの利点を提供する。例えば、位相エラーは、サンプルクロックのサイクル毎に一度のように高頻度で更新される。加えて、位相エラーは非常に高い分解能を持たされている。位相剰余φRESが参照周波数の一次部分とは独立に管理されるので、数値的精度の多数のビットをφRESに適用することができる。また、φRESの全体的位相エラーへの貢献は、デジタル発振器1014を実装するのに使われたルックアップテーブル中に格納されたFOSCのサイクルの数(即ち、Kの値)を増加することにより、非常に小さくすることができる。
【0055】
図8は、図2、5および7に示されたタイプの位相ロック回路の応用を示す。図8に示すように、自動テストシステム812は、UUT(試験下ユニット)840をテストするためのホストコンピュータ810によって制御される。UUTはテストされるべきいかなるタイプのデバイスまたアッセンブリであっても良い。自動テストシステム812は、アナログ機器820、デジタイザー822、および任意波形生成器(AWG)824のような機器を含む。自動テストシステム812はまた、全体的にデジタルPIN826、828および830として示される複数のデジタル電子チャネルも含む。デジタル電子チャネルはデジタル信号を供給し感知するために配置されている。
【0056】
注目すべきことに、自動テストシステム812は複数の位相ロック回路816a−gを含む。これらの位相ロック回路は、図2、5および7のいずれかに示された同じ一般的タイプのものである。位相ロック回路816a−gの各々はシステムクロック814からのクロック信号Fを受け取る。それらは各々また、所望の出力周波数および位相を指定するホストコンピュータ810からのそれぞれの入力信号(またはデータ)を受け取る。クロックとそれぞれの入力に応じて、位相ロック回路816a−gの各々は、それぞれの周期出力信号を生成する。出力信号は機器820、822および824に提供され、それらは周波数参照またはクロックをそれらの通常動作のために使用することができる。出力信号はまたデジタルPIN826、828および830を制御するためのクロックを提供する。それらは更にパターン発生器818のための周波数参照を提供するのに使われても良い。パターン発生器818は位相ロック回路と共に動作して、デジタルPINが指定されたフォーマットで正確に制御された瞬時おいてデジタル信号を供給および/または感知するようにさせる。
【0057】
ここの発明のいくつかの実施形態を記載したが、数々の代替的実施形態または変形を行うことができる。例えば、示して記載された位相ロック回路は好ましくはVCOの出力に結合されたバンドパスフィルタのバンク(230、530、および722)を含むが、これらのフィルタは厳格には要求されない。加えて、バンドパスフィルタは好ましくは、サンプラー(202、502)またはサンプリングADC(712)に先行するアナログフィルタとして実装されるが、それらは代替的にサンプラーまたはサンプリングADCの出力に設けられたデジタルフィルタとして実装されることができる。
【0058】
開示された位相ロック回路の特定の利点は、それらがそれらのフィードバックパス中に周波数分割器(カウンターのような)を要求することなしに閉ループ周波数ゲインを提供することである。但しこれは、フィードバック分割器が禁止されていることを意味すると取られるべきではない。開示された回路の文脈においてフィードバック分割器が望ましいと考えられるいくつかの場合が起こり得る。偽信号化は、VCOとサンプラーの間の回路パスの全体的周波数ゲイン(出力周波数割る入力周波数)がF/2FMIN、ここでFMINはVCOによって提供される最低周波数を表す、よりも大きければ、フィードバック分割器があったとしても起こるであろう。
【0059】
サンプラー(202、502)またはサンプリングADC(712)が動作させられるサンプリングレートFは、好ましくは固定される。しかしながら、これは要求はされていない。それは可変であっても良い。一つの変形によると、FはVCOの出力から導出されても良い。
【0060】
示し記載されたように。VCOはナイキストレート(F/2)よりも高い周波数で動作するようにされるが、これも要求はされていない。偽信号化は、もし高調波発生器(540、730)がナイキストレートより上の高調波を作成すれば、ナイキストレートより下のVCO周波数とでも起こるであろう。
【0061】
当業者は従って、発明の範囲から逸脱することなくここに開示された実施形態に形状および詳細の様々な変更を行い得ることを理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力と出力を有し、サンプリングレートFで動作するように構築され配置されたサンプラーと、
入力と出力を有し、入力がサンプラーの出力に結合された位相検出器と、
入力と出力を有し、入力が位相検出器の出力に結合された制御可能発振器と、
制御可能発振器の出力からサンプラーの入力まで結合され、F/2よりも大きな周波数を有するサンプラーにフィードバック信号を配送するように構築され配置された回路パスと、
を含む位相ロック回路。
【請求項2】
制御可能発振器はF/2よりも大きい周波数を有する出力信号を発生するように動作可能である、請求項1記載の位相ロック回路。
【請求項3】
回路パスが、バンドパスフィルタのバンクを含む、請求項1記載の位相ロック回路。
【請求項4】
バンドパスフィルタのバンクが、各々が異なる中心周波数を有し各々がF/2より小さい帯域幅を有する複数のバンドパスフィルタを含む、請求項3記載の位相ロック回路。
【請求項5】
位相検出器の入力が第一の入力であり、位相検出器が更に振動アナログ信号を受け取るように配置された第二の入力を有する、請求項1記載の位相ロック回路。
【請求項6】
位相検出器の入力が第一の入力であり、位相検出器が更に所望の出力周波数を示すデジタル値を受け取るように配置された第二の入力を有する、請求項1記載の位相ロック回路。
【請求項7】
回路パスが、制御可能発振器によって発生された信号の少なくとも一つの高調波を発生するように構築され配置された非線形素子を含む、請求項1記載の位相ロック回路。
【請求項8】
非線形素子が、クリップ回路と周波数櫛発生器の一つである、請求項7記載の位相ロック回路。
【請求項9】
回路パスが更に、制御可能発振器の出力と非線形素子の間に結合された選択可能バンドパスフィルタのバンクを含む、請求項7記載の位相ロック回路。
【請求項10】
位相検出器の出力と制御可能発振器の入力の間に結合されたループフィルタを更に含む、請求項1記載の位相ロック回路。
【請求項11】
ループフィルタが、デジタルループフィルタを含む、請求項10記載の位相ロック回路。
【請求項12】
入力と出力を有するサンプラーと、
入力と出力を有し、入力がサンプラーの出力に結合された位相検出器と、
入力と出力を有し、入力が位相検出器の出力に結合された制御可能発振器と、
制御可能発振器の出力とサンプラーの入力の間に結合された高調波発生器と、
を含む位相ロック回路。
【請求項13】
制御可能発振器と高調波発生器の間に結合されたバンドパスフィルタのバンクを更に含む、請求項12記載の位相ロック回路。
【請求項14】
バンドパスフィルタのバンクが、各々が異なる中心周波数を有する複数のバンドパスフィルタを含む、請求項13記載の位相ロック回路。
【請求項15】
非線形素子とサンプラーの間に結合された選択可能バンドパスフィルタのバンクを更に含む、請求項13記載の位相ロック回路。
【請求項16】
非線形素子とサンプラーの間に結合された選択可能バンドパスフィルタのバンクを更に含む、請求項12記載の位相ロック回路。
【請求項17】
高調波発生器が非線形素子を含む、請求項12記載の位相ロック回路。
【請求項18】
サンプラーがサンプリングレートFで動作可能であり、高調波発生器がF/2よりも大きな周波数を有する少なくとも一つの高調波を発生するように構築され配置された、請求項12記載の位相ロック回路。
【請求項19】
入力と出力を有し、サンプリングレートFで動作するように構築され配置されたサンプラーと、
入力と出力を有し、入力がサンプラーの出力に結合された位相検出器と、
入力と出力を有し、入力が位相検出器の出力に結合され、最小周波数FMINより大きな動作周波数のレンジを発生するように構築され配置された制御可能発振器と、
制御可能発振器の出力から位相検出器の入力まで結合され、F/2FMINよりも大きな周波数ゲインを有する回路パスと、
を含む位相ロック回路。
【請求項20】
基本周波数を有し、F/2より大きな周波数を持つ少なくとも一つの成分を有する振動信号を発生し、
振動信号をサンプリングレートFでサンプリングして、少なくとも一つの偽信号化された成分を有するサンプル信号を生成し、
サンプル信号と参照信号の間の差に応じた位相エラーを発生し、
位相エラーに応じて振動信号の基本周波数を変動させる
ことを含む位相ロック方法。
【請求項21】
振動信号を発生するステップが、
振動信号のプリカーサーを発生し、
振動信号のプリカーサーをバンドパスフィルタリングする
ことを含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
振動信号を発生するステップが更に、振動信号のバンドパスフィルタリングされたプリカーサーの少なくとも一つの高調波を発生することを含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
振動信号を発生するステップが、
振動信号のプリカーサーを発生し、
振動信号のプリカーサーの少なくとも一つの高調波を発生する
ことを含む、請求項20記載の方法。
【請求項24】
振動信号のプリカーサーの少なくとも一つの高調波をバンドパスフィルタリングすることを更に含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
位相エラーを発生するステップが、
位相エラーのプリカーサーを発生し、
位相エラーのプリカーサーをフィルタリングする
ことを含む、請求項20記載の方法。
【請求項26】
位相エラーのプリカーサーをフィルタリングするステップが、位相エラーのプリカーサーをデジタル的にフィルタリングすることを含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
テストプログラムを実行するように適応されたホストコンピュータと、
ホストコンピュータからのデータに応じて動作し、複数の参照周波数を生成する複数の位相ロック回路と、
複数の位相ロック回路に結合され、刺激信号を発生するおよび/または複数の参照周波数に応答する応答信号を受け取るように適応された複数の機器と、を含む自動テストシステムであって、
複数の位相ロック回路の各々が、
入力と出力を有し、サンプリングレートFで動作するように構築され配置されたサンプラーと、
入力と出力を有し、入力がサンプラーの出力に結合された位相検出器と、
入力と出力を有し、入力が位相検出器の出力に結合された制御可能発振器と、
制御可能発振器の出力からサンプラーの入力まで結合され、F/2よりも大きな周波数を有するサンプラーにフィードバック信号を配送するように構築され配置された回路パスと、を含むもの。
【請求項28】
位相検出器の入力が第一の入力であり、位相検出器が更に所望の出力周波数を示すデータを受け取るように配置された第二の入力を有する、請求項27記載の自動テストシステム。
【請求項29】
複数の機器が、デジタル駆動回路を含む、請求項27記載の自動テストシステム。
【請求項30】
複数の機器が、アナログソースを含む、請求項27記載の自動テストシステム。
【請求項31】
複数の機器が、RFソースを含む、請求項27記載の自動テストシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−534444(P2010−534444A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518158(P2010−518158)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2007/074115
【国際公開番号】WO2009/014535
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(502391840)テラダイン、 インコーポレイテッド (49)
【Fターム(参考)】