説明

充電器冷却構造および車載機器冷却システム

【課題】製造時の労力削減を図るとともに、充電器を好適に冷却することが可能な充電器冷却構造等を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかる充電器冷却構造102の代表的な構成は、車両100に搭載された充電器150と、充電器150へ電力を供給するコネクタケーブル22を差し込むコネクタケーブル差込口122と、コネクタケーブル差込口122から充電器150まで延びていて、電力をこの充電器150に送電する導線142と、コネクタケーブル差込口122に隣接して設けられ、外気を取り入れる空気取込口124と、空気取込口124から充電器150まで延びている吸気ダクト144と、吸気ダクト144の途中に設置され、外気をこの吸気ダクト144から充電器150へ吸引してこの充電器150を空冷する送風機148と、を有し、導線142が吸気ダクト144に固定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された充電器を冷却するための充電器冷却構造およびこれを用いた車載機器冷却システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、一般ユーザにも、環境を意識したいわゆるエコカーが広く普及している。エコカーの現在の主流はハイブリッドカー(HEV:Hybrid Electric Vehicle)となっているが、電気自動車(EV:Electric Vehicle)や水素を利用した燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)の開発も進められている。
【0003】
エコカーの一つの形態として、一般家庭などに設置したコネクタケーブルを車両の差込口に差し込んで、車載されたバッテリーを充電するプラグインハイブリッドカー(PHV:Plug-in Hybrid Vehicle)が提案されている。特許文献1には、プラグイン式の車両を充電する際に、空調空気供給導管を接続して建物内の空調空気を供給し、バッテリーの冷却に利用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4162026号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プラグインハイブリッドカーの場合、車載されたバッテリーと同様に、充電器に関しても冷却する必要がある。そこで、本発明は、製造時の労力削減を図るとともに、充電器を好適に冷却することが可能な充電器冷却構造およびこれを利用した車載機器冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明にかかる充電器冷却構造の代表的な構成は、車両に搭載された充電器と、充電器へ電力を供給するコネクタケーブルを差し込むコネクタケーブル差込口と、コネクタケーブル差込口から充電器まで延びていて、電力をこの充電器に送電する導線と、コネクタケーブル差込口に隣接して設けられ、外気を取り入れる空気取込口と、空気取込口から充電器まで延びている吸気ダクトと、吸気ダクトの途中に設置され、外気をこの吸気ダクトから充電器へ吸引してこの充電器を空冷する送風機と、を有し、導線が吸気ダクトに固定されていることを特徴とする。
【0007】
上記の構成によれば、充電用のコネクタケーブル差込口と、冷却用の吸気ダクトとが隣接するため、これらを例えば共通の開閉ハッチの内部に設ければ、ハッチを開けることにより、両者を同時に外部に露出させることができる。充電を目的としてコネクタケーブル差込口を露出させれば、必ず吸気ダクトも同時に露出するため、充電器の冷却が必要とされるときに、確実に吸気ダクトによる冷却が実行されることとなる。
【0008】
また、充電器を冷却するために配設された吸気ダクトに導線を固定する。これにより、吸気ダクトと導線を車体に別々に固定する必要がなくなるので、製造時にかかる労力を削減することができる。
【0009】
当該充電器冷却構造は、上記コネクタケーブル差込口および空気取込口に対して同時に着脱される1つの蓋をさらに有するとよい。コネクタケーブル差込口や空気取込口には、被水や塵埃の侵入を防ぐため、不使用時には蓋を被せておくことが好ましい。コネクタケーブル差込口および空気取込口は、必ず同時に使用されるため、それらの蓋を一体にすれば、作業者は1つの蓋を外すだけで充電作業が実行でき、使い勝手の向上を図ることができる。
【0010】
上記課題を解決するために本発明にかかる車載機器冷却システムの代表的な構成は、車両に搭載された充電器と、充電器により充電されるバッテリーと、充電器へ電力を供給するコネクタケーブルを差し込むコネクタケーブル差込口と、コネクタケーブル差込口から充電器まで延びていて、電力をこの充電器に送電する導線と、コネクタケーブル差込口に隣接して設けられ、外気を取り入れる空気取込口と、空気取込口から充電器まで延びている吸気ダクトと、吸気ダクトの途中に設置され、外気をこの吸気ダクトから充電器へ吸引してこの充電器を空冷する送風機と、コネクタケーブル差込口および空気取込口に対して同時に着脱される1つの蓋と、バッテリーを冷却するバッテリー冷却機構と、を有し、充電器は、空気取込口の開放時において空冷され、バッテリーは、このバッテリー充電時および使用時において、バッテリー冷却機構により冷却されることを特徴とする。
【0011】
充電器は、バッテリー充電時など、充電器自体が電力の供給を受ける時間帯に限って冷却する必要があり、バッテリーはバッテリー充電時および使用時に冷却する必要がある。上記の構成では、コネクタケーブル差込口の蓋が取り外された場合に充電器を空冷し、バッテリー充電時および使用時に充電器の冷却とは異なるバッテリー冷却機構によりバッテリーを冷却する。すなわち、充電器とバッテリーを別々に、必要なときにのみ冷却する。これにより、冷却性能を堅持しつつ、車体の冷却システムを省スペースで極めて簡易に構築することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、製造時の労力削減を図るとともに、充電器を好適に冷却することが可能な充電器冷却構造およびこれを利用した車載機器冷却システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態にかかる充電器冷却構造および車載機器冷却システムを適用した自動車の充電について説明する図である。
【図2】本実施形態にかかる充電器冷却構造および車載機器冷却システムについて説明する図である。
【図3】比較例としての充電器冷却構造について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
図1は、本実施形態にかかる充電器冷却構造および車載機器冷却システムを適用した自動車の充電について説明する図である。以下、自動車100をプラグインハイブリッド自動車として説明する。
【0016】
図1(a)に示すように、自動車100は、充電ステーション20から延びるコネクタケーブル22を、コネクタケーブル差込口122に差し込むことで充電される。充電ステーション20は、一般家庭10を介して交流の電力系統12より電力を受給する。
【0017】
図1(b)に示すように、コネクタケーブル差込口122は、ヒンジ部120aを基端として開閉可能な開閉ハッチ120の内部に設けられている。開閉ハッチ120の内部には、コネクタケーブル差込口122に隣接して、外気を取り入れる空気取込口124が設けられている。すなわち、開閉ハッチ120の凹形状部内に空気取込口124が設けられるので、空気取込口124が開放されていても水の浸入を抑制することができる。
【0018】
コネクタケーブル差込口122および空気取込口124には、被水や塵埃の侵入を防ぐため、不使用時には一体の1つの蓋130が被せられる。この蓋130は、コネクタケーブル差込口122および空気取込口124に対して、同時に着脱される。よって、コネクタケーブル22をコネクタケーブル差込口122に差し込む際には、必ず空気取込口124が開放され、外気が取り入れられることとなる。換言すれば、蓋130を一体にすることで、作業者が別々の蓋を取り外す必要がないので、使い勝手の向上を図ることができる。空気取込口124が開放されることにより、後述する充電器150の空冷が実行される。
【0019】
図2は、本実施形態にかかる充電器冷却構造102および車載機器冷却システム104について説明する図である。なお、図2は、理解を容易にするために模式的に図示したものであり、細部を省略している。
【0020】
図2(a)に示すように、コネクタケーブル差込口122には導線142が接続されている。導線142は、充電器150まで延びていて、コネクタケーブル22がコネクタケーブル差込口122に差し込まれると、電力を充電器150に送電する。
【0021】
図2(b)に示すように、空気取込口124には吸気ダクト144が接続されている。吸気ダクト144は、充電器150まで延びていて、空気取込口124が開放されると、外気を充電器150に送風する。詳細には、吸気ダクト144の途中に送風機148が設置されていて、外気を吸気ダクト144から充電器150へと吸引して、充電器150を空冷する。送風機148は、例えばコネクタケーブル差込口122にコネクタケーブル22が差し込まれたことを検知して稼動するように構成する。送風機148としては、ファンまたはブロアを用いることができる。
【0022】
導線142と吸気ダクト144は、開閉ハッチ120(コネクタケーブル差込口122、空気取込口124)からほぼ同一の経路を通って、充電器150へと接続する。そこで、本実施形態では、固定部材152により導線142を吸気ダクト144に固定している。これにより、導線142と吸気ダクト144を車体に別々に固定する必要がなくなるので、製造時にかかる労力を削減することができる。
【0023】
充電器150の空冷に利用された外気は、排気ダクト146を通って排気される。また、充電器150に送電された電力は、交流から直流に変換されて、バッテリー160に送電される。
【0024】
バッテリー160は、充電器150からの直流電流により充電される。バッテリー160は、バッテリー充電時および使用時にバッテリー冷却機構162により冷却される。具体的には、冷却ダクト172が、例えば車載されたエアコンの冷却風や車内または車外から取り入れた空気を送風し、バッテリー160を冷却する。冷却に利用された空気は、第2排気ダクト176より排気される。
【0025】
図3は、比較例としての充電器冷却構造202について説明する図である。図3(a)は、自動車200の内部構造を説明するために、側方からの車体断面を図示している。図3(b)は、同じ自動車200の一部を拡大して後方から見た車体断面図である。図3(a)、(b)では、理解を容易にするために、細部を省略している。
【0026】
図3(a)に示すように、この自動車200では、シート210下部に空気取込口224および吸気ダクト244が設けられている。そして、吸気ダクト244の途中に送風機248が備えられる。開閉ハッチ120には、コネクタケーブル差込口222のみが設けられる。コネクタケーブル差込口222に接続された導線242と吸気ダクト244は、異なる経路を通って充電器150に接続する。なお、排気は図3(a)に示すように、適宜、車外に対して行われ、図3(b)では排気ダクトは図示を省略している。
【0027】
図3(a)、(b)に示す比較例も、シート210下部に空気取込口224および吸気ダクト244が設けられている点など、従来にない新規な構成を有する。しかし本実施形態と比較すると、固定部材252によって導線242を車体に固定し、固定部材152(図3(a)では図示省略)によって吸気ダクト244を車体に固定するという、別々の作業が必要となる。
【0028】
また、図3(a)のように、充電器冷却専用の吸気ダクト244が常時シート210下のスペースを占有している点で、比較例は省スペース化に逆行している。省スペース化を図るために、図3の比較例において、充電器150冷却専用の吸気ダクト244をバッテリー160(図3では図示省略)の冷却にも流用可能と考えられる。しかし、両者を同時に冷却する必要があるのは停車時の充電中に限られ、走行中はバッテリー160の冷却のみで足りる。したがって、同一の冷気源から共通の吸気ダクト244を用いて冷気を取り入れると、冷気の過不足が生じる。
【0029】
そこで、本実施形態にかかる充電器冷却構造102では、コネクタケーブル差込口122に隣接して空気取込口124を設け、これらに一体の蓋130を被せている。充電器150の使用に際しては、この蓋130が取り外される必要があり、空気取込口124が開放されるためである。すなわち、充電器150を冷却する必要があるときにのみ、吸気ダクト144から排気ダクト146へと外気が循環し、充電器150が空冷される。
【0030】
一方、バッテリー160は、バッテリー冷却機構162により冷却される。充電器150とは異なり、バッテリー160充電時に限らずバッテリー160に蓄電された電力を利用して走行する際などでも、バッテリー160を冷却する必要があるためである。
【0031】
本実施形態では充電器150とバッテリー160を別々に、必要なときにのみ冷却する。充電器150とバッテリー160を同時に冷却することも無論可能であるが、そのための冷気を取り入れる経路は吸気ダクト144、冷却ダクト172に完全に分離されている。したがって、いずれの経路も、冷却対象にふさわしい冷気を供給でき、冷気の過不足を生じることはない。また、充電器150、バッテリー160の冷却に利用する吸気ダクト144、冷却ダクト172の循環経路の切替を要しないため、車体の冷却システムを省スペースで極めて簡易に構築することができる。
【0032】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0033】
例えば、本実施形態と吸気から排気までの循環経路が逆転していても本発明に包含される。すなわち、コネクタケーブル差込口122に隣接して、空気取込口124ではなく排気ダクト146に接続する排気口を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、車両に搭載された充電器を冷却するための充電器冷却構造およびこれを用いた車載機器冷却システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
100…自動車、102…充電器冷却構造、104…車載機器冷却システム、120…開閉ハッチ、120a…ヒンジ部、122…コネクタケーブル差込口、124…空気取込口、130…蓋、142…導線、144…吸気ダクト、146…排気ダクト、148…送風機、150…充電器、152…固定部材、160…バッテリー、162…バッテリー冷却機構、172…冷却ダクト、176…第2排気ダクト、200…自動車、202…充電器冷却構造、210…シート、222…コネクタケーブル差込口、224…空気取込口、242…導線、244…吸気ダクト、248…送風機、252…固定部材、10…一般家庭、12…電力系統、20…充電ステーション、22…コネクタケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された充電器と、
前記充電器へ電力を供給するコネクタケーブルを差し込むコネクタケーブル差込口と、
前記コネクタケーブル差込口から前記充電器まで延びていて、前記電力を該充電器に送電する導線と、
前記コネクタケーブル差込口に隣接して設けられ、外気を取り入れる空気取込口と、
前記空気取込口から前記充電器まで延びている吸気ダクトと、
前記吸気ダクトの途中に設置され、外気を該吸気ダクトから前記充電器へ吸引して該充電器を空冷する送風機と、
を有し、
前記導線が前記吸気ダクトに固定されていることを特徴とする充電器冷却構造。
【請求項2】
前記コネクタケーブル差込口および前記空気取込口に対して同時に着脱される1つの蓋をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の充電器冷却構造。
【請求項3】
車両に搭載された充電器と、
前記充電器により充電されるバッテリーと、
前記充電器へ電力を供給するコネクタケーブルを差し込むコネクタケーブル差込口と、
前記コネクタケーブル差込口から前記充電器まで延びていて、前記電力を該充電器に送電する導線と、
前記コネクタケーブル差込口に隣接して設けられ、外気を取り入れる空気取込口と、
前記空気取込口から前記充電器まで延びている吸気ダクトと、
前記吸気ダクトの途中に設置され、外気を該吸気ダクトから前記充電器へ吸引して該充電器を空冷する送風機と、
前記コネクタケーブル差込口および前記空気取込口に対して同時に着脱される1つの蓋と、
前記バッテリーを冷却するバッテリー冷却機構と、
を有し、
前記充電器は、前記空気取込口の開放時において空冷され、
前記バッテリーは、該バッテリー充電時および使用時において、前記バッテリー冷却機構により冷却されることを特徴とする車載機器冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−98632(P2011−98632A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254179(P2009−254179)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】