説明

光モジュール及びその製造方法

【課題】複数の部材からパッケージを組立てる必要がなく、製造コストが低減したパッケージを用いた光モジュールを提供する。
【解決手段】光モジュール10は、パッケージ1と、このパッケージの一面1aに一体化されて配された、光導波路3を固定するための部位2とを少なくとも備える。部位は、一面を貫通する方向に孔部20を有し、光導波路をこの孔部内に挿設して固定する。また、この部位は、その内面をなす特定の2面21a,22aが孔部を構成すると共に、互いに対向して配され、2面間に挟まれた光導波路が、この2面間を満たす接合材5により固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信や光伝送技術及び光情報記録技術に用いられる光モジュールに係り、詳しくは、光モジュールを低コスト化せしめるパッケージ構造とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光モジュールは、これまで主にメトロ系や基幹系と呼ばれる中長距離の光通信用途に用いられてきた。ところが、近年はFTTH(Fiber To The Home) などの普及により、基地局と一般家庭間においても光通信が行われるようになっている。さらに、機器内におけるデータ伝送の大容量化が進んでおり、将来はスーパーコンピュータにおける高速ルータのボード間やラック間配線、パーソナルコンピュータ(PC)等の機器内配線、ノートPCや携帯電話機等の内部配線として、光配線が用いられることが予想されている。
【0003】
これに伴い、利用者の金銭的負担を減らす目的で、低価格な光モジュールが開発されるようになった。たとえば、表面をメタライズした光導波路をパッケージの筒状の光導波路固定部に挿入してはんだ固定するタイプの光モジュールが開発されている。このような光モジュールでは、光導波路固定部にフェルールやレセプタルクを用いないことで低コスト化を図っている。
【0004】
具体的には、図9に示すように、ケース101と、筒状の光導波路固定部104とからパッケージを構成した光モジュールが提案されている(特許文献1参照)。この光モジュールでは、光導波路103の表面は一部メタライズされており、はんだ注入口104aから注入されたはんだにより、光導波路103のメタライズ部103aが筒状の光導波路固定部104に固定されている。
【0005】
また、図10に示すように、複数の板材からなるケース部112,113,114と、筒状の光導波路固定部115とからパッケージを構成した光モジュールが提案されている(特許文献2参照)。この光モジュールでは、光導波路121の表面の一部がメタライズされており、メタライズ面125と筒状の光導波路固定部115の内面とがはんだ124により固定されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載されたような従来の光モジュールでは、以下に挙げる二つの問題があった。
第一は、パッケージが複数の部材から構成されているため、パッケージの製造コストが高いという問題があった。
また、第二に、光導波路をパッケージにはんだ固定する際に、はんだを光導波路上に塗布する必要があるため、光導波路が調心位置からずれ易く、製造歩留まりが悪いという問題があった。
【0007】
特に、特許文献1に記載された光モジュールでは、パッケージを構成するケース101と筒状の光導波路固定部104は、それぞれ個別に作製された後で溶接により一体化されるため、パッケージの製造コストが高いという問題があった。また、光導波路103を筒状の光導波路固定部104に固定する際には、はんだを筒状の光導波路固定部104のはんだ注入口104aより供給して光導波路103の表面へ塗布する必要があり、塗布したはんだの重量により光導波路103が調心位置からずれ易く、製造歩留まりが悪いという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に記載された光モジュールでは、パッケージが複数の板材112,113,114と筒状の光導波路固定部115とを溶接により一体化することで構成されているため、パッケージの製造コストが高いという問題があった。また、光導波路121をパッケージの光導波路挿通穴に固定する際には、光導波路121のメタライズ部125をはんだコテで加熱しながらはんだ124を供給する必要があり、はんだコテや溶融前のはんだが光導波路121と接触して光導波路121が調心位置からずれてしまい、製造歩留まりが悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−165200号公報
【特許文献2】特開平7−191238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、複数の部材からパッケージを組立てる必要がなく、製造コストが低減したパッケージを用いた光モジュールを提供することを目的とする。
また、本発明は、光導波路が調心位置からずれることなく、光モジュールを歩留まり良く製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る光モジュールは、半導体素子を内包するパッケージと、前記パッケージの一面に一体化されて配され、該一面を貫通する方向に孔部を有し、該孔部内に光導波路を挿設して該光導波路を固定するための部位と、を少なくとも備え、前記部位の内面をなす特定の2面が、前記孔部を構成すると共に、互いに対向して配されており、該2面間において前記光導波路が接合材により固定されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項2に係る光モジュールは、請求項1の光モジュールにおいて、前記部位は、前記2面が前記パッケージの外部方向及び/又は内部方向に突出して配されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項3に係る光モジュールは、請求項1又は2の光モジュールにおいて、前記2面は、前記接合材に対して毛細管現象を生じさせる隙間を備えていることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項4に係る光モジュールの製造方法は、半導体素子を内包するパッケージと、前記パッケージの一面に一体化されて配され、該一面を貫通する方向に孔部を有し、該孔部内に光導波路を挿設して該光導波路を固定するための部位と、を少なくとも備え、前記部位の内面をなす特定の2面が、前記孔部を構成すると共に、互いに対向して配されており、該2面間において前記光導波路が接合材により固定されている光モジュールの製造方法であって、前記孔部内に光導波路を挿入する工程Aと、前記2面間に毛細管現象により前記接合材を充填する工程Bと、前記孔部と前記光導波路との間に前記接合材が浸透した後に、前記接合材を硬化させる工程Cとを少なくとも備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光モジュールによれば、光導波路を固定するための部位が、半導体素子を内包するパッケージの一面に一体化されて配され、その内面をなす特定の2面間において光導波路が接合材により固定されている。ゆえに、光導波路を固定するための部位をパッケージとは別個に作製し、その後この部位をパッケージに一体化する必要がなく、パッケージの一面に一体化されて配された部位の内面をなす特定の2面において、光導波路を接合材により固定することができる。
したがって、複数の部材からパッケージを組立てる必要がなく、製造コストを低減するパッケージを用いた光モジュールを提供することができる。
【0016】
本発明の光モジュールの製造方法によれば、半導体素子を内包するパッケージの一面を貫通する方向に有する孔部内に光導波路を挿入し、この光導波路を固定するための部位の内面をなす特定の2面間に毛細管現象により接合材を充填し、孔部と光導波路との間に接合材が浸透した後に接合材を硬化させる。ゆえに、接合材を光導波路上に直接塗布する必要がなく、接合材塗布時に光導波路を調心位置からずらしてしまう危険をなくすことができる。
したがって、光導波路が調心位置からずれることなく、光モジュールを歩留まり良く製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る光モジュールの一実施形態を示す図。
【図2】本発明に係る光モジュールを構成する部位の形状例を示す図。
【図3】本発明に係る光モジュールを構成する孔部の形状例を示す図。
【図4】本発明に係る光モジュールを構成する2面(第1部位片の内面と第2部位片の内面)の形状例を示す図。
【図5】本発明に係る光モジュールの製造方法を説明する図。
【図6】本発明に係る実施例1の光モジュールを示す図。
【図7】本発明に係る実施例2の光モジュールを示す図。
【図8】本発明に係る実施例3の光モジュールを示す図。
【図9】従来の第一の光モジュールを示す図。
【図10】従来の第二の光モジュールを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施した光モジュールとその製造方法について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る光モジュールの一実施形態を示す図であり、図1(a)は光モジュールの正面図を、図1(b)は図1(a)に示すA−A線に沿う縦断面図を、図1(c)は図1(a)に示すB−B線に沿う横断面図を、それぞれ表している。
図1に示すように、本発明に係る光モジュール10は、パッケージ1と、このパッケージ1の一面1aに一体化されて配された、光導波路3を固定するための部位2とを少なくとも備える。
【0019】
パッケージ1は、基板4上に取り付けられ、この基板4に搭載されている半導体素子6や電子部品7等を内包する。
また、パッケージ1の材料としては、たとえば各種樹脂や金属、アルミナセラミクス、窒化アルミ等を挙げることができる。
【0020】
基板4には、たとえばセラミック基板や樹脂基板等を用いることができる。
半導体素子6は、電気信号を光信号に変換して発信し、又は光信号を受信して電気信号に変換する光素子であり、たとえば光導波路3への光入射側端部ではレーザダイオード等の発光素子、光導波路3からの光出射側端部ではフォトダイオード等の受光素子が用いられる。
また、電子部品7は、たとえば発光素子の駆動用および/または受光素子の増幅用の集積回路(IC)とすることができる。
【0021】
部位2は、一面1aを貫通する方向に孔部20を有し、この孔部20内に光導波路3を挿設して光導波路3を固定する。また、この部位2は、その内面をなす特定の2面21a,22aが、孔部20を構成すると共に、互いに対向して配されており、この2面21a,22a間に挟まれた光導波路3が、2面21a,22a間を満たす接合材5により固定されている。
図1において、部位2は、一面1aに対して垂直で、互いに対向する第1部位片21と第2部位片22を有し、それぞれの内面が2面21a,22aを構成するものとして示されている。
【0022】
また、部位2は、接合材5を毛細管現象により2面21a,22a間に吸い込み保持する機能を有する。この2面21a,22a間に接合材5を吸い上げて充填する場合、吸い上げられる接合材5の上昇高さh[m]は、使用する接合材5の表面張力σ[N/m]とその密度ρ[kg/m]、接合材5と内面の接触角θ[rad]、2面21a,22aの間隔d[m]を用いて、h=2σ・cosθ/ρgdから求めることができる。ここで、gは重力加速度[m/s]を表す。
【0023】
表面に金めっきを施した金属パッケージと、はんだペーストと、外径φ0.12mmのメタルコートファイバを用いて、はんだ上昇高さを確認する実験を行った。その際、部位2の形状は図1に示すフラットな面として、その間隔はd=0.5[mm]とした。実験サンプル5個のはんだの上昇高さは、平均でh=17.5[mm]であり、理論値h=18[mm]に近い値が得られた。なお、理論値の算出には、σ=0.15[N/m]、θ=45[rad]、ρ=7370[kg/m]、d=0.5[mm]、g=9.8[m/s]を用いた。
【0024】
したがって、接合材の選定と2面の間隔dの設定により、所望の接合材上昇高さhを得ることができることが確認された。ただし、実際の接合材の上昇高さhは、様々な阻害要因により一般的には理論値以下になる。理論値に近い接合材の上昇高さを得るには、部位の内面の2面と密着性・濡れ性の良い接合材を選んだり、表面改質により2面を接合材の濡れが良い状態にすることが有効である。
【0025】
また、部位2を構成する2面21a,22aの高さlと、その間隔dは、挿入する光導波路3の大きさや、光導波路3を挿入する高さに合わせて設計する。光導波路3の固定強度を高くするには、光導波路3の周囲全体を接合材5で覆うことが望ましい。これを実現するには、接合材5の上昇高さhが光導波路3の上面よりも高くなるように2面21a,22aの間隔dを設定する必要がある。
【0026】
また、2面21a,22aの高さlも、接合材5の上昇高さhより高く設定する必要がある。このように、2面21a,22a間の接合材5の上昇高さhは、2面21a,22a間の間隔dに依存し、2面21a,22aの高さlにより制限される。したがって、接合材5の上昇高さhは、2面21a,22aのその他の形状要素にはよらない。
また、接合材5の上昇高さhは、2面21a,22aの突出長さにはよらないが、光導波路3の固定強度は2面21a,22aの突出長さに依存するので、必要な引張強度が得られるように設計するのが良い。
【0027】
この部位2は、図2(a)に示すように、2面21a,22aがパッケージ1の外部方向に突出して形成されたものとすることができる。
図2(a)は、部位の形状例を示す第1の形態の横断面図である。
図2(a)には、第1部位片21Aの内面21aと、第2部位片22Aの内面22aが2面を構成すると共に、孔部20を構成し、パッケージ1の外部方向に突出して第1の形態の部位2Aを形成するものとして示されている。
これにより、光導波路を固定するための部位2Aが一体化したパッケージ1とすることができる。
【0028】
また、部位2は、図2(b)に示すように、2面21b,22bがパッケージ1の内部方向に突出して形成されたものとしても良い。
図2(b)は、部位の形状例を示す第2の形態の横断面図である。
図2(b)には、第1部位片21Bの内面21bと、第2部位片22Bの内面22bが2面を構成すると共に、孔部20を構成し、パッケージ1の内部方向に突出して第2の形態の部位2Bを形成するものとして示されている。
これにより、光導波路を固定するための部位2Bを一体化して有し、この部位2が外部に突出しないコンパクト化したパッケージ1とすることができる。
【0029】
また、部位2は、図2(c)に示すように、2面21c,22cがパッケージ1の外部方向及び内部方向に突出して形成されたものとしても良い。
図2(c)は、部位の形状例を示す第3の形態の横断面図である。
図2(c)には、第1部位片21Cの内面21cと、第2部位片22Cの内面22cが2面を構成すると共に、孔部20を構成し、パッケージ1の外部方向及び内部方向に突出して第3の形態の部位2Cを形成するものとして示されている。
これにより、光導波路を強固に固定する引張強度の大きい部位2Cを一体化して有するパッケージ1とすることができる。
【0030】
また、部位2は、図2(d)に示すように、パッケージの一面中央ではなく、端に寄って形成されたものとしても良い。
図2(d)は、部位の形状例を示す第4の形態の横断面図である。
図2(d)には、パッケージ1の一面1aに隣接した他の一面1bにおける隣接部の一部を第2部位片22Dとみなし、パッケージ1の一面1aに設けられた第1部位片21Dの内面21dと、この第2部位片22Dの内面22dが2面を構成すると共に、孔部20を構成し、パッケージ1の一面端部において第1部位片21Dの内面21dが内部方向に突出して第4の形態の部位2Dを形成するものとして示されている。
これにより、部位2に用いる原材料の使用量を軽減して低コスト化すると共に、設計を簡略化した部位2Dを一体化して有するパッケージ1とすることができる。
【0031】
また、2面は、接合材5に対して毛細管現象を生じさせる隙間を形成するものであれば、その形状は特に限定されない。
したがって、上述のように、パッケージ1に設けられた第1部位片21の内面21aと、第2部位片22の内面22aが、その間隔を維持したまま垂直に構成された2面を示す第1の形態の他に、図3(a)乃至(c)に示すように、様々な形状をした2面を構成する他の態様とすることもできる。
【0032】
まず、図3(a)は、2面の形状例を示す第2の形態の横断面図である。
図3(a)には、パッケージ1に設けられた第1部位片23の内面23aと、第2部位片24の内面24aが2面を構成し、その間隔が徐々に拡がる又は徐々に狭まるように構成された2面が示されている。
図3(a)の構成例とした場合には、接合材5を充填する側の2面の間隔を極力狭まったものとし、接合材5の吸い込み充填を行い易いものとすることができる。
【0033】
また、図3(b)は、2面の形状例を示す第3の形態の横断面図である。
図3(b)には、パッケージ1に設けられた第1部位片25の内面25aと、第2部位片26の内面26aが2面を構成し、その間隔が、光導波路3に近づくに連れて徐々に拡がり、光導波路3から離れるに連れて徐々に狭まるように構成された2面が示されている。
図3(b)の構成例とした場合にも、図3(a)の構成例と同様に、光導波路3を挟み込む部分以外の2面の間隔を極力狭くし、2面間へ接合材5を効率良くかつ迅速に充填することができる。また、図3(b)の構成例とした場合には、図1の構成例における部位2の形状に比較して、接合材5をより高い位置まで吸い上げることができる。
【0034】
また、図3(c)は、2面の形状例を示す第4の形態の横断面図である。
図3(c)には、パッケージ1に設けられた第1部位片27の内面27aと、第2部位片28の内面28aが2面を構成し、その間隔を維持したまま傾斜して構成された2面が示されている。
図3(c)の構成例とした場合には、光導波路3の真下(図中の下方を指す)以外の任意の位置においても接合材5を塗布し吸い上げることができる。
【0035】
また、孔部20は、図4(a)に示すように、周囲が閉じられた丸穴状の孔部20Aでも良いし、図4(b)のように、周囲に開放部を有する溝形状の孔部20Bでも良い。丸穴状の孔部20Aの場合は、光導波路3を保持しながら容易に固定することができる。また、溝形状の孔部20Bの場合は、孔部の形成が容易であると共に、孔部内への光導波路の挿設も容易に行うものとすることができる。
【0036】
光導波路3は、屈折率の大きいコアと、このコアの周囲に接して設けられる屈折率の小さいクラッドとにより形成され、コアに入射した光信号を、コアとクラッドとの境界で全反射を繰り返しながら伝搬する。この光導波路3には、光ファイバやプラスチック光ファイバ、石英光導波路、高分子光導波路等を用いることができる。また、表面の一部または全体を金属でメタライズした光導波路を使用しても良い。光導波路のメタライズは、スパッタ蒸着や無電解めっき、電解めっきなどの手法を用いることで実現できる。この光導波路3は、半導体素子6と位置合わせをして光結合する。
図1(b)および図1(c)において、光導波路3は、光ファイバ素線31と、メタルコート部32と、被覆材33と、から構成する光ファイバとして示されている。
【0037】
接合材5は、光半導体素子6等をパッケージ1内に封止することによって、埃や湿気から光半導体素子6等を守り、光モジュール10の信頼性を高める役割を有する。
この接合材5には、UV硬化型や熱硬化型の接着剤(樹脂)、銀ペースト、はんだ、などを用いることができる。はんだとしては、ソフトソルダーと呼ばれるPb、Sn、In系合金はんだ、ハードソルダーと呼ばれるAu−Ge等のAu系合金はんだのどちらを用いても良い。また、固形はんだだけではなく、クリームはんだやソルダーペーストと呼ばれるはんだペーストを用いても良い。
【0038】
次に、本発明を実施した光モジュールの製造方法の一例を説明する。
図5は、本発明に係る光モジュールの製造方法を順次示す正面図である。
はじめに、図5(a)に示すように、第1部位片21と第2部位片22との間に有する孔部20内に光導波路3を設置する。
次いで、図5(b)に示すように、第1部位片21の内面21aと第2部位片22の内面22aとで構成された2面間における基板4上に接合材5aを供給する。
引き続き、図5(c)に示すように、この2面21a,22a間に毛細管現象により接合材5aを充填する。この際、接合材5aが、固形はんだやはんだペースト状の場合、接合材5aを溶融する。
そして、孔部20と光導波路3との間に接合材5aが浸透した後に、この接合材5aを硬化(又は固化)させることで、光導波路3を接合材5で固定し、図1乃至図3に示す光モジュール10を製造することができる。
【0039】
本実施の形態による製造方法によれば、光モジュールの製造中に光導波路が調心位置からずれることがないので、高性能な光モジュールを作製することができ、歩留まりを向上させることができる。
【0040】
次に、本発明の実施例について説明する。
<実施例1>
図6は、本発明に係る実施例1の光モジュールを示す図であり、図6(a)は光モジュールの正面図を、図6(b)は図6(a)に示すC−C線に沿う縦断面図を、図6(c)は図6(a)に示すD−D線に沿う横断面図を、それぞれ表している。
実施例1に係る光モジュール10Aは、外力による破損を防ぐために、強度の高い銅合金パッケージ1Aを用いると共に、はんだ接合材5Aを用いた。
また、パッケージ1Aは、このはんだ接合材5Aの濡れ性を良くするため、及び金属の酸化を防ぐために、表面全体を金でめっきした。図中符号8は、金でめっきしたメタルコート部を示す。
さらに、はんだ接合材5Aの濡れ性をより良くするため、パッケージ1Aの表面をプラズマ洗浄により改質した。
【0041】
基板4Aには、放熱性の良いセラミックス基板を使用し、光半導体素子6の発熱を抑えるようにした。
また、光導波路3には、メタルコートファイバを使用した。
そして、孔部20を構成する第1部位片21の内面21aと第2部位片22の内面22aとの2面間にメタルコートファイバ3を設置し、上述した光モジュールの製造方法に基づいてはんだ接合材5Aでパッケージ1Aにメタルコートファイバ3を固定して、メタルコートファイバ3の引張に対する耐久性を高めた。
【0042】
また、本実施例の光モジュール10Aでは、パッケージ1A内を乾燥窒素又は乾燥ヘリウムで満たした状態で、金属パッケージ1Aとセラミックス基板4Aとメタルコートファイバ3とをはんだ接合することで、パッケージ1Aを機密封止し、光モジュール10A内の光半導体素子6や電子部品7、電気回路を湿気から保護した。
【0043】
以上のように実施例1によれば、第一に、光導波路を固定するための部位がパッケージの一部として一体に作製されていることにより、従来の光モジュールのように複数の部材からパッケージを組立てる必要がなく、パッケージの製造コストを安くすることができるという利点がある。
【0044】
第二に、部位に接合材の吸い上げ機能があることにより、接合材を光導波路上に直接塗布する必要がないので、従来の光モジュールのように接合材塗布時に光導波路を調心位置からずらしてしまう危険がなく、光ジュールの製造歩留まりが良いものとすることができる。
【0045】
第三に、部位の表面を、はんだ濡れ性の良い金属で覆っていることにより、はんだ付け不良や封止ミスを起しにくく、光モジュールの製造歩留まりが良いものとすることができる。また、パッケージ材料にはんだ濡れ性を求める必要がないので、価格の安い材料を選ぶことができ、光モジュールの価格を安くすることができる。
【0046】
第四に、メタルコートファイバを用いることで光導波路の表面に金属がメタライズされていることにより、光導波路が部位にはんだを介して金属結合されているので、光導波路の引張りに対して強い耐久性が得られる。
【0047】
<実施例2>
図7は、本発明に係る実施例1の光モジュールを示す図であり、図7(a)は光モジュールの正面図を、図7(b)は図7(a)に示すE−E線に沿う縦断面図を、図7(c)は図7(a)に示すF−F線に沿う横断面図を、それぞれ表している。
実施例2に係る光モジュール10Bは、実施例1に係る光モジュール10Aと概ね同じ構造だが、パッケージと、基板と、接合材の材料に樹脂を用いた点が異なる。すなわち、樹脂パッケージ1Bと、樹脂基板4Bと、樹脂接合材5Bを用いた。
【0048】
また、光導波路3には、メタルコートファイバを使用した。
そして、孔部20を構成する第1部位片21の内面21aと第2部位片22の内面22aとの2面間にメタルコートファイバ3を設置し、上述した光モジュールの製造方法に基づいて樹脂接合材5Bでパッケージ1Bにメタルコートファイバ3を固定すると共に、パッケージ1Bを樹脂基板4Bと樹脂接合することで封止し、光モジュール10B内の光半導体素子6や電子部品7、電気回路を湿気から保護した。
【0049】
以上のように実施例2によれば、実施例1で述べた光モジュールの気密封止パッケージと比較すると信頼性の面で劣るが、材料に樹脂を用いているので部材費が安く、光モジュールのコストを安くすることができる。
【0050】
<実施例3>
図8は、本発明に係る実施例1の光モジュールを示す図であり、図8(a)は光モジュールの正面図を、図8(b)は図8(a)に示すG−G線に沿う縦断面図を、図8(c)は図8(a)に示すH−H線に沿う横断面図を、それぞれ表している。
実施例3に係る光モジュール10Cは、実施例2に係る光モジュール10Bと概ね同じ構造だが、はんだ接合材5Aが用いられており、対向する2面21a,22aの表面にメタライズがなされている点が異なる。すなわち、樹脂パッケージ1Bと、樹脂基板4Bと、はんだ接合材5Aを用いた。
【0051】
また、図中符号9は、メタライズがなされたメタルコート部を示す。メタライズする範囲は、2面21a,22aの表面に限らず、パッケージ1Bの全体をメタライズしても良い。メタライズの方法としては、スパッタ蒸着や無電解めっき、MIDなどの手法がある。メタライズする金属は、はんだ濡れ性の良い金や錫、ニッケルなどが好ましい。
さらに、はんだ濡れ性をよりよくするため、2面21a,22aのメタルコート部9をプラズマ洗浄しておくと良い。
【0052】
以上のように実施例3によれば、2面21a,22a表面にはんだ濡れ性の良い金属がメタライズされているので、直接はんだが濡れない樹脂パッケージ1Bでも光導波路3を良好にはんだ固定することができる。なお、樹脂パッケージ1Bの代わりに、セラミックスパッケージを用いた場合にも、同様の利点がある。
【0053】
以上説明したように、本発明によれば、従来の光モジュールに比べて、パッケージを構成する部材数が少ないので、パッケージの製造コストを安くすることができる。
また、光導波路に直接触れずに接合材を供給することができるので、光モジュールの製造歩留まりが良く、光モジュールの製造コストを安くすることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 パッケージ、1a 一面、2 部位、3 光導波路、4 基板、5 接合材、6 光半導体素子、7 電子部品、8,9 メタルコート(メタライズ)部、10 光モジュール、20 孔部、21 第1部位片、21a (第1部位片の)内面、22 第2部位片、22a (第2部位片の)内面、31 素線、32 メタルコート(メタライズ)部、33 被覆材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を内包するパッケージと、
前記パッケージの一面に一体化されて配され、該一面を貫通する方向に孔部を有し、該孔部内に光導波路を挿設して該光導波路を固定するための部位と、を少なくとも備え、
前記部位の内面をなす特定の2面が、前記孔部を構成すると共に、互いに対向して配されており、該2面間において前記光導波路が接合材により固定されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記部位は、前記2面が前記パッケージの外部方向及び/又は内部方向に突出して配されていることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記2面は、前記接合材に対して毛細管現象を生じさせる隙間を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光モジュール。
【請求項4】
半導体素子を内包するパッケージと、前記パッケージの一面に一体化されて配され、該一面を貫通する方向に孔部を有し、該孔部内に光導波路を挿設して該光導波路を固定するための部位と、を少なくとも備え、前記部位の内面をなす特定の2面が、前記孔部を構成すると共に、互いに対向して配されており、該2面間において前記光導波路が接合材により固定されている光モジュールの製造方法であって、
前記孔部内に光導波路を挿入する工程Aと、
前記2面間に毛細管現象により前記接合材を充填する工程Bと、
前記孔部と前記光導波路との間に前記接合材が浸透した後に、前記接合材を硬化させる工程Cとを少なくとも備えることを特徴とする光モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−243732(P2010−243732A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91437(P2009−91437)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】